説明

防汚組成物、ならびに該組成物から形成された被膜および漁網

【課題】広範な水棲生物に対する防汚性を漁網に付与し、しかもクリヤーであり、網染め作業性にも優れる防汚組成物を提供すること。
【解決手段】(A)下記一般式(I)で表されるジフェニルボロン・ピリジン類錯体、
および;


〔式中、Xはアルキル基またはアルコキシ基を示し、nは0〜3の整数を示し、nが2または3であるとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。Raはアルキル基、アルケニル
基またはアルコキシ基を示し、Rbはピリジニル基、キノニル基またはイソキノニル基を
示し、Rb中の各水素原子は他の基で置換されていてもよい。〕(B)テトラエチルチウ
ラムジスルフィドを含有することを特徴とする防汚組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚組成物、ならびに該組成物から形成された被膜および漁網に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖網、定置網等の漁網は、海中に長期間設置されるため、この漁網に各種水棲生物例えば、ヒドロゾア等の腔腸動物、青ノリ等の海草類、フジツボ、シロウスホヤ、セルプラ、コケムシ、軟体動物などが多量に付着すると、漁網が重くなり破損しやすくなったり、漁網の取扱い性が低下し、また漁網の網目が目詰まりを起こし海水の流通を阻害し養殖魚類を死に至らしめるなどの被害が生じる恐れがある。
【0003】
このような問題を解決するため、従来より、たとえば亜酸化銅、銅ピリチオン等の銅系防汚剤、ポリカーバメート等の窒素硫黄系防汚剤を含有する漁網用防汚剤が使用されてきた。しかしこれらの防汚剤は、有機溶剤に不溶なために沈殿を生じる、いわゆる非クリヤー型であることから、網染め前に攪拌作業が必要となるため、網染め作業性に劣っていた。
【0004】
また、防汚剤として4−イソプロピルピリジン−ジフェニルメチルボラン等のジフェニルホウ素化合物が配合された防汚組成物も多く提案されている。たとえば、特開平9−323909号公報(特許文献1)には、特定のジアリール(ピリジニオまたはイソキノリニオ)ホウ素錯体を有効成分として含有する水中防汚塗料、漁網処理剤等が記載されている。
【0005】
特開平11−500457号公報(特許文献2)には、汚損生物を(4−イソプロピルピリジニオ)メチル−ジフェニルホウ素等のジアリールホウ素化合物と接触させることを含む、水中表面への汚損生物の付着を抑制又は防除するための方法が記載されている。
【0006】
特開2004−244395号公報(特許文献3)には、4−イソプロピルピリジン−ジフェニルメチルボランと特定のアルキルアミンとが配合され、水中防汚剤などとして有用な組成物が記載されている。
【0007】
特開2004−307764号公報(特許文献4)には、特定の有機シリル系加水分解性樹脂と特定のジフェニルボラン化合物とを含有する塗料組成物が開示され、この組成物が漁網等への海棲生物の付着を阻害する性能を発揮することが記載されている。
【0008】
特開2005−60510号公報(特許文献5)には、(A)特定のジフェニルボラン化合物と、(B)R5−(CH2k−COO−M−Lqで示される重合性不飽和金属塩化合物から誘導される成分単位を含有する共重合体とを含有することを特徴とする塗料組成物が開示され、この塗料組成物が漁網等の防汚荷有用であることが記載されている。この(A)成分として(4−イソプロピルピリジニオ)メチルジフェニルホウ素などが具体的に挙げられている。
【0009】
さらに、上記の特許文献1,3,4および5では、それぞれに記載された組成物に、公知の防汚成分であるテトラメチルチウラムジスルフィドを配合してもよいことが記載されている。しかしながら、テトラメチルチウラムジスルフィドは溶剤への溶解度が低いため、多くの量を配合しようとすると沈殿が生じ、防汚組成物はクリヤー組成とならなかった。そのため、防汚組成物中にテトラメチルチウラムジスルフィドを充分に配合させることができず、防汚組成物は充分な防汚効果を発揮できなかった。
【0010】
一方、防汚剤としてテトラエチルチウラムジスルフィドが配合された防汚組成物も提案されている。
特開平9−52803号公報(特許文献6)には、R−[NH(CH23nNH2で表されるN−アルキルポリアミン化合物の1種または2種以上の塩の存在下で、(メタ)アクリル系単量体単独、またはこの単量体と共重合しうる他の単量体と組合せて水性媒体中で乳化重合して得られる樹脂水性エマルションが記載され、この乳化重合物から得られる製剤は漁網用防汚剤として有用であることが記載されている。
【0011】
特開平11−172159号公報(特許文献7)には、酸価10〜300mgKOH/gを有する基体樹脂中のカルボキシル基と2価金属との当量比が0.1〜5となるよう形成された金属カルボキシレート構造を分子内及び/又は分子間に有する樹脂(a)から選ばれる少なくとも1種を、乳化剤(b)を用いて水分散してなる水性樹脂エマルジョン(A)を防汚性を有するバインダーとして含有してなる水性防汚樹脂組成物が開示されている。
【0012】
特開平11−193203号公報(特許文献8)には、一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、MはZnまたはCuを示す)で表されるジチオカルバミン酸化合物を有効成分とし、展着樹脂、溶出調整剤、界面活性剤、及び溶媒として水を含有する漁網防汚剤であって、溶出調整剤としてセルロース誘導体を用いることを特徴とする前記漁網防汚剤が開示されている。
【0015】
