説明

防音合せ板ガラス、防音インサート及び最適防音減衰の該インサートを選択する方法

本発明は、少なくとも2つの防振フィルム(30,31)を含み、2つの温度範囲tA及びtBそれぞれにおいて、それぞれが0.6超過の動的損失率tanδ及び2,107Pa未満の剪断弾性率G’を有する粘弾性プラスチック中間膜(3)を含む合せ板ガラス(2)に関する。本発明は、200Hzの周波数で、温度範囲tA又はtB内に含まれる与えられた温度範囲において、最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’はフィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eはフィルムの厚さであり、及び、etotは中間膜の全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率G’eqが小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音減衰性を有し、特に車両に、詳細には自動車に向けられる合せ板ガラスに組み込むインサートに関する。
【背景技術】
【0002】
列車及び自動車のような現代の輸送手段の快適に寄与する特性すべての中で、静音は、決定要因になっている。
【0003】
防音快適は、例えば、吸収塗料またはエラストマー連接部品によって、エンジン、タイヤまたはサスペンションからの騒音のような騒音を、及び、それらの出所においてあるいは空気または固体を通したそれらの伝搬中にこれに対処することにより、現在、数年にわたって向上された。
【0004】
空気透過を向上し、それ自体騒音源である乱流を減少するために、車両の形状は、また、変更された。
【0005】
数年間、板ガラス、特にプラスチックフィルム中間層を有する合せ板ガラスが、防音快適を改良することについて果たすことが可能である役割が強調された。合せ板ガラスは、さらに、破損を遅延するため、急な破損の場合に飛散破片の危険の除去のような他の利点を有する。
【0006】
標準プラスチックフィルムを合せ板ガラスに使用することは、防音快適を改良することに適当であることが証明された。したがって、防音快適が改良されることを可能にする減衰性を有する特別のプラスチックフィルムが、開発された。
【0007】
以下の説明において、防振フィルムの参照は、板ガラスに騒音減少機能を与えるために、改良された制振作用を提供する粘弾性プラスチックフィルムに関連する。
【0008】
板ガラスの防音性能は、中間層フィルムを構成する材料の動的損失率tanδ値に依存することが示された。動的損失率は、熱の形態で散逸されるエネルギーと弾性変形エネルギーの比である。それは、材料のエネルギーを散逸する能力の特徴をなす。動的損失率が高ければ、散逸エネルギーも大きく、そのため、材料は、さらに、その減衰の役割を果たす。
【0009】
この動的損失率は、温度及び周波数によって変化する。所定の周波数について、動的損失率は、ガラス転移温度と称される温度において、最大値に達する。
【0010】
インサートとして合せ板ガラスに用いられる材料は、所定の温度範囲について及び所定の周波数範囲について少なくとも0.6より大きいほどに、かなり高い動的損失率を有する、例えば、アクリルポリマーまたはアセタール樹脂型の粘弾性プラスチックフィルムである。
【0011】
防音快適が改良されることを可能にする防振性を提供するために、いくつかの特許は、限界値より大きい動的損失率を有することに加えて、合せ板ガラスの組成に固有の一致周波数において(典型的には、2000Hz近傍において)動的損失率の急な下落を防止する必要を明らかにした。これを達するために、米国特許5190826号明細書(特許文献1)は、フィルムまたは材料のそれぞれが、可塑剤と混合された異なるポリビニルアセチル樹脂からなるような中間層フィルムを構成するために、少なくとも2つの中間層フィルムの結合または2つの材料の組合せを示す。2つの特別の種類の樹脂のこの結合は、広い温度範囲にわたる防振を提供することを可能にするであろう。
【0012】
米国特許5796055号明細書(特許文献2)は、また、より広い温度範囲にわたる防音性能を提供する合せ板ガラスを得るように、2つの異なる温度範囲について高い減衰性(高い動的損失率tanδ)を有する2つのフィルムの組合せを記述する。
【0013】
有効とはいえ、2つの異なる温度範囲について改良された防振性を示す2つのフィルムが組合せられるとき、最終的に得られるインサートは、合せ板ガラスに、拡張された温度範囲について別々に考慮されるフィルムより高い減衰を提供することができるが、他方で、この組合せは、必ずしも、このより拡張された温度範囲について、最適にされた防振に一方の側において至らず、他方の側で、それは、必ず、有効ではない。
【0014】
