説明

防振ゴム用組成物及び防振ゴム製品

【課題】動的特性と機械強度とのバランスに優れ、耐疲労性を有し、耐熱性及び耐候性にも優れる防振用ゴム用組成物および防振ゴム製品を提供する。
【解決手段】(A)以下の(1)から(3)を満たすエチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(1)特定量のエチレンから導かれる単位(2)特定量の非共役ポリエンから導かれる単位(3)B値=([EX]+2[Y])/2×[E]×([X]+[Y]))で表されるB値が1.05以下(B)比表面積が5〜500m2/gである特定量の微粉珪酸及び/又は珪酸酸塩(C)特定量のα,β−不飽和カルボン酸金属塩(D)特定量の有機過酸化物を含有してなることを特徴とする組成物による。但し、[E]、[X]、[Y]は各々エチレン、α−オレフィン、非共役ポリエンのモル分率、[EX]はエチレン・α−オレフィンのダイアッド連鎖分率を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性および耐疲労性に優れるとともに、動的特性および機械強度のバランスにも優れる、すなわち、tanδ値が低く、自動車タイヤ、防振ゴム材料等の用途に好適なエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを含有する防振ゴム用組成物およびその組成物を加硫して得られる防振ゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などのジエン系ゴムは、耐動的疲労性および動的特性に優れるゴムとして知れており、自動車タイヤおよび防振ゴムの原料ゴムとして使用されている。しかしながら、昨今、これらのゴム製品が使用される環境が大きく変化し、ゴム製品の耐熱性、耐候性の向上が求められている。
【0003】
自動車タイヤでは、トレッドおよびタイヤサイドウォールが、特に耐候性が求られている。しかしながら、現行ジエン系ゴムが具備する優れた機械的特性、耐疲労性および動的特性を保持し、しかも、良好な耐候性を有するゴムは得られていなかった。
【0004】
そこで、機械的特性、耐動的疲労性および動的特性に優れるジエン系ゴムと、耐熱性及び耐候性に優れるエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等で代表されるエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体とのブレンド系ゴム組成物が従来種々検討されている。
【0005】
しかしながら、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が有する動的特性のレベルとジエン系ゴムが有する動的特性のレベルとが異なっているため、均一な物性を示すブレンド系ゴム組成物は、従来得られなかった。尚、自動車タイヤにおける動的特性は、燃費を悪化させない材料であるか否かを問題にし、その指標はtanδ(損失正接)値であり、tanδ値が低いほど動的特性が優れている。
【0006】
一方、自動車用防振ゴム製品については、エンジンルーム内の高温化に伴って、現行ジエン系ゴムである天然ゴムをベースとした防振ゴム製品では、実用に耐え得る耐疲労性が得られなくなっている。
【0007】
従って、優れた耐熱性を有し、かつ機械的強度、動的特性および耐疲労性が、ジエン系ゴムと同等以上である新しいゴム材料の出現が望まれている。
【0008】
一般に、動的特性を向上させるためには、架橋密度を高くする必要がある。しかしながら、既存の技術では、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の動的特性をNR等のジエン系ゴムの動的特性と同等に合わせようとすると架橋密度が高くなりすぎ、結果として引張破断伸び等の機械的特性が悪くなり、動的特性との物性を両立させることはできなかった。
【0009】
本発明者等は、上記のような問題を鋭意検討し、耐熱性に優れるエチレン・ プロピレン・ 非共役ジエン共重合体ゴムと、特定の微粉珪酸および/または珪酸塩と、少なくとも1種のα,β不飽和カルボン酸金属塩、および有機化酸化物を含有してなる組成物が、二律背反の関係にある動的特性と耐疲労性とを共に向上させることができることを見出している(特許文献1参照)。しかしながら、動的特性と機械強度、特に引っ張り特性とのバランスにおいては、改善すべき点があった。また耐熱老化性についてもさらに優れたものが求められていた。
【特許文献1】特開2003−82174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記のような背景技術に伴う問題点を解決することであって、従来のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム組成物よりも、動的特性と機械強度とのバランスに優れ、天然ゴムなどのジエン系ゴムと同等の耐疲労性、機械的特性及び動的特性を有するとともに、耐熱性及び耐候性に優れる防振用ゴム用組成物およびそれから得られる防振ゴム製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
耐熱性に優れるエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と特定の微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩と、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩を用いることにより、微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩とエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体との相互作用を、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩を介して強くし、得られたゴム組成物を有機過酸化物により架橋することにより二律背反の関係にある動的特性と機械的特性とを共に向上させることができ、かつ耐熱老化性や耐疲労性に優れたゴム製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明に係わる防振ゴム用組成物は、
(A)以下の(1)から(3)を満たすエチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部と、
(1)エチレンから導かれる単位の含量が50〜90モル%であり、
