説明

関節リウマチの症状を改善する栄養製品

リウマチ疾患を治療するための栄養組成物が開示される。この栄養組成物は、1)少なくとも一つのω−3長鎖多価不飽和脂肪酸および2)少なくとも一つのω−6長鎖多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも一つを含む脂肪源;炭水化物源;タンパク質源;ならびにボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方を含む。対象に対して、有効量の上記栄養組成物を投与する段階を含む、リウマチ疾患およびそれの症状を治療する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年3月4日出願の米国暫定特許出願第60/658931号の恩恵を主張するものである。
【0002】
本発明は、栄養組成物にならびに関節炎その他のリウマチ性の疾患もしくは状態を患っているかそれの発症リスクがある場合におけるそのような疾患もしくは状態の症状を改善するためのこれら組成物の相当する使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
結合組織とは、身体をつなぎ合わせる組織を指す。結合組織疾患は、結合組織が関与する多くの障害を説明するのに用いられる用語である。数百万の人々が、結合組織の炎症による疼痛、特には関節における疼痛に苦しんでいる。この疼痛は、軽度の痛みから消耗性の疼痛にいたる広範囲にわたるものであり、患っている身体部分の運動を妨げ得るものである。
【0004】
結合組織疾患の一つの種類であるリウマチ疾患には、多様な異なる状態がある。リウマチ疾患の共通の特徴は、関節ならびに靱帯、腱および筋肉などの周囲組織の関与である。リウマチ疾患は通常、関節炎と称される主として関節が関与するものと通常は結合組織疾患と称される他の組織が関与するものとに分けられている。関節炎はさらに、炎症性および非炎症性の関節炎に細分されている。骨関節炎は、非炎症性型の関節炎である。骨関節炎は通常、関節の伸長状態での使用による変性のために関節表面に損傷が生じ、それによって関節を動かした時に疼痛が生じると考えられている。骨関節炎における症状は、活動すると悪化する傾向があることから、その日の終わりに疼痛が最も強くなる。対照的に、炎症性関節炎の症状には、非活動の夜間睡眠後に関節を動かすと最も強い疼痛が起こるというものがある。
【0005】
炎症性関節炎は通常、例えば免疫系および/または何らかの他の機序が関節で炎症を起こしている関節の疾患を意味する。より一般的な種類の炎症性関節炎の中には、脊椎ならびに関節に影響を与える関節リウマチ、痛風、乾癬性関節炎(皮膚状態の乾癬に関連)、反応性関節炎、ウィルス性もしくはウィルス感染後関節炎(感染後に起こる)および脊椎関節炎がある。炎症性関節炎の特徴的症状は、1以上の関節の疼痛および腫脹である。罹患している関節は、身体の他の関節より暖かい場合が多い。
【0006】
あるいはまたはさらに、朝の目覚めの際、またはある期間静止状態であった後に、罹患している関節の硬直が起こる場合が多い。現在のところ、炎症性関節炎発症に関連する確実で確認可能な原因はない。
【0007】
正式な疾患として言及されることは多くないが、関節炎として分類されずに、怪我、捻挫および/または炎症(結合組織の)によるものであるが、軟組織リウマチと称される軽度の疼痛が多くあり、それの例をいくつか挙げると、テニス肘、肩関節周囲炎、手根管症候群、足裏筋膜炎およびアキレス腱炎などがある。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、脂肪源、炭水化物源およびタンパク質源を含む、治療食などの栄養組成物であり、前記組成物は少なくとも一つのω−3長鎖多価不飽和脂肪酸、適宜にγ−リノレン酸(GLA)などのω−6長鎖多価不飽和脂肪酸ならびにボスウェリア(Boswellia)抽出物およびフレボディウム(Phlebodium)抽出物のうちの少なくとも一方を含む栄養組成物に関するものである。
【0009】
本発明はまた、関節炎その他のリウマチ疾患もしくは状態を患っているかそれを発症する危険性がある個体に対して、脂肪源、炭水化物源およびタンパク質源を含み、少なくとも一つのω−3長鎖多価不飽和脂肪酸、適宜にγ−リノレン酸(GLA)などのω−6長鎖多価不飽和脂肪酸ならびにボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方を含む栄養組成物を投与することによって、そのような疾患もしくは状態の症状を改善する方法に関するものでもある。
【0010】
発明の要約
本発明の栄養組成物および相当する方法は、関節炎その他のリウマチ疾患もしくは状態を患っているかそれを発症する危険性がある個体でのそのような疾患もしくは状態の症状の改善において有用である。理論に拘束されるものではないが、これらの組成物および相当する方法が抗炎症活性を提供し、具体的には関節における炎症性サイトカインの含有量を低下させるものと考えられる。
【0011】
図面の簡単な説明
図1は、実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ(Crucuma)、クラタエバ(Crataeva)またはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(Oxepa;登録商標)による免疫化マウスでの関節炎発症の発生率および発症日をグラフで示す図である。プレドニゾロン(Prednisolone)群は、対照飼料を摂取させ、1日1回プレドニゾロンで腹腔内処置した免疫化マウスである(は、p<0.05で対照と比較した統計的有意性を示す。)。
【0012】
図2は、実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスでの関節炎指数および相対重度をグラフで示す図である。プレドニゾロン群は、対照飼料を摂取させ、1日1回プレドニゾロンで腹腔内処置した免疫化マウスである(は、p<0.05で対照と比較した統計的有意性を示す。)。
【0013】
図3は、実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスの血清および関節ホモジネート中の抗CII IgG2a濃度をグラフで示す図である。プレドニゾロン群は、対照飼料を摂取させ、1日1回プレドニゾロンで腹腔内処置した免疫化マウスである(は、p<0.05で対照と比較した統計的有意性を示す。)。
【0014】
図4は、実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスの関節ホモジネート中のIL−1β、IL−6、IL−10およびMMP−9濃度をグラフで示す図である。プレドニゾロン群は、対照飼料を摂取させ、1日1回プレドニゾロンで腹腔内処置した免疫化マウスである(は、p<0.05で対照と比較した統計的有意性を示す。)。
【0015】
図5は、実験2からの、対照飼料またはフレボディウム抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスでの関節炎発症の発生率および発症日をグラフで示す図である(は、p<0.05で対照と比較した統計的有意性を示す。)。
【0016】
図6は、実験2からの、対照飼料またはフレボディウム抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスでの関節炎指数および相対重度をグラフで示す図である。
【0017】
図7は、対照飼料、ボスウェリア、ポリフェノールまたはフレボディウム・デクマヌム(Phlebodium decumanum)抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)を摂取させた免疫化マウスでの滑膜炎、パンヌス形成、軟骨損傷、骨破壊および形態的炎症の指数をグラフで示す、これらに関しての実験3からの図である。プレドニゾロン群(Pred)は、対照飼料を摂取させ、1日1回プレドニゾロンで腹腔内処置した免疫化マウスである。データは、平均±SEMである(は、p<0.05で対照と比較した統計的有意性を示す。)。
【0018】
図8は、重度の炎症(3度)、軽度のパンヌス形成(1度)、重度の軟骨損傷(3度)および非常に軽度の骨破壊(1度)を示す被験マウスの右後足からの膝の実験3(対照群)からの組織スライドを示す図である。H&E.4×。
【0019】
図9は、正常な関節を示す被験マウスの左後足からの膝の実験3(コルチコイド群)からの組織スライドを示す図である。H&E.4×。
【0020】
図10は、軽度の炎症(1度)、軽度の軟骨損傷(1度)および正常な骨構造を示す被験マウスの左後足からの足根関節の実験3(ボスウェリア群)からの組織スライドを示す図である。H&E.4×。
【0021】
図11は、重度の炎症(3度)、中等度のパンヌス形成(2度)、重度の軟骨損傷(3度)および骨障害なしを示す被験マウスの左後足からの膝の実験3(ポリフェノール群)からの組織スライドを示す図である。H&E.4×。
【0022】
図12は、重度の炎症(3度)、中等度の軟骨損傷(2度)および軽度の骨障害(1度)を示す被験マウスの右前足からの肘の実験3(フレボディウム群)からの組織スライドを示す図である。H&E.4×。
【0023】
