集光鏡アッセンブリおよびこの集光鏡アッセンブリを用いた極端紫外光光源装置
【課題】極端紫外光光源装置において、集光鏡アッセンブリの熱変形による集光性能の悪化を防止すること。
【解決手段】極端紫外光光源装置に用いられる集光鏡アッセンブリは、径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状の複数の反射シェル21から構成され、この反射シェル21が入れ子状に配置され、その端部が保持構造体22で保持されている。反射シェル21には冷媒を流す冷却チャネルが、反射面の裏面側の面上であって反射シェルの軸方向に取り付けられている。この冷却チャネルが補強材の働きをし、反射シェル21の熱変形を抑制することができる。なお、反射シェル21の材質としてモリブデンを用いことによりさらに熱変形を抑制することができ、保持構造体22に冷却チャンネルを設けることにより、さらに効果的に集光鏡アッセンブリを冷却し、その熱変形を抑制することができる。
【解決手段】極端紫外光光源装置に用いられる集光鏡アッセンブリは、径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状の複数の反射シェル21から構成され、この反射シェル21が入れ子状に配置され、その端部が保持構造体22で保持されている。反射シェル21には冷媒を流す冷却チャネルが、反射面の裏面側の面上であって反射シェルの軸方向に取り付けられている。この冷却チャネルが補強材の働きをし、反射シェル21の熱変形を抑制することができる。なお、反射シェル21の材質としてモリブデンを用いことによりさらに熱変形を抑制することができ、保持構造体22に冷却チャンネルを設けることにより、さらに効果的に集光鏡アッセンブリを冷却し、その熱変形を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光鏡アッセンブリおよびこの集光鏡アッセンブリを用いた極端紫外光光源装置に関し、特に集光鏡アッセンブリの冷却チャネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、その製造用の投影露光装置においては解像力の向上が要請されている。その要請に応えるため、露光用光源の短波長化が進められ、次世代の半導体露光用光源として、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放出する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)が開発されている。
EUV光源装置において、EUV光を発生させる方法はいくつか知られているが、そのうちの一つにEUV放射種の加熱励起により高温プラズマを発生させ、このプラズマから放射されるEUV光を取り出す方法がある。
このような方法を採用するEUV光源装置の種類の一つに、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式EUV光源装置がある。DPP方式EUV光源装置は、電流駆動によって生成した高温プラズマからのEUV放射光を利用するものである。
【0003】
EUV光源装置において、強い放射強度の波長13.5nmのEUV光を放出する放射種、すなわち、EUV発生用高温プラズマ原料として、Li(リチウム)とSn(スズ)が注目されている。
以下、DPP方式に基づくEUV放射のメカニズムを簡単に説明する。
DPP方式では、例えば内部に電極が配置された放電容器内をガス状の高温プラズマ原料雰囲気とし、当該雰囲気中の電極間において放電を発生させて初期プラズマを生成する。ここで、放電により電極間を流れる直流電流の自己磁場の作用により、上記した初期プラズマは収縮される。これにより初期プラズマの密度は高くなり、プラズマ温度が急激に上昇する。このような作用を、以下ピンチ効果と称する。ピンチ効果による加熱によって、高温となったプラズマのイオン密度は1017〜1020cm−3、電子温度は20〜30eV程度に到達し、この高温プラズマからEUV光が放射される。
近年、DPP方式において、放電が発生する電極表面に供給された固体もしくは液体のスズやリチウムにレーザ等のエネルギービームを照射して気化させ、その後、放電によって高温プラズマを生成する方法が特許文献1において提案されている。以下、エネルギービームがレーザである場合を説明する。また、上記したこの方式をLAGDPP(Laser Assisted Gas Discharge Produced Plasma)方式と称することにする。
【0004】
以下、LAGDPP方式のEUV光源装置について、図11を用いて説明する。
図11に示すEUV光光源装置は、放電容器であるチャンバ1を有する。チャンバ1は、開口を有する隔壁1cを介して、大きく2つの空間に分割される。一方の空間には放電部が配置される。放電部は、EUV放射種を含む高温プラズマ原料を加熱して励起する加熱励起手段である。放電部は、一対の電極11,12等により構成される。
他方の空間には、高温プラズマ原料が加熱励起されて生成した高温プラズマから放出されるEUV光を集光して、チャンバ1に設けられたEUV光取出部7より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導くEUV集光鏡2、および、放電によるプラズマ生成の結果生じるデブリがEUV光の集光部へ移動するのを抑制するためのデブリトラップ3が配置される。
11,12は円盤状の電極である。電極11,12は所定間隔だけ互いに離間しており、それぞれ回転モータ16a,16bが回転することにより、16c,16dを回転軸として回転する。
【0005】
14は、波長13.5nmのEUV光を放射する高温プラズマ原料である。高温プラズマ原料14は、加熱された溶融金属(melted metal)例えば液体状のスズであり、コンテナ15に収容される。
上記電極11,12は、その一部が高温プラズマ原料14を収容するコンテナ15の中に浸されるように配置される。電極11,12の表面上に乗った液体状の高温プラズマ原料14は、電極11,12が回転することにより、放電空間に輸送される。上放電空間に輸送された高温プラズマ原料14に対してレーザ源17aよりレーザ光17が照射される。レーザ光17が照射された高温プラズマ原料14は気化する。
高温プラズマ原料14がレーザ光17の照射により気化された状態で、電極11,12に、電力供給手段8からパルス電力が印加されることにより、両電極11,12間にパルス放電が開始し、高温プラズマ原料によるプラズマが形成される。放電時に流れる大電流によりプラズマが加熱励起され高温化すると、この高温プラズマからEUV放射が発生する。
高温プラズマから放射されたEUV光は、EUV集光鏡2により集光され、EUV取出部7から図示を省略した露光機に取り出される。
【0006】
上記のように、発光点である高温プラズマから放射された極端紫外光を集光鏡2によって集光し、開口(EUV光取出部)7から極端紫外光を取り出す。ここで、集光鏡2は、高温プラズマから放射された極端紫外光を反射する反射シェルと、この反射シェルを光源装置内で支持する反射シェル保持構造体とを備える。以後これを集光鏡アッセンブリ20と呼ぶ。
集光鏡アッセンブリとして、同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した、径の異なる、回転楕円面または回転双曲面形状の反射シェルを複数入れ子状に配置し、これを保持構造体により保持した斜入射型集光鏡アッセンブリが知られている。この反射シェルは、基材の片側表面に極端紫外光を反射する反射層を設けたものである。反射シェルの基材の材質としては、機械的強度と熱伝導性を考慮して金属材料が選ばれる。
特許文献1には集光鏡の材料として、ニッケル、アルミニウム、銅、ニッケル−コバルト合金が好適な材料として挙げられている。また、反射層は極端紫外光、典型的には波長13.5nmの極端紫外光の高い反射率が得られるような材料が選択される。特許文献1には反射層の好適な材料として、パラジウム、イリジウム、白金、モリブデン、ロジウム、ルテニウムが挙げられている。