(2)非共役ポリエンから導かれる単位の含量が0.1〜5モル%であり、
(3)以下の式(I)で表されるB値が1.05以下である
B値=([EX]+2[Y])/2×[E]×([X]+[Y])) (I)
(ここで[E]、[X]、[Y]は、それぞれ、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、非共役ポリエンのモル分率、[EX]はエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。)
(B)比表面積が5〜500m2/g(BET吸着量:ISO5794/1、Annex D)である微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩5〜90重量部と、
(C)少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩0.1〜20重量部と、
(D)有機過酸化物0.1〜15重量部とを含有する。
【0013】
本発明に係わる防振ゴム用組成物は、前記(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が1.5〜5dl/gを満たすこと、あるいは、ムーニー粘度(MS(1+4)160℃)が30〜100を満たすことが好ましい。
【0014】
また、上記のα,β−不飽和カルボン酸金属塩が、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩及びマレイン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0015】
本発明に係わる防振ゴム用組成物は、好ましくは、
(E)イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を、前記(A)エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部を含有すること、あるいは、
(F)イオウを、前記エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0.01から1重量部を含有する。
【0016】
更に、本発明に係わる防振ゴム製品は、上記の防振ゴム用組成物いずれかの組成物を架橋することにより得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防振ゴム用組成物は、加硫することによって耐熱性、耐疲労性、動的特性にも優れ、さらに動的特性と機械強度とのバランスにも優れた防振ゴム製品を与えることができる。また、本発明の防振ゴム製品は、上記組成物を加硫して得られるものであるため、優れた耐熱性、耐候性、耐疲労性、動的特性を有し、さらに動的特性と機械強度とのバランスにも優れており、それら特性を有したゴム製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る防振用ゴム組成物(以下、単に組成物と略す。)およびその組成物を加硫して得られる防振ゴム製品(以下、単にゴム製品と略す。)について具体的に説明する。
【0019】
まず、本発明に係る組成物について説明する。本発明に係る組成物は、(A)特定のエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と、(B)特定の微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩と、(C)少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩と、有機過酸化物と、必要により、イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤及び/又はイオウを含有してなる。
【0020】
[(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体]
本発明で用いられるエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、(1)エチレン含量が通常50〜90モル%、好ましくは50〜83モル%、より好ましくは50〜73モル%である。またプロピレン含量が通常10〜50モル%、好ましくは17〜50モル%である。
【0021】
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、炭素数3〜12のα−オレフィンが好ましく、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。
【0022】
これらのα−オレフィンは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。それらのα−オレフィンのうち、炭素数3〜8のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
【0023】
本発明で用いられるエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、(2)非共役ポリエン含量は、0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜4モル%、より好ましくは0.5〜4モル%の範囲にある。
【0024】
非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンが挙げられる。
【0025】
これらの非共役ポリエンは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。そしてそれらの中でも、1,4−ヘキサジエン及び環状非共役ジエン、特に5−エチリデン−2−ノルボルネン、又は5−ビニルー2−ノルボルネン、あるいは5−エチリデン−2−ノルボルネンと5−ビニルー2−ノルボルネンを併用した4元系ポリマーが好ましく用いられる。
【0026】
本発明において、非共役ポリエンとして、5−エチリデン−2−ノルボルネン、又は5−ビニルー2−ノルボルネン、あるいは5−エチリデン−2−ノルボルネンと5−ビニルー2−ノルボルネンを併用した4元系ポリマーを用いたとき、最も耐疲労性に優れた組成物やゴム製品が得られる。非共役ポリエン含量の一つの指標であるヨウ素価が、通常8〜50、好ましくは8〜30である。
【0027】
本発明で用いられるエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、(3)以下の式(I)で表されるB値が1.05以下である。
