説明

障壁コーティング組成物を含むテープ及びこれを含む構成部品

キャリアフィルムと、該キャリアフィルムに施工された少なくとも1つの障壁コーティング組成物とを含むテープであって、該障壁コーティング組成物は、環境障壁コーティング組成物又は熱障壁コーティング組成物である。キャリアフィルムは、シリコーンコートの2軸配向ポリエチレンテレフタレートポリマーフィルムを含むことができる。障壁コーティング組成物は、環境障壁コーティング組成物又は熱障壁コーティング組成物の少なくとも1つを含むことができる。障壁コーティング組成物は、BSAS、希土類モノシリケート、希土類ジシリケート、ムライト、シリコン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された環境障壁コーティング組成物を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で記載される実施形態は全体的に、障壁コーティング組成物を含むテープ並びにこれを含む構成部品に関する。より詳細には、本明細書の実施形態は全体的に、テープキャストの環境及び熱障壁コーティング並びにこのようなテープキャスト障壁コーティングを含むガスタービンエンジン構成部品を記載している。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいては、その効率を高めるためにより高い動作温度が常に求められている。しかしながら、動作温度が高くなるにつれ、これに応じてエンジンの構成部品の高温耐久性も向上しなければならない。鉄、ニッケル、及びコバルト基超合金の構築によって、高温性能の大きな進歩が達成された。超合金は、ガスタービンエンジン全体、特に高温セクションにおいて使用される構成部品に広く用いられているが、代替の軽量基材が提案されてきた。
【0003】
セラミックマトリックス複合材料(CMC)は、セラミックマトリックス相により囲まれた強化材料からなる種類の材料である。このような材料は、現在のところ、特定のモノリシックセラミック(すなわち、強化材料のないセラミック材料)と共に高温用途で使用されている。一般的なCMCマトリックス材料の幾つかの実施例は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、ムライトアルミナシリカ、アルミナムライト、及びアルミナシリカ・酸化ホウ素を含むことができる。一般的なCMCマトリックス強化材の幾つかの実施例は、限定ではないが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、ムライトアルミナシリカ、アルミナムライト、及びアルミナシリカ・酸化ホウ素を含むことができる。モノリシックセラミックの幾つかの実施例は、ケイ素アルミニウム酸窒化物(SiAlON)、及びアルミナを含むことができる。これらのセラミック材料を用いると、タービン構成部品の重量が減少し、その上、強度及び信頼性も維持することができる。従って、このような材料は、これらが提供できる軽量によって恩恵を受ける翼形部(例えば、圧縮機、タービン、及びベーン)、燃焼器、シュラウド、及び他の同様の構成部品など、ガスタービンエンジンの高温セクションで使用される多くのガスタービン構成部品で現在検討されている。
【0004】
CMC及びモノリシックセラミック構成部品は、これらを高温エンジンセクションの過酷な環境から保護するために、環境障壁コーティング(EBC)及び/又は熱障壁コーティング(TBC)でコーティングすることができる。EBCは、高温燃焼環境において腐食性ガスに対する高密度の気密シールを提供することができ、TBCは、コーティング表面と、能動的に冷却される構成部品裏面との間の温度勾配を設定することができる。このようにして、構成部品の表面温度は、TBCの表面温度を下回って下げることができる。幾つかの場合、TBCはまた、EBCの上に堆積させ、EBCの表面温度をTBCの表面温度を下回って下げることができる。この手法は、EBCが達成しなくてはならない動作温度を低下させ、結果としてEBCの寿命を延ばすことができる。
【0005】
現在、ほとんどのEBCは、シリコンボンドコート層と、ムライト、バリウムストロンチウムアルミノケイ酸塩(BSAS)、希土類ジシリケート、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの遷移層と、BSAS、希土類モノシリケート、又はこれらの組み合わせを含む外層とを備えた3層コーティング系からなる。モノシリケート又はジシリケートコーティング層の希土類元素は、イットリウム、ルテシウム、イッテルビウム、又はこれらの幾つかの組み合わせを含むことができる。これらの層は共に、構成部品の環境保護を提供することができる。
