説明

防災受信機

【課題】構成部品の情報を容易に把握することができ、さらに構成部品の使用の可否についても容易に判断することができる防災受信機を提供すること。
【解決手段】防災受信機1は、複数の構成部品10を有する防災受信機1において、当該構成部品10に関する部品情報を格納する個別ICタグ20と、構成部品10の使用の可否に関する適合性情報を格納する統括ICタグ30とを備える。適合性情報は、例えば、防災受信機に適合する構成部品の部品情報、又は、構成部品間で互いに適合する組合せの組合せ情報を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能な複数の構成部品を有する防災受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィスビルや工場等の建物において、火災発生やガス漏れの有無を検出して警報を発する防災システムが広く利用されている。このような防災システムでは、火災感知器やガス漏れ検知器等のいわゆる防災端末から出力される信号を受信し、火災発生の警報出力等を行う防災受信機が用いられている。防災受信機には、防災端末との通信、警報の発報、防災端末の自動試験、各種情報の記憶や表示等の動作を行わせるための各種機器が搭載されており、これらの機器の構成部品としてプリント基板や表示装置等の多数の電子部品が設けられている。また、これらの構成部品の動作を制御するためのソフトウエアも搭載されている。
【0003】
防災受信機に設けられているこれらの構成部品は交換可能となっているものもあり、当該構成部品が故障した場合や防災受信機に新たな機能の追加を行う場合などに、当該構成部品の交換が行われている。同様に、防災受信機に搭載されているソフトウエアの修正や機能向上のため、当該ソフトウエアのバージョンアップが行われている。
【0004】
防災受信機に搭載されている構成部品に関する情報やソフトウエアのバージョン情報は、防災受信機に付属している製品マニュアルに記載されている。構成部品の交換やソフトウエアのバージョンアップ等の作業を行う場合、作業者は製品マニュアルを参照し、作業対象の防災受信機に搭載されている構成部品を把握している。また、装置の構成部品の情報を管理するためシステムとして、例えば、医用装置の構成部品情報管理システムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
上記の医用装置の構成部品情報管理システムでは、医用装置に搭載されている部品を把握するために、当該医用装置が製造時点でどのような部品から構成されているかを示す構成情報と、個々の部品の識別を行うためのシリアル番号等の部品識別情報とを対応付けて、当該医用装置の構成部品情報として管理している。具体的には、部品自体に取り付けられたICタグやバーコードに部品識別情報が記録されており、これらのICタグやバーコードからリーダで読み取られた当該部品識別情報が構成情報と対応付けられることによって構成部品情報が作成・管理されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−221306
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように製品マニュアルや構成部品情報管理システムを用いて防災受信機の構成部品の情報を管理する場合には、次のような問題があった。
【0008】
(1)製品マニュアルを用いて情報を管理する場合
製品マニュアルは防災受信機と共に防災受信機メーカからユーザに納入され、構成部品の情報管理に用いられる。しかし、納入後のメンテナンスは、防災受信機メーカによって直接実施されるだけではなく他のサービス業者によっても実施される。従って、防災受信機の納入後のメンテナンスにおいて他のサービス業者により構成部品の交換やソフトウエアのバージョンアップが実施された後に、防災受信機メーカ等の別の業者が当該防災受信機を修理する場合、その時点での構成部品の情報を即座に把握することができず、交換を要する部品やソフトウエアを特定することが困難な場合があった。そのため、当該防災受信機のメンテナンスを実施した業者に対して作業記録の問い合わせを行う等、構成部品の情報収集の必要性が生じ、修理に要するコストの上昇を招く可能性があった。
【0009】
また、近年の環境規制の厳格化に関連して、製品に使用されている材料のトレーサビリティを確立することが求められている。しかし、製品マニュアルのみでは、メンテナンスにより交換された構成部品まで含めて一元的に防災受信機の構成部品の材料情報を管理することは困難であり、トレーサビリティ確立の要求を満たすことは困難であった。
【0010】
(2)構成部品情報管理システムを用いて情報を管理する場合
構成部品自体から取得され構成部品情報の一部として整理されている部品識別情報を参照することで、防災受信機を納入後に修理する時点での構成部品の情報を把握することは可能である。しかし、交換予定の構成部品が防災受信機に適合するか否か、あるいは、交換予定の構成部品と他の構成部品やソフトウエアとの組合せが適切か否かについては、先に得た部品識別情報と交換予定の構成部品の情報とを照らし合わせて確認する必要があった。従って、適合性の判断を誤った場合、本来適合しないはずの構成部品を防災受信機に取り付けてしまい、新たな不具合を発生させる可能性があった。あるいは、構成部品単体では防災受信機に適合しているものの、他の改修された構成部品やバージョンアップされたソフトウエアとの組合せで動作させると不具合を発生させてしまう組合せを識別できず、予期しない不具合を発生させる可能性があった。