説明

防振装置

【課題】カバー部材の内周側に水等が溜まるのを防ぐ水抜き機構と、第二の取付部材とカバー部材との位置決め機構を、少ない部品点数で簡単に実現することが出来る、新規な構造の防振装置を提供すること。
【解決手段】第二の取付部材14に環状固定片28が設けられており、環状固定片28には外周端縁に開口する切欠き30が形成されていると共に、カバー部材34に設けられた環状かしめ片44が環状固定片28にかしめ固定されることによって、カバー部材34が第二の取付部材14に取り付けられている。そして、切欠き30の外周部分に対する環状かしめ片44のかしめ固定部位で環状かしめ片44が切欠き30に係止されて第二の取付部材14とカバー部材34の位置決め機構が構成されていると共に、環状かしめ片44のかしめ固定部位を内周側に外れて位置する切欠き30の内周部分によって環状固定片28を貫通する連通孔52が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等に好適に用いられる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装されて、それら部材を防振連結する防振装置が知られており、自動車用のエンジンマウント等に適用されている。この防振装置は、連結対象部材の一方に取り付けられる第一の取付部材と、連結対象部材の他方に取り付けられる第二の取付部材が、本体ゴム弾性体によって弾性的に連結された構造を有している。
【0003】
ところで、防振装置には、第二の取付部材の開口部に筒状のカバー金具を直列的に取り付けて、第一の取付部材および本体ゴム弾性体の周囲を取り囲むように配設したものがある。このカバー金具は、第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位を制限するストッパ機構や、車両ボデーへの連結構造等として利用されており、例えば、特開平9−257087号公報(特許文献1)に開示されたもの等がある。
【0004】
ところが、カバー金具を備えた防振装置では、カバー金具の内周側に雨水等の異物が侵入すると、その雨水等が外部に抜けることなく本体ゴム弾性体とカバー金具の間に溜まって、本体ゴム弾性体等を侵食するおそれがあった。そこで、特許文献1の防振装置では、第二の取付部材とカバー金具の連結部分に、カバー金具の内周領域と外部空間とを連通する連通孔が設けられており、カバー金具の内周領域に侵入した水が連通孔を通じて外部に排出されるようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構造にも未だ不充分な点が存在した。即ち、カバー金具は、第二の取付部材にかしめ固定されることにより、第二の取付部材に対して軸方向で強固に連結されている一方、周方向には摩擦力だけで位置決めされていることから、外力の作用によって第二の取付部材に対して相対的に回転するおそれがあった。
【0006】
なお、上記の如き問題を解決する方法としては、第二の取付部材とカバー金具を周方向で位置決めする位置決め機構を特別に設けることも考えられるが、構造の複雑化や部品点数の増加等が問題となることから現実的とは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−257087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、カバー部材の内周側に水等が溜まるのを防ぐ異物の排出機構と、カバー部材を第二の取付部材に対して位置決めする位置決め機構を、少ない部品点数で簡単に実現することが出来る、新規な構造の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、防振連結対象部材の各一方に取り付けられる第一の取付部材と筒状の第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該本体ゴム弾性体の外周側にカバー部材が配設されており、該カバー部材が該第二の取付部材によって支持されている防振装置において、前記第二の取付部材の軸方向端部には外周に広がる環状固定片が設けられており、該環状固定片には外周端縁に開口する切欠きが形成されていると共に、前記カバー部材の軸方向端部には全周に延びる環状かしめ片が設けられて、該環状かしめ片が該環状固定片にかしめ固定されることによって該カバー部材が該第二の取付部材に取り付けられており、該切欠きの外周部分に対する該環状かしめ片のかしめ固定部位で該環状かしめ片が該切欠きに係止されて該第二の取付部材と該カバー部材の位置決め機構が構成されていると共に、該切欠きの内周部分が該環状かしめ片のかしめ固定部位を内周側に外れて位置して該環状固定片を貫通する連通孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第一の態様に従う構造とされた防振装置によれば、環状固定片に形成された切欠きによって連通孔が形成されており、カバー部材の内周側に入り込んだ雨水等の異物が連通孔を通じて速やかに外部に排出されるようになっている。これにより、雨水の滞留による侵食等が回避されて、耐久性の向上が図られる。