【0007】
高温プラズマから発せられた光や高速イオンなどが集光鏡アッセンブリに入射し、それらの一部は吸収され、熱負荷となる。そのため発光動作中は集光鏡アッセンブリ各部の温度が上昇する。
温度上昇にともない、集光鏡アッセンブリを構成する反射シェルが熱変形し、理想的な反射面形状からずれる。また、温度上昇にともない反射シェル保持構造体も熱変形し、各反射シェルと発光点との位置関係が理想的な状態からずれる。これらの結果、集光性能が悪化する。また、温度上昇が著しいと酸化などの反射膜の劣化が進行して極端紫外光の反射率が低下し、やはり集光性能が悪化する。
極端紫外光を用いた露光装置においては、光源装置と露光装置本体は小さな開口(アパーチャ、図11のEUV光取出部7)で区切られる。アパーチャを設置する理由は、光源装置側チャンバと露光装置本体側チャンバの真空状態ができるだけ相互に干渉しないように空間分離するためと、露光に実際に寄与しない不要な光を遮断するためである。通常、アパーチャは、集光鏡アッセンブリからの射出光の空間的分布が最も狭くなる位置(集光点)に設置される。
【0008】
集光鏡アッセンブリの集光性能が悪化すると、集光点位置における光の空間的強度分布がブロードになるため、本来透過すべき光までアパーチャで遮光されてしまい、露光に必要なパワーが得られなくなることがある。また、集光性能の悪化はアパーチャ透過後の光の角度分布特性を悪くし、露光品質低下の一因となる。このように、集光性能の悪化は光源出力の低下や光強度分布の均一性低下など、光源装置としての性能低下を招く。
集光性能悪化の原因となる集光鏡アッセンブリの温度上昇を抑制するために、反射シェルを冷却するための冷却チャネルが設けられる。例えば、特許文献2には、流体を流すための流路を反射シェルの非反射面に備え、水などの冷却流体を流すことによって除熱する集光鏡アッセンブリが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/095220号パンフレット
【特許文献2】特許第4105616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
冷却チャネルを使って反射シェルを冷却することにより、集光鏡アッセンブリの温度上昇はある程度抑制されるが、完全に抑えることはできない。特に、集光鏡の冷却チャネルが設けられていない部分の温度上昇は避けられない。従来技術による集光鏡アッセンブリでは、温度上昇にともなう集光鏡アッセンブリの熱変形により集光性能が悪化する。その結果、光源装置としての性能が低下する。特に、高出力タイプの光源装置では集光鏡アッセンブリへの熱負荷が高くなり、熱変形による集光性能の低下がさらに顕著となる。
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、
集光鏡アッセンブリの熱変形による集光性能の悪化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、反射シェルを冷却するための冷媒を流す冷却チャネルを、集光鏡アッセンブリの反射シェルの反射面の裏面側の面上であって、かつ、反射シェルの軸方向に取り付ける。以下では、上記反射シェルの面上であって反射シェルの軸方向を母線方向ともいう。
上記反射シェルの基材の材質として、モリブデンを用いるのが好ましく、また、上記反射セルを支持する支持構造体に冷却チャンネルを設けることにより、さらに効果的に集光鏡アッセンブリを冷却することができる。
すなわち、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状の複数の斜入射型反射シェルと、上記複数の反射シェルを支持する反射シェル保持構造体とを備えた、極端紫外光を反射して集光する集光鏡アッセンブリにおいて、上記反射シェルに、該反射シェルを冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルを反射シェルの母線の方向に沿って形成する。
(2)上記(1)において、反射シェルは、基材の片側表面に極端紫外光を反射する反射層を設けたものであり、上記基材の材質をモリブデンとする。
(3)上記(1)(2)において、反射シェル保持構造体に、該保持構造体を冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルを形成する。
(4)上記(1)(2)(3)の集光鏡アッセンブリを、極端紫外光放射種を加熱して励起し高温プラズマを発生させる一対の放電電極からなる放電部と、上記放電部において発生した上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光手段と、上記集光された極端紫外光を取り出す光取り出し部とを備えた極端紫外光光源装置の集光手段として用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)熱負荷によって反射シェルの温度が上昇しても、基材の母線方向に走る冷却チャネルが補強材の働きをするので母線と垂直方向の反射シェルの熱変形が抑制される。
そのため、集光性能の低下が抑制される。
(2)反射シェル基材の材質をモリブデンにすることによって、反射シェルの熱変形量を小さくすることができ、集光性能の低下が抑制される。
(3)反射シェル保持構造体を冷却することによって温度上昇が抑制されるので、反射シェル保持構造体の熱変形量が小さくなる。そのため、各反射シェルと発光点との位置関係が理想的な位置からずれないので集光性能の低下がより一層抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】集光鏡アッセンブリの構成を示す模式図である。
【図2】反射シェルに設けた冷却チャネル構造の例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例の冷却チャネルが設けられた反射シェルの具体的構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施例3の集光鏡アッセンブリの構成を示す模式図である。
【図5】熱変形前と、従来例の熱変形後と、本発明の実施例2の熱変形後の放射照度分布を示す図である。
【図6】従来例及び本発明の実施例1−4の径方向の放射照度プロファイルを示す図である。
【図7】従来例と本発明の実施例1−4における集光率の比較を示す図である。
【図8】集光点に設置したアパーチャ透過後の極端紫外光遠視野像を示す図である。
【図9】アパーチャ透過光の角度分布特性の比較を示す図である。
【図10】従来例と、本発明の実施例1の熱変形前後の反射シェルの形状変化を示す図である。
【図11】LAGDPP方式のEUV光源装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に集光鏡アッセンブリ20の構成を示す。同図(a)は集光鏡アッセンブリを保持構造体側からみた図、(b)は集光鏡アッセンブリの軸を通る平面で切った断面図(同図(a)のA−A断面図)、である。なお、図1(b)においては、紙面左側から入射したEUV光が集光されて紙面右側から出射する。
図1に示すように、集光鏡アッセンブリ20は、第1〜第nの複数の反射シェル21と、保持構造体22から構成される。
集光鏡アッセンブリ20は、同一軸上に焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した、径の異なる、回転楕円面または回転双曲面形状の複数枚の反射シェル21を有し、この反射シェル21が入れ子状に配置されている。
反射シェル21は、基材の片側表面(光入射面)に極端紫外光を反射する反射層を設けたものであり、本実施例においては、反射層としてルテニウムからなる反射膜が設けられている。極端紫外光の高い反射率を得るために、この反射膜の表面は極めて滑らかになっており、二乗平均表面粗さが、例えば2nm以下に制御される。
【0015】