その結果、本来なら常時運用可能であるべき防災受信機に無用の不具合を発生させ、防災システム全体の信頼性を損なう可能性があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構成部品の情報を容易に把握することができ、さらに構成部品の使用の可否についても容易に判断することができる防災受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の防災受信機は、複数の構成部品を有する防災受信機において、当該構成部品に関する部品情報を格納する個別ICタグと、前記構成部品の使用の可否に関する適合性情報を格納する統括ICタグと、を備えること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の防災受信機は、請求項1に記載の防災受信機において、前記適合性情報は、前記防災受信機に適合する前記構成部品の前記部品情報、又は、前記構成部品間で互いに適合する組合せの組合せ情報を含んでいること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の防災受信機は、請求項1または2に記載の防災受信機において、 前記個別ICタグから前記部品情報を読み取ると共に、前記統括ICタグから前記適合性情報を読み取るためのICタグリーダと、前記ICタグリーダにて読み取った前記部品情報又は前記適合性情報から、前記防災受信機における前記構成部品の使用の可否を判断する適合性判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の防災受信機は、請求項3に記載の防災受信機において、前記ICタグリーダは、前記個別ICタグから前記部品情報を所定周期で読み取ること、を特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の防災受信機は、請求項3または4に記載の防災受信機において、 前記構成部品の交換作業又は仕様変更が行われるタイミングを判定し、判定結果に応じて、前記ICタグリーダによる読み取りの開始又は読み取りの周期を制御する制御手段を備えること、を特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の防災受信機は、請求項5に記載の防災受信機において、前記構成部品の交換作業を感知する交換感知手段を備え、前記制御手段は、前記交換感知手段が交換作業を感知した場合に、前記交換作業が行われるタイミングと判定すること、を特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の防災受信機は、請求項5または6に記載の防災受信機において、前記制御手段は、前記指示手段によって指示された前記タイミングに基づいて、前記構成部品の交換作業又は仕様変更が行われるタイミングを判定すること、を特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の防災受信機は、請求項5から7のいずれか一項に記載の防災受信機において、前記制御手段は、前記交換作業が行われるタイミングと判定された場合に、前記ICタグリーダによる読み取りの周期を、通常時の第1の周期から当該第1の周期よりも短い第2の周期に切り替えること、を特徴とする。
【0020】
また、請求項9に記載の防災受信機は、請求項6に記載の防災受信機において、前記構成部品を前記防災受信機の外部から隔離する開閉可能な扉体を備え、前記制御手段は、前記交換感知手段によって前記構成部品の交換作業が感知された場合において、前記適合性判断手段によって前記構成部品が当該防災受信機において使用可と判断される迄、扉体を閉鎖不能とすること、を特徴とする。
【0021】
また、請求項10に記載の防災受信機は、請求項3から9のいずれか一項に記載の防災受信機において、前記ICタグリーダにて読み取った前記部品情報及び前記適合性情報、又は、前記適合性判断手段による判断結果を出力する出力手段を備えること、を特徴とする。
【0022】
また、請求項11に記載の防災受信機は、請求項3から10のいずれか一項に記載の防災受信機において、前記ICタグリーダにて読み取った前記部品情報及び前記適合性情報、又は、前記適合性判断手段による判断結果を記憶する記憶手段を備えること、を特徴とする。
【0023】
また、請求項12に記載の防災受信機は、請求項3から12のいずれか一項に記載の防災受信機において、前記構成部品の1つとしてバッテリを備える前記防災受信機において、前記バッテリに関する部品情報を格納する個別ICタグは、当該部品情報の一部として、当該バッテリの使用期間を特定するための情報を含み、前記バッテリの放電特性を測定する放電特性測定手段と、前記ICタグリーダにて読み取った前記バッテリの使用期間を特定するための情報又は前記放電特性測定手段にて測定したバッテリの放電特性に基づいて、前記バッテリの交換時期予測を行う交換時期予測手段を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の本発明によれば、防災受信機は、各構成部品の部品情報を格納した個別ICタグと、構成部品の使用の可否に関する適合性情報を格納した統括ICタグとを備えている。従って、ICタグリーダを用いて部品情報と適合性情報とを参照することができ、構成部品の使用の可否を容易に判断することができる。非接触式のICタグを用いている場合は、防災受信機の外部からICタグリーダによってICタグに格納されている情報を読み取ることも可能なため、防災受信機の出荷先において点検者等が部品情報及び適合性情報を読み取り、その時点での防災受信機の仕様等を包括的に確認することもできる。また、個別ICタグに格納されている部品情報には、構成部品の環境情報も含めることができるので、当該構成部品に使用されている材料のトレーサビリティを容易に確立することができる。
【0025】
請求項2に記載の本発明によれば、統括ICタグに格納される適合性情報は、防災受信機に適合している構成部品の部品情報に加えて、構成部品の間の相互の適合性を示す組合せ情報をも含んでいるので、構成部品の使用の可否判断を漏れなく容易に実施することができ、無用の不具合を防止することができる。また、統括ICタグは任意に書込可能なので、ICタグライタを用いて常に最新の適合性情報を書込させることができる。
【0026】
請求項3に記載の本発明によれば、防災受信機はICタグリーダ、及び、適合性判断手段を備えているので、個別ICタグ及び統括ICタグからの情報取得、及び、構成部品の適合性の判断にいたる処理を、当該防災受信機のみで実施することができる。
【0027】
請求項4に記載の本発明によれば、所定の周期でICタグリーダに部品情報の読取を行わせているので、各構成部品の最新の部品情報を取得することができる。
【0028】
請求項5に記載の本発明によれば、構成部品の交換作業又は仕様変更が行われるタイミングの判定結果に応じて、ICタグリーダによる読み取りの開始または読み取りの周期を制御するので、各構成部品の最新の部品情報を迅速かつ確実に取得することができる。
【0029】
請求項6に記載の本発明によれば、交換感知手段によって構成部品の交換作業を感知できるので、構成部品の交換作業が行われるタイミングを判定することができる。従って、構成部品が交換されるタイミングに合わせて当該構成部品の部品情報を読み取ることができるので、構成部品の最新の部品情報を迅速に取得することができる。