図13は、炎症性細胞がほとんどない軽度の滑膜炎(1度)を示す被験マウスの右前足からの肘の実験3(オキセパ群)からの組織スライドを示す図である。H&E.10×。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の組成物および相当する方法は、ω−3長鎖多価不飽和脂肪酸およびω−6長鎖多価不飽和脂肪酸ならびにボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方などの脂肪源、タンパク質源および炭水化物源を必須要素として含む栄養組成物に関するものである。本発明の組成物および相当する方法のこれらおよび他の必須もしくは適宜の要素もしくは限定について、下記で詳細に説明する。
【0025】
別段の断りがない限り、本明細書で使用される「改善」または「改善する」という用語は、確認される症状、状態もしくは疾患を患っているかそれを発症する傾向のある個体でのそのような症状、状態もしくは疾患の発生、重度もしくは再発を治療、管理、予防その他の形で軽減することを意味する。
【0026】
別段の断りがない限り、本明細書で使用される「治療食」という用語は、医師の監督下に経腸的に消費もしくは投与されるよう作られ、一般に認められている科学的根拠に基づいて、独特の要件が医学的評価によって確立されている疾患もしくは状態の具体的な食事管理のためのものである食品を指す。
【0027】
別段の断りがない限り、本明細書で使用される全てのパーセント、部および比は、組成物全体の重量基準である。挙げられている成分に関するものなどの重量はいずれも、活性レベルに基づいたものであることから、別段の断りがない限り、市販の材料中に含まれ得る溶媒や副産物を含まないものである。
【0028】
本発明の特徴または限定が単数で表現されているものは、別段の断りがあったり、その言及がある文脈によって逆の内容に明瞭に示唆されていない限り、相当する複数の特徴もしくは限定を含むものであり、その逆も言える。
【0029】
本明細書で使用される方法および工程段階のいずれの組み合わせも、別段の断りがあったり、言及されている組み合わせが行われる文脈によって逆の内容に明瞭に示唆されていない限り、いかなる順序で行うことも可能である。
【0030】
本発明の組成物および方法は、本明細書に記載の本発明の必須要素および限定を、ならびに本明細書に記載されているか栄養用途もしくは医薬用途で他の形態で有用である別のもしくは適宜の成分、構成要素もしくは限定を含むか、それらからなるか、実質的にそれらからなるものであることができる。
【0031】
本発明の組成物および方法は、本明細書に記載の適宜の成分を実質的に含まないものであることもできる。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、選択された組成物が、その適宜成分が機能する量未満、好ましくはそのような適宜成分をゼロ重量%含むことを意味する。
【0032】
製品形態
本発明の栄養組成物は、経口投与用の公知もしくは他の好適な製品形態に関するものである。本発明での使用には、組み合わせまたは変形形態を含めた固体、液体または粉末形態が好適であるが、ただしそのような形態は、標的製品形態中の必須成分および他の選択された成分の安全かつ効果的な経口送達を可能とするものである。
【0033】
本発明での使用に好適な固体栄養製品形態の例には、バー、スティック、クッキーまたはパンもしくはケーキその他の焼いた製品、冷凍液体、キャンディー、朝食用シリアル、粉末もしくは顆粒固体その他の粒子状物、スナックチップまたは軽食(bites)などのスナック製品および代用食品製品などがあるが、これらに限定されるものではない。栄養組成物は、カプセル、錠剤、カプレットなどの他の製品形態に製剤することもできる。
【0034】
本発明での使用に好適な液体栄養製品の例には、ジュースその他の酸味飲料として調合されたものなどのスナックおよび代用食品、牛乳もしくは大豆系飲料、ミルクセーキ、コーヒー、茶、炭酸飲料、非炭酸飲料、経腸栄養組成物などがあるが、これらに限定されるものではない。これらの液体組成物は最も代表的には、懸濁液もしくは乳濁液として調合されるが、液剤、液体ゲルなどの他の好適な形態で調合することもできる。
【0035】
本発明で使用される好適な製品形態の他の例には、プリン、ゲルなどの半固体もしくは半液体組成物などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
ボスウェリアおよびフレボディウム抽出物
本発明の栄養組成物は、関節炎その他のリウマチ疾患もしくは状態の症状を改善する上で有効な量で、ボスウェリア抽出物、フレボディウム抽出物またはこれらの組み合わせを含む。組成物中のこのような抽出物の濃度は、組成物の約0.1重量%〜約5重量%の範囲であり、約0.2重量%〜約3重量%、さらには約0.3重量%〜約2重量%などがある。
【0037】
別段の断りがない限り、本明細書で使用される「抽出物」という用語は、抽出される植物の一部からの水溶性および/またはアルコール可溶性および/または他の好適な溶媒に可溶な植物成分の濃縮物を意味する。抽出物は、液体、オイルまたは粉末の形態であることができる。ボスウェリア抽出物は、ボスウェリア、コンミフォラ(Commiphora)およびブルセラ(Bursera)または関連の深いブルセラ科(Burseraceae)の木本類の属のうちの少なくとも一つに属する植物から得ることができる。ボスウェリア抽出物は通常、1以上のボスウェル酸を含む。
【0038】
ボスウェリア抽出物は好ましくは、ブルセラ科の木本類から得られるかそれに由来する浸出物ガム、ガム樹脂または規格ガム抽出物から得られる。葉、根および/または幹を得て、抽出物を取得することもできる。例えば、センらの報告(Sen et al, Carbohydrate Res. 223, 321 (1992))およびアモンらの報告(Ammon et al, Planta Med. 57, 203 (1991))(これらは、参照によって、この点ににおいて本明細書に組み込まれる。)を参照する。
【0039】
ボスウェリア、コンミフォラ、ブルセラ属または関連の深いブルセラ科の木本類の木は代表的には、世界の乾燥熱帯および半乾燥熱帯および暖温帯地域にて野生で育ち、ボスウェル酸および他の関連の深い化合物を高濃度で含む。ボスウェリア抽出物を提供する具体的な植物源の例には、ボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)、ボスウェリア・バーウ−ダジアナ(Boswellia bhau−dajiana)、ボスウェリア・フレレアナ(Boswellia frereana)、ボスウェリア・パピリフェラ(Boswellia papyrifera)、スーダン・ボスウェリア・サクラ(Boswellia scacra)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carteri)、コンミフォラ・インシサ(Commiphora incisa)、コンミフォラ・ミルラ(Commiphora myrrha)、コンミフォラ・アビシニカ(Commiphora abyssinica)、コンミフォラ・エルトラエア(Commiphora erthraea)、コンミフォラ・モルモル(Commiphora)およびブルセラ・ミクロフィラ(Bursera microphylla)などがある。
【0040】
本発明の栄養組成物は、1用量当たり約10mg〜約1800mg、好ましくは約100mg〜約800mgのボスウェリアガム抽出物を含むことで、その抽出物から有効量のボスウェル酸を提供する実施形態を包含する。
【0041】
本発明の1実施形態において、ボスウェリア抽出物は、下記式Iによって表される化学構造を有する少なくとも1種類のボスウェル酸を含む。
【0042】
【化1】

式中、各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシまたはヒドロキシアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシカルボニルであり;Rは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルコキシまたはヒドロキシアルキル(各場合において、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびアルコキシカルボニル基はそれぞれ独立に、1〜約10個の炭素原子を含む。)である。
【0043】
別の実施形態において、ボスウェリア抽出物は、下記式IIによって表される化学構造を有する少なくとも1種類のボスウェル酸を含む。
【0044】
【化2】

式中、各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシまたはヒドロキシアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシカルボニルであり;Rは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルコキシまたはヒドロキシアルキル(各場合において、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびアルコキシカルボニル基はそれぞれ独立に、1〜約10個の炭素原子を含む。)である。
【0045】
別の実施形態において、ボスウェリア抽出物は、下記式IIIによって表される化学構造を有する少なくとも1種類のボスウェル酸を含む。
【0046】
【化3】

