説明

防災システムの模擬端末

【課題】火災検知器が防災受信盤との間でパルス通信する防災システムにおいて、防災システムに各端末機器が接続されていない場合でも、防災受信盤の各端末機器から火災信号や火災以外の状態信号を受信したことを想定した機能を確認することができる防災システムの模擬端末を提供することを目的とする。
【解決手段】信号線を介して、防災受信盤に接続される端末機器と同等の擬似信号である信号パルスを発生させる防災システムの模擬端末において、上記信号パルスを設定するためにパルス幅、パルス間隔を入力する入力手段と、上記入力されたパルス幅、パルス間隔に応じて、信号パルスを生成する信号パルス生成手段と、上記生成された信号パルスを送信する信号パルス送信手段とを有する防災システムの模擬端末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムの模擬端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防災システムの動作点検装置において、火災感知器感度切替スイッチが設けられ、この火災感知器感度切替スイッチを切り替えることによって、実際に接続される予定の火災感知器に対応して感度レベルを設定することができる(たとえば、特許文献1参照)。この設定された感度レベルを閾値とし、火災感知器が、発報する信号を疑似的に発生し、受信機に送出する。
【0003】
たとえば、煙感知器に対応させる場合、火災感知器感度切替スイッチを使用して、感度(煙濃度)を5%/m、10%/m、15%/mに設定することによって、それぞれ、予報、火災報、連動報として、動作点検装置側から発報することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−035167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例は、動作点検装置は、火災感知器感度切替スイッチが、予報、火災、連動に設定されると、デジタル信号変換部によって予め設定された各発報信号を示すデジタル信号を受信盤に送出していた。ただし、火災感知器の火災以外の状態は送信することができない。また、動作点検装置は、予め設定された信号しか送信できないという問題がある。
【0006】
本発明は、火災検知器等の模擬端末が防災受信盤との間でパルス通信する防災システムにおいて、防災システムに各端末機器が接続されていない場合でも、防災受信盤の各端末機器から火災信号や火災以外の状態信号を受信したことを想定した機能を確認することができる防災システムの模擬端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、信号線を介して、防災受信盤に接続される端末機器と同等の擬似信号である信号パルスを発生させる防災システムの模擬端末において、上記信号パルスを設定するためにパルス幅、パルス間隔を入力する入力手段と、上記入力されたパルス幅、パルス間隔に応じて、信号パルスを生成する信号パルス生成手段と、上記生成された信号パルスを送信する信号パルス送信手段とを有することを特徴とする防災システムの模擬端末である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、火災検知器が防災受信盤との間でパルス通信する防災システムにおいて、防災システムに各端末機器が接続されていない場合でも、防災受信盤の各端末機器から状態信号等を受信したことを想定した機能を確認することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明によれば、模擬端末は、使用者の操作入力によって任意の模擬信号を設定できるので、各端末機器の様々な状態を示すパルスを防災受信盤に送信できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1である模擬トンネル火災検知器30が使用されている防災システム100のシステム接続図である。
【図2】実施例の動作を示すフローチャートであり、防災受信盤10が模擬トンネル火災検知器30から模擬パルスを受信する動作を示す図である。
【図3】実施例における信号パルスの例を示すタイムチャートであり、模擬トンネル火災検知器30が出力する信号パルスを示す通信フォーマットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1である模擬トンネル火災検知器30が使用されている防災システム100のシステム接続図である。
【0013】
防災システム100は、防災受信盤10と、実機の火災検知器20a、20b、20c、20dと、から構成される。実機の火災検知器20a、20b、20c、20dが設置される前に、防災受信盤10の試験を行う場合、模擬トンネル火災検知器30を防災受信盤10に接続する。
【0014】
防災受信盤10は、模擬トンネル火災検知器30あるいは実機の火災検知器20a、20b、20c、20dから信号パルスとしての火災パルスを受信する火災パルス受信手段11と、火災パルス受信手段11で受信した火災パルスがどの火災検知器からのものであるかを後述するデータベース15から特定する火災パルス処理手段12と、火災警報等の防災受信盤10の統括的な制御を行うメイン制御手段13と、警報音の鳴動や表示灯の点灯によって火災警報を行う火災警報出力手段14と、火災の要因による信号パルスや火災以外の要因による信号パルスに対する状態との対応表が格納されたデータベース15とを有する。