【0030】
請求項7に記載の本発明によれば、作業者が指示手段によって構成部品の交換又は仕様変更のタイミングを指示することができるので、構成部品の交換や仕様変更が行われるタイミングを判定することができる。従って、構成部品が交換や仕様変更が行われるタイミングに合わせて当該構成部品の部品情報を読み取ることができるので、構成部品の最新の部品情報を迅速に取得することができる。
【0031】
請求項8に記載の本発明によれば、構成部品の交換作業が行われるタイミングと判定された場合に、ICタグリーダによる読み取り周期を通常時の第1の周期から当該第1の周期よりも短い第2の周期に切り替えるので、構成部品の交換直後に当該構成部品の部品情報を取得することができる。
【0032】
請求項9に記載の本発明によれば、構成部品の交換作業を行った後、当該構成部品が適合性を有していないと判断された場合には、扉体を閉鎖不能にロックさせるようにしたので、交換を行った構成部品が防災受信機において使用不可であることを確実に作業者に通知することができる。
【0033】
請求項10に記載の本発明によれば、防災受信機は出力手段を備えているので、部品情報、適合性情報、又は、適合性判断結果を、出力することができる。これにより、構成部品に関する情報を作業者が容易に把握することができる。
【0034】
請求項11に記載の本発明によれば、交換された部品の情報の履歴や適合性判断結果を記憶手段に記憶させることで、これら各種の情報の閲覧や持ち運びを行うことができ、構成部品に関する情報を効率的に取り扱うことができる。
【0035】
請求項12に記載の本発明によれば、個別ICタグに格納されているバッテリの使用期間を特定するための情報、及び、放電特性測定手段にて測定したバッテリの放電特性に基づいて交換時期予測手段がバッテリ交換時期を予測するので、高精度で交換時期を予測することができる。これにより適切なタイミングでバッテリの交換を行うことができ、防災受信機の信頼性を高いレベルで維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る防災受信機の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る防災受信機は、防災端末から出力される信号を受信し、火災発生の警報出力等を行うことを目的とするものである。
【0038】
各実施形態に係る防災端末の設置対象は任意であり、例えば工場施設やビル等の大規模な建物内や、マンション等の一般住宅に設置できる。
【0039】
各実施の形態に係る防災受信機の特徴の一つは、概略的に、構成部品に関する部品情報を格納する個別ICタグを各構成部品が有しているとともに、構成部品の使用の可否に関する適合性情報を格納する統括ICタグを当該防災受信機が備えている点にある。従って、個別ICタグから部品情報を読み取ることで、防災受信機が有する構成部品の情報を即座に把握することができる。さらに、統括ICタグから適合性情報を読み取って構成部品の部品情報と対比し、当該構成部品の適合性を容易に判断することができる。
【0040】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0041】
〔実施の形態1〕
まず実施の形態1について説明する。この形態は、統括ICタグと個別ICタグを備えた基本的な形態である。
【0042】
(防災受信機の構成)
まず、防災受信機の構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る防災受信機の電気的構成を概念的に示すブロック図である。図1に示すように、防災受信機1は、筐体1aの内部に、複数の構成部品10、個別ICタグ20、統括ICタグ30、ICタグリーダ40、プリンタ50、記憶部60、ドアセンサ70、ドアロック80、及び、制御部90を備えて構成されている。
【0043】
(防災受信機の構成−アクセスドア1b)
筐体1aには、アクセスドア1bが設けられている。このアクセスドア1bは、構成部品10の交換や修理の際に作業者が防災受信機1の筐体1aの内部にアクセスできるようにするため、この筐体1aに設けられている開閉可能なドアであり、特許請求の範囲における扉体に対応している。
【0044】
(防災受信機の構成−構成部品10)
構成部品10は、防災受信機1を構成している各種の部品である。構成部品10の具体的な内容は任意であるが、例えば、通信装置、音響装置、あるいは、表示装置や、これら各装置に組み込まれる回路基板等が該当する。これら構成部品10の一部には、当該構成部品10において実行される各種のソフトウエアが必要に応じて組み込まれている。
【0045】
(防災受信機の構成−個別ICタグ20)
個別ICタグ20は、防災受信機1における構成部品10に関する部品情報を格納するためのものであり、図1に示すように各構成部品10と対応付けられて設置されている。個別ICタグ20の設置場所は任意であり、対応する構成部品10自体に貼付してもよく、防災受信機1の筐体1aの内面に設置してもよい。この個別ICタグ20として用いられるICタグの具体的な構成は任意であるが、非接触で情報の読み取り及び書き込みを行えることが望ましく、かつ、同時に複数のICタグからの情報の読み取りが行えるようになっていることが望ましい。この様なICタグとしては、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)等の技術を利用したアンチコリジョン対応のICタグを用いることができる。また、個別ICタグ20に格納される情報はICタグリーダ40によって任意に読取可能、かつ、ICタグライタによって任意に書込可能である。
【0046】
図2は、個別ICタグ20に格納される部品情報の具体例を示した表である。図2に示すように、部品情報の内容としては、当該個別ICタグ20に対応付けられている構成部品10の仕様(名称、型名、定格電力、定格出力、標準品/特注品識別等)、製造年月日、搭載されているソフトウエアの有無及びバージョン、環境情報等を含めることができる。また、製造年月日を特定するための情報として、構成部品10の製造ロットや製造シリアル番号等を含めることもできる。
【0047】
(防災受信機の構成−統括ICタグ30)