【0006】
TBCは一般に、熱膨張の不一致又はエンジン環境における他の構成部品との接触に起因する熱又は機械応力を軽減するために、特別な微細構造が堆積される耐火性酸化物からなる。これらの微細構造は、垂直方向の亀裂又は粒子、多孔性微細構造、及びこれらの組み合わせを有する高密度コーティング層を含むことができる。耐火性酸化物材料は通常、イットリアドープのジルコニア又はイットリアドープのハフニアを含むことができるが、カルシア、バリア、マグネシア、ストロンチア、セリア、イッテルビア、ルテシウム酸化物、ガドリニウム酸化物、ネオジウム酸化物、及びこれらの組み合わせでドープしたジルコニア又はハフニアを含むこともできる。TBCとして使用するのに許容可能な耐火性酸化物の他の実施例は、限定ではないが、イットリウムジシリケート、イッテルビウムジシリケート、ルテチウムジシリケート、イットリウムモノシリケート、イッテルビウムモノシリケート、ルテチウムモノシリケート、ジルコン、ハフノン、BSAS、ムライト、アルミン酸マグネシウムスピネル、及び希土類アルミン酸塩を含むことができる。
【0007】
組成又は基材とは無関係に、ほとんどのEBC及び/又はTBCは、一般に、従来の空気プラズマ溶射(APS)、スラリー浸漬、化学蒸着(CVD)、又は電子ビーム物理蒸着(EBPVD)のうちの1つを用いて施工される。残念ながら、これらの方法の何れも問題がある。例えば、空気プラズマ溶射は一般に、見通し応用に限定される。ほとんどの高温ガスタービンエンジン構成部品は、障壁コーディングを有する外部及び内部コーティング両方から恩恵を受けるので、APSは、このような応用における選択法にはならない可能性がある。加えて、スラリー浸漬は、幾らかのコスト節減をもたらし、APSに比べて付加的な構成部品区域(すなわち内部通路)を対象にすることができるが、薄いコーティング用に設計されている。一部の高温ガスタービンエンジン構成部品は、より厚いコーティングから恩恵を受けることになるので、スラリー浸漬は、必ずしも全ての用途で好適である訳ではない。EBPVD及びCVDは、APS及びスラリー浸漬よりも高コストになる傾向があり、一般に、堆積速度が緩慢であることだけに起因して薄いコーティング応用に有用である。
【0008】
更に、従来の方法を用いて施工される補修EBC及びTBCは、複雑で高コストであり、通常は、コーティング全体を剥離及び交換することが必要となる場合がある。
【0009】
従って、見通し応用よりも優れた適用を可能にし、構成部品要件に応じた様々な厚みを有することができ、更に、現在の障壁コーティングよりも補修を容易にすることができる障壁コーティングの必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005112381A1号公報
【発明の概要】
【0011】
本明細書の実施形態は、全体的に、キャリアフィルムと、該キャリアフィルムに施工された少なくとも1つの障壁コーティング組成物と、を含むテープに関する。
【0012】
本明細書の実施形態はまた、全体的に、キャリアフィルムと、該キャリアフィルムに施工された少なくとも1つの障壁コーティング組成物と、を含み、障壁コーティング組成物が、環境障壁コーティング組成物又は熱障壁コーティング組成物の少なくとも1つを含むテープに関する。
【0013】
これら及び他の特徴、態様、及び利点は、当業者であれば以下の開示事項から明らかになるであろう。
【0014】
本明細書と共に提出した特許請求の範囲において、本発明を具体的に指摘し且つ明確に特許請求しているが、本明細書に記載した実施形態は、同じ参照符号が同様の要素を表す添付図面と併せて以下の説明からより良好に理解されると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本明細書の説明によるテープの1つの実施形態の概略断面図。
【図2】本明細書の説明による、複数の障壁コーティングテープが施工された構成部品の1つの実施形態の概略断面図。
【図3】本明細書の説明による、障壁コーティングを有するガスタービン翼形部の1つの実施形態の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で記載される実施形態は全体的に、障壁コーティング組成物を含むテープ及びこれを含む構成部品に関する。より具体的には、本明細書の実施形態は全体的に、テープキャストの環境及び熱障壁コーティング並びにこのようなテープキャスト障壁コーティングを含むガスタービンエンジン構成部品を記載している。
