説明

防眩性ハードコートフィルム、それを用いた偏光板および画像表示装置

【課題】優れた防眩性を有し、かつ低へイズ値であっても優れた反射特性を有し、低反射化を行った場合に特有の「色付き」を防止して黒表示における黒の濃さの向上をすることができる防眩性ハードコートフィルム、偏光板等を提供する。
【解決手段】防眩性ハードコート層と反射防止層とを有している反射強度比が3以下の防眩性ハードコートフィルムであって、防眩性ハードコート層は微粒子を含有しており、前記反射防止層表面の凹凸形状において、所定の範囲の平均傾斜角度θa、算術平均表面粗さRaを有し、さらに、反射防止層表面の表面形状が、表面粗さプロファイルの粗さ平均線を越える凸状部の数、前記平均線に平行で0.1μmの高さに位置する基準線を越える凸状部の数および大きさが所定の範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコートフィルム、それを用いた偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の進歩に伴い、画像表示装置は、従来の陰極管表示装置(CRT)に加え、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等が開発され、実用化されている。このなかで、LCDは、高視野角化、高精細化、高速応答性、色再現性などに関する技術革新に伴い、LCDを利用するアプリケーションも、携帯電話やカーナビゲーションのディスプレイ等の車載用途にも広がっている。これら用途においては、視認性のさらなる向上が求められている。十分な視認性が得られない原因の一つとしては、ディスプレイの最表面部に配置されている偏光板と空気との界面における界面反射がある。そこで、より視認性を向上させるために、偏光板の表面に低反射処理を行う手法が一般的に用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、外光の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、防眩(アンチグレア)処理を施す手法がある。防眩処理には、防眩性のハードコートフィルムを用いることができる(例えば、特許文献3参照)。防眩性ハードコートフィルムを用いる場合にも、反射防止という観点から、さらに視認性を向上させることを目的として、低反射処理を行うことが検討されているが(例えば、特許文献4参照)、低反射の特性を付与した後も防眩性の確保は重要である。一方、近年では、防眩性ハードコートフィルムは、高コントラスト化の目的で、低ヘイズ値化が求められるようになってきている。防眩性ハードコートフィルムのヘイズ値を低くすると、ディスプレイを構成する画素中に存在する輝度のバラツキがより強調されて目に見える故障(ギラツキ故障)を引き起こし、画質が悪化するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−295503号公報
【特許文献2】特開2002−122705号公報
【特許文献3】特開2008−90263号公報
【特許文献4】特開2006−317957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記各特性を両立させるために、低反射処理と防眩処理を併用すると、ディスプレイに青色や赤色がかかって見える、「色付き」の問題が生じ、そのため、視認性がかえって低下してしまう場合があることが判明した。そこで、本発明は、LCD等の画像表示装置の特性を落とすことなく視認性を向上させる防眩性ハードコートフィルムを提供することを目的とする。すなわち、優れた防眩性を有し、かつ低へイズ値であっても優れた反射特性を有し、低反射化を行った場合に特有の「色付き」を防止して黒表示における黒の濃さの向上をすることができる防眩性ハードコートフィルム、それを用いた偏光板および画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、透明プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に、防眩性ハードコート層と反射防止層とを有している下記反射強度比が3以下の防眩性ハードコートフィルムであって、
防眩性ハードコート層は微粒子を含有しており、
前記反射防止層表面の凹凸形状において、平均傾斜角度θaが0.5≦θa≦1.5の範囲であるとともに、
下記算術平均表面粗さRaが0.05〜0.15μmの範囲であり、さらに、
前記反射防止層表面の任意な箇所の長さ4mmにおいて、表面粗さプロファイルの粗さ平均線を越える凸状部を80個以上有しており、かつ、
前記平均線に平行で0.1μmの高さに位置する基準線を越える凸状部を有しており、前記基準線の前記凸状部を横切る部分の線分の長さが50μm以上の凸状部を含んでいないことを特徴とする。
反射強度比:垂直方向から10°の角度で、防眩性ハードコートフィルム最表面に
おける光強度が1000Lxとなるように光を当てたときの反射強度の、
屈折率が1.53のハードコートフィルムの反射強度を1とした場合の比の値
Ra:JIS B 0601(1994年版)に規定する算術平均表面粗さ(μm)
【0007】
本発明の偏光板は、前記本発明の防眩性ハードコートフィルムおよび偏光子を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の画像表示装置は、前記本発明の防眩性ハードコートフィルムを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像表示装置は、前記本発明の偏光板を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防眩性ハードコートフィルムによれば、低反射特性を有し、さらに、特徴ある凹凸形状を実現することにより、低反射化を行った場合の「色付き」を抑えつつ優れた防眩性を有するとともに、ギラツキが抑えられ、さらに、低へイズ値化も可能であることから、従来の低反射防眩性ハードコートフィルムと比較して、視認性を改善することができる。また、「色付き」を防止することで、画像表示装置の黒表示時における黒の濃さの向上をすることができる。したがって、本発明の防眩性ハードコートフィルムまたは偏光板を用いた画像表示装置は、表示特性が優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1(a)】図1(a)は、実施例1の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの0〜1mmの範囲を示したプロファイルである。
【図1(b)】図1(b)は、実施例1の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの1〜2mmの範囲を示したプロファイルである。
【図1(c)】図1(c)は、実施例1の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの2〜3mmの範囲を示したプロファイルである。
【図1(d)】図1(d)は、実施例1の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの3〜4mmの範囲を示したプロファイルである。
【図2】図2は、実施例2の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのプロファイルである。(a)は0〜1mmの範囲、(b)は1〜2mmの範囲、(c)は2〜3mmの範囲、(d)は3〜4mmの範囲である。
【図3】図3は、実施例3の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのプロファイルである。(a)は0〜1mmの範囲、(b)は1〜2mmの範囲、(c)は2〜3mmの範囲、(d)は3〜4mmの範囲である。
【図4】図4は、比較例1の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの2〜3mmの範囲を示したプロファイルである。
【図5】図5は、比較例2の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの0〜1mmの範囲を示したプロファイルである。
