説明

陰イオン交換ポリマー、製造方法及びそれから製造される物質

新規な陰イオン交換ポリマーが提供される。その陰イオン交換ポリマーを製造する方法は、第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、この第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することを含んでいる。この交換ポリマーは、ハロゲン化アルキルを用いることなく製造され、耐薬品性で汚れが付かない改良されたイオン交換材料を製造するのに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換ポリマー、より詳細には陰イオン交換ポリマー及び物質に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換材料は様々な用途で流体を処理し流体からイオン化可能な成分を除去するために広く使用されている。流体処理用のフロースルー型床又はフロースルー型装置は粒子、織物又は膜の形態の交換物質又は構成要素を使用し得る。イオン交換機能性は、電場の下で物質中を横切る1つのタイプのイオンを輸送し、一方反対の極性をもつ殆どのイオンを実質的又は効果的に遮断するように作用する。陰イオン交換ポリマー及び物質は陽イオン基を担っており、これが陽イオンを拒絶し陰イオンに対して選択的である。
【0003】
陰イオン交換ポリマーは第三アミンから製造され得、この第三アミンは四級化されて陰イオン官能基を提供する。第四アンモニウム化合物を架橋し重合して陰イオン交換ポリマーを形成する。陰イオン交換ポリマーを製造するための代表的な方法では、陰イオン交換ポリマーを四級化するためにハロゲン化アルキルを使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5354903号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハロゲン化アルキルは、使用すると高価で有害である。ハロゲン化アルキルを使用しないで優れた性質を有する改良された陰イオン交換ポリマーを製造することができれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、陰イオン交換ポリマーは次式を有する。
【0007】
【化1】

式中、Rは−[CH2−CH(OH)]2−Wであり、R1は水素又はC1〜C12アルキル基であり、aは約0〜約0.75であり、b及びcは各々が独立して約0.25〜約1.0であり、Zは酸素又はN−R3であり、R2は−[CH2n−であり、R3は水素又は−[CH2m−CH3であり、R4及びR5は各々が独立して−[CH2m−CH3であり、XはCl、Br、I及び酢酸イオンからなる群から選択され、Wは橋架け基又は原子であり、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、Yは次式のものからなる群から選択される。
【0008】
【化2】

式中、R6、R7及びR8は各々が独立して、水素、−[CH2q−CH3及び−CH(CH32からなる群から選択され、R9は−[CH2pであり、pは3〜6の数であり、qは0〜3の数である。
【0009】
別の実施形態では、陰イオン交換ポリマーを製造する方法は、第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、この第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することからなる。
【0010】
さらに別の実施形態では、イオン交換材料は、次式を有する陰イオン交換ポリマーを含んでなる。
【0011】
【化3】

式中、Rは−[CH2−CH(OH)]2−Wであり、R1は水素又はC1〜C12アルキル基であり、aは約0〜約0.75であり、b及びcは各々が独立して約0.25〜約1.0であり、Zは酸素又はN−R3であり、R2は−[CH2n−であり、R3は水素又は−[CH2m−CH3であり、R4及びR5は各々が独立して−[CH2m−CH3であり、XはCl、Br、I及び酢酸イオンからなる群から選択され、Wは橋架け基又は原子であり、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、Yは次式のものからなる群から選択される。
【0012】
【化4】

式中、R6、R7及びR8は各々が独立して水素、−[CH2q−CH3及び−CH(CH32からなる群から選択され、R9は−[CH2pであり、pは3〜6の数であり、qは0〜3の数である。
【0013】
さらに別の実施形態では、イオン交換材料を製造する方法は、第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、この第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することからなる。
【0014】
様々な実施形態で、改良された陰イオン交換ポリマー、ハロゲン化アルキルを使用することなく陰イオン交換ポリマーを製造する方法、及び耐薬品性で汚れが付かない(non-fouling)物質が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
単数形態は、情況が明らかに他の意味を示さない限り、複数の対象を包含する。同一の特性を意味するあらゆる範囲の終点は独立して組合せ可能であり、表示された終点を含む。全ての参照文献は援用により本明細書の内容の一部をなすものとする。
【0016】
量に関連して使用する修飾語「約」は表示された値を含み、情況によって決定される意味を有する(例えば、特定の量の測定に伴う許容される誤差範囲を含む)。
【0017】
「任意」又は「場合により」とは、続いて記載されている事象若しくは状況が起こっても起こらなくてもよく、又は続いて特定されている物質が存在してもしなくてもよく、その記載が、その事象若しくは状況が起こる、又はその物質が存在する場合、及びその事象若しくは状況が起こらない、又はその物質が存在しない場合を含むことを意味している。
【0018】
陰イオン交換ポリマーは陽イオン基を含有する。一実施形態では、陰イオン交換ポリマーは次式を有する。
【0019】
【化5】