【0015】
実機の火災検知器20aは、火災を検出すると検出信号を出力する火災検出手段21と、火災検出手段21が出力した検出信号に応じた火災パルスを生成する信号処理手段22と、防災受信盤10に信号パルスとしての火災パルスを送信する火災パルス送信手段23とを有する。火災検知器20b、20c、20dの構成は、火災検知器20aの構成と同様である。なお、以下の説明では、火災検知器20aに着目して説明するが、他の火災検知器20b、20c、20dの場合も、同様である。
【0016】
模擬トンネル火災検知器30は、表示・操作手段31と、データベース32と、メイン制御手段33と、火災パルス生成手段34と、火災パルス送信手段・短絡制御手段35とを有し、防災システムの模擬端末の例である。
【0017】
表示・操作手段31は、防災受信盤10に接続すべき火災検知器の台数、信号パルスとしての火災パルスの内容を設定する。なお、火災パルスの内容を設定する場合、パルス幅、パルス間隔を1ms単位で設定する。この設定したパルス幅、パルス間隔をデータベース32に格納する。また、表示・操作手段31の操作手段を介して、任意の区画(回線)の火災パルスを出力することができ、たとえば、火災検知器が100台分の火災パルスを出力することができる。また、同じ火災パルスを繰り返して出力することができ、つまり、リピート機能を有するので、防災受信盤10の火災パルス受信における繰り返し試験を容易に実行できる。なお、表示・操作手段31は、火災パルスを設定するためにパルス幅、パルス間隔を入力する入力手段の例である。さらに、後述するように、火災検知器の機種も入力する。
【0018】
メイン制御手段33は、表示・操作手段31から入力された情報に基づき、データベース32から、該当するパルスデータを取得する。取得したパルス発生処理を実行し、火災パルス生成手段34,火災パルス送信手段・短絡制御手段35を経由し、外部へパルスを発生させる機能と、表示・操作手段31から入力された回線毎の火災パルスの幅、間隔のデータをデータベースに格納する機能とを有する。また、表示・操作手段31に対し、出力するパルス波形を画面表示するための、パルス情報を、リアルタイムで送信する機能を有する。
【0019】
パルス生成手段34は、防災受信盤10に接続される予定の実機の火災検知器20a〜20dが送信する火災パルスと同様な擬似パルスを生成する。つまり、火災パルス生成手段34は、上記入力されたパルス幅、パルス間隔に応じて、火災パルスを生成する火災パルス生成手段の例である。
【0020】
火災パルス送信手段・短絡制御手段35は、生成された火災パルスを防災受信盤10に送信する火災パルス送信手段の例である。
【0021】
また、表示・操作手段31は、火災パルス送信手段が送信した火災パルスを表示する表示手段の例である。上記火災パルスは、複数の火災検知器の火災の要因による信号パルスや、火災以外の要因による信号パルス、区画短絡を示すパルスである。
【0022】
次に、上記実施例の動作について説明する。
【0023】
図2は、上記実施例の動作を示すフローチャートであり、防災受信盤10が模擬トンネル火災検知器30から、模擬パルスを受信する動作を示す図である。
【0024】
図3は、実施例における火災パルスの例を示すタイムチャートであり、模擬トンネル火災検知器30が出力する火災パルスと、区画短絡とを示す通信フォーマットの例を示す図である。
【0025】
まず、S1で、防災受信盤10に接続すべき火災検知器または検査すべき火災検知器の台数を設定し、S2で、設定した回線毎に、火災パルスの幅・間隔を設定し、この設定した火災パルスの幅・間隔を回線とともに、データベース32に格納する。そして、S3で、模擬的な火災パルスを出力する回線を設定する。つまり、どの回線から模擬的な火災パルスを出力するのかを設定する。
【0026】
S2で回線毎に火災パルスの幅・間隔を設定する場合、図3(2)に示すパルス幅(200ms)・パルス間隔(6sec)一定の火災パルスをたとえば火災検知器20aが接続予定の第1回線用として設定し、たとえば図3(3)に示すパルス幅(200ms)一定、パルス間隔(100ms〜20sec)変動の火災パルスをたとえば火災検知器20bが接続予定の第2回線用として設定し、たとえば図3(4)に示すパルス幅(1ms〜11sec)変動、パルス間隔(3sec)一定の火災パルスをたとえば火災検知器20cが接続予定の第3回線用として設定し、たとえば図3(5)に示すパルス幅(10ms〜5sec)変動、パルス間隔(10ms〜6sec)変動の火災パルスをたとえば火災検知器20dが接続予定の第4回線用として設定する。
【0027】
このように、回線毎に任意に異なる火災パルスを設定することができる。
【0028】
S4で、出力設定した回線に割り付けた火災パルスを、データベース32から読み出し、S5で、設定された火災パルスを防災受信盤10に出力し始める。
【0029】
S6で、防災受信盤10に出力中の火災パルスのパルス波形を、表示・操作手段31のモニタの画面に表示する。よって、使用者は出力中のパルス波形を画面上で確認できる。
【0030】
S7で、リピートの設定があるかどうかを判断する。リピートの設定があれば、S5に戻り、再度、同じ火災パルスを出力する。リピートの設定がなければ、またはリピートの設定があってもそのリピート回数分、連続して火災パルスを出力し、出力中のパルス波形の画面表示の繰り返し動作が終われば、S8で、火災パルスの出力を終了する。
