説明

防湿剤塗布補助装置

【課題】 電子回路基板への防湿剤塗布の作業内容を図面と照らし合わせる手間を省き、かつ作業の信頼性を向上させるようにした防湿剤塗布補助装置を提供すること。
【解決手段】 回路部品を搭載した電子回路基板へ防湿剤を塗布する際の防湿剤塗布補助装置10であって、電子回路基板を搭載固定する固定台3と、この固定台3に固定された電子回路基板の回路部品搭載面上に、防湿剤塗布エリアを映し出す投影機1とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防湿剤塗布補助装置に関し、特に電子回路基板の搭載部品に防湿剤を塗布する際においてその補助となる防湿剤塗布補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用環境が厳しい車載機器等においては、電子部品に防湿剤を塗布することが必要になる。この場合に、作業者が電子回路基板に防湿剤を塗布することになるが、当該作業者は、例えば、図2に示すような予め作成されている作業指示図面を参照しつつ、塗布作業を実施しているのが実状である。
【0003】
図2に示す電子回路基板5の例のように、防湿剤の塗布が必要なエリア51と、塗布を禁止するエリア52とが複雑になっている場合には、作業指示図面を参照する回数(時間)が増加し、作業効率が著しく低下することになる。このように、防湿剤塗布エリア51と防湿剤塗布禁止エリア52とが複雑になればなるほど、作業指示図面参照回数がが増大して、それだけより大きな時間的損失が発生するのみならず、防湿剤塗布時や検査時の確認漏れが発生する危険性も増加し、製品の信頼性も低下することになる。
【0004】
なお、特許文献1には、基板への締結部品の組み付けのための締結自動化システムにおいて、基板に組み付けられる締結部品の所定位置の像を基板上に投影する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−509785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、電子回路基板に防湿剤を塗布する工程において、防湿剤塗布エリアや防湿剤塗布禁止エリアを把握する必要があるために、作業者の熟練性を要し、よってこの防湿剤塗布工程が全体の製造ラインのネック工程となり、また作業者の増員を必要とするなどの生産性低下の原因となっていた。
【0007】
なお、上記の特許文献1の技術は、基板への締結部品の組み付けのための締結自動化システムに関するものであり、本発明が対象とする電子回路基板の防湿剤塗布のための補助装置の技術とは異なるものである。
【0008】
本発明の目的は、電子回路基板への防湿剤塗布の作業内容を図面と照らし合わせる手間を省き、かつ作業の信頼性を向上させるようにした防湿剤塗布補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による防湿剤塗布補助装置は、回路部品を搭載した電子回路基板へ防湿剤を塗布する際の防湿剤塗布補助装置であって、前記電子回路基板を搭載固定する固定台と、前記固定台に固定された電子回路基板面上に、防湿剤塗布エリアを映し出す投影手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による第一の効果は、防湿剤塗布エリアを投影機によって実際の回路基板上に映し出すようにしたので、作業内容を指示図面と照らし合わす手間を大幅に削減できることである。また、本発明による第2の効果は、防湿剤塗布エリアを投影し、塗布済み箇所を容易に確認できるので、作業の信頼性を向上できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の概略を示す図である。
【図2】電子回路基板上に防腐剤塗布エリアや防腐剤塗布禁止エリアの投影例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の原理を説明するための概略図である。図1に示すように、本発明の防湿剤塗布補助装置10は、投影機1と、紫外線放射ライト2と、回路基板固定台3と、PC(パーソナルコンピュータ)4とを含んで構成されている。
【0013】
図1において、回路基板固定台3に搭載固定してセットされた電子回路基板5(図2参照のこと)の面上に、PC4に予め格納されている防湿剤塗布エリア51及び防湿剤塗布禁止エリア52のデータを、投影機1によって、投影する。その投影結果の例を図2に示している。よって、作業者は、この投影されたエリア51にのみ防湿剤を塗布することが、容易にかつ確実に可能となる。
【0014】
このとき、蛍光塗料を混ぜた防湿剤を使用することによって、紫外線放射ライト2から紫外線を電子回路基板へ照射すると、透明である防湿剤を蛍光色に浮かびあがらせることができる。
【0015】
このように、本発明による防湿剤塗布補助装置10を使用することによって、作業者は、作業指示図面と実際の電子回路基板を照らし合わせることなく、防湿剤塗布や検査を実施することが可能となる。
【0016】
図3は、本発明の一実施の形態を示す概略図であり、図3において図1と同等部分は同一符号を持って示している。本例では、図1の装置に、簡易暗室6と吸引管7とを追加したものである。
【0017】
図3において、投影機1は、回路基板固定台3に電子回路基板5を固定した時に、基板図が等倍に映し出される位置に設置され、PC4に格納されている防湿剤塗布エリアや塗布禁止エリア等の映像信号を、回路基板固定台3に固定された電子回路基板5上に投影する。紫外線放射ライト2は、回路基板固定台3の上部に設置され、蛍光塗料を含んだ透明の防湿剤を蛍光色に浮かびあがらせる。
【0018】
また、本装置を製造ラインにて有効に活用するために、簡易暗室6と吸引管7とを設けている。この簡易暗室6は周囲を暗くする機能を有し、ライン全体を暗くすることなく、照明の下では効果が低減してしまう紫外線放射ライト2を有効に活用し、作業者が防湿剤を蛍光色で確認することを可能とする。吸引管7は、防湿剤の近くに設置されることで、防湿剤使用時の換気を効果的に行うものである。
【0019】