【0017】
本明細書で記載されるテープキャスト障壁コーティング(又は、障壁コーティングテープ)は、CMC、モノリシックセラミック、及び超合金を含む構成部品と併せて使用するのに好適とすることができる。本明細書で使用される「CMC」は、シリコン含有マトリックス及び強化材、並びに酸化物−酸化物マトリックス及び強化材の両方を意味する。本明細書で使用するのに許容可能なCMCの幾つかの実施例は、限定ではないが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミナムライト、アルミナシリカ、アルミナシリカ・酸化ホウ素、及びこれらの組み合わせを含むマトリックス及び強化用繊維を有する材料を含むことができる。本明細書で使用される「モノリシックセラミック」とは、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ素アルミニウム酸窒化物、及びアルミナを含む材料を指す。本明細書において、CMC及びモノリシックセラミックは、集合的に「セラミック」と呼ばれる。超合金の幾つかの実施例は、限定ではないが、鉄、ニッケル、及びコバルト基超合金を含むことができる。本明細書で使用される用語「障壁コーティング」は、環境障壁コーティング(EBC)及び熱障壁コーティング(TBC)の両方を指すことができ、以下の本明細書で説明される少なくとも1つの障壁コーティング組成物を含むことができる。本明細書における障壁コーティングは、ガスタービンエンジンに存在するような高温環境で使用するのに好適とすることができる。
【0018】
より具体的には、本明細書のEBCは、一般に、BSAS、希土類モノシリケート、希土類ジシリケート、ムライト、シリコン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された環境障壁コーティングから構成することができる。TBCは、一般に、イットリア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、或いは、カルシア、バリア、マグネシア、ストロンチア、セリア、イッテルビア、ルテシア及びこれらの組み合わせで安定化されたジルコニア又はハフニアからなる群から選択された障壁コーティング組成物を含むことができる。TBCとして使用するのに好適とすることができる他の耐火性組成物は、限定ではないが、希土類ジシリケート(例えば、イットリウムジシリケート、イッテルビウムジシリケート、ルテチウムジシリケート)、希土類モノシリケート(例えば、イッテルビウムモノシリケート)、及びルテチウムモノシリケート、ジルコン、ハフノン、BSAS、ムライト、アルミン酸マグネシウムスピネル、希土類アルミン酸塩、及びこれらの組み合わせを含むことができる。全体として、本明細書で使用されるように、環境障壁コーティング組成物及び熱障壁コーティング組成物は、総称して「障壁コーティング」組成物と呼ばれる。
【0019】
障壁コーティングテープを作製するために、少なくとも1つの障壁コーティング組成物を含むスラリーを作ることができる。障壁コーティング組成物に加えて、スラリーはまた、以下で説明するように、溶剤、分散剤、バインダー、及び可塑剤の何れかを含むことができる。
【0020】
最初に、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、及び同様のものからなる群から選択されるセラミック混合媒体は、好適なコンテナ内に設けることができる。混合媒体は、混合コンテ何の容積の約5%から約50%を占有することができる。次いで、溶剤、分散剤、及び障壁コーティング組成物は、混合によってコンテナ媒体に付加することができる。本明細書で使用される「混合」とは、攪拌、シェイク、回転、ボールミル、振動ミル、遊星ミル、インペラミル、パドル形ミル、及び摩滅ミルを含む、当該技術分野で知られる、組成組み合わせに好適なあらゆる従来の技術を指す。
【0021】
含まれる障壁コーティング組成物、溶剤、及び分散剤の量は変えることができるが、一般的には、スラリーは、障壁コーティング組成物の約12容積%から約36容積%、1つの実施形態では約17容積%から約24容積%、溶剤の約40容積%から約60容積%、1つの実施形態では約50容積%から約55容積%、更に、分散剤の約0容積%から約6容積%、1つの実施形態では約0容積%から約2容積%を含むことができ、従って、分散剤が任意選択なものになる。溶剤は、限定ではないが、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、イソプロピルアルコール、トルエン、メチルイソブチルケトン、キシレン、及びこれらの組み合わせからなる群とすることができ、分散剤は、混合媒体のセラミック粒子に吸着させ、反発力を加えることができる、200から20,000g/モルのあらゆる溶剤可溶性ポリマー材料とすることができる。好適な分散剤の幾つかの実施例は、例えば、Zephrym(登録商標) PD700(デラウェア州ワシントン所在の)
