説明

階層構造の粒子集合体及びその製造方法

【課題】複雑で設計の自由度が高く、粒子構造に応じた機能を発現可能な階層構造の粒子集合体、及び、該粒子集合体を簡便かつ安価な方法で製造可能とする階層構造の粒子集合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の階層構造の粒子集合体は、基板と、該基板上に形成したテンプレートと、該テンプレート上に形成されたナノ構造体とを備える階層構造の粒子集合体であり、前記テンプレートは、球状粒子が規則的に配列された球状粒子層が前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて少なくとも2層積層されて形成され、前記球状粒子の粒径サイズは、前記球状粒子層間で異なり、前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて小さく、前記ナノ構造体は、前記テンプレートの最表層を形成する前記球状粒子層における個々の前記球状粒子上に配され、前記球状粒子の粒径サイズよりも小さな粒径のナノ粒子で形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイズの異なる粒子が多段に積層された階層構造の粒子集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロナノ階層構造は、マイクロ構造とナノ構造の利点を併せ持つことから光電子材料や微小流体デバイス、バイオメディカルデバイス、電界放射などでの応用が期待されている。もしこのような階層構造が、規則的な配置で形成されていれば、表面に安定かつ均一な状態で機能発現が可能であり、さまざまな応用の可能性が開かれてくる。
一般に、マイクロナノ階層構造は、電場、化学輸送法、電子照射などによって誘起されるプロセスによって合成される(非特許文献1参照)。
例えば、リソグラフィー技術を使ってマイクロナノ階層構造を作製する場合、最初にマイクロ構造をさまざまなリソグラフィー技術を使って作製し(非特許文献2参照)、その上にナノ構造を作製する(非特許文献3参照)。
しかし、この方法では、リソグラフィー技術に基づいているため設備的な問題で応用が限定されてしまう。したがって、簡便な方法で複雑な階層構造を作製する技術の開発が極めて重要である。
【0003】
ところで、単層コロイドテンプレートは、いろいろなパターンの周期構造作製に有効であることが分かってきている(非特許文献4参照)。また、マイクロサイズ球の単層コロイドにナノ材料を蒸着させることにより、さまざまなマイクロナノ階層構造が得られることが報告されている(非特許文献5及び特許文献1参照)。
しかし、バイオテクノロジーや他の特殊な応用では、より複雑な階層構造が必要となってきている。低価格・簡単な操作で複雑な階層構造を設計・作製できることも重要なポイントである。単層コロイドテンプレートを利用した、より複雑な階層構造の作製は、未だ困難である。
単層コロイド結晶の隙間に小さなコロイド結晶を配列させた階層構造が既に報告されているが(非特許文献6参照)、隙間空間を利用することからコロイド粒子サイズの自由度は限定されてしまい、大きな粒子に全体の構造が支配されてしまう傾向が強い。
このような現状から、サイズの異なる粒子を多段に積層させた3層の階層構造を有する粒子集合体の報告例は、未だ存在していない。
このようなサイズの異なる3層の階層構造の粒子集合体が実現できれば、より一層、階層構造の粒子集合体の設計の自由度が高まり、種々の機能性材料への応用の途が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226396号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】a)C.H.Ye,L.D.Zhang,X.S.Fang,Y.H.Wang,P.Yan,J.W.Zhao,Adv.Mater.2004,16,1019.b)J.Y.Lao,J.G.Wen,D.Z.Wang,Z.F.Ren,Nano Lett.2002,2,1287.c)P.X.Gao,Y.Ding,Z.L.Wang,Nano Lett.2003,3,1315.d)L.Ye,W.Guo,Y.Yang,Y.Du,Y.Xie,Chem.Mater.2007,19,6331.e)S.O.Cho,E.J.Lee,H.M.Lee,J.G.Kim,Y.J.Kim,Adv.Mater.2006,18,60.
【非特許文献2】a)G.M.Wallraff,W.D.Hinsberg,Chem.Rev.1999,99,1801.b)H.I.Smith,M.L.Schattenburg,IBM J.Res.Dev.1993,37,319.c)J.A. Stroscio,D.M.Eigler,Science 1991,254,1319.d)G.−Y.Liu,S.Xu,Y.Qian,Acc.Chem.Res.2000,33,457.e)R.D.Piner,J.Zhu,F.Xu,S.Hong,C.A.Mirkin,Science 1999,283,661.
【非特許文献3】L.Gao,T.J.McCarthy,Langmuir,2006,22,2966.
【非特許文献4】a)S.−M.Yang,S.G.Jang,D.−G.Choi,S.Kim,H.K.Yu,Small,2006,2,458.b)G.Zhang,D.Wang,Chem.Asian J. 2008,4,236.c)Y.Li,W.P.Cai,G.T.Duan,Chem.Mater.2008,20,615.d)X.Chen,Z.M.Chen,N.Fu,G.Lu,B.Yang,Adv.Mater.2003,15,1413.e)P.Jiang,M.McFarland,J.J.Am.Chem.Soc.2004,126,13778.f)C.L.Haynes,R.P.van Duyne,J.Phys.Chem.B 2001,105,5599.g)L.M.Qi,Coord.Chem.Rev.2010,254,1054.h)Q.Yan,F.Liu,L.Wang,J.Y.Lee,X.S.Zhao,J.Mater.Chem.2006,16,2132.