B値=([EX]+2[Y])/(2×[E]×([X]+[Y])) (I)
(ここで[E],[X],[Y]は、それぞれ、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、非共役ポリエンのモル分率、[EX]はエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。)B値は、13CNMRのピークの積分値を用いて、計算により求めることができる。
【0028】
例えば、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体がエチレン・プロピレン・ENB共重合体の場合は以下のようにB値、組成を求めることができる。先ず次の9種のNMRメチレン炭素における吸収強度の積分値を求めた。
(1)αβ、(2)αγ+αδ、(3)βγ、(4)βδ、(5)γδ、(6)δδ、(7)3E、(8)3Z、(9)αα+1Z+5E+5Z+6E+6Z
【0029】
ここで、(7)から(9)における数字と英字からなるシンボルは、ENBに由来する炭素であり、数字は下記式中の位置を示し、英字はそれぞれEはE体、ZはZ体であることを表す。また、ギリシア文字は、最短の2つのメチル基が結合している主鎖上の炭素原子間にあるメチレン炭素原子の位置を示し、メチル基が結合している炭素原子の隣の炭素原子をαとする。例えば、主鎖上のある炭素原子が、一方のメチル基が結合している炭素原子の隣であり、他方のメチル基が結合している炭素原子から3番目である場合、その炭素原子はαγとなる。
【0030】
【化1】

【0031】
実際に積分値を求める場合、(2)は37〜39ppm付近の複数ピークの合計を、(6)は29〜31ppm付近の複数ピークの合計からγγとγδピークを除いた数値を、(9)は44〜48ppm付近の複数ピークの合計を採用した。
【0032】
また、ααは次の通りにより算出した。なおピークの同定は、J.C.Randall(Macromolecules,15,353(1982)、J.Ray(Macrimolecules,10,773(1977)らの報告に基づいた。
αα=αα+1Z+5E+5Z+6E+6Z−2×3E−3×3Z
=(9)−2×(7)−3×(8)
【0033】
次いで、3種のモノマー間により得られる6種のダイアッドは、得られた積分値より、次の通り算出した。なお、組成が少量であるENBに由来するダイアッドのNN(ENB−ENB連鎖)とNP(ENB−プロピレン連鎖)は0とした。NEに関するダイアッドは、ENBの環状上の炭素原子の帰属される吸収強度より算出したモル分率に相当する値を2倍して用いた。
【0034】
PP(プロピレン−プロピレン連鎖)=αα+αβ/4
PE(プロピレン−エチレン連鎖)=αγ+αδ+αβ/2
EE(エチレン−エチレン連鎖)=(βδ+δδ)/2+(γδ+βγ)/4
NE(ENB−エチレン連鎖)+NP(ENB−プロピレン連鎖)+NN(ENB−ENB連鎖)=(3E+3Z)×2
また、組成は次の通り算出することができる。
[X](α−オレフィンモル分率)=(PP+PE/2)/(PP+PE+EE+3E+3Z)
[E](エチレンモル分率)=(EE+PE/2+3E+3Z)/(PP+PE+EE+3E+3Z)
[Y](非共役ポリエンモル分率)=(3E+3Z)/(PP+PE+EE+3E+3Z)
また、[EX]ダイアッド分率(EXダイアッド数の全ダイアッド数に対する割合)は次のとおり算出することができる。
[EX]=PE/(PP+PE+EE+3E+3Z)
これらの値を用いてB値を前記式(I)により算出する。
【0035】
本発明においては前記(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のB値は1.05以下である。好ましくは0.9〜1.05、より好ましくは0.95〜1.05であり、特に好ましくは0.97〜1.03である。
【0036】
B値がこの範囲にあると、特に動的特性と機械強度とのバランスにも優れたゴム製品を得ることができる。
【0037】
本発明の(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上記(1)(2)(3)に加え、さらに、その(4)135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が1.5〜5dl/gであることが好ましい。より好ましくは2〜5である。この範囲にあれば機械的特性と加工性のバランスに優れている。
【0038】
本発明のエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上記(1)(2)(3)に加え、さらに、その(5)ムーニー粘度MS1+4(160℃)が、30〜100であることが好ましい。より好ましくは50〜80である。ムーニー粘度MS1+4(160℃)が前記範囲にあるエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いると、天然ゴム等のジエン系ゴムと同等以上の耐疲労性を示すゴム組成物、加硫ゴムを得ることができる。
【0039】
[(B)微粉珪酸および/または珪酸塩]
本発明で用いられる微粉珪酸および微粉珪酸塩は、比表面積が5〜500m2 /g(BET吸着量:ISO 5794/1,Annex D)である。比表面積は、好ましくは10〜400m2/gである。
【0040】
微粉ケイ酸及び微粉ケイ酸塩としては、例えば乾式法シリカ、湿式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカなどが挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸マグネシウムが挙げられる。本発明においては、微粉ケイ酸及び/又は微粉ケイ酸塩をそれぞれ単独で用いることもできるし、またこれらを組み合わせて用いることもできる。
【0041】
微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩は合計で、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して5〜90重量部である。好ましくは20〜80重量部である。また、本発明の組成物を防振ゴム製品に使用する場合、防振ゴム製品の用途に応じた振動の減衰効果が発揮される動的特性が要求されるため、その用途目的に応じて微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩の配合比を調整して使用できる。
