説明

防振ガスケットおよびその製造方法

【課題】防振性能を発揮しつつ、内部の流体圧力が変化した場合であってもゴム弾性体の変形を抑制することができる防振ガスケットを提供する。
【解決手段】離隔して配置された第一取付部材11と第二取付部材12とを、筒状のゴム弾性体13が連結する。そして、ゴム弾性体13の内部または外周面に編組部材14を配置する。この編組部材14は、ゴム弾性体13より引張強度が高い材料、例えば金属や樹脂等からなる繊維を編組して筒状に形成されている。従って、ゴム弾性体13が軸方向変形およびせん断変形はできるため、防振性能を確実に発揮できる。一方、内部の流体圧力が変化する場合に、ゴム弾性体13の内径が拡径変形または縮径変形しようとする場合には、編組部材14によりその変形が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路を形成する筒状からなり、シール性能に加えて防振性能を有する防振ガスケット、および、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防振ガスケットは、例えば、特許文献1および2に、自動車の内燃機関の吸気系通路上に設けられるものが開示されている。これらの防振ガスケットは、一対の取付部材と、ゴム弾性体とを備えている。一対の取付部材は、中央に貫通孔が形成され、それぞれ離隔して配置されている。具体的には、一方の取付部材は、吸気系通路上における内燃機関側、例えば、内燃機関の吸気ポートから延出された吸気管の先端に取り付けられる。他方の取付部材は、吸気系通路上における内燃機関と反対側、例えば、吸気ダクトが接続されるコレクタに取り付けられる。そして、ゴム弾性体は、筒状からなり、一対の取付部材の両貫通孔を連通するように、一対の取付部材に連結されている。
【0003】
このような構成により、ゴム弾性体が、一対の取付部材の離隔方向に圧縮、伸長変形が可能となり、且つ、当該離隔方向の直交方向にせん断変形が可能となる。従って、ゴム弾性体が、内燃機関の作動により内燃機関に振動が発生した場合に、ゴム弾性体により、その振動が吸収され、吸気ダクト等の吸気系部品側へ伝達される振動が低減される。
【特許文献1】特開平9−126071号公報
【特許文献2】特開平10−259874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に吸気系通路上においては、内燃機関の作動に応じて、流通する流体圧力が大きく変化する。そのため、防振ガスケットの内部の流体圧力が変化する。そして、防振ガスケットは、上述したように、防振性能を発揮するため、一対の取付部材間をゴム弾性体により連結されている。従って、このゴム弾性体が、内部の流体圧力の変化に応じて変形するおそれがある。例えば、内部の流体圧力が大きくなると、ゴム弾性体の内部体積が膨張するように、ゴム弾性体が変形する。また、内部の流体圧力が小さくなると、ゴム弾性体の内部体積が縮小するように、ゴム弾性体が変形する。
【0005】
このようなゴム弾性体の変形により、流体の流通方向に直交する方向における流体通路断面積が変化することになる。この流体通路断面積の変化により、エネルギー損失が発生する。つまり、流通する流体の流速や流量等に影響を与えることになる。その結果、内燃機関の性能等に影響を与えるおそれがある。
【0006】
そして、上述したゴム弾性体の変形は、ゴム弾性体の筒長が長いほど発生しやすく、且つ、ゴム弾性体の肉厚が薄いほど発生しやすくなる。ただし、ゴム弾性体の筒長が長いほど、且つ、ゴム弾性体の肉厚が薄いほど、防振性能が高くなる。つまり、高い防振性能を有しつつ、エネルギー損失が低減できる防振ガスケットが望まれる。
【0007】
ここで、ゴム弾性体を用いたガスケットとして、特開2001−349434号公報、実公平7−40123号公報などに開示されたものがある。しかし、これらのガスケットは、何れもシール性能を発揮する構成ではあるが、防振性能を発揮する構成ではない。防振性能を発揮するためには、やはり、一対の取付部材を必要とし、この一対の取付部材間をゴム弾性体により連結することが必要である。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、防振性能を発揮しつつ、内部の流体圧力が変化した場合であってもゴム弾性体の変形を抑制することができる防振ガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の防振ガスケットは、第一取付部材と、第二取付部材と、ゴム弾性体と、編組部材と、を備えることを特徴とする。第一取付部材は、中央部に第一貫通孔が形成され、第一部材に取り付けられる。この第一取付部材は、例えば板状からなり、金属や樹脂等からなる。そして、第一取付部材に形成された第一貫通孔は、例えば、円形や角形等の形状からなる。
【0010】
第二取付部材は、中央部に第二貫通孔が形成され、第一取付部材に離隔して配置され、第二部材に取り付けられる。この第二取付部材は、第一取付部材と同様、例えば、板状からなり、金属や樹脂等からなる。そして、この第二取付部材は、例えば、第一取付部材に対して対向した状態で離隔して配置される。また、第二取付部材に形成された第二貫通孔は、例えば、円形や角形等の形状からなる。そして、この第二貫通孔は、例えば、第一貫通孔と同形状である。
【0011】
ゴム弾性体は、筒状からなり、第一貫通孔と第二貫通孔とを連通するように第一取付部材および第二取付部材に連結される。つまり、ゴム弾性体は、離隔して配置された第一取付部材と第二取付部材とを一体的に連結する。例えば、ゴム弾性体は、一体加硫成形により、第一取付部材および第二取付部材に接着される。そして、ゴム弾性体の筒状の一方端部が、第一貫通孔の部分に取り付けられている。ゴム弾性体の筒状の他方端部が、第二貫通孔の部分に取り付けられている。つまり、第一貫通孔、ゴム弾性体の筒状内部、および、第二貫通孔が、流体通路を形成する。
【0012】
編組部材は、ゴム弾性体より引張強度の高い材料からなる繊維を編組して筒状に形成され、ゴム弾性体の内部への埋設およびゴム弾性体の外周面への固着の少なくとも何れか一方により配置される。
【0013】
ここで、編組部材は、繊維を編組して筒状に形成されていることにより、以下のようになる。まず、編組部材は、繊維を編組しているので、基本的には変形の自由度が高い。具体的には、編組部材は、筒状の軸方向への圧縮変形、および、筒状の軸直交方向へのせん断変形に対して変形自由度が高い。軸直交方向へのせん断変形とは、筒状の両端が相対的に軸直交方向へ移動した場合に、軸方向が傾斜するような変形である。