式中、Rは−[CH2−CH(OH)]2−Wであり、R1は水素又はC1〜C12アルキル基であり、aは約0〜約0.75であり、b及びcは各々が独立して約0.25〜約1.0であり、Zは酸素又はN−R3であり、R2は−[CH2n−であり、R3は水素又は−[CH2m−CH3であり、R4及びR5は各々が独立して−[CH2m−CH3であり、XはCl、Br、I及び酢酸イオンからなる群から選択され、Wは橋架け基又は原子であり、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、Yは次式のものからなる群から選択される。
【0020】
【化6】

式中、R6、R7及びR8は各々が独立して水素、−[CH2q−CH3及び−CH(CH32からなる群から選択され、R9は−[CH2pであり、pは3〜6の数であり、qは0〜3の数である。
【0021】
一実施形態では、R1はC1〜C6アルキル基である。別の実施形態では、R1はメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルである。
【0022】
一実施形態では、aは約0.25〜約0.50である。別の実施形態では、bは約0.50〜約0.75である。さらに別の実施形態では、cは約0.50〜約0.75である。
【0023】
一実施形態では、Zはアンモニア、トリメチルアンモニア又はトリエチルアンモニアである。
【0024】
Wは橋架け基又は原子である。一実施形態では、Wは炭化水素基、無機基又は無機原子である。一実施形態では、WはC1〜C30アルキル基、C1〜C30アルキルエーテル基、C6〜C30芳香族基、C6〜C30芳香族エーテル基又はシロキサンである。別の実施形態では、WはC1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキルエーテル基、C6〜C10芳香族基又はC6〜C10芳香族エーテル基である。さらに別の実施形態では、Wはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、フェニル、1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、レゾルシノール、シクロヘキサンジメタノール、ポリ(ジメチルシロキサン)、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−ブタジエン又はジシクロペンタジエンである。
【0025】
一実施形態では、mは0〜10、例えば0〜5の整数である。別の実施形態では、nは1〜10、例えば1〜5の整数である。
【0026】
別の実施形態では、陰イオン交換ポリマーを製造する方法は、第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、この第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することからなる。
【0027】
第三アミンはエチレン性第三アミンであることができる。一実施形態では、エチレン性第三アミンは、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド(DEAPMA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、エチレン性第三アミンモノマーはDMAPMAである。
【0028】
ポリエポキシドは、2以上のエポキシド基を有するいかなるタイプのポリエポキシドでもよい。一実施形態では、ポリエポキシドはジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテルである。ジグリシジルエーテルとしては、限定されることはないが、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジイルジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]メタン、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、臭素化ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル−終端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,2,3−プロパントリオールグリシジルエーテル及び1,3−ブタンジオールジグリシジルエーテルがある。トリグリシジルエーテルとしては、限定されることはないが、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル 2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルがある。
【0029】
さらに別の実施形態では、ポリエポキシドはジエポキシドである。ジエポキシドとしては、限定されることはないが、1,3−ブタジエン−ジエポキシド、1,3−ブタジエンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、メチルcis,cis−11,12;14,15−ジエポキシエイコサノエートがある。
