説明

防藻システム

【課題】 魚介類の生け簀等飼育用水槽および水族館等鑑賞用水槽等水槽において藻類が発生し,水槽ガラス面または樹脂面への藻の付着,または水の緑色,淡褐色等の着色および臭気の問題があり、水質の汚濁に伴い病気の発生等魚介類の生息環境に問題が生じる。藻類の水槽壁面への付着による鑑賞障害,水の着色による透視度の悪化および臭気等を抑制および防止し魚介類の生育環境の維持管理に関するものである。
【解決手段】 水槽上部設置型循環ろ過装置の上部に紫外部,可視部および紫外部から可視部の波長光の存在下光触媒作用の有する物質に水を散水する,もしくは水を薄層になる状態で接触させることにより光のエネルギーの損失を少なくし,酸化チタン光触媒作用を発揮させ,安価で簡便な装置として藻の発生の抑制および防止をするシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
魚介類の生け簀等飼育用水槽および水族館等鑑賞用水槽等水槽において藻類が発生し,水槽ガラス面または樹脂面への藻の付着,水の緑色,淡褐色等の着色および臭気等問題があり、水質の汚濁に伴い病気の発生等魚介類の生育環境に問題が生じる。本発明は藻類の水槽壁面への付着による鑑賞障害,水の着色による透視度の悪化および臭気等を抑制および防止し魚介類の生息環境の維持保全に関するものである。
【背景技術】
【0002】
藻類の繁茂は温度,光量および水質により決まる。特に餌,餌の残留,魚類等生物の排泄物による窒素濃度,燐濃度および化学的酸素要求量の上昇すなわち水の富栄養化に起因する。魚介類や両生類を含む生物の生息する環境中における藻類繁茂の抑制および防止する方法は塩素系,第四級アンモニウム系または過酸化水素系薬剤,または殺菌効果や殺藻効果のある銀イオンや銅イオンによる方法は殺菌効果や殺藻効果が充分発現する濃度では生物が受ける影響について充分なる知見があるとは言えない。また生物の生息する環境中への紫外線照射や紫外線ランプの水中浸漬による直接紫外線照射では生物に紫外線障害を起こさせる可能性があるため,別に紫外線ランプを浸漬させた水槽を有する紫外線照射装置に水を導入し紫外線照射後還流させる方法で有機物の分解や細菌類,藻類の抑制および防止をしている。また,光触媒物質を直接水槽に浸漬する,あるいは水槽ガラス表面に酸化チタン光触媒をコーティングする方法もあるが,有機物の分解や細菌類、藻類の抑制および防止効果のある状態では光触媒の強い酸化作用が生物に与える影響については不明である。また,特殊な作用を有する鉱石を利用し細菌類,藻類の抑制および防止または有機物分解等水質浄化をする方法も提唱されているが効果は不明である。
【特許文献1】実願2004−6549
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では水温,光量および水質により異なるが,夏期では概ね14日から20日で藻類が発生し水の着色,濁度,臭気およびガラス面または樹脂面へ付着する等障害が生じる。水の着色および濁度による透視度の低下の抑制および防止は繊維フィルターろ過および活性炭ろ過により対策している。ろ過剤についてはポリエステル繊維,活性炭繊維、砂,ゼオライトおよびアンスラサイト等多様なろ過剤があり目的により選択されている。一方水槽への藻類の付着による鑑賞障害および臭気の抑制および防止には効果的なろ過剤はなく,また水槽の水の富栄養化対策についても効果的な方法はなく定期的な水の部分交換または入れ替えおよび水槽の清掃が必要十分条件である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
酸化チタン光触媒の酸化作用による防汚,防菌,防黴および防藻の効果は既知である。しかしながらそれらの効果は,光触媒脱臭機や建築物の外壁等の防汚対策として大気中での実施例が多く水中での実施例は光触媒酸化チタンとセラミック,シリカゲル,ゼオライト等の物質と組み合わせた光触媒物質と紫外線ランプを水中に浸漬し,水中での紫外線照射で光触媒物質と接触反応させ,循環させることにより効果を発揮させている。また水槽ガラス表面に光触媒酸化チタンコーティングをすることにより水槽ガラス表面への藻の付着を抑制する方法もある。水中の浮遊物質には無機性および有機性の浮遊物質があり、浮遊物質が光触媒表面に付着、吸着および堆積することにより、光触媒活性を有する部分が減少することとなり、その結果光触媒物質による水質浄化効果が大きく変動し、また浮遊物質濃度により水質浄化効果の持続性がなくなり、水槽の洗浄および水槽の水の交換頻度が高くなる。特に無機性の浮遊物質の光触媒表面への付着については分解が不可能であり光触媒物質の洗浄もしくは光触媒物質の交換が必要となる。本発明はシステムの中へ前処理用ろ過部(D)を組み込むことにより光触媒物質への浮遊物質の付着、吸着および堆積を減少させ、紫外部,可視部および紫外部から可視部の波長の光の存在下光触媒作用を有する物質に水を散水する,もしくは水を薄層になる状態で接触させることにより光のエネルギーの損失を少なくし,酸化チタン光触媒作用を効率的に発揮させ,水を循環させる方法であるため安価で簡便な装置として藻の発生の抑制および防止等ならびに水質浄化をするものであり,光触媒反応部が生物の生息圏と別になっているので光触媒の酸化作用が生物に影響を与えない。
【発明の効果】
【0005】
本発明は,藻の発生による水槽ガラス面および樹脂面への藻類の付着による鑑賞障害および水槽の水への藻の発生による臭気の抑制および防止に寄与し,さらに魚介類の生息環境を維持保全することにより魚介類の生存率を改善し生産性を向上させる。また水槽の水の部分交換,水槽の水の入れ替えおよび水槽清掃等の周期間隔を長くできることにより時間、労力および経費等の削減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