特開2000−239572号公報(特許文献9)には、カルボキシル基を有する水溶性有機高分子又はその塩とアルカリ珪酸塩又はSiO2とを必須成分として含有していることを特徴とする水中防汚塗料組成物が記載されている。
【0016】
そして、これら特許文献6〜9では、それぞれに記載された組成物に、公知の防汚成分であるテトラエチルチウラムジスルフィドを配合してもよいことが記載されているが、これらの防汚組成物の防汚性は充分ではなかった。また特許文献6〜9には、それぞれに記載された組成物に、ジフェニルボロン錯体を配合し得ることは記載されていない。
【0017】
さらに、特開平11−199414号公報(特許文献10)には、(a)トリフェニルボ
ロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体と、(b)特定の
式で表されその親水性親油性バランス(HLB)が2.0〜7.0であるポリエーテルシリコーンと、(c)樹脂と、(d)有機溶剤とを含有する漁網用防汚剤が開示され、防汚剤としてテトラエチルチウラムジスルフィドが配合されていてもよいことが記載されている。
【0018】
また特開平11−335203号公報(特許文献11)には、特定のオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンを含有する水中防汚剤組成物が記載され、この組成物
がテトラエチルチウラムジスルフィドおよびトリフェニルボロン−アルキルアミン錯化合物系防汚剤を含有していてもよいことが記載されている。
【0019】
このように、特許文献10および11では、テトラエチルチウラムジスルフィドとトリフェニルボロン錯体との併用についての記載があるが、テトラエチルチウラムジスルフィドとジフェニルボロン錯体との併用できるとの記載はない。また、これらの防汚組成物には、網染め作業性の点で改善の余地があった。
【特許文献1】特開平9−323909号公報
【特許文献2】特開平11−500457号公報
【特許文献3】特開2004−244395号公報
【特許文献4】特開2004−307764号公報
【特許文献5】特開2005−60510号公報
【特許文献6】特開平9−52803号公報
【特許文献7】特開平11−172159号公報
【特許文献8】特開平11−193203号公報
【特許文献9】特開2000−239572号公報
【特許文献10】特開平11−199414号公報
【特許文献11】特開平11−335203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、広範な水棲生物に対する防汚性を漁網に付与し、しかもクリヤーであることから網染め作業性にも優れる防汚組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、特定のジフェニルボロン・ピリジン類錯体とテトラエチルチウラムジスルフィドとを含有する防汚組成物によれば、防汚処理して得られる漁網は広範な水棲生物に対して防汚性に優れ、しかもクリヤーであって網染め作業性にも優れることを見出して本発明を完成するに至った。
【0022】
上記の各先行文献には、ジフェニルボロン・ピリジン類錯体またはテトラエチルチウラムジスルフィドのいずれかが防汚剤として有用あることが記載されているが、これら2種の化合物の併用に関する記載は一切ない。
【0023】
本発明の防汚組成物は、
(A)下記一般式(I)で表されるジフェニルボロン・ピリジン類錯体、および;
【0024】
【化2】

【0025】
〔式中、Xはアルキル基またはアルコキシ基を示し、nは0〜3の整数を示し、nが2または3であるとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。
aはアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を示し、
bはピリジニル基、キノリニル基またはイソキノリニル基を示し、Rb中の各水素原子は他の基で置換されていてもよい。〕
(B)テトラエチルチウラムジスルフィド
を含有することを特徴としている。
【0026】
本発明の防汚組成物は、前記テトラエチルチウラムジスルフィド(B)を、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)100重量部に対し50〜1500重量部含有することが好ましい。
【0027】
本発明の防汚組成物は、塗膜形成樹脂(D)をさらに含有することが好ましい。
前記塗膜形成樹脂(D)としては、アクリル樹脂、アクリル・メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂およびアルキッド・メラミン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0028】
本発明の防汚組成物は、溶媒(H)をさらに含有することが好ましい。
前記溶媒(H)としては、キシレン、トルエン、酢酸エステル、メチルイソブチルケトン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼンおよびプロピルベンゼンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0029】
本発明の防汚組成物としては、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)の含量が0.1〜7重量%であり、前記テトラメチルチウラムジスルフィド(B)の含量が1〜1
5重量%である防汚組成物が好ましい(ただし、防汚組成物の重量を100重量%とする。)。
【0030】