【0011】
さらに、環状固定片に切欠きが設けられていることにより、環状かしめ片が環状固定片にかしめ固定される際に、切欠きの形成部位において環状かしめ片の変形量が大きくなる。これにより、環状かしめ片のかしめ固定部位が切欠きに入り込んで係止されて、第二の取付部材とカバー部材を位置決めする位置決め機構が構成されている。このような位置決め機構が設けられていることにより、第二の取付部材とカバー部材が組付け後に相対回転する等の不具合を回避することができて、第二の取付部材を含む防振装置本体とカバー部材とを所定の相対位置で保持することで、本体ゴム弾性体の耐久性向上等を実現することができる。
【0012】
しかも、これらの位置決め機構および異物の排出機構は、何れも、切欠きを備えた環状固定片に環状かしめ片をかしめ固定するだけで極めて簡単に実現される。それ故、本態様に係る防振装置では、特別な部品を追加することによる部品点数の増加と構造の複雑化が回避されると共に、製造工程において工程数が増加するのも防ぐことができて、容易に製造することが可能である。
【0013】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された防振装置において、前記カバー部材の周上に設けられた連結部を介して、前記第二の取付部材が前記防振連結対象部材に取り付けられるようになっていると共に、第二の取付部材における前記切欠きが該連結部を周方向に外れた位置に形成されているものである。
【0014】
第二の態様によれば、切欠きが、防振連結対象部材との連結によって荷重が集中的に作用し易い連結部を、周方向で外れた位置に形成されている。それ故、環状固定片と環状かしめ片のかしめ固定部位において、切欠きの形成による僅かな連結面積の減少が問題となることなく、それら環状固定片と環状かしめ片が安定して連結状態に保持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第二の取付部材とカバー部材とのかしめ固定部位を構成する環状固定片に切欠きを形成することによって、第二の取付部材とカバー部材が位置決めされると共に、連通孔を通じて雨水等の異物を速やかに排出することで耐久性の向上等が実現される。しかも、これらの優れた効果は、部品点数の増加や製造工程数の増加を要することなく実現されることから、構造の複雑化や製造効率の低下等を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面図。
【図2】図1に示されたエンジンマウントの底面図。
【図3】図1に示されたエンジンマウントを構成するマウント本体を示す正面図。
【図4】図3に示されたマウント本体の平面図。
【図5】図1に示されたエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1,図2には、本発明に従う構造とされた防振装置の一実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、図3,図4に示されたマウント本体11を含んで構成されており、マウント本体11が第一の取付部材12と第二の取付部材14を本体ゴム弾性体16で連結した構造を有している。そして、第一の取付部材12が一方の防振連結対象部材である図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14側が他方の防振連結対象部材である図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットと車両ボデーがエンジンマウント10を介して防振連結されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、主たる振動入力方向であり、マウント中心軸方向でもある、図1中の上下方向を言う。
【0019】
第一の取付部材12は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成された高剛性の部材であって、略円柱形状を有していると共に、下端部が下方に向かって次第に小径となるテーパ形状となっている。また、第一の取付部材12には、中心軸上を直線的に延びて、上端面に開口する螺子孔18が形成されており、その螺子孔18にボルト20が螺着されて上方に突出している。また、第一の取付部材12の軸方向中間部分には、外周側に向かって突出するフランジ部22が一体形成されている。なお、フランジ部22は、図4に破線で示されているように、全体として略円環板形状を有していると共に、外周面における径方向一方向(図4中、上下)で対向する部分が互いに平行な平面で構成されている。また、第一の取付部材12の上端部には、2面幅が設けられており、第一の取付部材12が図示しないインナブラケットに対して周方向で位置決めされるようになっている。