各反射シェル21はその端部で保持構造体22の保持板22aに固定され、保持板22aはさらに外側と内側のリング状の外側保持構造体22b、内側保持構造体22cに固定されている。以下、反射シェルの端部を保持する保持板22aと保持板を固定するリングの構造体22b,22cを合わせて、反射シェルの保持構造体22、あるいは単に保持構造体22と呼ぶ。
なお、図1は集光鏡アッセンブリ20全体の構成を模式的に表したものであり、反射シェル21の冷却チャネルを示しておらず、また、反射シェル21は一部しか示されていない。
【0016】
図2に、反射シェルに設けた冷却チャネル構造の例を示す。同図(a)(b)はそれぞれ、本発明における反射シェルの冷却チャネル23の配置と従来の反射シェルの冷却チャネル23を模式的に示したものである。
本発明の実施例においては、同図(a)に示すように、冷却チャネル23が反射シェルの母線方向に形成されている。一方、従来技術による集光アッセンブリにおいては、同図(b)に示すように冷却チャネル23が反射シェル21の周方向に形成されている。
ここで、同図(c)に示すように、本発明においては、前記したように反射シェルの面上であって、かつ、反射シェルの軸(回転楕円面または回転双曲面形状の反射シェルの回転軸)方向を母線方向といい、反射セルの面上であって、上記軸に直交する方向を周方向という。
図3に冷却チャネルが設けられた反射シェルの具体的構成例を示す。
同図は、反射シェル21の一つを示したものであり、回転楕円面または回転双曲面形状の反射シェルの内側の面に反射面が形成され、その裏面側である外側の面の母線方向に冷却チャネル23が設けられる。この冷却チャネルは、例えば、反射シェルと同様の材料で形成された管状の部材を反射シェル21の表面に取り付けたものであり、図示しない供給源から供給される冷却水などの冷媒が流れ、反射シェル21を冷却する。
【0017】
上記反射シェル21の基材としては、例えば、ニッケル(Ni)を用いることができるが、モリブデン(Mo)を用いることにより、ニッケルと用いる場合に比べて、熱変形を小さくすることができる。
以下では、反射シェルに母線方向に冷却チャネルを設けたもの(基材の材料は問わないが例えばニッケルを使用)を実施例1し、上記のように、反射シェルに母線方向に冷却チャネルを設け、基材の材料としてモリブデンを使用したものを実施例2とする。
【0018】
図4は、本発明の実施例3の集光鏡アッセンブリの構成を示す図である。同図(a)は集光鏡アッセンブリを保持構造体側からみた図、(b)は集光鏡アッセンブリの軸を通る平面で切った断面図(同図(a)のB−B断面図)、である。
図4に示すように、集光鏡アッセンブリ20は、第1〜第nの複数の反射シェル21と、保持構造体22から構成される。
反射シェル21は、前記したように、径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状を有し、これらの複数枚の反射シェル21が入れ子状に配置され、各反射シェルには、図3に示したように、母線方向に冷却チャネルが設けられている。
これらの反射シェル21は、その端部で保持構造体22の保持板22aに固定され、保持板22aはさらに外側と内側のリング状の外側保持構造体22b、内側保持構造体22cに固定されている。
上記保持構造体22には、図4に示すように、保持板冷却チャネル24が設けられている。保持板冷却チャネル24は保持構造体22の保持板22aに沿って配置されており、同図(b)に示すように、冷却水などの冷却媒体は、保持板冷却チャネル24の一方に設けた入り口から流入し、他方の出口から流出し、保持構造体22を冷却する。
冷却チャネルを反射シェル21の母線方向に沿わすとともに、図4に示すように、反射シェル21の保持構造体22の保持板22aに沿って冷却チャネル24を設けて冷却することによって温度上昇を抑制し、保持板22aの熱変形量を小さくすることができる。
【0019】
上記構造の集光鏡アッセンブリにおいて、反射シェル21等の基材としては、例えば、ニッケル(Ni)を用いることができるが、前記したように、モリブデン(Mo)を用いることにより、ニッケルと用いる場合に比べて、熱変形を小さくすることができる。
以下では、上記構造の集光鏡アッセンブリ(基材の材料は問わないが例えばニッケルを使用)を実施例3とし、上記構造の集光鏡アッセンブリにおいて、基材の材料としてモリブデンを使用したものを実施例4とする。
以上を整理すると、従来例及び本発明の実施例は以下の表1に示すようになる。なお、従来例、実施例1,3における反射シェルの基材の材料はニッケルに限られるわけではないが、以下に説明する検証はニッケル(Ni)を用いて行った。
【0020】
【表1】
【0021】
上記実施例1−4に示した集光鏡アッセンブリは、前記図11に示した、例えばLi(リチウム)、スズ(Sn)等の極端紫外光放射種を加熱して励起し、高温プラズマを発生させる一対の放電電極からなる放電部と、この放電部において発生した上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光手段と、集光された極端紫外光を取り出す光取り出し部とを備えたLAGDPP方式のEUV光源装置や、前述したDPP方式のEUV光源装置の集光手段として用いることができ、本実施例の集光鏡アッセンブリを用いることにより、集光鏡アッセンブリの温度上昇に対して集光性能の低下を抑制したEUV光源装置を得ることができる。
【0022】
本発明の効果を検証するため、上記従来例及び実施例1−4について、集光鏡アッセンブリの各部に熱負荷を与えたときの温度分布と熱変形量を有限要素解析によって求め、熱変形後の集光鏡アッセンブリについて光線追跡法を用いて集光特性を計算した。そして熱変形前、後での集光性能の変化の度合いを本発明と従来技術とで比較、検証した。詳細な手順は以下の通りである。
(ア)熱変形前の集光鏡アッセンブリについて、光線追跡法を用い、シミュレーションにより集光特性を計算する。ここでは、集光鏡アッセンブリの反射シェル枚数を9枚とし、発光点プラズマの形状は直径1mm、長さ1.3mmの軸対称ガウス型、放射強度分布は等方的と想定した。集光シミュレーションによって、集光点を含む面における放射照度分布や、集光点放射角度分布などの集光特性とともに、集光鏡アッセンブリの各部で吸収されるパワーも得られ、各部への熱負荷が算出できる。
表2に、集光シミュレーションの結果から算出した集光鏡アッセンブリ各部への熱負荷(集光鏡アッセンブリ各部で吸収されるパワー)を示す。ただし、発光点プラズマから立体角2π空間に放出される、放射パワーを11kW、高速イオン等の運動エネルギーとして放出される非放射パワーを5.3kWとした。
【0023】
【表2】
【0024】
(イ)手順(ア)で算出した熱負荷が加わったときの集光鏡アッセンブリ各部の温度変化を、有限要素法を用いた温度解析によって求める。
(ウ)手順(イ)で求めた温度変化による集光鏡アッセンブリ各部の熱変形量を、有限要素法を用いた構造解析によって求める。
(エ)手順(ウ)で求めた熱変形後の集光鏡アッセンブリについて、手順(ア)と同様にして集光シミュレーションを行ない、集光特性を計算する。
(オ)手順(ア)で得られた熱変形前の集光特性と、手順(エ)で得られた熱変形後の集光特性を比較し、熱変形による集光性能の変化の度合いを評価する。
【0025】
前記表1に示した従来例と前記実施例1−4の5つのケースについて、反射シェルの形状と熱負荷条件をすべて共通にし、上記手順に従って熱変形後の集光性能をシミュレーションし、比較した。
図5に、集光シミュレーションで得られた熱変形前(同図(a))と、従来例の場合の熱変形後(同図(b))と、本発明の実施例2(冷却チャネルを母線方向に設け、基材の材料にモリブデンを使用)の場合の熱変形後(同図(c))の集光点を含む平面内の放射照度分布の比較を示す。なお、図5は放射照度分布の強度を等高線で示したものであり、中心に近くなるほど、放射照度分布は大きくなる。
また、図6に従来例及び実施例1−4の径方向の放射照度プロファイル(位置に対する照度の変化)の比較をそれぞれ示す。なお、図6は、中心からの距離(mm)に応じた放射照度(任意単位)をグラフで示したものである。
