説明

間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法

【課題】確実な改質、アノード酸化劣化防止、セル割れ防止が可能な間接内部改質型SOFCの停止方法を提供する。
【解決手段】段階的な流量Fk(j)の燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件Tr(j)を予め知り、アノード温度が酸化劣化点以上の間、改質触媒層温度T≧Tr(M)の場合、Fk(j)のうちFk0未満でFkEを超える中間的流量が有れば工程C1〜C5を順次行ない、C1)中間的流量のうちの最大値を与えるjをJと表し改質器への燃料流量をFk(J)にし、C2)改質触媒層測定温度TとTr(J)とを比較し、C3)T>Tr(J)なら工程C2に戻り、C4)T≦Tr(J)なら改質器への燃料流量をFk(J+1)にしJを1増加させ、C5)J≠Mなら工程C2に戻りJ=Mなら工程Dに移り、D)アノード温度が酸化劣化点を下回るのを待つ。Tr(M)、Fk0、FkEは明細書に定義される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質器を燃料電池近傍に有する間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物電解質形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell。以下場合によりSOFCという。)システムには、通常、灯油や都市ガスなどの炭化水素系燃料を改質して水素含有ガスとして改質ガスを発生させるための改質器と、改質ガスと空気を電気化学的に発電反応させるためのSOFCが含まれる。
【0003】
SOFCは通常、550〜1000℃の高温で作動させる。
【0004】
改質には水蒸気改質(SR)、部分酸化改質(POX)、自己熱改質(ATR)など種々の反応が利用されるが、改質触媒を用いるためには、触媒活性が発現する温度に加熱する必要がある。
【0005】
水蒸気改質は非常に大きな吸熱反応であり、また、反応温度が550〜750℃と比較的高く、高温の熱源を必要とする。そのため、SOFCの近傍に改質器(内部改質器)を設置し、SOFCからの輻射熱やSOFCのアノードオフガス(アノードから排出されるガス)の燃焼熱を熱源として改質器を加熱する間接内部改質型SOFCが知られている(特許文献1)。
【0006】
また、発電停止の際に、燃料電池に水、および水素または炭化水素系燃料の流量を減少させながら供給することにより、燃料極層側を還元状態に保持しつつ、スタック温度を低下させる燃料電池の運転停止方法が特許文献2に開示される。
【特許文献1】特開2004−319420号公報
【特許文献2】特開2006−294508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の方法を利用すれば、燃料電池の停止時にアノードを還元雰囲気に保持することができ、アノードの酸化劣化を防止することができると考えられる。
【0008】
しかし、特許文献2記載の方法では、炭化水素系燃料を改質して得られる水素含有ガスを用いてSOFCアノードを還元状態に保持する場合に、確実な改質が担保されていない。つまり、未改質の炭化水素系燃料が改質器から排出され、アノードに流入するおそれがある。
【0009】
特に、灯油のような高次炭化水素を用いる場合、改質器から高次炭化水素がリークしてSOFCに流入すると、炭素析出によってSOFCの性能が劣化することがある。
【0010】
さらに、燃料電池を降温する際に、急激に炭化水素系燃料の流量を変化させると、燃料電池内部圧力の急激な変化によって、セル割れ(燃料電池の破損)が生じるおそれがある。また、シールレススタック(発電反応に用いられなかった残余のガスを外周部から外に放出する形態のスタック)においてアノード圧力が急激に低下すると、アノードオフガス(燃料電池のアノードから排出されるガス)排出部近傍に存在する酸素含有ガスが、アノードに侵入し、アノードの酸化劣化を引き起こすおそれもある。
【0011】
本発明の目的は、炭化水素系燃料を確実に改質しつつ、改質ガスによってアノードの酸化劣化を防止することができ、さらに、セル割れを防止することのできる間接内部改質型SOFCの停止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、次の間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法が提供される。
【0013】
(1)炭化水素系燃料を改質して改質ガスを製造する、改質触媒層を有する改質器と、
該改質ガスを用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池と、
該固体酸化物燃料電池から排出されるアノードオフガスを燃焼させる燃焼領域と、
該改質器、固体酸化物形燃料電池および燃焼領域を収容する筐体と、を有する間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法であって、
次の条件iからiv、
i)該固体酸化物燃料電池のアノード温度が定常であり、
ii)該アノード温度が酸化劣化点未満であり、
iii)改質器において、炭化水素系燃料が改質され、アノードに供給するのに適した組成の改質ガスが生成しており、
iv)前記改質ガスの生成量が、該固体酸化物燃料電池のアノード温度が酸化劣化点以上の温度にある場合においてアノードの酸化劣化を防止するために必要最小限な流量以上である、
が全て満たされる状態において改質器に供給される炭化水素系燃料の流量をFkEと表し、
段階的な炭化水素系燃料の流量Fk(j)を予め定めておき(ここでjは1以上M以下の整数であり、Mは2以上の整数である。)、ただし、Fk(j)はjの増加とともに減少し、Fk(j)のなかで最も小さいFk(M)はFkEと等しく、
停止方法開始時点で改質器に供給していた炭化水素系燃料の流量をFk0と表し、
該改質触媒層において流量Fk(j)の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件Tr(j)を予め知っておき(ここでjは1以上、M以下の整数)、
アノード温度が酸化劣化点を下回ったら改質器への炭化水素系燃料の供給を停止して該停止方法を終了し、
アノード温度が酸化劣化点を下回っていない間に以下の工程、
A)改質触媒層温度Tを測定し、この測定温度Tと、Tr(M)とを比較する工程、
B)工程AにおいてT<Tr(M)の場合に、次の工程B1〜B4を順次行なう工程、
B1)改質触媒層を昇温する工程、
B2)改質触媒層温度を測定し、この測定温度Tと、Tr(M)とを比較する工程、
B3)工程B2においてT<Tr(M)の場合に、工程B1に戻る工程、
B4)工程B2においてT≧Tr(M)の場合に、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFkEにし、工程Dに移る工程、
C)工程AにおいてT≧Tr(M)の場合に、
予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在しなければ、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFkEにし、工程Dに移り、
予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在すれば、次の工程C1〜C5を順次行なう工程、
C1)中間的流量のうちの最も大きいFk(j)を与えるjをJと表し、
改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFk(J)に減少させる工程、
C2)改質触媒層温度を測定し、この測定温度Tと、Tr(J)とを比較する工程、
C3)工程C2においてT>Tr(J)の場合に、工程C2に戻る工程、
C4)工程C2においてT≦Tr(J)の場合に、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk(J)からFk(J+1)に減少させ、Jを1増加させる工程、
C5)JとMを比較し、J≠Mであれば工程C2に戻り、J=Mであれば工程Dに移る工程、および
D)アノード温度が、酸化劣化点を下回るのを待つ工程
を有する間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法。
【0014】
(2)前記炭化水素系燃料が、炭素数が2以上の炭化水素系燃料を含む(1)記載の方法。
【0015】
(3)前記改質ガス中の、炭素数2以上の化合物の濃度が、質量基準で50ppb以下である(2)記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、炭化水素系燃料を確実に改質しつつ、改質ガスによってアノードの酸化劣化を防止することができ、さらに、セル割れを防止することのできる間接内部改質型SOFCの停止方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の形態について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0018】
〔間接内部改質型SOFC〕
図1に、本発明を実施することのできる間接内部改質型SOFCの一形態を模式的に示す。
【0019】