【0014】
ただし、編組部材は、繊維を編組して筒状に形成されているので、当該編組部材が伸びる方向への変形に対しては非常に高い強度を有する。具体的には、編組部材は、筒状の軸方向への伸長変形に対して高強度となる。従って、編組部材は、筒状の軸方向への引張力が作用した場合に、変形しないように作用する。さらに、編組部材は、拡径変形に対して高強度となる。従って、編組部材は、拡径する方向に力が作用した場合に、変形しないように作用する。さらに、仮に筒状の両端が固定されている場合には、筒状の中間部分が径方向へ縮径する変形に対して高強度となる。従って、編組部材は、当該場合に、筒状の中間部分の縮径する方向に力が作用した場合に、変形しないように作用する。
【0015】
このように、本発明の防振ガスケットが構成されていることにより、以下のように作用する。まず、第一取付部材と第二取付部材とが離間方向に近接する方向へ相対移動する場合に、ゴム弾性体は、当該離間方向に圧縮変形しようとする。この場合、編組部材は、上述したように、当該離間方向、すなわち編組部材の筒状の軸方向への圧縮変形の自由度は高いので、ゴム弾性体の変形に追従する。さらに、第一取付部材と第二取付部材とが離間方向に直交する方向へ相対移動する場合には、ゴム弾性体は、せん断変形する。この場合、編組部材は、当該離間方向の直交方向、すなわち編組部材の筒状の軸直交方向へのせん断変形の自由度が高いので、ゴム弾性体の変形に追従する。つまり、これらの場合には、ゴム弾性体による防振効果を確実に発揮できる。これにより、第一取付部材と第二取付部材との間において、振動が伝達されることを抑制できる。
【0016】
また、第一取付部材と第二取付部材とが離間方向に遠ざかる方向に相対移動する場合には、ゴム弾性体は、当該離間方向に伸長変形しようとする。この場合、編組部材は、当該離間方向の伸長変形には変形しないように作用する。ただし、ゴム弾性体および編組部材を第一取付部材と第二取付部材との離間方向に予め圧縮された状態で取り付けられている場合には、この予圧されている分、編組部材は、第一取付部材と第二取付部材との離間方向に変形することができる。つまり、当該離間方向に予圧しておけば、ゴム弾性体および編組部材は、第一取付部材と第二取付部材との離間方向への伸長変形できる。従って、この場合のゴム弾性体による防振効果を確実に発揮できる。
【0017】
一方、第一取付部材および第二取付部材の位置は変化しない場合において、流体通路内部の圧力が高くなる場合には、以下のようになる。この場合、ゴム弾性体は、その内部の圧力が高くなることで、内径が大きくなるように変形しようとする。ただし、ゴム弾性体の両端は、第一取付部材および第二取付部材に取り付けられているので変形しない。従って、ゴム弾性体のうち、筒状の軸方向の中間部分ほど、内径が大きくなるように変形しようとする。これに対して、編組部材は、上述したように、拡径変形に対して高い強度を有する。従って、編組部材は、ゴム弾性体の内径が大きくなるような変形を、抑制するように作用する。
【0018】
さらに、流体通路内部の圧力が低くなる場合には、ゴム弾性体は、その内部の圧力が低くなることで、内径が小さくなるように変形しようとする。ただし、ゴム弾性体の両端は、第一取付部材および第二取付部材に取り付けられているので変形しない。従って、ゴム弾性体のうち、筒状の軸方向の中間部分ほど、内径が小さくなるように変形しようとする。これに対して、編組部材は、上述したように、筒状の両端が固定されている場合には、筒状の中間部分が径方向へ縮径する変形に対して高い強度を有する。従って、編組部材は、ゴム弾性体の内径が小さくなるような変形を、抑制するように作用する。
【0019】
つまり、ゴム弾性体の内部を流通する流体の圧力変化に伴って、ゴム弾性体の内部の体積が変化しようとする際に、編組部材によりゴム弾性体の変形を抑制できる。その結果、ゴム弾性体の内部における、流体の流通方向に直交する方向の断面積が変化することを抑制できる。従って、当該断面積の変化に伴うエネルギー損失を低減できる。さらに、当該断面積の変化により流通流体の流速や流量等に与える影響を低減できる。
【0020】
ここで、編組部材は、ゴム弾性体の内部に埋設してもよいし、ゴム弾性体の外周面に固着するようにしてもよい。編組部材が、ゴム弾性体の内部に埋設される場合には、編組部材が表面に露出していない。従って、例えば、編組部材に金属等を用いた場合に、錆びることを防止できる。その結果、金属等からなる編組部材の長寿命化を図ることができる。さらに、編組部材がゴム弾性体の内部に埋設されているということは、編組部材は外周面よりも径方向内方に位置していることになる。従って、ゴム弾性体の内周面側の変形に対する抑制効果が高くなる。
【0021】
さらに、編組部材がゴム弾性体の内部に埋設されているということは、編組部材の周囲全体がゴム弾性体に被覆されていることになる。これにより、編組部材は、ゴム弾性体の変形に対する追従性が良好となり、且つ、編組部材の変形に対してゴム弾性体の変形依存性が高くなる。このように、ゴム弾性体の変形に対する編組部材の追従性が良好であることにより、編組部材がゴム弾性体の防振特性に影響が及ぼすことを防止できる。また、編組部材の変形に対してゴム弾性体の変形依存性が高いことにより、編組部材が変形しないように作用する場合に、確実にゴム弾性体の変形を抑制できる。
【0022】
また、編組部材をゴム弾性体の外周面に固着する場合には、編組部材の取り付けが非常に容易となる。例えば、編組部材は、ゴム弾性体と一体加硫成形によりゴム弾性体に固着されるようにしてもよい。また、編組部材は、ゴム弾性体を加硫成形した後に、その外周面に接着剤等により固着してもよい。何れの場合にも、編組部材の取り付けが非常に容易である。
【0023】
ここで、編組部材は、複数からなり、径方向に多層配置してもよい。例えば、編組部材の一つは、ゴム弾性体の内部に埋設し、且つ、編組部材の他の一つは、ゴム弾性体の外周面に固着するようにしてもよい。また、多層の編組部材をゴム弾性体の内部に埋設するようにしてもよい。
【0024】
なお、編組部材は、ゴム弾性体の内部または外周面に配置している。つまり、編組部材はゴム弾性体の内周面には配置していない。仮に、編組部材を内周面に配置すると、流体通路の抵抗が大きくなり、エネルギー損失が大きくなると共に、流体の流速や流量に与える影響が大きい。さらに、編組部材を内周面に配置すると、編組部材とゴム弾性体とが相互に変形することに伴う接触により、ゴム弾性体が剥離するおそれがある。そして、この剥離したゴム弾性体が流通流体中に混入するおそれがあり、当該流通流体を利用する装置へ悪影響を及ぼすおそれがある。さらに、ゴム弾性体が剥離することにより、ゴム弾性体の防振特性が悪化するおそれがある。このような理由により、編組部材は、内周面に配置せず、内部または外周面に配置している。
