説明

防災装置

【課題】居室にいる人の避難の妨げとならず、かつ、天井や壁の一部あるいは照明器具等の落下物から居室にいる人を確実に保護することが可能な防災装置を提供する。
【解決手段】本実施例の防災装置は天井15や壁16の上部に設置され、地震発生時にエアバッグ1がカバー17を突き破って膨張するものであり、一部に蛇腹部2aを有するとともに,コントロールボックス5によって開閉状態を制御される電磁弁4が設置されたチューブ2と、このチューブ2を介してエアバッグ1に接続されるガスボンベ3と、救命信号発信部21とを備え、エアバッグ1は、膨張した際に居室内にいる人々(以下、人体7という。)を座った状態で少なくとも4人程度、内部に収容可能な凹部1aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の際に、天井や壁の一部あるいは照明器具等の落下物又は転倒した家具類から居室にいる人の身を守る防災装置に係り、特に、地震の発生を検知して居室にいる人の安全を速やかに確保することが可能な防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震の発生に伴って建物等が倒壊した場合、居住者等は屋内に留まっていると落ちてきた天井や壁の下敷きとなって怪我をしたり、死亡したりする可能性がある。また、建物が倒壊しないような場合でも転倒した家具類によって怪我をするおそれがある。一方、慌てて屋外に飛び出すと、二次災害に遭う可能性が高い。そのため、一般には、地震が収まるまで机などの下に潜り込んで暫く動かないでいる方が良いとされている。しかしながら、机の下のスペースが狭い場合や机の強度が不足している場合には、居室にいる人の安全を十分に確保することができない。そこで、このような課題に対処するべく、地震が発生した場合に居室にいる人を安全に保護する技術について、従来、盛んに研究がなされている。そして、それに関して既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「建物倒壊時の人身保護方法及びそれに用いる人身保護具」という名称で、地震などで建物が倒壊した場合でもそれによる人身被害をより少なくすることができる方法とそれに用いる人身保護具に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明である「建物倒壊時の人身保護方法」は、予め膨張させたエアバッグを建物内の適当な場所に設置したり、倒壊に伴う建物の変形を検出してエアバッグを膨張させたりするなどして建物を内部から支えることを特徴としている。
このような方法によれば、建物の倒壊による人身被害を少なくすることができる。
【0004】
また、特許文献2には、就寝中に大地震が発生した場合に、全身を覆うようにして人的災害を防止することが可能な「就寝時防災用エアバッグ」に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、震度5以上の揺れを感知して膨張するエアスプリングと、このエアスプリングの膨張によって放出可能に格納箱内に収納されるエアバッグと、このエアバッグを縦横にそれぞれ広げる縦厚布スプリング及び横厚布スプリングと、膨張したエアスプリングと連動してエアバッグを放出する横蓋設置板スプリングと、エアバッグに高圧エアを充填する高圧エアタンクとを備えるものである。
このような構造においては、震度5以上の地震が発生した場合、エアバッグが身体を覆うため、家財道具等の転倒落下による被災が軽減される。
【0005】
さらに、特許文献3には、地震が発生した場合に膨張して家具類やOA機器の転倒を防止し、又は転倒時の衝撃を吸収できる「感震式エアバッグ装置」に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、外箱内にスライド自在に収納され,外箱が傾斜した場合に少なくとも一部が突出する内箱と、この内箱の内部に収納されるエアバッグと、このエアバッグにエアを供給可能にチューブ及び電磁弁を介して接続されるとともに,外箱内に設置されるエアーボンベと、外箱内に設置されて地震を感知したときに電磁弁を開弁させる感震器とを備えるものである。
このような構造によれば、ある一定以上の強い地震が発生した場合に、外箱から内箱が突出するとともに、エアバッグが膨張するという作用を有する。これにより、家具類やOA機器の転倒が防止され、あるいは転倒時の衝撃が吸収される。
【特許文献1】特許第3014301号公報
【特許文献2】特開2006−334367号公報
【特許文献3】登録実用新案第3017515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明においては、エアバッグで建物を内部から支えることで倒壊状態が進まないようにすることができるものの、天井や壁の一部あるいは照明器具等が頭上に落下してきた場合に、居住者等の安全を十分に確保することができないという課題があった。また、落下物によってエアバッグが破裂してしまい、用をなさなくなるという課題があった。さらに、地震の初期段階において、居住者等が安全な場所に避難しようとする際に、膨張したエアバッグが障害となるおそれがあった。
【0007】