間接内部改質型SOFCは、炭化水素系燃料を改質して改質ガス(水素含有ガス)を製造する改質器3を有する。改質器は、改質触媒層4を有する。
【0020】
間接内部改質型SOFCは、上記改質ガスを用いて発電を行うSOFC6を有し、また、SOFC(特にはそのアノード)から排出されるアノードオフガスを燃焼させる燃焼領域5を有する。
【0021】
間接内部改質型SOFCは、改質器、固体酸化物形燃料電池および燃焼領域を収容する筐体8を有する。
【0022】
間接内部改質型SOFCは、筐体(モジュール容器)8およびその内部に含まれる設備をいう。
【0023】
図1に示した形態の間接内部改質型SOFCでは、アノードオフガスに着火するための着火手段であるイグナイター7が設けられており、また、改質器は電気ヒータ9を備える。
【0024】
各供給ガスは必要に応じて適宜予熱されたうえで改質器もしくはSOFCに供給される。
【0025】
間接内部改質型SOFCには、電気ヒータ2を備える水気化器1が接続され、その接続配管の途中に炭化水素系燃料を改質器に供給するための配管が接続される。水気化器1は電気ヒータ2による加熱によって水蒸気を発生する。水蒸気は水気化器においてもしくはその下流において適宜スーパーヒートしたうえで改質触媒層に供給することができる。
【0026】
また空気も改質触媒層に供給されるが、ここでは、空気を水気化器で予熱したうえで改質触媒層に供給できるようになっている。水気化器からは、水蒸気を得ることができ、また空気と水蒸気との混合ガスを得ることができる。
【0027】
水蒸気または空気と水蒸気との混合ガスは、炭化水素系燃料と混合されて改質器3、特にはその改質触媒層4に供給される。炭化水素系燃料として灯油等の液体燃料を用いる場合は、炭化水素系燃料を適宜気化したうえで改質触媒層に供給することができる。
【0028】
改質器から得られる改質ガスがSOFC6、特にはそのアノードに供給される。図示しないが、空気が適宜予熱されてSOFCのカソードに供給される。
【0029】
アノードオフガス(アノードから排出されるガス)中の可燃分がSOFC出口において、カソードオフガス(カソードから排出されるガス)中の酸素によって燃焼される。このために、イグナイター7を用いて着火することができる。アノード、カソードともその出口がモジュール容器8内に開口している。燃焼ガスは、モジュール容器から適宜排出される。
【0030】
改質器とSOFCが一つのモジュール容器に収容されモジュール化される。改質器はSOFCから受熱可能な位置に配される。例えば改質器をSOFCからの熱輻射を受ける位置に配置すれば、発電時にSOFCからの熱輻射によって改質器が加熱される。
【0031】
間接内部改質型SOFCにおいて、改質器は、SOFCから改質器の外表面へと直接輻射伝熱可能な位置に配することが好ましい。従って改質器とSOFCとの間には実質的に遮蔽物は配置しないこと、つまり改質器とSOFCとの間は空隙にすることが好ましい。また、改質器とSOFCとの距離は極力短くすることが好ましい。
【0032】
燃焼領域5において発生するアノードオフガスの燃焼熱によって、改質器3が加熱される。また、SOFCが改質器より高温である場合には、SOFCからの輻射熱によっても改質器が加熱される。
【0033】
さらに、改質による発熱によって改質器が加熱される場合もある。改質が部分酸化改質である場合、あるいは自己熱改質(オートサーマルリフォーミング)の場合であって水蒸気改質反応による吸熱より部分酸化改質反応による発熱の方が大きい場合、改質に伴って発熱する。
【0034】
〔改質停止可能状態〕
本明細書において、次の条件i〜ivの全てが満たされている状態を改質停止可能状態と呼ぶ。
i)SOFCのアノード温度が定常である。
ii)前記アノード温度が酸化劣化点未満である。
iii)改質器においてアノードに供給するのに適した組成の改質ガスが生成している。
iv)この改質ガスの生成量が、SOFCのアノード温度が酸化劣化点以上の温度にある場合においてアノードの酸化劣化を防止するために必要最小限な流量以上である。
【0035】
<条件iおよびii>
アノード温度は、アノード電極の温度を意味するが、アノード電極の温度を物理的に直接測定することが困難な場合には、アノード近傍のセパレータなどのスタック構成部材の温度とすることができる。アノード温度の測定位置は、安全制御の観点から相対的に温度が高くなる箇所、より好ましくは最も温度が高くなる箇所を採用することが好ましい。温度が高くなる位置は、予備実験やシミュレーションにより知ることができる。
【0036】
酸化劣化点は、アノードが酸化劣化する温度で、例えば、アノード材料の電気伝導度を還元性、または、酸化性ガス雰囲気下で温度を変えて直流4端子法で測定し、酸化性ガス雰囲気下での電気伝導度が還元性ガス雰囲気下での値より低くなる最低温度を酸化劣化点とすることができる。
【0037】
<条件iii>
条件iiiは、改質器において炭化水素系燃料が改質されており、アノードに供給するのに適した組成の改質ガスが得られている状態であることを意味している。例えば、炭化水素系燃料が炭素数2以上の炭化水素系燃料を含む場合、改質ガスが還元性であるとともに、改質ガス中のC2+成分(炭素数2以上の化合物)が炭素析出による流路閉塞やアノード劣化に対して問題にならない濃度以下である状態であることを意味している。このときのC2+成分の濃度は、改質ガス中の質量分率として50ppb以下が好ましい。
【0038】
<条件iv>
アノードの酸化劣化を防止するために必要最小限の改質ガス流量は、カソードオフガスのアノード出口からアノード内部への拡散によりアノード電極が酸化劣化しない流量のうち最も小さい流量である。この改質ガス流量は、アノード温度を酸化劣化点以上に保持した状態で、改質ガス流量を変えて実験やシミュレーションを行い、予め知っておくことができる。アノード酸化劣化は、例えば、実験でアノード電極の電気伝導度を測定し、酸化劣化していないアノード電極との比較により判断することができる。あるいは、移流拡散項を含む方程式を用いたシミュレーションによりアノードのガス組成分圧を計算し、アノード電極の酸化反応における平衡分圧との比較により判断することができる。例えば、アノード電極材料がNiの場合、次式で表されるアノード電極酸化反応における酸素の平衡分圧は800℃において1.2×10-14atm(1.2×10-9Pa)であり、この値よりアノードの酸素分圧の計算値が小さければ、アノード電極が酸化劣化しないと判断することができる。
【0039】
【化1】

【0040】
アノードの酸化劣化を防止するためにSOFCに供給する改質ガス流量(改質器で生成する改質ガスの量)は、改質ガスがSOFCを通過してアノードから排出された段階で燃焼可能であるような流量であるのが好ましい。燃焼可能な改質ガス流量のうち最も小さい流量が上記必要最小限の改質ガス流量より大きい場合、燃焼可能な改質ガス流量のうち最も小さい流量を、条件ivでいう「必要最小限の流量以上」の改質ガス流量とすることができる。燃焼可否は、例えば、燃焼ガス排出ライン中のガスを実験でサンプリングし組成分析を行う、あるいはシミュレーションで計算することで判断できる。
【0041】
改質停止可能状態において改質器(特には改質触媒層)に供給される炭化水素系燃料の流量をFkEと表す。
【0042】
FkEは、予め、実験もしくはシミュレーションによって求めることができる。改質器に供給する水蒸気改質または自己熱改質用の水(スチームを含む)流量、自己熱改質または部分酸化改質用の空気流量、カソード空気流量、バーナーに供給する燃料および空気流量、熱交換器に供給する水や空気などの流体の流量などの、間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量;ならびに改質器、水や液体燃料の蒸発器、SOFC、流体の供給配管などを加熱するための電気ヒータ出力、熱電変換モジュールなどから取り出される電気入力等の間接内部改質型SOFCへの電気入出力を変化させて、すなわち間接内部改質型SOFCの操作条件を変化させて、実験もしくはシミュレーションを行い、定常的に条件i〜ivを満たすFkEを探索することによって、FkEを知ることができる。FkEは条件i〜ivを満たす限り任意の値でよいが、熱効率の観点から最も小さいFkEを用いるのが好ましい。そのFkEを含む間接内部改質型SOFCの操作条件を改質停止可能状態の操作条件として予め定める。
【0043】
〔相異なる複数の炭化水素系燃料の流量Fk(j)〕
予め、相異なるM個の段階的な炭化水素系燃料流量Fk(j)を定める。ここでjは1以上、M以下の整数であり、Mは2以上の整数である。
【0044】
ただし、Fk(j)はjの増加とともに減少する。つまり、Fk(j)>Fk(j+1)である。また、Fk(j)のなかで最も小さいFk(M)はFkEと等しい値とする。
【0045】
予め定める段階的な燃料流量Fk(j)のなかで最も大きい燃料流量すなわちFk(1)は、停止方法開始時点までに供給する燃料流量のうちの最大値以上とするのが好ましい。
【0046】
段階的な燃料流量Fk(j)は、例えば、等間隔になるよう設定することができる。
【0047】
改質ガスの急激な流量減少により、カソードオフガスがアノード出口からアノード内部へ急激に流入および拡散してアノード電極が酸化劣化することを優れて防止する観点から、Mはできるだけ大きくし、Fk(j)同士の間隔を小さくすることが好ましい。例えば、流量制御手段のメモリ消費の許容範囲内、かつ、昇圧手段および流量制御・計測手段の精度を超える間隔となる範囲で、できるだけMを大きくし、Fk(j)の間隔を小さくすることができる。