【0025】
(2)また、編組部材の材料は、樹脂、金属、ガラスおよびカーボンの中から選択された何れかとするとよい。編組部材にこれらの材料を用いることで、編組部材の筒状が伸びる方向への変形に対して、確実に高い強度を有することができる。特に、樹脂および金属を用いる場合には、成形が容易であり、上記変形に対してより高い強度を有する。
【0026】
(3)また、編組部材は、第一取付部材および第二取付部材に固定されているようにしてもよい。これにより、ゴム弾性体を加硫成形する際に、編組部材を確実に位置決めすることができ、製造が容易となる。特に、編組部材をゴム弾性体の内部に埋設する場合には、製造の容易化に寄与する。
【0027】
さらに、編組部材を第一取付部材および第二取付部材に固定する場合には、第一取付部材と第二取付部材との離間範囲全体に編組部材が設けられることになる。これにより、第一取付部材と第二取付部材との離間範囲全体に亘って、上述したゴム弾性体の変形の抑制効果を発揮できる。
【0028】
さらに、ゴム弾性体は、本来、伸長変形に対してそれほど強いものではない。そのため、ゴム弾性体が伸長変形するような場合には、ゴム弾性体の耐久性が低下するおそれがある。ところで、編組部材は、筒状の軸方向への伸長変形に対しては変形しないように作用する。従って、編組部材が当該離間範囲全体に設けられることにより、ゴム弾性体が伸長変形することを抑制できる。つまり、ゴム弾性体の耐久性の低下を抑制できる。なお、上述したように、第一取付部材と第二取付部材とが離間方向に遠ざかる方向へ相対移動する場合には、ゴム弾性体に予圧をかけた状態で取り付けることで対応できる。
【0029】
(4)また、編組部材は、第一取付部材および第二取付部材に固定される場合の他に、以下のようにしてもよい。例えば、編組部材は、第一取付部材および第二取付部材の少なくとも何れか一方に対して離隔して配置されるようにしてもよい。すなわち、編組部材の筒状の両端の何れもが、第一取付部材および第二取付部材から離隔している状態、および、編組部材の筒状両端の何れか一方が、第一取付部材または第二取付部材から離隔している状態である。さらに、換言すると、編組部材は、少なくとも、ゴム弾性体における第一取付部材および第二取付部材との連結部位付近を除く部位に配置されている。
【0030】
ここで、ゴム弾性体における第一取付部材および第二取付部材との連結部位付近は、ある程度高い剛性を有している。つまり、ゴム弾性体の内部の圧力が変化した場合に、当該連結部位付近におけるゴム弾性体の変形量は小さい。これに対して、ゴム弾性体のうち当該連結部位付近を除く部位は、内部の圧力変化に伴って、大きく変形するおそれがある。しかし、編組部材が、当該連結部位付近を除く部位には、必ず配置されている。従って、このように、編組部材を第一取付部材および第二取付部材に固定しないとしても、第一と第二取付部材との離間範囲全体として、ゴム弾性体が伸長変形することを抑制できる。
【0031】
(5)そして、上記(1)〜(4)において、第一取付部材は、内燃機関の吸気系通路上における内燃機関側の部品に取り付けられ、第二取付部材は、吸気系通路上における内燃機関と反対側の部品に取り付けられるようにするとよい。
【0032】
ここで、内燃機関の作動により内燃機関に振動が発生する。しかし、吸気系通路上に本発明の防振ガスケットを配置することで、ゴム弾性体により内燃機関の振動を吸収することができる。従って、内燃機関から吸気ダクト等の吸気系部品に伝達される振動が低減される。また、内燃機関の吸気形通路上においては、流通流体の圧力が大きく変化する。従って、ゴム弾性体が伸長する方向へ変形する可能性が非常に高い。しかし、上述した編組部材を有することにより、確実にゴム弾性体が伸長する方向への変形を抑制できる。
【0033】
(6)次に、上述した本発明の防振ガスケットのうち、編組部材をゴム弾性体の内部に埋設する場合において、その製造方法について説明する。
【0034】
すなわち、本発明の製造方法の対象である防振ガスケットは、中央部に第一貫通孔が形成され、第一部材に取り付けられる第一取付部材と、中央部に第二貫通孔が形成され、第一取付部材に離隔して配置され、第二部材に取り付けられる第二取付部材と、筒状からなり、第一貫通孔と第二貫通孔とを連通するように第一取付部材および第二取付部材に連結されるゴム弾性体と、ゴム弾性体より引張強度の高い材料からなる繊維を編組して筒状に形成され、ゴム弾性体の内部に埋設される編組部材とを備える。
【0035】
そして、本発明の防振ガスケットの製造方法は、編組取付工程と、金型配置工程と、加硫成形工程とを備えることを特徴とする。編組取付工程は、編組部材の筒状の両端のそれぞれを第一取付部材および第二取付部材に取り付ける工程である。金型配置工程は、編組部材が取り付けられた第一取付部材および第二取付部材を金型に配置する工程である。加硫成形工程は、金型により形成されるキャビティにゴム射出成形をすることにより、ゴム弾性体を加硫成形する工程である。
【0036】
つまり、編組部材を第一取付部材および第二取付部材に予め取り付けておくことで、加硫成形工程におけるゴム射出成形による射出圧を受けた場合であっても、編組部材を位置決めした状態を維持することができる。従って、編組部材が、ゴム弾性体の内部に埋設され、且つ、第一取付部材および第二取付部材に固定された防振ガスケットを確実に製造することができる。
【0037】
(7)ここで、本発明の防振ガスケットの製造方法において、第一取付部材および第二取付部材のうち少なくとも何れか一方は、係止部を備え、編組取付工程は、編組部材の筒状の端部を係止部に係止するようにしてもよい。また、本発明の防振ガスケットの製造方法において、編組取付工程は、編組部材の筒状の端部を第一貫通孔および第二貫通孔のうち少なくとも何れか一方に圧入するようにしてもよい。
【0038】
また、本発明の防振ガスケットの製造方法において、第一取付部材および第二取付部材のうち少なくとも何れか一方は、第一貫通孔または第二貫通孔の周囲に全周に亘って溝部を形成し、編組取付工程は、編組部材の筒状の端部を溝部に嵌合するようにしてもよい。これらの何れの製造方法によっても、確実に上記防振ガスケットを製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の防振ガスケットによれば、シール性能および防振性能を発揮しつつ、内部の流体圧力が変化した場合であってもゴム弾性体の変形を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0041】