【0030】
エポキシドは第三アミンを四級化して第四アンモニウムモノマーを形成する。また、第四アンモニウムモノマーはエポキシドにより架橋されて水不溶性になる。架橋しないと、このポリマーは水に溶解し、イオン交換材料に使用するのに効果がなくなってしまうであろう。一実施形態では、モノマーは高度に架橋される。別の実施形態では、ポリマーは約50〜約100%の範囲で架橋される。さらに別の実施形態では、ポリマーは完全に架橋される。
【0031】
陰イオン交換ポリマーを形成するための第四アンモニウムモノマーの重合は、第三アミンを四級化し架橋する反応と同時に行うことができる。第三アミンとポリエポキシドの反応及び重合反応は、反応物質及びモノマーを、第三アミンを四級化し架橋し、かつ第四アンモニウムモノマーを重合するのに充分な時間適切な温度に加熱することによって行うことができる。一実施形態では、温度範囲は約40〜約150℃である。別の実施形態では、温度範囲は約60〜約110℃であり、さらに別の実施形態では、温度範囲は約85〜約100℃である。一実施形態では、反応時間は約1分〜約2時間である。別の実施形態では、反応時間は約10分〜約1時間である。さらに別の実施形態では、反応時間は約20分〜約45分である。
【0032】
四級化は、ポリエポキシドの自己重合を制御する酸抑制剤の存在下で実施する。酸抑制剤は、反応を抑えることによってポリエポキシドが自己重合するのを防止する。抑える量は、反応に使用する酸抑制剤の量により制御される。酸抑制剤はあらゆるタイプの酸であり得る。一実施形態では、酸抑制剤は鉱酸である。別の実施形態では、酸抑制剤としては、限定されることはないが、塩酸、メタンスルホン酸、硫酸又はリン酸がある。酸抑制剤は、ポリエポキシドを抑えるのに適した量で添加される。一実施形態では、酸抑制剤は、第三アミンのモル重量を基準にして約75〜約125モル重量%の量で存在する。別の実施形態では、酸抑制剤は第三アミンのモル重量を基準にして約75〜約100モル重量%の量で存在する。
【0033】
陰イオン交換ポリマーは、広範囲の比の第三アミンとポリエポキシドを使用して合成することができる。一実施形態では、この比は各当量モルのポリエポキシドに対して第三アミンが約0.3〜約1.5モルである。別の実施形態では、比は1当量モルのポリエポキシド当たり約0.5〜約1.0モルの第三アミンモノマーである。
【0034】
重合を補助するために触媒を添加する。触媒は自発的に活性化され得るか、又は熱、電磁放射線、電子ビーム放射線若しくは化学促進剤により活性化され得る。触媒は重合を補助するのに適した量で添加し得る。一実施形態では、触媒は反応混合物の約0.1〜約5.0重量%の量である。
【0035】
触媒は第四アンモニウムモノマーを重合するのに適したあらゆるタイプの触媒であることができる。一実施形態では、触媒は過酸化物である。過酸化物としては、限定されることはないが、メチルエチルケトンペルオキシド及びジベンゾイルペルオキシドがある。別の実施形態では、触媒は水溶性又は油溶性のアゾ開始剤である。アゾ開始剤としては、限定されることはないが、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)がある。
【0036】
本明細書で使用する用語「化学促進剤」は、単独で、又は別の触媒と共同して重合速度を増大する物質を指す。例えば、メチルエチルケトンペルオキシドは触媒自体として機能することができるが、その開始速度は例えばナフテン酸コバルトのような小量の遷移金属塩化学促進剤によって大幅に増大することができる。同様に、ジベンゾイルペルオキシドは触媒自体として機能することができるが、その作用はジメチルアニリン化学促進剤により促進される。UV放射線重合剤は、光開始剤すなわちフリーラジカルを生成する化学化合物である化学促進剤の存在下でより効率的となることができる。光開始性化学促進剤の非限定例としては、ベンゾフェノン、ベンジル、アントラキノン、エオシン及びメチレンブルーがある。
【0037】
一実施形態では、溶媒の存在下で成分を混ぜ合わせる。溶媒自体が重合性でなく、成分が可溶性である限りにおいて、あらゆる溶媒がこの実施形態で使用するのに適している。この実施形態に適した溶媒としては、限定されることはないが、水、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン及びこれらの混合物がある。
【0038】
溶媒は成分を可溶化するのに適した量で添加される。一実施形態では、溶媒の量は反応混合物の総重量を基準にして約10〜約90重量%である。別の実施形態では、溶媒の量は反応混合物の総重量を基準にして約20〜約70重量%である。さらに別の実施形態では、溶媒の量は反応混合物の総重量を基準にして約25〜約50重量%である。
【0039】
成分を混ぜ合わせ、慣用の方法で反応させる。添加の順序は決定的なものではなく、成分はいかなる順序で添加してもよい。
【0040】
DMAPMAをポリエポキシド及び塩酸(HCl)と反応させることにより第四アンモニウムモノマーを形成する反応の一例を次に示す。
【0041】
【化7】