また、特許文献2に開示された発明においては、エアバッグを縦横に広げるために縦厚布スプリング及び横厚布スプリングを必要としている。従って、大型で複雑な構造となってしまい、設置の際に広いスペースを要するという課題があった。また、床上に設置する必要があり、通行の邪魔となるため、就寝時以外は設置できないという課題があった。
【0008】
特許文献3に開示された考案は、装置が設置された家具については転倒を防止できるものの、壁や天井の一部が剥がれて落下してきた場合や照明器具等が外れて落下してきた場合には、居住者等を安全に保護することができないという課題があった。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、居室にいる人の避難の妨げとならず、かつ、天井や壁の一部あるいは照明器具等の落下物から居室にいる人を確実に保護することが可能な防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である防災装置は、屋内に設置され,地震発生時にエアバッグを膨張させて人体を保護する防災装置であって、エアバッグにガスを供給するガス供給部と、このガス供給部とエアバッグの間に介設される電磁弁と、地震を検知して検知信号を発するセンサと、この検知信号に従って電磁弁の開閉状態を制御する制御部と、を備え、エアバッグは、隔壁によって仕切られる,ガス供給部が接続される第一室と,膨張時に人体を収容可能な凹部を形成する第二室とからなり、隔壁には第一室側から第二室側へのみガスを供給可能に逆止弁が設けられることを特徴とするものである。
このような構造の防災装置においては、エアバッグの膨張時に形成される凹部は、凹部内の人にエアバッグを直接、接触させないように作用する。また、落下物等との接触により第一室が破裂等した場合でも逆止弁が設けられた隔壁によって、第二室からのガスの漏出が防止される。従って、エアバッグが膨張した際に第一室が第二室の上部に形成される場合には、落下物等との接触により破裂することがないように第二室が第一室によって保護されるという作用を有する。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の防災装置において、制御部に経過時間を知らせるタイマーを備え、センサは地震の初期微動(P波)を検知して第一の検知信号を発し、制御部は、この第一の検知信号に従ってエアバッグの一部を膨張させるように電磁弁の開度や開閉時間を調節し、タイマーは、第一の検知信号を受け取った後、所定の時間が経過したことを知らせる時間信号を制御部に送り、制御部は、この時間信号に従ってエアバッグを完全に膨張させるように電磁弁の開度や開閉時間を調節することを特徴とするものである。
このような構造の防災装置においては、初期微動(P波)を検知してエアバッグを膨張させることにより、屋内にいる人に対して地震の発生を視覚的に知らせるという作用を有する。また、第一の検知信号を受け取った後、所定の時間が経過するまで、エアバッグの膨張が中断されるため、その間に避難をしようとしている人に対してエアバッグが邪魔になり難いという作用を有する。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の防災装置において、センサは、地震の主要動(S波)を検知して第二の検知信号を発し、制御部は時間信号を受け取っていない場合に、この第二の検知信号に従ってエアバッグを完全に膨張させるように電磁弁の開度や開閉時間を調節することを特徴とするものである。
このような構造の防災装置においては、初期微動(P波)の後、主要動(S波)が短時間で到達するような震源の近い地震に対しても請求項2に記載された発明の作用が同様に発揮される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の請求項1に防災装置においては、屋内にいる人を凹部に収容して、落下物等から確実に保護することができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の防災装置によれば、地震時に発生する揺れの程度に応じてエアバッグを段階的に膨張させる構造となっているため、初期微動(P波)が発生した後、屋内にいる人は他の場所に移動するべきか、そこに留まるべきかを選択することができる。そして、この段階ではエアバッグがまだ完全に膨張していないため、エアバッグに邪魔されずに他の場所へ安全に避難することができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の防災装置によれば、震源が近い地震のように初期微動(P波)から主要動(S波)までの間隔が短い場合であっても、請求項2に記載された発明の効果が同様に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る防災装置の実施例について説明する。
【実施例】
【0017】