本発明の防汚組成物は、ポリエーテルシリコーン(C)をさらに含有することが好ましい。
前記ポリエーテルシリコーン(C)の親油性親水性バランス(HLB)は、2〜7であることが好ましい。
【0031】
本発明の防汚組成物としては、前記ポリエーテルシリコーン(C)を、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)100重量部に対し10〜1000重量部含有する防汚組成物が好ましい(ただし、防汚組成物の重量を100重量%とする。)。
【0032】
本発明の防汚組成物としては、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)の含量が0.1〜7重量%であり、前記テトラエチルチウラムジスルフィド(B)の含量が1〜15重量%であり、かつ前記ポリエーテルシリコーン(C)の含量が0.1〜10重量%である防汚組成物が好ましい(ただし、防汚組成物の重量を100重量%とする。)。
【0033】
本発明の防汚組成物は、さらに、クロロメチル−n−オクチル−ジスルフィッド(n−C817−S−S−CH2Cl)、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3オン、トリフェニル(オクタデシルアミン)ボロン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロン、2,3ジクロロ−N−(2’、6’−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3ジクロロ−N−(2’−エチル、6’−メチルフェニル)マレイミドからなる群から選ばれた少なくとも1種の他の防汚剤(F)を含有することが好ましい。
【0034】
本発明の防汚組成物は、可塑性樹脂(E)をさらに含有することが好ましい。
前記可塑性樹脂(E)としては、ポリブテン、ポリスルフイッド、流動パラフィン、ワックスおよびワセリンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0035】
本発明の塗膜は、上記した本発明の防汚組成物から形成されることを特徴としている。
本発明の漁網は、上記した本発明の被膜で被覆されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0036】
本発明の防汚組成物およびこの防汚組成物から得られる本発明の防汚塗膜は、広範な水棲生物に対して防汚性に優れ、しかもクリヤーである。
また、この防汚組成物を用いて防汚処理して得られる漁網は、広範な水棲生物に対して防汚性に優れており、しかも防汚組成物がクリヤーであることから漁網の網染め作業性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明に防汚組成物、塗膜および漁網について詳細に説明する。
[防汚組成物]
本発明の防汚組成物は、(A)特定のジフェニルボロン・ピリジン類錯体および(B)テトラエチルチウラムジスルフィドを必須成分として含有している。
【0038】
(A)ジフェニルボロン・ピリジン類錯体;
本発明の防汚組成物は、下記一般式(I)で表されるジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)を含有している。
【0039】
【化3】

【0040】
上記一般式(I)において、Xは、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示す。前記炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びオクチル基等を挙げることができる。前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基及びオクトキシ基等を挙げることができる。
【0041】
上記一般式(I)において、nは0〜3の整数であり、nが2又は3であるとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(I)において、Raは炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8
のアルコキシ基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を示す。前記炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びオクチル基等を挙げることができる。前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基及びオクトキシ基等を挙げることができる。前記炭素数2〜8のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の末端二重結合を有するアルケニル基、二重結合が炭素鎖内にあるアルケニル基等を挙げることができる。
【0042】
上記一般式(I)において、Rbは、以下の式(II-a)で表されるピリジニル基、式(II-b)で表されるキノリニル基又は式(II-c)で表されるイソキノリニル基を示し、ピリ
ジン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格中の窒素原子が、それぞれ式(I)で表されるジフェニルボロン・ピリジン類錯体中のボロン原子に配位している。
【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