式中、各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシまたはヒドロキシアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシカルボニルであり;Rは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルコキシまたはヒドロキシアルキル(各場合において、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびアルコキシカルボニル基はそれぞれ独立に、1〜約10個の炭素原子を含む。)である。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態では、式I、IIまたはIIIによって表される化学構造において、各Rは独立に、1〜約4個の炭素原子を含むアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、1〜約4個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜約4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキルまたは1〜約4個の炭素原子を含むアルコキシカルボニルであり;Rは、水素またはヒドロキシである。ボスウェル酸は遊離酸の形態、酸塩の形態またはエステル形態であることができる。アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびアルコキシカルボニル基の一般的な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、プロペニル、フェニル、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルおよびアセチルなどがある。
【0048】
ボスウェル酸には、トリテルペン酸類が含まれる。ボスウェル酸の具体例には、B−ボスウェル酸(3α−ヒドロキシurs−12−エン−24−オン酸)(各Rがメチルであり、Rがヒドロキシであり、Rが水素である式I);アセチルB−ボスウェル酸(3α−アセトキシurs−12−エン−24−オン酸)(各Rがメチルであり、Rがアセチルであり、Rが水素である式I);11−ケト−B−ボスウェル酸(3α−ヒドロキシurs−12−エン−11−ケト−24−オン酸)(各Rがメチルであり、Rがヒドロキシであり、Rが水素である式II);アセチル11−ケト−B−ボスウェル酸(3α−アセトキシurs−12−エン−11−ケト−B−ボスウェル酸)(各Rがメチルであり、Rがアセチルであり、Rが水素である式I)、3α−ヒドロキシurs−9,12−ジエン−24−オン酸(各Rがメチルであり、Rがヒドロキシであり、Rが水素である式III)および2α,3αジヒドロキシurs−12−エン−24−オン酸(各Rがメチルであり、Rがヒドロキシであり、Rがヒドロキシである式I)などがある。ボスウェリア抽出物は、さらにまたは別に、ボスウェル酸またはそれの誘導体の1以上の異性体を含むことができる。異性体の例には、α、βおよび11−ケト−βボスウェル酸などがある。誘導体には、酸塩、酸エステルならびにアセチルおよび他のエステル誘導体などがある。
【0049】
ボスウェリア抽出物は、少なくとも約10重量%、例えば約25重量%〜100重量%、さらには約40重量%〜80重量%の1以上のボスウェル酸、1以上のボスウェル酸異性体および/またはそれの1以上のボスウェル酸誘導体を含む。
【0050】
フレボディウム抽出物は、ウラボシ科(Polypodiaceae)に含まれる植物から得られる植物抽出物を含む。ウラボシ科には通常、シダ類があり、特に世界の熱帯地域を原産とするものがある。例えば、ウラボシ科の多くが、ラテンアメリカ原産、特にはホンジュラスの熱帯雨林のもの、南アメリカ原産、特にはブラジルの熱帯雨林のもの、メキシコ原産およびカリブ海諸島原産である。フレボディウム抽出物は代表的には、地下茎または根系および/または葉から得られる。フレボディウム抽出物は、1以上の各種フラボノイド、アルカロイドおよび/または脂質の混合物である。
【0051】
ウラボシ科の中では、フレボディウム抽出物は、ポリポジウム(Polypodium)属、クリソプテリス(Chrysopteris)属、フレボディウム亜属および他の関連が深いシダ様植物内の植物から得ることができる。フレボディウム抽出物の具体例には、ポリポジウム・デクマヌム(Polypodium decumanum)、フレボディウム・デクマヌム(Phlebodium decumanum)、ポリポジウム・マルチセリアレ(Polypodium multiseriale)、フレボディウム・マルチセリアレ(Phlebodium multiseriale)、クリソプテリス・デクムナナ(Chrysopteris decmnana)、ポリポジウム・ロイコトモス(Polypodium leucotomos)、フレボディウム・ロイコトモス(Phlebodium leucotomos)、ポリポジウム・アウレウム(Polypodium aureum)、フレボディウム・アウレウム(Phlebodium aureum)、ポリポジウム・ブルガレ(Polypodium vulgare)、ポリポジウム・トリセリアレ(Polypodium triseriale)、プテリジウム・アクリヌム(Pteridium aquilinum)、シアテア・タイワミアナ(Cyathea taiwamiana)、ポリポジウム・クラシフォリウム(Polypodium crassifolium)、ポリポジウム・ランセオラツム(Polypodium lanceolatum)、ポリポジウム・ペルクスム(Polypodium percussum)からの抽出物などがある。
【0052】
ボスウェリアおよび/またはフレボディウム抽出物は、従来の抽出技術または別の公知の抽出技術を用いて得ることができ、その技術の例が米国特許第6264995号;5932101号;5908628号;5891440号;5874084号および5120558号(これらの記載は、参照によって本明細書に組み込まれる。)に記載されているが、これらに限定されるものではない。ボスウェリア抽出物は、アユシュ・ハーブス社(Ayush Herbs, Inc., Bellevue, Washington, USA)からボスウェリャ・プラス(Boswelya Plus)の商品名で市販されている。フレボディウム抽出物は、ヘルシントS.A.L.(HELSINT S. A. L, Spain)から、EXPLY−37(登録商標)の商品名で市販されている。
【0053】
ボスウェリアおよび/またはフレボディウム抽出物は、例えば、植物材料を個別に洗浄、乾燥および粉砕して微粉末とし、次に所望に応じて粉砕植物材料を抽出することによって得ることができる。ボスウェリア抽出物の製造の1例には、植物からの樹脂塊を破砕するか、植物の一部を破砕し、極性溶媒で抽出する段階;公知の方法によって不溶材料を除去する段階;有機溶媒を除去することで減圧下に抽出物を濃縮してシロップ状塊を得る段階;そのシロップ状塊をアルカリ水溶液で塩基性として8より高いpHとする段階;その溶液を好適な溶媒で抽出し、水層を鉱酸でpH5以下の酸性とする段階;ボスウェル酸を含む沈殿を分離する段階;リトマスに対して中性となるまで水で洗浄する段階;得られた画分を乾燥させる段階;ならびに適宜に公知の方法によって個々のボスウェル酸を分離する段階がある。
【0054】
抽出で用いられる好適な極性溶媒の例には、アルコール類(例:メタノール、エタノール、ブタノール)、ケトン類(例:アセトン)、エステル類(例:酢酸エチル)およびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。塩基性化に用いられるアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化バリウムまたは水酸化カリウムなどの水酸化物化合物であることができる。アルカリ処理後溶媒は代表的には、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、それらの混合物などの塩素化もしくは非極性溶媒である。鉱酸は代表的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などのうちの1以上である。
【0055】
適宜行う分離は、濾過または遠心によって行うことができる。個々の酸の単離方法の例としては、カラムクロマトグラフィー、MPLC、LC、HPLC、フラッシュクロマトグラフィー、化学的方法などがある。
【0056】
長鎖多価不飽和脂肪酸
本発明の栄養組成物は、ω−3(n−3)長鎖多価不飽和脂肪酸および適宜にGLAなどのω−6(n−6)長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。これらの選択された脂肪酸は、やはり本明細書に記載のボスウェリアおよびフレボディウム抽出物と相互作用するか、それらの作用を強めるものと考えられている。
【0057】
長鎖多価不飽和脂肪酸は、アシル鎖に18以上の炭素を有し、そこに2以上の炭素−炭素二重結合も有する脂肪酸である。
【0058】
ω−3およびω−6脂肪酸は、脂肪酸のメチル末端に最も近い二重結合の位置に応じて変わるものである。ω−3脂肪酸は3番目の炭素に第1の二重結合を有するものであり、ω−6脂肪酸は6番目の炭素に第1の二重結合を有するものである。
【0059】