【0020】
一方、第二の取付部材14は、第一の取付部材12と同様の金属材料で形成された高剛性の部材であって、全体として略円筒状とされている。より詳細には、第二の取付部材14は、上端部が上方に向かって次第に拡径する略円筒形状とされた筒状部24と、筒状部24の上端から外周側に延び出す略円環板形状の環状固定片28とを、一体的に備えている。
【0021】
また、第二の取付部材14の環状固定片28には、径方向一方向で対向する周上の2箇所に、切欠き30,30が設けられている。切欠き30は、図4に示されているように、平面視で略半円形断面を有しており、環状固定片28の径方向外側に行くに従って周方向での長さが次第に大きくなっている。また、切欠き30は、環状固定片28の外周端縁を上下に貫通していると共に、環状固定片28の外周面に開口している。
【0022】
そして、第一の取付部材12と第二の取付部材14は、互いに同一中心軸上に配されて、第一の取付部材12が第二の取付部材14の上方に離隔しており、本体ゴム弾性体16によって相互に連結されている。
【0023】
本体ゴム弾性体16は、全体として厚肉大径の略円錐台形状を有していると共に、その下端面が径方向中央に向かって次第に上傾する湾曲面となっている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側端面に、フランジ部22を含んだ第一の取付部材12の下端面が重ね合わされて加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に、第二の取付部材14の筒状部24が重ね合わされて加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0024】
また、第一の取付部材12のフランジ部22には、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム32が加硫接着されている。緩衝ゴム32は、フランジ部22の上面および外周面に加硫接着されており、その上面には径方向に延びて上方に突出する複数の緩衝突起33が一体形成されている。
【0025】
このような構造を有するマウント本体11には、カバー部材としてのアウタブラケット34が取り付けられている。アウタブラケット34は、本体ゴム弾性体16の外周側を取り囲むように配設されており、第二の取付部材14に固定される本体部36と、本体部36から径方向一方向で突出する一対の連結部38,38とを有している。
【0026】
本体部36は、全体として略円筒形状を有しており、その上端部が全周に亘って径方向内側に折り曲げられたストッパ部40となっている。また、本体部36の下端には、軸直角方向外側に折り曲げられた当接部42が設けられていると共に、当接部42の外周縁部から下方に延び出す環状かしめ片44が一体形成されている。なお、当接部42の内径が第二の取付部材14に設けられた環状固定片28の外径よりも小さく且つ内径よりも大きくなっている。
【0027】
また、本体部36を径方向一方向で挟んだ両側には、連結部38が設けられている。連結部38は、全体として略板形状であって、平面視では本体部36の径方向外側に行くに従って次第に周方向で狭幅となっている。更に、連結部38には、ボルト孔46が上下に貫通して形成されている。また、連結部38の本体部36側の端部は、上方に向かって曲げられた固着部48となっている。このような構造とされた連結部38は、固着部48が本体部36の外周面に重ね合わされて溶接等の手段で固着されることにより、本体部36に固定されている。なお、一対の連結部38,38が本体部36の径方向一方向で対向して設けられている。
【0028】
かくの如き構造を有するアウタブラケット34は、本体部36の下端に設けられた環状かしめ片44が第二の取付部材14の環状固定片28に対してかしめ固定されることにより、第二の取付部材14に固定されている。より詳細には、アウタブラケット34の当接部42が第二の取付部材14の環状固定片28に対して上方から重ね合わされる。一方、環状かしめ片44は、下方から押し当てられた図示しないローラが周方向に移動することにより、全周に亘って環状固定片28に沿う形状に折り曲げられて、その先端部分が環状固定片28に対して下方から重ね合わされる。これにより、環状固定片28の外周端部が、当接部42および環状かしめ片44によって挟持されて、アウタブラケット34と第二の取付部材14が連結固定されている。
【0029】