【非特許文献5】a)J.−T.Chen,D.Chen,T.P.Russell,Langmuir 2009,25,4331.b)Y.Li,X.J.Huang,S.H.Heo,C.C.Li,Y.K.Choi,W.P.Cai,S.O.Cho,Langmuir 2007,23,2169.c)Y.Li,E.J.Lee,S.O.Cho,J.Phys.Chem.C 2007,111,14813.d)G.T.Duan,W.P.Cai,Y.Y.Luo,Y.Li,Y.Lei,Appl.Phys.Lett.,2006,89,181918.
【非特許文献6】J.J.Kim,Y.Li,E.J.Lee,S.O.Cho,Langumuir,2011,27,2334.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、複雑で設計の自由度が高く、粒子構造に応じた機能を発現可能な階層構造の粒子集合体、及び、該粒子集合体を簡便かつ安価な方法で製造可能とする階層構造の粒子集合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基板と、該基板上に形成したテンプレートと、該テンプレート上に形成されたナノ構造体とを備える階層構造の粒子集合体であり、前記テンプレートは、球状粒子が規則的に配列された球状粒子層が前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて少なくとも2層積層されて形成され、前記球状粒子の粒径サイズは、前記球状粒子層間で異なり、前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて小さく、前記ナノ構造体は、前記テンプレートの最表層を形成する前記球状粒子層における個々の前記球状粒子上に配され、前記球状粒子の粒径サイズよりも小さな粒径のナノ粒子で形成されることを特徴とする階層構造の粒子集合体。
<2> テンプレートは、基板側から、マイクロサイズの球状粒子で形成された第1の球状粒子層と、サブマイクロサイズの球状粒子で形成された第2の球状粒子層とがこの順で積層される前記<1>に記載の階層構造の粒子集合体。
<3> 球状粒子層は、最密充填構造を備える前記<1>から<2>のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体。
<4> 親水性の機能材料として用いられる前記<1>から<3>のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体。
<5> 第1の基板上に直接又は間接的に、球径がマイクロサイズの球状マイクロ粒子を液中に分散させた第1のコロイド溶液を展開して前記第1の基板上に前記球状マイクロ粒子が規則的に周期配置された単層コロイド結晶の第1の球状粒子層を形成する第1の球状粒子層形成工程と、第2の基板上に球径がサブマイクロサイズの球状サブマイクロ粒子を液中に分散させた第2のコロイド溶液を展開し、前記第2の基板上に前記球状サブマイクロ粒子が規則的に周期配置された単層コロイド結晶の第2の球状粒子層を形成する第2の球状粒子層形成工程と、前記第2の球状粒子層が形成された前記第2の基板を液中に浸し、前記第2の基板から前記第2の球状粒子層を浮かせた状態とし、この状態の前記第2の球状粒子層を、前記液中に潜らせた前記第1の基板の前記第1の球状粒子層が形成された面側で掬い上げ、前記第1の球状粒子層の個々の粒子上に前記第2の球状粒子層を構成する粒子が複数配された2段の階層構造を形成する2段階層構造形成工程と、前記第2の球状粒子層の個々の粒子上にナノサイズの粒子を蒸着させて3段目となるナノ構造物を形成する3段階層構造形成工程と、を含むことを特徴とする階層構造の粒子集合体の製造方法。
<6> 第1の球状粒子層形成工程が、第1の球状粒子層が直接形成された状態の第1の基板に対して加熱処理を行うことを含む前記<5>に記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
<7> 第1の球状粒子層形成工程が、第1の基板上に形成された第1の球状粒子層に対して親水化処理を行うことを含む前記<5>から<6>のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
<8> 第1の球状粒子層形成工程が、球状マイクロ粒子を自己集合させて最密充填構造とした第1の球状粒子層を形成する工程であり、第2の球状粒子層形成工程が、球状サブマイクロ粒子を自己集合させて最密充填構造とした第2の球状粒子層を形成する工程であり、2段階層構造形成工程が、液面に浮いた状態で最密充填構造が維持されたままの前記第2の球状粒子層を掬い上げて前記第1の球状粒子層上に前記第2の球状粒子層を形成する工程である前記<5>から<7>のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
<9> 球状マイクロ粒子及び球状サブマイクロ粒子が、ポリスチレンを含む材料である前記<5>から<8>のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
<10> ナノ粒子層が、CuO、ZnO、Fe、TiO、NiO、WO、SnO及びCのいずれかを含む材料で形成される前記<5>から<9>のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、複雑で設計の自由度が高く、粒子構造に応じた機能を発現可能な階層構造の粒子集合体、及び、該粒子集合体を簡便かつ安価な方法で製造可能とする階層構造の粒子集合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る階層構造の粒子集合体の作製プロセスを説明する説明図である。