【0042】
[(C)α,β−不飽和カルボン酸金属塩]
本発明で用いられるα,β−不飽和カルボン酸金属塩は、その種類において特に制限が無く用いられる。好ましく用いられるのは、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩及びマレイン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0043】
アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩及びマレイン酸金属塩としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸のアルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩)、重金属塩(例えば、亜鉛塩)、アルミニウム塩、具体的には、アクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、ジアクリル酸マグネシウム、ジアクリル酸カルシウム、ジアクリル酸亜鉛、トリアクリル酸アルミニウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、ジメタクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸カルシウム、ジメタクリル酸亜鉛、トリメタクリル酸アルミニウム、マレイン酸リチウ
ム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸マグネシウム、マレイン酸亜鉛、マレイン酸アルミニウムが挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸金属塩としては、特にジメタクリル酸亜鉛が好ましい。α,β−不飽和カルボン酸金属塩は、単独でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0044】
本発明では、α,β−不飽和カルボン酸金属塩は、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部である。好ましくは0.2〜10重量部の割合で用いられる。α,β−不飽和カルボン酸金属塩を用いることにより、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と微粉ケイ酸及び微粉ケイ酸塩との相互作用が向上し、動的特性と機械的物性に優れた架橋ゴム製品を得ることができる。
【0045】
[(D)有機過酸化物]
有機過酸化物は、ゴムの架橋の際に通常使用されている従来公知の有機過酸化物を使用することができる。具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。これら有機過酸化物は、単独でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0046】
有機過酸化物は、充分な架橋により目的とする物性を得るとともに、過剰の分解生成物による悪影響の防止、コストの点から、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対し、0.1〜15重量部である。
【0047】
[(E)老化防止剤]
本発明においては、老化防止剤を用いることが好ましく、詳しくは、イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤から選ばれる少なくとも1種を用いる。1種を単独で用いてもよいが、高温下で、長時間の耐熱老化性を維持する点で、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
その量は、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、合計で0.1〜5重量部であることが好ましい。それぞれの防止剤の量は、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、その範囲では、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも共重合体ゴムの架橋を阻害することもない。
【0049】
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられ、具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルイミダゾールの亜鉛塩等のイミダゾール系老化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオプロピオネート)等の脂肪族チオエーテル系老化防止剤などを挙げることができる。
【0050】
これらの中でも、特に2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオプロピオネート)がより好ましい。
【0051】
フェノール系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるフェノール系老化防止剤が用いられ、具体的には、スチレン化フェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、1−ヒドロキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、モノ−t−ブチル−p−クレゾール、モノ−t−ブチル−m−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、ブチル化ビスフェノールA、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチ
ルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(2−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンゼン)スルフィド、2,2’−チオ[ジエチル−ビス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンゼン)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)、n−オクタデシル 3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、モノ(α−メチルベンゼン)フェノール、ジ(α−メチルベンジル)フェノール、トリ(α−メチルベンジル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のジエチルエステル、カテコール、ハイドロキノンなどである。