【0048】
停止方法開始時点で改質器に供給していた炭化水素系燃料の流量をFk0と表す。
【0049】
本発明では、改質触媒層において流量がFk(j)である炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件Tr(j)を予め知っておく(ここでjは1以上、M以下の整数)。この温度条件Tr(j)は、予備実験やシミュレーションにより、知ることができる。例えば、改質触媒層の温度と炭化水素系燃料の流量を変えて、触媒層出口ガス中に含まれるC2+成分の濃度を分析あるいは計算し、C2+成分の濃度が50ppb以下となる最大の炭化水素系燃料と改質触媒層の温度の組み合わせ(Fk(j)とTr(j)の組合わせ)を求めることにより知ることができる。このとき、改質触媒層では停止方法開始後に行なう種類の改質法を行なうものとする(以下場合により、改質法の種類を、改質タイプとよぶ。)。改質タイプは、例えば水蒸気改質、自己熱改質、部分酸化改質である。
【0050】
具体的には、停止方法の開始前に或る種類の改質を行なっていた場合に、それと同じ種類の改質を停止方法の開始後に行なうことができる。この場合は、改質器でその種類の改質を行なう場合の、改質触媒層において流量Fk(j)の炭化水素系燃料を改質可能な温度条件をTr(j)とする。例えば停止方法の開始前に水蒸気改質を行なっていた場合に、停止方法の開始後にも引き続き水蒸気改質を行なうことができ、改質器で水蒸気改質を行なう場合に、流量Fk(j)の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件をTr(j)とする。
【0051】
あるいは、停止方法の開始前に或る種類の改質(第一の種類の改質)を行なっていた場合に、それと異なる種類の改質(第二の種類の改質)を停止方法の開始後に行なうことができる。この場合は、改質器で第二の種類の改質を行なう場合の、流量Fk(j)の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件をTr(j)とする。例えば停止方法の開始前に自己熱改質を行なっていた場合に、停止方法の開始後に水蒸気改質に切り替えることができる。このとき、水蒸気改質を行なう場合に、流量Fk(j)の炭化水素系燃料を改質触媒層において改質可能な改質触媒層の温度条件をTr(j)とする。
【0052】
本発明では、改質触媒層に供給する炭化水素系燃料の流量を決めるために、改質触媒層温度の実測値と前記温度条件Tr(j)とを比較する。このために、改質触媒層温度を測定する。例えば、改質触媒層温度を監視する(継続して測定する)ことができる。
【0053】
停止方法開始より前から改質触媒層の温度監視を行なっている場合は、そのまま継続して温度監視を行なえばよい。
【0054】
アノード温度が酸化劣化点を下回ってしまえば、還元性ガスは不要となるので、改質器への炭化水素系燃料の供給を停止し、停止方法を終了することができる。したがって、改質触媒層の温度監視はアノード温度が酸化劣化点を下回るまで継続して行なえばよい。
【0055】
改質触媒層温度の測定のために、熱電対等の適宜の温度センサーを用いることができる。
【0056】
本発明においては、アノード温度が酸化劣化点を下回っていない間に以下の工程A〜Dを行なう。アノード温度が酸化劣化点を下回ったら、工程A〜Dの実施状況にかかわらず、改質器への炭化水素系燃料の供給を停止し、停止方法を終了することができる。改質器への炭化水素系燃料の供給停止にあわせて、改質器に供給する水蒸気改質または自己熱改質用の水(スチームを含む)、自己熱改質または部分酸化改質用の空気、カソード空気、バーナーに供給する燃料および空気、熱交換器に供給する水や空気などの流体などの、間接内部改質型SOFCに供給する流体の供給、改質器および水や液体燃料の蒸発器、セルスタック、流体の供給配管などを加熱するための電気ヒータ出力、熱電変換モジュールなどから取り出される電気入力などの、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力を停止することができる。
【0057】
図9は本発明の停止方法における工程A〜Dを示すフローチャートである。このフローチャートに示した手順とは別に、アノード温度を監視し、アノード温度がアノードの酸化劣化点を下回った場合には、工程A〜Dに係わらず、改質器への炭化水素系燃料の供給を停止する。
【0058】
〔工程A〕
本発明に係る停止方法において、まず改質触媒層温度Tを測定する。そして、この温度Tと、Tr(M)との大小関係を比較する。Tr(M)は、流量がFk(M)である炭化水素系燃料を改質触媒層において改質可能な改質触媒層の温度条件である。Fk(M)はFkEに等しいので、Tr(M)は、流量がFkEである炭化水素系燃料を改質触媒層において改質可能な改質触媒層の温度条件であるということもできる。
【0059】
〔工程B〕
工程Aにおいて、T<Tr(M)の場合、次の工程B1〜B4を順次行なう。なお、「T<Tr(M)」は、流量がFk(M)すなわちFkEである炭化水素系燃料を、改質器において(改質タイプを変更する場合は変更後の改質タイプによって)改質できないことを意味していると解釈できる。
【0060】
・工程B1
まず工程B1を行なう。すなわち、改質触媒層を昇温する工程を行なう。
【0061】
例えば改質器に付設したヒータやバーナなどの適宜の熱源を用い、改質触媒層を昇温する。
【0062】
・工程B2
そして、工程B2を行なう。すなわち、改質触媒層温度Tを測定し、このTとTr(M)とを比較する工程を行なう。
【0063】
・工程B3
工程B2においてT<Tr(M)の場合には、工程B1に戻る工程を行なう。つまり、T<Tr(M)となる間は、工程B1〜B3を繰り返して行なう。この間に改質触媒層の温度は上昇してゆく。
【0064】
・工程B4
工程B2においてT≧Tr(M)の場合には、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量(Fkと表す)をFk0からFkEにし、工程Dに移る工程を行なう。「T≧Tr(M)」は、流量がFk(M)すなわちFkEである炭化水素系燃料を改質触媒層において(改質タイプを変更する場合は変更後の改質タイプによって)改質可能であることを意味すると解釈できる。
【0065】
このとき、停止方法開始前後で改質タイプを変更する場合は、燃料流量をFk0からFkEにするとともに改質タイプを変更する。この方法により、炭化水素系燃料を確実に改質しつつ、改質ガスによってアノードの酸化劣化を防止することができる。
【0066】
なお、工程B2およびB3を行なうにあたり、工程B1の昇温をいったん停止してもよいが、工程B2およびB3を行なう間、工程B1を継続してもよい。
【0067】
〔工程C〕
工程AにおいてT≧Tr(M)の場合に、予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在しなければ、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFkEにし、工程Dに移る。このとき、停止方法開始前後で改質タイプを変更する場合は、燃料流量をFk0からFkEにするとともに改質タイプを変更することができる。
【0068】
なお、中間的流量は、予め定めたM個のFk(j)のうち、FkE<Fk(j)<Fk0を満たすものをいう。中間的流量が存在する場合と存在しない場合とがある。中間的流量が存在しない場合として、Fk0がFkE以下である場合、Fk0がFkEより大きく、Fk(M−1)以下である場合などがある。
【0069】
一方、工程AにおいてT≧Tr(M)の場合に、予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在すれば、次の工程C1〜C5を順次行なう。
【0070】
・工程C1
中間的流量のうちの最も大きいFk(j)を与えるjをJと表し、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFk(J)に減少させる。このとき、停止方法開始前後で改質タイプを変更する場合は、炭化水素系燃料の流量FkをFk0からFk(J)に減少させるとともに、改質タイプを変更する。
【0071】
・工程C2
改質触媒層温度Tを測定し、この測定温度TとTr(J)とを比較する。
【0072】
・工程C3
工程C2においてT>Tr(J)の場合に、工程C2に戻る。つまり、T>Tr(J)の間は、工程C2およびC3を繰り返して行なう。この間に、改質触媒層温度は低下してゆく。したがって、いずれはT≦Tr(J)となる。
【0073】
・工程C4
工程C2においてT≦Tr(J)の場合に、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk(J)からFk(J+1)に減少させ、Jを1増加させる。「T≦Tr(J)」は、流量Fk(J)の炭化水素系燃料を、改質器で改質しきれなくなることを意味すると解釈できる。
【0074】
・工程C5
J(工程C4で1増加させた後の値)とMを比較し、J≠Mであれば工程C2に戻り、J=Mであれば工程Dに移る。
【0075】