2つの異なる温度範囲についてそれぞれが高い減衰を示す2つのフィルムの組合せは、必ず、最大減衰を示すフィルムのものよりそれぞれの温度範囲について少なくとも高い減衰を示すインサートを得ることになることは、容易に考えることができた。
【特許文献1】米国特許5190826号明細書
【特許文献2】米国特許5796055号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
さて、本発明者は、結果として生ずるインサートが必ずしもそのような有効な防振を示さないこと、及び、インサートが、改良された減衰性に至らない最小減衰を示すフィルムに近いことさえありうることを示した。
【0016】
それどころか、従来技術において説明されたような、2つの異なる温度範囲についての0.6より高い動的損失率を満たすだけの2つのフィルムの組合せは、必ずしも、2つの温度範囲の全体にわたって有効なインサートを得ることに適当でないことが示された。
【0017】
考察が、例えば、貼合せによる2つの防振フィルムの結合からなるインサートに与えられた:商品名エス−レック防音フィルム(S-Lec Acoustic Film)HI-RZN12でセキスイ(Sekisui)からの0.76mmの厚さを有するポリビニルブチラールフィルムと、このフィルムは、200Hzにおいて10℃近傍にガラス転移ピークを示し、商品名サフレックス(Saflex)RC41でソルティア(Solutia)からの0.76mmの厚さを有するポリビニルブチラールと、このフィルムは、200Hzにおいて40℃近傍にガラス転移ピークを有する。
【0018】
インサートにより板ガラスに提供される防音快適の改良を提供する減衰性は、必ず、それぞれ10℃近傍と40℃近傍で、フィルムが最も減衰する2つのそれぞれのガラス転移温度において各フィルムにより得られるものほど大きくはないことが、検証された。このために、2つのフィルムの貼合せによる結合から生ずるインサートの動的損失率並びに別々に考慮されるそれらの動的損失率は、粘度分析器で測定された。
【0019】
粘度分析器は、材料の試料が正確な温度及び周波数条件で変形応力にさらされること、及び、このようにして材料の特徴をなすレオロジー量を取得して処理することをできるようにする装置である。力及び変位測定値による生データを周波数の関数として各温度において処理することは、動的損失率tanδの曲線を周波数の関数として、及び、種々の温度について描くことを可能にする。メトラヴァイブ(Metravib)粘度分析器は、周波数範囲5〜400Hzについての値を提供するだけである。また、400Hzを越える周波数においてまたは測定がされたもの以外の周波数において、もしくは測定がされたもの以外の温度において、曲線を描くことが必要であるときに、WLF(ウィリアム−ランデル−フェリー(William-Landel-Ferry))法により確立される周波数/温度等価の原理について、知られた態様で、使用がされる。
【0020】
それぞれのフィルムについて、及び、両方の組合せについて、動的損失率tanδは、それゆえに、メトラヴァイブ(Metravib)粘度分析器により、200Hzの周波数について、及び、10℃と40℃の温度において、推定された。これらの値は、以下の表に与えられた。
【表1】

【0021】
単独で考えると、セキスイ(Sekisui)フィルムは、40℃(0.34)においてではなく、10℃(1.00)において、ダンパーとして機能を果たし、一方、ソルティア(Solutia)フィルムは、10℃(0.14)においてではなく、40°(1.01)において、ダンパーとして機能を果たすことがわかった。
【0022】
10℃において、2つのフィルムからなるインサートの動的損失率は、別々に考慮される2つのフィルムのより高い損失を有するセキスイ(Sekisui)フィルム(1.00)に関するように、非常に高いが、他方で、しかるに、ソルティア(Solutia)フィルムは、40℃において、非常に高い動的損失率を有し、両方のフィルムからなるインサートは、この同じ温度において、セキスイ(Sekisui)フィルムの動的損失率に比較的に近い、随分低い動的損失率(0.43)を有し、それゆえに、ダンパーとして機能を果たさない。
【0023】
結果として、2つのフィルムのそれぞれが、2つの異なる温度においてダンパーとして機能を果たすことができる場合には、2つの組合せは、必ずしも、防振インサートが2つの温度のそれぞれにおいて得られることを意味せず、期待される効果は、そこにはない。
【0024】
さらに、必ずしも所望の防音性能を提供しないこの組合せは、完成品の原価の増加なく組立が行われることができない、インサートの厚さの増加、2つの異なる材料の使用、及びこの組合せを得る方法を含む。
【0025】
