説明

限外濾過フィルタの洗浄方法及び限外濾過フィルタを用いた現像装置

【課題】限外濾過フィルタの復旧再生工程として実施する逆洗浄を、限外濾過フィルタの閉塞やリークといった異常状態にも効率的に対応できるようにする洗浄方法を提供すること。
【解決手段】複数の限外濾過フィルタを並列に並べて液を通過させる循環機構において、前記複数の限外濾過フィルタの内で順次一つずつの限外濾過フィルタを逆洗浄する工程を含む限外濾過フィルタの洗浄方法であって、前記逆洗浄する工程が、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する動作と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する動作と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限外濾過フィルタを再生するための洗浄方法、及び限外濾過フィルタを用いて現像液を循環使用する現像装置に係り、特にカラーフィルタ製造において着色画素を形成する際の現像に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に用いられるカラーフィルタは、微細な赤、緑、青等のパターンからなる光学素子である。その製造プロセスは、ガラス等の透明基板上に感光性の着色レジストを塗布し、パターン露光後に現像するフォトリソグラフィー工程を含む場合が一般的であって、各色について同様のプロセスが繰り返される。以下、カラーフィルタ製造における従来の現像工程について説明する。
【0003】
現像工程は、露光後の未硬化レジストの溶解または剥離除去を目的とし、通常は現像液を使用する液体現像であり、フォトリソグラフィー工程の中でもパターンの形状品質を左右する重要な工程である。現像工程で管理される項目としては、現像時間、現像液の温度等があり、現像槽の構成や方式によっても異なるが、使用する現像液の現像力が基準となる。
【0004】
通常の現像装置は、バッチ式、枚葉式を問わず、現像槽と現像液タンクとにより構成され、両者をつなぐ配管と送液ポンプの動作により、現像液の単純な循環を伴う。現像液の現像力を維持するためには、カラーフィルタの処理枚数を管理して、所定の枚数を処理した後に現像液タンク内の現像液を一斉に新液に入れ換える方法か、または現像新液の部分的補充供給と現像液タンク内の現像液の部分的ドレインとを間歇的または連続的に実施する方法がある。
【0005】
現像液タンク内の現像液を一斉に新液に入れ換える方法の場合、それを実施するには稼動の停止を余儀なくされる。従って、この方法は、製造工程とは独立に専用の作業時間を要する非稼動のメンテナンス作業に近い方法である。また、管理する処理枚数にもよるが、初期の現像液の現像力と新液入れ換え直前のドレイン時の現像液の現像力とは大きく異なっている。そのため、連続稼動中に現像パラメータを細かく調整することによって現像品質を維持することが必要となり、大量生産のためのプロセスの管理方法としては、あまり適していない。
【0006】
現像新液の部分的補充供給と現像液タンク内の現像液の部分的ドレインとを間歇的または連続的に実施する方法の場合、ドレイン量が少な過ぎると現像力は早期に低下し、現像液タンク内の現像液の汚染度が非常に高くなる。現像液タンク内の現像液の汚染度は、装置、及び製品に不具合を発生させる要因となる。逆に、ドレイン量が多過ぎると、現像液タンク内の現像液の汚染度は低く抑えられるが、現像新液の補充供給量が膨大となり、ランニングコストが増加する。前記現像新液の補充供給量と現像液タンク内の現像液の汚染度とは相反するパラメータであるので、製品の品質基準を維持することを優先すると、現像新液の補充供給量とドレイン量とをともに多くせざるを得ない。
【0007】
また、上記いずれの方法をとっても、メンテナンス直後の現像液の現像力の変動は回避し難い。特に、市場におけるディスプレイの大型化と大量需要に伴って、カラーフィルタの製造ラインが大型化の一途をたどっている状況では、前記現像力の変動は、現像工程において取り扱う大型基板の処理の均一性や再現性にも一段と悪影響を与える。
【0008】
上記の問題を解決するために、限外濾過フィルタを用いて現像液を再生し、濾液を再利用する方法とそれに適した装置が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。これらの提案によれば、現像新液の補充供給量を必要最小限に抑えて、かつ、現像力の維持安定を図ることができるので、大型基板の現像処理における上記の問題点の解決に好適である。