図5から明らかなように、従来例の熱変形後おいては、集光鏡アッセンブリの熱変形により集光点像のボケが大きくなり、放射照度分布はなだらかになるが、本発明の実施例では、従来例と比較して熱変形前後での放射照度分布の変化が小さい。
また、図6から明らかなように、従来例の熱変形後に比べ、本発明の実施例1−4では熱変形前後での放射照度プロファイルの変化が小さい。
【0026】
図7は、従来例と本発明の実施例1−4における集光率の比較を示したグラフである。ここでは、集光率を、発光点から立体角2π空間へ放射された極端紫外光パワーに対する、集光点における半径3mm円内に入る極端紫外光パワーの比率で定義した。
図7から明らかなように、従来例では熱変形によって集光率が大きく低下するのに対し、本発明の実施例1−4では集光率の低下が小さい。すなわち、従来技術による集光鏡アッセンブリを備えた光源装置では、光源動作にともない集光鏡アッセンブリが熱変形すると、アパーチャから外に取り出すことのできる極端紫外光パワーがかなり小さくなってしまうのに対し、本発明の集光鏡アッセンブリを備えた光源装置ではあまり低下しない。
【0027】
図8は前記集光シミュレーションで得られた、集光点に設置したアパーチャ透過後の極端紫外光遠視野像の比較を示す。なお、同図は遠視野像を等高線で示したものであり、熱変形前(同図(a))と、従来例の場合の熱変形後(同図(b))と、本発明の実施例2(冷却チャネルを母線方向に設け、基材の材料にモリブデンを使用)の場合の熱変形後(同図(c))の遠視野像を示す。
図8に示すように、従来例においては、集光鏡アッセンブリの熱変形により熱変形後の遠視野像の強度分布均一性が悪化するが、本発明の実施例2では、従来例と比較して熱変形前後での遠視野像均一性の変化が小さい。
図9にアパーチャ透過光の角度分布特性の比較を示す。同図の横軸は光軸からの角度(deg)を示し、縦軸は放射強度(任意単位)を示し、図9(a)は熱変形前と、従来例の熱変形後と、本発明の実施例1,2の熱変形後を示し、図9(b)は、熱変形前と、従来例の熱変形後と、本発明の実施例3,4の熱変形後を示す。なお、同図では光軸からの角度4度以上の領域のみを示している。
図9に示すように、従来例では、熱変形によって強度が0になってしまう角度域が複数出現するのに対し、本発明の実施例では熱変形前後での角度分布特性の変化が小さい。すなわち、従来技術による集光鏡アッセンブリを備えた光源装置では、光源動作にともない集光鏡アッセンブリが熱変形すると、アパーチャから外に取り出した極端紫外光の角度分布がかなり悪化してしまうのに対し、本発明の集光鏡アッセンブリを備えた光源装置ではあまり変化しない。
【0028】
図10は、従来例と実施例1の熱変形前後の形状変化を示す図であり、同図(a)は従来例の熱変形前後の形状変化を示し、同図(b)は実施例1(冷却チャネルを母線方向に設けた場合)の熱変形前後の反射シェルの形状変化を示す。同図は、変形量の拡大率を500倍にして表示したものであり、熱変形前の外形線を点線で示し、熱変形後の外形線を実線で示している。
図10における従来例と実施例1の変形状態を比較すると、従来例では、反射シェルの熱変形前の断面形状A−Bと熱変形後の断面形状A’−B’がかなり異なっている。つまり、反射シェルの端部ほど外側へ膨らむ変形量が大きく、反りかえるような変形をしている。B’−C’についても同様である。それに対し、実施例1では熱変形によって反射シェル全体が径方向に膨らむものの、変形後の断面形状A’−B’は変形前の断面形状A−Bとほぼ相似である。B’−C’の変形畳も従来例より小さい。
これは、反射シェルの母線方向に沿って設けられた冷却チャネルが、母線と垂直な方向の変形を抑制する補強材の役割を果たしているからであると考えられる。
反射シェルに入射してきた光はその反射面との角度によって反射後の進行方向が決まるのであるから、反射面の形状が変化し、反射面への光の入射角度が設計からずれると、当然のことながら、集光性能が悪化することになる。したがって、実施例1は従来例1よりも熱変形による集光性能の低下が抑制される。
【0029】
なお、同図には示していないが、従来例と実施例2(冷却チャネルを母線方向に設け、基材の材料にモリブデンを使用)の変形状態を比較すると、実施例2では変形前後の断面形状の相似性はやや崩れるものの、変形量そのものが従来例より小さく、上記と同様な理由により、従来例よりも熱変形による集光性能の低下が抑制された。
従来例よりも実施例2の変形量が小さい理由は、反射シェル基材の物性値の違いによるものである。
具体的には、温度300Kでの熱膨張係数が従来例のニッケルでは約13.7×10−6[1/K]であるのに対し、実施例2のモリブデンでは約4.8×10−6[1/K]と小さい。また、温度300Kでの熱伝導率がニッケルが約91[W/(m・K)]であるのに対し、モリブデンが約138[W/(m・K)]と大きい。
形状や構造、熱負荷など他の条件が同一であれば、熱膨張係数が小さいほうが同じ温度上昇に対して熱変形量は小さくなるし、熱伝導率が大きいほうが温度上昇そのものが小さくなる。モリブデンはニッケルよりも熱膨張係数が小さく、しかも、熱伝導率が大きいので、反射シェルの材質として用いた場合には熱変形量がかなり小さくなる。なお、従来技術の反射シェル基材で用いられるアルミニウムや銅はニッケルより熱伝導率が大きいが、熱膨張係数も大きいため、やはり熱変形量が大きい。
【0030】
さらに、実施例1(冷却チャネルを母線方向に設けた場合)と実施例4(冷却チャネルを母線方向に設けるとともに保持板冷却チャネル22dを設け、基材の材料としてモリブデンを用いた場合)の熱変形状態をシミュレーションにより比較した。
その結果、実施例1では、保持板の温度が上昇することにより熱変形するので、保持板に一端を固定されている反射シェルは、この保持板の変形にともなって変位し、各反射シェルと発光点との位置関係が設計上の状態、すなわち最適な状態からずれ、集光性能の悪化を招くことが分かった。
これに対し、実施例4では、保持板を冷却しているので、光源動作時の保持板の温度上昇が小さくなり、保持板冷却のない実施例1よりも、保持板の変形が小さく熱変形による集光性能の低下が抑制される。
このように、本発明の集光鏡アッセンブリを用いることにより、光源の動作中に亘って安定な極端紫外光のパワーおよび角度分布特性を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 チャンバ
1c 隔壁
2 EUV集光鏡
3 デブリトラップ
7 EUV光取出部(アパーチャ)
11,12 電極
14 高温プラズマ原料
15 コンテナ
16a,16b 回転モータ
17 レーザ光
17a レーザ源
20 集光鏡アッセンブリ
21 反射シェル
22 保持構造体
22a 保持板
22b 外側保持構造体
22c 内側保持構造体
23 冷却チャネル23
24 保持板冷却チャネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光鏡アッセンブリおよびこの集光鏡アッセンブリを用いた極端紫外光光源装置に関し、特に集光鏡アッセンブリの冷却チャネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、その製造用の投影露光装置においては解像力の向上が要請されている。その要請に応えるため、露光用光源の短波長化が進められ、次世代の半導体露光用光源として、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放出する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)が開発されている。
EUV光源装置において、EUV光を発生させる方法はいくつか知られているが、そのうちの一つにEUV放射種の加熱励起により高温プラズマを発生させ、このプラズマから放射されるEUV光を取り出す方法がある。