I,C,I, Specialty Chemicals)、Merpol A(イリノイ州Northfield所在のStepan Company)、Phospholan(登録商標) PS21−A(イリノイ州シカゴ所在のAkzo Nobel Surface Chemistry LLC)、及びMenhaden fish oil(ミズーリ州St,Louis所在のSigma−Aldrich)を含むことができる。
【0022】
組み合わされると、混合媒体、溶剤、分散剤、及び障壁コーティング組成物を含むスラリーは、何れかの好適な時間期間を継続して混合することができる。凝集体を1次粒子に分解させるのに十分なエネルギーでスラリーが滑らかになるまでスラリーを混合するのが望ましく、通常は約4時間から約24時間を要する場合もある。混合が完了した後、混合媒体を取り出すことができる。混合媒体は依然として固体であるので、例えば、メッシュスクリーン及び/又は振動テーブルを用いてスラリーを注入することにより取り出すことができる。
【0023】
混合媒体を取り出した後、バインダー及び可塑剤を残りのスラリーに加え、再度混合することができる。バインダーは、ポリビニル・ブチラール、ポリメチル・メタクリレート、ポリビニル・アルコール、ポリエチレン、アクリル・エマルション、及び同様のものから選択することができる。約4容積%から約15容積%のバインダーを付加することができる。同様に、可塑剤は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジルブチル、ポリエチレン・グリコール、及び同様のものからなる群から選択することができる。約4容積%から約15容積%の可塑剤を付加することができる。
【0024】
あらゆるテープキャスト機械を利用して、本明細書のテープキャスト障壁コーティングを作ることができる。当業者には公知の一般的なテープキャストプロセスを本明細書で使用するのに許容可能である。例えば、米国特許第6,375,451号を参照されたい。一般に、テープキャスト機械は、調整可能なドクターブレードを有することができ、これは、必要に応じて所望のテープ厚を実現するように設定することができ、乾燥及び焼結後に適正なテープ厚を得るために注意深く収縮を考慮する。スラリーは、Mylar(登録商標)のようなシリコーンコートの2軸配向ポリエチレンテレフタレート(boPET)ポリエステルフィルムなど、キャリアフィルムを収容するリザーバにスラリーを注入することによって機械に付加することができる。
【0025】
1つの実施形態において、キャリアフィルムは、ドクターブレードの真下を移動して、過剰なスラリーを計量して除去し、ドクターブレードの高さによって定められる厚みを有するキャストスラリー層を生成するように、移動中に設定することができる。代替の実施形態では、ドクターブレードは、スラリー全体にわたり引っ張られ、過剰なスラリーを除去し、キャリアフィルムの上部にキャストスラリー層を生成することができる。次に、キャストスラリーは、溶剤が蒸発してテープを生成するときに乾燥できるようにすることができる。連続したテープキャスト動作において、乾燥プロセスは、キャリアフィルムの移動中に行うことができる。バッチキャスト動作において、テープは、キャリアフィルムの動きを停止し、別のバッチを引き続き生成する前にテープを乾燥できるようにすることにより生成することができる。使用される動作とは無関係に、結果として得られる「テープ」10は、キャリアフィルム12及び少なくとも1つの障壁コーティング組成物14を含み、スプール上にロールするのに十分に可撓性があり、更に、図1に全体的に示し、以下で説明するように、損傷を受けることなくキャリアから剥離するのに十分に機械的に耐久性を有することができる。
【0026】