【図2A】実施例1に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。
【図2B】図2Aに対して、より拡大して表示するFE−SEM像である。
【図2C】実施例1に係る階層構造の粒子集合体の一断面を切り出して観たFE−SEM像である。
【図3】実施例1に係る階層構造の粒子集合体の透過型電子顕微鏡像である。左上の挿入図は、3層の階層構造の粒子集合体から剥がれたナノ構造付きサブマイクロ構造を示す透過型電子顕微鏡像である。右上の挿入図は、レーザー蒸着法により得られたナノ構造の制限視野電子線回折パターンである。
【図4A】実施例2に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFF−SEM像である。
【図4B】実施例3に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。
【図4C】実施例4に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。
【図5A】実施例5に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。左右の挿入図は、熱処理前(左)と熱処理後(右)の高倍率電子顕微鏡像である。スケールは、500nmである。
【図5B】実施例5に係る階層構造の粒子集合体に対して、ピンセットで一部の構造を剥ぎ落してダメージを与え、粒子内部の状態を確認した様子を示すFE−SEM像である。
【図5C】実施例5に係る階層構造の粒子集合体の一断面を切り出して観たFE−SEM像である。
【図6A】実施例6に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。
【図6B】図6Aに対して、より拡大して表示するFE−SEM像である。
【図6C】実施例7に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。
【図6D】図6Cに対して、より拡大して表示するFE−SEM像である。
【図6E】実施例8に係る階層構造の粒子集合体を上面から観たFE−SEM像である。
【図6F】図6Eに対して、より拡大して表示するFE−SEM像である。
【図7】実施例1に係る階層構造の粒子集合体によって誘起されたぬれ性を示す写真である
【発明を実施するための形態】
【0010】
(階層構造の粒子集合体の製造方法)
先ず、本発明に係る階層構造の粒子集合体の製造方法の実施形態を説明し、次に、本発明の階層構造の粒子集合体の実施形態を説明する。
本発明の階層構造の粒子集合体の製造方法は、第1の球状粒子層形成工程と、第2の球状粒子層形成工程と、2段階層構造形成工程と、3段階層構造形成工程と、を含む。ただし、必要に応じて、その他の工程が含まれてもよい。
【0011】
<第1の球状粒子層形成工程>
前記第1の球状粒子層形成工程は、第1の基板上に直接又は間接的に、球径がマイクロサイズの球状マイクロ粒子を液中に分散させた第1のコロイド溶液を展開し、前記第1の基板上に前記球状マイクロ粒子が規則的に周期配置された第1の単層コロイド結晶の第1の球状粒子層を形成する工程である。
なお、前記第1の基板上に間接的に前記第1の球状粒子層を形成する場合、前記第1の基板と前記第1の球状粒子層との間に、第1の球状粒子層の粒径よりも大きな粒径からなる他の球状粒子層を形成する工程を加えることができる。
【0012】
前記球状マイクロ粒子の形状としては、球状であれば特に制限はなく、楕円球状、真球状を含むが、真球状が好ましい。
前記球状マイクロ粒子の形成材料としては、特に制限はなく、前記粒子集合体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル類、ポリウレタン類、ガラスを含む材料が挙げられる。中でも、ポリスチレンで形成されたポリスチレン球(PS球)が、粒径が均一で真球状のものが入手し易い観点から好ましい。なお、前記ガラスを用いる場合、前記球状マイクロ粒子を加熱してその粒子内部を取り除く処理(後述の実施例5参照)が難しくなる。
前記球状マイクロ粒子を液中に分散させた第1のコロイド溶液としては、前記球状マイクロ粒子を含むものであれば、特に制限はなく、市販品のものから適宜選択して入手することができる。
なお、本明細書において、マイクロサイズとは、1×10−6m以上1×10−3m未満の大きさを示す。
【0013】
前記第1の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコン基板、ガラス基板等の公知の基板が挙げられる。
【0014】
前記第1の球状粒子層形成工程としては、前記球状マイクロ粒子の規則的な周期配置が得られる限り特に制限はないが、前記球状マイクロ粒子を自己集合させて、前記第1の単層コロイド結晶を最密充填構造として形成することが好ましい。このような工程により、各粒子がより規則的に周期配置された前記粒子集合体を得ることができる。
前記自己集合の具体的なプロセスとしては、例えば、スピンコートや低速引き上げする方法が挙げられる。
なお、本明細書において最密充填構造とは、単層で構成される二次元の六方最密充填構造を指す。