また、上記ピリジニル基、キノリニル基又はイソキノリニル基中の水素原子は、それぞれ独立に他の基で置換されていてもよい。Rb中の複数の水素原子が置換されている場合
には、各置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
このような基(置換基)としては、炭素原子数1〜8のアルキル基、フェニル基、アセチル基、アルケニル基、アルコキシ基などが挙げられる。
前記炭素原子数1〜8のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等が挙げられ、これらの中ではメチル基およびイソプロピル基が好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。また、前記フェニル基は置換基を有していても良い。
【0048】
これら式(1)で示されるジフェニルホウ素化合物の使用量は、溶媒(H)を含む本発明の防汚組成物100重量%に対して、通常0.5〜7重量%、好ましくは1〜4重量%
の範囲にある。上記範囲よりも少ないと、組成物が十分な防汚効果を発揮しない場合がある。上記範囲よりも多いと、成分(A)の有機溶剤への溶解性が劣り、クリヤーな組成物が得られない場合があり、また、塗膜にクラック及び剥離などの欠陥が生じやすくなり、やはり良好な防汚効果が得られない場合がある。
【0049】
前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
防汚性および作業性の観点から、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)の中でも、R2がピリジニル基である化合物が好ましく、4−イソプロピルピリジン−ジフェニ
ルメチルボランが特に好ましい。
【0050】
本発明の防汚組成物は、上記のジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)を含有しているため、該防汚組成物から防汚性に優れた塗膜が形成される。
(B)テトラエチルチウラムジスルフィド;
本発明の防汚組成物は、テトラエチルチウラムジスルフィド(B)を含有している。
【0051】
このテトラエチルチウラムジスルフィド(B)は、防汚成分として従来の防汚組成物に用いられてきたテトラメチルチウラムジスルフィド(B)と比べて、溶剤への溶解度が高い。
【0052】
本発明の防汚組成物は、テトラエチルチウラムジスルフィド(B)を含有しているため防汚性に優れる。また、有効量のテトラエチルチウラムジスルフィド(B)が配合されてもクリヤー(透明)であることから、この防汚組成物を用いて漁網を防汚処理する際の作業性に優れる。
【0053】
テトラエチルチウラムジスルフィド(B)の配合量は、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)100重量部に対して50〜1500重量部、好ましくは100〜600)重量部であることが望ましい。また、溶媒(H)を含む本発明の防汚組成物100重量%に対して、1〜15重量%、好ましくは3〜15重量%であることが望ましい。配合量が上記範囲よりも少ないと、防汚組成物の防汚性が十分でない場合があり、上記範囲よりも多いと、防汚組成物を低温で保管した際に再結晶による沈殿を生じる場合がある。
【0054】
(C)ポリエーテルシリコーン;
本発明の防汚組成物は、ポリエーテルシリコーン(C)を含有していてもよい。
ポリエーテルシリコーン(C)は、下記式(III)
【0055】
【化7】

【0056】
(式(III)中、X1、X2、X3はそれぞれ独立にポリエーテル基:-R-A-(R3O)n-R4[Rは炭素数1〜5のアルキレン基、Aは単結合または酸素原子、R3は炭素数1〜5のアルキレン基、R4は炭素数1〜5のアルキル基または水素を示し、nは1〜30の整数
(繰り返し単位数)を示す。]、または炭素数1〜5のアルキル基を示し、これらX1
2、X3のうちの少なくとも1個は-R-A-(R3O)n-R4[R、A、R3、R4、n:同
上]であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基を示し、r、mはそれぞれ繰返し単位総数
を示し、繰返し単位[−Si(R22O−]と[−Si(R2)(X1)O−]との結合順序は任意である。)で表される。
【0057】
このポリエーテルシリコーン(C)の親水性親油性バランス(HLB)は、1〜10、好ましくは2〜7であることが望ましい。このHLBは、エチレンオキシドの量(重量%)を5で割った値(エチレンオキシド量/5)で示され、このHLBが1〜10の範囲にあると防汚性が良好であり、1未満では、該防汚剤で網染めした漁網からの防汚剤の溶出量が少ないため防汚効果が低く、また10を超えると海中への溶出量が多過ぎて長期防汚性に劣る傾向がある。
【0058】
このようなポリエーテルシリコーンは、ポリエーテル変性シリコーンとも言われ、
(a):X1、X2、X3のうちのX1が「-R-A-(C24O)n-CH3(R,A,n:同上)」等のポリエーテル基であり、X2、X3がメチル基等のアルキル基である側鎖型ポリエーテルシリコーン、あるいは
(b):X1、X2、X3のうちのX1がメチル基等のアルキル基であり、X2、X3が「-R-A-(C24O)n-CH3(R,A,n:同上)」等のポリエーテル基である両末端型ポリ
エーテルシリコーン、さらには、
(c):側鎖と片末端、(d):側鎖と両末端、あるいは(e):片末端のみに上記ポリエーテル基が結合した複合型ポリエーテルシリコーン等が挙げられる。これらのうちでは、側鎖型ポリエーテルシリコーン(a)または両末端型ポリエーテルシリコーン(b)が防汚性等の点から好ましい。
