説明

防眩性ハードコートフィルム、偏光板及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】 防眩性及びディスプレイの表示コントラストに優れ、欠点の少ない防眩性ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の防眩性ハードコートフィルム4は、透明フィルム基材1の少なくとも片面に、微粒子3を含有する防眩性ハードコート層2を有する防眩性ハードコートフィルム4であって、前記防眩性ハードコート層2の微粒子により形成される凹凸形状によるθaが0.40°以上1.50°以下の範囲であり、前記防眩性ハードコート層2の膜厚が15μm以上35μm以下であり、前記微粒子3の平均粒径が防眩性ハードコート層2の膜厚の30%以上50%以下であり、平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合を一定量以下に制御されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フイルム基材の少なくとも片面に防眩性ハードコート層を少なくとも設けた防眩性ハードコートフイルムに関する。更に、本発明の防眩性ハードコートフイルムは、偏光板や画像表示装置、特にCRT(Cathode−ray tube)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)及びELディスプレイ(ELD)等に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
各種画像表示装置の一つにLCDがあるが、LCDの高視野角化、高精細化、高速応答性、色再現性などに関する技術革新に伴い、LCDを利用するアプリケーションもノートパソコンやモニターからテレビへと変化しつつある。LCDの基本的な構成は、二枚の透明電極を有する平板状ガラスの間に一定間隔のギャップをスペーサーにより設け、そこに、液晶材料の注入を行い、封止し、その後に平板状ガラスの表裏面に偏光板を貼付することで成り立っている。従来は、2枚の透明なフィルム基材に狭持された偏光板の表面にサンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理してフィルム表面に微細凹凸構造を付与したり、別途透明なフィルム基材表面に設けられたハードコート層に微粒子を分散含有させて微細凹凸構造を付与する方法などで防眩処理を行ってきた。
【0003】
透明なフィルム基材に防眩処理を行った防眩性ハードコートフィルムは、通常、熱硬化型樹脂、或いは紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂に粒径が数μmの球形又は不定形の無機又は有機微粒子を分散し、フィルム基材上に2〜10μm程度の薄い塗膜を形成して得られるが、防眩性を得ることとディスプレイの表示コントラストはトレードオフの関係を有しているのが一般的である。
【0004】
LCD等のフラットパネルディスプレイが家庭用のテレビに移行することにより、高視角化、高速応答化、高精細化等の表示品位の向上と共に室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に写りこむことを防止する防眩性の向上と明所での表示コントラストの更なる向上、つまり黒表示時における黒の濃さの向上が要求されている。
【0005】
一般的に、前記防眩性と明所での表示コントラストはトレードオフの関係を有しているので、表示コントラストを重要視するアプリケーションに関しては、防眩性を犠牲にして平滑な表面形状のハードコート層をディスプレイの最表面に配置し、また、防眩性を重要視するアプリケーションに関しては、表面に凹凸形状を有するハードコート層(防眩層)をディスプレイの最表面に配置することが一般的に行われている。明所での表示コントラストの低下する原因としては、防眩層表面又は内部での光散乱と外光の表面での反射による影響が想定される。そこで、少しでも明所での表示コントラストを向上させるために、前記外光の表面での反射による影響を低減させるために反射防止層が適宜最表面に設けられている。
【0006】
単純に熱又は電離放射線により硬化する樹脂に適宜微粒子を選択し防眩性ハードコート層を形成したとしても防眩性とディスプレイの表示コントラストのトレードオフの関係を逸脱することはできず、所望の防眩特性を得るために微粒子の添加量を増加すると表示コントラストが低下してしまうのが一般的である。そこで、防眩性ハードコートフィルムにおける表示コントラストの低下に関する課題を解決する方法として、特許文献1の提案がなされている。
【0007】
また、防眩性ハードコート層に添加する微粒子の平均粒径、粒度分布を制御した防眩性反射防止フィルムに関する提案において、粗大粒子の混入量を制御することにより、ブツ状の面状故障を防止する方法として、特許文献2の提案がなされている。
【0008】
特許文献1には、透明フィルム基材上に、少なくとも1層の防眩性ハードコート層を有する防眩性反射防止ハードコートフィルムに於いて、少なくとも1層の防眩性ハードコート層に、少なくとも、該防眩性ハードコート層の層厚に対し60%以上95%未満の平均粒径を有する透光性粒子を少なくとも1種と、同層厚に対し105%以上140%未満である平均粒径を有する透光性粒子を少なくとも1種と含有することを特徴とする防眩性反射防止フィルムに関する提案がなされているが、ハードコート層の膜厚に対する透光性微粒子の平均粒径の規定のみでは防眩性と表示コントラスト特性を同時に抑制することは困難である。
【0009】
特許文献2には、透明支持体、少なくとも1層の低屈折率層及び該透明支持体と低屈折率層の間に防眩性ハードコート層を有する防眩性反射防止フィルムにおいて、該防眩性ハードコート層が、粒度分布に関する下記条件(i)〜(iii)を満たす樹脂粒子を含有することを特徴とする防眩性反射防止フィルムに関する提案がなされているが、平均粒径が1.7〜3.5μmの範囲では、防眩性と表示コントラスト特性を同時に抑制することは困難である。
〔粒度分布に関する条件〕
(i)コールター法で測定した個数平均粒径が1.7〜3.5μmの範囲にあること。
(ii)粒径の標準偏差が該個数平均粒径の25%以下であること。
(iii)粒径が該個数平均粒径より3.0μm以上大きな粗大粒子、または該個数平均粒径
の2.5倍以上大きな粗大粒子を含有する割合が5個/1×108個未満であること。
【特許文献1】特開2003−248110
【特許文献2】特開2002−040204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
防眩性を維持しつつディスプレイの表示コントラストの低下を抑制する為には、適宜の微粒子により形成される凹凸形状の平均傾斜角θaが0.40°以上1.50°以下である表面形状を形成することが必要であることを見出した。しかし、平均傾斜角θaが0.40°以上1.50°以下の表面形状は、非常に滑らかな凹凸形状であり、適宜選択する微粒子の平均粒径、粒度分布に制約が生じ、更に、微量含有している粗大粒子による凸形状が欠点となり、防眩性ハードコートフィルムの歩留まりを大幅に低減させる原因となっている。本発明の目的は、透明フィルム基材に防眩性ハードコート層を形成した場合に、防眩特性と表示コントラストのバランスを確保しつつ、粗大粒子による欠点の少ない防眩性ハードコートフィルムを提供することである。また、当該防眩性ハードコートフィルムを用いた偏光板、更には当該フィルム又は偏光板を搭載した画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透明フィルム基材の少なくとも片面に、微粒子と熱又は電離放射線により硬化する樹脂とを主成分とする防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、前記防眩性ハードコート層の膜厚が15μm以上35μm以下であり、且つ、前記微粒子の平均粒径が防眩性ハードコート層の膜厚の30%以上50%以下及び平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が50個/100万個以下であり、且つ、粒子により形成される凹凸形状によるθaが0.40°以上1.50°以下であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムにより、上記目的を達成することができる。