【0015】
また、前記第1の球状粒子層形成工程では、特に制限はないが、前記第1の球状粒子層が直接形成された状態の前記第1の基板に対して加熱処理を行うことが好ましい。
これにより、前記第1の球状粒子層を前記第1の基板上に確実に固定することができる。
前記加熱処理の方法としては、低くとも前記球状マイクロ粒子のガラス転移温度を超える温度で加熱処理することが好ましい。
なお、前記第1の球状粒子層を前記第1の基板上に固定する方法としては、前記加熱処理以外の方法も適用することができ、例えば、前記第1の基板に化学修飾を施し、化学的に固定してもよい。
【0016】
また、前記第1の球状粒子層形成工程では、特に制限はないが、第1の基板上に形成された第1の球状粒子層に対して親水化処理を行うことが好ましい。
これにより、後述する2段階層構造形成工程において、より安定した状態で前記第1の球状粒子層上に第2の球状粒子層を掬い上げることができる。
【0017】
<第2の球状粒子層形成工程>
前記第2の球状粒子層形成工程は、第2の基板上に球径がサブマイクロサイズの球状サブマイクロ粒子を液中に分散させた第2のコロイド溶液を展開し、前記第2の基板上に前記球状サブマイクロ粒子が規則的に周期配置された単層コロイド結晶の第2の球状粒子層を形成する工程である。
【0018】
前記球状サブマイクロ粒子の形状としては、球状であれば特に制限はなく、楕円球状、真球状を含むが、真球状が好ましい。
前記球状サブマイクロ粒子の形成材料としては、特に制限はなく、前記粒子集合体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル類、ポリウレタン類、ガラスを含む材料が挙げられる。中でも、ポリスチレンで形成されたポリスチレン球(PS球)が、粒径が均一で真球状のものが入手し易い観点から、好ましい。
前記球状サブマイクロ粒子を液中に分散させた第2のコロイド溶液としては、前記球状マイクロ粒子を含むものであれば、特に制限はなく、市販品のものから適宜選択して入手することができる。
なお、本明細書において、サブマイクロサイズとは、1×10−7m以上1×10−6m未満の大きさを示す。
【0019】
前記第2の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコン基板、ガラス基板等の公知の基板が挙げられる。
なお、前記第2の基板としては、前記第2の球状粒子層を固定する必要がなく、液中に潜らせたときに前記第2の球状粒子層が安定した状態で液面に浮くよう、前記第2の球状粒子層との剥離性が良好であることが好ましい。
【0020】
前記第2の球状粒子層形成工程としては、前記球状サブマイクロ粒子の規則的な周期配置が得られる限り特に制限はないが、前記第1の球状粒子層形成工程と同様に、前記球状マイクロ粒子を自己集合させて、前記第2の球状粒子層を最密充填構造として形成することが好ましい。このような工程により、各粒子がより規則的に周期配置された前記粒子集合体を得ることができる。
【0021】
<2段階層構造形成工程>
前記2段階層構造形成工程は、前記第2の球状粒子層が形成された前記第2の基板を液中に浸し、前記第2の基板から前記第2の球状粒子層を浮かせた状態とし、この状態の前記第2の球状粒子層を、前記液中に潜らせた前記第1の基板の前記第1の球状粒子層が形成された面側で掬い上げ、前記第1の球状粒子層の個々の粒子上に前記第2の球状粒子層を構成する粒子が複数配された2段の階層構造を形成する工程である。
【0022】
前記2段階層構造形成工程の実施方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水を溜めた液槽を用意し、この液槽中で作業を実施することができる。
前記2段階層構造形成工程においては、特に制限はないが、前記第2の球状粒子層が液面に浮いた状態で二次元六方最密充填構造が維持されることが好ましい。
このような状態とする方法としては、例えば、表面処理を施した基板上で単層コロイド結晶を作製したり、適当な条件下で単層コロイド結晶を作製したりすることが挙げられる。
【0023】
<3段階層構造形成工程>
前記3段階層構造形成工程は、前記第2の球状粒子層の個々の粒子上にナノサイズの粒子を蒸着させて3段目となるナノ構造物を形成する工程である。
【0024】
前記ナノサイズの粒子で形成されるナノ構造物の形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CuO、ZnO、Fe、TiO、NiO、WO、SnO、Cを含む材料が挙げられる。
前記ナノ構造物の様態としては、特に制限はなく、層状の場合のほか、前記第2の球状粒子層を構成する個々の粒子上に複数のナノロッドを密集させた状態も含む。
また、前記ナノ構造物の形成方法としては、特に制限はないが、均一なナノサイズの粒子の粒子層が得られ、かつナノ粒子の密度を作製条件を調製することで変化させることができるという観点から、レーザーアブレーション法(PLD法)が好ましい。
なお、本明細書において、ナノサイズとは、1×10−9m以上1×10−7m未満を示す。
【0025】
本発明の一実施形態に係る階層構造の粒子集合体の作製プロセスを図1に基づき説明する。
まず、第1の基板上1に、自己集合プロセスにより、球径がマイクロサイズの球状マイクロ粒子2を液中に分散させた第1のコロイド溶液を展開し、単層コロイド結晶の球状粒子層2’を形成する(第1の球状粒子層形成工程、図中(A)参照)。