例えば、M=3の場合、つまり相異なる3個のFk(j)を予め設定した場合であって、中間的流量としてFk(1)およびFk(2)が存在した場合を考え、Fk0>Fk(1)>Fk(2)>FkE=Fk(3)が成り立つとする。このとき、中間的流量のうちの最も大きいFk(j)はFk(1)であり、Fk(1)を与えるjは1であるので、J=1とし、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量FkをFk0からFk(J)すなわちFk(1)にする(工程C1)。T≦Tr(J)すなわちT≦Tr(1)となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量を、Fk(J)すなわちFk(1)から、Fk(J+1)すなわちFk(2)にし、Jに1を加えてJ=2とする(工程C4)。Jが2でありMが3である。この段階ではJ≠Mであるので、工程C2に戻る(工程C5)。改質触媒層温度Tの測定およびそのTとTr(J)との比較を行ない、T≦Tr(J)すなわちT≦Tr(2)となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk(J)すなわちFk(2)から、Fk(J+1)すなわちFk(3)にし、Jに1を加えてJ=3とする(工程C4)。この段階でJが3でありMが3であるので、工程Dに移る(工程C5)。
【0076】
あるいは、例えば、M=4の場合、つまり相異なる4個のFk(j)を設定した場合であって、中間的流量としてFk(2)およびFk(3)が存在した場合を考え、Fk(1)≧Fk0>Fk(2)>Fk(3)>FkE=Fk(4)が成り立つとする。このとき、中間的流量のうちの最も大きいFk(j)はFk(2)であり、Fk(2)を与えるjは2であるので、J=2とし、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量FkをFk0からFk(J)すなわちFk(2)にする(工程C1)。T≦Tr(J)すなわちT≦Tr(2)となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量を、Fk(J)すなわちFk(2)から、Fk(J+1)すなわちFk(3)にし、Jに1を加えてJ=3とする(工程C4)。Jが3でありMが4である。この段階ではJ≠Mであるので、工程C2に戻る(工程C5)。改質触媒層温度Tの測定およびTとTr(J)との比較を行ない、T≦Tr(J)すなわちT≦Tr(3)となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk(J)すなわちFk(3)から、Fk(J+1)すなわちFk(4)にし、Jに1を加えてJ=4とする(工程C4)。この段階でJが4でありMが4であるので、工程Dに移る(工程C5)。
【0077】
このように、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量を、Fk0からFkEまで一気に変更するのではなく、中間的流量のうちの改質可能な流量を介して燃料流量をFk0からFkEまで、徐々に減少させることができるので、確実に改質を行いながら、セル割れやアノード劣化を防止することができる。
【0078】
なお、停止方法開始時点において、改質器に供給される炭化水素系燃料(流量がFk0である)は確実に改質されていることが前提である。そうでないと、停止方法を開始する時点以前で未改質の炭化水素系燃料が改質器から排出されていることになり、不具合が起きていることになる。このような事態を避けるべきであることは当然である。したがって停止方法開始前後で改質タイプを変更しない場合は、停止方法開始時点において、Fk0より小さい中間的流量の炭化水素系燃料は必然的に改質可能である。
【0079】
停止方法開始前後に改質タイプを変更する場合は、停止方法開始時点(未だ改質タイプは変更されていない時点)において改質器に供給される炭化水素系燃料(流量がFk0である)が確実に改質されていたとしても、改質タイプ変更後に行なう改質タイプでは流量がFk0である炭化水素系燃料が確実に改質されるとは限らない。したがって、停止方法開始時点において、変更後の改質タイプによって中間的流量の炭化水素系燃料が改質可能であるとは限らない。
【0080】
このような場合に備え、停止方法開始前後に改質タイプを変更する場合は、次のような工程C0を行なうことができる。
【0081】
・工程C0
工程Cにおいて、予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在した場合に、工程C1を行なう前に、工程C0を行なうことができる。
【0082】
工程C0:中間的流量Fk(j)のうち、対応するTr(j)が改質触媒層の実測温度T以下である中間的流量が存在するかどうかを調べ、存在すれば工程C1〜C5を順次行ない、存在しない場合は改質器に供給する炭化水素系燃料の流量FkをFk0からFkEにするとともに改質タイプを変更し、工程Dに移る工程。
【0083】
工程C0において、対応するTr(j)が改質触媒層の実測温度T以下である中間的流量が存在しないということは、改質タイプ変更後に、改質可能な中間的流量が存在しないことを意味すると解釈でき、換言すれば、採用すべき中間的流量が存在しないことを意味すると解釈できる。したがって、このような場合には、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFkEにするとともに改質タイプを変更する。
【0084】
〔工程D〕
工程Dでは、アノード温度が、酸化劣化点を下回るのを待つ。この間、炭化水素系燃料の流量はFkEに維持し、改質器に供給する水蒸気改質または自己熱改質用の水(スチームを含む)流量、自己熱改質または部分酸化改質用の空気流量、カソード空気流量、バーナーに供給する燃料および空気流量、熱交換器に供給する水や空気などの流体の流量などの、間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量、改質器および水や液体燃料の蒸発器、セルスタック、流体の供給配管などを加熱するための電気ヒータ出力、熱電変換モジュールなどから取り出される電気入力などの、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力を、予め定めた改質停止可能状態における操作条件に維持する。すなわち、予め定めた改質停止可能状態における間接内部改質型SOFCの操作条件に維持する。アノード温度は時間とともに低下していくので、いずれアノード温度が酸化劣化点を下回る。熱電対等の温度センサーを用いて、アノード温度を適宜監視する(継続して測定する)ことができる。
【0085】
アノード温度の監視は、停止方法を開始してすぐに開始することが好ましい。停止方法開始前からこれらの温度監視を行っていれば、停止方法を行う際にも、そのまま温度監視を続ければよい。
【0086】
アノード温度が酸化劣化点を下回ったら改質器への炭化水素系燃料の供給を停止して該停止方法を終了することができる。
【0087】
〔ケース1〕
図2を用いて、工程Aにおいて測定した改質触媒層温度Tが、Tr(M)以上であって、かつ、中間的流量が1つ存在するケースについて説明する。つまり、工程Bは行なわず、工程C特には工程C1〜C5を行なうケースについて説明する。
【0088】
このケースでは、M=2であり、すなわち予めFk(1)およびFk(2)を定めておく(Fk(2)はFkEに等しい)。また、停止方法を開始する時点における炭化水素系燃料の流量Fk0が、Fk(1)より大きいことを想定している。したがって、Fk0>Fk(1)>Fk(2)=FkEである。
【0089】
図2(a)および(b)において、横軸は本発明の停止方法を開始した時点からの経過時間である。同図(a)において縦軸は温度であり、(b)において縦軸は、炭化水素燃料の流量(改質器に供給する炭化水素系燃料の流量Fk)である。図3〜8においても基本的には同様であるが、縦軸が温度のグラフを省略した図もある。
【0090】
図2に示すように、停止方法を開始して直ぐに工程Aを行なう。つまり、改質触媒層温度Tを測定し、このTと、Tr(M)すなわちTr(2)とを比較する。このとき、T≧Tr(M)であるので、中間的流量が存在するかどうか調べる。
【0091】
予め定めた段階的な燃料流量Fk(1)およびFk(2)のうちに、Fk0より小さく、FkEすなわちFk(2)より大きいFk(j)すなわちFk(1)が存在する。
【0092】
よって工程C1において、中間的流量はFk(1)だけなので、中間的流量のうちの最も大きいものはFk(1)であり、Fk(1)を与えるjは1である。よって、J=1であり、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFk(J)すなわちFk(1)に減少させる。
【0093】
次いで工程C2において、改質触媒層温度Tを測定し、このTと、Tr(J)すなわちTr(1)とを比較する。
【0094】
停止方法開始当初はTはTr(1)より大きいので、工程C3に従って工程C2を再び行なう。しばらくの間、工程C2およびC3が繰り返されるが、その間に改質触媒層温度Tは時間とともに低下してゆく。
【0095】
改質触媒層温度TがTr(1)以下となったら、工程C4に従って、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量を、Fk(J)からFk(J+1)に減少させる。つまり、Fk(1)から、Fk(2)すなわちFkEに減少させる。そして、Jに1加えて、J=2とする。