また、制限温度範囲に関して全く単に動作可能であろうが、それにもかかわらず非常に良い性能を提供する1つの防振フィルムのみを使用することが好ましい可能性があり、ところが、複数の材料またはフィルムを選ぶことは、すべてのものについてはより広い温度範囲にわたる有効に至ることなく、材料の量及びインサートの厚さを増加するであろう。
【0026】
現実に、インサートの材料量の増加は、防振が各材料について得られる全温度範囲にわたって性能が達せられる場合に、実際には、正当であるのみであろう。
【0027】
さらに、防振インサートの合せ板ガラスへの組込みに関して、動的損失率tanδは、単独で考えられるべきではないこと、しかし、剪断弾性率G’は、インサートの減衰性の考慮されるべき別の特性値を構成することが説明された。欧州特許844075号明細書は、特に固体源の振動(典型的には、300Hzより低い周波数)を減衰することについて、合せ板ガラスのインサートは、剪断弾性率G’及び動的損失率tanδに関しては、特定の値を満たすべきであることを示した。剪断弾性率G’が材料の剛性を決定する:G’が高ければ、材料もより硬く、及び、G’が低ければ、材料もより柔軟である、ことが想起されるであろう。剪断弾性率は、温度及び周波数に依存する。剪断弾性率G’は、また、粘度分析器を採用して、推定された。
【0028】
本発明の目的は、結果として生ずるインサートが広い温度範囲にわたって効果的であるだけでなく、それがこの全温度範囲にわたって最適防振性能を有するように、それぞれが防振フィルムまたは材料を構成する、少なくとも2つの結合フィルムまたは2つの接合フィルムを含むインサートを含む合せ板ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、板ガラスは、少なくとも2つのガラスシートと、ガラスシートの間に配列されたインサートとを含み、インサートは、それぞれ2つの材料、A及びBからなる少なくとも2つの防振フィルムを含み、これらの2つの材料が2つの温度範囲tA及びtBそれぞれにおいて0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有し、インサートが、板ガラスで得られる防音快適の最適改良を2つの温度範囲tA及びtB内にそれぞれ含まれる少なくとも2つの異なる温度範囲t1及びt2にわたって提供し、及び、200Hzの周波数で2つの温度範囲t1及びt2のそれぞれで、最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’はフィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eはフィルムの厚さであり、及び、etotはインサートの全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率G’eqが小さいことを特徴とする。
【0030】
異なる温度範囲は、2つの温度値の間に別に及ぶ範囲を意味すると理解され、温度範囲が重ならない。
【0031】
かくして、各フィルムがその該当する温度範囲内(0.6超過のtanδ)でダンパーとして機能を果たすこと、及び、材料の剪断弾性率が2×107Pa未満であるということが必要であるだけでなく、該当する温度範囲内でより減衰を示すフィルムは他よりも等価剪断弾性率が小さいことも必要である。このように、インサートは、各温度範囲にわたって最も減衰するフィルムのものと類似した挙動を有することになる。インサートは、このように、インサートを構成するフィルムのそれぞれが最適防振の役割を果たす各温度範囲にわたって、最適防振を提供することになる。
【0032】
1つの特徴によって、非重なり範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3に関して、フィルムの等価剪断弾性率の比は、またこの温度範囲にわたって最適防音快適を提供するように、0.2〜5にある。
【0033】
好ましくは、板ガラスのインサートは、200Hzにおいて、少なくとも2つの異なる温度範囲t1及びt2にわたって、また有利には共通の温度範囲t3にわたって、2×107Pa未満の剪断弾性率G’及び0.6超過の動的損失率tanδを有する。
【0034】
1つの実施形態に従って、材料は、インサートを形成するために、同時押出される。変形として、それらは、貼合せられる。
【0035】
そのような種類の板ガラスは、建築物においてできるように、自動車のような車両、飛行機、船または列車において同等によく使用されることができる。
【0036】