【0059】
上記ポリエーテル基:「-R-A-(R3O)n-R4」中のRは、炭素数1〜5、好ましく
は炭素数2〜5のアルキレン基を示すが、このアルキレン基としては、直鎖状または分岐状であってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基等が挙げられ、中でも直鎖状のものが好ましく、さらにはエチレ
ン基、n-プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0060】
3は炭素数1〜5の同上のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基が挙げられる
。R4は炭素数1〜5のアルキル基または水素を示し、好ましくはアルキル基であり、こ
のようなアルキル基としては、上記したようなものが例示でき、防汚性の点や、ポリエーテルシリコーン(C)と後述する塗膜形成樹脂(D)との相溶性の点などを考慮するとメチル基が特に好ましい。
【0061】
このようなポリエーテル基としては、例えば、-C36-O-(C24O)n-C25、-C24-O-(C36O)n-CH3、-C36-O-(C24O)n-CH3、-C24-O-(C36O)n-CH3、-C36-(C24O)n-CH3、-C24-(C36O)n-CH3、-C36-
(C24O)n-H、-C24-(C36O)n-H、-(C36O)n-CH3、-CH2-O-(C24O)n-CH3、-CH2-O-(C24O)n-H、-(C24O)n-CH3、-(C24O)n-H、-CH2-O-(C46O)n-CH3、-CH2-O-(C46O)n-H、-(C46O)n-H 等が挙げられ、防汚性の点や、ポリエーテルシリコーン(C)と塗膜形成樹脂(D)
との相溶性の点などを考慮すると、ポリエーテル基としては、末端がメトキシ基のものが好ましく、より具体的には-C36-O-(C24O)n-CH3、-C24-O-(C36O)n-CH3が特に好ましい。
【0062】
上記R2は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が挙げられ、複数のR2は互いに同一であっても異なっていてもよいが、何れもメチル基であることが好ましい。また、繰返し単位[−Si(R22O−]と繰返し単位[−Si(R2)(X1)O−]との結合順序は任意であり、換言すれば、側鎖のX1
がとくに上記ポリエーテル基:「-R-A-(R3O)n-R4」である場合、このX1は、ポリエーテルシリコーン(C)分子中の側鎖基群のうちの任意の位置に存在していてもよい。繰返し単位数rは1〜7000の数であり、またmは1〜50の数である。また、このようなポリエーテルシリコーンの分子量は、通常、1,000〜50,000、好ましくは3,000〜10,000程度である。ポリエーテルシリコーン(A)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
このようなポリエーテルシリコーン(C)としては、シリコーンオイルKF6016(信越化学(株)製、HLB値=4.5)、ST−114PA(東レ・ダウコーニング(株)製、HLB値=5.6)、ポリエーテルシリコーンX22−6515(信越化学(株)製、HLB値=5.7)などを用いることができる。
【0064】
ポリエーテルシリコーン(C)は、ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)を100重量部とした場合に、10〜1000重量部、好ましくは20〜300重量部となる量で含まれていることが望ましい。また、溶媒(H)を含む本発明の防汚組成物100重量%に対して、0.1〜10重量%、好ましくは2〜6重量%となる量で含まれていることが望ましい。含有量がこの範囲にあると塗膜の防汚性が良好であり、塗膜形成樹脂(D)と
の相溶性も良好である。
【0065】
(D)塗膜形成樹脂;
本発明の防汚組成物は、塗膜形成樹脂(D)をさらに含有していてもよい。塗膜形成樹脂(D)としては、たとえばアクリル樹脂、アクリル・メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、アルキッド・メラミン樹脂が挙げられ、これらはマレイン酸変性されていてもよい。これらの樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、塗膜形成樹脂(D)には、上記ポリエーテルシリコーン(C)は含まれない。
【0066】
この塗膜形成樹脂(D)としては、ガラス転移温度(Tg)が、−30℃〜+40℃、好ましくは−20℃〜+10℃のアクリル樹脂を用いることが望ましい。このようなアクリル樹脂は他の各成分との相溶性が良好であり、さらに柔軟性および耐水性に優れた防汚塗膜を得ることができるため好ましい。一方、ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、防汚組成物から形成される塗膜に粘着が生じ、表面に塗膜が形成された漁網の取扱いに不都合が生じることがある。またガラス温度が上記範囲よりも高いと、組成物および塗膜の防汚性が劣る場合があり、塗膜が形成された漁網がこわばるなどの不都合が生じる場合もある。
【0067】
塗膜形成樹脂(D)は、ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)を100重量部とした場合に、100〜3000重量部、好ましくは300〜1000重量部となる量で含まれていることが望ましい。また塗膜形成樹脂(D)は、溶媒(H)を含む本発明の防汚組成物100重量%に対して、0.1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%となる量で含まれていることが望ましい。このような量であると、防汚性や網染め性に優れた防汚組成物を得ることができる。