生け簀等飼育用水槽および水族館等鑑賞用水槽等水槽の上部設置型循環ろ過装置に前処理用ろ過部(D)、光触媒物質4,光触媒物質槽5および後処理用ろ過部(C)を設けその上部に光源1を設置する。流入口3より光源1の点燈照射下,光触媒物質槽5に水槽の水を散水または流入させる。光触媒物質と水を接触させるにあって、光触媒物質が水面からの水深が0cmから3cm程度となるように光触媒物質槽5の深さをかえる、光触媒物質槽5に穴を開けるまたは光触媒物質支持板を置き水位を調整し接触させる。水槽の水は光触媒物質4と接触し,光触媒の酸化作用により有機物の分解,細菌および藻の増殖を抑制させた後、後処理用ろ過吸着部(C)で沈殿物,水不溶性の濁度成分および光触媒物質通過色度成分をろ過吸着させ,水槽へ還流させる。前処理用ろ過部(D)のろ過効果が充分な場合は、後処理用ろ過部(C)を省略することができる。光源部1の設置位置は光触媒物質4に光が照射されることにより効果は発現されるので、システム全体の中で光触媒物質槽を含む設置位置であればよい。
【0007】
光触媒物質はシート状,細かい空間を設けたシート状,メッシュ状,球状,管状および短管状等使用可能である。
【実施例1】
【0008】
外寸幅40cm奥行25cm高さ28cmのガラス水槽2個に農業用池水20Lをそれぞれ入れ,水槽上部設置型循環ろ過装置を設置し,毎分約5Lの流量で循環させた。ろ剤としてポリエステルウールを敷き詰め循環ろ過させた水槽を対象とし,他方には前処理用ろ過部にポリエステルウールを詰め、その上に100V,15W蛍光灯照射下2cmの光触媒物質槽に水面と光触媒物質表面との間隔が1.5cmになるように光触媒物質含有不織布横35cm縦11cm厚さ0.5cmを設置し,水槽の水をポリエステルウールを詰めた前処理用ろ過部を通過させた後、光触媒含有不織布に流入させ、さらに後処理用ろ剤として敷き詰めたポリエステルウールを透過させ,循環ろ過させた。それぞれの水槽にあらかじめ同一条件で飼育していた金魚11匹を投入した。対象の水槽では試験開始6日目で金魚1匹死、8日目5匹死、9日目1匹死、12日目3匹死、13日目1匹死で全滅となった。藻類の発生については試験開始14日目ごろから付着性藻類が認められ,20日目には水槽中部を中心とし,全面の約10%に藻が付着し,30日目には約30%となった。対象の水槽についてはこの時点で試験を中止した。他方試験水槽での金魚生存率は9日目で1匹死んだのみで、30日目でも10匹生存で生存率91%であり試験開始65日目でも水槽の水の交換をせず、蒸発分を補給水として脱塩素した水道水を追加した状態で生存率91%であった。また藻類についても30日経過時、藻の発生およびガラス面への付着は認められず、試験開始65日目でも付着性藻類の発生は殆ど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は,魚介類の生け簀等飼育用水槽および水族館等鑑賞用水槽等水槽において藻の発生による水槽ガラス面および樹脂面への藻類の付着による鑑賞障害および水槽水の藻の発生による臭気の抑制および防止に寄与し,さらに魚介類の生息環境を維持保全することにより魚介類の生存率を改善し生産性を向上させる。また水槽の水の部分交換,水槽の水の入れ替えおよび水槽清掃等の周期間隔を長くできることにより時間、労力および経費等の削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】横断面図
【図2】上部面図
【図3】還流口縦断面図
【図4】流入口縦断面図
【符号の説明】
【0011】
A 光源部
B 光触媒反応部
C 後処理用ろ過吸着部
D 前処理用ろ過吸着部
1 光源
2 光源部と光触媒反応部との接続部
3 流入口
4 光触媒物質
5 光触媒物質槽
6 ろ過剤
7 水位調節管
8 還流口
9 光触媒支持板
10 隔壁
11 ろ過剤支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類の生け簀等飼育用水槽および水族館等鑑賞用水槽等水槽における水の有機物の分解,防菌,防黴および防藻等を目的とし,無機性および有機性浮遊物質を除く前処理用ろ過吸着部(D),後処理用ろ過吸着部(C),光触媒作用を有する酸化チタンを含有するセラミック,シリカゲル,ゼオライト,活性炭,不織布,紙,繊維,ガラス繊維,活性炭繊維およびウレタン樹脂等からなる光触媒反応部(B)および紫外部,可視部または紫外部から可視部の波長の光を発する光源部(A)とを組み合わせ,水と光触媒物質を接触反応させるにあたり、水を光源部と光触媒反応部の中間より散布または薄層となるように供給することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1において後処理用ろ過吸着部(C)を設けず無機性および有機性浮遊物質を除く前処理用ろ過吸着部(D),光触媒反応部(B)および光源部(A)とを組み合わせ,水と光触媒物質を接触反応させるにあたり,水を光源部と光触媒反応部の中間より散布または薄層となるように供給することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1において光触媒反応部(B)の光触媒作用を有する物質を設置するにあたり,水面と光触媒物質層表面の間隔を0cmから3cmにするため,光触媒物質4を設置する光触媒物質槽5の深さを変えるまたは光触媒物質支持板を置くあるいは光触媒物質槽5に穴を開けることにより水面と光触媒物質層表面の間隔を設定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−166893(P2006−166893A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382579(P2004−382579)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(503112927)
【Fターム(参考)】