【0012】
更に、熱又は電離放射線により硬化する樹脂が下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことを特徴とする防眩性ハードコートフィルムにより、より硬度が高く、カールや割れを抑制する効果がある。
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート
(B)成分:ポリオール(メタ)アクリレート
(C)成分:下記(C1)から形成されるポリマー若しくはコポリマー又は前記ポリマーとコポリマーの混合ポリマー
(C1):水酸基及びアクリロイル基の少なくとも一方の基を有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート
更にまた、本発明は、微粒子が球形であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムにより、容易に平均傾斜角θaを所望の範囲にすることができる。
【0013】
また、前記防眩性ハードコートフィルムのハードコート層上に少なくとも1層の反射防止層が設けられていることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムにより、更に表示コントラストを向上させることが可能である。
【0014】
更に、前記反射防止層に中空で球状の酸化ケイ素超微粒子が含有されていることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムにより容易に反射防止層の屈折率を低減させることができる。
【0015】
更にまた、防眩性ハードコートフィルムを偏光子又は偏光板の片面又は両面に積層したことを特徴とする偏光板として利用することが好ましい。
【0016】
また、防眩性ハードコートフィルム又は偏光板を搭載した画像表示装置として利用することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、微粒子としてその防眩性ハードコート層の膜厚の30%以上50%以下のものを選択することにより、防眩層表面の凹凸形状の平均傾斜角θaを0.40°以上1.50°以下に容易に設計することができ、防眩層表面に非常に滑らかな凹凸形状を形成することができる。平均傾斜角θaを0.40°以上1.50°以下にすることで、防眩特性を維持しつつ、明所での表示コントラストの低下を効果的に抑制することができ、従来公知の防眩特性と表示コントラストのトレードオフの関係を逸脱したものである。更に、微粒子としてその平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が50個/100万個以下の微粒子を用いることにより、平均傾斜角θaを0.40°以上1.50°以下に設計することで顕著に現れるようになった粗大粒子により形成される凸状の点欠点を効果的に抑制したハードコート性を有する防眩性ハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の防眩性ハードコートフィルム及びそれを用いた偏光板の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明の防眩性ハードコートフィルム4は、図1に示したように透明フィルム基材1の片面に防眩性ハードコート層2を有する構成である。
【0020】
前記透明フィルム基材1は、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下)であれば特に制限はない。具体的には、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物などの透明ポリマーからなるフィルムなども挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本実施の形態に係わる防眩性ハードコートフィルム4を保護フィルムとして偏光板に使用する場合には、透明フィルム基材1としては、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィンなどが好適である。また、透明フィルム基材1は、後述の偏光子自体であってもよい。この様な構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、偏光板を一層薄層化することができる。尚、透明フィルム基材1が偏光子である場合には、防眩性ハードコート層2が従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、防眩性ハードコートフィルムとしては、液晶セル表面に装着されるカバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0021】
透明フィルム基材1の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取り扱い性などの作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。更に、透明基材フィルム1の屈折率は、特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
【0022】
前記防眩性ハードコート層2は、微粒子と熱又は電離放射線により硬化する各種モノマー、オリゴマーを硬化させて得ることができる。加工速度の早さ、透明フィルム基材への熱のダメージの少なさから、特に電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。前記、モノマー、オリゴマーとしては、アクリル系、エポキシ系、メラニン系、シリコン系等、その硬化物が透明であるものが使用される。好ましい電離放射線硬化型樹脂としては、下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むものである。
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート
(B)成分:ポリオール(メタ)アクリレート
(C)成分:下記(C1)から形成されるポリマー若しくはコポリマー又は前記ポリマーとコポリマーの混合ポリマー
(C1):水酸基及びアクリロイル基の少なくとも一方の基を有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、ポリオール、ジイソシアネートを構成成分として含有するものが用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルとポリオールから、水酸基を少なくとも1つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを作成し、これをジイソシアネートと反応させることによって製造したものが用いられる。(メタ)アクリル酸はアクリル酸及び/又はメタクリル酸であり、本発明において(メタ)は同様の意味である。これら各構成成分は、1種でもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0023】
(メタ)アクリル酸のエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記ポリオールは、水酸基を少なくとも2つ有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等が挙げられる。
【0025】
前記ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種のジイソシアネート類を使用することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルフェキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等,更にはこれらの水添物等があげられる。