また、他のエチレン性モノマーを重合混合物に加えて、得られるイオン交換ポリマーのイオン交換容量を増大又は低減することができる。イオン交換容量を低下させるエチレン性モノマーの例としては、限定されることはないが、メタクリルアミン、N−メチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン及びN−ビニルカプロラクタムがある。イオン交換容量を上げるエチレン性モノマーの例としては、限定されることはないが、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)及びトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド(TMAEMC)がある。
【0042】
これらのエチレン性モノマーは他の反応物質と共に反応混合物に加えてもよいし、任意の順序で反応物質に加えてもよい。エチレン性モノマーはイオン交換ポリマーのイオン交換容量に作用するのに適した量で加えればよい。一実施形態では、エチレン性モノマーは第三アミンの約0〜約50モル%の量で加える。別の実施形態では、エチレン性モノマーは第三アミンの約10〜約40モル%の量で加えることができる。さらに別の実施形態では、エチレン性モノマーは第三アミンの約20〜約40モル%の量で加えるとよい。
【0043】
陰イオン交換ポリマーはイオン交換材料を形成するのに使用できる。一実施形態では、イオン交換材料は次式を有する陰イオン交換ポリマーからなる。
【0044】
【化8】

式中、Rは−[CH2−CH(OH)]2−Wであり、R1は水素又はC1〜C12アルキル基であり、aは約0〜約0.75であり、b及びcは各々が独立して約0.25〜約1.0であり、Zは酸素又はN−R3であり、R2は−[CH2n−であり、R3は水素又は−[CH2m−CH3であり、R4及びR5は各々が独立して−[CH2m−CH3であり、XはCl、Br、I及び酢酸イオンからなる群から選択され、Wは橋架け基又は原子であり、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、Yは次式のものからなる群から選択される。
【0045】
【化9】