【0009】
前記限外濾過フィルタには、液体を対象とする濾過膜の一種の限外濾過膜を用いる。該限外濾過膜は孔の大きさが精密濾過膜より小さいので、全量を通過させて濾過を行うと目詰まりし易い。このため、通常は膜の表面に沿って一定方向に液を流し続け、微粒子や不純物が濃縮された濃縮液を連続的に送液側に戻しながら使用することで微粒子や不純物の膜表面への付着を減らしている。上述の膜表面に沿った流れをクロスフローと呼ぶ。クロスフローの過程で孔を通り抜けた濾液は前記濃縮液とは分離して収集される。限外濾過膜としては、一般的には、中が空洞の糸状の中空糸膜が用いられることが多いが、用途や性能に応じて各種の膜が開発されている。
【0010】
前記限外濾過フィルタでの濾過を続けると、クロスフロー方式のためゆっくりではあるが微粒子や不純物が孔に付着し始める。定期的に濾過機能を復旧させるために、前記特許文献にて提案されているように、逆洗浄を行うことは効果がある。逆洗浄とは濾過と逆の方向に濾液等の清浄な液を流して、濾過膜に付着または蓄積した微粒子や不純物等の汚れを除去して限外濾過フィルタを再生する工程である。
【0011】
しかしながら、前記新提案においても、複数の限外濾過フィルタの性能を長時間安定して保つために限外濾過フィルタ再生手段としての逆洗浄を実行する機構と方法が最適ではないため、個々の限外濾過フィルタの状態に相応しい逆洗浄が必ずしもなされないという不具合がある。即ち、選択的に順次逆洗浄される限外濾過フィルタに異常な目詰まりによる閉塞や破れによるリークが発生した場合にも、通常の再生処理と同様に時間、圧力、または流量を一定にして、逆洗浄のための濾液を流すような機構と方法であった。このため、循環使用している現像液に含まれる顔料成分や異物が限外濾過フィルタの膜表面に吸着して透液孔が次第に閉塞していき、著しい濾液流量の低下を引き起こしたり、限外濾過フィルタを構成している中空糸の膜切れが発生して、本来濃縮液として循環すべき現像液が濾液側に流出し、大量の液が濾液とみなされる事態が生じても、一定の逆洗浄動作を実行することになり、場合に応じた効率的な逆洗浄を実施できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開 WO 2005/040930のパンフレット
【特許文献2】特開2007−241077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、限外濾過フィルタの復旧再生工程として実施する逆洗浄を、限外濾過フィルタの閉塞やリークといった異常状態にも効率的に対応できるようにする洗浄方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の課題は、限外濾過フィルタを用いた現像液の循環再生手段を有する現像装置において、限外濾過フィルタの復旧再生手段として実施する逆洗浄の機構が、限外濾過フィルタの閉塞やリークといった異常状態にも効率的に対応できる現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、複数の限外濾過フィルタを並列に並べて液を通過させる循環機構において、前記複数の限外濾過フィルタの内で順次一つずつの限外濾過フィルタを逆洗浄する工程を含む限外濾過フィルタの洗浄方法であって、前記逆洗浄する工程が、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する動作と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する動作と、を有することを特徴とする限外濾過フィルタの洗浄方法である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する動作が、単位時間当たりの濾液生成量の測定を基にし、限外濾過フィルタの各々の状態を少なくとも、閉塞、膜リーク、正常範囲の3状態に分けて判定することを特徴とする請求項1に記載の限外濾過フィルタの洗浄方法である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、前記検知された状態に応じて個別に限外濾過フィルタの逆洗浄の条件を設定する動作が、前記逆洗浄の時間及び逆洗浄させるポンプの周波数により制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の限外濾過フィルタの洗浄方法である。