【図6】図6は、比較例3の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの0〜1mmの範囲を示したプロファイルである。
【図7】図7は、比較例4の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの0〜1mmの範囲を示したプロファイルである。
【図8】図8は、比較例5の防眩性ハードコートフィルムの断面表面形状の、測定長さ4mmのうちの0〜1mmの範囲を示したプロファイルである。
【図9】図9は、粗さ曲線、高さhおよび基準長さLの関係の一例を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明における表面粗さプロファイルの粗さ平均線を越える凸状部の数の計測方法を説明する模式図である。
【図11】図11は、本発明における表面粗さの基準線を越える凸状部の数の計測方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記反射防止層が、170〜350nmの範囲内の厚みであることが好ましい。
【0013】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、ヘイズ値が4〜30の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記防眩性ハードコート層が、前記微粒子と、下記の(A)成分および(B)成分を含むハードコート層形成材料とを用いて形成されていることが好ましい。
(A)成分:アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物
(B)成分:無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなる、重量平均粒径が200nm以下の粒子
【0015】
前記(B)成分において、無機酸化物粒子が、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の粒子を含むことが好ましい。
【0016】
前記ハードコート層形成材料において、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が、100〜200重量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0017】
前記ハードコート層形成材料と前記微粒子との屈折率の差が0.01〜0.04の範囲であり、前記微粒子として、重量平均粒径が0.5〜8μmの範囲である球状もしくは不定形の微粒子を1種類以上含み、前記ハードコート層形成材料100重量部に対して、前記微粒子が5〜20重量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0018】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記防眩性ハードコート層の厚みが、前記微粒子の重量平均粒径の1.2〜3倍の範囲であることが好ましい。
【0019】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0020】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、透明プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に、防眩性ハードコート層を有するものである。
【0021】
前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008−90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、防眩性ハードコート層が、従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、防眩性ハードコートフィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0022】
本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜300μmの範囲であり、最適には、30〜200μmの範囲である。前記透明プラスチックフィルム基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。
【0023】
前記防眩性ハードコート層は、前記微粒子および前記ハードコート層形成材料を用いて形成される。前記ハードコート層形成材料は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記ハードコート層形成材料として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能であるが、前記ハードコート層形成材料は、例えば、下記の(A)成分および(B)成分を含むものが好ましい。
【0024】
(A)成分:アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物
(B)成分:無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなる重量平均粒径が、200nm以下の粒子
【0025】
前記(A)成分としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用できる。前記(A)成分としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記(A)成分としては、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008−88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、防眩性ハードコート層の硬度を、より優れたものにできるからである。前記(A)成分としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。前記(A)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記(B)成分は、前述のとおりである。前記(B)成分において、無機酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、光の散乱防止、ハードコート層の透過率低下防止、着色防止および透明性の点等から、前記(B)成分は、重量平均粒径が1nm〜200nmの範囲である、いわゆるナノ粒子であることが好ましい。前記重量平均粒径は、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定できる。前記重量平均粒径は、より好ましくは、1nm〜100nmの範囲である。ナノ粒子である前記(B)成分を前記(A)成分に添加すると、例えば、後述の溶媒の選択により、塗工および乾燥工程における前記微粒子の動きに変化が起こることを、発明者らは見出した。すなわち、ナノ粒子を添加した系では、ある特定の溶媒を用いると、前記微粒子による表面凹凸が形成されにくく、別の特定の溶媒を用いると、前記凹凸が形成されやすいという傾向が生じた。前記ナノ粒子が含有されていなければ、溶媒の種類による表面凹凸形状の差異は大きくなかった。これらの現象から、前記ナノ粒子が含まれていると、ナノ粒子および微粒子に斥力が働くため前記微粒子が比較的均一に分散しやすく、また、塗工および乾燥工程での微粒子の動きも制御しやすく、そのため、微粒子の添加部数を少なくでき、効果的に本発明の表面凹凸形状を作製することができるものと推察できる。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限ないし限定されない。
【0029】
前記(B)成分において、前記無機酸化物粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物と結合(表面修飾)されている。前記重合性不飽和基が前記(A)成分と反応硬化することで、ハードコート層の硬度を向上させる。前記重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基が好ましい。また、前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物あるいは加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、光感応性基を有するものであることも好ましい。