【0026】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の添加量は、少なすぎると、得られる防眩性ハードコート層の柔軟性や密着性が低くなり、多すぎると、硬化後の防眩性ハードコート層の硬度が低下するため、熱又は電離放射線により硬化する樹脂の全樹脂成分に対しウレタン(メタ)アクリレート(A)は15重量%〜55重量%が好ましく、さらに好ましくは25重量%〜45重量%である。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の配合量を熱又は電離放射線により硬化する樹脂の全樹脂成分に対し55重量%を超える配合にするとハードコート性能が低下して好ましくない場合がある。また、15重量%未満の配合では柔軟性や密着性が向上せず、好ましくない場合がある。
【0027】
前記ポリオール(メタ)アクリレート(B)としては、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
ポリオール(メタ)アクリレート(B)は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)に対し、70重量%〜180重量%の割合で配合することが好ましく、100重量%〜150重量%の割合であることがより好ましい。ポリオール(メタ)アクリレート(B)の配合量をウレタン(メタ)アクリレート(A)に対し、180重量%を超える割合にすると硬化収縮が大きくなり、その結果、フィルムのカールが大きくなったり、屈曲性が低下して好ましくない場合がある。また、70重量%未満の割合ではハードコート性が低下して好ましくない場合がある。
【0029】
前記(C)成分において、アルキル基は、特に制限されず、例えば、炭素数1〜10のアルキル基であって、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。前記(C)成分としては、例えば、下記一般式(1)の繰り返し単位を含むポリマー、コポリマー若しくは前記ポリマー及びコポリマーの混合物が挙げられる。例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシ−3ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジアクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーから形成されたポリマー、コポリマー若しくは前記ポリマー及び前記コポリマーの混合物が挙げられる。
【0030】
【化1】


前記式(1)において、R1は、−H若しくは−CH3であり、R2は、CH2CH2OX若しくは下記一般式(2)で表わされる基である。
【0031】
【化2】


前記Xは、−H若しくは下記一般式(3)で表わされるアクリロイル基であり、前記Xは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
【化3】


前記(C)成分の配合量としては、ウレタン(メタ)アクリレート(A)に対し、25重量%〜110重量%の割合で配合することが好ましく、45重量%〜85重量%の割合であることがより好ましい。配合量が110重量%を超える割合にすると、塗工性が低下し、好ましくない場合がある。また、25重量%未満の割合では、カールの発生が著しく増大し好ましくない場合がある。
【0033】
尚、本発明においては、この(C)成分を含有することにより防眩性ハードコート層2の硬化収縮を抑制し、その結果カールの発生を防止するものである。防眩性ハードコートフィルム等の製造上の観点からは、カールの発生を少なくとも30mm以内に制御するのが好ましく、その範囲内にカールの発生を抑制することにより作業性及び生産効率を一層向上させることができる。
【0034】
前記防眩性ハードコート層2に含まれている微粒子3は、無機化合物の微粒子、有機樹脂の微粒子等が挙げられる。微粒子の屈折率としては、前記防眩性ハードコート層2の屈折率との関係で適宜選択する必要があるが、1.40〜1.70の範囲で適宜選択を行うことが好ましい。前記微粒子の具体的な例としては、無機化合物の微粒子としては、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化スズ粒子、酸化インジウム粒子等が、有機樹脂の微粒子としては、アクリル樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、アクリル-スチレン樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。中でも上記の微粒子と熱又は電離放射線により硬化する樹脂の界面に生じる光の散乱をできるだけ小さくするには、微粒子と熱又は電離放射線により硬化する樹脂の屈折率差を小さくする必要がある。熱又は電離放射線により硬化する樹脂の屈折率は、一般的に1.5〜1.6であり、そのため、その屈折率が近似したアクリル樹脂粒子や酸化ケイ素粒子が好ましく用いられる。熱又は電離放射線により硬化する樹脂の硬化後の屈折率に対する微粒子の屈折率差は、0.05未満であることがより好ましい。屈折率差が0.05以上の場合は、光の散乱が強くなり、表示内容がぼやけるといった不具合が生じる場合がある。
【0035】
防眩性ハードコート層2の平均傾斜角θaは、0.40°以上1.50°以下であることが必要である。θaは、0.4°未満であると、十分な防眩性を発揮することができず、外光等の写り込みが生じるという不具合がある。その一方、θaが1.5°を越えると、ヘイズ値が増大するという不具合がある。前記範囲内であると、防眩性ハードコート層2の防眩効果を向上させることができ、外光等の写り込みを好適に防止することができる。
【0036】
本発明の微粒子3の平均粒径は、4.5μm〜17.5μmの範囲のものを好適に用いることができる。平均粒径が4.5μm未満の微粒子にて防眩層を形成すると、近似したθa値を有する表面形状であっても理由は明確ではないが、明所での表示コントラストが低下することが判明した。平均粒径が17.5μmを超える微粒子にて防眩層を形成すると、防眩性ハードコート層の厚みに対する微粒子の大きさが比較的大きくなるので、防眩性ハードコート層形成時において、微粒子の層内部への埋没の程度の制御が困難であり、微粒子の重なり合い等により防眩層表面に微粒子が突出した突起状の欠点が発生する可能性があるので好ましくない。
【0037】
本発明において、前記平均傾斜角θaは、下記数式(1)で定義される値である。前記平均傾斜角は、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
【0038】
θa=tan-1Δa (1)
前記数式(1)において、Δaは、下記数式(2)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形広域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。図2に、前記粗さ曲線、高さhおよび基準線Lの一例を示す。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (2)
本発明の微粒子3の粒度分布は、平均粒径の標準偏差が20%以下のものを好適に用いることができる。平均粒径の標準偏差が20%以下の比較的シャープな粒度分布の微粒子を用いることで、防眩性ハードコート層表面における光の散乱の程度を制御することが可能となり、防眩性を有しつつ明所での表示コントラストの低減を抑制することができる。平均粒径の標準偏差が20%を越える粒度分布を有する微粒子を用いると、防眩性ハードコート層表面での散乱が強くなり、優れた防眩特性を発揮するものの、表面散乱により防眩性ハードコート層表面が白っぽくなり表示コントラストが低下する可能性がある。
【0039】