【0068】
(E)可塑性樹脂;
本発明の防汚組成物において、好ましく用いられる可塑性樹脂(E)としては、ポリブテン、ポリスルフイッド、流動パラフィン、ワックス、ワセリンが挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。可塑性樹脂(E)を添加することにより、防汚塗膜の防汚性を向上させるとともに、さらに防汚剤の溶出を調整し長期に亘る防汚効果を発揮することができる。
【0069】
ポリブテンとしては、防汚性の面から数平均分子量が280〜1000のポリブテンが好ましい。このようなポリブテンは、たとえば日本石油株式会社よりLV−5、LV−10、LV−25、LV−50、LV−100等の商品名で市販されている。このようなポリオレフィン類は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
ポリスルフイッドは、一般式;
5(S)n2
で表わされるジアルキルポリスルフィッドである。式中、R5およびR6は炭素数1〜20個のアルキル基を表し、R5およびR6は同一でも異なっていてもよい。nは2〜10の整数、防汚性の面から4または5の整数が好ましい。
【0071】
このジアルキルポリスルフィッドとしては、ジエチルペンタスルフィッド、ジ第3級ブチルジスルフィッド、ジ第3級ブチルテトラスルフィッド、ジ第3級アミルテトラスルフィッド、ジ第3級オクチルペンタスルフィッド、ジ第3級ノニルペンタスルフィッド、ジ第3級ドデシルペンタスルフィッド、ジノナデシルテトラスルフィッド等が挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
流動パラフィンは、原油を蒸留してガソリン分、灯油分、軽油分等を除き、スピンドル油からエンジン油までの留分を採り、精製して得られ、主としてアルキルナフテン類からなる液状炭化水素油であり、好ましくは、JISK9003の規定に適合するものである。
【0073】
ワックスとしては、例えば石油系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックスを挙げることができる。この石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックスを例示できるが、特にパラフィンワックスが好ましい。また、ワセリンとしては、白色ワセリン、黄色ワセリン等が挙げられる。
【0074】
このような可塑性樹脂(E)のうちでは、ポリブテン、ポリスルフイッドが防汚効果向上の面から好ましい。
可塑性樹脂(E)は、ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)を100重量部とした場合に、50〜500重量部、好ましくは100〜300重量部となる量で含まれていることが望ましい。また可塑性樹脂(E)は、溶媒(H)を含む本発明の防汚組成物100重量%に対して、1〜15重量%、好ましくは3〜8重量%となる量で含まれていることが望ましい。このような範囲であると、得られる塗膜の防汚効果が向上するとともに、塗膜強度にも優れるため好ましい。
【0075】
(F)他の防汚剤;
本発明の防汚組成物は、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)および前記テトラエチルチウラムジスルフィド(B)以外にも、他の防汚剤(F)を含有していてもよい。
【0076】
このような他の防汚剤(F)としては、クロロメチル−n−オクチル−ジスルフィッド(n−C817−S−S−CH2Cl)、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3オン、トリフェニル(オクタデシルアミン)ボロン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロン、2,3ジクロロ−N−(2’、6’−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3ジクロロ−N−(2’−エチル、6’−メチルフェニル)マレイミドなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
他の防汚剤(F)は、ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)を100重量部とした場合に、10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部となる量で含まれていることが望ましい。また他の防汚剤(F)の配合量は、その種類によっても異なるが、溶媒(H)を含む本発明の防汚組成物100重量%に対して、0.1〜20重量%、好ましくは1〜5重量%となる量で含まれていることが望ましい。
【0078】
本発明の防汚組成物に他の防汚剤(F)が配合されていると、防汚組成物の防汚性が高められるため好ましい。
(G)他の成分;
本発明の防汚組成物には、上記の成分の他にも、その他の成分として、脱水剤、可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、安定剤、含量など、漁網用防汚組成物に通常配合される成分を適宜配合してもよい。
【0079】
(H)溶媒;
本発明の防汚組成物は、溶媒(H)を含有していてもよい。