【0096】
次いで、工程C5に従い、JとMを比較する。J=2となっており、M=2なので、工程Dに移る。
【0097】
工程Dにおいて、アノード温度が酸化劣化点を下回るのを待つ。
【0098】
アノード温度が酸化劣化点未満となれば、改質器への炭化水素系燃料の供給を停止して、停止方法を終了する。
【0099】
停止方法開始前後に改質タイプを変更する場合は、工程C1において、炭化水素系燃料の流量をFk0からFk(1)に減少させるとともに改質タイプを変更する。改質タイプを変更しない場合は、図2のとおり、停止方法開始時点において、流量がFk0である炭化水素系燃料を改質することが可能となっている。従って、中間的流量(Fk0より小さい)の炭化水素系燃料は改質可能である(T>Tr(1))。しかし、改質タイプを変更する場合は、そうでない可能性もある。すなわち、中間的流量(Fk0より小さい流量)であっても、第二の種類の改質で改質可能な温度条件が触媒層温度Tより大きい可能性もある。つまり、改質タイプ変更後に流量Fk(1)の炭化水素系燃料を改質可能でない場合も考えられる。このような場合に備え、工程Cにおいて中間的流量が存在するかどうか判定した後、工程C1より前に、工程C0を行なうことができる。
【0100】
図2に示したケースにおいて、工程C0を行なう場合は、工程Cにおいて中間的流量Fk(1)が存在することを確認した後、対応するTr(j)が改質触媒層の実測温度T以下である中間的流量が存在するかどうかを調べる。Tr(1)はT以下であるので、このような中間的流量が存在する。よって上述のとおり、工程C1〜C5を行なう。
【0101】
〔ケース2〕
本発明においては、いかなる時点においても、アノード温度が酸化劣化点未満となれば、改質器への炭化水素系燃料供給を停止し、停止方法を終了することができる。このような場合について、図3を用いて説明する。図3では、図2と対比して示してあり、従って、M=2とし、段階的流量Fk(1)およびFk(2)を予め定め、Fk0>Fk(1)>Fk(2)=FkEであるものとする。
【0102】
まず、工程Aで改質触媒層温度Tを測定し、そのTと、Tr(M)すなわちTr(2)とを比較する。工程CでTがTr(1)以下となる前に、アノード温度が酸化劣化点未満になるので、その時点で改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をゼロにする。すなわちこの場合、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk(1)からFk(2)すなわちFkEに減少させてjを1増加させて2とする工程は、行わなくてよい。
【0103】
〔ケース3〕
図4を用いて、停止方法開始前後で改質タイプを変更する場合について説明する。停止方法開始前に行なっていた改質タイプ(第一の改質タイプ)と、停止方法開始後に行なう改質タイプ(第二の改質タイプ)は異なるものとする(改質タイプの変更は工程C1にて行なう)。ケース1と同様、このケースでも、M=2であり、すなわち予めFk(1)およびFk(2)を定めておく(Fk(2)はFkEに等しい)。また、停止方法を開始する時点における炭化水素系燃料の流量Fk0が、Fk(1)より大きいことを想定している。したがって、Fk0>Fk(1)>Fk(2)=FkEであるものとする。
【0104】
図4に示したケースでは、工程Aで、改質触媒層温度Tの測定およびTとTr(M)との比較を行ない、T≧Tr(M)=Tr(2)であるので、工程Cに移る。存在する中間的流量はFk(1)だけである。
【0105】
このとき、工程C0を行なって、対応するTr(j)が改質触媒層の実測温度T以下である中間的流量が存在するかどうか調べることができる。中間的流量Fk(1)に対応するTr(1)はT以下なので、工程C1〜C5を行なうことができる。
【0106】
次いで図2に示したケースと同様工程C1以降を行なう。このケースのように、改質タイプを切り替える場合であっても、中間的流量のうちに、対応するTr(j)が改質触媒層の実測温度T以下である流量があれば、図2の場合と同様、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFk(1)に減少させることができる。この場合、燃料流量をFk0からFk(1)に減少させるとともに改質タイプを変更する。
【0107】
すなわち、停止方法開始前後で改質タイプを変更しない場合であって中間的流量としてFk(1)が存在する場合、改質触媒層温度は、流量がFk0である炭化水素系燃料を改質触媒層において改質可能な改質触媒層の温度条件以上となっているべきであるので、必然的にT≧Tr(1)であるが、停止方法開始前後で改質タイプを変更する場合も、T≧Tr(1)であれば、中間的流量を介して徐々に燃料流量を減少させることができる。
【0108】
〔ケース4〕
図5を用いて、工程Aにおいて改質触媒層の測定温度がTr(M)以上(T≧Tr(M
))であって、予め定めた段階的な燃料流量Fk(j)のうち、中間的流量が2つある場合について、説明する。この場合は、M=3であり、予め段階的流量Fk(1)、Fk(2)およびFk(3)を定めておく。Fk(3)はFkEと等しくする。Fk0>Fk(1)>Fk(2)>Fk(3)=FkEであるものとする。
【0109】
停止方法を開始して、直ぐに工程Aで改質触媒層温度Tを測定し、Tr(M)すなわちTr(3)と、このTとを比較する。。
【0110】
このTはTr(M)以上なので、工程Bは行なわず、工程Cを行なう。
【0111】
工程Cで、中間的流量Fk(1)およびFk(2)が存在することが確認できる。
【0112】
よって工程C1を行なう。中間的流量のうち最も大きいFk(j)はFk(1)である。Fk(1)を与えるjは1なのでJ=1とし、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量FkをFk0からFk(1)に減少させる。
【0113】
次いで工程C2にて改質触媒層温度Tの測定およびこのTとTr(J)との比較を行なう。このTが、Tr(J)すなわちTr(1)より大きい間は工程C2に戻る(工程C3)。
【0114】
工程C2の比較において、TがTr(1)以下となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量を、Fk(J)からFk(J+1)に減少させ、Jを1増やす。すなわち、Fk(1)からFk(2)にし、次いでJ=2とする(工程C4)。
【0115】
次いで、工程C5に従い、J=2、M=3なので、工程C2に戻る。工程C2〜C5を繰り返すが、二度目に行なう工程C5においては、J=M=3となるので、工程Dに移る。
【0116】
工程Dにおいて、アノード温度が酸化劣化点を下回るのを待ち、アノード温度が酸化劣化点を下回ったら改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をゼロにし、停止方法を終了することができる。
【0117】
もちろんこの場合も、TがTr(2)以下となる前、さらにはTr(1)以下となる前に、アノード温度が酸化劣化点を下回れば、その時点で改質器への炭化水素系燃料供給を停止し、停止方法を終了すればよい。
【0118】
図2に示したケースでは段階的流量を2つ設定したが、このケースでは段階的流量を3つ設定している。従って、このケースの方が、炭化水素系燃料の流量を少量ずつ減少させることができる。このため、改質ガスの急激な流量減少により、カソードオフガスがアノード出口からアノード内部へ急激に流入および拡散してアノード電極が酸化劣化する可能性をより一層低減でき好ましい。
【0119】
〔ケース5〕
図6を用いて、停止方法開始前後で改質タイプを変更する場合において、工程C0を行なう場合について説明する。
【0120】
ここでは、M=2とし、段階的流量Fk(1)およびFk(2)を予め定める。Fk0>Fk(1)>Fk(2)=FkEであるものとする。
【0121】
停止方法開始後、直ぐに工程Aを行い、改質触媒層温度Tの測定およびこのTとTr(M)すなわちTr(2)との比較を行なう。T≧Tr(M)なので、工程Bは行なわず、工程Cを行なう。
【0122】
工程Cにおいて、予め定めた段階的な燃料流量Fk(j)のうち、中間的流量(Fk(1))が存在する。
【0123】
工程C0において、T<Tr(1)であるので、対応するTr(j)がT以下である中間的流量は存在しないと判断される。従って、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量FkをFk0からFkEに減少させるとともに、改質タイプを変更し、工程Dに移る。
【0124】
その後は、アノード温度が酸化劣化点を下回った時点で、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をゼロにし、停止方法を終了することができる。
【0125】
〔ケース6〕
図7を用いて、工程Cにおいて、予め定めた段階的な燃料流量Fk(j)のうちに中間的流量がないと判断される場合について説明する。
【0126】
ここでは、M=2とし、段階的流量Fk(1)およびFk(2)を予め定める。Fk(1)>Fk0>Fk(2)=FkEであるものとする。
【0127】
停止方法開始後、直ぐに工程Aを行い、改質触媒層温度Tの測定およびこのTとTr(M)すなわちTr(2)との比較を行なう。T≧Tr(M)なので、工程Bは行なわず、工程Cを行なう。