【0052】
特に好ましいフェノール系老化防止剤の例は、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(2−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどである。
【0053】
アミン系老化防止剤は、通常ゴムに使用されるアミン系老化防止剤が用いられ、具体的には、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン(例えば、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン)、ジフェニルアミンとアセトンとの高温反応生成物、ジフェ
ニルアミンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物等のジフェニルアミン系老化防止剤;N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、n−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤などが挙げられる。
【0054】
この中でも、特に、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
【0055】
[(F)イオウ]
本発明において、加硫剤としてイオウ系化合物を用いることが好ましい。イオウ系化合物としては、通常使用されている従来公知のイオウ化合物が全て用いられる。具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウがあり、それらをポリマーや無機充填剤などに予め分散させたイオウマスターバッチコンパウンドなどによって配合できる。
【0056】
具体的な化合物には、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなどが用いられ、中でもイオウが好ましく用いられる。イオウ化合物は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
イオウ化合物は、エチレン・ プロピレン・ 非共役ジエン共重合100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜1重量部である。
【0058】
[その他の成分]
本発明の組成物は、架橋剤としても作用して適度な架橋密度とし充分な伸び等を確保する点から、少なくとも1つの不飽和炭化水素基と少なくとも1つの加水分解性シリル基とを含有するシリル基含有化合物を含んでも構わない。また、その点から、その含有量は、微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩の表面積1m2当たり、8×10-6mol未満であることが好ましく、8×10-7mol未満であることが更に好ましい。
【0059】
具体的なシリル基含有化合物には、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。それらは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明において、前記のエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を単独で用いることができるが、更に他のゴム又はプラスチックを配合して用いてもよい。例えば、前記共重合体ゴムとジエン系ゴムとのブレンド物を用いることができる。
【0061】
ジエン系ゴムとして具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。その中でも、天然ゴム、イソプレンゴムが好ましい。ジエン系ゴムは、単独で、又は組み合わせて用いられる。
【0062】
プラスチックとして具体的には、結晶性のポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0063】
本発明においてジエン系ゴム、あるいはプラスチックを用いる場合、それらの使用量は、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、通常20〜50重量部である。
【0064】
本発明に係る組成物あるいはゴム製品を製造する際に、意図するゴム製品の用途、それに基づく性能に応じて、上記の(B)微粉珪酸および/または珪酸塩、(C)α,β−不飽和カルボン酸金属塩、(D)有機過酸化物、(E)老化防止剤、および(F)イオウ、更には、シリル基含有化合物以外に、一般にゴム製品の製造で用いられる各種類の公知の配合剤を本発明の目的を損なわない範囲で適宜選定し、適切な配合量を配合することができる。
【0065】
具体的には、アルコキシシラン化合物、ゴム補強剤、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、無機充填剤、活性剤、発泡助剤、架橋助剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、素練促進剤、粘着付与剤、分散染料や酸性染料を代表例とする各種染料、無機・有機顔料、界面活性剤、塗料、およびホワイトカーボンなどの配合剤を挙げることができる。
【0066】
本発明における前記の微粉ケイ酸及びケイ酸塩以外の無機充填剤としては、具体的には、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、通常の微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。このようなカーボンブラックの比表面積は5〜200m2/gであることが好ましく、また無機充填剤の比表面積は1〜100m2/gであることが好ましい。
【0067】
カーボンブラックの使用量は、前記エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0.1〜60重量部であることが好ましい。
【0068】
微粉ケイ酸及びケイ酸塩以外の無機充填剤の使用量は、前記エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0〜100重量部であることが好ましく、全無機充填剤成分の合計量は、前記エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、通常0.1〜120重量部、好ましくは10〜120重量部、更に好ましくは10〜100重量部である。