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、現像液循環系を有する現像装置において、循環現像液の一部を並列配置された複数の限外濾過フィルタにより濾過して濾液と濃縮液とに分離する手段と、前記複数の限外濾過フィルタの内で順次一つずつの限外濾過フィルタを逆洗浄する手段と、を備えた現像装置であって、前記逆洗浄する手段が、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する機構と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する機構と、を有することを特徴とする現像装置である。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する機構が、単位時間当たりの濾液生成量の測定を基にし、限外濾過フィルタの各々の状態を少なくとも、閉塞、膜リーク、正常範囲の3状態に分けて判定することを特徴とする請求項4に記載の現像装置である。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、前記検知された状態に応じて個別に限外濾過フィルタの逆洗浄の条件を設定する機構が、前記逆洗浄の時間及び逆洗浄させるポンプの周波数により制御されることを特徴とする請求項4または5に記載の現像装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の限外濾過フィルタの洗浄方法によれば、複数の限外濾過フィルタの一つに異常な目詰まりによる閉塞や破れによるリークが発生した場合に、早急に異常状態を検知し、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定することができるので、早期に適切な逆洗浄を行うか、または、異常に対するオフライン処理に切り換えるなどの対応をとることができ、総合的に効率的な限外濾過フィルタの洗浄方法を提供できる。
【0022】
また、本発明の限外濾過フィルタを用いた現像液の循環再生手段を有する現像装置によれば、限外濾過フィルタの閉塞やリークといった異常状態が生じても、現像液の循環再生手段を早期に復旧できるので、異常状態に効率的に対応できる現像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の現像装置の概要を説明するための配置概念図である。
【図2】本発明の限外濾過フィルタの状態判定基準を説明するための逆洗浄タンクの断面模式図であって、(a)は閉塞判定、(b)は膜リーク判定、(c)は正常範囲の判定を表す。
【図3】従来の現像装置の概要を説明するための配置概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための形態を、カラーフィルタの現像装置に適用した例に基づいて、図面に従って説明する。図1は、本発明の現像装置の概要を説明するための配置概念図である。また、図3は、比較のために提示した従来の現像装置の概要を説明するための配置概念図である。
【0025】
図1において、現像液循環タンク10内に供給された現像液が上向き矢印で示す送液配管を通して現像槽20に供給され、着色層を塗布および露光されたガラス等の処理基板を現像処理する。現像槽20は、バッチ式、枚葉式いずれも可能であるが、枚葉式であれば、処理基板を連続的に供給して槽内を通過させ、スプレーノズル状の現像ヘッドから現像液をシャワー状に浴びせて現像処理する。使用された現像液の多くは、現像液循環タンク10に戻る右向き矢印で示す送液配管を通して元に戻り、以後、同様に繰り返して循環使用される。また、処理基板に付着して現像装置外に持ち出されることなどにより現像液が減少することについては、現像新液供給タンク70から現像液循環タンク10に、適宜、補充供給されることによって、現像液量を一定に保つことができる。
【0026】