本発明の微粒子3として、平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が50個/100万個以下の微粒子を用いる必要がある。これは、防眩層表面の平均傾斜角θaを0.40°以上1.50°以下に設計することで、主に粗大粒子により形成される凸状の点欠点が顕著に現れるようになったためである。平均粒径より2倍以上大きな粗大粒子が、50個/100万個を超える場合、ハードコート層の厚みを平均粒径よりも十分に厚くした場合においても、一定割合の粗大粒子はハードコート層内部に埋没することなく、突起状の点状欠点となり外観品位を低下させてしまう結果となり、好ましくない。
【0040】
微粒子の平均粒径を防眩性ハードコート層の膜厚の30%以上50%以下にすることにより微粒子の重なり合い等により防眩層表面に微粒子が突出した突起状の欠点が発生するのを効果的に抑制することができる。平均粒径より2倍以上大きな粒子が多数存在している微粒子を用いて防眩層を形成した場合、その粗大粒子の一部が突起状の欠点となることが判ったが、平均粒径より2倍未満の粒子であっても微粒子の平均粒径が防眩性ハードコート層の膜厚の50%を超える場合は、微粒子の重なり合い等により防眩層表面の欠点の個数が増加して好ましくない。微粒子の平均粒径を防眩性ハードコート層の膜厚の30%以上45%以下にすることにより更に効果的に抑制することができる。より好ましくは、30%以上40%以下である。
【0041】
防眩層表面の欠点の個数としては、12個/m2以下であることが好ましい。更に好ましいのは、5個/m2以下である。防眩層表面の欠点の個数が、12個/m2を超えると、欠点の発生密度にもよるが、ディスプレーの対角12インチ以上の防眩性ハードコートフィルムとして適用する場合、極端に歩留まりが低下するため好ましくない。
【0042】
微粒子3の粒度分布や粗大粒子の存在割合を制御する方法としては、篩い機や風力分級機を用いることができる。粒度分布や粗大粒子の存在割合を制御した微粒子の収率の点より、篩い機が好ましく用いられる。例えば、篩い機としては、興和工業所製のKFSRタイプを用い、平均粒径8μmの微粒子の粗大粒子の存在割合を制御する場合は、篩い網目15μm、超音波処理条件を水平振幅1.8mm、垂直振幅1.5mmの条件で処理を行うことが好ましい。また、篩い機や風力分級機以外にも、微粒子を実際に塗工を行う際に使用する有機溶剤に適宜分散し、循環ポンプ及びフィルターを用い数時間循環させることにより粗大粒子を濾過することが可能である。例えば、使用するフィルターとしては、濾過精度勾配タイプがゲル状物質の補捉・ロングライフ化の点より好ましい。
【0043】
アスペクト比が1.5以下の球形粒子を用いることが好ましい。より好ましくは、真球形に近いアスペクト比が1.05以下の微粒子を用いることが好ましい。アスペクト比が1.5を超える球形の粒子や多角形の粒子を用いた場合、微粒子により形成される凹凸形状のθaの制御が困難となる可能性がある。
【0044】
前記微粒子3の配合量としては特に限定されず、適宜設定し得る。具体的には、熱又は電離放射線により硬化する樹脂100重量部に対して2〜70重量部であることが好適であり、4〜50重量部であることがより好適であり、15〜40重量部であることが更に好ましい。
【0045】
前記防眩性ハードコート層の厚みは、15〜35μmにすることが好ましく、より好ましくは、15〜30μmである。厚みの下限値を15μmとしても、防眩性ハードコート層2はポリオール(メタ)アクリレートを含有するので、硬度を一定以上(例えば、鉛筆硬度で4H以上)に維持することができる。また、硬度を一層大きくする為に、厚みの上限値を35μmとしても防眩性ハードコート層2は、ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は(C)成分を含有することで、カールや割れ等の発生を十分に防止することができる。尚、厚みが15μm未満の場合、防眩性ハードコート層の硬度が低下する場合がある。その一方、厚みが35μmを越える場合、防眩性ハードコート層自体にクラックが発生したり、防眩性ハードコート層の硬化収縮により防眩性ハードコートフィルムがハードコート面側にカールし、実用上問題となる場合がある。
【0046】
本発明の防眩性ハードコート層2を形成するには、熱又は電離放射線により硬化する樹脂、微粒子及び所望により希釈溶媒を混合した組成物を透明フィルム基材上に塗工し、乾燥、硬化することにより得ることができる。前記希釈溶媒として特に限定されず、種々のものを採用することができる。具体的には、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酢酸エチルを全希釈溶媒に対し20重量%以上用いることが好ましく、より好ましくは25%以上、特に好ましい範囲は、30重量%〜70重量%である。これにより、透明フィルム基材1としてトリアセチルセルロースを用いる場合には、特に密着性に優れた防眩性ハードコート層を形成することが可能になる。酢酸エチルの含有量が全希釈溶媒に対し70重量%を超えると、揮発速度が速いため、塗工ムラや乾燥ムラが生じやすくなり、20重量%未満の場合は、基材との密着性が低下することとなり好ましくない場合がある。
【0047】
防眩性ハードコート層2には、各種レベリング剤を添加することができる。レベリング剤としては、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を適宜使用することができるが、より好ましくはシリコーン系のレベリング剤であり。シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。これらシリコーン系のレベリング剤の内、反応性シリコーンが特に好ましい。反応性シリコーンを添加することにより、表面に滑り性が付与され耐擦傷性が持続する。更に、低屈折率層としてシロキサン成分を含有するものを用いた場合、反応性シリコーンとしてヒドロキシル基を有するものを用いると密着性が向上する。
【0048】
レベリング剤の配合量は、熱又は電離放射線により硬化する樹脂の全樹脂成分100重量部に対して、5重量部以下、更には0.01〜5重量部の範囲とするのが好ましい。
【0049】
前記熱又は電離放射線により硬化する樹脂には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等を使用することができる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0050】
本実施の形態に係る電離放射線により硬化する樹脂には、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N',N'-テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他チオキサント系化合物等が使用できる。
【0051】
本発明の防眩性ハードコート層2を形成するには、熱又は電離放射線により硬化する樹脂と微粒子を少なくとも含む組成物を透明フィルム基材上に塗工し、乾燥、硬化する。上記組成物を透明フィルム基材上に塗工する方法としては、公知のファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート等の塗工法を用いることができる。
【0052】
前記の硬化に用いられるエネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素などの線源が使用される。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm2 が好ましい。照射量が、50mJ/cm2 未満の場合は、硬化が不十分となるため、ハードコート層の硬度が低下する。また、5000mJ/cm2 を超えると、ハードコート層が着色して透明性が低下する。
【0053】