(1)第1実施形態
(防振ガスケット1の構成)
第1実施形態の防振ガスケット1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、防振ガスケット1の軸方向断面図(軸方向に切断した断面図)を示す。図2は、図1の防振ガスケット1の平面図を示す。図3は、図1のA−A断面図を示す。図4は、第一取付部材11および第二取付部材12の軸方向断面図を示す。具体的には、図4(a)は、第一取付部材11の軸方向断面図を示す。図4(b)は、第二取付部材12の軸方向断面図を示す。
【0042】
防振ガスケット1は、自動車の内燃機関の吸気系通路上に設けられている。具体的には、内燃機関の吸気ポートから延出された吸気管と、吸気系通路上における吸気ダクトが接続されるコレクタとの間に設けられている。つまり、防振ガスケット1は、内燃機関の作動により内燃機関が振動する場合に、その振動が吸気ダクト側へ伝達されることを抑制するためのものである。
【0043】
この防振ガスケット1は、図1〜図4に示すように、第一取付部材11と、第二取付部材12と、ゴム弾性体13と、編組部材14とから構成される。
【0044】
第一取付部材11は、鉄やアルミニウム等の金属板からなり、菱形のような形状に形成されている。そして、第一取付部材11の菱形の対向角部に、2個の取付用穴11a、11bが形成されている。さらに、第一取付部材11の中央部には、取付用穴11a、11bより大きな円形の第一貫通孔11cが形成されている。つまり、第一取付部材11は、リング状に形成されていることになる。
【0045】
さらに、この第一貫通孔11cのうち、軸方向一方端面は、周方向全周に亘って切欠部11dが形成されている。この切欠部11dは、後述する第一シール部13bが形成される部分である。さらに、第一貫通孔11cのうち切欠部11dが形成される側の端部には、径方向内方に突出する第一突環部11eが周方向全周に亘って形成されている。
【0046】
そして、この第一取付部材11は、内燃機関の吸気ポートから延出された吸気管(本発明における「第一部材」に相当する)の先端に取り付けられている。具体的には、2個の取付用穴11a、11bにボルトを挿通して、第一取付部材11が吸気管に固定される。このとき、第一貫通孔11cが吸気管の開口端に一致するようにされている。
【0047】
第二取付部材12は、鉄やアルミニウム等の金属板からなり、第一取付部材11とほぼ同形状に形成されている。すなわち、第二取付部材12は、菱形のような形状に形成されている。そして、第二取付部材12の菱形の対向角部に、2個の取付用穴12a、12bが形成されている。さらに、第二取付部材12の中央部には、取付用穴12a、12bより大きく、第一貫通孔11cと同形状である円形の第二貫通孔12cが形成されている。つまり、第二取付部材12は、リング状に形成されていることになる。
【0048】
さらに、この第二貫通孔12cのうち、軸方向一方端面は、周方向全周に亘って切欠部12dが形成されている。この切欠部12dは、後述する第二シール部13cが形成される部分である。さらに、第二貫通孔12cのうち切欠部12dが形成される側の端部には、径方向内方に突出する第二突環部12eが周方向全周に亘って形成されている。
【0049】
この第二取付部材12は、吸気ダクトが接続されるコレクタ(本発明における「第二部材」に相当する)に取り付けられている。具体的には、2個の取付用穴12a、12bにボルトを挿通して、第二取付部材12がコレクタに固定される。このとき、第二貫通孔12cがコレクタの開口端に一致するようにされている。そして、この第二取付部材12は、第一取付部材11に離隔して配置されている。具体的には、第二取付部材12は、第一取付部材11に対向するように配置されている。そして、第一取付部材11および第二取付部材12をそれぞれ相手部材に取り付ける場合には、その離間距離を僅かに小さくした状態で取り付ける。つまり、防振ガスケット1が吸気管およびコレクタに取り付けられた状態において、後述するゴム弾性体13の筒状筒状連結部13aを僅かに圧縮した状態とする。
【0050】
ゴム弾性体13は、全体として、薄肉の円筒状からなり、加硫成形されている。このゴム弾性体13は、筒状筒状連結部13aと、第一シール部13bと、第二シール部13cとから構成されている。
【0051】
筒状筒状連結部13aは、円筒状からなる部分であって、離隔して配置された第一取付部材11と第二取付部材12との間に加硫成形され、第一取付部材11と第二取付部材12とを加硫接着により連結している。この筒状筒状連結部13aは、第一貫通孔11cと第二貫通孔12cとを連通するように形成されている。すなわち、筒状筒状連結部13aの両開口端が、それぞれ、第一貫通孔11cおよび第二貫通孔12cの内周縁およびその周囲に連結されている。具体的には、筒状筒状連結部13aの内径が、第一突環部11eおよび第二突環部12eの内径よりも僅かに小さくされている。また、筒状筒状連結部13aの外径は、第一貫通孔11cおよび第二貫通孔12cの内径よりも僅かに大きくされている。このように、筒状筒状連結部13aは、その内部に、流体通路を形成する。
【0052】
第一シール部13bは、筒状筒状連結部13aのうち第一取付部材11側の端部に一体加硫成形されている部分である。この第一シール部13bは、第一切欠部11d全体に成形されている。そして、第一シール部13bは、第一取付部材11からゴム弾性体13の軸方向外方に突出している。従って、第一シール部13bは、第一取付部材11が吸気管に取り付けられた状態において、吸気管に押圧されることにより、軸方向に圧縮された状態で吸気管に当接する。つまり、第一シール部13bは、第一取付部材11と吸気管とが連通される吸気通路の外周を全周に亘ってシールする。
【0053】
第二シール部13cは、筒状筒状連結部13aのうち第二取付部材12側の端部に一体加硫成形されている部分である。この第二シール部13cは、第二切欠部12d全体に成形されている。そして、第二シール部13cは、第二取付部材12からゴム弾性体13の軸方向外方に突出している。従って、第二シール部13cは、第二取付部材12がコレクタに取り付けられた状態において、コレクタに押圧されることにより、軸方向に圧縮された状態でコレクタに当接する。つまり、第二シール部13cは、第二取付部材12とコレクタとが連通される吸気通路の外周を全周に亘ってシールする。
【0054】