前記循環使用される現像液は、使用が進むにつれて、現像力が低下するので、現像装置の装置制御系80を通じて、現像の進行程度を一定に保つ方向に、現像液の温度や現像処理時間を制御することにより、処理の安定性を図る。しかし、現像液の疲弊による現像力の低下や溶解物や不純物による現像液の汚れを一定レベル以下に保つことがさらに重要であって、本発明の現像装置は、現像液の再生手段として、限外濾過フィルタ40を含む別系統の循環再生機構を有する。なお、装置制御系80は現像装置全体の流れやその条件を制御するものであり、装置内の各部分及び他の装置との接続関係を有するが、説明は省略する。また、現像装置内の送液配管は説明に必要な範囲で模式化して示しており、配管の途中に設置する送液ポンプや弁、計器類も殆ど省略する。
【0027】
現像液循環タンク10と現像槽20との間で循環使用される現像液の一部は、現像液の再生手段として、現像液循環タンク10から限外濾過濃縮液タンク30を経由して、限外濾過フィルタ40に供給される。限外濾過フィルタ40は、図1では、5本を並列使用できるように設置する。通常の使用状態においては、各限外濾過フィルタ40に供給される現像液が前述のクロスフロー方式により前記濃縮液と濾液とに分離される。分離された濃縮液は限外濾過濃縮液タンク30に戻った後、再び各限外濾過フィルタ40に供給され、再度分離された濃縮液は限外濾過濃縮液タンク30に戻るという動きを繰り返すとともに、定期的に一定量の濃縮液が廃棄される。また、各限外濾過フィルタ40で濾液として分離された液は、三方弁45により、濾液リザーブタンク50または逆洗浄タンク60のいずれかに選択的に収納される。
【0028】
濾液が上記2種類のタンクのいずれに収納されるかは、各限外濾過フィルタ40において、逆洗浄動作の準備段階であるかどうかで判断すれば良く、逆洗浄動作の準備段階にある限外濾過フィルタからの濾液のみを前記逆洗浄タンク60に収納し、通常状態で作動中の限外濾過フィルタから分離された濾液は濾液リザーブタンク50に収納する。さらに逆洗浄中の限外濾過フィルタに対しては、濾液が逆洗浄タンク60から送液ポンプ62により送られて、前記濾過分離動作時とは逆行する流れをつくることにより、濾過膜に付着または蓄積した微粒子や不純物等の汚れを除去して対象とする限外濾過フィルタを再生する。
【0029】
前記逆洗浄の対象とする限外濾過フィルタは順次切り換わっていくものであって、このための制御は、現像装置全体の制御を担う装置制御系80の統括の元に、逆洗浄条件設定駆動機構66が受け持つ。逆洗浄条件設定駆動機構66は、後述の逆洗浄条件の設定をす
るとともに、逆洗浄対象の限外濾過フィルタを順次切り換えて、各限外濾過フィルタを適切に再生することにより、濾過能力の標準化を図ることができる。
【0030】
限外濾過フィルタから分離された濾液の内、前記濾液リザーブタンク50に収納された濾液は、濾液リザーブタンク50から現像液循環タンク10に供給される。これによって、現像液循環タンク10から限外濾過濃縮液タンク30、限外濾過フィルタ40、濾液リザーブタンク50を経由して現像液循環タンク10に戻る、現像液の再生のための経路ができ、現像液使用のための前述の循環とは異なる循環が付加されることによって、実際に使用される現像液の現像力を一定レベルに維持できる。なお、濾液リザーブタンク50から現像液循環タンク10に供給される濾液は、図示されていない炭酸ナトリウムや溶剤、添加剤の調合機構を併合し、中和滴定、pH計や粘度計等の測定手段を備えることによって、より適切な現像力の調節を行うことができる。上記追加薬剤の調合機構や測定手段は、濾液リザーブタンク50と現像液循環タンク10のいずれにも設置できる。また、現像新液供給タンク70から現像液循環タンク10への新液供給を合わせて行っても良い。さらに、図示されていないが、非稼動メンテナンス時の非定常動作を行う際等も含めて、現像新液供給タンク70からの新液供給を、限外濾過濃縮液タンク30や濾液リザーブタンク50や逆洗浄タンク60等にも行うことができる。
【0031】
次に、本発明の特徴である、前記逆洗浄する工程が前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する動作と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する動作と、を有すること、ならびに、前記逆洗浄する手段が前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する機構と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する機構と、を有すること、について、図面に従って、実施形態を説明する。