なお、本実施形態では、第一の取付部材12の上端部分に傘状の蓋体49が取り付けられており、その下端部がアウタブラケット34の上端部の外周側を取り囲むように配されている。これにより、アウタブラケット34の上側開口から雨水等の異物が侵入するのを防ぐことができる。
【0030】
また、第二の取付部材14にアウタブラケット34がかしめ固定された状態において、環状固定片28に形成された切欠き30,30と、アウタブラケット34に設けられた連結部38,38とが、周方向で互いに外れた位置に配置されている。本実施形態では、一対の切欠き30,30の対向方向と、一対の連結部38,38の対向方向が、互いに略直交する径方向となっている。
【0031】
そして、エンジンマウント10は、図示しないインナブラケットがボルト20によって第一の取付部材12に取り付けられると共に、該インナブラケットが図示しないパワーユニットに固定されることにより、第一の取付部材12がパワーユニットに取り付けられるようになっている。一方、アウタブラケット34の連結部38,38が図示しない車両ボデーにボルトで固定されることにより、第二の取付部材14が車両ボデーに取り付けられるようになっている。
【0032】
また、アウタブラケット34のストッパ部40は、第一の取付部材12に取り付けられる図示しないインナブラケットと軸方向で対向している。そして、インナブラケットとストッパ部40の当接によって、第一の取付部材12と第二の取付部材14の接近方向での相対変位量を制限するバウンドストッパ機構が構成されている。更に、バウンドストッパ機構を構成するインナブラケットとストッパ部40の対向面間には、蓋体49が配設されており、バウンドストッパ機構によるストッパ作用が蓋体49の弾性に基づいて緩衝的に発揮されるようになっている。
【0033】
また、アウタブラケット34のストッパ部40は、第一の取付部材12のフランジ部22と軸方向で対向している。そして、フランジ部22とストッパ部40の当接によって、第一の取付部材12と第二の取付部材14の離隔方向での相対変位量を制限するリバウンドストッパ機構が構成されている。更に、リバウンドストッパ機構を構成するフランジ部22とストッパ部40の対向面間には、緩衝ゴム32が配設されており、リバウンドストッパ機構におけるストッパ作用が緩衝ゴム32の弾性に基づいて緩衝的に発揮されるようになっている。
【0034】
ここにおいて、環状かしめ片44における環状固定片28の切欠き30上に位置する部位は、図5に示されているように、かしめ固定時に他の部分よりも大きく変形して、先端部分(かしめ固定部位)が切欠き30に対して軸方向でtだけ入り込んでいる。そして、環状かしめ片44の切欠き30に入り込んだ部分が、切欠き30の周方向端面に対して周方向で係止されて、環状固定片28と環状かしめ片44が周方向で位置決めされている。これにより、環状固定片28を備えた第二の取付部材14と、環状かしめ片44を備えたアウタブラケット34とを、周方向で相対的に位置決めする位置決め機構が構成されている。
【0035】
なお、本実施形態では、環状固定片28に対する環状かしめ片44のかしめ固定が、環状かしめ片44の周上の一部に押し当てられたローラを周方向に移動させることで環状かしめ片44を全周に亘って変形させる、所謂ロールかしめによって実現されている。それ故、環状かしめ片44において切欠き30への部分的な入り込みが、より大きく生じて、位置決め機構による周方向での位置決めが効果的に実現される。
【0036】
一方、環状固定片28に設けられた切欠き30は、環状固定片28の外周面への開口部分が当接部42および環状かしめ片44によって覆蓋されている。これにより、切欠き30における当接部42および環状かしめ片44を内周側に外れた部分によって、環状固定片28を上下に貫通する連通孔52が形成されている。そして、マウント本体11とアウタブラケット34の径方向間に形成された空間が、環状固定片28を挟んだ下方の空間に対して、連通孔52を通じて連通されている。
【0037】
このような連通孔52が設けられていることにより、エンジンマウント10では、マウント本体11とアウタブラケット34の径方向間に入り込んだ雨水等の異物が、連通孔52を通じて速やかに外部に排出されるようになっている。それ故、本体ゴム弾性体16等の外周面上に雨水が滞留するのを防ぐことができて、本体ゴム弾性体16等の侵食が防止されることにより、耐久性の向上が図られ得る。
【0038】
このように、エンジンマウント10では、位置決め機構と異物の排出機構とが、環状固定片28に切欠き30を形成すると共に、切欠き30の内周部分を環状かしめ片44のかしめ固定部位よりも内周側に位置させるという、簡単な構造によって実現されている。その結果、位置決め機構および異物排出機構を備えたエンジンマウント10が、部品点数の増加による構造の複雑化や製造工程数の増加による製造効率の低下を生ずることなく、実現される。
【0039】