【0128】
工程Cにおいて、中間的流量が存在するかどうか調べるが、このケースでは中間的流量が存在しない。
【0129】
この場合は、図7に示すように、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量Fkを、Fk0からFkEにする。そして工程Dに移り、アノード温度が酸化劣化点未満となるのを待つ。
【0130】
停止方法開始前後に改質タイプを変更する場合は、燃料流量をFk0からFkEにするとともに改質タイプを変更する。
【0131】
アノード温度が酸化劣化点未満となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をゼロにし、停止方法を終了することができる。
【0132】
〔ケース7〕
図8を用いて、工程Aにおいて改質触媒層の測定温度Tが、Tr(M)より小さい場合、すなわちT<Tr(M)の場合について説明する。つまり、工程Bを行なう場合について説明する。
【0133】
ここでは、M=2とし、段階的流量Fk(1)およびFk(2)を予め定める。Fk(1)>Fk(2)=FkE>Fk0であるものとする。
【0134】
停止方法開始後、直ぐに工程Aを行い、改質触媒層温度Tの測定およびこのTとTr(M)すなわちTr(2)との比較を行なう。T<Tr(M)なので、工程Cは行なわず、工程Bを行なう。
【0135】
この場合は、図8に示すように、流量FkEの炭化水素系燃料を改質できるよう、T≧Tr(M)となるまで改質器に付設したバーナやヒータなどの適宜の熱源で改質触媒層を昇温する。
【0136】
T≧Tr(M)となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量Fkを、Fk0からFkEにする。停止方法開始前後に改質タイプを変更する場合は、燃料流量をFk0からFkEにするとともに改質タイプを変更する。
【0137】
そして、工程Dに移り、アノード温度が酸化劣化点を下回るまで待つ。
【0138】
アノード温度が酸化劣化点未満となったら、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をゼロにし、停止方法を終了することができる。
【0139】
なお、本明細書において、改質触媒層においてある流量の炭化水素系燃料が改質可能であるとは、その流量の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給した場合に、改質触媒層から排出されるガスの組成が、SOFCのアノードに供給するに適した組成になることをいう。
【0140】
例えば、改質触媒層において改質可能であるとは、供給した炭化水素系燃料がC1化合物(炭素数1の化合物)まで分解されうることとすることができる。すなわち、改質触媒層出口ガスにおけるC2+成分(炭素数が2以上の成分)が炭素析出による流路閉塞やアノード劣化に対して問題にならない濃度以下である組成になるまで改質触媒層において改質が進みうる場合を意味する。このときのC2+成分の濃度は、改質ガス中の質量分率として50ppb以下が好ましい。そしてこのとき、改質触媒層出口ガスが還元性になっていればよい。改質触媒層出口ガス中に、メタンが含まれることは許容される。炭化水素系燃料の改質においては、通常、平衡論上メタンが残留する。改質触媒層出口ガス中に、メタン、COあるいはCO2の形で炭素が含まれていても、必要に応じてスチームを添加することで炭素析出を防止することができる。炭化水素系燃料としてメタンを用いる場合は、改質触媒層出口ガスが還元性になるように、改質が進めばよい。
【0141】
改質触媒層出口ガスの還元性については、このガスがアノードに供給されても、アノードの酸化劣化を抑えられる程度であればよい。このために、例えば、改質触媒層出口ガスに含まれる酸化性のO2、H2O、CO2などの分圧をアノード電極の酸化反応における平衡分圧より低くすることができる。例えば、アノード電極材料がNiで、アノード温度が800℃のとき、改質触媒層出口ガスに含まれるO2分圧を1.2×10-14atm(1.2×10-9Pa)未満、H2に対するH2Oの分圧比を1.7×102未満、COに対するCO2の分圧比を1.8×102未満とすることができる。
【0142】
〔改質触媒層温度の測定個所〕
以下、改質触媒層温度の測定個所について詳述する。この測定個所は、流量がFk(j)の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件Tr(j)を予め知る際、および、工程A〜Cにおいて改質触媒層の温度を測定する際、に採用できる。
【0143】
<温度測定点が1点である場合>
・温度測定個所
改質触媒層の温度測定点が一点である場合、改質可能流量の算出に用いる温度の測定個所としては、安全側制御の観点から、好ましくは改質触媒層の中で相対的に温度が低くなる箇所、より好ましくは改質触媒層の中で最も温度が低くなる個所を採用することが好ましい。改質触媒層における反応熱が吸熱である場合、温度測定個所として、触媒層中心付近を選ぶことができる。改質触媒層における反応熱が発熱であり、放熱によって中心部より端部の方が低温になる場合、温度測定個所として、触媒層端部を選ぶことができる。温度が低くなる位置は、予備実験やシミュレーションにより知ることができる。
【0144】
<温度測定点が複数点である場合>
温度の測定点は一点である必要はない。より正確に改質触媒層における改質可能流量を算出するためには、温度測定点が2点以上であることが好ましい。例えば、改質触媒層の入口温度と出口温度を測定し、これらを平均した温度を前述の改質触媒層温度Tとすることができる。
【0145】
あるいは例えば、改質触媒層をN分割した領域Zi(Nは2以上の整数、iは1以上N以下の整数)を考え、各分割領域Ziの温度Tiを知り、改質触媒層において流量がFk(j)である炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件Tr(j)(={Tr(j)1,Tr(j)2,・・・,Tr(j)N})を予め知っておくことができる。この際、TiのうちいずれかがTr(j)i以下となったら、Fk(j)をFk(j+1)に減少させればよい。
【0146】
N個の分割領域Ziを考える場合、全ての分割領域の温度を温度条件としてもよく、あるいはN個の分割領域のうちの一部の分割領域の温度を温度条件としてもよい。炭化水素系燃料供給量に応じて、温度条件とする触媒層領域を適宜変えることもできる。
【0147】
分割領域Ziの温度としては、実際に測定した温度をそのまま用いることもできるが、分割領域の入口温度と出口温度との平均値など、適宜計算した値を代表値として用いることもできる。
【0148】
また、全ての分割領域Ziについて、温度を測定する必要はない。また触媒層分割数Nと温度測定点数は無関係に設定することができる。
【0149】
N個の分割領域のうちの一部について温度を測定し、残りの分割領域については、測定した温度から適宜補完することによって温度を知ることもできる。
【0150】
例えば、温度センサーを設置していない分割領域の温度として、その分割領域に最も近い分割領域の温度を用いることができる。最も近い分割領域が二つある場合には、二つのうちのいずれかの分割領域の温度を用いることもできるし、二つの分割領域の温度の平均値を用いることもできる。
【0151】
分割領域とは無関係に改質触媒層の複数点(ガス流通方向に相異なる位置にある)の温度を測定し、測定した複数点の温度から、各分割領域の温度を知ることもできる。例えば、改質触媒層の入口および出口の温度を測定し(さらに中間部の任意の個所の温度を測定してもよい)、これら測定温度から最小二乗法等の近似法によって改質触媒層の温度を補間し、その補間曲線から分割領域の温度を知ることができる。
【0152】
(温度の測定個所の例)
全ての分割領域の温度を知るために、次のような個所の温度を計測することができる。
・各分割領域の入口および出口。
・各分割領域内部(入口および出口より内側)(1点もしくは複数点)。
・各分割領域の入口、出口および内部(一つの分割領域について1点もしくは複数点)。
【0153】
一部の分割領域の温度を知るために、次のような個所の温度を計測することができる。
・一部の分割領域の入口および出口。
・一部の分割領域内部(入口および出口より内側)(1点もしくは複数点)。
・一部の分割領域の入口、出口および内部(一つの分割領域について1点もしくは複数点)。
【0154】
〔その他〕
炭化水素系燃料の流量FkをFkEにする際に、必要に応じ、これにあわせて改質器に供給する水蒸気改質または自己熱改質用の水(スチームを含む)流量、自己熱改質または部分酸化改質用の空気流量、カソード空気流量、バーナーに供給する燃料および空気流量、熱交換器に供給する水や空気などの流体の流量などの、間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量、改質器および水や液体燃料の蒸発器、セルスタック、流体の供給配管などを加熱するための電気ヒータ出力、熱電変換モジュールなどから取り出される電気入力などの、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力を、予め定めた改質停止可能状態における操作条件にする。すなわち、予め定めた改質停止可能状態における間接内部改質型SOFCの操作条件に設定する。