このような方法を採用するEUV光源装置の種類の一つに、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式EUV光源装置がある。DPP方式EUV光源装置は、電流駆動によって生成した高温プラズマからのEUV放射光を利用するものである。
【0003】
EUV光源装置において、強い放射強度の波長13.5nmのEUV光を放出する放射種、すなわち、EUV発生用高温プラズマ原料として、Li(リチウム)とSn(スズ)が注目されている。
以下、DPP方式に基づくEUV放射のメカニズムを簡単に説明する。
DPP方式では、例えば内部に電極が配置された放電容器内をガス状の高温プラズマ原料雰囲気とし、当該雰囲気中の電極間において放電を発生させて初期プラズマを生成する。ここで、放電により電極間を流れる直流電流の自己磁場の作用により、上記した初期プラズマは収縮される。これにより初期プラズマの密度は高くなり、プラズマ温度が急激に上昇する。このような作用を、以下ピンチ効果と称する。ピンチ効果による加熱によって、高温となったプラズマのイオン密度は1017〜1020cm−3、電子温度は20〜30eV程度に到達し、この高温プラズマからEUV光が放射される。
近年、DPP方式において、放電が発生する電極表面に供給された固体もしくは液体のスズやリチウムにレーザ等のエネルギービームを照射して気化させ、その後、放電によって高温プラズマを生成する方法が特許文献1において提案されている。以下、エネルギービームがレーザである場合を説明する。また、上記したこの方式をLAGDPP(Laser Assisted Gas Discharge Produced Plasma)方式と称することにする。
【0004】
以下、LAGDPP方式のEUV光源装置について、図11を用いて説明する。
図11に示すEUV光光源装置は、放電容器であるチャンバ1を有する。チャンバ1は、開口を有する隔壁1cを介して、大きく2つの空間に分割される。一方の空間には放電部が配置される。放電部は、EUV放射種を含む高温プラズマ原料を加熱して励起する加熱励起手段である。放電部は、一対の電極11,12等により構成される。
他方の空間には、高温プラズマ原料が加熱励起されて生成した高温プラズマから放出されるEUV光を集光して、チャンバ1に設けられたEUV光取出部7より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導くEUV集光鏡2、および、放電によるプラズマ生成の結果生じるデブリがEUV光の集光部へ移動するのを抑制するためのデブリトラップ3が配置される。
11,12は円盤状の電極である。電極11,12は所定間隔だけ互いに離間しており、それぞれ回転モータ16a,16bが回転することにより、16c,16dを回転軸として回転する。
【0005】
14は、波長13.5nmのEUV光を放射する高温プラズマ原料である。高温プラズマ原料14は、加熱された溶融金属(melted metal)例えば液体状のスズであり、コンテナ15に収容される。
上記電極11,12は、その一部が高温プラズマ原料14を収容するコンテナ15の中に浸されるように配置される。電極11,12の表面上に乗った液体状の高温プラズマ原料14は、電極11,12が回転することにより、放電空間に輸送される。上放電空間に輸送された高温プラズマ原料14に対してレーザ源17aよりレーザ光17が照射される。レーザ光17が照射された高温プラズマ原料14は気化する。
高温プラズマ原料14がレーザ光17の照射により気化された状態で、電極11,12に、電力供給手段8からパルス電力が印加されることにより、両電極11,12間にパルス放電が開始し、高温プラズマ原料によるプラズマが形成される。放電時に流れる大電流によりプラズマが加熱励起され高温化すると、この高温プラズマからEUV放射が発生する。
高温プラズマから放射されたEUV光は、EUV集光鏡2により集光され、EUV取出部7から図示を省略した露光機に取り出される。
【0006】
上記のように、発光点である高温プラズマから放射された極端紫外光を集光鏡2によって集光し、開口(EUV光取出部)7から極端紫外光を取り出す。ここで、集光鏡2は、高温プラズマから放射された極端紫外光を反射する反射シェルと、この反射シェルを光源装置内で支持する反射シェル保持構造体とを備える。以後これを集光鏡アッセンブリ20と呼ぶ。
集光鏡アッセンブリとして、同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した、径の異なる、回転楕円面または回転双曲面形状の反射シェルを複数入れ子状に配置し、これを保持構造体により保持した斜入射型集光鏡アッセンブリが知られている。この反射シェルは、基材の片側表面に極端紫外光を反射する反射層を設けたものである。反射シェルの基材の材質としては、機械的強度と熱伝導性を考慮して金属材料が選ばれる。
特許文献1には集光鏡の材料として、ニッケル、アルミニウム、銅、ニッケル−コバルト合金が好適な材料として挙げられている。また、反射層は極端紫外光、典型的には波長13.5nmの極端紫外光の高い反射率が得られるような材料が選択される。特許文献1には反射層の好適な材料として、パラジウム、イリジウム、白金、モリブデン、ロジウム、ルテニウムが挙げられている。
【0007】
高温プラズマから発せられた光や高速イオンなどが集光鏡アッセンブリに入射し、それらの一部は吸収され、熱負荷となる。そのため発光動作中は集光鏡アッセンブリ各部の温度が上昇する。
温度上昇にともない、集光鏡アッセンブリを構成する反射シェルが熱変形し、理想的な反射面形状からずれる。また、温度上昇にともない反射シェル保持構造体も熱変形し、各反射シェルと発光点との位置関係が理想的な状態からずれる。これらの結果、集光性能が悪化する。また、温度上昇が著しいと酸化などの反射膜の劣化が進行して極端紫外光の反射率が低下し、やはり集光性能が悪化する。
極端紫外光を用いた露光装置においては、光源装置と露光装置本体は小さな開口(アパーチャ、図11のEUV光取出部7)で区切られる。アパーチャを設置する理由は、光源装置側チャンバと露光装置本体側チャンバの真空状態ができるだけ相互に干渉しないように空間分離するためと、露光に実際に寄与しない不要な光を遮断するためである。通常、アパーチャは、集光鏡アッセンブリからの射出光の空間的分布が最も狭くなる位置(集光点)に設置される。
【0008】
集光鏡アッセンブリの集光性能が悪化すると、集光点位置における光の空間的強度分布がブロードになるため、本来透過すべき光までアパーチャで遮光されてしまい、露光に必要なパワーが得られなくなることがある。また、集光性能の悪化はアパーチャ透過後の光の角度分布特性を悪くし、露光品質低下の一因となる。このように、集光性能の悪化は光源出力の低下や光強度分布の均一性低下など、光源装置としての性能低下を招く。
集光性能悪化の原因となる集光鏡アッセンブリの温度上昇を抑制するために、反射シェルを冷却するための冷却チャネルが設けられる。例えば、特許文献2には、流体を流すための流路を反射シェルの非反射面に備え、水などの冷却流体を流すことによって除熱する集光鏡アッセンブリが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/095220号パンフレット
【特許文献2】特許第4105616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
冷却チャネルを使って反射シェルを冷却することにより、集光鏡アッセンブリの温度上昇はある程度抑制されるが、完全に抑えることはできない。特に、集光鏡の冷却チャネルが設けられていない部分の温度上昇は避けられない。従来技術による集光鏡アッセンブリでは、温度上昇にともなう集光鏡アッセンブリの熱変形により集光性能が悪化する。その結果、光源装置としての性能が低下する。特に、高出力タイプの光源装置では集光鏡アッセンブリへの熱負荷が高くなり、熱変形による集光性能の低下がさらに顕著となる。
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、