本発明の組成物での使用に選択される長鎖多価不飽和脂肪酸は、指定の脂肪酸化合物のイン・ビボまたはイン・ビトロでの送達または提供に好適な形態のものであることができる。そのような好適な形態の例としては、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル(例:メタノールなどのアルコールでエステル化されたもの)、リン脂質、モノ−、ジ−もしくはトリグリセリドまたはそれらの組み合わせなどがあり得るが、それらに限定されるものではない。
【0060】
本発明での使用に好適なω−3長鎖多価不飽和脂肪酸の例には、ドコサヘキサエン酸(DHA;22:6n−3);エイコサペンタエン酸(EPA;20:5n−3);ステアリドン酸(18:4n−3);α−リノレン酸(18:3n−3);エイコサテトラエン酸;およびn−3−ドコサペンタエン酸などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましいものは、ω−3長鎖多価不飽和脂肪酸とGLAとの組み合わせである。
【0061】
本発明の栄養組成物中でのこのような長鎖多価不飽和脂肪酸の量は、1回当たりまたは1用量当たり、約6000mg以下の範囲、例えば約50mg〜約500mg、さらには約100mg〜約250mgのω−3脂肪酸および適宜のGLAである。このような脂肪酸の相当する濃度は、最も代表的には、約0.1重量%〜約10重量%の範囲、例えば約0.3重量%〜約7重量%、さらには約0.5重量%〜約5重量%の栄養組成物である。
【0062】
栄養組成物での使用に好適なω−3長鎖多価不飽和脂肪酸源の例としては、亜麻油、菜種油、トランスジェニック油および魚油などがあるが、これらに限定されるものではない。魚油源の例としては、海水魚または冷淡水魚などがあり(それらに限定されるものではない)、それの例としてはビンナガ、ブラックバス、ブルーフィッシュ、鯉、ニシン油、アンチョビ油、ピルチャード油、ブチナマズ、ニシン、北アメリカキュウリウオ、イワシ類、レークトラウト、サバ、コバンアジ、鮭、マグロおよびホワイトフィッシュなどがあるが、これらに限定されるものではない。前記栄養組成物での使用に好適なGLAその他の好適なω−6長鎖多価不飽和脂肪酸の入手源の例としては、サクラソウ油(代表的には8〜14%GLA)、ルリヂサオイル油(代表的には17〜25%GLA)、ブラックカラント種子油(14〜20%GLA)、トランスジェニックGLA源、精製GLA(代表的には26〜99%GLA)、菌類油(例:ムコール・ジャバニクス(Mucor javanicus))などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
他の主要栄養素
本発明の栄養組成物は、いずれも前述のボスウェリアおよびフレボディウム抽出物および長鎖多価不飽和脂肪酸に加えて、またはそれを別の形態で提供するように脂肪源、炭水化物源およびタンパク質源などの他の主要栄養素を含む。
【0064】
他の必須成分または添加成分と組み合わされる主要栄養素は、1回使用または1用量当たり約1000kcal以下のエネルギーを提供することができ、例えば1回使用または1用量当たり、好ましくは単回で未分割の使用もしくは用量として約25kcal〜約900kcal、さらには約75kcal〜約700kcal、さらには約100kcal〜約500kcal、さらには約150kcal〜約400kcal、さらには約200kcal〜約300kcalである。
【0065】
タンパク質、脂質および炭水化物の多くの異なる入手源および種類が知られており、本明細書に記載の多様な栄養製品で使用可能であるが、ただし選択される栄養素は経口投与において安全かつ有効であり、必須成分および他の添加成分と適合するものである。
【0066】
前記栄養製品での使用に好適な炭水化物は、単炭水化物、複合多糖もしくは変形体またはそれらの組み合わせであることができる。好適な炭水化物の例には、加水分解もしくは加工デンプンもしくはコーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースポリマー類、ショ糖、コーンシロップ、コーンシロップ固体、米由来炭水化物、グルコース、果糖、乳糖、高果糖コーンシロップ、難消化性オリゴ糖類(例:フルクトオリゴ糖類)、蜂蜜、糖アルコール類(例:マニトール、エリトリトール、ソルビトール)およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本発明での使用に好適な炭水化物には、可溶性食物繊維などもあり、それの例としてはアラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、かんきつペクチン、低および高メトキシペクチン、カラス麦および大麦グルカン、カラギーナン、オオバコおよびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。可溶性食物繊維は、本発明における炭水化物源としても好適であり、それの例としてはカラス麦外皮繊維、エンドウ豆外皮繊維、大豆外皮繊維、大豆子葉繊維、砂糖大根繊維、セルロース、トウモロコシふすまおよびそれらの組み合わせなどがあるが、それらに限定されるものではない。
【0068】
前記栄養製品での使用に好適なタンパク質には、加水分解、部分加水分解もしくは非加水分解タンパク質もしくはタンパク質源などがあり、牛乳(例:カゼイン、乳清)、動物(例:肉、魚)、穀類(例:米、トウモロコシ)、野菜(例:大豆)またはそれらの組み合わせなどの公知または他の好適な入手源由来のものであることができる。本発明で使用されるタンパク質は、栄養製品での使用において公知である遊離アミノ酸を含むか、それによって完全または部分的に置き換わっているものでもあり、それの例としては、トリプトファン、グルタミン、チロシン、メチオニン、システイン、アルギニンおよびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記栄養製品での使用に好適な脂肪には、ココナッツ油、ヤシ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、MCT油(中鎖トリグリセリド類)、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、パーム油およびパーム核油、パームオレイン、菜種油、魚油類、綿実油およびそれらの組み合わせなどがある。
【0070】
本発明の栄養組成物中の炭水化物、タンパク質および炭水化物の濃度または量は、特定の製品形態および各種の他の製剤および目標とする食事上のニーズに応じてかなり変動し得る。これらの主要栄養素は最も代表的には、下記の表に記載のいずれかのカロリー範囲(実施形態A、BまたはC)内で製剤される。
【0071】
【表1】

【0072】
適宜成分
本発明の栄養組成物は、製品の物理的、化学的、美的または加工上の特徴を変えることができ、対象群で使用した場合に医薬成分もしくは別の栄養成分として働く他の適宜成分をさらに含むことができる。そのような適宜成分の多くが公知であるか、治療食その他の栄養製品または医薬製剤での使用に他の形態で好適であり、本発明の組成物で使用することもできるが、ただしそのような適宜成分は経口投与において安全であり、選択される製品形態で必須成分および他の成分と適合性である。
【0073】
そのような適宜成分の例としては、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、緩衝剤、別の医薬活性物質、本明細書に記載の別の栄養素、人工甘味料を含む甘味料(例:サッカリン、アスパルテーム、アセサルフェームK、スクラロース)、着色剤、香味剤、増粘剤および安定剤、乳化剤、潤滑剤などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本発明の栄養組成物はさらに、各種の他のビタミン類または関連する栄養素を含むことができ、それの例としてはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB、カロテノイド類(例:β−カロテン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコペン)、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、これらの塩類および誘導体ならびにそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
前記栄養組成物はさらに、各種の他の別のミネラルを含むことができ、それの例としてはカルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、塩化物およびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
使用方法
本発明の方法は、関節炎その他のリウマチ疾患もしくは状態を患っているかそれを発症する危険性がある個体に、本発明の栄養組成物を経口投与することで、そのような疾患もしくは状態に関連する症状を改善する段階を有する。
【0077】
本発明の方法は、関節炎その他のリウマチ性もしくは他の同様の炎症性疾患もしくは状態を現在患っている個体または現在はそれを患っていない個体の適用することができる。本発明の栄養組成物は、そのような疾患もしくは状態に関して現在利用可能ないくつかの治療の不都合な副作用を持たないことから、他の点では健康な被験者に、有害な副作用の変化をほとんどまたは全く起こすことなく前記組成物を投与することができる。特にそのような個体が特定のリスクを有する場合、そのような疾患もしくは状態を発症する前に、そのような個体に投与することで、疾患もしくは状態の発症を遅延させることができ、可能であれば、重度および最終的な進行を軽減することが可能であるものと考えられている。