統括ICタグ30は、防災受信機1における構成部品10の使用の可否に関する適合性情報を格納するためのもので、特許請求の範囲における記憶手段に対応する。この統括ICタグ30は、防災受信機1の任意の位置に設置される。統括ICタグ30として用いられるICタグの構成は任意であるが、上述した個別ICタグ20と同様の特性や性能を有するものであることが好ましい。この統括ICタグ30に格納される情報はICタグリーダ40によって任意に読取可能、かつ、ICタグライタによって任意に書込可能である。
【0048】
適合性情報には、防災受信機1に適合する構成部品10の部品情報と、構成部品10間で互いに適合する組合せについての組合せ情報とが含まれている。図3は、適合性情報の一部として統括ICタグ30に格納されている部品情報の具体例を示した表である。図3に示すように、防災受信機1に適合している構成部品10の部品情報として、当該適合している構成部品10の仕様、搭載ソフトウエアのバージョン、及び、環境情報を部品情報に含めることができ、当該部品情報が統括ICタグ30に格納されている。
【0049】
図4は、適合性情報の一部として統括ICタグ30に格納されている組合せ情報の具体例を示した表である。図4に示すように、行及び列にそれぞれ構成部品10の名称、型番、及び、ソフトウエアバージョンを列記し、複数の構成部品10における相互の適合性を示したマトリックス状のテーブルが組合せ情報として統括ICタグ30に格納されている。すなわち、図4に示した組合せ情報によれば、通信装置と表示装置の組合せ、及び、通信装置と音響装置の組合せでは、いずれの型番やソフトウエアバージョンについても相互に適合性を有している。一方、音響装置と表示装置の組合せでは、型番BF111の音響装置と型番DS010−TP、ソフトウエアバージョンDS−0331−0.0.1.1の表示装置との組合せ、及び、型番BF112の音響装置と型番DS172−TP、ソフトウエアバージョンDS−0331−0.0.1.1の表示装置との組合せは、適合性を有しておらず、他の組合せは適合性を有している。なお、組合せ情報の具体的な構成はマトリックス状のテーブルでなくともよく、例えば、適合性を有する構成部品10の組合せを羅列した情報として統括ICタグ30に格納しても良い。
【0050】
(防災受信機の構成−ICタグリーダ40)
ICタグリーダ40は、個別ICタグ20及び統括ICタグ30に格納されている情報を読み取るためのものであり、防災受信機1の任意の位置に搭載されている。ICタグリーダ40の具体的な構成は任意であるが、非接触で情報の読取を行えることが望ましく、かつ、同時に複数のICタグからの情報の読み取りが行えるようになっていることが望ましい。
【0051】
(防災受信機の構成−プリンタ50)
プリンタ50は、構成部品10の部品情報や適合性情報、又は、後述する適合性判断の結果を印字用紙に印字出力するためのものであり、特許請求の範囲における出力手段に対応している。
【0052】
(防災受信機の構成−記憶部60)
記憶部60は、防災受信機1の各種の制御に必要なプログラム及びデータを記憶するもので、特許請求の範囲における記憶手段に対応する。この記憶部60の具体的構成は任意であるが、例えば、HD(Hard Disk)やフラッシュメモリを用いることができる。
【0053】
(防災受信機の構成−ドアセンサ70)
ドアセンサ70は、アクセスドア1bの開閉を感知するセンサであり、特許請求の範囲における交換感知手段に対応している。
【0054】
(防災受信機の構成−ドアロック80)
ドアロック80は、アクセスドア1bの開閉をロックするためのものであり、制御部90によって制御される。
【0055】
(防災受信機の構成−制御部90)
制御部90は、防災受信機1における各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、図1に示すように、ICタグリーダ制御部91、適合性判断処理部92、プリント制御部93、及び、防災制御部94を備えている。このうち、ICタグリーダ制御部91は、個別ICタグ20及び統括ICタグ30に格納されている情報を読み取る際に、ICタグリーダ40を制御する。適合性判断処理部92は、ICタグリーダ40を用いて個別ICタグ20及び統括ICタグ30から読み取った部品情報及び適合性情報に基づいて構成部品10の使用の可否を判断するためのものであり、特許請求の範囲における適合性判断手段に対応している。プリント制御部93は、部品情報や適合性情報をプリンタ50を用いて印字させる際に、プリンタ50を制御するためのものである。防災制御部94は、防災端末2から出力された信号の処理を行うと共に、警報の発報やスプリンクラーの作動など、防災設備の制御を行うためのものである。
【0056】
この制御部90の具体的構成は任意であるが、例えば、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラム、所要データを格納するための内部メモリ、及び、これらのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成される。
【0057】
(防災受信機の機能−適合性情報の更新)
次に、上述のような構成を有する防災受信機1の機能について説明する。従来の構成部品10とは異なる仕様の構成部品10や新しいバージョンのソフトウエアを搭載した構成部品10が開発された場合に、これらの新たな構成部品10に関して適合性情報を更新する必要がある。そこで、更新すべき適合性情報を予めICタグライタに読み込ませておき、当該ICタグライタを用いて更新対象となる防災受信機1の統括ICタグ30に格納されている適合性情報を書き換えることができる。なお、ICタグライタの具体的構成については任意であるが、異なる場所に設置されている防災受信機1の適合性情報を更新するためには携帯可能であることが望ましい。
【0058】
(防災受信機の機能−構成部品の交換又は仕様変更時の適合性判断)
構成部品10の不具合や、性能向上のための改修などの理由により構成部品10の交換や仕様変更を行う場合、当該構成部品10の部品情報及び適合性情報に基づき、適合性の判断が実施される。以下、構成部品10の交換及び当該構成部品10に関する適合性判断の流れについて説明する。図5は、構成部品10の交換時の作業手順を示すフローチャートである。
【0059】
図5に示すように、ICタグリーダ制御部91は、構成部品10の交換や仕様変更が行われていない時(通常時)、周期的にICタグリーダ40を制御し、個別ICタグ20から部品情報を取得させる(ステップSA−1)。以下、この時のICタグリーダ40による読み取り周期を「第1の周期」と称する。