前記防眩性ハードコート層2上に反射防止層を設けることができる。光は物体に当たるとその界面での反射、内部での吸収、散乱といった現象を繰り返して物体の背面に透過していく。画像表示装置に防眩性ハードコートフィルムを装着した際、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気と防眩性ハードコート層界面での光の反射が挙げられる。その表面反射を低減させる方法として、厚み及び屈折率を厳密に制御した薄膜を防眩性ハードコート層表面に積層し、光の干渉効果を利用した入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現させる。
【0054】
光の干渉効果に基づく反射防止層の設計において、その干渉効果を上げるには、反射防止層と防眩性ハードコート層の屈折率差を大きくすることである。一般的に、基材上に2〜5層の光学薄膜(前記厚み及び屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層する多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計に自由度が増し、より反射防止効果を向上させ、分光反射特性も可視光領域でフラットにすることが可能になってくる。光学薄膜の各層の厚み精度が要求される為、一般的にはドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で各層の形成が行われている。
【0055】
反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられるが、反射防止機能をより大きく発現させる為には、酸化チタン層と酸化ケイ素層との積層体を用いることが好ましい。上記積層体は、防眩性ハードコート層上に屈折率の高い酸化チタン層(屈折率:約1.8)が形成され、該酸化チタン層上に屈折率の低い酸化ケイ素層(屈折率:約1.45)が形成された2層積層体、更に、この2層積層体上に、酸化チタン層及び酸化ケイ素層がこの順序で形成された4層積層体が好ましい。このような2層積層体又は4層積層体の反射防止層を設けることにより、可視光線の波長領域(380〜780nm)の反射を均一に低減させることが可能である。
【0056】
また、基材上に単層の光学薄膜を積層することによっても反射防止効果を発現させることが可能である。反射防止層を単層にする設計においても、反射防止機能を最大限引き出す為には、反射防止層と防眩性ハードコート層の屈折率差を大きくする必要がある。上記反射防止層の膜厚をd、屈折率をn、入射光の波長をλとすると、反射防止層の膜厚とその屈折率との間でnd=λ/4なる関係式が成立する。反射防止層の屈折率が基材の屈折率より小さい場合は、上記関係式が成立する条件では反射率が最小となる。例えば、反射防止層の屈折率が1.45である場合は、可視光線中の550nmの波長の入射光に対して、反射率を最小にする反射防止層の膜厚は95nmとなる。
【0057】
反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にする設計を行なうことが一般的に行われている。
【0058】
単層で反射防止膜を設計する場合、その厚み精度は、多層反射防止膜の厚み精度ほど厳密ではなく、設計厚みに対し±10%の範囲、つまり設計波長が95nmの場合は、86nm〜105nmの範囲であれば問題なく使用できる。このことより、一般的に単層の反射防止膜の形成には、ウェット方式であるファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート等の塗工法が用いられている。
【0059】
反射防止膜に屈折率の低減を目的として、中空で球状の酸化ケイ素超微粒子を添加することができる。中空で球状の酸化ケイ素超微粒子は、平均粒子径が5nm〜300nmである酸化ケイ素超微粒子であって、該超微粒子は細孔を有する外殻の内部に空洞が形成されてなる中空球状であり、該空洞内に該微粒子調製時の溶媒及び/又は気体を包含してなることを特徴とするものである。前記空洞を形成するための前駆体物質が該空洞内に残存してなることが好ましい。前記外殻の厚さが1nm〜50nmの範囲にあり、且つ平均粒子径の1/50〜1/5の範囲にあることが好ましい。前記外殻が複数の被覆層からなることが好ましい。前記細孔が閉塞され、前記空洞が前記外殻により密封されてなることが好ましい。反射防止層中において、多孔質又は空洞が維持されており、反射防止層の屈折率を低減させることが可能な為、好ましく用いることができる。このような中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の製造方法としては、たとえば特開2000−233611号公報に開示されたシリカ系微粒子の製造方法が好適に採用される。
【0060】
低屈折率層(反射防止層)には、膜強度を改善する為に無機のゾルを添加することができる。無機のゾルとしては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化マグネシウム等が挙げられるが、シリカゾルが特に好ましい。無機のゾルの添加量は、低屈折率形成材料の全固形分100重量部に対し80〜100重量部の範囲内で、適宜設定することができる。無機のゾルの粒径としては、2〜50nmの範囲のものが好ましく、5〜30nmの範囲内のものがより好ましい。
【0061】
反射防止層は画像表示装置の最表面に装着される頻度が高い為、外部環境からの汚染を受けやすい。特に、身近においては指紋や手垢、汗や整髪料等の汚染物が付着しやすく、その付着で表面反射率が変化したり付着物が白く浮きでて見えて表示内容が不鮮明になるなど、単なる透明板等の場合に比べて汚染が目立ちやすくなる。この様な場合は、汚染物の付着防止性、易除去性に関する機能を付与する為に、フッ素基含有のシラン系化合物やフッ素基含有の有機化合物等を反射防止層上に積層することができる。
【0062】
フィルム基材1又はフィルム基材1上に塗工を行ったハードコート層2に各種表面処理を行うことによって、フィルム基材とハードコート層2、フィルム基材1と偏光子又はハードコート層2と反射防止層の接着性を向上させることができる。その表面処理としては、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。また、トリアセチルセルロースをフィルム基材として用いた場合の表面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化処理に関してより具体的に説明する。セルロースエステルフイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、25℃〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。その後、水洗処理、乾燥処理を行い、表面処理を施したトリアセチルセルロースを得ることができる。
【0063】
また、フィルム基材1の裏面(ハードコート層2の形成面とは反対側の面)に、カールの発生を防止することを目的として、次に述べる溶剤処理を行ってもよい。溶剤処理は、フィルム基材1を溶解させ得る溶剤又は膨潤させ得る溶剤を含む組成物を、従来公知の方法により、塗布して行われる。その様な溶剤を塗布することにより、フィルム基材1の裏面側に丸まろうとする性質を付与し、これにより、ハードコート層2を備えたフィルム基材1が、ハードコート層2の形成面側にカールしようとする応力を相殺してカールの発生を防止するものである。
【0064】
前記溶剤としては、フィルム基材1を溶解させる溶剤及び/又は膨潤させる溶剤の混合物の他に、更に溶解させない溶剤を含む場合もある。これらをフィルム基材1のカールの度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行うことができる。
【0065】
カール防止機能を更に向上させる場合は、用いる溶媒組成を溶解させ得る溶剤及び/又は膨潤させ得る溶剤の混合比率を大きくし、溶解させない溶剤の混合比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させ得る溶剤及び/又は膨潤させ得る溶剤):(溶解させない溶剤)=10:0〜1:9で用いられる。この様な混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解又は膨潤させる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノールなどがある。