次いで、第2の基板1’上に、自己集合プロセスにより、球径がサブマイクロサイズの球状サブマイクロ粒子3を液中に分散させた第2のコロイド溶液を展開し、単層コロイド結晶の球状粒子層3’を形成する(第2の球状粒子層工程、図中(B)参照)。
次いで、球状粒子層3’が形成された第2の基板1’を水中にゆっくりと浸し、第2の基板1’から球状粒子層3’を剥離させるとともに、球状粒子層3’を液面に浮かせた状態とする。この状態で、球状粒子層2’が形成された第1の基板1を水中に潜らせ、該基板の球状粒子層2’上に球状粒子層3’を掬い上げる(2段階層構造形成工程、図中(C)参照)。
次いで、球状粒子層3’上にナノ粒子4を蒸着させ、ナノ構造物4’を形成する(3段階層構造形成工程、図中(D)参照)。
以上により、第1の基板1上に、マイクロ構造の球状粒子層2’とサブマイクロ構造の球状粒子層3’とナノ構造のナノ構造物4’とがこの順で積層された3段の階層構造の粒子集合体5を得ることができる。
【0026】
(階層構造の粒子集合体)
本発明の階層構造の粒子集合体は、基板と、該基板上に形成したテンプレートと、該テンプレート上に形成されたナノ構造体とを備える階層構造の粒子集合体である。
前記テンプレートは、球状粒子が規則的に配列された球状粒子層が前記基板側から前記ナノ構造体に向けて少なくとも2層積層されて形成され、前記球状粒子の粒径サイズは、前記球状粒子層間で異なり、前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて小さくなるものとされる。
また、前記ナノ構造体は、前記テンプレートの最表層を形成する前記球状粒子層における個々の前記球状粒子上に配され、前記球状粒子の粒径サイズよりも小さな粒径のナノ粒子で形成される。
【0027】
前記階層構造の粒子集合体の製造方法としては、特に制限はないが、前記本発明の階層構造の粒子集合体の製造方法により製造することができる。
例えば、前記テンプレートを構成する少なくとも2層の球状粒子層としては、例えば、本発明の前記階層構造の粒子集合体の製造方法における前記第1の球状粒子層形成工程、前記第2の球状粒子層形成工程、及び前記2段階層構造形成工程により製造することができ、前記ナノ構造体としては、本発明の前記階層構造の粒子集合体の製造方法における3段階層構造形成工程により製造することができる。
【0028】
前記テンプレートとしては、特に制限はないが、簡便に製造可能である観点から、前記基板側から、マイクロサイズの球状粒子で形成された第1の球状粒子層と、サブマイクロサイズの球状粒子で形成された第2の球状粒子層とがこの順で積層された構造が好ましい。
【0029】
前記球状粒子層としては、特に制限はないが、特異な機能を発現可能である観点から最密充填構造を備えることが好ましい。
なお、前記球状粒子層を構成する粒子としては、前記球状粒子自体のほか、加熱等により変形した前記球状粒子の変形物も含まれる。
【0030】
前記粒子集合体としては、その特殊な階層構造から、分離化学や薬剤徐放などにおいて重要な応用が期待される。
また、以下の実施例で検討されるように、親水性に優れた機能材料として構成することができ、マイクロ流路デバイスやバイオ関連デバイスのように表面のぬれ性が性能に大きく影響するデバイスに応用することができる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
まず、第1の基板としてのシリコン基板に、直径2μmのポリスチレン球(PS球)を2.5wt%で分散させたコロイド溶液(Alfa Aesar Co.製)を展開し、その自己集合プロセスにより、シリコン基板上にPS球の単層コロイド結晶(マイクロサイズ)からなる第1の球状粒子層を作製した。
この状態で、ポリスチレンのガラス転移温度100℃よりも少し高い120℃の温度で3分間加熱することにより、第1の球状粒子層(マイクロサイズ)をシリコン基板上に固定した。
シリコン基板上に固定された第1の球状粒子層(マイクロサイズ)に対して、その表面を親水性にするため、オゾン処理を行った。このオゾン処理は、第1の球状粒子層が固定されたシリコン基板をオゾン処理装置内に収容して、45分間オゾン処理することにより行った。
【0032】
次いで、第2の基板としての別のシリコン基板表面に、直径350nmのPS球を2.5wt%で分散させたコロイド溶液(Alfa Aesar Co.製)を展開し、その自己集合プロセスにより、シリコン基板上にPS球の単層コロイド結晶(サブマイクロサイズ)からなる第2の球状粒子層を作製した。なお、この第2の球状粒子層(サブマイクロサイズ)に対しては、加熱処理を行わず、シリコン基板上に固定しない。
【0033】
次いで、シリコン基板ごと水中にゆっくり浸すことで、PS球で形成される第2の球状粒子層(サブマイクロサイズ)をシリコン基板から剥離させ、該第2の球状粒子層(サブマイクロサイズ)を、その周期配列が維持されたままの状態で液面に浮かせた。
【0034】
次いで、第1の球状粒子層(マイクロサイズ)が固定されたシリコン基板を水中に潜らせ、液面に浮かせた状態の第2の球状粒子層(サブマイクロサイズ)を下側から掬い上げた。
これにより、マイクロサイズの第1の球状粒子層上に、サブマイクロサイズの第2の球状粒子層が積層された2層の階層構造を作製した。
【0035】