【0060】
そして、ICタグリーダ制御部91は、取得した部品情報を記憶部60に記憶させる。この際、ICタグリーダ制御部91は、取得した部品情報と、その時点において記憶部60に格納されている部品情報(前回取得した部品情報)とを相互に対比することで、取得した部品情報と前回取得した部品情報との間に差異が存在するか否かを判定する。そして、差異が存在する場合(例えばソフトウエアのバージョンアップを行った場合等)、ICタグリーダ制御部91は、構成部品10の仕様変更があったと判定し(ステップSA−2、Yes)、ステップSA−7以降の処理を実施する。
【0061】
一方、取得した部品情報と前回取得した部品情報との間に差異がない場合(ステップSA−2、No)、ICタグリーダ制御部91は、ICタグリーダ40による部品情報の取得を継続する。次いで、ICタグリーダ制御部91は、アクセスドア60の開扉がドアセンサ70により感知されているか否かを確認し、感知されている場合には(ステップSA−3、Yes)、部品交換作業が開始されたと判定し、ICタグリーダ40に部品情報を取得させる周期を第1の周期よりも短くする(ステップSA−4)。以下、この時のICタグリーダ40による読み取り周期を「第2の周期」と称する。
【0062】
そして、ICタグリーダ制御部91は、取得した部品情報を記憶部60に記憶させる。この際、ICタグリーダ制御部91は、取得した部品情報と、その時点において記憶部60に格納されている部品情報(前回取得した部品情報)とを相互に対比することで、取得した部品情報と前回取得した部品情報との間に差異が存在するか否かを判定する。そして、差異が存在する場合、ICタグリーダ制御部91は、構成部品10の交換が有ったと判断し(ステップSA−5、Yes)、ドアロック80を制御することで、開扉されているアクセスドア1bを閉鎖不可能なようにロックする(ステップSA−6)。
【0063】
続いて、ICタグリーダ制御部91は、ICタグリーダ40を制御し、仕様変更や部品交換が行われた構成部品10の個別ICタグ20から部品情報を取得させると共に、統括ICタグ30から適合性情報を取得させる(ステップSA−7)。ここで、交換された構成部品10の個別ICタグ20の識別方法としては、例えば、各ICタグに予め記憶させたICタグ識別番号を読み取り、このICタグ識別番号を部品情報と共に記憶部60に記憶させておくことで、ステップSA−2やSA−5の判定時に、仕様変更や部品交換に対応するICタグを特定することができる。また、個別ICタグ20と統括ICタグ30との相互間の識別方法としては、例えば、ICタグの種別を示す種別情報を各ICタグに予め記憶させておき、これを部品情報や適合性情報と共に読み取ることで、識別することができる。なお、これら複数のICタグに対しては、アンチコリジョン機能を用いて、同時に情報の読み取りを行うことができる。
【0064】
次いで、適合性判断処理部92は、取得した部品情報及び適合性情報を参照し、適合性の有無の判断を行う。すなわち、適合性判断処理部92は、取得した部品情報に含まれている構成部品10の仕様、ソフトウエアバージョン、及び、環境情報が、防災受信機1に適合している構成部品10の部品情報として適合性情報の中に含まれているか否かを判定する(ステップSA−8)。
【0065】
取得した部品情報が適合性情報の中に含まれていた場合(ステップSA−8、Yes)、適合性判断処理部92は、適合性情報における組合せ情報を参照し、取得した部品情報に含まれている構成部品10の仕様及びソフトウエアバージョンが、他の構成部品10の仕様及びソフトウエアバージョンと適合しているか否かを判定する(ステップSA−9)。
【0066】
取得した部品情報が他の構成部品10の部品情報に対して適合している場合(ステップSA−9、Yes)、適合性判断処理部92は、交換の結果取り付けられた構成部品10が防災受信機1において適合する(使用可能)と判断し、当該判断結果、構成部品10の交換日時、及び、交換された構成部品10の部品情報をプリント制御部93に対して出力する(ステップSA−10)。さらに、これらの情報を適合性判断履歴や部品交換履歴として統括ICタグ30や記憶部60に記憶させる(ステップSA−11)。次に、プリント制御部93は入力された判断結果等をプリンタ50に出力させる(ステップSA−12)。ICタグリーダ制御部91は、ICタグリーダ40に部品情報を取得させる周期を第1の周期に戻し(ステップSA−13)、さらに、ドアロック80は、閉鎖不可能なようにロックされていたアクセスドア1bのロックを解除する(ステップSA−14)。
【0067】
一方、ステップSA−8又はステップSA−9の判定がNoであった場合、適合性判断処理部92は、交換の結果取り付けられた構成部品10が防災受信機1において適合しない(使用不可能)と判断し、当該判断結果、及び、構成部品10の交換日時をプリント制御部93に対して出力する(ステップSA−15)。この時、適合性判断処理部92に、当該構成部品10と同一の名称であって防災受信機1において使用可能な構成部品10の仕様を適合性情報から取得させ、その仕様をプリント制御部93に対して出力させることもできる。プリント制御部93は入力された判断結果等をプリンタ50に出力させる(ステップSA−16)。そして、ICタグリーダ制御部91は、防災受信機1において使用可能な構成部品10に交換されるまで、ICタグリーダ40に部品情報の取得を継続させると共に、ドアロック80によるアクセスドア1bのロックを閉鎖状態に維持することで、アクセスドア1bを閉めて交換作業が終わってしまうことを防止する。
【0068】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、防災受信機1は、各構成部品10の部品情報を格納した個別ICタグ20と、構成部品10の使用の可否に関する適合性情報を格納した統括ICタグ30とを備えている。従って、ICタグリーダ40を用いて部品情報と適合性情報とを参照することができ、構成部品10の使用の可否を容易に判断することができる。非接触式のICタグを用いている場合は、防災受信機1の外部からICタグリーダ40によってICタグに格納されている情報を読み取ることも可能なため、防災受信機1の出荷先において点検者等が部品情報及び適合性情報を読み取り、その時点での防災受信機1の仕様等を包括的に確認することもできる。また、個別ICタグ20に格納されている部品情報には、当該構成部品10の環境情報も含めることができるので、当該構成部品10に使用されている材料のトレーサビリティを容易に確立することができる。