【0031】
一方、防災受信盤10は、模擬トンネル火災検知器30が出力した火災パルスを受信すると、火災パルス処理手段12がデータベース15に格納された対応表を参照して、たとえば、その火災パルスが、後から別途設置され、防災受信盤10と第1回線によって通信される火災検知器20aから出力された火災信号パルスであると特定できる。
【0032】
防災受信盤10のデータベース15は、前述のとおり、端末機器としての火災検知器からの火災パルスが、火災信号または火災以外の状態信号(一過性ノイズ、自動車無線、火災検知器故障等)であるかを特定するための対応表を格納している。さらに、防災受信盤10の火災パルス処理手段12は、模擬トンネル火災検知器30が出力した図3(6)に示す出力信号(Hが30秒以上継続する信号)を受信すると、たとえば、その出力信号が、防災受信盤10と通信される第2回線の区画短絡であると特定できる。
【0033】
上記のように、模擬トンネル火災検知器30に設けられている表示・操作手段31のモニタを使用して、防災受信盤10に接続される予定の各端末機器との接続を、事前に確認することができる。
【0034】
模擬トンネル火災検知器30では、火災検知器の受光窓の汚損の状態を出力する機能としての「汚損警報出力なし」、「汚損警報出力あり」、「汚損予告警報出力あり」の3機種を表示・操作手段31で模擬的に設定することができる。上記「汚損警報出力なし」は、故障のみをパルス信号で出力することができる。上記「汚損警報出力あり」は、故障と汚損警報とをパルス信号で出力することができる。上記「汚損予告警報出力あり」は、故障と汚損警報と汚損予告警報とをパルス信号で出力することができる。たとえば汚損警報は、受光窓が85%汚損(受光量が85%減光)したときに出力される。また、汚損予告警報は75%汚損(受光量が75%減光)したときに出力される。模擬トンネル火災検知器30に火災検知器のタイプ(機種)を入力することによって、防災受信盤10が、たとえば故障を受信した場合、どのタイプからの故障であるかを、判別することができる。
【0035】
なお、上記実施例によれば、火災検知器の汚損警報出力機能で機種を分けたが、火災検知器の監視範囲を定義する火災検出機能で機種を分けてもよい。
【0036】
また、火災パルスのパルス幅、間隔を変えることによって、火災信号パルス、一過性ノイズ、自動車無線、火災検知器故障等にそれぞれ対応させることができる。図3(2)に示すパルス幅一定、パルス間隔一定のパルス列を、たとえば、火災信号パルスに対応させ、図3(3)に示すパルス幅一定、パルス間隔変動のパルス列を、たとえば、一過性ノイズに対応させるようにしてもよい。また、図3(4)に示すパルス幅変動、パルス間隔一定のパルス列を、たとえば、自動車無線に対応させ、図3(5)に示すパルス幅変動、パルス間隔変動のパルス列を、たとえば、火災検知器故障に対応させるようにしてもよい。
【0037】
したがって、模擬トンネル火災検知器30によれば、いずれかの回線による個別出力、複数の回線による同時出力等、実機に近い状態で再現することができる。
【0038】
また、上記実施例によれば、PCモニタ(表示・操作手段31のモニタ)上から、種々の火災パルスを設定することができ、また、区画短絡等を、任意に設定できるので、防災受信盤10が稼働後に想定される様々な条件下での動作確認ができる。
【0039】
さらに、上記実施例によれば、火災パルスを防災受信盤10に送信する場合、表示・操作手段31のモニタ上で火災パルスを表示し、それを視認できるので、出力されている火災パルスを容易に確認することができる。また、1台の模擬トンネル火災検知器30によって、多種多様の火災パルスや出力信号を出力することができ、しかも、従来使用されていた各種スイッチを使用しないので、機器サイズを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0040】
100…防災システム、 10…防災受信盤、 30…模擬トンネル火災検知器、
31…表示・操作手段、 32…データベース、 33…メイン制御手段、
34…火災パルス生成手段、 35…火災パルス送信手段・短絡制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線を介して、防災受信盤に接続される端末機器と同等の擬似信号である信号パルスを発生させる防災システムの模擬端末において、
上記信号パルスを設定するためにパルス幅、パルス間隔を入力する入力手段と;
上記入力されたパルス幅、パルス間隔に応じて、信号パルスを生成する信号パルス生成手段と;
上記生成された信号パルスを送信する信号パルス送信手段と;
を有することを特徴とする防災システムの模擬端末。
【請求項2】
請求項1において、
上記信号パルス送信手段が送信した信号パルスを表示する表示手段を有することを特徴とする防災システムの模擬端末。
【請求項3】
請求項1において、
上記信号パルスは、複数の火災検知器の火災パルス、区画短絡を示すパルスであることを特徴とする防災システムの模擬端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−215944(P2011−215944A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84230(P2010−84230)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】