【0030】
前記(B)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対し、100〜200重量部の範囲であることが好ましい。前記(B)成分の配合量を100重量部以上とすることで、防眩性ハードコートフィルムのカールおよび折れの発生を、より効果的に防止でき、200重量部以下とすることで、耐擦傷性や鉛筆硬度を高いものとすることができる。前記(B)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対し、より好ましくは、100〜150重量部の範囲である。
【0031】
前記(B)成分の配合量を調整することで、例えば、前記防眩性ハードコート層の屈折率を調整することが可能である。後述の反射防止層を設けない場合は、反射率を抑えるために防眩性ハードコート層の屈折率を低くするとよい。反射防止層(低屈折率層)を設ける場合には、防眩性ハードコート層の屈折率を高くすることで、可視光線の波長領域の反射を均一に低減することが可能となる。
【0032】
前記防眩性ハードコート層を形成するための微粒子は、形成される防眩性ハードコート層表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、また、前記防眩性ハードコート層のヘイズ値を制御することを主な機能とする。前記防眩性ハードコート層のヘイズ値は、前記微粒子と前記ハードコート層形成材料との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記微粒子としては、例えば、無機微粒子と有機微粒子とがある。前記無機微粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク微粒子、カオリン微粒子、硫酸カルシウム微粒子等があげられる。また、有機微粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機微粒子および有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0033】
前記微粒子の重量平均粒径は、0.5〜8μmの範囲であることが好ましい。前記微粒子の重量平均粒径が、前記範囲より大きくなると、画像鮮明性が低下し、また前記範囲より小さいと、十分な防眩性が得られず、ギラツキも大きくなるという問題が生じやすくなる。前記微粒子の重量平均粒径は、より好ましくは、2〜6μmの範囲、さらに好ましくは、3〜6μmの範囲である。また、前記微粒子の重量平均粒径は、前記防眩性ハードコート層の厚みの30〜80%の範囲であることも好ましい。なお、前記微粒子の重量平均粒径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が前記細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出する。
【0034】
前記微粒子の形状は特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の微粒子であり、最も好ましくは球形の微粒子である。
【0035】
前記微粒子の配合割合は、前記ハードコート層形成材料100重量部に対し、5〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、5〜17重量部の範囲である。
【0036】
前記防眩性ハードコート層の厚みは、前記微粒子の重量平均粒径の1.2〜3倍の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2倍の範囲である。さらに、前記防眩性ハードコート層の厚みは、塗工性および鉛筆硬度の観点から、8〜12μmの範囲であることが好ましく、この厚み範囲になるように前記微粒子の重量平均粒径を調整することが好ましい。前記厚みが前記所定の範囲であれば、微細な凹凸が独立に多数存在する本発明の防眩性ハードコートフィルムの表面形状を実現しやすく、前記防眩性ハードコート層の硬度も十分なものとなる(例えば、鉛筆硬度で4H以上)。また、前記厚みが前記所定の範囲より大きいときは、カールが大きく塗工時のライン走行性が低下するという問題があり、さらに防眩性の低下の問題もある。また、前記厚みが前記所定の範囲より小さい場合は、ギラツキが防止できず、鮮明性が低下するという問題がある。
【0037】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、へイズ値が4〜30%の範囲内であることが好ましい。前記ヘイズ値とは、JIS K 7136(2000年版)に準じた防眩性ハードコートフィルム全体のヘイズ値(曇度)である。前記ヘイズ値は、6〜30%の範囲がより好ましく、さらに好ましくは8〜30%の範囲である。ヘイズ値を上記範囲とするためには、前記微粒子と前記ハードコート層形成材料との屈折率差が0.01〜0.06の範囲となるように、前記微粒子と前記ハードコート層形成材料とを選択することが好ましい。全ヘイズ値が前記範囲であることにより、鮮明な画像が得られ、また、暗所でのコントラストを向上させることができる。全ヘイズ値が低すぎるとギラツキ故障が起こりやすくなる。
【0038】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前記反射防止層表面の凹凸形状において、平均傾斜角度θaが0.5≦θa≦1.5の範囲である。本発明において、前記平均傾斜角θaは、下記数式(1)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
平均傾斜角θa=tan−1Δa (1)
【0039】
前記数式(1)において、Δaは、下記数式(2)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。図9に、前記粗さ曲線、高さhおよび基準線Lの一例を示す。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (2)
【0040】
前記θaは、0.6〜1.4の範囲が好ましく、より好ましくは0.65〜1.35の範囲である。θaが0.5未満では防眩性が弱く、1.5を超えるとギラツキが強くなりやすい。
【0041】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、防眩性ハードコート層表面の凹凸形状において、JIS B 0601(1994年版)に規定される算術平均表面粗さRaが0.05〜0.15μmの範囲であり、さらに、前記反射防止層表面の任意な箇所の長さ4mmにおいて、表面粗さプロファイルの粗さ平均線を越える凸状部を80個以上有しており、かつ、前記平均線に平行で0.1μmの高さに位置する基準線を越える凸状部を有しており、前記基準線の前記凸状部を横切る部分の線分の長さが50μm以上の凸状部を含んでいない。前記Raは、0.07〜0.12μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.08〜0.10μmの範囲である。防眩性ハードコートフィルムの表面における外光や像の映り込みを防ぐためには、ある程度の表面の荒れが必要であるが、Raが0.05μm以上あることで前記映り込みを改善することができる。また、防眩性確保のためには、前記Raが0.15μm以下であることが必要であり、さらに、表面が全体に荒れているのではなく、うねり状もしくは微細な凹凸がまばらにあるような表面の凹凸形状を有しているのがよい。前記粗さ平均線を越える凸状部の数が80個以上形成されており、前記Raが0.15μm以下である防眩性ハードコートフィルムであると、画像表示装置等に使用したときに、斜め方向から見た場合の反射光の散乱が抑えられ、白ボケが改善されるとともに、明所でのコントラストも向上させることができる。前記凸状部の数は、80〜110個の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、90〜100個の範囲である。前記凸状部の数が80個未満であると、ギラツキが発生しやすく、また、110個を超えると、表面全体の色付きが強くなりやすい。