編組部材14は、繊維を編組して筒状に形成されている。この編組部材14は、ゴム弾性体13より引張強度の高い材料、本実施形態においては、金属や樹脂などにより形成されている。ただし、ガラスやカーボンなどにより形成することも可能である。この編組部材14の外径は、第一貫通孔11cおよび第二貫通孔12cの内径よりも非常に僅かであるが大きく、且つ、ゴム弾性体13の筒状筒状連結部13aの外径よりも小さく形成されている。編組部材14の内径は、第一突環部11eおよび第二突環部12eの内径とほぼ同等であって、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内径よりも大きく形成されている。
【0055】
そして、編組部材14は、第一貫通孔11cおよび第二貫通孔12cに圧入されている。また、編組部材14の両端面が、第一突環部11eおよび第二突環部12eに当接している。つまり、編組部材14は、第一突環部11eおよび第二突環部12eに対して、軸方向に係合している。これにより、編組部材14は、第一取付部材11および第二取付部材12に対して位置決めされた状態で、編組部材14の両端が、第一取付部材11および第二取付部材12に固定されている。さらに、編組部材14は、ゴム弾性体13の内部に埋設されている。つまり、編組部材14は、ゴム弾性体13により全周囲を被覆されている。
【0056】
ここで、編組部材14の動作について説明する。編組部材14は、繊維を編組しているので、基本的には変形の自由度が高い。具体的には、編組部材14は、筒状の軸方向への圧縮変形、および、筒状の軸直交方向へのせん断変形に対して変形自由度が高い。ただし、編組部材14は、繊維を編組して筒状に形成されているので、編組部材14が伸びる方向への変形に対しては非常に高い強度を有する。具体的には、編組部材14は、筒状の軸方向への伸長変形、および、筒状の拡径変形に対して、変形しないように作用する。さらに、編組部材14の筒状の両端が第一取付部材11および第二取付部材12に固定されているので、筒状の中間部分が径方向へ縮径する変形に対して、変形しないように作用する。
【0057】
(防振ガスケット1の製造方法)
次に、上述した構成からなる防振ガスケット1の製造方法について、図5を参照して説明する。図5は、ゴム弾性体13を加硫成形する際の、第一取付部材11、第二取付部材12および編組部材14を成形金型に配置した状態を示す部分断面図を示す。
【0058】
まず、編組部材14の筒状の両端のそれぞれを第一取付部材11および第二取付部材12に取り付ける(編組取付工程)。つまり、編組部材14の筒状の両端を第一貫通孔11cおよび第二貫通孔12cに圧入し、且つ、編組部材14の筒状の両端面を第一突環部11eおよび第二突環部12eに当接させる。従って、この時点において、第一取付部材11、第二取付部材12および編組部材14は、実質的に一体的に結合されている。
【0059】
続いて、編組部材14が取り付けられた第一取付部材11および第二取付部材12からなる一体部品を、成形金型に配置する(金型配置工程)。ここで、成形金型は、上型21と、下型22と、中間型23とからなる。上型21は、ほぼ平板状からなり、その一方面(図5の下方面)は、第一取付部材11のうち軸方向外方の端面、および、後に成形されるゴム弾性体13の第一シール部13bに倣う形状に形成されている。下型22は、基板部22aと、基板部22aの一方面側(図5の上方面)の中央に図5の上側に突出する円形凸部22bを有する。基板部22aは、第二取付部材12のうち軸方向外方の端面、および、後に成形されるゴム弾性体13の第二シール部13cに倣う形状に形成されている。さらに、円形凸部22bは、後に成形されるゴム弾性体13の筒状連結部13aの内周面に倣う形状に形成されている。中間型23は、円筒状からなる。この中間型23の筒幅は、第一取付部材11と第二取付部材12との離間距離に対応している。そして、中間型23の内周面は、後に成形されるゴム弾性体13の筒状連結部13aの外周面に倣う形状に形成されている。つまり、編組部材14は、下型22の円形凸部22bの外周面と中間型23の内周面と間であって、両者から径方向に離隔した状態で配置されている。
【0060】
つまり、成形金型21〜23を配置した状態において、第一取付部材11は、上型21と中間型23とにより挟持されている。また、第二取付部材12は、下型22と中間型23とにより挟持されている。そして、これら成形金型21〜23により、後に成形されるゴム弾性体13の領域には、キャビティ24が形成されている。
【0061】
続いて、成形金型21〜23により形成されるキャビティ24にゴム射出成形をすることにより、ゴム弾性体13を加硫成形する(加硫成形工程)。このとき、編組部材14は、第一取付部材11および第二取付部材12に固定されているため、編組部材14がゴム射出成形による射出圧を受けた場合であっても、編組部材14は位置決めされた状態を維持できる。そして、この加硫成形工程により、成形されたゴム弾性体13は、第一取付部材11および第二取付部材12に一体的に連結される。さらに、ゴム弾性体13は、編組部材14をその内部に埋設するようにできる。
【0062】
(防振ガスケット1の作用)
次に、上述した構成からなる防振ガスケット1の作用について説明する。まず、内燃機関の作動により内燃機関が振動している場合において、防振ガスケット1により防振効果を発揮することを説明する。
【0063】
内燃機関の振動により、第一取付部材11と第二取付部材12とが離間方向に近接する方向へ相対移動する場合に、ゴム弾性体13の筒状連結部13aは、当該離間方向に圧縮変形しようとする。この場合、編組部材14は、当該離間方向、すなわち編組部材14の筒状の軸方向への圧縮変形の自由度は高いので、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形に追従する。従って、この場合においては、ゴム弾性体13の筒状連結部13aによる防振効果を発揮する。
【0064】
さらに、内燃機関の振動により、第一取付部材11と第二取付部材12とが離間方向に直交する方向へ相対移動する場合には、ゴム弾性体13の筒状連結部13aは、せん断変形する。この場合、編組部材14は、当該離間方向の直交方向、すなわち編組部材14の筒状の軸直交方向へのせん断変形の自由度が高いので、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形に追従する。つまり、この場合、ゴム弾性体13の筒状連結部13aによる防振効果を発揮する。
【0065】