集光鏡アッセンブリの熱変形による集光性能の悪化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、反射シェルを冷却するための冷媒を流す冷却チャネルを、集光鏡アッセンブリの反射シェルの反射面の裏面側の面上であって、かつ、反射シェルの軸方向に取り付ける。以下では、上記反射シェルの面上であって反射シェルの軸方向を母線方向ともいう。
上記反射シェルの基材の材質として、モリブデンを用いるのが好ましく、また、上記反射セルを支持する支持構造体に冷却チャンネルを設けることにより、さらに効果的に集光鏡アッセンブリを冷却することができる。
すなわち、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状の複数の斜入射型反射シェルと、上記複数の反射シェルを支持する反射シェル保持構造体とを備えた、極端紫外光を反射して集光する集光鏡アッセンブリにおいて、上記反射シェルに、該反射シェルを冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルを反射シェルの母線の方向に沿って形成する。
(2)上記(1)において、反射シェルは、基材の片側表面に極端紫外光を反射する反射層を設けたものであり、上記基材の材質をモリブデンとする。
(3)上記(1)(2)において、反射シェル保持構造体に、該保持構造体を冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルを形成する。
(4)上記(1)(2)(3)の集光鏡アッセンブリを、極端紫外光放射種を加熱して励起し高温プラズマを発生させる一対の放電電極からなる放電部と、上記放電部において発生した上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光手段と、上記集光された極端紫外光を取り出す光取り出し部とを備えた極端紫外光光源装置の集光手段として用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)熱負荷によって反射シェルの温度が上昇しても、基材の母線方向に走る冷却チャネルが補強材の働きをするので母線と垂直方向の反射シェルの熱変形が抑制される。
そのため、集光性能の低下が抑制される。
(2)反射シェル基材の材質をモリブデンにすることによって、反射シェルの熱変形量を小さくすることができ、集光性能の低下が抑制される。
(3)反射シェル保持構造体を冷却することによって温度上昇が抑制されるので、反射シェル保持構造体の熱変形量が小さくなる。そのため、各反射シェルと発光点との位置関係が理想的な位置からずれないので集光性能の低下がより一層抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】集光鏡アッセンブリの構成を示す模式図である。
【図2】反射シェルに設けた冷却チャネル構造の例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例の冷却チャネルが設けられた反射シェルの具体的構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施例3の集光鏡アッセンブリの構成を示す模式図である。
【図5】熱変形前と、従来例の熱変形後と、本発明の実施例2の熱変形後の放射照度分布を示す図である。
【図6】従来例及び本発明の実施例1−4の径方向の放射照度プロファイルを示す図である。
【図7】従来例と本発明の実施例1−4における集光率の比較を示す図である。
【図8】集光点に設置したアパーチャ透過後の極端紫外光遠視野像を示す図である。
【図9】アパーチャ透過光の角度分布特性の比較を示す図である。
【図10】従来例と、本発明の実施例1の熱変形前後の反射シェルの形状変化を示す図である。
【図11】LAGDPP方式のEUV光源装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に集光鏡アッセンブリ20の構成を示す。同図(a)は集光鏡アッセンブリを保持構造体側からみた図、(b)は集光鏡アッセンブリの軸を通る平面で切った断面図(同図(a)のA−A断面図)、である。なお、図1(b)においては、紙面左側から入射したEUV光が集光されて紙面右側から出射する。
図1に示すように、集光鏡アッセンブリ20は、第1〜第nの複数の反射シェル21と、保持構造体22から構成される。
集光鏡アッセンブリ20は、同一軸上に焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した、径の異なる、回転楕円面または回転双曲面形状の複数枚の反射シェル21を有し、この反射シェル21が入れ子状に配置されている。
反射シェル21は、基材の片側表面(光入射面)に極端紫外光を反射する反射層を設けたものであり、本実施例においては、反射層としてルテニウムからなる反射膜が設けられている。極端紫外光の高い反射率を得るために、この反射膜の表面は極めて滑らかになっており、二乗平均表面粗さが、例えば2nm以下に制御される。
【0015】
各反射シェル21はその端部で保持構造体22の保持板22aに固定され、保持板22aはさらに外側と内側のリング状の外側保持構造体22b、内側保持構造体22cに固定されている。以下、反射シェルの端部を保持する保持板22aと保持板を固定するリングの構造体22b,22cを合わせて、反射シェルの保持構造体22、あるいは単に保持構造体22と呼ぶ。
なお、図1は集光鏡アッセンブリ20全体の構成を模式的に表したものであり、反射シェル21の冷却チャネルを示しておらず、また、反射シェル21は一部しか示されていない。
【0016】
図2に、反射シェルに設けた冷却チャネル構造の例を示す。同図(a)(b)はそれぞれ、本発明における反射シェルの冷却チャネル23の配置と従来の反射シェルの冷却チャネル23を模式的に示したものである。
本発明の実施例においては、同図(a)に示すように、冷却チャネル23が反射シェルの母線方向に形成されている。一方、従来技術による集光アッセンブリにおいては、同図(b)に示すように冷却チャネル23が反射シェル21の周方向に形成されている。
ここで、同図(c)に示すように、本発明においては、前記したように反射シェルの面上であって、かつ、反射シェルの軸(回転楕円面または回転双曲面形状の反射シェルの回転軸)方向を母線方向といい、反射セルの面上であって、上記軸に直交する方向を周方向という。
図3に冷却チャネルが設けられた反射シェルの具体的構成例を示す。
同図は、反射シェル21の一つを示したものであり、回転楕円面または回転双曲面形状の反射シェルの内側の面に反射面が形成され、その裏面側である外側の面の母線方向に冷却チャネル23が設けられる。この冷却チャネルは、例えば、反射シェルと同様の材料で形成された管状の部材を反射シェル21の表面に取り付けたものであり、図示しない供給源から供給される冷却水などの冷媒が流れ、反射シェル21を冷却する。
【0017】
上記反射シェル21の基材としては、例えば、ニッケル(Ni)を用いることができるが、モリブデン(Mo)を用いることにより、ニッケルと用いる場合に比べて、熱変形を小さくすることができる。
以下では、反射シェルに母線方向に冷却チャネルを設けたもの(基材の材料は問わないが例えばニッケルを使用)を実施例1し、上記のように、反射シェルに母線方向に冷却チャネルを設け、基材の材料としてモリブデンを使用したものを実施例2とする。
【0018】
図4は、本発明の実施例3の集光鏡アッセンブリの構成を示す図である。同図(a)は集光鏡アッセンブリを保持構造体側からみた図、(b)は集光鏡アッセンブリの軸を通る平面で切った断面図(同図(a)のB−B断面図)、である。
図4に示すように、集光鏡アッセンブリ20は、第1〜第nの複数の反射シェル21と、保持構造体22から構成される。
反射シェル21は、前記したように、径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状を有し、これらの複数枚の反射シェル21が入れ子状に配置され、各反射シェルには、図3に示したように、母線方向に冷却チャネルが設けられている。