【0032】
本発明は、各々の限外濾過フィルタを逆洗浄するに先立って、各々の限外濾過フィルタの状態を検知するものである。但し、限外濾過フィルタの状態を直接視認するだけでは、異常な目詰まりによる閉塞や破れによるリークが発生した場合に、その異常状態は判らない。逆洗浄動作の準備段階にある限外濾過フィルタから生じる濾液を前記逆洗浄タンク60に収納する際に、濾液が逆洗浄タンク60に溜まっていく速さを測定することによって、対象となる限外濾過フィルタの状態を推定して検知することができる。
【0033】
図2は、本発明の限外濾過フィルタの状態判定基準を説明するための逆洗浄タンクの断面模式図であって、(a)は閉塞判定、(b)は膜リーク判定、(c)は正常範囲の判定を表す。すなわち、逆洗浄タンク60に溜まる貯蔵濾液61の液面が上昇する速さを液量計65により計測することができる。液量計65は、液面センサにより管理できるタイプが望ましいが、限定されるものではない。最低液面65Lの状態から逆洗浄タンク60に収納を開始して一定時間が経過した時の貯蔵濾液61は、最低液面65Lと最高液面65Hとの間にその液面がある。(a)のように、液面が65Lに近く低い場合は、対象となる限外濾過フィルタが閉塞状態にあると判定することができる。また、(b)のように、液面が65Hに近く高い場合は、対象となる限外濾過フィルタが膜リーク状態にあると判定することができる。さらに、(c)のように、上記2つの場合とは異なる中間的な場合には、対象となる限外濾過フィルタが正常範囲の状態にあると判定することができる。正常範囲とみなす基準は、実際の異常発生時とそうでない場合との例を参考に、経験的に決めることができる。
【0034】
液量計65からの測定情報を得るとともに、上記の各判定基準を設定し、それらを照合することによって、上記の閉塞、膜リーク、正常範囲の3状態に分けて判定する状態検知機構64を、逆洗浄タンク60の近傍に設けて、上述の状態を検知する動作を自動的に行うことができる。また、上述の手順で、人が直接判断して状態を検知することもできる。
【0035】
また、本発明は、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定するものである。3状態に分けて判定した状態検知の中で、閉塞と膜リークの2状態に対しては、特別の対応が必要である。
【0036】
閉塞状態と判定された限外濾過フィルタは、循環使用している現像液に含まれる顔料成分や異物が限外濾過フィルタの膜表面に吸着して透液孔が次第に閉塞していき、著しい濾液流量の低下を引き起こしている状態とみられる。従って、このような状態の限外濾過フィルタに対する逆洗浄は、通常よりも逆洗浄による目詰まり除去の機能を強めることが重要である。このため、閉塞状態と判定された限外濾過フィルタに対しては、逆洗浄の時間を長くするとともに、送液ポンプ62の周波数を高めて、詰まりによる逆洗浄の液の流量と圧力が低下することを補う。その結果、目詰まりを解消する機能が強まり、限外濾過フィルタの逆洗浄効果を大きくすることができる。
【0037】
また、膜リーク状態と判定された限外濾過フィルタは、限外濾過フィルタを構成している中空糸の膜切れが発生して、本来濃縮液として循環すべき現像液が濾液側に流出し、大量の液が濾液とみなされる事態が生じていると予想される。従って、このような状態の限外濾過フィルタに対する逆洗浄を、通常と同じ条件で行っても、逆洗浄の動作が役に立たないばかりでなく、濾液として相応しくない内容の液を貯蔵していることになるので、やり方を変える方が良い。すなわち、膜リーク状態と判定された限外濾過フィルタに対しては、逆洗浄の時間を短くするとともに、送液ポンプ62の周波数を下げて、逆洗浄の液の流量と圧力を小さくする。さらに、膜リークの程度が大きい場合には、逆洗浄の動作を完全に止める方が良いが、逆洗浄タンクに溜まった濃縮液の混入の恐れのある液の排出は少なくとも行う。その後、膜リーク状態と判定された限外濾過フィルタは、他の正常な限外濾過フィルタと同様な濾過動作には加えずに停止状態としておき、次の非稼動のメンテナンス作業を行う時に、正常な限外濾過フィルタと交換することが望ましい。
【0038】
なお、正常範囲の状態と判定された限外濾過フィルタに対しては、通常の逆洗浄を行えば良いが、正常範囲とみなされた状態の中でも、さらに詳細に状態の見極めを行って、閉塞状態や膜リーク状態への移行状態として扱うことも可能である。これらの基準の設定は、経験に基づいて任意に変えられることが望ましい。