図1(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る防災装置の実施例の外観斜視図及び壁面内に設置された状態を模式的に示した正面図であり、図2(a)及び(b)は図1(a)のX−X線矢視断面図である。また、図3は本実施例の防災装置のコントロールボックスの構成を示すブロック図である。図4は本実施例の防災装置の制御部による電磁弁の制御手順を示したフローチャートである。図5(a)及び(b)は本実施例の防災装置を模式的に示した正面図であり、図6及び図7は本実施例の防災装置の変形例を模式的に示した正面図である。なお、図6(a)は図2(a)に対応しており、図6(b)は図1(b)に対応している。また、図7は図5に対応している。そして、図5及び図7では、救命信号発信部の図示を省略している。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施例の防災装置は天井15近傍の壁16の上部に設置されるものであり、地震発生時にはエアバッグ1がカバー17を突き破って膨張する構造となっている。そして、エアバッグ1の他に、一部に蛇腹部2aが設けられたチューブ2と、このチューブ2を介してエアバッグ1に接続されるガスボンベ3とを備えており、チューブ2には電磁弁4が設置され、電磁弁4にはコントロールボックス5が配線6aを介して接続されている。すなわち、ガスボンベ3はチューブ2を通してエアバッグ1にガスを供給するためのガス供給部として機能し、ガスの供給量は電磁弁4によって調節されている。また、電磁弁4の開閉状態はコントロールボックス5によって制御されている。さらに、コントロールボックス5には、ランプ21aとスピーカー21bを備えた救命信号発信部21が配線6bを介して接続されている。なお、エアバッグ1は、膨張した際に凹部1aが形成されるように構成されており、この凹部1aは居室内にいる人々(以下、人体7という。)を座った状態で少なくとも4人程度、内部に収容できる大きさを有している。また、エアバッグ1の素材はポリエステル系の合成繊維であり、エアバッグ1に供給されるガスは高圧の空気である。
【0018】
図2(a)及び(b)に示すように、エアバッグ1は隔壁8によって、ガス供給口9aにチューブ2が接続される第一室9と、膨張時に凹部1aが形成される第二室10に仕切られており、隔壁8には逆止弁11が設けられている。すなわち、図2(b)の矢印Aで示すように、ガス供給口9aから第一室9に供給されたガスは、逆止弁11を通って、さらに第二室10へと供給される。このとき、逆止弁11の作用によって、第二室10から第一室9へのガスの逆流が阻止される。
【0019】
図3に示すように、コントロールボックス5はセンサ12と、タイマー13と、制御部14によって構成され、コントロールボックス5と電磁弁4と救命信号発信部21には電源部(図示せず)が接続されている。センサ12は地震に伴って発生する加速度を3次元的に検知する3次元加速度センサであり、初期微動(P波)及び主要動(S波)に相当する加速度を検知した場合にタイマー13及び制御部14に対して検知信号a,aをそれぞれ送るように構成されている。
なお、初期微動(P波)及び主要動(S波)に相当する加速度は、予め定められた閾値によって識別される。また、タイマー13からは制御部14に対して、所定の時間が経過したことを知らせるため、後述の時間信号b〜bが送られる。そして、制御部14は検知信号a,aや時間信号b〜bに従って電磁弁4に対して指令信号c,cを送り、その開閉状態を制御するとともに、救命信号発信部21に対して指令信号cを送って、その動作を制御する。
【0020】
次に、制御部14による電磁弁4及び救命信号発信部21の制御手順について図4を用いて説明する。
前述したように、センサ12は初期微動(P波)に相当する加速度を検知した場合、検知信号aを発する。そして、制御部14は、ステップS1で検知信号aを受け取ったと判断すると、ステップS2において指令信号cを送って電磁弁4を開く。その結果、ガスボンベ3からチューブ2を介してエアバッグ1の内部にガスが供給され、エアバッグ1が膨張する。タイマー13はセンサ12から検知信号aを受け取った後、所定の時間tが経過すると、制御部14に対して時間信号bを送る。制御部14は、ステップS3において時間信号bを受け取ったと判断して、ステップS4において指令信号cを送って電磁弁4を閉じる。これにより、ガスボンベ3からエアバッグ1へのガスの供給が遮断される。
なお、時間tはエアバッグ1が完全に膨張するために要する時間よりも短く設定されている。従って、ステップS4において、エアバッグ1は図5(a)に示すように一部のみが膨張した状態となる。
【0021】
センサ12は主要動(S波)に相当する加速度を検知して、検知信号aを制御部14に送る。そして、制御部14は、ステップS5で検知信号aを受け取ったと判断し、ステップS7において指令信号cを送って電磁弁4を開く。また、タイマー13は時間信号bを発した後、所定の時間tが経過すると、制御部14に対して時間信号bを送る。そして、制御部14が、この時間信号bを検知信号aよりも前に受け取った場合、ステップS6からステップS7へと進む。すなわち、センサ12が主要動(S波)に相当する加速度を検知する前に、所定の時間tが経過した場合、ステップS7で制御部14から送られた指令信号cに従って電磁弁4は開弁する。なお、時間tはエアバッグ1が図5(a)に示す状態から完全に膨張し終わるまでに要する時間よりも長く設定されている。従って、この場合、エアバッグ1は図5(b)に示すように完全に膨張した状態となる。