本発明は、また、それぞれ2つの材料、A及びBからなる少なくとも2つの防振フィルムを含み、これらの2つの材料各々が温度範囲tA及びtBそれぞれにおいて0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有し、2つの温度範囲tA又はtB内に含まれる与えられた温度範囲で200Hzの周波数で、最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、前記温度範囲において他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’はフィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eはフィルムの厚さであり、及び、etotはインサートの全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率G’eqが小さいことを特徴とする粘弾性プラスチックインサートに関する。
【0037】
好ましくは、2つの異なる範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3に関して、フィルムの等価剪断弾性率の比は、0.2〜5にある。
【0038】
このインサートは、好ましくは、2つの温度範囲tA及びtBにわたって、2×107Pa未満の剪断弾性率G’及び0.6超過の動的損失率tanδを有する。それは、有利に、それが向けられる製品の防音快適についての最適減衰性を有する。
【0039】
1つの特性によって、フィルムは、貼合せられるか、または、フィルムの集成は、材料の同時押出により実施される。
【0040】
本発明は、最後に、インサートを合せ板ガラスパネルに組込むことに関してインサートを選定して板ガラスパネルに音減衰性を提供する方法であって、インサートが、それぞれ異なる材料からなる複数の防振フィルムを含み、これらの材料が少なくとも2つの温度範囲tA及びtBにおいて0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有し、それぞれ2つの温度範囲tA及びtB内に含まれる少なくとも2つの異なる温度範囲t1及びt2にわたって、200Hzの周波数で、それぞれ与えられた温度範囲t1及びt2で最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、前記温度範囲において他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’はフィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eはフィルムの厚さであり、及び、etotはインサートの全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率G’eqが小さいように、フィルムのそれぞれが選択されることを特徴とする方法に関する。
【0041】
1つの特徴によって、2つの異なる範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3に関して、フィルムの等価剪断弾性率の比は、防音快適がこの温度範囲にわたって最適であることができるように、0.2〜5にある。
【0042】
好ましくは、インサートは、2つの温度範囲tA及びtBにおいて、特に2つの異なる範囲t1及びt2にわたって並びに有利には離隔範囲t3に関して、2×107Pa未満の剪断弾性率G’及び0.6超過の動的損失率tanδを有する。
【0043】
他の特徴によって、フィルムの選定後、フィルムは、まとめられて、特に建築物または車両に向けられる合せ板ガラスパネルに組込まれるインサートを形成する。
【0044】
本発明の他の特徴及び利点は、そこで、図面に関して、説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1は、少なくとも2つのガラスシート20、21と、板ガラスに防音快適を改良する減衰性を与える防振インサート3とを含む合せ板ガラス2を図解する。例えば、車両に組込まれる、この窓ガラスは、固体に、及び/又は、空気に発生し、板ガラスにより伝達される振動による騒音を減少することを可能にする。
【0046】
図1の詳細図である図2は、インサート3を構成する数個のフィルム、ここで2つのフィルム30、31の組合せを示す。それぞれ厚さeA及びeBを有する各フィルムは、それぞれ、異なる粘弾性材料A及びBからなる。
【0047】
インサートは、フィルムを貼合せることにより、または、材料を同時押出することにより、得られた。
【0048】
インサートのガラスシートとの結合は、ガラスシートとインサートを積重ねることにより、及び、集成体をオートクレーブ内に渡すことにより、知られたように、なされる。
【0049】
200Hzの周波数において、材料Aは、温度範囲tAにおいて、0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率を有し、ところが、材料Bは、他の温度範囲tBにおいて、0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率を有し、温度範囲tA及びtBが重なるかまたは重ならないことが可能である。