【0069】
また、統括ICタグ30に格納される適合性情報は、防災受信機1に適合している構成部品10の部品情報に加えて、構成部品10の間の相互の適合性を示す組合せ情報をも含んでいるので、構成部品10の使用の可否判断を漏れなく容易に実施することができ、無用の不具合を防止することができる。また、統括ICタグ30は任意に書込可能なので、ICタグライタを用いて常に最新の適合性情報を書込させることができる。
【0070】
また、防災受信機1はICタグリーダ40、及び、適合性判断処理部92を備えているので、個別ICタグ20及び統括ICタグ30からの情報取得、及び、構成部品10の適合性の判断にいたる処理を、当該防災受信機1のみで実施することができる。
【0071】
また、所定の周期でICタグリーダ40に部品情報の読取を行わせているので、各構成部品10の最新の部品情報を取得することができる。
【0072】
さらに、ドアセンサ70を設け、構成部品10の交換のためにアクセスドア1bが開扉されたことを感知できるので、構成部品10の交換作業が行われるタイミングを判定することができる。従って、構成部品10が交換されるタイミングに合わせて当該構成部品10の部品情報を読み取ることができるので、構成部品10の最新の部品情報を迅速に取得することができる。
【0073】
また、ドアセンサ70によってアクセスドア1bの開扉を感知し、構成部品10の交換作業が行われるタイミングと判定された場合に、ICタグリーダ40による部品情報の読み取り周期を第1の周期から当該第1の周期よりも短い第2の周期に切り替えるので、各構成部品10の最新の部品情報を迅速かつ確実に取得することができる。
【0074】
また、構成部品10の交換のために防災受信機1の筐体1aの内部にアクセスするためのアクセスドア1bを開扉して交換作業を行った後、当該構成部品10が適合性を有していないと判断された場合には、アクセスドア1bを閉鎖不可能なようにロックさせるようにしたので、交換を行った構成部品10が防災受信機1において使用不可であることを確実に作業者に通知することができる。
【0075】
また、防災受信機1はプリンタ50を備えているので、部品情報、適合性情報、又は、適合性判断結果を、印字出力することができる。これにより、構成部品10に関する情報を作業者が容易に把握することができる。
【0076】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、放電特性測定手段と、交換時期予測手段を備えた形態である。
【0077】
図6は、実施の形態2に係る防災受信機の電気的構成を概念的に示すブロック図である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0078】
まず、実施の形態2に係る防災受信機1の構成を説明する。図6に示すように、防災受信機1は、構成部品10の1つとしてのバッテリ100、バッテリ100を含む各構成部品10に対応付けられた個別ICタグ20、及び、放電特性測定部110を備えている。
【0079】
(防災受信機の構成−バッテリ)
バッテリ100は、外部から防災受信機1への電力供給が断たれた場合、当該バッテリ100から防災受信機1に電力を供給することによって一定の期間防災受信機1の動作を継続させる非常用電源手段である。このバッテリ100は、防災受信機1の筐体1aの内部に設置され、防災受信機1の図示しない電力供給系統に図示しない接続手段を介して接続されている。なお、バッテリ100の具体的な構成は任意であり、例えばニッケル−カドミウム蓄電池やリチウムイオン蓄電池等を用いることができる。
【0080】
(防災受信機の構成−個別ICタグ20)
図7は、バッテリ100に対応付けられた個別ICタグ20に格納されている部品情報を示した表である。図7に示すように、個別ICタグ20に格納されているバッテリ100に関する部品情報は、バッテリ100の使用期間を特定するための情報を含んでいる。バッテリ100の使用期間を特定するための情報の具体的な内容は任意であるが、図7に示したようにバッテリ100の製造年月日を記録してもよく、あるいは、防災受信機1が組み立てられた日時を記録してもよい。
【0081】
(防災受信機の構成−放電特性測定部110)
放電特性測定部110は、バッテリ100の放電特性を測定するためのものであり、特許請求の範囲における放電特性測定手段に対応する。放電特性測定部110を用いてバッテリ100の放電特性を測定することにより、当該バッテリ100の放電容量を推定することができる。放電特性測定部110の具体的構成は任意であるが、バッテリ100の放電電圧を計測する図示しない電圧計と、計測した電圧値を時系列で記録可能な図示しない記録部とを備えていることが望ましい。この場合、バッテリ100を定電流放電させた場合の放電電圧を電圧計を用いて計測し、当該放電電圧の時間変化を記録して、これを放電特性とすることができる。さらに、定期的に実施されるバッテリ試験において上述の放電特性を測定し、バッテリ100の使用期間の経過に伴う当該放電特性の経時変化を記録部に記録することができる。なお、バッテリ100の放電特性から放電容量を推定する方法については公知の技術であるため、説明を省略する。
【0082】
(防災受信機の構成−交換時期予測部95)
図6に示すように、制御部90は、交換時期予測部95を備えている。交換時期予測部95は、バッテリ100の交換が必要となる時期を予測するためのものであり、特許請求の範囲における交換時期予測手段に対応している。交換時期予測部95は、ICタグリーダ制御部91を介して取得したバッテリ100の部品情報と、放電特性測定部110を介して取得したバッテリ100の放電特性に基づき、バッテリ100の交換が必要となる時期を予測する。また、予測結果はプリント制御部93に出力され、プリント制御部93に制御されたプリンタ50から印字出力される。
【0083】
(防災受信機の機能−バッテリ交換時期の予測)
次に、交換時期予測部95が実施するバッテリ交換時期の予測の具体的な手順について説明する。図8は、交換時期予測の流れを示したフローチャートである。バッテリ100の交換が必要となる主なケースとして、(1)バッテリ100の推奨使用期間を経過した場合、(2)バッテリ100の放電容量が時間の経過や充放電サイクル数の増加に伴って低下し、防災受信機1を所定の時間動作させることができなくなった場合の2つのケースが挙げられる。そこで、交換時期予測部95は、(1)及び(2)の原因で交換が必要となる時期を予測し、いずれか早い時期をバッテリ交換時期としてプリント制御部93に出力する。以下、図8を参照して、交換時期予測部95が(1)及び(2)のそれぞれの原因についてのバッテリ交換時期予測を実施する流れを説明する。