本発明の防汚組成物において各種成分は、有機溶剤に溶解若しくは分散、好ましくは溶解している。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水
素系、ケトン系、エステル系、アルコール系、エーテル系など、通常、漁網用防汚剤に配合されるような各種溶剤が用いられる。上記芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルイソブチルケトン等が挙げられ、エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステルが挙げられ、アルコール系溶剤としては、例えば、商品名「イプゾール100(出光石油化学(株)製)、溶剤混合物」、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、i-ブタノール等が挙げられる。これらの溶剤のうちでは、臭気、引火点、乾燥性等の点からキシレンが最も好ましい。これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0080】
溶媒(H)の配合量は、通常特に限定されないが、該溶剤は、本発明の漁網用防汚剤100重量部中に、通常、40〜80重量部、好ましくは50〜75重量部の量で含まれることが多い。
【0081】
本発明の防汚組成物に溶媒(H)が配合されていると、網染め作業性が優れるため好ましい。
(防汚組成物およびその製造方法)
本発明の防汚組成物は、上記の各成分を公知の方法で混合することにより調製される。これらの配合成分の攪拌・混合の際には、ペイントシェーカー、ロスミキサー、プラネタリーミキサー、万能品川攪拌機、など、従来公知の混合・攪拌装置が適宜用いられる
[防汚塗膜、漁網]
上記のような本発明の防汚組成物(防汚剤)は、漁網の網染めに好ましく使用される。
【0082】
本発明の防汚組成物は、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)および前記テトラエチルチウラムジスルフィド(B)が溶剤可溶性であるため、均一処理性(例えば、漁網を均一に網染め処理できること)および作業性に優れ、塗布硬化後は、適度な防汚剤溶出速度を有し、広範な漁網付着生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮できる。
【0083】
漁網の網染めを行うには、常法に従えばよく、例えば、漁網用防汚剤の中に漁網を浸漬して漁網の繊維内あるいは繊維間に漁網用防汚剤を浸透含浸させた後、漁網を引き上げ乾燥させればよい。なお、敷延あるいは広げて吊るした漁網の表裏面に漁網用防汚剤を静電塗装の方法で、あるいはエアガン、エアレス塗装等の方法で散布してもよい。このように網染めし乾燥した後の漁網の重量増加は、漁網1kg当たり、通常80〜200g程度である。
【0084】
このような本発明の防汚組成物を漁網の表面に塗布硬化してなる防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を長期間継続的に防止できるなど防汚性に優れている。
【0085】
本発明の防汚組成物は、漁網の材質が、ポリエチレン、ナイロン、麻、金属、ポリエステルなどである場合に良好に含浸付着する。また、該防汚組成物は、既存の防汚処理漁網表面に含浸付着させてもよい。
【0086】
このように漁網用防汚剤を漁網等に塗布すれば、水棲生物の付着を阻止でき漁網の網目の閉塞を防止でき、しかも環境汚染の恐れが少ない。なお、この本発明に係る防汚剤は、直接漁網に含浸塗布してもよく、また予めプライマーなどの下地材が塗布された漁網等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の漁網用防汚剤による防汚処理が行われ、あるいは本発明の防汚剤処理が行われている漁網の表面に、補修用として本発明の防汚剤による塗布処理を施してもよい。
【0087】
上記のようにして得られる本発明に係る防汚処理漁網は、環境汚染の虞が少なく広汎な漁網付着生物に対して長期防汚性に優れている。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
<防汚組成物の調製>
[実施例A]
表1に示す配合比で各成分を配合し、防汚組成物を調製した。
【0089】
【表1】

【0090】
(注)
シリコーンKF-6016(商品名):ポリエーテルシリコーン(HLB=4.5)、信越化学工業
(株)製
シリコーンST-114PA(商品名):ポリエーテルシリコーン(HLB=5.6)、東レ・ダウコーニング・シリコン(株)製
DAF-1(商品名):ポリスルフィッド、大日本インキ(株)製
アクリル樹脂ACP-470(商品名):ガラス転移点−10℃のアクリル樹脂、大竹化学(
株)製
実施例A〜C,比較例D〜Hの防汚組成物を作成した。
【0091】
<評価方法>
(1)クリヤー性;
各防汚組成物を、室温(20℃)で48時間放置した後の、防汚剤の沈殿の有無を検査し、以下の基準でクリヤー性を評価した。
【0092】
良好・・・沈殿が生じなかった、
不良・・・沈殿が生じた。
(2)防汚性;
沈殿が無くクリヤーな組成物を、それぞれポリエチレン製無結節網(7節、400デニール/50本)に浸漬塗布し、風乾した。塗膜が形成された網を、平成16年 5月13日から10月16日までの5ヶ月間、高知県宿毛市沖の海面下約2mに、浸漬保持し、海中生物の付着状況を調査した。
【0093】
防汚性を、以下の基準で評価した。
− :海中生物の付着が無かった
+ :海中生物の付着がやや有った
++:海中生物の付着が非常に多かった。
【0094】
結果を第2表に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