【0066】
本発明のハードコートフィルムは、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子又は偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。通常、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。偏光板は、通常、偏光子の片側又は両側に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であっても良いし、異なる材料であってもよい。
【0067】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0068】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。
【0069】
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0070】
前記偏光子の片面又は両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。上記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレン・スチレン樹脂、スチレン・マレイミド共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。また、シクロ系オレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、芳香族ポリイミドやポリイミドアミド等のイミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ系樹脂又は前記樹脂のブレンド物等からなる高分子フィルムなども前記透明保護フィルムを形成する樹脂の例として挙げられる。また、上記透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0071】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルム、たとえば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換及び/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の高分子フィルムが挙げられる。
【0072】
前記透明保護フィルムとして好ましくは、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂及び、ノルボルネン系樹脂が用いられる。具体的には、富士写真フィルム(株)製 製品名「フジタック」や、日本ゼオン(株)製 製品名「ゼオノア」、JSR(株)製 製品名「アートン」などが挙げられる。
【0073】
前記透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。より好ましくは、5〜200μmである。特に好ましくは、10〜150μmである。上記の範囲であれば、偏光子を機械的に保護し、高温高湿下に曝されても偏光子が収縮せず、安定した光学特性を保つことができる。
【0074】
前記透明保護フィルムは、フィルム面内の位相差値及び厚み方向の位相差値が液晶表示装置の視野角特性に影響を及ぼす場合があるので、位相差値が最適化されたものを用いることが好ましい。ただし、位相差値の最適化が望まれる透明保護フィルムとは、液晶セルに近い側の偏光子の表面に積層される透明保護フィルムであり、液晶セルに遠い側の偏光子の表面に積層される透明保護フィルムは、液晶表示装置の光学特性を変化させることはないので、この限りではない。
【0075】
前記液晶セルに近い側の偏光子の表面に積層される透明保護フィルムの位相差値としては、フィルム面内の位相差値(Re)が0〜5nmであることが好ましい。より好ましくは、0〜3nmである。更に好ましくは、0〜1nmである。厚み方向の位相差値(Rth)は、0〜15nmであることが好ましい。より好ましくは0〜12nmである。更に好ましくは0〜10nmである。特に好ましくは0〜5nmである。最も好ましくは、0〜3nmである。
【0076】
前記透明保護フィルムの偏光子との積層方法は、特に限定されず、例えばアクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいはホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミンやシュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。これにより湿度や熱の影響で剥がれにくく光透過率や偏光度に優れるものとすることができる。前記接着剤としては、偏光子の原料であるポリビルアルコールとの接着性に優れる点より、ポリビニルアルコール系接着剤を用いることが好ましい。
【0077】
前記ノルボルネン系樹脂を含む高分子フィルムを透明保護フィルムとして、偏光子と積層する場合の粘着剤としては、透明性に優れ、複屈折などが小さく、薄い層として用いても充分に粘着力を発揮できるものが好ましい。そのような粘着剤としては、例えば、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアネート樹脂溶液を混合するドライラミネート用接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、エポキシ系二液硬化型接着剤、例えば、エポキシ樹脂とポリチオールの二液からなるもの、エポキシ樹脂とポリアミドの二液からなるものなどを用いることができ、特に溶剤型接着剤、エポキシ系二液硬化型接着剤が好ましく、透明のものが好ましい。接着剤によっては、適当な接着用下塗り剤を用いることで接着力を向上させることができるものがあり、そのような接着剤を用いる場合は接着用下塗り剤を用いることが好ましい。
【0078】
上記接着用下塗り剤としては、接着性を向上できる層であれば特に制限はないが、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。なかでも、工業的に取扱いやすいという観点から、シラン系カップリング剤を含有する層であることが好ましい。
【0079】
前記偏光板は、液晶セルへの積層を容易にするため、両面又は片面に接着剤層や粘着剤層を設けておくことが好ましい。
【0080】
前記接着剤又は粘着剤としては特に制限されない。例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるという点で、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0081】
次に本発明の偏光板と併用して用いられる他の光学部材について説明する。上記他の光学部材としては、特に限定はないが、例えば、楕円偏光板又は円偏光板に、更に反射板又は半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板又は半透過型偏光板が挙げられる。また、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。また、本発明のハードコートフィルム又は反射防止ハードコートフィルム又は偏光板を透過型又は半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに表示特性の高い表示装置を得ることができる。
【0082】
上記防眩性ハードコートフィルム又は偏光板等は、液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することよって形成することもできるが、予め積層しておくほうが、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させることができるため好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明する。尚、「部」「%」は特記しない限り、重量基準である。