【0050】
これらの2つの材料は、したがって、2つの温度範囲tA及びtBそれぞれにおいて、それらの減衰(tanδ>0.6)及びそれらの柔軟性(2×107Pa未満の各材料の剪断弾性率G’)について選択される。
【0051】
さて、インサートの振動エネルギーを吸収する能力は、その厚さによって、それゆえに各フィルムの厚さによって、より大きいかまたはより小さいであろう。かくして、本発明者は、必然的に板ガラスが防音快適を提供することを確実にするために、材料の動的損失率tanδ及び剪断弾性率は、単独で考慮されるべきではないこと、しかし、各温度範囲にわたって各フィルムの等価剪断弾性率の比が考慮されるべきことを示した。
【0052】
G’eqは、G’eq=G’etot/e(ただし、G’はフィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eはフィルムの厚さであり、及び、etotはインサートの全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率であることが、言及されることになる。
【0053】
本発明によれば、温度範囲tA及びtBにおいて、少なくとも2つの異なる温度範囲t1及びt2は、温度範囲tA及びtB内にそれぞれ含まれ、並びに、温度範囲t3は、2つの異なる温度範囲t1とt2を隔てる範囲に該当する、とみなされる。
【0054】
本発明によれば、200Hzにおいて、考慮される温度範囲t1及びt2のそれぞれにわたって、最も高い動的損失率tanδを有するフィルム(最大減衰材料)は、さらに、インサートを構成する他のフィルムの等価剪断弾性率よりも等価剪断弾性率G’eqが小さいことが必要である。
【0055】
したがって、範囲t1にわたってフィルム31のものを越える動的損失率tanδを有する厚さeAのフィルム30は、厚さeBのフィルム31の等価剪断弾性率G’eqBよりも小さい等価剪断弾性率G’eqAを有する。
【0056】
また、厚さeBをもって、範囲t2にわたってフィルム30のものを越える動的損失率tanδを有するフィルム31は、厚さeAをもつフィルム30の等価剪断弾性率G’eqAよりも小さい等価剪断弾性率G’eqBを有する。
【0057】
再び、本発明によれば、離隔温度範囲t3について、200Hzにおいて、フィルムの等価剪断弾性率G’eqの比は、0.2〜5にあることが必要である。
【0058】
したがって、範囲t3に関して、フィルム30の等価剪断弾性率G’eqAとフィルム31の等価剪断弾性率G’eqBの比は、0.2〜5にある。
【0059】
動的損失率の、フィルムを構成する材料の剪断弾性率及びフィルムの等価剪断弾性率のこれらの組み合わされた特徴は、インサートに、全温度範囲t1、t2、及びt3にわたって、板ガラスの最適防音減衰を与え、インサートは、各温度範囲にわたって防音である。
【0060】
考慮されるフィルム30、31の以下の2つの例は、それぞれ、ソルティア(Solutia)からのヴァンセバ・クァイエット(Vanceva Quiet)QC41と称される材料Aから製造されたフィルム、及び、材料B、ソルティア(Solutia)からのサフレックス(Saflex)AC1.2から製造されたフィルムである。フィルム30は、1.6mmの厚さで、フィルム31は3.3mmの厚さで使用される。インサートは、フィルムを貼合せることにより、得られる。
【0061】
200Hzにおいて、フィルム30は、14℃においてガラス転移温度をもって、6℃の温度と29℃の温度の間(範囲tA)で、0.6超過の動的損失率tanδ並びに2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有する(図3及び図4)。
【0062】
200Hzにおいて、フィルム31は、38℃においてガラス転移温度をもって、16℃の温度と58℃の温度の間(範囲tB)で、0.6超過の動的損失率tanδ並びに2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有する(図3及び図4)。
【0063】
本文中に与えられた測定結果は、メトラヴァイブ(Metravib)粘度分析器により得られたことは、言及されるべきである。
【0064】
下記のものは、本発明によって考慮される:
範囲tA内に含まれ、それについてフィルム30がフィルム31より以上にダンパーとして機能を果たす異なる範囲t1(6℃〜23℃);
範囲tB内に含まれ、それについてフィルムがフィルム30より以上にダンパーとして機能を果たす範囲t2(32℃〜58℃);
範囲t1とt2を隔てる範囲t3(23℃〜32℃)。