式中、R6、R7及びR8は各々が独立して水素、−[CH2q−CH3及び−CH(CH32からなる群から選択され、R9は−[CH2pであり、pは3〜6の数であり、qは0〜3の数である。
【0046】
一実施形態では、R1はC1〜C6アルキル基である。別の実施形態では、R1はメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルである。
【0047】
一実施形態では、aは約0.25〜約0.50である。別の実施形態では、bは約0.50〜約0.75である。さらに別の実施形態では、cは約0.50〜約0.75である。
【0048】
一実施形態では、Zはアンモニア、トリメチルアンモニア又はトリエチルアンモニアである。
【0049】
Wは橋架け基又は原子である。一実施形態では、Wは炭化水素基、無機基又は無機原子である。一実施形態では、WはC1〜C30アルキル基、C1〜C30アルキルエーテル基、C6〜C30芳香族基、C6〜C30芳香族エーテル基又はシロキサンである。別の実施形態では、WはC1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキルエーテル基、C6〜C10芳香族基又はC6〜C10芳香族エーテル基である。さらに別の実施形態では、Wはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、フェニル、1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、レゾルシノール、シクロヘキサンジメタノール、ポリ(ジメチルシロキサン)、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−ブタジエン又はジシクロペンタジエンである。
【0050】
一実施形態では、mは0〜10、例えば0〜5の整数である。別の実施形態では、nは1〜10、例えば1〜5の整数である。
【0051】
一実施形態では、イオン交換材料は陰イオン交換樹脂ビーズ又は陰イオン交換膜であり得る。
【0052】
別の実施形態では、イオン交換材料を製造する方法は、第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、この第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することからなる。
【0053】
陰イオン交換膜は当技術分野で公知のあらゆる方法で形成することができる。一実施形態では、膜は織物を陰イオン交換ポリマーで補強することによって形成される。反応物質の液体混合物は、液体モノマー混合物を織物に注入することにより、又は個別の織物片、積み重ねて配置された複数の織物片、若しくは連続プロセスでロールからの織物を用いて織物を液体混合物に浸漬することにより、織物に適用することができる。熱を加えると、反応物質間の反応及び重合が起こり、織物に支持された架橋された陰イオン交換膜を形成する。
【0054】
さらに別の実施形態では、膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はTeflon(登録商標)のような多孔性プラスチックフィルムに陰イオン交換ポリマーを吸収させることによって形成される。反応物質の液体混合物は、液体モノマー混合物を多孔性プラスチックフィルムに注入することにより、又は多孔性プラスチックフィルムを液体混合物中に浸漬することにより、多孔性プラスチックフィルムに適用することができる。熱を加えると、反応物質間の反応及び重合が起こり、多孔性プラスチックフィルムに支持された架橋された陰イオン交換膜を形成する。
【0055】
陰イオン交換モノマーはまた、固体の塊に重合し、加工処理し粉砕して小粒子にすることもできる。小粒子は次いで押出機でブレンドし、溶融したポリエチレン又はポリプロピレンのようなプラスチックと共に加熱することができる。次いで、プラスチックとイオン交換混合物を押し出してイオン交換膜の薄いシートにすることができる。
【0056】
交換樹脂ビーズは、反応物質の混合物を水と非混和性の有機媒体中に懸濁させ、加熱してイオン交換ビーズを形成することにより製造してもよい。熱を加えると、反応物質間の反応及び重合が起こる。また、ビーズは震動噴霧手段により製造してもよい。
【実施例】
【0057】
当業者がより容易に本開示を実施することができるように、限定ではなく例示のために以下の実施例を挙げる。
【実施例1】
【0058】
DMAPMA(30.6g、0.18モル)、塩酸(15.4g、0.16モル)、1,2,3−プロパントリオールグリシジルエーテル(GE100)(23.6g、0.09モル)及び28.0gの水を混合し、1時間撹拌した。Wako Chemicals USA、Dallas、Tex.(VA044)から供給された1.4gの触媒2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩を加え、混合物を2枚のMylarシート間のアクリル布の上に拡げ、ガラスプレートの間に挟んだ。得られた全体を85℃に30分加熱した。挟まれていたものを分離し、得られた陰イオン交換膜を水中に入れた。
【0059】
次の膜特性がえられた。
Cap(meq/g)=2.67
含水率(%)=43.8
抵抗率(ohm−cm2)=11.1
厚さ(cm)=0.063
陰イオン交換容量は、硝酸塩形態(すなわち、織物を含まない)の乾燥陰イオン交換樹脂1グラム当たりのミリグラム当量で表した。含水率は硝酸塩形態(すなわち、織物を含まない)の湿潤陰イオン交換樹脂の重量%として表した。1平方センチメートルの塩酸塩形態の膜の面積抵抗は0.01NのNaCl中1000Hzで測定した。
【実施例2】
【0060】
DMAPMA(30.6g、0.18モル)、塩酸(15.4g、0.16モル)、1,2,3−プロパントリオールグリシジルエーテル(GE100)(23.6g、0.09モル)、N−ビニルカプロラクタム(9.4g、0.068モル)及び28.0gの水を混合し、1時間撹拌した。Wako Chemicals USA、Dallas、Tex.(VA044から供給された)1.4gの触媒2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩を加え、混合物を2枚のMylarシート間のアクリル布の上に拡げ、ガラスプレートの間に挟んだ。得られた全体を30分85℃に加熱した。挟まれていたものを分離し、得られた陰イオン交換膜を水中に入れた。
【0061】
次の膜特性が得られた。
Cap(meq/g)=2.35
含水率(%)=42.9
抵抗率(ohm−cm2)=15.4
厚さ(cm)=0.067
陰イオン交換容量は硝酸塩形態(すなわち、織物を含まない)の乾燥陰イオン交換樹脂1グラム当たりのミリグラム当量として表した。含水率は硝酸塩形態(すなわち、織物を含まない)の湿潤陰イオン交換樹脂の重量%として表した。塩酸塩形態の膜1平方センチメートルの面積抵抗は0.01NのNaCl中1000Hzで測定した。
【0062】
例示の目的で典型的な実施形態について説明して来たが、以上の説明は本発明の範囲を限定するものではない。従って、当業者には、本発明の思想と範囲から逸脱することなく様々な修正、適合、及び変更が明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する陰イオン交換ポリマー。
【化1】

式中、Rは−[CH2−CH(OH)]2−Wであり、R1は水素又はC1〜C12アルキル基であり、aは約0〜約0.75であり、b及びcは各々が独立して約0.25〜約1.0であり、Zは酸素又はN−R3であり、R2は−[CH2n−であり、R3は水素又は−[CH2m−CH3であり、R4及びR5は各々が独立して−[CH2m−CH3であり、XはCl、Br、I及び酢酸イオンからなる群から選択され、Wは橋架け基又は原子であり、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、Yは次のものからなる群から選択される。
【化2】