【0078】
本発明の方法を用いて、関節炎その他のリウマチ疾患もしくは状態の症状が改善される。この文脈において、「改善する」という用語は、関節炎その他のリウマチ疾患もしくは障害に関連する確認された症状、状態もしくは疾患の発生、重度もしくは再発を治療、管理、予防および/またはその他の形で軽減することを含むよう本発明の方法を定義するのに用いられる。
【0079】
従って本発明の方法は、本明細書に記載の栄養組成物を投与することによって、個体における罹患した関節での炎症性サイトカインの濃度低下が関与し得る関節性その他のリウマチ疾患を改善するのに用いることができる。リウマチ疾患の改善には、関節性その他のリウマチ症状の発症遅延、関節炎その他のリウマチ疾患の進行の遅延もしくは予防、および/または関節炎その他のリウマチ疾患の重度緩和などがあるが、これらに限定されるものではない。従って本発明は、関節炎その他のリウマチ疾患の症状の治療もしくは予防またはそのような疾患もしくは状態の他の形態での発症遅延の方法などがある。
【0080】
関係する方法および/または使用であって栄養組成物の投与に関連するものの例には、関節炎その他のリウマチ疾患に関連する疼痛の緩和もしくは軽減、腫脹および/または圧痛のある関節の数の低減、関節の移動性/可撓性の向上、関節炎その他のリウマチ疾患が進行する速度の低減、ならびにそのような疾患もしくは状態に関連する疲労の緩和もしくは軽減のうちの1以上などがある。
【0081】
本発明の方法には、炎症軽減を必要とする被験者または将来的に炎症軽減を必要とする可能性が高い被験者(予防的維持)に対して、有効量の栄養組成物を経口投与する段階が関与する炎症の軽減方法も含まれる。個体当たりの有効量は、症状の重度などの多くの因子ならびに栄養組成物に対する被験者の応答性によって決まる。当業者であれば、至適な用量、投与方法および繰り返し速度を容易に決定することができる。
【0082】
本発明の方法によって治療可能な疾患もしくは状態の具体例には、炎症性関節炎、関節リウマチ、痛風、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ウィルス性もしくはウィルス感染後関節炎、脊椎関節炎、リウマチおよびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。リウマチには、テニス肘、肩関節周囲炎、手根管症候群、足裏筋膜炎、アキレス腱炎などのうちの1以上がある。関節炎およびリウマチの症状には、炎症、腫脹、運動範囲制限、硬直、疼痛および痛みのうちの1以上などがある。
【0083】
本明細書で使用される「リウマチ疾患」という用語には、本発明の栄養組成物の経口投与によって治療可能な関節炎その他のリウマチ疾患もしくは状態またはそれらの症状が含まれる。
【0084】
本発明の方法には、本発明の栄養組成物を投与し、さらに被験者に対してTNF−α阻害薬などの有効量のリウマチ疾患薬物治療薬を投与することによるリウマチ疾患の治療が含まれる。同様に、本発明では、栄養組成物を投与し、前記栄養組成物を投与しない場合に被験者が必要とするリウマチ疾患薬物治療薬の相対的に多い量と比較して、少ない量のその薬物治療薬を被験者に投与することでリウマチ疾患を治療することができる。場合によっては、特にはリウマチ疾患薬物治療薬が高価であるか、不要な/望ましくない副作用があるか、単に入手が困難である場合には、少ない量の(用量低減)リウマチ疾患薬物治療薬の投与が有利である。
【0085】
リウマチ疾患薬物治療薬の例が、米国特許第6740647号;6207642号;および6171787号(これらの記載は、参照によって本明細書に組み込まれる。)に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0086】
本発明の方法では最も代表的には、本発明の栄養組成物の連日投与を行う。連日投与は、単一もしくは分割の用量もしくは使用で行うことができる。治療は好ましくは、長期間にわたって維持し、最も代表的には少なくとも約1ヶ月であり、例えば少なくとも約3ヶ月、さらには約6〜12ヶ月を超える期間である。
【0087】
本発明の方法は最も代表的にはヒトで用いられるが、ネコ、イヌ、ウマ、ウシなどの他の哺乳動物での使用も含む。
【0088】
製造
本発明の栄養組成物は、選択された製品形態を製造する公知その他の効果的な製造技術によって製造することができる。多くのそのような技術は、栄養液、栄養固体もしくはバーまたは医薬製剤(例:錠剤、カプセル、カプレットなど)などの所定の製品形態においては公知であり、本明細書に記載の栄養製品に対して当業者が容易に適用することができる。
【0089】
本発明の液体の実施形態は例えば、長鎖多価不飽和脂肪および乳化剤、繊維もしくは脂溶性ビタミン類を含む全ての製剤油を含有する油混合物を形成することで製造することができる。次に、炭水化物混合物および別のタンパク質混合物を、炭水化物およびミネラルを一緒に混合し、次に別の塩基水溶液中にて前記タンパク質を水と混合することによって個々に製造される。次に、炭水化物およびタンパク質混合物を、油混合物と混和する。得られた混合物を均質化し、熱処理し、水溶性ビタミンで標準化し、香味を付け、液体を最終的に滅菌するか無菌的に充填もしくは乾燥させて粉末を得ることができる。処理中にいかなる時点でも、上記混合物のいずれかにボスウェリアおよびフレボディウム抽出物を加えることができるが、ただし抽出物が最も可溶である混合物を選択し、抽出物の加熱処理が低減されたり最小となるような処理中の時点を選択することが望ましい場合が多い。
【0090】
栄養バーなどの他の製品形態を、例えば公知であってバー製造業界で一般に記載されている低温押出技術を用いて製造することもできる。そのような組成物を製造するには、代表的には、代表的にはタンパク質、ビタミンプレミックス、ある種の炭水化物などを含む粉末成分を全て乾燥混合する。次に、長鎖多価不飽和脂肪酸などの脂溶性成分を混合し、粉末プレミックスと混和する。ボスウェリアおよびフレボディウム抽出物は、製剤および処理中のいずれの時点で加えても良いが、ただし、抽出物の加熱処理が低減されたり最小となるような処理中の時点を選択することが望ましい場合が多い。最後に、液体成分を組成物に混合して、プラスチック様の組成物または生地を形成する。次に、得られたプラスチック塊を、低温成形もしくは押出により、それ以上の物理的および化学的変化を起こすことなく成形するが、その場合には前記プラスチック塊にダイスで比較的低い圧力を加え、所望の形状を与える。次に、得られた押出物(exudate)を適切な位置で切り落として、所望の重量の製品を得る。所望に応じて、得られた固体生成物をコーティングして味を良くし、流通用に包装する。
【0091】
本発明の固体栄養実施形態は、ベーキングまたは加熱押出によって製造して、シリアル、クッキー、クラッカーおよび同様の他の製品形態などの固体製品形態を作ることもできる。栄養物製造業界における当業者であれば、多くの公知の製造方法または別途利用可能な製造方法のうちの一つを選択して、所望の最終生成物を製造することができる。
【0092】
カプセルまたは錠剤などの固体経口投与栄養組成物を製造する場合、成分を医薬担体(例えば、セルロース、コーンスターチ、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム類などの従来の打錠成分)および他の医薬希釈剤と混合して、栄養組成物の実質的に均質な混合物を含む固体予備製剤組成物を形成することができる。軟ゲルカプセルまたは錠剤として投与する場合、それは好ましくは水と一緒に飲み込む。
【0093】
経口投与用の液体製剤は、例えば液剤、シロップもしくは懸濁液の形態を取ることができるか、それらを使用前に水その他の好適な媒体で再生する乾燥製品として提供することができる。そのような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水系媒体(例えば、扁桃油、油状エステル類またはエチルアルコール);保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸;ならびに人工もしくは天然着色剤および/または甘味量などの製薬上許容される添加剤を用いて、従来の手段によって製造することができる。
【0094】
本発明の栄養組成物が粉末形態である場合、各種の乾燥粉末成分を、比較的均一な混合物が得られるまで混合することができる。その粉末は、水もしくは果汁などの液体と混合し、得られた懸濁液を飲むことで投与される。液体形態では、粉末を水などの適切な液体担体と混合し、得られた懸濁液を適切な容器に入れる。錠剤形態では、成分を混合し、当業界で公知の方法に従って錠剤を製造する。そのような方法には、湿式造粒法、乾式造粒法または直接圧縮などがある。
【0095】