【0065】
本発明によれば、インサートが、当然に、異なる範囲t1及びt2にわたって防音減衰、及び板ガラスに最適な態様のものを提供するように、フィルム30は、範囲t1、(6℃〜23℃)にわたって、この同じ範囲においてフィルム31の等価剪断弾性率G’eqB未満にとどまる等価剪断弾性率G’eqAを有し、一方で、範囲t2(32℃〜58℃)において、フィルム31は、フィルム30の等価剪断弾性率G’eqA未満にとどまる等価剪断弾性率G’eqBを有する。図5は、フィルムの等価剪断弾性率の曲線を図解する。
【0066】
さらに、本発明によれば、離隔範囲t3について、各フィルム30、31の等価剪断弾性率の比は、インサートが当然に防音減衰、及び板ガラスに最適な態様のものを提供するように、0.2〜5に含まれる。25℃において、例えば、
G’eqA=107Pa及びG’eqB=8×106Pa、すなわち、G’eqB/G’eqA=0.8である。
【0067】
結果として、インサートの防音性能は、範囲t1にわたって、並びに、範囲t2にわたって及び範囲t3にわたって、存在する。
【0068】
インサートの動的損失率は、範囲t1、t2、及びt3にわたって、0.6超過である。下記の表は、200Hzにおいて、10、20、30、40、及び50℃において、測定された動的損失率tanδの値を示す。
【表2】

【0069】
しかも、インサートの剪断弾性率G’は、好ましくは、これらの範囲t1、t2、及びt3にわたって2×107Pa未満である。動的損失率及び剪断弾性率に関するこれらの特徴は、インサートが板ガラスに与える最適音減衰性を保証する。下記の表は、200Hzにおいて、10、20、30、40、及び50℃において、インサートの測定された値を示す。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による板ガラスの部分断面図である。
【図2】図1の詳細図である。
【図3】温度の関数として及び200Hzの周波数において各フィルムの動的損失率tanδの測定された曲線を示す図である。
【図4】温度の関数として及び周波数200Hzにおいて各フィルムの剪断弾性率の測定された曲線を示す図である。
【図5】温度の関数として及び周波数200Hzにおいて各フィルムの等価剪断弾性率G’eqの測定された曲線を示す図である。
【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのガラスシート(20,21)と、該ガラスシートの間に配列された粘弾性プラスチックインサート(3)とを含む板ガラス(2)であって、該インサートは、それぞれ2つの材料A及びBからなる少なくとも2つの防振フィルム(30,31)を含み、これらの2つの材料が2つの温度範囲tA及びtBそれぞれにおいて0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有し、該インサートが該板ガラスで得られる防音快適の最適改良を2つの温度範囲tA及びtB内にそれぞれ含まれる少なくとも2つの異なる温度範囲t1及びt2にわたって提供し、及び、200Hzの周波数で該2つの温度範囲t1及びt2のそれぞれで、最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’は該フィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eは該フィルムの厚さであり、及び、etotは該インサートの全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率G’eqが小さいことを特徴とする板ガラス。
【請求項2】
該2つの異なる範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3に関して、該フィルムの等価剪断弾性率の比は、防音快適がこの温度範囲にわたって最適であるように、0.2〜5にあることを特徴とする請求項1に記載の板ガラス。
【請求項3】
少なくとも該2つの異なる温度範囲t1及びt2にわたって、該インサートの該剪断弾性率G’は、2×107Pa未満であり、及び、該インサートの該動的損失率tanδは、0.6超過であることを特徴とする請求項1又は2に記載の板ガラス。
【請求項4】
該2つの異なる範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3にわたって、該インサートの該剪断弾性率G’は、2×107Pa未満であり、及び、該インサートの該動的損失率tanδは、0.6超過であることを特徴とする請求項2又は3に記載の板ガラス。
【請求項5】
該フィルム(30,31)は、インサートを形成するように貼合せられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の板ガラス。