(注)
クリヤー性 *1:4−イソプロピルピリジン−ジフェニルメチルボランの沈殿
*2:テトラメチルチウラムジスルフィドの沈殿
生物付着評価 − 無し
+ やや有り
++非常に多い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表されるジフェニルボロン・ピリジン類錯体;
【化1】

〔式中、Xはアルキル基またはアルコキシ基を示し、nは0〜3の整数を示し、nが2または3であるとき、各Xは同一であって異なっていてもよい。
aはアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を示し、
bはピリジニル基、キノリニル基またはイソキノリニル基を示し、Rb中の各水素原子は他の基で置換されていてもよい。〕、および
(B)テトラエチルチウラムジスルフィド
を含有することを特徴とする防汚組成物。
【請求項2】
前記テトラエチルチウラムジスルフィド(B)を、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)100重量部に対し50〜1500重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の防汚組成物。
【請求項3】
塗膜形成樹脂(D)をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防汚組成物。
【請求項4】
前記塗膜形成樹脂(D)が、アクリル樹脂、アクリル・メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂およびアルキッド・メラミン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の防汚組成物。
【請求項5】
溶媒(H)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚組成物。
【請求項6】
前記溶媒(H)が、キシレン、トルエン、酢酸エステル、メチルイソブチルケトン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼンおよびプロピルベンゼンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の防汚組成物。
【請求項7】
前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)の含量が0.1〜7重量%であり、前記
テトラメチルチウラムジスルフィド(B)の含量が1〜15重量%であることを特徴とする請求項5または6に記載の防汚組成物。
【請求項8】
ポリエーテルシリコーン(C)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の防汚組成物。
【請求項9】
前記ポリエーテルシリコーン(C)の親油性親水性バランス(HLB)が2〜7であることを特徴とする請求項8に記載の防汚組成物。
【請求項10】
前記ポリエーテルシリコーン(C)を、前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)100重量部に対し10〜1000重量部含有することを特徴とする請求項8または9に記載の防汚組成物
【請求項11】
前記ジフェニルボロン・ピリジン類錯体(A)の含量が0.1〜7重量%であり、前記テトラエチルチウラムジスルフィド(B)の含量が1〜15重量%であり、かつ前記ポリエーテルシリコーン(C)の含量が0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の防汚組成物。
【請求項12】
さらに、クロロメチル−n−オクチル−ジスルフィッド(n−C817−S−S−CH2Cl)、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3オン、トリフェニル(オクタデシルアミン)ボロン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロン、2,3ジクロロ−N−(2’、6’−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3ジクロロ−N−(2’−エチル、6’−メチルフェニル)マレイミドからなる群から選ばれた少なくとも1種の他の防汚剤(F)を含有することを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の防汚組成物。
【請求項13】
可塑性樹脂(E)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の防汚組成物。
【請求項14】
前記可塑性樹脂(E)が、ポリブテン、ポリスルフイッド、流動パラフィン、ワックスおよびワセリンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項12に記載の防汚組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の防汚組成物から形成された被膜。
【請求項16】
請求項15に記載の被膜で被覆された漁網。

【公開番号】特開2007−246482(P2007−246482A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75341(P2006−75341)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】