さらに、制御部14はステップS8において救命信号発信部21に対して指令信号cを送る。その結果、救命信号発信部21が作動し、ランプ21a及びスピーカー21bがそれぞれ音と光を発する。なお、図5には示されていないが、本実施例では、救命信号発信部21がコントロールボックス5とともに、天井15近傍の壁16の上部に設置される構成となっている。ただし、救命信号発信部21の設置場所は、これに限らず適宜変更可能である。例えば、屋外から常時視認可能な場所に設置しても良い。また、救命信号発信部21をコントロールボックス5に配線6bを介して接続する代わりに、両者を無線接続とすることもできる。
【0022】
タイマー13はセンサ12から検知信号aを受け取った後、所定の時間tが経過すると、制御部14に対して時間信号bを送る。また、時間信号bを発した後、所定の時間tが経過すると、制御部14に対して時間信号bを送る。そして、制御部14はステップS9において時間信号b,bのいずれかを受け取ったと判断すると、ステップS10において指令信号cを送って電磁弁4を閉じる。
【0023】
このような構造の防災装置によれば、チューブ2は蛇腹部2aにおいて伸縮可能となっているため、エアバッグ1が膨張する際の障害となり難い。また、ガスボンベ3からガスが供給されたエアバッグ1はカバー17を突き破って膨張し、居室にいる人(人体7)の頭上を覆うように展開するという作用を有する。このとき、人体7を収容する空間を形成する凹部1aは、エアバッグ1を人体7に直接、接触させないように作用する。
さらに、エアバッグ1が膨張した際に、第二室10の上部に形成される第一室9は、落下物等に接触して第二室10が破裂等しないように保護するという作用を有する。そして、落下物等との接触により第一室9が破裂等した場合であっても、逆止弁11が設けられた隔壁8によって第二室10からのガスの漏出が防止される。また、初期微動(P波)を検知して膨張するエアバッグ1は、居室にいる人に対して地震が発生したことを視覚的に知らせるという作用を有する。さらに、センサ12によって初期微動(P波)が検知された後、所定の時間が経過するまで、エアバッグ1の膨張が中断されるため、避難をしようとしている人に対してエアバッグ1は邪魔になり難い。
そして、本実施例の防災装置においては、初期微動(P波)が検知された後、所定の時間が経過する前であっても主要動(S波)が検知された場合には、エアバッグ1が完全に膨張する構造となっている。従って、初期微動(P波)の後、主要動(S波)が短時間で到達するような震源の近い地震に対しても上述の作用が同様に発揮される。また、救命信号発信部21は、エアバッグ1に保護された状態で救助を待っている人の存在を、他の部屋あるいは屋外に居る人に知らせるという作用を有する。
【0024】
以上説明したように、本実施例の防災装置によれば、エアバッグ1が二重構造となっており、特に、第一室9が破裂等した場合でも第二室10からガスが漏出するおそれがないため、居室にいる人を凹部1aに収容して、落下物等から確実に保護することが可能である。そして、凹部1a内にいる人にエアバッグ1が直接、接触しないような構成となっていることから、エアバッグ1を介して人体7に伝わる落下物の衝撃が軽減されるとともに、窒息の危険も回避される。
さらに、凹部1aが設けられている分だけ、第二室10を膨張させるために要するガスが低減される。また、地震時に発生する揺れの程度に応じてエアバッグ1を段階的に膨張させる構造となっているため、初期微動(P波)が発生した後、所定の時間が経過するまでの間に、居室にいる人は他の場所に移動するべきか、そこに留まるべきかを選択することが可能である。
そして、この段階ではエアバッグ1がまだ完全に膨張していないため、その部屋から移動しようとした人はエアバッグ1に邪魔されずに避難することが可能である。さらに、震源が近い地震のように初期微動(P波)から主要動(S波)までの間隔が短い場合であっても、本実施例の防災装置では、主要動(S波)が検知されると、エアバッグ1が完全に膨張する構造となっているため、上述の効果が同様に発揮される。また、万一、建物が倒壊したような場合でも、救命信号を手掛かりにエアバッグ1及びその内部に居る人を速やかに発見することが可能である。
【0025】
なお、本願発明の防災装置は、上記実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、エアバッグ1は少なくとも凹部1aを有していればよいため、図6(a)に示すような釣鐘型のエアバッグ18aであっても良い。また、図6(b)に示すように、防災装置を壁16ではなく、天井15に設置することもできる。加えて、天井15や壁16の内部に収納する代わりに、天井15や壁16から突出させた状態で設置しても良い。さらに、家具等の天面に載置することもできる。
また、図7(a)に示すように、就寝中の人(以下、就寝者20という。)を保護する場合には、ベッド19の周囲の床21の上、特に、就寝者20の足元に防災装置を設置することが望ましい。なお、この場合には図5に示したエアバッグ1の代わりに、図7(b)に示すように、扁平形状のエアバッグ18bを用いることができる。