また、第二の取付部材14の環状固定片28に形成された切欠き30,30は、アウタブラケット34の連結部38,38を周方向で外れた位置に形成されている。これにより、荷重が集中的に作用し易い連結部38,38が設けられた部位において、切欠き30が設けられることで環状固定片28と環状かしめ片44の連結面積が減少するのを防ぐことができる。それ故、環状固定片28と環状かしめ片44がかしめ固定による連結状態に安定して保持される。しかも、エンジンマウント10では、切欠き30,30の対向方向と連結部38,38の対向方向とが互いに略直交するように、それら切欠き30,30と連結部38,38が配置されていることにより、連結状態の安定保持がより効果的に実現される。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、切欠き30は、必ずしも径方向一方向で対向する部位に一対が形成されていなくても良く、3つ以上の切欠き30が形成されていても良いし、1つの切欠き30だけが形成されていても良い。なお、複数の切欠き30が形成されている場合に、それら切欠き30は、環状固定片28の周上でどのように配置されていても良いが、部分的な耐久性の低下等を回避するためには、それら切欠き30が周上で等間隔に形成されることが望ましい。
【0041】
また、切欠きは、環状固定片28の外周端縁に開口していれば、その形状は特に限定されるものではなく、例えば、平面視で略矩形状を呈する切欠きを採用することもできる。
【0042】
また、連結部38は、必ずしも径方向一方向で対向するように一対が設けられていなくても良く、3つ以上の連結部38が設けられていても良いし、1つの連結部38だけが設けられていても良い。
【0043】
また、連結部38は、切欠き30とは周上の異なる位置に設けられることが望ましいが、それら連結部38と切欠き30が周上の同じ位置に設けられた構造も採用され得る。
【0044】
また、前記実施形態では、防振装置本体として、流体封入領域を持たないソリッドタイプのマウント本体11が示されていたが、これはあくまで例示であって、防振装置本体の具体的な構造は、特に限定されるものではない。即ち、防振装置本体としては、流体封入領域に封入された非圧縮性流体の流動作用を利用する流体封入式のものや、流体封入領域に加振力を及ぼして振動を能動的に相殺する能動型流体封入式のもの等、公知の各種構造を採用可能である。
【0045】
また、本発明に従う構造とされた防振装置の適用範囲は、エンジンマウントに限定されるものではなく、サブフレームマウントやボデーマウント、デフマウント等にも適用され得る。また、本発明は、自動車用の防振装置だけでなく、自動二輪車や産業用車両、鉄道用車両に用いられる防振装置にも、好適に適用される。
【符号の説明】
【0046】
10:エンジンマウント(防振装置)、12:第一の取付部材、14:第二の取付部材、16:本体ゴム弾性体、24:環状固定片、30:切欠き、34:アウタブラケット(カバー部材)、44:環状かしめ片、52:連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振連結対象部材の各一方に取り付けられる第一の取付部材と筒状の第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該本体ゴム弾性体の外周側にカバー部材が配設されており、該カバー部材が該第二の取付部材によって支持されている防振装置において、
前記第二の取付部材の軸方向端部には外周に広がる環状固定片が設けられており、該環状固定片には外周端縁に開口する切欠きが形成されていると共に、
前記カバー部材の軸方向端部には全周に延びる環状かしめ片が設けられて、該環状かしめ片が該環状固定片にかしめ固定されることによって該カバー部材が該第二の取付部材に取り付けられており、
該切欠きの外周部分に対する該環状かしめ片のかしめ固定部位で該環状かしめ片が該切欠きに係止されて該第二の取付部材と該カバー部材の位置決め機構が構成されていると共に、
該切欠きの内周部分が該環状かしめ片のかしめ固定部位を内周側に外れて位置して該環状固定片を貫通する連通孔が形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記カバー部材の周上に設けられた連結部を介して、前記第二の取付部材が前記防振連結対象部材に取り付けられるようになっていると共に、第二の取付部材における前記切欠きが該連結部を周方向に外れた位置に形成されている請求項1に記載の防振装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−256900(P2011−256900A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129930(P2010−129930)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】