【0155】
工程C1および工程C4で、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量を変更する際、上記と同様必要に応じ、これにあわせて間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力を、予め定めた操作条件にすることができる。例えば、改質器に供給する水流量については、炭素析出抑制のため、スチーム/カーボン比(改質触媒層に供給されるガス中の炭素原子モル数に対する水分子モル数の比)が所定の値を維持するよう、燃料流量の減少に伴い水流量を減少させることができる。改質器に供給する空気流量については、酸素/カーボン比(改質触媒層に供給されるガス中の炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比)が所定の値を維持するよう、燃料流量の減少に伴い空気流量を減少させることができる。改質器に供給する水および空気以外の間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力については、予め定めた改質停止可能状態における操作条件にする、あるいは、燃料流量の関数として予め定めた操作条件にすることができる。
【0156】
改質タイプを変更する際、上記と同様必要に応じ、これにあわせて間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力を、予め定めた操作条件にすることができる。例えば、改質器に供給する水流量については、炭素析出抑制のため、予め定めたスチーム/カーボン比となる流量に変更することができる。改質器に供給する空気流量については、予め定めた酸素/カーボン比となる流量に変更することができる。改質器に供給する水および空気以外の間接内部改質型SOFCに供給する流体の流量、間接内部改質型SOFCへの電気の入出力については、予め定めた改質停止可能状態における操作条件にする、あるいは、燃料流量の関数として予め定めた操作条件にすることができる。
【0157】
水蒸気改質反応を行う場合、つまり水蒸気改質もしくはオートサーマルリフォーミングを行う場合には、改質触媒層にスチームを供給する。部分酸化改質反応を行う場合、つまり部分酸化改質もしくはオートサーマルリフォーミングを行う場合には、改質触媒層に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスとしては、酸素を含有するガスを適宜用いることができるが、入手容易性から空気が好ましい。
【0158】
本発明は、炭化水素系燃料の炭素数が2以上の場合に特に有効である。このような燃料の場合、特に、確実な改質が求められるからである。
【0159】
〔炭化水素系燃料〕
炭化水素系燃料としては、改質ガスの原料としてSOFCの分野で公知の、分子中に炭素と水素を含む(酸素など他の元素を含んでもよい)化合物もしくはその混合物から適宜選んで用いることができ、炭化水素類、アルコール類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等の炭化水素燃料、また、メタノール、エタノール等のアルコール、ジメチルエーテル等のエーテル等である。
【0160】
なかでも灯油やLPGは、入手容易であり好ましい。また独立して貯蔵可能であるため、都市ガスのラインが普及していない地域において有用である。さらに、灯油やLPGを利用したSOFC発電装置は、非常用電源として有用である。特には、取り扱いも容易である点で、灯油が好ましい。
【0161】
〔改質器〕
改質器は、炭化水素系燃料から水素を含む改質ガスを製造する。
【0162】
改質器においては、水蒸気改質、部分酸化改質、および、水蒸気改質反応に部分酸化反応が伴うオートサーマルリフォーミングのいずれを行ってもよい。
【0163】
改質器には、水蒸気改質能を有する水蒸気改質触媒、部分酸化改質能を有する部分酸化改質触媒、部分酸化改質能と水蒸気改質能とを併せ持つ自己熱改質触媒を適宜用いることができる。
【0164】
改質器の構造は、改質器として公知の構造を適宜採用できる。例えば、密閉可能な容器内に改質触媒を収容する領域を有し、改質に必要な流体の導入口と改質ガスの排出口を有する構造とすることができる。
【0165】
改質器の材質は、改質器として公知の材質から、使用環境における耐性を考慮して適宜選んで採用できる。
【0166】
改質器の形状は、直方体状や円管状など適宜の形状とすることができる。
【0167】
炭化水素系燃料(必要に応じて予め気化される)および水蒸気、さらに必要に応じて空気等の酸素含有ガスをそれぞれ単独で、もしくは適宜混合した上で改質器(改質触媒層)に供給することができる。また、改質ガスはSOFCのアノードに供給される。
【0168】
〔SOFC〕
改質器から得られる改質ガスが、SOFCのアノードに供給される。一方、SOFCのカソードには空気などの酸素含有ガスが供給される。発電時には、発電に伴いSOFCが発熱し、その熱がSOFCから改質器へと、輻射伝熱などにより伝わる。こうしてSOFC排熱が改質器を加熱するために利用される。ガスの取り合い等は適宜配管等を用いて行う。
【0169】
SOFCとしては、公知のSOFCを適宜選んで採用できる。SOFCでは、一般的に、酸素イオン導電性セラミックスもしくはプロトンイオン導電性セラミックスが電解質として利用される。
【0170】
SOFCは単セルであってもよいが、実用上は複数の単セルを配列させたスタック(円筒型の場合はバンドルと呼ばれることもあるが、本明細書でいうスタックはバンドルも含む)が好ましく用いられる。この場合、スタックは1つでも複数でもよい。
【0171】
SOFCの形状も、立方体状スタックに限らず、適宜の形状を採用できる。
【0172】
例えば400℃程度でアノードの酸化劣化が起きることがある。
【0173】
〔筐体〕
筐体(モジュール容器)としては、SOFC、改質器および燃焼領域を収容可能な適宜の容器を用いることができる。その材料としては、例えばステンレス鋼など、使用する環境に耐性を有する適宜の材料を用いることができる。容器には、ガスの取り合い等のために、適宜接続口が設けられる。
【0174】
モジュール容器の内部と外界(大気)とが連通しないように、モジュール容器が気密性を持つことが好ましい。
【0175】
〔燃焼領域〕
燃焼領域は、SOFCのアノードから排出されるアノードオフガスを燃焼可能な領域である。例えば、アノード出口を筐体内に開放し、アノード出口近傍の空間を燃焼領域とすることができる。酸素含有ガスとして例えばカソードオフガスを用いてこの燃焼を行なうことができる。このために、カソード出口を筐体内に開放することができる。
【0176】
燃焼用燃料もしくはアノードオフガスを燃焼させるために、イグナイターなどの着火手段を適宜用いることができる。
【0177】
〔改質触媒〕
改質器で用いる水蒸気改質触媒、部分酸化改質触媒、自己熱改質触媒のいずれも、それぞれ公知の触媒を用いることができる。部分酸化改質触媒の例としては白金系触媒、水蒸気改質触媒の例としてはルテニウム系およびニッケル系、自己熱改質触媒の例としてはロジウム系触媒を挙げることができる。燃焼を促進可能な改質触媒の例としては白金系およびロジウム系触媒を挙げることができる。
【0178】
部分酸化改質反応が進行可能な温度は例えば200℃以上、水蒸気改質反応が進行可能な温度は例えば400℃以上である。
【0179】
〔改質器の運転条件〕
以下、水蒸気改質、自己熱改質、部分酸化改質のそれぞれにつき、改質器における定格運転時および停止運転時の条件について説明する。
【0180】
水蒸気改質では、灯油等の改質原料にスチームが添加される。水蒸気改質の反応温度は例えば400℃〜1000℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、炭化水素系燃料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは1〜10、より好ましくは1.5〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。炭化水素系燃料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は炭化水素系燃料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
【0181】
自己熱改質ではスチームの他に酸素含有ガスが改質原料に添加される。酸素含有ガスとしては純酸素でも良いが入手容易性から空気が好ましい。水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスし、かつ、改質触媒層やSOFCの温度を保持もしくはこれらを昇温できる発熱量が得られるように酸素含有ガスを添加することができる。酸素含有ガスの添加量は、炭化水素系燃料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.005〜1、より好ましくは0.01〜0.75、さらに好ましくは0.02〜0.6とされる。自己熱改質反応の反応温度は例えば400℃〜1000℃、好ましくは450℃〜850℃、さらに好ましくは500℃〜800℃の範囲で設定される。炭化水素系燃料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.05〜20-1、より好ましくは0.1〜10-1、さらに好ましくは0.2〜5-1の範囲で選ばれる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは1〜10、より好ましくは1.5〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。