次いで、テープは、環境及び/又は熱障壁保護を必要とするセラミック構成部品(すなわち、CMC、又はモノリシックセラミック)、或いは熱障壁保護を必要とする超合金構成部品に適用することができる。テープは、最初に、目的とする用途によって決まる所望の形状に切断することができる。テープ或いは該テープが取り付けられるセラミック又は超合金構成部品の表面には、溶剤のミストを吹きつけて、僅かに粘着性を有することができる接着表面を生成することができる。この接着表面は、更なる処理のために所定位置にテープを保持するのを助けることができる。1つの実施形態において、溶剤は、スラリーを作るのに以前使用された同じ溶剤とすることができる。次いで、テープをセラミック又は超合金構成部品の所望の部分に取り付け、キャリアフィルムを除去して、「障壁コーティングテープ18」を残すことができ、該テープは、約−35℃から約67℃のガラス転移温度を有することができ、1つの実施形態では、約−20℃から約20℃である。任意選択的に、オートクレーブサイクルを用いて、障壁コーティングテープを構成部品に接合するのを助けることができる。オートクレーブサイクルは、利用する場合には、約150℃から約400℃の温度、約大気圧から約500psiの圧力で実施することができる。
【0027】
障壁コーティングテープ18の複数の層を構成部品16に施工し、図2に示すような所望の障壁コーティング保護を得ることができる。本明細書で使用される「障壁コーティングテープ」は、以下で説明するように、1つの層又は複数の層を含むことができる。例えば、EBCは、構成部品に対し3層の障壁コーティングテープを施工することにより形成することができ、第1の層20がボンドコート層を表し、第2の層22が遷移層を表し、第3の層24が外層を表す。この事例では、各層は、異なる障壁コーティング組成物又は障壁コーティングの組み合わせを含むことができ、構成部品に順に重ねて施工して、所望の3層EBCを生成することができる。当業者であれば、このような層形成はまたTBCにも適用可能であることは理解されるであろう。次に、施工された障壁コーティングを有する構成部品を焼結してバインダーを燃焼させ、図3に全体的に示すように、所望の微細構造を有する障壁コーティングを含む構成部品16を得ることができる。
【0028】
障壁コーティングテープがシリコン含有CMC構成部品上で焼結される場合、焼結は、1500℃又はそれ未満の温度、1つの実施形態では約400℃から約1500℃までの温度で実施することができる。障壁コーティングテープが酸化物−酸化物CMC構成部品上で焼結される場合、焼結は、2000℃又はそれ未満の温度、1つの実施形態では約400℃から約2000℃までの温度で実施することができる。障壁コーティングテープがモノリシックセラミック上で焼結される場合、焼結は、約400℃から約2000℃までの温度、1つの実施形態では約400℃から約1600℃までの温度で実施することができる。障壁コーティングテープが超合金構成部品上で焼結される場合、焼結は、選択される超合金に応じて、約400℃から約1315℃の温度で実施することができる。
【0029】
1つの実施形態において、障壁コーティングの微細構造は、燃焼環境における高温ガスに対する気密シールを提供するために約90%稠密から約100%稠密であり、これにより、熱障壁コーティングと構成部品との間に熱膨張が存在する場合にEBC又はTBCを用いるのに好適なテープを形成することができる。別の実施形態では、障壁コーティングの微細構造は、約90%から約100%稠密であり、TBCとして機能するよう垂直方向に亀裂形成することができる。別の実施形態では、障壁コーティングの微細構造は、多孔性(すなわち、約90%稠密未満)、或いは多孔性且つTBCとして機能するよう垂直方向に亀裂形成することができる。更に別の実施形態では、障壁コーティングの微細構造は、多孔性であり、アブレイダブルEBCコーティングとして機能することができる。当業者であれば、稠密度は、SEM断面又はイマ−ションを含む、従来の技術を用いて測定できることは理解されるであろう。
【0030】
より具体的には、こうした事例において、EBCは、上記で定められた稠密微細構造を有するEBCを含む1次層と、本明細書で記載される多孔性微細構造を有するアブレイダブルEBCを含む2次層とを含むことができる。2次層は、1次層に施工することができる。このような2層EBCは、シュラウドのようなエンジン構成部品に対して有用とすることができ、この場合、エンジン効率を最大にするために、シュラウドと回転ファンブレードの先端との間の小ギャップを維持することが有利である。シュラウドファンブレードの先端との間のギャップが狭いことに起因して、摩擦事象が発生する場合があり、ここでは、ブレードの先端がシュラウド表面全体を擦り、シュラウドと稠密EBCを含む1次層とに損傷を与える可能性がある。アブレイダブルEBCを含む2次層が存在する場合、ブレード先端は、アブレイダブル2次層を摩擦し、その一部を接触ではなく摩耗させ、下にある1次層又はシュラウドに損傷を与える可能性がある。