【0042】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前記表面粗さプロファイルの粗さ平均線に平行で0.1μmの高さに位置する基準線を越える凸状部を有している。前記0.1μmの高さに位置する基準線は前記凸状部を横切っているのであるが、前記凸状部の大きさは、前記凸状部を横切る部分の基準線の線分の長さが50μm未満のものである。さらに、前記線分の長さが20μm以下である前記凸状部が、前記防眩性ハードコート層表面の任意な箇所の長さ4mmにおいて50個以上形成されていることが好ましい。前記線分の長さが20μm以下の凸状部の数が50個以上形成されていると、防眩性の点で好ましく、ギラツキも発生しにくくなる。また、前記線分の長さが50μm以上の凸状部が存在すると、ギラツキが発生しやすい。前記線分の長さが50μm以上の凸状部が存在せず、かつ、前記粗さ平均線を越える凸状部の数が80個以上形成されており、前記Raが0.15μm以下である防眩性ハードコートフィルムであると、比較的均一な微細凹凸が多数存在しているために優れた均一散乱が可能となり、高精細パネルにおいてもギラツキが抑えられる。前記長さが20μm以下の凸状部の数は、50〜90個の範囲が好ましく、より好ましくは、60〜80個の範囲である。前記線分の長さが20μm以下の凸状部の数が多すぎると、白ボケが強くなりやすい。
【0043】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前記Raおよび前記凸状部の大きさと数で規定されるように、微細な凹凸が独立に多数あり、前記長さが50μm以上の凸状部が存在せずに、微細な凹凸が独立に所定数あり、好ましくは、前記範囲のヘイズ値で規定される内部散乱を有することで、防眩性向上とギラツキ解消とを両立させることができる。
【0044】
本発明の防眩性ハードコートフィルムを構成する防眩性ハードコート層は、例えば、前記微粒子、前記ハードコート層形成材料および溶媒を含む防眩性ハードコート層形成材料を準備し、前記防眩性ハードコート層形成材料を前記透明プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩性ハードコート層を形成することにより、製造できる。本発明における防眩性ハードコート層の製造においては、金型による転写方式や、サンドブラスト、エンボスロールなどの適宜な方式で凹凸形状を付与する方法などを、併せて用いることもできる。
【0045】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。ハードコート層形成材料組成や微粒子の種類、含有量等に応じて、本発明における防眩性ハードコート層を得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率が存在する。
【0046】
例えば、後述の実施例で使用したハードコート層形成材料につき、微粒子を5重量部添加し、固形分濃度を45重量%として、防眩性ハードコート層の厚みを約10μmとした場合には、メチルイソブチルケトン(MIBK)/メチルエチルケトン(MEK)の比率は、少なくとも1.5/1〜2.0/1(重量比)の範囲で本発明の特性を実現可能な防眩性ハードコート層が得られる。酢酸ブチル/MEKの場合は、少なくとも1.5/1〜3.0/1(重量比)の範囲で本発明の特性を実現可能な防眩性ハードコート層が得られる。後述の実施例で使用したハードコート層形成材料のように、前記(B)成分がナノ粒子である場合には、例えば、前記溶媒の種類や混合比率により、ナノ粒子および前記微粒子の分散状態に変化が起きることで、防眩性ハードコート層表面の凹凸傾向が変化することが推察される。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限ないし限定されない。例えば、後述の前記ハードコート層形成材料であると、溶媒がMEK、シクロペンタノン、酢酸エチル、アセトン等の場合には、表面に凹凸が形成されやすく、溶媒がMIBK、トルエン、酢酸ブチル、2−プロパノール、エタノール等の場合には、表面に凹凸が形成されにくい。そのため、本発明の特性を有する防眩性ハードコートフィルムを得るためには、溶媒の種類や溶媒の比率によって表面形状の制御をすることも好ましい。
【0047】
前記防眩性ハードコート層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤があげられ、好ましくは、シリコーン系レベリング剤である。前記シリコーン系レベリング剤としては、反応性シリコーンが特に好ましい。前記反応性シリコーンを添加することにより、表面に滑り性が付与され耐擦傷性が長期間にわたり持続するようになる。また、前記反応性シリコーンとしてヒドロキシル基を有するものを用いれば、後述のように反射防止層(低屈折率層)としてシロキサン成分を含有するものを、前記防眩性ハードコート層上に形成した場合、前記反射防止層と前記防眩性ハードコート層の密着性が向上する。
【0048】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂成分全体100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
【0049】
前記防眩性ハードコート層の形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0050】
前記防眩性ハードコート層形成材料には、例えば、特開2008−88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0051】
前記防眩性ハードコート層形成材料を透明プラスチックフィルム基材上に塗工する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0052】
前記防眩性ハードコート層形成材料を塗工して前記透明プラスチックフィルム基材の上に塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させる。前記硬化に先立ち、前記塗膜を乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0053】
前記防眩性ハードコート層形成材料の塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化がより十分となり、形成される防眩性ハードコート層の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm以下であれば、形成される防眩性ハードコート層の着色を防止することができる。
【0054】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前記防眩性ハードコート層の上に、反射防止層(低屈折率層)が配置される。画像表示装置に防眩性ハードコートフィルムを装着した場合、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気と防眩性ハードコート層界面での光の反射が上げられる。反射防止層は、その表面反射を低減させるものである。なお、防眩性ハードコート層および反射防止層は、透明プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。また、防眩性ハードコート層および反射防止層は、それぞれ、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0055】
本発明において、前記反射防止層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものである。前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするように反射防止層を設計することが好ましい。
【0056】