これらの反射シェル21は、その端部で保持構造体22の保持板22aに固定され、保持板22aはさらに外側と内側のリング状の外側保持構造体22b、内側保持構造体22cに固定されている。
上記保持構造体22には、図4に示すように、保持板冷却チャネル24が設けられている。保持板冷却チャネル24は保持構造体22の保持板22aに沿って配置されており、同図(b)に示すように、冷却水などの冷却媒体は、保持板冷却チャネル24の一方に設けた入り口から流入し、他方の出口から流出し、保持構造体22を冷却する。
冷却チャネルを反射シェル21の母線方向に沿わすとともに、図4に示すように、反射シェル21の保持構造体22の保持板22aに沿って冷却チャネル24を設けて冷却することによって温度上昇を抑制し、保持板22aの熱変形量を小さくすることができる。
【0019】
上記構造の集光鏡アッセンブリにおいて、反射シェル21等の基材としては、例えば、ニッケル(Ni)を用いることができるが、前記したように、モリブデン(Mo)を用いることにより、ニッケルと用いる場合に比べて、熱変形を小さくすることができる。
以下では、上記構造の集光鏡アッセンブリ(基材の材料は問わないが例えばニッケルを使用)を実施例3とし、上記構造の集光鏡アッセンブリにおいて、基材の材料としてモリブデンを使用したものを実施例4とする。
以上を整理すると、従来例及び本発明の実施例は以下の表1に示すようになる。なお、従来例、実施例1,3における反射シェルの基材の材料はニッケルに限られるわけではないが、以下に説明する検証はニッケル(Ni)を用いて行った。
【0020】
【表1】
【0021】
上記実施例1−4に示した集光鏡アッセンブリは、前記図11に示した、例えばLi(リチウム)、スズ(Sn)等の極端紫外光放射種を加熱して励起し、高温プラズマを発生させる一対の放電電極からなる放電部と、この放電部において発生した上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光手段と、集光された極端紫外光を取り出す光取り出し部とを備えたLAGDPP方式のEUV光源装置や、前述したDPP方式のEUV光源装置の集光手段として用いることができ、本実施例の集光鏡アッセンブリを用いることにより、集光鏡アッセンブリの温度上昇に対して集光性能の低下を抑制したEUV光源装置を得ることができる。
【0022】
本発明の効果を検証するため、上記従来例及び実施例1−4について、集光鏡アッセンブリの各部に熱負荷を与えたときの温度分布と熱変形量を有限要素解析によって求め、熱変形後の集光鏡アッセンブリについて光線追跡法を用いて集光特性を計算した。そして熱変形前、後での集光性能の変化の度合いを本発明と従来技術とで比較、検証した。詳細な手順は以下の通りである。
(ア)熱変形前の集光鏡アッセンブリについて、光線追跡法を用い、シミュレーションにより集光特性を計算する。ここでは、集光鏡アッセンブリの反射シェル枚数を9枚とし、発光点プラズマの形状は直径1mm、長さ1.3mmの軸対称ガウス型、放射強度分布は等方的と想定した。集光シミュレーションによって、集光点を含む面における放射照度分布や、集光点放射角度分布などの集光特性とともに、集光鏡アッセンブリの各部で吸収されるパワーも得られ、各部への熱負荷が算出できる。
表2に、集光シミュレーションの結果から算出した集光鏡アッセンブリ各部への熱負荷(集光鏡アッセンブリ各部で吸収されるパワー)を示す。ただし、発光点プラズマから立体角2π空間に放出される、放射パワーを11kW、高速イオン等の運動エネルギーとして放出される非放射パワーを5.3kWとした。
【0023】
【表2】
【0024】
(イ)手順(ア)で算出した熱負荷が加わったときの集光鏡アッセンブリ各部の温度変化を、有限要素法を用いた温度解析によって求める。
(ウ)手順(イ)で求めた温度変化による集光鏡アッセンブリ各部の熱変形量を、有限要素法を用いた構造解析によって求める。
(エ)手順(ウ)で求めた熱変形後の集光鏡アッセンブリについて、手順(ア)と同様にして集光シミュレーションを行ない、集光特性を計算する。
(オ)手順(ア)で得られた熱変形前の集光特性と、手順(エ)で得られた熱変形後の集光特性を比較し、熱変形による集光性能の変化の度合いを評価する。
【0025】
前記表1に示した従来例と前記実施例1−4の5つのケースについて、反射シェルの形状と熱負荷条件をすべて共通にし、上記手順に従って熱変形後の集光性能をシミュレーションし、比較した。
図5に、集光シミュレーションで得られた熱変形前(同図(a))と、従来例の場合の熱変形後(同図(b))と、本発明の実施例2(冷却チャネルを母線方向に設け、基材の材料にモリブデンを使用)の場合の熱変形後(同図(c))の集光点を含む平面内の放射照度分布の比較を示す。なお、図5は放射照度分布の強度を等高線で示したものであり、中心に近くなるほど、放射照度分布は大きくなる。
また、図6に従来例及び実施例1−4の径方向の放射照度プロファイル(位置に対する照度の変化)の比較をそれぞれ示す。なお、図6は、中心からの距離(mm)に応じた放射照度(任意単位)をグラフで示したものである。
図5から明らかなように、従来例の熱変形後おいては、集光鏡アッセンブリの熱変形により集光点像のボケが大きくなり、放射照度分布はなだらかになるが、本発明の実施例では、従来例と比較して熱変形前後での放射照度分布の変化が小さい。
また、図6から明らかなように、従来例の熱変形後に比べ、本発明の実施例1−4では熱変形前後での放射照度プロファイルの変化が小さい。
【0026】
図7は、従来例と本発明の実施例1−4における集光率の比較を示したグラフである。ここでは、集光率を、発光点から立体角2π空間へ放射された極端紫外光パワーに対する、集光点における半径3mm円内に入る極端紫外光パワーの比率で定義した。
図7から明らかなように、従来例では熱変形によって集光率が大きく低下するのに対し、本発明の実施例1−4では集光率の低下が小さい。すなわち、従来技術による集光鏡アッセンブリを備えた光源装置では、光源動作にともない集光鏡アッセンブリが熱変形すると、アパーチャから外に取り出すことのできる極端紫外光パワーがかなり小さくなってしまうのに対し、本発明の集光鏡アッセンブリを備えた光源装置ではあまり低下しない。
【0027】
図8は前記集光シミュレーションで得られた、集光点に設置したアパーチャ透過後の極端紫外光遠視野像の比較を示す。なお、同図は遠視野像を等高線で示したものであり、熱変形前(同図(a))と、従来例の場合の熱変形後(同図(b))と、本発明の実施例2(冷却チャネルを母線方向に設け、基材の材料にモリブデンを使用)の場合の熱変形後(同図(c))の遠視野像を示す。
図8に示すように、従来例においては、集光鏡アッセンブリの熱変形により熱変形後の遠視野像の強度分布均一性が悪化するが、本発明の実施例2では、従来例と比較して熱変形前後での遠視野像均一性の変化が小さい。
図9にアパーチャ透過光の角度分布特性の比較を示す。同図の横軸は光軸からの角度(deg)を示し、縦軸は放射強度(任意単位)を示し、図9(a)は熱変形前と、従来例の熱変形後と、本発明の実施例1,2の熱変形後を示し、図9(b)は、熱変形前と、従来例の熱変形後と、本発明の実施例3,4の熱変形後を示す。なお、同図では光軸からの角度4度以上の領域のみを示している。
図9に示すように、従来例では、熱変形によって強度が0になってしまう角度域が複数出現するのに対し、本発明の実施例では熱変形前後での角度分布特性の変化が小さい。すなわち、従来技術による集光鏡アッセンブリを備えた光源装置では、光源動作にともない集光鏡アッセンブリが熱変形すると、アパーチャから外に取り出した極端紫外光の角度分布がかなり悪化してしまうのに対し、本発明の集光鏡アッセンブリを備えた光源装置ではあまり変化しない。
【0028】
図10は、従来例と実施例1の熱変形前後の形状変化を示す図であり、同図(a)は従来例の熱変形前後の形状変化を示し、同図(b)は実施例1(冷却チャネルを母線方向に設けた場合)の熱変形前後の反射シェルの形状変化を示す。同図は、変形量の拡大率を500倍にして表示したものであり、熱変形前の外形線を点線で示し、熱変形後の外形線を実線で示している。