【0031】
本明細書で説明されるテープキャスト障壁コーティングは、従来技術を用いて施工される障壁コーティングよりも優れた複数の利点を提供することができる。例えば、上述のように、本明細書のテープキャスト障壁コーティングは、何らかの所望の厚みに割り当てることができる。1つの実施形態において、厚みは、約0.1ミルから約100ミルとすることができ、この厚みは、翼形部のような構成部品に対する薄いコーティング要件と、シュラウドのような構成部品に対する厚いアブレイダブルコーティング要件の両方を満足することができる。加えて、テープキャスト障壁コーティングは、従来の障壁コーティングテープにより提示される見通し問題を克服することができ、これにより障壁コーティングテープを構成部品上に外部及び内部の両方に好都合に配置できるようになる。
【0032】
更に、テープキャスト障壁コーティングは、補修のし易さを改善することができる。従来の方法を用いて施工されるEBC及びTBCの補修の複雑なプロセスとは対称的に、障壁コーティングテープでは、構成部品から空隙を残して障壁コーティングの損傷部分を取り除き、交換障壁コーティングテープを構成部品の空隙に取り付け、次いで、交換障壁コーティングテープを有する構成部品を焼結し、バインダーを燃焼させて障壁コーティングテープを高密度化し、新しい障壁コーティングを生成することによって局所的欠陥補修が可能になる。障壁コーティングの複数の層の場合、各層は、個々に焼成することができ、或いは各層を同時に燃焼してもよい。当業者であれば、本明細書で説明される補修方法を用いて、テープキャスト障壁コーティング又は従来の方法を利用して施工された障壁コーティングを補修することができる点は理解されるであろう。
【0033】
本明細書で説明される障壁コーティングテープの施工により恩恵を受けることができる一部のセラミック又は超合金ガスタービンエンジン構成部品は、限定ではないが、ベーン、シュラウド、ノズル、フラップ、シール、及び燃焼器を含むことができる。より詳細には、ベーン、ブレード、及びノズルは、無駄を最小限にして障壁コーティングテープを内側及び外側表面に施工する能力を有することから恩恵を受けることができる。シュラウドは、厚いアブレイダブルコーティングを形成する能力による恩恵を受けることができる。フラップ、シール、及びシュラウドは、障壁コーティングテープの施工が、現行のAPSプロセスに伴う重ね塗りを回避できる容易且つ堅牢なプロセスとなるような簡易的な幾何形状である。燃焼器は、プラズマ溶射又は浸漬を行うのが困難な可能性がある大型の構成部品である。従って、燃焼器には、内側及び外側表面の両方への障壁コーティングテープの施工を容易にする利点をもたらすことができる。加えて、障壁コーティングテープはまた、既存の環境又は熱的障壁層を覆って局所的に施工し、翼形部プラットフォーム又は先端などの特定の構成部品の場所に追加の保護層を構成することができる。
【0034】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、本発明を当業者が実施及び利用することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0035】
10 テープ
12 キャリアフィルム
14 障壁コーティング組成物
16 構成部品
18 障壁コーティングテープ
20 第1の層
22 第2の層
24 第3の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムと、
前記キャリアフィルムに施工された少なくとも1つの障壁コーティング組成物と、
を含むテープ。
【請求項2】
前記キャリアフィルムが、シリコーンコートの2軸配向ポリエチレンテレフタレートポリマーフィルムを含む、
請求項1に記載のテープ。
【請求項3】
前記障壁コーティング組成物が、環境障壁コーティング組成物又は熱障壁コーティング組成物の少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載のテープ。
【請求項4】
前記障壁コーティング組成物が、BSAS、希土類モノシリケート、希土類ジシリケート、ムライト、シリコン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された環境障壁コーティング組成物を含む、
請求項3に記載のテープ。
【請求項5】