光の干渉効果に基づく前記反射防止層の設計において、その干渉効果を向上させる手段としては、例えば、前記反射防止層と前記防眩性ハードコート層の屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、二ないし五層の光学薄層(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。前記光学薄膜において、高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。
【0057】
光学薄層は多層にするほど反射率を下げることが可能であるが、多層にすることでコストがかかる。例えば、反射率0.3%程度を所望する場合は、5層程度の構成とすることが好ましい。前記防眩性ハードコート層の上に、順に第1のSiO層、第1のTiO層、第2のSiO層、第2のTiO層、第3のSiO層と5層形成する場合、厚みは、第1のSiO層は10〜40nmが好ましく、より好ましくは10〜30nm、第1のTiO層は10〜40nmが好ましく、より好ましくは10〜30nm、第2のSiO層は10〜40nmが好ましく、より好ましくは15〜35nm、第2のTiO層は70〜140nmが好ましく、より好ましくは110〜130nm、第3のSiO層は70〜90nmが好ましく、より好ましくは75〜85nmである。前記反射防止層は、トータル膜厚は170〜350nmの範囲が好ましく、より好ましくは220〜310nmの範囲である。反射防止層は、前記防眩性ハードコート層に比べて薄く、それ自体では表面の凹凸形状には影響しにくい程度の厚みである。したがって、本発明の防眩性ハードコートフィルムにおける特徴的な表面形状は、防眩性ハードコート層によって主に形成されているということができる。
【0058】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、低反射率であることが特徴の一つである。本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、次のような特性を有する。防眩性ハードコートフィルムの表面に、垂直方向から10°の角度から、前記防眩性ハードコートフィルムの最表面における光強度が1000Lxとなるように光を当てる。屈折率が1.53のハードコートフィルムの反射強度を1とした場合、本発明の防眩性ハードコートフィルム表面での反射強度比は3以下の値を得ることができる。反射強度比を3以下とした、本発明の構成の防眩性ハードコートフィルムでは「色付き」を防止することができる。この場合、反射色相x、yが、0.2≦x≦0.4、0.2≦y≦0.4が実現可能であり、「色付き」は観察されないものが得られる。また、防眩性が強すぎる場合も、「色付き」が見られることがある。したがって、その観点からも、θaは1.5以下、Raは0.15μm以下と規定される。
【0059】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、汚染物の付着防止および付着した汚染物の除去容易性の向上のために、フッ素基含有のシラン系化合物若しくはフッ素基含有の有機化合物等から形成される汚染防止層を前記反射防止層上に積層することも好ましい。
【0060】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記透明プラスチックフィルム基材および前記防眩性ハードコート層の少なくとも一方に対し表面処理を行うことが好ましい。前記透明プラスチックフィルム基材表面を表面処理すれば、前記防眩性ハードコート層または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。また、前記防眩性ハードコート層表面を表面処理すれば、前記反射防止層または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。
【0061】
以上のようにして、前記透明プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に、前記防眩性ハードコート層を形成し、さらに形成した防眩性ハードコート層の表面に前記反射防止層を形成することにより、本発明の防眩性ハードコートフィルムを製造することができる。なお、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前述の方法以外の製造方法で製造してもよい。本発明の防眩性ハードコートフィルムの硬度は、鉛筆硬度において、層の厚みにも影響されるが、例えば、2H以上の硬度を有する。
【0062】
本発明の防眩性ハードコートフィルムの一例としては、透明プラスチックフィルム基材の片方の面に、防眩性ハードコート層および反射防止層が形成されているものをあげることができる。前記防眩性ハードコート層は、微粒子を含んでおり、これによって、防眩性ハードコート層の表面が凹凸形状となっている。なお、この例では、透明プラスチックフィルム基材の片面に防眩性ハードコート層が形成されているが、本発明は、これに限定されず、透明プラスチックフィルム基材の両面に防眩性ハードコート層が形成された防眩性ハードコートフィルムであってもよい。また、この例の防眩性ハードコート層は、単層であるが、本発明は、これに制限されず、前記防眩性ハードコート層は、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0063】
前記透明プラスチックフィルム基材の一方の面に前記防眩性ハードコート層が形成されている防眩性ハードコートフィルムにおいて、カール発生を防止するために、他方の面に対し溶剤処理を行ってもよい。また、前記透明プラスチックフィルム基材の一方の面に前記防眩性ハードコート層が形成されている防眩性ハードコートフィルムにおいて、カール発生を防止するために、他方の面に透明樹脂層を形成してもよい。
【0064】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、通常、前記透明プラスチックフィルム基材側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記透明プラスチックフィルム基材表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。
【0065】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0066】
つぎに、本発明の防眩性ハードコートフィルムを積層した光学部材について、偏光板を例にして説明する。本発明の防眩性ハードコートフィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子または偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。
【0067】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。
【0068】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記透明プラスチックフィルム基材と同様のものがあげられる。
【0069】
前記、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムがあげられる。前記高分子フィルムは、前記樹脂組成物を、フィルム状に押出成型することにより製造できる。前記高分子フィルムは、位相差が小さく、光弾性係数が小さいため、偏光板等の保護フィルムに適用した場合には、歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0070】
前記透明保護フィルムは、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂製のフィルムおよびノルボルネン系樹脂製のフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの市販品としては、例えば、商品名「フジタック」(富士フイルム社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、商品名「アートン」(JSR社製)などがあげられる。前記透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度、取扱性等の作業性、薄層性等の点より、例えば、1〜500μmの範囲である。