【請求項6】
該フィルム(30,31)は、該材料の同時押出によりインサートを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の板ガラス。
【請求項7】
車両、特に自動車に、使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の板ガラス。
【請求項8】
建築物に使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の板ガラス。
【請求項9】
板ガラスパネルの2つのガラスシートの間に組込まれる粘弾性プラスチックインサートであって、該インサートはそれぞれ2つの材料A及びBからなる少なくとも2つの防振フィルム(30,31)を含み、これらの2つの材料各々が温度範囲tA及びtBそれぞれにおいて0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有し、該温度範囲tA又はtB内に含まれる与えられた温度範囲で200Hzの周波数で最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、前記温度範囲において他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’は該フィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eは該フィルムの厚さであり、及び、etotは該インサートの全厚さである。)で定義される等価剪断弾性率G’eqが小さいことを特徴とするインサート。
【請求項10】
該2つの異なる温度範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3に関して、該フィルムの該等価剪断弾性率の比は、0.2〜5にあることを特徴とする請求項9に記載のインサート。
【請求項11】
該2つの温度範囲tA及びtBにわたって、2×107Pa未満の剪断弾性率G’及び0.6超過の動的損失率tanδを有することを特徴とする請求項9又は10に記載のインサート。
【請求項12】
該フィルムは、貼り合せられることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のインサート。
【請求項13】
該フィルムは、該材料の同時押出により集成されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のインサート。
【請求項14】
インサートを合せ板ガラスパネルに組込むことに関してインサートを選定して該板ガラスパネルに音減衰性を提供する方法であって、該インサートが、それぞれ異なる材料からなる少なくとも2つの防振フィルム(30,31)を含み、これらの材料が少なくとも2つの温度範囲tA及びtBにおいて0.6超過の動的損失率tanδ及び2×107Pa未満の剪断弾性率G’を有し、それぞれ2つの温度範囲tA及びtB内に含まれる少なくとも2つの異なる温度範囲t1及びt2にわたって、200Hzの周波数で、それぞれの与えられた温度範囲t1及びt2で最も高い動的損失率tanδを有するフィルムは、前記温度範囲において他のフィルムよりも、G’eq=G’etot/e(ただし、G’はフィルムを構成する材料の剪断弾性率であり、eはフィルムの厚さであり、及び、etotはインサートの全厚さである。)で定義される、等価剪断弾性率G’eqが小さいように、各該フィルムが選択されることを特徴とする方法。
【請求項15】
該2つの異なる範囲t1とt2を隔てる温度範囲t3に関して、該フィルムの等価剪断弾性率の比は、0.2〜5にあることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該フィルムの選定後に、該フィルムは、まとめられて、合せ板ガラスパネルに組込まれるインサートを形成することを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
建築物または車両の板ガラスパネルに使用される請求項16に記載の方法。

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−537436(P2009−537436A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510508(P2009−510508)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051246
【国際公開番号】WO2007/135317
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】