【0069】
本発明のエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をイオウ加硫する際に用いられる加硫促進剤を配合することが好ましい。その使用において、加硫促進剤の種類や使用法には、特に制限がなく、公知種類や方法が全て適用できる。
【0070】
加硫促進剤の具体的な例としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、オルソトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジン・フタレート等のグアニジン系化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物等のアルデヒド−アミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩;その他、亜鉛華(酸化亜鉛)などの化合物が挙げられる。
【0071】
加硫促進剤は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。また、その量は、前記エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0〜20重量部、好ましくは、0〜10重量部で用いられる。
【0072】
軟化剤としては、通常ゴムに用いられる公知の軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質などが挙げられる。なかでも石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0073】
軟化剤は、単独で又は2種以上の組み合わせで用いられる。その量は、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは2〜80重量部の割合で用いることができる。
【0074】
[加硫ゴムの製造方法]
本発明の組成物から加硫ゴムを得るには、通常一般のゴムを加硫するときと同様に、後述する方法で未加硫のゴム組成物を一度調製し、次いで、この配合ゴムを意図する形状に成形した後、加硫する。
【0075】
未加硫の配合ゴムは、例えば、以下の方法により調製される。即ち、バンバリーミキサーなどのミキサー類を用いて、前述のゴム成分、並びに微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩、更にはその他の無機充填剤や軟化剤を80〜190℃の温度で2〜20分間混練し、次いで、オープンロールなどのロール類を用いて、有機過酸化物、更に少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩を混合し、ロール温度40〜60℃で3〜30分間混練した後、混練物を押出し、リボン状又はシート状の配合ゴムを調製する。
【0076】
このように調製された配合ゴムは、押出成形機、カレンダーロール又はプレスにより意図する形状に成形され、成形と同時に又は成形物を加硫槽内に導入し、通常100〜270℃の温度で通常1〜150分間加熱し、加硫ゴムとする。このような加硫を行う際に、金型を用いてもよいし、用いなくてもよい。金型を用いない場合には、成形、加硫の工程は、通常、連続的に実施される。
【0077】
本発明の組成物から得られる加硫ゴムは、タイヤ、自動車部品、一般工業用部品、土木建材用品などの各種ゴム製品に広く用いられる。とりわけ、耐動的疲労性の要求される用途、例えばタイヤトレッド、タイヤサイドウォール、ワイパーブレード、自動車用エンジンマウント等の防振ゴムなどに好適に用いることができる。
【0078】
[実施例]
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の構造、性質は以下のようにして測定した。
(1)エチレン、プロピレン、非共役ポリエンから導かれる単位の含量;13CNMRにより求めた。
(2)B値;13CNMRにおけるピーク強度の積分値から、前記のようにして求めた。
(3)極限粘度[η]; 135℃,デカリン中で求めた。
(4)ムーニー粘度(MS(1+4)160℃);JIS K6300(1994)に準じた。
【0079】
実施例および比較例における加硫シートの評価試験方法は、以下のとおりである。
[引張試験]
JIS K6251に従って、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、破断時の強度TB、伸びEB及び硬さHAを測定した。
[耐熱老化性試験]
JIS K6257に準拠して、150℃の温度下、70時間及び200時間の空気加熱老化を行い、老化後の破断時の引張強度、伸びを測定し、老化させていないオリジナルの値に対する保持率(%)で示した。
[圧縮永久歪試験]
JIS K6262に従い、圧縮永久歪試験を行った。
[動的特性の評価(tanδ)]
JIS K6394に準拠し、レオメトリック(Rheometrics)社製の粘弾性試験機(型式RDS−2)により、測定温度25℃、歪率1%の条件下で、周波数10Hz及び1Hzにおけるtanδを求めた。
【0080】
実施例および比較例で用いたエチレン・ プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムは下記の通りにして得た。
【0081】
[製造例1](共重合体1)
攪拌羽根を備えた15Lのステンレス製重合器を用いて連続的にエチレン、プロピレン、ENBの三元共重合反応を行った。重合器上部から重合溶媒としてヘキサンを毎時5Lの速度で連続的に供給した。一方、重合器下部から重合器中の重合液が常に5Lとなるように連続的に重合液を抜き出した。触媒としてバナジウムオキシクロリドとエチルアルミニウムセスキクロリドを用い、前者は、重合器内V濃度が0.3ミリモル/Lとなるように、後者は、Al濃度が3ミリモル/Lとなるよう供給した。重合温度は重合器のジャケットにブライン温度により30℃となるよう調整した。その他原料の供給条件と得られたポリマー物性は次の表1通りである。得られた重合液に標準的な脱灰操作を行い、それからスチームストリッピングまたはフラッシュ乾燥により樹脂を得た。
【0082】
【表1】

【0083】
[製造例2](共重合体2)