【0039】
上記の逆洗浄の条件を設定する動作は、前記各々の限外濾過フィルタの状態を検知して判定する動作と同様に、人が直接判断して逆洗浄の条件を設定できるが、そのための機構を設けることによって、自動的に実施することもできる。すなわち、図1に示すように、現像装置全体の制御を担う装置制御系80の統括の元に、逆洗浄条件設定駆動機構66が、逆洗浄条件の設定をするとともに、逆洗浄対象の限外濾過フィルタを順次切り換えて、各限外濾過フィルタを適切に再生することができる。図3に示す従来の現像装置の概要を説明するための配置概念図では、図1と殆ど同一であるが、上記の逆洗浄条件設定駆動機構66が存在せず、逆洗浄の条件設定機能のない、単なる逆洗浄駆動機構85が設置されるのみである。図3の逆洗浄駆動機構85は、逆洗浄対象の限外濾過フィルタを順次切り換えて一定条件の逆洗浄を繰り返す機能を有する。
【符号の説明】
【0040】
10・・・現像液循環タンク
20・・・現像槽
30・・・限外濾過濃縮液タンク
40・・・限外濾過フィルタ
45・・・三方弁
50・・・濾液リザーブタンク
60・・・逆洗浄タンク
61・・・貯蔵濾液
62・・・送液ポンプ
64・・・状態検知機構
65・・・液量計
65L・・・最低液面
65H・・・最高液面
66・・・逆洗浄条件設定駆動機構
68・・・信号線
70・・・現像新液供給タンク
80・・・装置制御系
85・・・逆洗浄駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の限外濾過フィルタを並列に並べて液を通過させる循環機構において、前記複数の限外濾過フィルタの内で順次一つずつの限外濾過フィルタを逆洗浄する工程を含む限外濾過フィルタの洗浄方法であって、前記逆洗浄する工程が、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する動作と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する動作と、を有することを特徴とする限外濾過フィルタの洗浄方法。
【請求項2】
前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する動作が、単位時間当たりの濾液生成量の測定を基にし、限外濾過フィルタの各々の状態を少なくとも、閉塞、膜リーク、正常範囲の3状態に分けて判定することを特徴とする請求項1に記載の限外濾過フィルタの洗浄方法。
【請求項3】
前記検知された状態に応じて個別に限外濾過フィルタの逆洗浄の条件を設定する動作が、前記逆洗浄の時間及び逆洗浄させるポンプの周波数により制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の限外濾過フィルタの洗浄方法。
【請求項4】
現像液循環系を有する現像装置において、循環現像液の一部を並列配置された複数の限外濾過フィルタにより濾過して濾液と濃縮液とに分離する手段と、前記複数の限外濾過フィルタの内で順次一つずつの限外濾過フィルタを逆洗浄する手段と、を備えた現像装置であって、前記逆洗浄する手段が、前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する機構と、前記検知された状態に応じて個別に逆洗浄の条件を設定する機構と、を有することを特徴とする現像装置。
【請求項5】
前記複数の限外濾過フィルタの各々の状態を検知する機構が、単位時間当たりの濾液生成量の測定を基にし、限外濾過フィルタの各々の状態を少なくとも、閉塞、膜リーク、正常範囲の3状態に分けて判定することを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記検知された状態に応じて個別に限外濾過フィルタの逆洗浄の条件を設定する機構が、前記逆洗浄の時間及び逆洗浄させるポンプの周波数により制御されることを特徴とする請求項4または5に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247074(P2010−247074A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99634(P2009−99634)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】