次いで、2層の階層構造を充分乾燥させた後、第2の球状粒子層側から、レーザーアブレーション法によりCuOを厚み300nmで一様に蒸着した。ここでの蒸着条件は、1パルス(パルス幅:7ns)当たり100mJの紫外レーザー光(355nm)をCuOターゲット表面上で2mm径に集光して10Hzで1時間の照射であった。また、雰囲気ガスは酸素で、圧力は6.7Paであった。この条件で得られるCuOでは、ナノ粒子が集まってできた凝集体が生成し、ナノ構造をもった膜が形成する。
これにより、マイクロサイズの第1の球状粒子層上に、サブマイクロサイズの第2の球状粒子層と、ナノサイズのCuO層(ナノ構造体)とがこの順で積層された3層の階層構造を作製した。
以上により、実施例1に係る階層構造の粒子集合体を製造した。
【0036】
図2A、Bは、実施例1に係る階層構造の粒子集合体をナノサイズのCuO構造体側からみたFE−SEM写真である。また、図2Cは、実施例1に係る階層構造の粒子集合体の一断面を切り出して観たFE−SEM写真である。
マイクロサイズのPS球(直径2μm)は、二次元六方最密充填構造を形成している(図2A)。
各マイクロサイズのPS球上には、サブマイクロサイズのPS球(直径350nm)が二次元六方最密充填構造をとるように形成されている。また、各サブマイクロサイズのPS球上には、ナノサイズのCuO構造体が積層されている(図2B)。
図2Cに示す断面のFE−SEM像からも、マイクロ構造は、マイクロサイズのPS球で形成され、サブマイクロ構造は、マイクロサイズのPS球の上のサブマイクロ球で形成され、ナノ構造は、サブマイクロサイズのPS球の上に形成されていることを確認することができる。また、マイクロサイズのPS球の下側は、シリコン基板と接触面を有するように部分的に変形しているとともに、該PS球の側部は、隣接する球同士で接触面を有するように部分的に変形していることが分かる。これはPSのガラス転移点を少し超える温度で加熱されたために起こる変形によるものである。
こうした接触面を有することにより、マイクロサイズの単層コロイド結晶は、シリコン基板上に、周期配列が維持された状態で強く固定され、剥がれ落ちないことになる。
【0037】
この実施例1における手法では、マイクロサイズのPS球をシリコン基板上に自己集合させて単層コロイド結晶(第1の球状粒子層)を形成するが、この時に二次元六方最密充填をとる。
サブマイクロサイズのPS球も同様に自己集合させて単層コロイド結晶(第2の球状粒子層)を形成し、二次元六方最密充填構造をとるが、この周期配列は、シリコン基板から液面に浮かせた状態で維持され、マイクロサイズの単層コロイド結晶上で二次元六方最密充填構造が保たれている。
ナノ構造は、サブマイクロサイズのPS球上に形成する。このナノ構造は、1つのPS球上に複数の柱状体が集合して形成されている。こうした形状は、シャドー効果と比較的高い圧力による等方性蒸着により引き起こされる。
【0038】
実施例1に係る階層構造の粒子集合体の透過型電子顕微鏡像を図3に示す。この透過型電子顕微鏡像では、マイクロサイズ及びサブマイクロサイズの球状体と、複数の柱状体からなるナノ構造が確認され、SEMによる断面像とよく対応している。
更に、この透過型電子顕微鏡像では、放射状のナノロッドが球状体の表面に垂直に成長している様子が分かる。
また、このナノ構造に関し、制限視野電子線回折パターンから多結晶のCuOが同定され、これは、XRD分析の結果とも一致した。
【0039】
(実施例2)
実施例1に係る手法では、マイクロ/サブマイクロ/ナノの複雑な3段階層構造からなる粒子集合体を、最下層及び第2層の周期性を変えたり、更にレーザー蒸着の条件を変えることで適宜変更することが可能である。また、第1の基板と第1の球状粒子層との間に、第1の球状粒子層を構成する粒子の粒径よりも大きな粒径の粒子からなる他の球状粒子層を形成することもできる。
ここで、サブマイクロサイズの単層コロイド結晶の作製に用いるPS球を直径350nmのものから直径200nmに変更したこと以外、実施例1に係る階層構造の粒子集合体と同様の製造条件として、実施例2に係る階層構造の粒子集合体を製造した。
この実施例2に係る階層構造の粒子集合体は、実施例1に係る階層構造の粒子集合体と同じマイクロサイズ及びナノサイズの構造を有するが、サブマイクロサイズの構造だけが異なる(図4A)。
【0040】
(実施例3)
また、マイクロサイズの単層コロイド結晶の作製に用いるPS球を直径2μmのものから直径5μmに変更したこと以外、実施例1に係る階層構造の粒子集合体と同様の製造条件として、実施例3に係る階層構造の粒子集合体を製造した。
この実施例3に係る階層構造の粒子集合体は、実施例1に係る階層構造の粒子集合体と同じサブマイクロサイズ及びナノサイズの構造を有するが、マイクロサイズの構造だけが異なる(図4B)。
【0041】
(実施例4)
更に、サブマイクロサイズの単層コロイド結晶の作製に用いるPS球を直径350nmのものから直径200nmに変更し、マイクロサイズの単層コロイド結晶の作製に用いるPS球を直径2μmのものから直径5μmに変更したこと以外、実施例1に係る階層構造の粒子集合体と同様の製造条件として、実施例4に係る階層構造の粒子集合体を製造した。
この実施例4に係る階層構造の粒子集合体は、実施例1に係る階層構造の粒子集合体と同じナノサイズの構造を有するが、マイクロサイズ及びサブマイクロサイズの構造が異なる(図4C)。
なお、ナノ構造は蒸着時の圧力や蒸着時間を変えることで変化させることが可能である。
【0042】
(実施例5)