図10における従来例と実施例1の変形状態を比較すると、従来例では、反射シェルの熱変形前の断面形状A−Bと熱変形後の断面形状A’−B’がかなり異なっている。つまり、反射シェルの端部ほど外側へ膨らむ変形量が大きく、反りかえるような変形をしている。B’−C’についても同様である。それに対し、実施例1では熱変形によって反射シェル全体が径方向に膨らむものの、変形後の断面形状A’−B’は変形前の断面形状A−Bとほぼ相似である。B’−C’の変形畳も従来例より小さい。
これは、反射シェルの母線方向に沿って設けられた冷却チャネルが、母線と垂直な方向の変形を抑制する補強材の役割を果たしているからであると考えられる。
反射シェルに入射してきた光はその反射面との角度によって反射後の進行方向が決まるのであるから、反射面の形状が変化し、反射面への光の入射角度が設計からずれると、当然のことながら、集光性能が悪化することになる。したがって、実施例1は従来例1よりも熱変形による集光性能の低下が抑制される。
【0029】
なお、同図には示していないが、従来例と実施例2(冷却チャネルを母線方向に設け、基材の材料にモリブデンを使用)の変形状態を比較すると、実施例2では変形前後の断面形状の相似性はやや崩れるものの、変形量そのものが従来例より小さく、上記と同様な理由により、従来例よりも熱変形による集光性能の低下が抑制された。
従来例よりも実施例2の変形量が小さい理由は、反射シェル基材の物性値の違いによるものである。
具体的には、温度300Kでの熱膨張係数が従来例のニッケルでは約13.7×10−6[1/K]であるのに対し、実施例2のモリブデンでは約4.8×10−6[1/K]と小さい。また、温度300Kでの熱伝導率がニッケルが約91[W/(m・K)]であるのに対し、モリブデンが約138[W/(m・K)]と大きい。
形状や構造、熱負荷など他の条件が同一であれば、熱膨張係数が小さいほうが同じ温度上昇に対して熱変形量は小さくなるし、熱伝導率が大きいほうが温度上昇そのものが小さくなる。モリブデンはニッケルよりも熱膨張係数が小さく、しかも、熱伝導率が大きいので、反射シェルの材質として用いた場合には熱変形量がかなり小さくなる。なお、従来技術の反射シェル基材で用いられるアルミニウムや銅はニッケルより熱伝導率が大きいが、熱膨張係数も大きいため、やはり熱変形量が大きい。
【0030】
さらに、実施例1(冷却チャネルを母線方向に設けた場合)と実施例4(冷却チャネルを母線方向に設けるとともに保持板冷却チャネル22dを設け、基材の材料としてモリブデンを用いた場合)の熱変形状態をシミュレーションにより比較した。
その結果、実施例1では、保持板の温度が上昇することにより熱変形するので、保持板に一端を固定されている反射シェルは、この保持板の変形にともなって変位し、各反射シェルと発光点との位置関係が設計上の状態、すなわち最適な状態からずれ、集光性能の悪化を招くことが分かった。
これに対し、実施例4では、保持板を冷却しているので、光源動作時の保持板の温度上昇が小さくなり、保持板冷却のない実施例1よりも、保持板の変形が小さく熱変形による集光性能の低下が抑制される。
このように、本発明の集光鏡アッセンブリを用いることにより、光源の動作中に亘って安定な極端紫外光のパワーおよび角度分布特性を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 チャンバ
1c 隔壁
2 EUV集光鏡
3 デブリトラップ
7 EUV光取出部(アパーチャ)
11,12 電極
14 高温プラズマ原料
15 コンテナ
16a,16b 回転モータ
17 レーザ光
17a レーザ源
20 集光鏡アッセンブリ
21 反射シェル
22 保持構造体
22a 保持板
22b 外側保持構造体
22c 内側保持構造体
23 冷却チャネル23
24 保持板冷却チャネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状の複数の斜入射型反射シェルと、上記複数の反射シェルを支持する反射シェル保持構造体とを備えた、極端紫外光を反射して集光する集光鏡アッセンブリにおいて、
上記反射シェルには、該反射シェルを冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルが、反射シェルの母線の方向に沿って形成されている
ことを特徴とする集光鏡アッセンブリ。
【請求項2】
上記反射シェルは、基材の片側表面に極端紫外光を反射する反射層を設けたものであり、上記基材の材質がモリブデンである
ことを特徴とする請求項1に記載の集光鏡アッセンブリ。
【請求項3】
上記反射シェル保持構造体に、該保持構造体を冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルが形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の集光鏡アッセンブリ。
【請求項4】
極端紫外光放射種を加熱して励起し高温プラズマを発生させる一対の放電電極からなる放電部と、
上記放電部において発生した上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光手段と、
上記集光された極端紫外光を取り出す光取り出し部とを備えた極端紫外光光源装置において、
上記集光手段は、請求項1,2または3に記載された集光鏡アッセンブリであることを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項1】
同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置した径の異なる回転楕円面または回転双曲面形状の複数の斜入射型反射シェルと、上記複数の反射シェルを支持する反射シェル保持構造体とを備えた、極端紫外光を反射して集光する集光鏡アッセンブリにおいて、
上記反射シェルには、該反射シェルを冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルが、反射シェルの母線の方向に沿って形成されている
ことを特徴とする集光鏡アッセンブリ。
【請求項2】
上記反射シェルは、基材の片側表面に極端紫外光を反射する反射層を設けたものであり、上記基材の材質がモリブデンである
ことを特徴とする請求項1に記載の集光鏡アッセンブリ。
【請求項3】
上記反射シェル保持構造体に、該保持構造体を冷却する冷却媒体が通過する冷却チャネルが形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の集光鏡アッセンブリ。
【請求項4】
極端紫外光放射種を加熱して励起し高温プラズマを発生させる一対の放電電極からなる放電部と、
上記放電部において発生した上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光手段と、
上記集光された極端紫外光を取り出す光取り出し部とを備えた極端紫外光光源装置において、
上記集光手段は、請求項1,2または3に記載された集光鏡アッセンブリであることを特徴とする極端紫外光光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−187875(P2011−187875A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54302(P2010−54302)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計/EUV光源高信頼化技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計/EUV光源高信頼化技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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