本発明の栄養組成物は、単一の栄養物本体、部分栄養物本体または栄養補助食品として製剤その他の形態で使用される。本発明の単一栄養物本体の実施形態は代表的には、個体の健康を維持する上で十分な量で脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミン類およびミネラル類を含む(栄養不良を防止する等のため)。そのような量は当業者には公知であり、そのような製剤を製造する際に容易に計算することができる。例えば、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)のロス・プロダクツ(Ross Products)部門から入手可能なオキセパ(登録商標)、エンシュア(登録商標)、プロモート(Promote;登録商標)およびプロシュア(ProSure;登録商標)ならびに米国特許第6200624号;6077828号;6066344号;5908647号;5554589号;5416077号;5223285号;5221545号(これらは参照により、栄養組成物についての記載(ならびにその栄養組成物の製造および使用)に関して本明細書に組み込まれるものとする。)に記載の組成物などの栄養組成物を、本明細書に記載のボスウェリア抽出物および/またはフレボディウム抽出物と組み合わせることができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「オキセパ」という用語は、アボット・ラボラトリーズ社のロス・プロダクツ部門(Ross Products Division, Abbott Laboratories, Columbus, Ohio, USA)から市販されている経腸栄養処方を指す。この処方は、機械的人工換気を受けている瀕死状態の患者の食事管理のための低炭水化物でカロリー的に濃厚な経腸栄養製品である。これは、エイコサペンタエン酸(EPA)(鰯油から)、γ−リノレン酸(GLA)(ルリヂサ油から)および酸化防止剤を含む。オキセパは、経管栄養法のための単一栄養源として用いることができる。本明細書に記載のオキセパ経腸処方は、下記のカロリー配分を有する。
【0097】
【表2】

【0098】
オキセパ処方は、水、カゼイン酸ナトリウムおよびカルシウム、砂糖(ショ糖)、マルトデキストリン(トウモロコシ)、菜種油、中鎖トリグリセリド類(ヤシ油)、精製脱臭鰯油、ルリヂサ油、クエン酸カリウム、塩化マグネシウム、リン酸三カルシウム、大豆レシチン、クエン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、アスコルビン酸、天然および人工香味剤、塩化コリン、タウリン、d−α−トコフェリルアセテート、L−カルニチン、塩(塩化ナトリウム)、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、ナイアシンアミド、カラギーナン、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第二銅、塩化チアミン塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、β−カロテン、ビタミンAパルミチン酸塩、葉酸、ビオチン、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、シアノコバラミンおよびビタミンD3を含む。
【実施例】
【0099】
下記の実施例は本発明を説明するものである。下記の実施例または本明細書および特許請求の範囲の別の箇所で別段の断りがない限り、部およびパーセントはいずれも重量基準であり、温度は摂氏単位であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0100】
実験1
ヒト疾患と一部に類似性を共有するマウスでの関節リウマチのモデル(コラーゲン誘発関節炎またはCIA)下に試験を行う。その試験では、CIAの重度および炎症メディエータ濃度に対する植物抽出物およびオキセパ(登録商標)の効果を評価する。
【0101】
7週齢DBA/1J(H−2)雄マウス(n=105)をハーラン(Harlan, Barcelona, Spain)から購入し、プラスチックケージで(各ケージに動物5匹)、飼料および飲料水は自由に摂取させながら飼育する。4日間の馴致期間後、マウスを体重ごとにペアとし、下記の群に分ける。
【0102】
1)対照:後述する免疫化マウスであって、AIN−93G飼料で飼育した群(n=15)。
2)コルチコイド投与群:対照飼料で飼育し、1日1回プレドニゾロン(5mg/kg)の腹腔内注射で処置した免疫化マウス(n=15)。
3)ボスウェリア群:0.5%のボスウェリア・セラータ抽出物(β−ボスウェル酸23.47%)を補充した対照飼料で飼育した免疫化マウス(n=15)。
4)クルクマ(Curcuma)群:0.5%のクルクマ・ロンガ(Curcuma longa)抽出物(96.12%のクルクミノイド)を補充した対照飼料で飼育した免疫化マウス(n=15)。
5)クラタエバ(Crataeva)群:0.5%のグラタエバ・ヌルバラ(Grataeva nurvala)抽出物(80%のルペオール:)を補充した対照飼料で飼育した免疫化マウス(n=15)。
6)ポリフェノール混合物群:0.9%の緑茶、ブドウ皮およびレスベラトロル抽出物の混合物(2:3:1)を補充した対照飼料で飼育した免疫化マウス(n=15)。
7)オキセパ(登録商標)群:オキセパ(登録商標)で飼育した免疫化マウス(n=15)。
【0103】
尾の根元にウシコラーゲンII乳濁液(完全フロインドアジュバント中のII型コラーゲン)100μLを皮内注射することで、動物免疫化に関して従う手順を行う。コラーゲンはコンドレックス(MDbiosciences, Switzerland)が供給するものであり、乳濁液は下記のように調製する。すなわち、一定で緩やかな攪拌下に、コラーゲンを0.05M酢酸(2mg/mL)に4℃で終夜溶解させ、フロインドアジュバント(1:1)で乳濁させる。フロインドアジュバントを、高速ホモジナイザー(ultraturrax)中27000rpmで攪拌しながら滴下する。免疫化は1回のみ必要である。マウスは炎症の臨床症状について1日1回評価し、それの体重を測定する。臨床的関節炎の重度を、公称スケールで等級分けする。関節炎発症から10日後にマウスを屠殺する。
【0104】
軽い麻酔下に眼窩後方洞から採血し、頸椎脱臼によって動物を直ちに屠殺する。前足および後足を切り取り、−80℃で冷凍させる。血液検体を室温で1時間覆い(cloth)、6500gで10分間遠心することで血清を血球から分離する。
【0105】
関節ホモジネートにおいて次のパラメータ、II型コラーゲンに対する抗体(IgG2a);炎症性サイトカイン類:IL−1βおよびIL−6;対抗制御的サイトカイン類:IL−10;およびマトリクス・メタロプロテイナーゼ類:MMP−9を測定する。II型コラーゲンに対する抗体(IgG2a)も血清で測定する。
【0106】
マウスの関節および血清中の特異的抗CII−IgG2をELISAによって測定する。すなわち、96ウェルマイクロタイタープレートを4℃でCIIによって終夜コーティングし、0.05%Tween−PBSで洗浄し、室温にて1%ウシ血清アルブミン−PBSで2時間ブロックし、再度洗浄する。アッセイの前にサンプルをPBSで希釈し、血清の場合は1:16000、均質化関節の場合は1:50である。0〜500ng/mLの標準(II型コラーゲンAb−2、クローン2B1.5、ネオマーカーズ(NeoMarkers))50μLおよびサンプルを二連で各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートする。ウェルを十分に洗浄し、ビオチン結合ラット抗マウスIgG2aモノクローナル抗体(Pharmigen International)を加え、室温で1時間インキュベートする。インキュベーション後、未結合抗体を洗浄し、アビジンペルオキシダーゼを加え、室温で30分間インキュベートする。プレートを再度洗浄し、基質溶液(ABTS)を加え、暗所で12分間インキュベートする。最後に、405nmでマイクロプレート読取装置で吸光度を測定する。
【0107】
供給者の説明に従ってBIOTRAK(Amersham Pharmacia Biotech)からの市販のキットを用い、関節ホモジネートをそれ以上希釈せずに用いて、均質化した関節中のサイトカイン類およびMMP−9を、ELISAによって測定する。
【0108】
統計解析のため、3標準偏差を超えて平均から異なっていた場合は、異常値を除外する。レーベン検定によって、分散の一様性を解析する。群間の等分散性の仮定が満足されないことから、ウェルチの補正を行う対応のないt検定ならびに適切な場合にはボンフェローニの手順およびクラスカル・ワリス検定によってペナルティ付としたp値によって、対照群との比較を行う。関節炎指数のカテゴリーへの分類を、χ二乗によって解析する。
【0109】
関節炎発生率の時間経過ならびに関節炎発症日の平均を図1に示してある。その発生率は、対照群、ボスウェリア群およびポリフェノール群で100%であり、オキセパ群およびクルクマ群で95%である。プレドニゾロンで処理したマウスは関節炎を発症しない。関節炎発症は、ボスウェリア群およびオキセパ群で有意に遅延するが、ポリフェノール群ではわずかな傾向が認められるだけである(p=0.111)。
【0110】
関節炎の重度(すなわち、関節炎指数および相対重度)を図2に示してある。抽出物を補充した飼料を摂取させた群と対照群の間に有意差は認められない(ANOVA、p=0.2651)。しかしながら、関節炎指数(図2)を0、1〜2、3〜5および>5というカテゴリーに分類すると、対照群とボスウェリア群、クルクマ群およびクラタエバ群の間に有意差がある。ボスウェリア群は、対照群と比較して関節炎指数が1〜2である動物の数が多いが、クルクマ群およびクラタエバ群は、関節炎指数が最も高い動物が多い。
【0111】