更なる検討では、このような3層の階層構造において、高温での熱処理を実施することにより、マイクロサイズ及びサブマイクロサイズの単層コロイド結晶を構成するコロイド粒子(PS球)から、粒子内部が取り除かれて元の構造をほぼ維持した構造を作ることも可能であることが分かった。
ここでは、その例として直径2μmと直径350nmのPS球の組み合わせによる2層の階層構造の粒子集合体から作製した、実施例1に係る3層の階層構造の粒子集合体に高温の熱処理を加えた場合について取り上げる(図5A〜C)。ここでの熱処理は、空気中で温度600℃の温度で3時間加熱して行った。
これにより、実施例5に係る階層構造の粒子集合体を製造した。
【0043】
この実施例5に係る階層構造の粒子集合体は、図5Aに示すように、マイクロサイズの単層コロイド結晶は、二次元六方最密充填構造を維持し、サブマイクロサイズの単層コロイド結晶も二次元六方最密充填構造を維持していた。
しかし、ナノ構造は、熱処理前の構造とは少し異なっていた。熱処理後のナノ構造は、尖った先端をもった放射状ナノロッド(図5Aの挿入図左側)から先端が球状のナノ突起へと変化した(図5Aの挿入図右側)。
加えて、マイクロサイズ及びサブマイクロサイズの構造体では、これらを構成するコロイド粒子(PS球)の内部が取り除かれ、いわば抜け殻状として、中空状のコロイド粒子による周期配列が維持されていた(図5B、図5C)。なお、図5Bの右側は、ピンセットで一部の構造を剥ぎ落してダメージを与え、粒子内部の状態を確認した様子を示すものである。
こうした中空状のコロイド粒子による周期配列が維持される階層構造の粒子集合体においては、粒子集合体全体が、中空状のコロイド粒子により支持されるとともに、シリコン基板上により強固に接着され、水中で超音波を20分間かけてもシリコン基板から剥がれ落ちることはなかった。
【0044】
(実施例6〜8)
この方法は蒸着物質を変えることでさまざまな物質で同様の構造を作製することができる。CuO以外では、ZnO,Fe,TiO,NiO,WO,SnO,Cなどで同様の構造が得られることを確認している。
ここでは、実施例1のナノ構造部分において、CuOに代えて、結晶性のZnOで形成した階層構造の粒子集合体(実施例6)、結晶性のFeで形成した階層構造の粒子集合体(実施例7)、アモルファス性のTiOで形成した階層構造の粒子集合体(実施例8)を図示する。
【0045】
図6A及び図6Bは、結晶性のZnOを用いた実施例6に係る階層構造の粒子集合体のSEM像である。また、図6C及び図6Dは、結晶性のFeを用いた実施例7に係る階層構造の粒子集合体のSEM像である。これらの粒子集合体の製造においては、ZnOとFeをターゲットとして用い、酸素分圧6.7Pa,蒸着時間0.5時間(ZnO)、1時間(Fe)とした。
また、図6E及び図6Fは、アモルファス性のTiOを用いた実施例8に係る階層構造の粒子集合体のSEM像である。この粒子集合体の製造においては、TiOをターゲットとして用い、酸素分圧6.7Pa,蒸着時間40分とした。
【0046】
このようにして得られた特殊なマイクロ/サブマイクロ/ナノ階層構造は、各構造に起因する性質を示す。
例えば、実施例1に係る階層構造の粒子集合体においては、図7に示されるように、水に対して接触角5.2°で超親水性を示した(超親水性は通常、水に対する接触角が10度以下と定義される)。
【0047】
(比較例1)
マイクロ構造及びサブマイクロ構造を形成することなく、直接、シリコン基板上にナノサイズのCuO層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る粒子集合体を作製した。
この比較例1の粒子集合体に対し、実施例1と同じ条件で水の接触角を測定したところ、22.9°であった。
【0048】
(比較例2)
マイクロ構造を形成することなく、直接、シリコン基板上にサブマイクロ構造を形成し、該サブマイクロ構造上にナノサイズのCuO層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る粒子集合体を作製した。なお、シリコン基板上にサブマイクロ構造を形成するに際し、実施例1において、シリコン基板上にマイクロ構造を固定するために実施する加熱処理と同様の加熱処理を行った。
この比較例2の粒子集合体に対し、実施例1と同じ条件で水の接触角を測定したところ、19.2°であった。
【0049】
(比較例3)
サブマイクロ構造を形成することなく、直接、マイクロ構造上にナノサイズのCuO層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る粒子集合体を作製した。
この比較例3の粒子集合体に対し、実施例1と同じ条件で水の接触角を測定したところ、15.3°であった。
【0050】
一般に、Wenzelの式が荒れた表面のぬれ性を説明するのに用いられる。
cosθ=rcosθ (1)
ここで、rは、表面粗さを示し、全表面積の水平面に投影された面積に対する比を表す。θとθは、粒子膜と平坦な膜の接触角を示す。この式は、ぬれ性が表面粗さの増加によって増強されることを示している。
【0051】
マイクロ構造及びサブマイクロ構造のない平坦な基板上にナノサイズのCuO層を形成した比較例1に係る構造体に比べて、サブマイクロ構造及びナノ構造の2層の階層構造を形成した比較例2に係る粒子集合体、並びにマイクロ構造及びナノ構造の2層の階層構造を形成した比較例3の粒子集合体では、表面粗さが大きくなり、水の接触角が減少してぬれ性を増加させた。