式中、R6、R7及びR8は各々が独立して水素、−[CH2q−CH3及び−CH(CH32からなる群から選択され、R9は−[CH2pであり、pは3〜6の数であり、qは0〜3の数である。
【請求項2】
1がメチル又はエチルであり、WがC1〜C30アルキル基、C1〜C30アルキルエーテル基、C6〜C30芳香族基、C6〜C30芳香族エーテル基又はシロキサンであり、mは0〜10の整数であり、nは1〜10の整数である、請求項1記載の陰イオン交換ポリマー。
【請求項3】
aが約0.25〜0.50である、請求項1記載の陰イオン交換ポリマー。
【請求項4】
第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することを含んでなる、陰イオン交換ポリマーを製造する方法。
【請求項5】
第三アミンがエチレン性第三アミンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第三アミンが、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第三アミンモノマーがジメチルアミノプロピルメタクリルアミドである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ポリエポキシドがジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテルである、請求項4記載の方法。
【請求項9】
ポリエポキシドが、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジイルジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]メタン、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、臭素化ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル−終端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,2,3−プロパントリオールグリシジルエーテル、1,3−ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルからなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記反応を、約40〜約150℃に約1分〜約2時間加熱することで行う、請求項4記載の方法。
【請求項11】
酸抑制剤が塩酸、メタンスルホン酸、硫酸又はリン酸である、請求項4記載の方法。
【請求項12】
ポリエポキシドの当量モルに対する第三アミンのモル数の比が約0.3〜約1.5である、請求項4記載の方法。
【請求項13】
さらに、エチレン性モノマーを添加することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項14】
エチレン性モノマーが、メタクリルアミン、N−メチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及びトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリドからなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
次式を有する陰イオン交換ポリマーを含んでなるイオン交換材料。
【化3】

式中、Rは−[CH2−CH(OH)]2−Wであり、R1は水素又はC1〜C12アルキル基であり、aは約0〜約0.75であり、b及びcは各々が独立して約0.25〜約1.0であり、Zは酸素又はN−R3であり、R2は−[CH2n−であり、R3は水素又は−[CH2m−CH3であり、R4及びR5は各々が独立して−[CH2m−CH3であり、XはCl、Br、I及び酢酸イオンからなる群から選択され、Wは橋架け基又は原子であり、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、Yは次のものからなる群から選択される。
【化4】

式中、R6、R7及びR8は各々が独立して水素、−[CH2q−CH3及び−CH(CH32からなる群から選択され、R9は−[CH2pであり、pは3〜6の数であり、qは0〜3の数である。
【請求項16】
1がメチル又はエチルであり、WがC1〜C30アルキル基、C1〜C30アルキルエーテル基、C6〜C30芳香族基、C6〜C30芳香族エーテル基又はシロキサンであり、mが0〜10の整数であり、nが1〜10の整数である、請求項15記載の陰イオン交換ポリマー。
【請求項17】
aが約0.25〜0.50である、請求項15記載の陰イオン交換ポリマー。
【請求項18】
第三アミン、酸抑制剤及びポリエポキシドを反応させて第四アンモニウムモノマーを形成し、第四アンモニウムモノマーを触媒の存在下で重合することを含んでなる、イオン交換材料を製造する方法。
【請求項19】
第三アミンがエチレン性第三アミンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
第三アミンが、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第三アミンモノマーがジメチルアミノプロピルメタクリルアミドである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
ポリエポキシドがジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテルである、請求項18記載の方法。
【請求項23】
ポリエポキシドが、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジイルジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]メタン、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、臭素化ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル−終端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,2,3−プロパントリオールグリシジルエーテル、1,3−ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルからなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記反応を、約1分〜約2時間約40〜約150℃に加熱することで行う、請求項18記載の方法。
【請求項25】
酸抑制剤が塩酸、メタンスルホン酸、硫酸又はリン酸である、請求項18記載の方法。
【請求項26】
ポリエポキシドの当量モルに対する第三アミンのモル数の比が約0.3〜約1.5である、請求項18記載の方法。
【請求項27】
さらに、エチレン性モノマーを添加することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項28】
エチレン性モノマーが、メタクリルアミン、N−メチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及びトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリドからなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
イオン交換材料が陰イオン交換膜である、請求項15記載のイオン交換材料。

【公表番号】特表2011−506749(P2011−506749A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539540(P2010−539540)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/079900
【国際公開番号】WO2009/079082
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】