血清および関節ホモジネート中のII型コラーゲン(IgG2a)に対する抗体の濃度を図3に示してある。プレドニゾロン群およびボスウェリア群以外、全ての群において大きいばらつきが認められる。血清および関節ホモジネートの両方におけるIgG2aレベルは、対照群に関して、プレドニゾロン群およびボスウェリア群において有意に低い。さらに、関節ホモジネート中のII型コラーゲン(IgG2a)に対する抗体の含有量は、対照群と比較してクラタエバ群の方が低い。
【0112】
試験群の関節ホモジネート中のIL−1β、IL−10およびMMP−9の濃度を図4に示してある。炎症性メディエータ(IL−1β、IL−6)およびMMP−9の含有量は、対照よりコルチコイド類を投与したマウスの群の方が低い。IL−1βの含有量は、対照群よりボスウェリア群の方が低い。クラタエバおよびポリフェノール補充飼料で飼育した群は、対照群と比較して関節ホモジネート中のIL−6濃度が高い傾向を有していた。IL−10の濃度は、対照群と比較して、ポリフェノール抽出物群およびオキセパ(登録商標)群の方が低い。
【0113】
結論
・0.5%ボスウェリア・セラータ抽出物、0.5%グラタエバ・ヌルバラ抽出物、0.5%ターメリック抽出物または0.9%緑茶、ブドウ皮およびレスベラトロルのポリフェノール混合物(2:3:1)を補充した飼料で飼育したマウスでは、有害効果は認められない。オキセパ(登録商標)で飼育したマウスでは、有害効果は認められない。
【0114】
・飼料へのクラタエバ・ヌルバラおよびターメリック抽出物の補充は、マウスでのコラーゲン誘発関節炎に効果を示さない。
【0115】
・飼料への0.5%のボスウェリア・セラータの補充は、マウスでのコラーゲン誘発関節炎の進行に対して有用な効果を有し、対照動物より重度の低い疾患のパターンを示している。この抽出物の飼料への添加は、1)関節炎発症日を有意に遅らせ、2)関節ホモジネートおよび血清の両方においてIgG2aの含有量を低下させ、3)関節ホモジネート中の炎症性サイトカインIL−1βの含有量を低下させ、4)関節炎指数が高スコアである動物の数を減らす。
【0116】
・オキセパ(登録商標)による飼育によって、炎症の臨床症状も炎症メディエータも減らない。しかしながら、それによって関節炎の発症日が遅れる。
【0117】
実験2
第2の試験を行って、CIAマウスでフレボディウム・デクマヌム抽出物を調べる。マウスを、実験1モデルに従って処理する。下記の2群について試験を行う。
【0118】
1)対照1:AIN−93G飼料で飼育した免疫化マウス(n=15)。
2)フレボディウム群:0.5%のフレボディウム・デクマヌム抽出物を補充した対照飼料で飼育した免疫化マウス(n=15)。
【0119】
全ての動物から臨床データが得られるが、生化学データは各群5匹の動物のみからである。臨床パラメータには、発生率、関節炎発症日、関節炎指数および相対重度などがある。血清中の生化学パラメータには、II型コラーゲンに対する抗体(IgG2a)などがある。関節における生化学パラメータには、II型コラーゲンに対する抗体(IgG2a)、IL−1β、IL−6およびIL−10などがある。
【0120】
関節炎発生率の時間経過ならびに関節炎発症の平均日数を図5に示してある。発生率は対照とフレボディウム群で同じであるが(100%)、後者において関節炎発症は有意に遅れている。関節炎の全体的重度(関節炎指数)または相対的重度に関しては、有意差はない。しかしながら、平均関節炎指数は、相対的に高いスコアを有する動物のパーセントが相対的に低いために、フレボディウム群での方が低い(図6)。表2には、血清および関節ホモジネート中でのII型コラーゲン(IgG2a)に対する抗体の濃度を示している。関節ホモジネート中の炎症メディエータ(IL−1β、IL−6およびIL−10)の濃度も示している。II型コラーゲンに対する抗体(IgG2a)、IL−1β、IL−6のレベルは以前の実験の範囲内であるが、IL−10のレベルは既報のものより低い。対照とフレボディウム群との間に有意差は認められない(すなわち、飼育したII型コラーゲン免疫化マウスの中で、対照飼料で飼育したマウスまたはフレボディウム抽出物を補充した同じ飼料で飼育したマウス)。
【0121】
【表3】

【0122】
結論として、0.5%のフレボディウム・デクマヌム抽出物を補充した飼料で飼育したマウスでは、有害効果は認められない。フレボディウム・デクマヌム抽出物を飼料に加えることで、関節炎発症日が有意に遅延し、疾患重度に影響はなかった。この効果は、測定される炎症パラメータのレベルにおける変化によっては説明されない。
【0123】
(実験3)
実験1を繰り返し、試験動物について各対照群または治療群に関連する各種組織学的変化を評価する。この実験の目的は、上記のものと同じ実験モデルでの軟骨および骨の組織学的構造に対するボスウェリア・セラータ抽出物およびフレボディウム・デクマヌム抽出物ならびにオキセパ(登録商標)の効果を示すことにある。
【0124】
上記モデルを再度完了した後、軽い麻酔下に頸椎脱臼することで、関節炎発症から10日後にマウスを屠殺する。前足および後足を切り取り、皮膚を除去する。次に、それぞれを4%緩衝ホルムアルデヒドに2〜3日間浸漬する。その後、それぞれを脱石灰剤溶液で2時間処理し、再度さらに60〜90分間処理する。濃度を上昇させながらアルコール溶液でサンプルを脱水し、パラフィンに包埋し、4μmの薄片に切り、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色する。
【0125】
その後、前足における肘、ラジオ−キュビト−カルポ(radio-cubito-carpo)(足首)、手根中手骨および中手指節ならびに膝、脛末節(足首)、足根中足関節、中足指節という関節を調べる。滑膜炎、パンヌス形成、軟骨損傷および骨破壊などの関節炎の関節の代表的な変化を検討し、0〜3の公称スケールでスコアを付ける。そのスケールは各パラメータについて下記のように定義される。
【0126】
滑膜炎
0=なし:正常な滑膜−関節周囲組織;1=軽度:関節周囲組織での炎症細胞の浸潤;2=中等度:細胞浸潤および中等度の浮腫;3=重度:顕著な細胞浸潤および浮腫。
【0127】
パンヌス形成
滑膜−軟骨接合部での滑膜組織の無(0)、軽度(1)、中等度(2)または重度(3)の増殖。
【0128】
軟骨損傷
0=なし:正常な軟骨;1=軽度:軽度の軟骨細胞損失および/またはコラーゲン破壊を伴う領域I(外部)の損傷;2=中等度:中等度の軟骨細胞損失および/またはコラーゲン破壊を伴う領域II(内部)の損傷:3=重度:多発性の軟骨細胞損失および/またはコラーゲン破壊を伴う全ての領域の重度の損傷。
【0129】
軟骨下骨破壊
0=なし:正常な骨;1=軽度:一部領域の皮質変性、少ない破骨細胞;2=中等度:中等度の髄質損傷を伴う明瞭な骨変性、比較的多い破骨細胞;3=重度:強度の皮質および髄質骨破壊、多数の破骨細胞。
【0130】
各組織学的パラメータおよび動物について、全ての関節のスコアを合計して、全体スコアを得る。組織検査担当者には、サンプル評価の期間中、試験群については知らせない。
【0131】
統計解析
バートレット検定によって分散の一様性を調べる。分散の一様性が満足される場合は、データを一元配置ANOVAによって解析する。分散が一様でない場合は、ノンパラメトリック法を用いる。解析は、グラフ・パッド・プリズム・ソフトウェア(Graph Pad Prism Software)バージョン4によって行う。
【0132】
結果
免疫化手順中に2匹のマウスが死亡し、1匹はコルチコイド群から、1匹はオキセパ(登録商標)群からである。結果的に、動物28匹を評価している。プレドニゾロン投与したマウスは関節炎を発症していないが、対照、ポリフェノール群およびフレボディウム群における経時的な関節炎の発生率は100%である。ボスウェリア群中のマウス1匹およびオキセパ群中の1匹が、その疾患を発症していない。
【0133】
関節炎指数、関節炎発症のデータならびに炎症、パンヌス形成、軟骨損傷および骨破壊に関する総スコアを表3に示してある。各スコアの平均値を、形態的炎症の指数とともに図7に示してあり、これは4つの組織学的パラメータのスコアを合計することで得たものである。
【0134】
下記に示すように、表3には、対照飼料、ボスウェリア・セラータ0.5%、緑茶、ブドウ皮およびレスベラトロルのポリフェノール混合物(2:3:1)0.9%、フレボディウム・デクマヌム0.5%およびオキセパを補充した同じ飼料で飼育したII型コラーゲン−免疫化マウスでの関節炎指数、関節炎発症日および組織学的スコアに関するデータを示してある。コルチコイド群は、対照飼料で飼育し、1日1回プレドニゾロンを腹腔内投与した免疫化マウスである。試験動物からの組織検査スライドを、図8〜13に示してある。
【0135】
【表4】

【0136】
関節炎発症日は群間で同様であるが、病気進行は、特にオキセパ(登録商標)群で若干遅延し、それは本明細書に記載の以前の実験の結果と類似している。各群においてバラツキが大きく、個体数が少ないために、有意差は認められない。ボスウェリア群では、動物番号4が、この群内の他の動物と異なる挙動を示し、この群内でバラツキが相対的に高い原因となっており、そのために対照群に関して有意差を検出することができない。しかしながら、平均すると、ボスウェリア群で相対的に低いスコアが認められ、オキセパ(登録商標)群およびフレボディウム群がそれに続いている。
【0137】
ボスウェリアおよびオキセパは、パンヌス発生の阻害においてより有効である。実際に、飼料にボスウェリア抽出物を加えることで、相対的に高い関節炎指数を有する動物の場合であっても、この群でのパンヌス形成はほぼ完全に阻害されている(関節炎指数12、パンヌス形成2)。
【0138】
結論