かかる構成において、回路基板固定台3に、防湿剤を塗布すべき電子回路基板5をセットすると、投影機1によって、この電子回路基板5上に、PC4に格納されている防湿剤塗布エリアと塗布禁止エリアとの情報が映し出される。よって、ライン作業者は、この映し出された防湿剤塗布エリアの枠の中に、防湿剤を塗布する。
【0020】
この際、蛍光塗料をまぜた防湿剤を使用することで、紫外線放射ライト1によって、透明である防湿剤が蛍光色に浮びあがるので、作業者は、塗り残しがないか、塗布禁止エリアに塗布してしまっていないかを容易に確認することができる。そして、簡易暗室6によりこの効果が向上することになる。防湿剤は、有機溶剤に似た独特の臭いを持つために、吸引管7を通して換気を行うようにしているのである。
【0021】
以上の構成により、防湿剤塗布エリアや塗布禁止エリアの内容を投影機により実際の回路基板上に映し出すので、作業内容を指示図面と照らし合わす手間を削減できることになる。また、紫外線放射ライトにより透明な防湿剤を蛍光色に変換するので、塗布済みのエリアを確認できる。更には、塗布エリアを投影し、塗布済み箇所を容易に確認できるので、作業の信頼性を向上できる。
【0022】
本発明の他の実施の形態として、その基本的構成は上記の通りであるが、実際のライン構成についてさらに工夫している。その構成を図4に示す。図4において図3と同等部分は同一符号により示している。
【0023】
本例では、図3に示した防湿剤塗布補助装置を2台(10,11として示す)設置し、2台の防湿剤塗布補助装置10,11の間に乾燥ラック12を設置している。この乾燥ラック12は、防湿剤塗布済みの電子回路基板5を載置しつつ乾燥させるためのものであり、平置き棚としても良いが、図4に示しているように、回転式にすることが望ましい。回転式の場合には、平置き棚の場合に比べて、設置に要する占有面積や占有体積がより小となって、効率的となることは明白である。なお、121は電子回路基板5の出し入れ口である。
【0024】
また、図3において、,回路基板固定台3は、電子回路基板5の大きさや形状に合わせて作成し、取替え可能な構成にすることができる。投影機1は上下、前後、左右の位置を調整できる構造になっている。更に、PC4には、投影機1で映し出す防湿剤塗布エリア、塗布禁止エリアの他に、制御プログラムを格納するものとする。
【0025】
例えば、電子回路基板5上に、QR(Quick Response)コード等の二次元バーコードを印刷しておけば、PC4にQRコードリーダを接続して、種々の電子回路基板の夫々のQRコードを読み取ることにより、対象とする電子回路基板に対応した、投影すべき防湿剤塗布エリアや塗布禁止エリアのデータを自動で判別し、適切な防湿剤塗布エリアや塗布禁止エリアの情報を投影させることが可能となる。
【0026】
図4に示した装置により以下の効果が得られることになる。すなわち、前段装置10で、防湿剤を塗布し、後段の装置11で検査を実施することができるので、信頼性が向上することになる。また、前段の装置10にて禁止エリアを投影することを止める、または、禁止エリアを特定することで、作業の更なる効率化が行えることになる。
【0027】
更に、乾燥ラック12を回転式にすることで、作業性の向上や乾燥時間の管理を行えるという利点が生まれる。更にはまた、回路基板固定台3を電子回路基板5の大きさや形状に合わせて作成し、取替え可能な構成にすることで、多種多様な電子回路基板に対応するよう汎用性をもたせることが可能である。また、投影機2を上下、前後、左右の位置を調整できる構造にすることで、多種多様な電子回路基板に対応できるように汎用性をもたせることが可能である。
【0028】
更に、PCに複数のデータを格納することで、汎用性を持たせることがとなり、またPCに制御機能を持たせることで、投影するエリアを対象とする電子回路基板にあわせて自動的に切り替えることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 投影機
2 紫外線放射ライト
3 回路基板固定台
4 PC
5 電子回路基板
6 簡易暗室
7 吸引管
10 防湿剤塗布補助装置(塗布用)
11 防湿剤塗布補助装置(検査用)
12 乾燥ラック
51 防湿剤塗布エリア
52 防湿剤塗布禁止エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部品を搭載した電子回路基板へ防湿剤を塗布する際の防湿剤塗布補助装置であって、前記電子回路基板を搭載固定する固定台と、前記固定台に固定された電子回路基板面上に、防湿剤塗布エリアを映し出す投影手段とを含むことを特徴とする防湿剤塗布補助装置。
【請求項2】
前記固定台は、種々の電子回路基板に対応するよう取り替え可能であることを特徴とする請求項1記載の防湿剤塗布補助装置。
【請求項3】
前記投影手段は、前記電子回路基板面上の前記防湿剤塗布エリアを示す情報を格納したコンピュータと、この情報を前記電子回路基板面上に投影する投影機とを有し、
前記情報は、前記種々の電子回路基板に対応していることを特徴とする請求項2記載の防湿剤塗布補助装置。
【請求項4】
前記電子回路基板表面に紫外線を放射する紫外線放射ライトを、更に含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の防湿剤塗布補助装置。
【請求項5】
前記防湿剤の臭いを吸引する吸引管を、更に含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の防湿剤塗布補助装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の防湿剤塗布補助装置を塗布のための第一の装置とし、請求項1〜5いずれか記載の防湿剤塗布補助装置を検査のための第二の装置とし、これら第一及び第二の装置の間に、前記第一の装置を用いて防腐剤が塗布された電子回路基板を乾燥するための乾燥ラックを設けたことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243756(P2011−243756A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114841(P2010−114841)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】