しかし、比較例2及び比較例3に係る粒子集合体では、その表面粗さが超親水性を得るに至るほど大きくはならなかった。マイクロ構造/サブマイクロ構造/ナノ構造の3層の階層構造を有する実施例1に係る階層構造の粒子集合体の特殊な構造規則配列により、大きく表面粗さを増加させ、超親水性をもつに至ったものと考えられる(式(1))。
こうした超親水性の発現は、実施例1に係る階層構造の粒子集合体の特殊な構造に起因している。このような超親水性は、微小流体デバイスや自己洗浄表面の作製に有効となると考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1,1’ 基板
2 コロイド粒子(マイクロサイズ)
2’ 球状粒子層(マイクロサイズ)
3 コロイド粒子(サブマイクロサイズ)
3’ 球状粒子層(サブマイクロサイズ)
4 ナノ粒子
4’ ナノ構造物
5 粒子集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成したテンプレートと、該テンプレート上に形成されたナノ構造体とを備える階層構造の粒子集合体であり、
前記テンプレートは、球状粒子が規則的に配列された球状粒子層が前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて少なくとも2層積層されて形成され、
前記球状粒子の粒径サイズは、前記球状粒子層間で異なり、前記基板側から前記ナノ構造体側に向けて小さく、
前記ナノ構造体は、前記テンプレートの最表層を形成する前記球状粒子層における個々の前記球状粒子上に配され、前記球状粒子の粒径サイズよりも小さな粒径のナノ粒子で形成されることを特徴とする階層構造の粒子集合体。
【請求項2】
テンプレートは、基板側から、マイクロサイズの球状粒子で形成された第1の球状粒子層と、サブマイクロサイズの球状粒子で形成された第2の球状粒子層とがこの順で積層される請求項1に記載の階層構造の粒子集合体。
【請求項3】
球状粒子層は、最密充填構造を備える請求項1から2のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体。
【請求項4】
親水性の機能材料として用いられる請求項1から3のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体。
【請求項5】
第1の基板上に直接又は間接的に、球径がマイクロサイズの球状マイクロ粒子を液中に分散させた第1のコロイド溶液を展開して前記第1の基板上に前記球状マイクロ粒子が規則的に周期配置された単層コロイド結晶の第1の球状粒子層を形成する第1の球状粒子層形成工程と、
第2の基板上に球径がサブマイクロサイズの球状サブマイクロ粒子を液中に分散させた第2のコロイド溶液を展開し、前記第2の基板上に前記球状サブマイクロ粒子が規則的に周期配置された単層コロイド結晶の第2の球状粒子層を形成する第2の球状粒子層形成工程と、
前記第2の球状粒子層が形成された前記第2の基板を液中に浸し、前記第2の基板から前記第2の球状粒子層を浮かせた状態とし、この状態の前記第2の球状粒子層を、前記液中に潜らせた前記第1の基板の前記第1の球状粒子層が形成された面側で掬い上げ、前記第1の球状粒子層の個々の粒子上に前記第2の球状粒子層を構成する粒子が複数配された2段の階層構造を形成する2段階層構造形成工程と、
前記第2の球状粒子層の個々の粒子上にナノサイズの粒子を蒸着させて3段目となるナノ構造物を形成する3段階層構造形成工程と、
を含むことを特徴とする階層構造の粒子集合体の製造方法。
【請求項6】
第1の球状粒子層形成工程が、第1の球状粒子層が直接形成された状態の第1の基板に対して加熱処理を行うことを含む請求項5に記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
【請求項7】
第1の球状粒子層形成工程が、第1の基板上に形成された第1の球状粒子層に対して親水化処理を行うことを含む請求項5から6のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
【請求項8】
第1の球状粒子層形成工程が、球状マイクロ粒子を自己集合させて最密充填構造とした第1の球状粒子層を形成する工程であり、
第2の球状粒子層形成工程が、球状サブマイクロ粒子を自己集合させて最密充填構造とした第2の球状粒子層を形成する工程であり、
2段階層構造形成工程が、液面に浮いた状態で最密充填構造が維持されたままの前記第2の球状粒子層を掬い上げて前記第1の球状粒子層上に前記第2の球状粒子層を形成する工程である請求項5から7のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
【請求項9】
球状マイクロ粒子及び球状サブマイクロ粒子が、ポリスチレンを含む材料である請求項5から8のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。
【請求項10】
ナノ粒子層が、CuO、ZnO、Fe、TiO、NiO、WO、SnO及びCのいずれかを含む材料で形成される請求項5から9のいずれかに記載の階層構造の粒子集合体の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−34943(P2013−34943A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173102(P2011−173102)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】