実施例1
下記に示す、(A)成分、(B)成分、(C)成分、光重合開始剤及び混合溶媒を含む樹脂原料(固形分濃度66重量%、大日本インキ化学社製、商品名GRANDIC PC1097)を準備した。この樹脂原料の固形分100重量部に、平均粒径8μmのアクリル樹脂粒子(平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が10個/100万個)(屈折率:1.49)30重量部及びレベリング剤(大日本インキ化学社製、商品名GRANDIC PC−F479)0.5重量部を配合して混合し、この混合物を溶媒(酢酸エチル)を用いて固形分濃度が55重量%となるように希釈して、防眩性ハードコート形成材料を調整した。
【0084】
前記防眩性ハードコート形成材料を透明フィルム基材(厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム、屈折率:1.48)上に、バーコーターを用いて塗布して塗膜を形成し、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプンプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み25μmの防眩性ハードコート層を形成し、目的とする防眩性ハードコートフィルムを得た。
(A)成分:イソホロンジイソシアネート系ウレタンアクリレート(100重量部)
(B)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(38重量部)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(40重量部)及びペンタエリスリトールトリアクリレート(15.5重量部)
(C)成分:30重量部
光重合開始剤:商品名イルガキュア184(チバ・スペシャリティケミカルズ社製)1.8重量部、ルシリン型光重合開始剤5.6重量部
混合溶媒:酢酸ブチル:酢酸エチル(重量比)=3:4
実施例2
微粒子を平均粒子径が10μm(平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が30個/100万個)のアクリル樹脂粒子(屈折率:1.49)に変更し、更に塗工厚みを23μmに変更したこと以外は実施例1と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
実施例3
塗工厚みを20μmに変更したこと以外は実施例2と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
実施例4
塗工厚みを31μmに変更したこと以外は実施例2と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
実施例5
実施例1にて得られたハードコートフィルムの上に、以下の反射防止層形成材料を塗工し、乾燥、硬化処理を経て、厚さ95nmの反射防止層を有する反射防止ハードコートフィルムを得た。
(反射防止層形成材料)
テトラアルコキシシラン54部、及びフルオロアルキル構造及びポリシロキサン構造を有するシランカップリング剤23部、アクリル基を有するシランカップリング剤で表面処理を行い疎水化した直径60nmの中空で球状の酸化ケイ素超微粒子23部をイソプロピルアルコール/酢酸ブチル/メチルイソブチルケトン(54/14/32(重量比))の混合溶媒中に分散させ、固形分濃度を2.0%に調整し、反射防止層形成材料を得た。
実施例6
微粒子を平均粒子径が8μm(平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が45個/100万個)のアクリル樹脂粒子(屈折率:1.49)に変更し、更に塗工厚みを19μmに変更したこと以外は実施例1と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
比較例1
透明プラスチックフィルム基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(屈折率:1.48)上に、イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、イソホロンジイソシアネートポリウレタンからなる紫外線硬化型樹脂100重量部、レベリング剤(ディフェンサMCF323)を0.5部、平均粒子径が径3.5μmのポリスチレン粒子(SX350H、総研化学製)を14部、重合開始剤としてイルガキュア184を5重量部とを酢酸ブチルにより固形分濃度が45%となる様にトルエンにて希釈して作製した防眩性ハードコート形成材料をバーコーターにて塗工し、100℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥し、その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化処理して厚み5μmの防眩性ハードコート層を得た。ハードコート層の屈折率は1.53であった。
比較例2
微粒子を平均粒子径が8μm(平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が118個/100万個)のアクリル樹脂粒子(屈折率:1.49)に変更し、更に塗工厚みを19μmに変更したこと以外は実施例1と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
比較例3
塗工厚みを18μmに変更したこと以外は実施例2と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
比較例4
塗工厚みを19μmに変更したこと以外は実施例2と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
比較例5
微粒子を平均粒子径が5μmのアクリル樹脂粒子(屈折率:1.49)に変更したこと以外は実施例1と同様な方法にて、防眩性ハードコート層を得た。
(重量平均分子量)
重量平均分子量の測定は、GPCにて測定を行った。GPCの測定条件は、測定機器:東ソー製HLC−8120GPC、カラム:東ソー製G4000HXL+G2000HXL+G1000HXL(各7.8mmφ×30cm、計90cm)、カラム温度:40℃、溶離液:テトラヒドロフラン、流速:0.8ml/分、入り口圧:6.6MPa、標準試料:ポリスチレン、とした。
(屈折率 基材及びハードコート)
透明プラスチックフィルム基材及びハードコート層の屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計(品名:DR−M2/1550)を用い、中間液としてモノブロモナフタレンを選択しフィルム及びハードコート層の測定面に対して測定光を入射させるようにして、該装置に示される規定の測定方法により測定を行った。
(屈折率 微粒子)
微粒子をスライドガラス上に載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下し、カバーガラスを被せ試料を作製する。その試料を顕微鏡にて観察し、微粒子の輪郭が屈折率標準液との界面で一番見えにくくなる屈折率標準液の屈折率を微粒子の屈折率とした。
(平均粒径)
細孔電気抵抗法を利用したベックマン・コールター社製の粒度分布測定装置(品名:コールターマルチサイザー)を用いて、粒子が細孔を通過する際の粒子体積に相当する電解液分の電気抵抗を測定することにより、粒子の数と体積を求め平均粒径の算出を行った。
(アスペクト比)
微粒子のSEM写真を撮り、微粒子の最長径、最長径に垂直な方向の最大長の長さを測定することにより微粒子のアスペクト比の測定を行った。
(防眩性ハードコート層の厚み)
本発明の防眩性ハードコート層の厚みは、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。透明プラスチックフィルム基材に防眩性ハードコート層を設けた防眩性ハードコートフィルムの厚みを測定し、基材の厚みを差し引くことで防眩性ハードコート層の膜厚を算出した。