ここで、防振ガスケット1は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aが筒状の軸方向に圧縮された状態(予圧をかけた状態)で、吸気系部品に取り付けられている。従って、内燃機関の振動により、第一取付部材11と第二取付部材12とが取付状態から離間方向に遠ざかる方向へ相対移動する場合には、ゴム弾性体13の筒状連結部13aが予め圧縮された分、伸長変形できる。ただし、ゴム弾性体13の筒状の軸方向長さの自由長よりも長くなるような変形は、規制される。この理由は、編組部材14が、当該離間方向の伸長変形に対して変形しないように作用するためである。つまり、予圧をかけている分、離間方向への伸長変形に対して、ゴム弾性体13の筒状連結部13aによる防振効果を発揮する。
【0066】
次に、流体通路内部の圧力が変化する場合における、防振ガスケット1の作用について説明する。まずは、流体通路内部の圧力が高くなる場合には、ゴム弾性体13の筒状連結部13aは、その内部の圧力が高くなることで、内径が大きくなるように変形しようとする。ただし、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの両端は、第一取付部材11および第二取付部材12に取り付けられているのでほとんど変形しない。従って、ゴム弾性体13の筒状連結部13aのうち、筒状の軸方向の中間部分ほど、内径が大きくなるように変形しようとする。ただし、編組部材14は、筒状の拡径変形に対しては変形しないように作用する。従って、編組部材14が、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内径が大きくなるような変形を、抑制する。
【0067】
そして、流体通路内部の圧力が低くなる場合には、ゴム弾性体13の筒状連結部13aは、その内部の圧力が低くなることで、内径が小さくなるように変形しようとする。ただし、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの両端は、第一取付部材11および第二取付部材12に取り付けられているのでほとんど変形しない。従って、ゴム弾性体13の筒状連結部13aのうち、筒状の軸方向の中間部分ほど、内径が小さくなるように変形しようとする。ただし、編組部材14は、筒状の両端が第一取付部材11および第二取付部材12に固定されているため、筒状の中間部分が径方向へ縮径する変形に対して変形しないように作用する。従って、編組部材14が、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内径が小さくなるような変形を、抑制する。
【0068】
つまり、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内部を流通する流体の圧力変化に伴って、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内部の体積が変化しようとする際に、編組部材14によりゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形を抑制できる。その結果、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内部における、流体の流通方向に直交する方向の断面積が変化することを抑制できる。従って、当該断面積の変化に伴うエネルギー損失を低減できる。さらに、当該断面積の変化により流通流体の流速や流量等に与える影響を低減できる。
【0069】
(2)第1実施形態の変形態様
次に、第1実施形態の防振ガスケット1の変形態様について説明する。まず、第1変形態様における防振ガスケット100およびその製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、当該第1変形態様の防振ガスケット100およびその製造方法について説明する図である。具体的には、図6(a)は、第一取付部材111の軸方向断面図を示す。図6(b)は、第二取付部材112の軸方向断面図を示す。図6(c)は、防振ガスケット100の軸方向断面図を示す。ここで、当該第1変形態様の防振ガスケット100は、第1実施形態の防振ガスケット1に対して、以下の点が相違する。すなわち、防振ガスケット100を構成する第一取付部材111および第二取付部材112が、それぞれ、第一係止部111eおよび第二係止部112eを有し、上述した第一突環部11eおよび第二突環部12eを有しない点が相違する。以下、相違点のみについて説明する。なお、当該第1変形態様の防振ガスケット100において、第1実施形態の防振ガスケット1と同一構成からなるものには、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
第一取付部材111は、第一係止部111eを有する。この第一係止部111eは、第一貫通孔11cのうち切欠部11dが形成されていない側の端部に、径方向内方且つ図6(a)(c)の下方(防振ガスケット100の軸方向中央部側)に突出するように、且つ、周方向全周に亘って形成されている。
【0071】
また、第二取付部材112は、第二係止部112eを有する。この第二係止部112eは、第二貫通孔12cのうち切欠部12dが形成されていない側の端部に、径方向内方且つ図6(b)(c)の上方(防振ガスケット100の軸方向中央部側)に突出するように、且つ、周方向全周に亘って形成されている。
【0072】
そして、編組取付工程において、編組部材14の筒状の両端を第一係止部111eおよび第二係止部112eに引っ掛けることで、編組部材14を第一取付部材111および第二取付部材112に係止する。そして、金型配置工程および加硫成形工程を施し、防振ガスケット100を製造する。
【0073】
次に、第2変形態様における防振ガスケット200およびその製造方法について、図7を参照して説明する。図7は、当該第2変形態様の防振ガスケット200およびその製造方法について説明する図である。具体的には、図7(a)は、第一取付部材211の軸方向断面図を示す。図7(b)は、第二取付部材212の軸方向断面図を示す。図7(c)は、防振ガスケット200の軸方向断面図を示す。ここで、当該第2変形態様の防振ガスケット200は、第1実施形態の防振ガスケット1に対して、以下の点が相違する。すなわち、防振ガスケット200を構成する第一取付部材211および第二取付部材212が、それぞれ、第一溝部211eおよび第二溝部112eを有し、上述した第一突環部11eおよび第二突環部12eを有しない点が相違する。以下、相違点のみについて説明する。なお、当該第2変形態様の防振ガスケット200において、第1実施形態の防振ガスケット1と同一構成からなるものには、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