【0182】
部分酸化改質では酸素含有ガスが改質原料に添加される。酸素含有ガスとしては純酸素でも良いが入手容易性から空気が好ましい。反応を進めるための温度を確保するため、熱のロス等において適宜添加量は決定される。その量は、炭化水素系燃料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.1〜3、より好ましくは0.2〜0.7とされる。部分酸化反応の反応温度は、例えば450℃〜1000℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定することができる。炭化水素系燃料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30-1の範囲で選ばれる。反応系においてすすの発生を抑制するためにスチームを導入することができ、その量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.1〜3、さらに好ましくは1〜2とされる。
【0183】
〔他の機器〕
間接内部改質型SOFCの公知の構成要素は、必要に応じて適宜設けることができる。具体例を挙げれば、液体を気化させる気化器、各種流体を加圧するためのポンプ、圧縮機、ブロワなどの昇圧手段、流体の流量を調節するため、あるいは流体の流れを遮断/切り替えるためのバルブ等の流量調節手段や流路遮断/切り替え手段、熱交換・熱回収を行うための熱交換器、気体を凝縮する凝縮器、スチームなどで各種機器を外熱する加熱/保温手段、炭化水素系燃料(改質原料)や燃焼用燃料の貯蔵手段、計装用の空気や電気系統、制御用の信号系統、制御装置、出力用や動力用の電気系統、燃料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器などである。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、例えば定置用もしくは移動体用の発電装置やコージェネレーションシステムに利用される間接内部改質型SOFCに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明を適用することのできる間接内部改質型SOFCの一形態につき、その概要を示す模式図である。
【図2】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、(a)は経過時間と温度の関係、(b)は経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図3】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図4】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、(a)は経過時間と温度の関係、(b)は経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図5】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、(a)は経過時間と温度の関係、(b)は経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図6】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、(a)は経過時間と温度の関係、(b)は経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図7】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、(a)は経過時間と温度の関係、(b)は経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図8】本発明の方法を説明するための概念的グラフであり、(a)は経過時間と温度の関係、(b)は経過時間と炭化水素系燃料流量の関係を示す。
【図9】本発明の方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0186】
1 水気化器
2 水気化器に付設された電気ヒータ
3 改質器
4 改質触媒層
5 燃焼領域
6 SOFC
7 イグナイター
8 筐体(モジュール容器)
9 改質器に付設された電気ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系燃料を改質して改質ガスを製造する、改質触媒層を有する改質器と、
該改質ガスを用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池と、
該固体酸化物燃料電池から排出されるアノードオフガスを燃焼させる燃焼領域と、
該改質器、固体酸化物形燃料電池および燃焼領域を収容する筐体と、を有する間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法であって、
次の条件iからiv、
i)該固体酸化物燃料電池のアノード温度が定常であり、
ii)該アノード温度が酸化劣化点未満であり、
iii)改質器において、炭化水素系燃料が改質され、アノードに供給するのに適した組成の改質ガスが生成しており、
iv)前記改質ガスの生成量が、該固体酸化物燃料電池のアノード温度が酸化劣化点以上の温度にある場合においてアノードの酸化劣化を防止するために必要最小限な流量以上である、
が全て満たされる状態において改質器に供給される炭化水素系燃料の流量をFkEと表し、
段階的な炭化水素系燃料の流量Fk(j)を予め定めておき(ここでjは1以上M以下の整数であり、Mは2以上の整数である。)、ただし、Fk(j)はjの増加とともに減少し、Fk(j)のなかで最も小さいFk(M)はFkEと等しく、
停止方法開始時点で改質器に供給していた炭化水素系燃料の流量をFk0と表し、
該改質触媒層において流量Fk(j)の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件Tr(j)を予め知っておき(ここでjは1以上、M以下の整数)、
アノード温度が酸化劣化点を下回ったら改質器への炭化水素系燃料の供給を停止して該停止方法を終了し、
アノード温度が酸化劣化点を下回っていない間に以下の工程、
A)改質触媒層温度Tを測定し、この測定温度Tと、Tr(M)とを比較する工程、
B)工程AにおいてT<Tr(M)の場合に、次の工程B1〜B4を順次行なう工程、
B1)改質触媒層を昇温する工程、
B2)改質触媒層温度を測定し、この測定温度Tと、Tr(M)とを比較する工程、
B3)工程B2においてT<Tr(M)の場合に、工程B1に戻る工程、
B4)工程B2においてT≧Tr(M)の場合に、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFkEにし、工程Dに移る工程、
C)工程AにおいてT≧Tr(M)の場合に、
予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在しなければ、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFkEにし、工程Dに移り、
予め定めた炭化水素系燃料流量Fk(j)のうち、Fk0より小さくFkEより大きい中間的流量Fk(j)が存在すれば、次の工程C1〜C5を順次行なう工程、
C1)中間的流量のうちの最も大きいFk(j)を与えるjをJと表し、
改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk0からFk(J)に減少させる工程、
C2)改質触媒層温度を測定し、この測定温度Tと、Tr(J)とを比較する工程、
C3)工程C2においてT>Tr(J)の場合に、工程C2に戻る工程、
C4)工程C2においてT≦Tr(J)の場合に、改質器に供給する炭化水素系燃料の流量をFk(J)からFk(J+1)に減少させ、Jを1増加させる工程、
C5)JとMを比較し、J≠Mであれば工程C2に戻り、J=Mであれば工程Dに移る工程、および
D)アノード温度が、酸化劣化点を下回るのを待つ工程
を有する間接内部改質型固体酸化物形燃料電池の停止方法。
【請求項2】
前記炭化水素系燃料が、炭素数が2以上の炭化水素系燃料を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記改質ガス中の、炭素数2以上の化合物の濃度が、質量基準で50ppb以下である請求項2記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−44909(P2010−44909A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207053(P2008−207053)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】