さらに、本実施例では初期微動(P波)の検知後の電磁弁4の開弁時間を短く設定することで、エアバッグ1の一部のみを膨張させる構造となっているが、電磁弁4の開弁時間を短くする代わりに、電磁弁4の開度(開き具合)を小さく設定することもできる。すなわち、制御部14が開弁時間や開度のうち少なくともいずれかを調整することにより電磁弁4の開閉状態を制御する構造としても良い。
また、エアバッグ1の素材やエアバッグ1に供給するガスは、本実施例に示すものに限定されるものではなく、適宜変更可能である。ただし、エアバッグ1に供給するガスは、エアバッグ1の破損等によって漏出する可能性もあるため、毒性がないか、若しくはできるだけ毒性が低いことが望ましい。
加えて、救命信号発信部21はランプ21aとスピーカー21bのいずれか一方を備えたものであっても良い。また、光や音からなる救命信号を発するタイミングも本実施例に示した場合に限定されない。例えば、初期微動(P波)が検知された後、エアバッグ1が膨張することを予め警告する目的で、エアバッグ1が膨張し始める(図4のステップS2)前に救命信号を発するような構成としても良い。また、主要動(S波)が検知された後、エアバッグ1が膨張し始める(図4のステップS7)前に行うこともできる。さらに、エアバッグ1が完全に膨張し終わった(図4のステップS10)後に救命信号を発するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、請求項1乃至請求項3に記載された発明は、地震発生時に屋内にいる人を落下物等から保護する場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る防災装置の実施例の外観斜視図及び壁面内に設置された状態を模式的に示した正面図である。
【図2】(a)及び(b)は図1のX−X線矢視断面図である。
【図3】本実施例の防災装置のコントロールボックスの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施例の防災装置の制御部による電磁弁の制御手順を示したフローチャートである。
【図5】(a)及び(b)は本実施例の防災装置を模式的に示した正面図である。
【図6】(a)及び(b)本実施例の防災装置の変形例を模式的に示した正面図である。
【図7】(a)及び(b)本実施例の防災装置の変形例を模式的に示した正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…エアバッグ 1a…凹部 2…チューブ 2a…蛇腹部 3…ガスボンベ 4…電磁弁 5…コントロールボックス 6a,6b…配線 7…人体 8…隔壁 9…第一室 9a…ガス供給口 10…第二室 11…逆止弁 12…センサ 13…タイマー 14…制御部 15…天井 16…壁 17…カバー 18a,18b…エアバッグ 19…ベッド 20…就寝者 21…救命信号発信部 21a…ランプ 21b…スピーカー a,a…検知信号 b〜b…時間信号 c〜c…指令信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置され,地震発生時にエアバッグを膨張させて人体を保護する防災装置であって、
前記エアバッグにガスを供給するガス供給部と、
このガス供給部と前記エアバッグの間に介設される電磁弁と、
地震を検知して検知信号を発するセンサと、
この検知信号に従って前記電磁弁の開閉状態を制御する制御部と、
を備え、
前記エアバッグは、隔壁によって仕切られる,前記ガス供給部が接続される第一室と,膨張時に人体を収容可能な凹部を形成する第二室とからなり、
前記隔壁には前記第一室側から前記第二室側へのみ前記ガスを供給可能に逆止弁が設けられることを特徴とする防災装置。
【請求項2】
前記制御部に経過時間を知らせるタイマーを備え、
前記センサは地震の初期微動(P波)を検知して第一の検知信号を発し、
前記制御部は、この第一の検知信号に従って前記エアバッグの一部を膨張させるように前記電磁弁の開度や開閉時間を調節し、
前記タイマーは、前記第一の検知信号を受け取った後、所定の時間が経過したことを知らせる時間信号を前記制御部に送り、
前記制御部は、この時間信号に従って前記エアバッグを完全に膨張させるように、前記電磁弁の開度や開閉時間を調節することを特徴とする請求項1記載の防災装置。
【請求項3】
前記センサは、地震の主要動(S波)を検知して第二の検知信号を発し、
前記制御部は前記時間信号を受け取っていない場合に、この第二の検知信号に従って前記エアバッグを完全に膨張させるように前記電磁弁の開度や開閉時間を調節することを特徴とする請求項2記載の防災装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−121385(P2010−121385A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297382(P2008−297382)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【特許番号】特許第4361126号(P4361126)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(508345645)株式会社シーエス (1)
【Fターム(参考)】