【0084】
(バッテリ交換時期予測の流れ)
まず、バッテリ交換時期の予測を実施させるタイミングは任意であり、定期的に実施させてもよく、外部からの所定の操作による入力に従って実施させてもよい。ここでは、定期的に実施されるバッテリ試験に合わせて交換時期予測を実施させることを前提とする。
【0085】
(1)推奨使用期間の経過
図8に示すように、交換時期予測部95は、交換時期予測を実施するタイミングか否かを判断する(ステップSB−1)。具体的には、バッテリ試験が実施され、この試験の結果、交換時期予測を行うタイミングであると判断されると(ステップSB−1、Yes)、ICタグリーダ制御部91に対して、バッテリ100に対応付けられている個別ICタグ20の読取を要求する(ステップSB−2)。
【0086】
ICタグリーダ制御部91は、ICタグリーダ40を動作させてバッテリ100に対応付けられている個別ICタグ20から部品情報を取得(ステップSB−3)し、交換時期予測部95に出力する。
【0087】
交換時期予測部95は、入力された部品情報からバッテリ100の使用期間を特定し(ステップSB−4)、バッテリ100の推奨使用期間に対して残存している使用期間がどの程度かを算出し、バッテリ100の推奨使用期間に基づく交換時期を予測する(ステップSB−5)。
【0088】
(2)バッテリ放電容量の低下
次に、交換時期予測部95は、バッテリ試験において放電特性測定部110で測定したバッテリ100の放電特性の経時変化から、当該バッテリ100の放電容量の経時変化を算出する(ステップSB−6)。
【0089】
さらに、算出した放電容量の経時変化から放電容量の劣化カーブを導出し(ステップSB−7)、当該劣化カーブから放電容量が所定の値を下回る時期、すなわち、バッテリ100の交換が必要となる時期を予測する(ステップSB−8)。なお、バッテリ100の放電特性からバッテリ100の内部抵抗値を求め、当該内部抵抗値が所定の値を上回る時期を予測することにより、バッテリ100の交換が必要となる時期を予測するようにしてもよい。
【0090】
上述のように求めたバッテリ100の推奨使用期間に基づく交換時期と放電容量低下に基づく交換時期とを比較し(ステップSB−9)、より早い方の時期をバッテリ交換時期としてプリント制御部93に出力する(ステップSB−10)。プリント制御部93は、入力されたバッテリ交換時期をプリンタ50から印字出力させる(ステップSB−11)。
【0091】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の基本的な効果に加えて、個別ICタグ20に格納されているバッテリ100の使用期間を特定するための情報、及び、放電特性測定部110にて測定したバッテリ100の放電特性に基づいて交換時期予測部95がバッテリ交換時期を予測するので、高い精度で交換時期を予測することができる。これにより適切なタイミングでバッテリ100の交換を行うことができ、防災受信機1の信頼性を高いレベルで維持することができる。
【0092】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0093】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0094】
(各実施の形態の相互の関係について)
上記説明した各実施の形態は、任意の組み合わせで相互に組み合わせることができる。例えば、実施の形態1における各構成部品10の推奨使用期間を部品情報の一部として個別ICタグ20に格納することにより、実施の形態2における交換時期予測部95にてバッテリ100以外の構成部品10についても交換時期を予測させることができる。
【0095】
(適合性の判断について)
実施の形態1では、個別ICタグ20及び統括ICタグ30に格納されている情報を、防災受信機1が備えるICタグリーダ40によって読み取り、適合性判断処理部92にて適合性の判断を行っている。これに対して、防災受信機1の外部からICタグリーダによって個別ICタグ20及び統括ICタグ30に格納されている情報を読み取らせ、適合性の判断を行わせてもよい。例えば、適合性判断機能を有するハンディタイプのICタグリーダを用いて個別ICタグ20及び統括ICタグ30に格納されている情報の読み取りを行い、読み取った情報に基づいて適合性の判断を行わせてもよい。
【0096】
(構成部品の交換作業又は仕様変更のタイミング判定について)
実施の形態1では、ICタグリーダ制御部91は、周期的に取得している部品情報の比較、あるいは、ドアセンサ70によるアクセスドア1bの開扉感知によって構成部品10の交換作業のタイミングを判定しているが、交換を行った作業者に、ICタグリーダ制御部91に対して構成部品10の交換や仕様変更のタイミングであることを指示するコマンドを図示しないキーボードやタッチパネル等の指示手段を介して入力させてもよい。これにより、交換作業や仕様変更の際にアクセスドア1bの開扉を伴わない場合でも、各構成部品10の最新の部品情報を迅速かつ確実に取得することができる。
【0097】
(統括ICタグについて)
実施の形態1では、統括ICタグ30は防災受信機1の任意の位置に設置されているが、作業者が防災受信機1に対する構成部品10の適合性判断を行う際に、当該防災受信機1に統括ICタグ30を組み込むようにしても良い。これにより、作業者が作業を行う際、常に最新の適合性情報が格納された統括ICタグ30を適合性判断処理部92に参照させることができ、適切に適合性判断を行わせることができる。
【0098】
(適合性判断結果の通知について)
実施の形態1では、適合性の判断結果をプリンタ50にて印字出力させているが、ベル等の音響装置を用いて警報出力をさせたり、ディスプレイ等の表示装置を用いて適合性の判断結果を表示させたりしてもよい。これにより、適合性の判断結果を作業者に確実に通知することができる。また、部品交換の履歴や適合性判断結果を統括ICタグ30や記憶部60に格納させることにより、格納した情報の閲覧や持ち運びを可能にすることもできる。
【0099】
(バッテリ交換時期予測の印字出力)