前記障壁コーティング組成物が、イットリア安定化ジルコニア;イットリア安定化ハフニア;カルシア、バリア、マグネシア、ストロンチア、セリア、イッテルビア、ルテシウム酸化物、ガドリニウム酸化物、ネオジウム酸化物及びこれらの組み合わせで安定化されたジルコニア;カルシア、バリア、マグネシア、ストロンチア、セリア、イッテルビア、ルテシア、及びこれらの組み合わせで安定化されたハフニア;希土類ジシリケート;希土類モノシリケート;ジルコン;ハフノン;BSAS;ムライト;アルミン酸マグネシウムスピネル;希土類アルミン酸塩;及びこれらの組み合わせからなる群から選択された熱障壁コーティングを含む、
請求項3に記載のテープ。
【請求項6】
請求項1に記載のテープを含むガスタービンエンジン構成部品。
【請求項7】
請求項3に記載のテープを含むガスタービンエンジン構成部品。
【請求項8】
前記構成部品が、ベーン、ブレード、シュラウド、ノズル、フラップ、シール、及び燃焼器からなる群から選択される、
請求項7に記載のガスタービンエンジン構成部品。
【請求項9】
前記構成部品が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミナムライト、アルミナシリカ、アルミナシリカ・酸化ホウ素、ケイ素アルミニウム酸窒化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたセラミックを含む、
請求項8に記載のガスタービンエンジン構成部品。
【請求項10】
前記構成部品が、鉄基超合金、ニッケル基超合金、及びコバルト基超合金からなる群から選択された超合金を含む、
請求項9に記載のガスタービンエンジン構成部品。
【請求項11】
キャリアフィルムと、
前記キャリアフィルムに施工された少なくとも1つの障壁コーティング組成物と、
を含み、前記障壁コーティング組成物が、環境障壁コーティング組成物又は熱障壁コーティング組成物の少なくとも1つを含む、
テープ。
【請求項12】
前記キャリアフィルムが、シリコーンコートの2軸配向ポリエチレンテレフタレートポリマーフィルムを含む、
請求項11に記載のテープ。
【請求項13】
前記障壁コーティング組成物が、BSAS、希土類モノシリケート、希土類ジシリケート、ムライト、シリコン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された環境障壁コーティング組成物を含む、
請求項11又は12に記載のテープ。
【請求項14】
前記障壁コーティング組成物が、イットリア安定化ジルコニア;イットリア安定化ハフニア;カルシア、バリア、マグネシア、ストロンチア、セリア、イッテルビア、ルテシウム酸化物、ガドリニウム酸化物、ネオジウム酸化物及びこれらの組み合わせで安定化されたジルコニア;カルシア、バリア、マグネシア、ストロンチア、セリア、イッテルビア、ルテシア、及びこれらの組み合わせで安定化されたハフニア;希土類ジシリケート;希土類モノシリケート;ジルコン;ハフノン;BSAS;ムライト;アルミン酸マグネシウムスピネル;希土類アルミン酸塩;及びこれらの組み合わせからなる群から選択された熱障壁コーティングを含む、
請求項11に記載のテープ。
【請求項15】
請求項11に記載のテープを含むガスタービンエンジン構成部品。
【請求項16】
前記構成部品が、ベーン、ブレード、シュラウド、ノズル、フラップ、シール、及び燃焼器からなる群から選択される、
請求項15に記載のガスタービンエンジン構成部品。
【請求項17】
前記構成部品が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミナムライト、アルミナシリカ、アルミナシリカ・酸化ホウ素、ケイ素アルミニウム酸窒化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたセラミックを含む、
請求項16に記載のガスタービンエンジン構成部品。
【請求項18】
前記構成部品が、鉄基超合金、ニッケル基超合金、及びコバルト基超合金からなる群から選択された超合金を含む、
請求項16に記載のガスタービンエンジン構成部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−507789(P2011−507789A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539547(P2010−539547)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081847
【国際公開番号】WO2009/085390
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】