(反射防止層の厚み)
反射防止層の厚みは、大塚電子製の瞬間マルチ測光システムであるMCPD2000(商品名)を用い、干渉スペクトルの波形より算出した。
(平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合の算出)
コールターカウンター及びフロー式分析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて微粒子100万個の測定を行い、平均粒径を算出し、その平均粒径より2倍以上大きな粒子の個数を算出する。
(欠点の算出)
得られた防眩性ハードコートフィルムを1m2取り出し、目視観察で確認できる凸形状(Ra>0.5μm)を欠点とし、算出した。
(鉛筆硬度)
鉛筆硬度試験は、得られた防眩性ハードコートフィルムをガラス板に厚さ約20μmの粘着剤にて貼り付け、JIS K−5400記載の鉛筆硬度試験に従い(但し、荷重500g)試験を実施した。
(ヘイズ)
ヘイズの測定方法は、JIS−K7136ヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHR300(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
(光沢度)
光沢度については、測定角度を60°として、JIS K7105−1981に準じて、スガ試験機(株)製(デジタル変角光沢計UGV−5DP)を用いて測定した。
(表面粗さ)
防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に、MATSUNAMI製のガラス(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせた。高精度微細形状測定器(商品名:サーフコーダET4000,(株)小阪研究所)にて測定し、Ra値、θa値を求めた。なお、前記高精度微細形状測定器は、算術平均表面粗さRa値及び平均傾斜角θa値を自動算出する。両表面粗さパラメータは、JIS B0601−1994に基づくものである。
(防眩性)
(1)防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に三菱レイヨン製黒色アクリル板(2.0mmt)を粘着剤にて貼り合わせ裏面の反射をなくす。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて上記で作成したフィルムサンプルの防眩性を目視にて確認した。
判定基準:
◎・・・像の写り込みがほとんどない
○・・・像の写り込みはあるが、視認性への影響は小さい
△・・・像の写り込みはあるが、実用上問題はない
×・・・像の写り込みがある
(黒の濃さ)
(1)作製した防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に厚み約20μmのアクリル系粘着剤を貼りつけ、表面が平滑な偏光板に貼り合わせた。
(2)防眩性ハードコート付き偏光板を、Sharp製パネル(パネル型番:LQ150X1LAJO)に実装した。
(3)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にてパネルを黒表示にて駆動させて黒の濃さを目視にて確認した。
判定基準:
◎・・・黒の程度が非常に良好
○・・・黒の程度が良好
△・・・若干白っぽくなっているものの、実用上問題はない
×・・・白ボケが発生している。
実施例及び比較例の防眩性ハードコートフィルムの塗工液の配合等を以下の表1に示す。また、実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明した通り、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、透明フィルム基材の少なくとも片面に、微粒子と熱又は電離放射線により硬化する樹脂とを主成分とする防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、ハードコート層の膜厚が15μm以上35μm以下とし、添加する微粒子の平均粒径を防眩性ハードコート層の膜厚の30%以上50%以下の範囲にすることにより、凹凸形状による平均傾斜角θaが0.40°以上1.50°以下の表面形状を形成することができ、その結果、実使用環境における明所でのディスプレイのコントラスト特性を向上させることができる。更に、平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が50個/100万個以下の微粒子を用いることにより、凸状欠点を大幅に低減させることができる。また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、粘着又は接着により偏光板等の光学フィルムに好適に用いることができ、その偏光板を装着したLCDは、家庭用テレビとして使用した場合でも十分な防眩性、表示コントラスト特性を有する為、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】片面に防眩性ハードコート層を塗工した本発明の防眩性ハードコートフィルムの一例の構成を示す断面模式図である。
【図2】粗さ曲線、高さhおよび基準長さLの関係の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・透明フィルム基材
2・・・防眩性ハードコート層
3・・・微粒子
4・・・防眩性ハードコートフィルム















【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材の少なくとも片面に、微粒子と熱又は電離放射線により硬化する樹脂とを主成分とする防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、前記防眩性ハードコート層の膜厚が15μm以上35μm以下であり、且つ、前記微粒子の平均粒径が防眩性ハードコート層の膜厚の30%以上50%以下及び平均粒径より2倍以上大きな粒子の存在割合が50個/100万個以下であり、且つ、微粒子により形成される凹凸形状によるθaが0.40°以上1.50°以下であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱又は電離放射線により硬化する樹脂が下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート
(B)成分:ポリオール(メタ)アクリレート
(C)成分:下記(C1)から形成されるポリマー若しくはコポリマー又は前記ポリマーとコポリマーの混合ポリマー
(C1):水酸基及びアクリロイル基の少なくとも一方の基を有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微粒子が球形であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層上に少なくとも1層の反射防止層が設けられていることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の反射防止層に中空で球状の酸化ケイ素超微粒子が含有されていることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性ハードコートフィルムを偏光子又は偏光板の片面又は両面に積層したことを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性ハードコートフィルム、請求項6に記載の偏光板を搭載した画像表示装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−322779(P2007−322779A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153266(P2006−153266)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】