第一取付部材211は、第一溝部211eを有する。この第一溝部211eは、第一貫通孔11cのうち切欠部11dが形成されていない側(図7(a)(c)の下方)の周囲に全周に亘って形成されている。また、第二取付部材212は、第二溝部212eを有する。この第二溝部212eは、第二貫通孔12cのうち切欠部12dが形成されていない側(図7(b)(c)の上方)の周囲に全周に亘って形成されている。
【0075】
そして、編組取付工程において、編組部材14の筒状の両端を第一溝部211eおよび第二溝部212eに嵌合することで、編組部材14を第一取付部材211および第二取付部材212に固定する。そして、金型配置工程および加硫成形工程を施し、防振ガスケット200を製造する。
【0076】
そして、第1変形態様および第2変形態様の防振ガスケット200、300は、上述した第1実施形態の防振ガスケット1と同様の効果を発揮する。
【0077】
なお、第1実施形態の防振ガスケット1の他の製造方法について説明する。第1実施形態の防振ガスケット1の製造方法における加硫成形工程は、ゴム射出成形によりゴム弾性体13を成形した。この他に、例えば、ゴム弾性体13を内周側部分と外周側部分との2個に分離して、これらの未加硫ゴムを成形しておく。そして、これらの未加硫ゴムの間に編組部材14を配置して、且つ、第一取付部材11および第二取付部材12を配置した状態で、未加硫ゴムに熱を加えて加硫成形することもできる。この場合は、編組部材14を第一取付部材11および第二取付部材12に固定していない場合でも、編組部材14の位置決めが可能となる。
【0078】
(3)第2実施形態
次に、第2実施形態の防振ガスケット300について図8を参照して説明する。図8は、第2実施形態の防振ガスケット300の軸方向断面図を示す。ここで、第2実施形態の防振ガスケット300は、第1実施形態の防振ガスケット1に対して、実質的に、編組部材のみ相違する。以下、第2実施形態の防振ガスケット300を構成する編組部材314について説明する。
【0079】
編組部材314は、金属や樹脂などからなる繊維を編組して筒状に形成されている。この編組部材314の筒状の軸方向長さは、第一取付部材11と第二取付部材12の軸方向の離間距離よりも短くされている。そして、編組部材314は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内部に埋設されている。具体的には、編組部材314は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aのうち筒状の径方向の内周面と外周面との中間付近に配置されている。さらに、編組部材314の筒状の両端は、第一取付部材11および第二取付部材12から離隔した位置に配置されている。ただし、この離隔距離は、それほど大きなものではない。この離隔距離は、例えば、ゴム弾性体13の筒状連結部13aが第一取付部材11および第二取付部材12に連結されることにより、筒状連結部13a自体の変形量が抑制される範囲とする。
【0080】
このように、編組部材314が第一取付部材11および第二取付部材12から離隔しているとしても、ゴム弾性体13の筒状連結部13a自体の剛性、および、編組部材314により、内部を流通する流体の圧力が変化する場合に、ゴム弾性体13の筒状連結部13aは全体として十分に変形を抑制できる。
【0081】
(4)第3実施形態
次に、第3実施形態の防振ガスケット400について図9を参照して説明する。図9は、第3実施形態の防振ガスケット400の軸方向断面図を示す。ここで、第3実施形態の防振ガスケット400は、第1実施形態の防振ガスケット1に対して、実質的に、編組部材が配置される位置のみ相違する。以下、第3実施形態の防振ガスケット400を構成する編組部材414について説明する。
【0082】
編組部材414は、金属や樹脂などからなる繊維を編組して筒状に形成されている。この編組部材414の筒状の軸方向長さは、第一取付部材11と第二取付部材12の軸方向の離間距離とほぼ同等とされている。また、編組部材414の内径は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの外径とほぼ同等とされている。そして、編組部材414は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの外周面に固着されている。例えば、編組部材414は、ゴム弾性体13と一体加硫成形により固着してもよいし、ゴム弾性体13を加硫成形した後に接着剤などにより固着してもよい。何れの場合にも、編組部材414をゴム弾性体13に固着することが、非常に容易である。そして、この場合も、実質的に、第1実施形態と同様の効果を発揮する。
【0083】
また、第3実施形態の他の防振ガスケット500について図10を参照して説明する。図10は、第3実施形態の他の防振ガスケット500の軸方向断面図を示す。第3実施形態の他の防振ガスケット500は、防振ガスケット400に対して、編組部材514の筒状の軸方向長さのみ相違する。具体的には、編組部材514の筒状の軸方向長さが、上記編組部材414の筒状の軸方向長さに対して短くされている。すなわち、この編組部材514の筒状の軸方向長さは、第一取付部材11と第二取付部材12の軸方向の離間距離よりも短くされている。そして、編組部材514の筒状の両端は、第一取付部材11および第二取付部材12から離隔した位置に配置されている。この場合、実質的に、第2実施形態と同様の効果を発揮する。
【0084】
ただし、第1実施形態のように編組部材14をゴム弾性体13の内部に埋設する場合は、第3実施形態のように編組部材414をゴム弾性体13の筒状連結部13aの外周面に固着する場合に比べて、以下の良い点がある。
【0085】
すなわち、編組部材14が、ゴム弾性体13の内部に埋設される場合には、編組部材14が表面に露出していない。従って、例えば、編組部材14に金属等を用いた場合に、錆びることを防止できるので、編組部材14の長寿命化を図ることができる。さらに、編組部材14は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの外周面に固着される場合に比べて、径方向内方に位置していることになる。従って、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの内周面側の変形に対する抑制効果が高くなる。