【0071】
前記防眩性ハードコートフィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記防眩性ハードコートフィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記防眩性ハードコートフィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0072】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩性ハードコートフィルムを用いる以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0073】
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【実施例】
【0074】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。なお、下記実施例および比較例における各種特性は、下記の方法により評価または測定を行った。
【0075】
(ヘイズ値)
へイズ値の測定方法は、JIS K 7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定した。
【0076】
(平均傾斜角θaおよび算術平均表面粗さRa)
防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に、MATSUNAMI社製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)を用いて、カットオフ値0.8mmの条件で前記防眩性ハードコート層の表面形状を測定し、平均傾斜角θaおよび算術平均表面粗さRaを求めた。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記平均傾斜角θaおよび前記算術平均表面粗さRaを自動算出する。前記平均傾斜角θaおよび前記算術平均表面粗さRaは、JIS B 0601(1994年版)に基づくものである。
【0077】
(表面粗さプロファイルの粗さ平均線を越える凸状部数)
前記表面形状の測定により得られた粗さプロファイル(Fプロファイル)において、任意の4mmの直線上で前記プロファイルの粗さ平均線を越える凸状部の数を計測したものを測定値とした。図10に、前記凸状部の数の計測方法を説明する模式図を示す。計測すべき凸状部には、斜線を入れてある。凸状部の数の計測は、ピークの数ではなく、平均線を横切る部分の数を計測する。例えば、プロファイル中の1、2、4、6、8のように、前記平均線を越える部分で複数のピークを有する場合は、凸状部の数は1個と数える。図10においては、凸状部は合計10個となる。
【0078】
(表面粗さの基準線を越える凸状部数)
前記表面形状の測定により得られた粗さプロファイル(Fプロファイル)において、前記プロファイルの粗さ平均線に平行で0.1μmの高さに位置する線を基準線とした。任意の測定領域4mmの直線上で、基準線を越える凸状部のうち、凸状部を横切る基準線の線分の長さが50μm以上の凸状部の数および凸状部を横切る基準線の線分の長さが20μm以下である凸状部の数を計測したものを測定値とした。図11に、前記凸状部の数の計測方法を説明する模式図を示す。計測すべき凸状部には、斜線を入れてある。凸状部の数の計測は、ピークの数ではなく、前記基準線を横切る部分の数を計測する。例えば、プロファイル中の3、9のように、前記基準線を越える部分で複数のピークを有する場合は、凸状部の数は1個と数える。図11においては、50μm以上の凸状部の数はプロファイル中のピーク3の1個、20μm以下である凸状部の数はプロファイル中のピーク1、4、5、6、8の合計5個となる。
【0079】
(反射強度比)
(1)防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚み2.0mm、50mm×50mm)を膜厚約20μmのアクリル系粘着材を用いて貼りつけ、裏面反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)前記サンプルに対して、受光機(MINOLTA製、SPECTRORADIOMETER CS1000A)を50cm上方に平行になるように設定し、リング照明(直径37mm:MORITEX製 MHF−G150LR)を高さ105mmに位置に設定した。この設定位置でのリング照明光からパネルに照射される光の照射角度を角度10°とした。
(3)照度計(TOPCOM製、ILLUMINANCE METER)を使用し、照度1000Lxになるように調節した。
(4)防眩性ハードコートフィルム付き黒板の中央部分におけるCIE1931表色系(2度視野XYZ表色系)のY値および色度座標を測定し、Y値を反射強度とした。
(5)基準値として、反射防止層を設けなかったこと以外は下記比較例5と同様にして作製したハードコートフィルムを用いて、前記(1)〜(4)の方法にて反射強度を測定し、その値を100(実測値:59)として規格化した。なお、前記基準ハードコートフィルムの表面粗さに関する特性値としては、Ra値0.002μm、θa値0.05°であった。
(6)前記基準ハードコートフィルムの反射強度を1とした場合のサンプルの反射強度の比を算出し、反射強度比とした。
【0080】
(反射色相評価)
前記反射強度比の測定において、(4)で得られた色度座標(x,y)を、反射色相評価に使用した。
【0081】
(防眩性評価)
(1)防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚み2.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて上記で作製したサンプルの防眩性を目視にて判定した。
判定基準
AA:顔の映り込みがなく、視認性への影響がない。
A :顔の映り込みはあるが、実用上問題がない。
B :顔の映り込みがあり、少し気になる。
C :くっきり顔が映り込んでおり、かなり気になる。
【0082】
(ギラツキ評価)
防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面を、厚み1.1mmのガラス板に粘着剤で貼り合わせて測定サンプルとした。このサンプルを、バックライト(ハクバ写真産業(株)製、商品名「ライトビュワー5700」)上に置かれたマスクパターン上にセットした。前記マスクパターンとして、開口部146μm×47μm、縦線幅19μm、横線幅23μmの格子状パターン(150ppi)を用いた。前記マスクパターンから前記防眩性ハードコート層までの距離は、1.1mmとし、前記バックライトから前記マスクパターンまでの距離は1.5mmとした。そして、前記防眩性ハードコートフィルムのギラツキを下記判定基準で、目視により判定した。
判定基準
AA:ギラツキがほとんどない。
A :ややギラツキはあるが、気にならないレベル。
B :ギラツキが強い。
【0083】
(透明プラスチックフィルム基材およびハードコート層の屈折率)
透明プラスチックフィルム基材およびハードコート層の屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計(商品名:DR−M2/1550)を用い、中間液としてモノブロモナフタレンを選択し、前記フィルム基材および前記ハードコート層の測定面に対して測定光を入射させるようにして、前記装置に示される規定の測定方法により測定を行った。
【0084】
(微粒子の屈折率)
微粒子をスライドガラスの上に載せ、屈折率標準液を前記微粒子上に滴下し、カバーガラスを被せ試料を作製した。その試料を顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が屈折率標準液との界面で最も見え難くなる屈折率標準液の屈折率を微粒子の屈折率とした。
【0085】
(微粒子の重量平均粒径)
コールターカウント法により、微粒子の重量平均粒径を測定した。具体的には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出した。
【0086】
(防眩性ハードコート層の厚み)