高い群内バラツキおよび小さいサンプル数のために、実験3では群間の有意差は検出できない。しかしながら、各動物について各組織学的パラメータを個別に考慮するか、スコアの合計を考慮すると、組織損傷程度に従った群の順序は、ボスウェリア<オキセパ(登録商標)<フレボディウム<対照<ポリフェノールである。これらの結果は、マウスでのコラーゲン誘発関節炎における関節リウマチ発生に対するオキセパならびに0.5%でボスウェリア・セラータもしくはフレボディウム・デムマヌムを補充した粉末齧歯類飼料の有用な効果を示す本発明者らの既報の報告と一致するものである。
【0139】
以上、ある種の実施形態に関して本発明を説明したが、当業者には、本明細書を読むことで、本発明の各種変更が明らかになることは理解しておくべきである。従って、理解しておくべき点として、本明細書に開示の発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるそのような変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスでの関節炎発症の発生率および発症日をグラフで示す図である。
【図2】実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスでの関節炎指数および相対重度をグラフで示す図である。
【図3】実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスの血清および関節ホモジネート中の抗CII IgG2a濃度をグラフで示す図である。
【図4】実験1からの、対照飼料、ボスウェリア、クルクマ、クラタエバまたはポリフェノール抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)による免疫化マウスの関節ホモジネート中のIL−1β、IL−6、IL−10およびMMP−9濃度をグラフで示す図である。
【図5】実験2からの、対照飼料またはフレボディウム抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスでの関節炎発症の発生率および発症日をグラフで示す図である。
【図6】実験2からの、対照飼料またはフレボディウム抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスでの関節炎指数および相対重度をグラフで示す図である。
【図7】対照飼料、ボスウェリア、ポリフェノールまたはフレボディウム・デクマヌム(Phlebodium decumanum)抽出物を補充した同じ飼料を摂取させたII型コラーゲン免疫化マウスおよびオキセパ(登録商標)を摂取させた免疫化マウスでの滑膜炎、パンヌス形成、軟骨損傷、骨破壊および形態的炎症の指数をグラフで示す、これらに関しての実験3からの図である。
【図8】重度の炎症(3度)、軽度のパンヌス形成(1度)、重度の軟骨損傷(3度)および非常に軽度の骨破壊(1度)を示す被験マウスの右後足からの膝の実験3(対照群)からの組織スライドを示す図である。
【図9】正常な関節を示す被験マウスの左後足からの膝の実験3(コルチコイド群)からの組織スライドを示す図である。
【図10】軽度の炎症(1度)、軽度の軟骨損傷(1度)および正常な骨構造を示す被験マウスの左後足からの足根関節の実験3(ボスウェリア群)からの組織スライドを示す図である。
【図11】重度の炎症(3度)、中等度のパンヌス形成(2度)、重度の軟骨損傷(3度)および骨障害なしを示す被験マウスの左後足からの膝の実験3(ポリフェノール群)からの組織スライドを示す図である。
【図12】重度の炎症(3度)、中等度の軟骨損傷(2度)および軽度の骨障害(1度)を示す被験マウスの右前足からの肘の実験3(フレボディウム群)からの組織スライドを示す図である。
【図13】炎症性細胞がほとんどない軽度の滑膜炎(1度)を示す被験マウスの右前足からの肘の実験3(オキセパ群)からの組織スライドを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪源(この脂肪源は
(i)少なくとも一つのω−3長鎖多価不飽和脂肪酸および
(ii)少なくとも一つのω−6長鎖多価不飽和脂肪酸
のうちの少なくとも一方を含む。);
(B)炭水化物源;
(C)タンパク質源;および
(D)約0.1重量%から約5重量%までのボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方
を含むことを特徴とするリウマチ疾患治療用の栄養組成物。
【請求項2】
約0.1重量%から約5重量%までの前記ボスウェリア抽出物および前記フレボディウム抽出物を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
前記フレボディウム抽出物がフレボディウム・デクマヌム(Phlebodium decumanum)抽出物を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項4】
前記ボスウェリア抽出物がボスウェリア・セラータ(Baswellia serrata)抽出物を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項5】
約0.2重量%から約3重量%までのボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項6】
バーおよび粉末のうちの一方の形態での請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項7】
液体の形態での請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項8】
前記脂肪源が、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、ドコサヘキサン酸およびα−リノレン酸のうちの少なくとも一つを含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項9】
前記脂肪源がγ−リノレン酸を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項10】
前記ボスウェリア抽出物を含み、前記ボスウェリア抽出物は少なくとも25重量%の1またはそれ以上のボスウェル酸を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項11】
前記ボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方がブルセラ科(Burseraceae)の木本およびウラボシ科(Polypodiaceae)のシダ植物のうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項12】
脂肪源(この脂肪源は、有効量の少なくとも一つのω−3長鎖多価不飽和脂肪酸または少なくとも一つのω−6長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。)、炭水化物源、タンパク質源ならびに約0.1重量%から約5重量%までのボスウェリア抽出物およびフレボディウム抽出物のうちの少なくとも一方を含む組成物を対象に投与する段階を有する、リウマチ疾患の治療方法。
【請求項13】
リウマチ疾患の治療が、前記対象における関節ホモジネート中の炎症性サイトカインの濃度を低下させる段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リウマチ疾患が、炎症性関節炎、関節リウマチ、痛風、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ウィルス性またはウィルス感染後関節炎、脊椎関節炎、骨関節炎およびリウマチからなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記対象に対して、有効量のTNF−α阻害薬を投与する段階をさらに有する請求項12に記載の方法。
【請求項16】
リウマチ疾患の治療が、関節炎症状発症の遅延を含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、約0.1重量%から約5重量%までの前記ボスウェリア抽出物および前記フレボディウム抽出物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記フレボディウム抽出物がフレボディウム・デクマヌム(Phlebodium decumanum)抽出物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ボスウェリア抽出物がボスウェリア・セラータ(Baswellia serrata)抽出物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物を前記対象に経口投与する請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−531731(P2008−531731A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558304(P2007−558304)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/007787
【国際公開番号】WO2006/096579
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】