重合は容積300LのSUS製攪拌機つき反応器を用い、温度を80℃に保ち液レベルを100Lとして連続法で行った。主触媒として(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド、共触媒として(C65)3CB(C65)4また有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(以下TIBAと表記)を用いた。原料供給条件と得られたポリマー物性は表2の通りである。得られた重合液からスチームストリッピングまたはフラッシュ乾燥により樹脂を得た。
【0084】
【表2】

【0085】
[実施例1]
表2に示した共重合体2を100重量部と、亜鉛華[ハクスイテック(株)製、酸化亜鉛2種]5重量部と、ステアリン酸1重量部と、微粉珪酸[PPG INDUSTRIES製、ハイシル233、比表面積;140〜160m2/g(N2)]30重量部と、メタクリル酸亜鉛[川口化学製、アクターZMA]2重量部と、MAFカーボンブラック[東海カーボン(株)製、シーストG116、比表面積;49m2/g(N2)]5重量部と、パラフィン系オイル[出光興産(株)製、PW−380]50重量部と、老化防止剤[大内新興(株)製、ノクラックMB]2重量部とを容量4.3リットルのバンバリーミキサー[神戸製鋼所(株)製]で混練した。
【0086】
得られた混練物を約50℃に冷却した後、混練物に、カヤクミルD−40C[ジクミルペルオキシドを炭酸カルシウム等で40%に希釈したもの、化薬アクゾ(株)製]6.8重量部、及び硫黄0.2重量部を加えて、8インチロール(前後のロール温度:50℃)で混練した後、シート状に分出して170℃で15分間プレスして、厚み2mmの加硫シートを得た。
【0087】
この加硫シートについて物性評価を前記方法に従って行った。また、前記プレス条件を170℃、20分にして圧縮永久歪試験用の厚物の加硫ゴム成形体を得て、この厚物の加硫ゴム成形体について圧縮永久歪試験を行った。結果を表3に示す。
【0088】
[比較例1]
実施例1において、共重合体2を共重合体1に変更した以外は、実施例1と同様にして加硫シートを得て、その物性評価を行った。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
上記の表3における実施例と比較例との比較より明らかなように、本発明のB値が1.00である共重合体2、微粉珪酸および/または珪酸塩とメタクリル酸亜鉛を組み合わせることによって、tanδを低下させる、すなわち動的特性を向上させることができた。また、動的特性の向上(低tanδ化)と破断点伸び(EB)の向上とは、一般に二律背反の関係にあるが、動的特性と破断点伸びが同時に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る組成物から得られる加硫ゴムは、タイヤ、自動車部品、一般工業用部品、土木建材用品などの用途に広く用いられる。とりわけ、耐動的疲労性の要求される用途、たとえばタイヤトレッド、タイヤサイドウォール、ワイパーブレード、自動車用エンジンマウントなどに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下の(1)から(3)を満たすエチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部と、
(1)エチレンから導かれる単位の含量が50〜90モル%であり、
(2)非共役ポリエンから導かれる単位の含量が0.1〜5モル%であり、
(3)以下の式(I)で表されるB値が1.05以下である
B値=([EX]+2[Y])/2×[E]×([X]+[Y])) (I)
(ここで[E]、[X]、[Y]は、それぞれ、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、非共役ポリエンのモル分率、[EX]はエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。)
(B)比表面積が5〜500m2/g(BET吸着量:ISO5794/1、Annex D)である微粉ケイ酸及び/又はケイ酸塩5〜90重量部と、
(C)少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩0.1〜20重量部と、
(D)有機過酸化物0.1〜15重量部と、
を含有してなる防振ゴム用組成物。
【請求項2】
前記(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、さらに、
(4)135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が1.5〜5dl/gを満たすことを特徴とする請求項1に記載の防振ゴム用組成物。
【請求項3】
前記(A)エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、さらに、
(5)ムーニー粘度(MS(1+4)160℃)が30〜100を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の防振ゴム用組成物。
【請求項4】
(E)イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を、前記(A)エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防振用ゴム組成物。
【請求項5】
(F)イオウを、前記エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、0.01から1重量部を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防振用ゴム組成物。
【請求項6】
(C)少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸金属塩が、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩及びマレイン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防振用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を架橋することにより得られる防振ゴム製品。

【公開番号】特開2006−348095(P2006−348095A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173354(P2005−173354)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】