(株)ミツトヨ製のマイクロゲージ式厚み計を用い、防眩性ハードコートフィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、透明プラスチックフィルム基材の厚みを差し引くことにより、防眩性ハードコート層の厚みを算出した。
【0087】
(実施例1)
無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなるナノシリカ粒子(前記(B)成分)を分散させた、前記(A)成分を含むハードコート層形成材料(JSR(株)製、商品名「オプスターZ7540」、固形分:56重量%、溶媒:酢酸ブチル/メチルエチルケトン(MEK)=76/24(重量比))を準備した。前記ハードコート層形成材料は、(A)成分:ジペンタエリスリトールおよびイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン、(B)成分:表面を有機分子により修飾したシリカ微粒子(重量平均粒径100nm以下)を、(A)成分合計:(B)成分=2:3の重量比で含有する。前記ハードコート層形成材料の硬化皮膜の屈折率は、1.485であった。前記ハードコート層形成材料の樹脂固形分100重量部あたり、前記微粒子としてアクリルとスチレンの架橋粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒径:5.5μm、屈折率:1.515)を6重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC−4100」)を0.1重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)を0.5重量部混合した。この混合物を、固形分濃度が45重量%、酢酸ブチル/MEK比率が2/1(重量比)となるように希釈して、防眩性ハードコート層形成材料を調製した。
【0088】
透明プラスチックフィルム基材として、トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製、商品名「TD80UL」、厚さ:80μm、屈折率:1.48)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、コンマコータを用いて塗布して塗膜を形成した。ついで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み9μmの防眩性ハードコート層を形成した。
【0089】
形成した防眩性ハードコート層の上に、スパッタリングにより、順にSiO層(厚み20nm)、TiO層(厚み20nm)、SiO層(厚み25nm)、TiO層(厚み120nm)、SiO層(厚み80nm)と5層構成の反射防止層を形成し、実施例1の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0090】
(実施例2)
前記微粒子としてシリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「トスパール 145」、重量平均粒径:4.5μm、屈折率:1.425)を前記ハードコート層形成材料の樹脂固形分100重量部あたり5重量部混合した以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例2の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0091】
(実施例3)
実施例1と同じアクリルとスチレンの架橋粒子を、実施例1と同じハードコート層形成材料の樹脂固形分100重量部あたり10重量部混合したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例3の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0092】
(比較例1)
紫外線硬化型樹脂と微粒子とからなる防眩性ハードコート層の形成材料を、前記透明プラスチックフィルム基材の片面に塗布し、厚み5μmの防眩性ハードコート層を形成した以外は、実施例1と同様な方法にて、比較例1の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0093】
(比較例2)
ハードコート層形成材料として、イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびイソホロンジイソシアネートポリウレタンからなる紫外線硬化型樹脂(DIC(株)製、商品名「ユニディック 17−806」、固形分:80重量%、溶媒:酢酸ブチル)を準備した。前記ハードコート層形成材料の硬化皮膜の屈折率は、1.53であった。前記ハードコート層形成材料の樹脂固形分100重量部あたり、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「メガファックF−470N」)0.5重量部、重量平均粒径4.2μmの不定形シリカ粒子(富士シリシア化学(株)製、商品名「サイリシア436」、屈折率:1.46)4.3重量部、および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)5重量部を、固形分濃度が44重量%になるようにトルエンに溶解ないし分散させて、防眩性ハードコート層形成材料を調製した。
【0094】
前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、バーコーターを用いて塗布して塗膜を形成した。ついで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み5μmの防眩性ハードコート層を形成した。形成した防眩性ハードコート層の上に、実施例1と同様の反射防止層を形成し、比較例2の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0095】
(比較例3)
比較例2と同じハードコート層形成材料を準備した。前記ハードコート層形成材料の樹脂固形分100重量部あたり、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「メガファックF−470N」)0.5重量部、重量平均粒径2.5μmの不定形シリカ粒子(富士シリシア化学(株)製、商品名「サイロホービック702」、屈折率:1.46)8重量部、重量平均粒径1.5μmの不定形シリカ粒子(富士シリシア化学(株)製、商品名「サイロホービック100」、屈折率:1.46)7重量部、および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)5重量部を、固形分濃度が38重量%になるように混合溶媒(トルエン:酢酸ブチル=85:15(重量比))に溶解ないし分散させて、防眩性ハードコート層形成材料を調製した。
【0096】
前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、コンマコータを用いて塗布して塗膜を形成した。ついで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み4μmの防眩性ハードコート層を形成した。形成した防眩性ハードコート層の上に、実施例1と同様の反射防止層を形成し、比較例3の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0097】
(比較例4)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂100重量部、重量平均粒径が1.5μmの不定形シリカ粒子(富士シリシア化学(株)製、商品名「サイロホービック100」、屈折率:1.46)11.6重量部、レベリング剤(商品名;メガファックF470N、大日本インキ化学工業(株)製)0.5重量部、合成スメクタイト2.5重量部、光重合開始剤(商品名;イルガキュア907、チバ・スペシャリティケミカルズ社製)5重量部を、酢酸ブチルとトルエンの混合溶媒(酢酸ブチル:トルエン=13:87、重量比)により固形分濃度が42重量%となるように希釈して、ハードコート層の形成材料を調製した。
【0098】