【0086】
さらに、編組部材14がゴム弾性体13の筒状連結部13aの内部に埋設されているということは、編組部材14の周囲全体がゴム弾性体13の筒状連結部13aに被覆されていることになる。これにより、編組部材14は、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形に対する追従性が良好となり、且つ、編組部材14の変形に対してゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形依存性が高くなる。このように、ゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形に対する編組部材14の追従性が良好であることにより、編組部材14がゴム弾性体13の筒状連結部13aの防振特性に影響が及ぼすことを防止できる。また、編組部材14の変形に対してゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形依存性が高いことにより、編組部材14が変形しないように作用する場合に、確実にゴム弾性体13の筒状連結部13aの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1実施形態の防振ガスケット1の軸方向断面図(軸方向に切断した断面図)を示す。
【図2】図1の防振ガスケット1の平面図を示す。
【図3】図1のA−A断面図を示す。
【図4】第一取付部材11および第二取付部材12の軸方向断面図を示す。
【図5】ゴム弾性体13を加硫成形する際の、第一取付部材11、第二取付部材12および編組部材14を成形金型に配置した状態を示す部分断面図を示す。
【図6】第1実施形態の第1変形態様の防振ガスケット100およびその製造方法について説明する図である。
【図7】第1実施形態の第2変形態様の防振ガスケット200およびその製造方法について説明する図である。
【図8】第2実施形態の防振ガスケット300の軸方向断面図を示す。
【図9】第3実施形態の防振ガスケット400の軸方向断面図を示す。
【図10】第3実施形態の他の防振ガスケット500の軸方向断面図を示す。
【符号の説明】
【0088】
1、100、200、300、400、500:防振ガスケット、
11、111、211:第一取付部材、 11a、11b:取付用穴、
11c:第一貫通孔、 11d:切欠部、 11e:第一突環部、
111e:第一係止部、 211e:第一溝部、
12、112、212:第二取付部材、 12a、12b:取付用穴、
12c:第二貫通孔、 12d:切欠部、 12e:第二突環部、
112e:第二係止部、 212e:第二溝部、
13:ゴム弾性体、 13a:筒状連結部、 13b:第一シール部、
13c:第二シール部、
14、314、414、514:編組部材、
21:上型、 22:下型、 22a:基板部、 22b:円形凸部、 23:中間型、
24:キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に第一貫通孔が形成され、第一部材に取り付けられる第一取付部材と、
中央部に第二貫通孔が形成され、前記第一取付部材に離隔して配置され、第二部材に取り付けられる第二取付部材と、
筒状からなり、前記第一貫通孔と前記第二貫通孔とを連通するように前記第一取付部材および前記第二取付部材に連結されるゴム弾性体と、
前記ゴム弾性体より引張強度の高い材料からなる繊維を編組して筒状に形成され、前記ゴム弾性体の内部への埋設および前記ゴム弾性体の外周面への固着の少なくとも何れか一方により配置される編組部材と、
を備えることを特徴とする防振ガスケット。
【請求項2】
前記編組部材の前記材料は、樹脂、金属、ガラスおよびカーボンの中から選択された何れかである請求項1に記載の防振ガスケット。
【請求項3】
前記編組部材は、前記第一取付部材および前記第二取付部材に固定されている請求項1または2に記載の防振ガスケット。
【請求項4】
前記編組部材は、前記第一取付部材および前記第二取付部材の少なくとも何れか一方に対して離隔して配置されている請求項1または2に記載の防振ガスケット。
【請求項5】
前記第一取付部材は、内燃機関の吸気系通路上における前記内燃機関側の部品に取り付けられ、
前記第二取付部材は、前記吸気系通路上における前記内燃機関と反対側の部品に取り付けられる請求項1〜4の何れか一項に記載の防振ガスケット。
【請求項6】
防振ガスケットは、
中央部に第一貫通孔が形成され、第一部材に取り付けられる第一取付部材と、
中央部に第二貫通孔が形成され、前記第一取付部材に離隔して配置され、第二部材に取り付けられる第二取付部材と、
筒状からなり、前記第一貫通孔と前記第二貫通孔とを連通するように前記第一取付部材および前記第二取付部材に連結されるゴム弾性体と、
前記ゴム弾性体より引張強度の高い材料からなる繊維を編組して筒状に形成され、前記ゴム弾性体の内部に埋設される編組部材と、
を備え、
前記編組部材の筒状の両端のそれぞれを前記第一取付部材および前記第二取付部材に取り付ける編組取付工程と、
前記編組部材が取り付けられた前記第一取付部材および前記第二取付部材を金型に配置する金型配置工程と、
前記金型により形成されるキャビティにゴム射出成形をすることにより、前記ゴム弾性体を加硫成形する加硫成形工程と、
を備えることを特徴とする防振ガスケットの製造方法。
【請求項7】
前記第一取付部材および前記第二取付部材のうち少なくとも何れか一方は、係止部を備え、
前記編組取付工程は、前記編組部材の筒状の端部を前記係止部に係止する請求項6に記載の防振ガスケットの製造方法。
【請求項8】
前記編組取付工程は、前記編組部材の筒状の端部を前記第一貫通孔および前記第二貫通孔のうち少なくとも何れか一方に圧入する請求項6に記載の防振ガスケットの製造方法。
【請求項9】
前記第一取付部材および前記第二取付部材のうち少なくとも何れか一方は、前記第一貫通孔または前記第二貫通孔の周囲に全周に亘って溝部を形成し、
前記編組取付工程は、前記編組部材の筒状の端部を前記溝部に嵌合する請求項6に記載の防振ガスケットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−157323(P2008−157323A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345008(P2006−345008)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】