実施の形態2では、バッテリ100の交換時期予測の結果をプリンタ50にて印字出力させているが、この時にバッテリ試験によって得られたバッテリ100の放電電圧値及びバッテリ100の使用期間を合わせて印字出力させてもよい。バッテリ100の放電電圧値及びバッテリ100の使用期間を交換時期予測の結果と比較参照することより、予測されたバッテリ100の交換時期の妥当性を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
この発明に係る防災受信機は、交換可能な複数の構成部品を有する防災受信機に適用でき、特に構成部品の交換や仕様変更が行われる場合において当該構成部品の使用の可否について容易に判断可能な防災受信機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1に係る防災受信機の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】個別ICタグに格納される部品情報の具体例を示した図である。
【図3】適合性情報の一部として統括ICタグに格納されている部品情報の具体例を示した図である。
【図4】適合性情報の一部として統括ICタグに格納されている組合せ情報の具体例を示した図である。
【図5】構成部品の交換時の作業手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係る防災受信機の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図7】バッテリに対応付けられた個別ICタグに格納されている部品情報を示した図である。
【図8】交換時期予測の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 防災受信機
1a 筐体
1b アクセスドア
10 構成部品
20 個別ICタグ
30 統括ICタグ
40 ICタグリーダ
50 プリンタ
60 記憶部
70 ドアセンサ
80 ドアロック
90 制御部
91 ICタグリーダ制御部
92 適合性判断処理部
93 プリント制御部
94 防災制御部
95 交換時期予測部
100 バッテリ
110 放電特性測定部
2 防災端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成部品を有する防災受信機において、
当該構成部品に関する部品情報を格納する個別ICタグと、
前記構成部品の使用の可否に関する適合性情報を格納する統括ICタグと、
を備えることを特徴とする防災受信機。
【請求項2】
前記適合性情報は、前記防災受信機に適合する前記構成部品の前記部品情報、又は、前記構成部品間で互いに適合する組合せの組合せ情報を含んでいること、
を特徴とする請求項1に記載の防災受信機。
【請求項3】
前記個別ICタグから前記部品情報を読み取ると共に、前記統括ICタグから前記適合性情報を読み取るためのICタグリーダと、
前記ICタグリーダにて読み取った前記部品情報又は前記適合性情報から、前記防災受信機における前記構成部品の使用の可否を判断する適合性判断手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の防災受信機。
【請求項4】
前記ICタグリーダは、前記個別ICタグから前記部品情報を所定周期で読み取ること、
を特徴とする請求項3に記載の防災受信機。
【請求項5】
前記構成部品の交換作業又は仕様変更が行われるタイミングを判定し、判定結果に応じて、前記ICタグリーダによる読み取りの開始又は読み取りの周期を制御する制御手段を備えること、
を特徴とする請求項3または4に記載の防災受信機。
【請求項6】
前記構成部品の交換作業を感知する交換感知手段を備え、
前記制御手段は、前記交換感知手段が交換作業を感知した場合に、前記交換作業が行われるタイミングと判定すること、
を特徴とする請求項5に記載の防災受信機。
【請求項7】
前記構成部品の交換作業又は仕様変更が行われるタイミングを指示する指示手段を備え、
前記制御手段は、前記指示手段によって指示された前記タイミングに基づいて、前記構成部品の交換作業又は仕様変更が行われるタイミングを判定すること、
を特徴とする請求項5または6に記載の防災受信機。
【請求項8】
前記制御手段は、前記交換作業が行われるタイミングと判定された場合に、前記ICタグリーダによる読み取りの周期を、通常時の第1の周期から当該第1の周期よりも短い第2の周期に切り替えること、
を特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の防災受信機。
【請求項9】
前記構成部品を前記防災受信機の外部から隔離する開閉可能な扉体を備え、
前記制御手段は、前記交換感知手段によって前記構成部品の交換作業が感知された場合において、前記適合性判断手段によって前記構成部品が当該防災受信機において使用可と判断される迄、扉体を閉鎖不能とすること、
を特徴とする請求項6に記載の防災受信機。
【請求項10】
前記ICタグリーダにて読み取った前記部品情報及び前記適合性情報、又は、前記適合性判断手段による判断結果を出力する出力手段を備えること、
を特徴とする請求項3から9のいずれか一項に記載の防災受信機。
【請求項11】
前記ICタグリーダにて読み取った前記部品情報及び前記適合性情報、又は、前記適合性判断手段による判断結果を記憶する記憶手段を備えること、
を特徴とする請求項3から10のいずれか一項に記載の防災受信機。
【請求項12】
前記構成部品の1つとしてバッテリを備える前記防災受信機において、
前記バッテリに関する部品情報を格納する個別ICタグは、当該部品情報の一部として、当該バッテリの使用期間を特定するための情報を含み、
前記バッテリの放電特性を測定する放電特性測定手段と、
前記ICタグリーダにて読み取った前記バッテリの使用期間を特定するための情報又は前記放電特性測定手段にて測定したバッテリの放電特性に基づいて、前記バッテリの交換時期予測を行う交換時期予測手段を備えること、
を特徴とする請求項3から11のいずれか一項に記載の防災受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−217416(P2008−217416A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53901(P2007−53901)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】