次に、ハードコート層の形成材料を、前記透明プラスチックフィルム基材上に、バーコーターにて塗布して塗膜を形成し、この塗膜を100℃で1分間加熱して乾燥した。更に、塗膜にメタルハライドランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、硬化処理して厚み5μmの防眩性ハードコート層を形成した。形成した防眩性ハードコート層の上に、実施例1と同様の反射防止層を形成し、比較例4の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0099】
(比較例5)
比較例2において、不定形シリカ粒子を加えない以外は、比較例2と同様な方法にて、比較例5の低反射ハードコートフィルムを得た。
【0100】
このようにして得られた実施例1〜3および比較例1〜4の各防眩性ハードコートフィルム、ならびに比較例5の低反射ハードコートフィルムについて、各種特性を測定若しくは評価した。その結果を、図1〜図8および下記表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
前記表1に示すように、実施例においては、反射光強度、色付き、防眩性およびギラツキのすべてについて、良好な結果が得られた。一般に、防眩性ハードコート層に低反射処理を実施する場合、防眩層に起因する拡散光の色付くために、より全体が色付いてしまいやすいが、これらの実施例では、光の当たっている部分のみに防眩性があり、その他の部分では黒く見えるという結果となり、良好な特性を示した。一方、比較例においては、反射光強度、色付き、防眩性およびギラツキの一部については良好な結果が得られてはいるものの、すべての特性について良好なものは得られなかった。すなわち、比較例1〜4においては、前記線分の長さが50μm以上の凸状部を有しており、反射色相yが0.2≦y≦0.4の範囲外であるため、防眩性は強いものの色付きが見られた。比較例2〜4は、さらにθaが1.5を超えており、ギラツキ特性に影響を与えているものと推察できる。また、反射強度比も3を超えている。比較例5においては、θaが0.5未満である。Raも0μm、前記線分の長さが20μm以下の凸状部の数も0であり、防眩性がない。本発明において規定したθa、Raおよび凸状部の数を測定することで、目視評価をすることなく反射光強度、色付き、防眩性およびギラツキ等の視認性の傾向を把握することも可能である。
【0103】
図1〜図8は前記実施例および比較例で得られた防眩性ハードコートフィルムまたは低反射ハードコートフィルムの断面表面形状のプロファイルである。前記実施例で得られた防眩性ハードコートフィルムにおいては、前記比較例で得られた防眩性ハードコートフィルムに比べて、全体に荒れているのではなく、微細な凹凸がまばらにあり、さらに局所的な大きい(前記線分の長さが50μm以上の)凸状部が存在しない状態である。前記実施例のような表面凹凸形状の防眩性ハードコートフィルムは、前記θa、前記Raならびに前記凸状部の大きさおよび数が規定した範囲にあるものであり、防眩性ハードコートフィルムとして良好に用いることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の防眩性ハードコートフィルムによると、低反射化を行った場合の「色付き」を抑えつつ優れた防眩性を有するとともに、ギラツキが抑えられ、さらに、低へイズ値化も可能であることから、従来の低反射防眩性ハードコートフィルムと比較して、視認性を改善することができる。また、「色付き」を防止することで、画像表示装置の黒表示時における黒の濃さの向上をすることができる。したがって、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、偏光板等の光学部材、液晶パネルおよびLCD等の画像表示装置に好適に使用でき、その用途は制限されず、広い分野に適用可能である。さらに、本発明において規定したθa、Ra、凸状部の大きさと数を測定することで、目視評価をすることなく反射光強度、色付き、防眩性およびギラツキ等の視認性の傾向を把握することも可能であり、防眩性フィルムの評価の指標としても有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に、防眩性ハードコート層と反射防止層とを有している下記反射強度比が3以下の防眩性ハードコートフィルムであって、
防眩性ハードコート層は微粒子を含有しており、
前記反射防止層表面の凹凸形状において、平均傾斜角度θaが0.5≦θa≦1.5の範囲であるとともに、
下記算術平均表面粗さRaが0.05〜0.15μmの範囲であり、さらに、
前記反射防止層表面の任意な箇所の長さ4mmにおいて、表面粗さプロファイルの粗さ平均線を越える凸状部を80個以上有しており、かつ、
前記平均線に平行で0.1μmの高さに位置する基準線を越える凸状部を有しており、前記基準線の前記凸状部を横切る部分の線分の長さが50μm以上の凸状部を含んでいないことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
反射強度比:垂直方向から10°の角度で、防眩性ハードコートフィルム最表面に
おける光強度が1000Lxとなるように光を当てたときの反射強度の、
屈折率が1.53のハードコートフィルムの反射強度を1とした場合の比の値
Ra:JIS B 0601(1994年版)に規定する算術平均表面粗さ(μm)
【請求項2】
前記反射防止層が、170〜350nmの範囲内の厚みである、請求項1記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項3】
ヘイズ値が4〜30の範囲である、請求項1または2記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記防眩性ハードコート層が、前記微粒子と、下記の(A)成分および(B)成分を含むハードコート層形成材料とを用いて形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
(A)成分:アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物
(B)成分:無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなる、重量平均粒径が200nm以下の粒子
【請求項5】
前記(B)成分において、無機酸化物粒子が、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の粒子を含む、請求項4記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層形成材料において、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が、100〜200重量部の範囲で含まれている、請求項4または5記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層形成材料と前記微粒子との屈折率の差が0.01〜0.04の範囲であり、前記微粒子として、重量平均粒径が0.5〜8μmの範囲である球状もしくは不定形の微粒子を1種類以上含み、前記ハードコート層形成材料100重量部に対して、前記微粒子が5〜20重量部の範囲で含まれている、請求項1から6のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項8】
前記防眩性ハードコート層の厚みが、前記微粒子の重量平均粒径の1.2〜3倍の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムおよび偏光子を有することを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムを備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項9記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−81219(P2011−81219A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233940(P2009−233940)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】