説明

集団モデリングのための生理学的データベースおよびシステム並びに集団モデリングの方法

【課題】少なくとも健康、病気、患者の特性、および急性の医学的危機またはその他の危険な状態についての指標を示し得る、生理学的データベースまたはライブラリを作り出すための装置および方法、また、運動パフォーマンスデータベースまたはライブラリを作り出すための装置および方法を提供する。
【解決手段】データベースは、1人のアスリートまたはアスリートのグループのパフォーマンスおよび進歩、並びに他のアスリートと比較した成績についての新しい洞察を提供するため、あるいは、加工していない病気の履歴および治療に対する反応についての新しい洞察を提供し、最終的にはケアの提供を改善するために適用される、構成され、継続した/擬似継続したモデリング統計である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本非仮出願は、2009年9月1日に出願した米国仮出願番号61/275,635に対して優先権を主張する。この優先出願の内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、生理学的および運動パフォーマンスデータを処理するための方法およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、集団モデリングのための生理学的および/または運動パフォーマンスデータベースおよびシステム並びに集団モデリングの方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
患者の医療診断および治療においては、その患者のものに類似の生理学的特性または症状を示した複数の被験者の生理学的プロフィールを参照する(defer)ことがしばしば必要になる。生理学的プロフィールはしばしば、被験者に関連する生理学的特性を示す多様なセンサシグナルから作り出される。
【0004】
被験者の生理学的パラメータおよびパフォーマンスパラメータをモニタリングすることは、運動に関するトレーニングおよび活動を計画および評価する際に重要となりうる。被験者は、様々な理由で運動したり、あるいは運動活動に従事したりする場合がある。例えば、競技会への準備または参加のために、フィットネスレベルを維持する、またはあるレベルに達するためであったり、あるいは楽しみのためであったりする。被験者は、自分のフィットネスレベルに合わせて作成され、フィットネスまたは運動における目標に向かって進歩する助けとなるように設計されたトレーニングプログラムを有する場合がある。被験者の生理学的パラメータおよびパフォーマンスパラメータは、トレーニングプログラムにおける被験者の進歩、または被験者の運動パフォーマンスについての有益な情報を提供し得る。被験者のフィットネスレベルまたは目標に向かっての進歩を正確に評価するためには、種々の生理学的パラメータまたはパフォーマンスパラメータ、そして関連する状況情報を測定、モニタリングおよび記録することは有用であり得る。
【0005】
運動中の努力および生理学的ストレスを見積もるために、心拍数を利用した種々の方法およびシステムが導入されている。しかし、非実験室条件において肺換気量を測定するための簡便で実用的、かつ楽な手段というものはまれであった。一方、心拍数は、アスリートまたは内科患者の本当の生理学的状態に関する近似値を提供できるのみである。なぜならば、外部要因、例えば、睡眠レベル、カフェイン、抑制剤、ベータ遮断薬、ストレスレベル、水分補給状態、体温等によって複雑になりうるからである。また、生理学的パフォーマンスを測定するために心拍数を正確に利用するには、筋肉に流れる血液量の知識が必要であり、次に、瞬間的な心臓の一回拍出量および心臓のポンプ速度(rate of pumping)の知識が必要である。これらのパラメータは、被験者が身体活動に従事している間に測定するのが困難であり得る。
【0006】
当技術分野において周知の通り、生理学的および解剖学的パラメータを示すシグナルを収集するために利用できるモニタリングシステムおよび関連する方法は多数存在する。例としては、以下の明細書に開示されたシステムおよび関連する方法が挙げられる:2005年1月11日付け米国特許第6,840,907号;1991年3月26日付け米国特許第5,002,060号;2004年9月14日付け米国特許第6,790,183号;2003年7月29日付け米国特許第6,599,251号;2002年9月24日付け米国特許第6,454,719号;2003年3月4日付け米国特許第6,527,729号;2000年1月18日付け米国特許第6,015,388号;および2000年4月4日付け米国特許第6,047,203号。
【0007】
米国特許第6,840,907号明細書には、患者の呼吸の変化をモニタリングするための呼吸分析システムが開示されている。
【0008】
米国特許第5,002,060号明細書には、被験者における心拍数、呼吸速度、心臓特性、呼吸特性および体温の大きな変化を同時にモニタリングするように適合されたモニタリングシステムが開示されている。
【0009】
米国特許第6,790,183号明細書には、患者の吸気および呼気に関連する肺音を収集し、まとめ、そして分析する際に使用するための肺音診断システムが開示されている。
【0010】
米国特許第6,599,251号明細書には、被験者の血圧をモニタリングするための非侵襲的技術が開示されている。
【0011】
米国特許第6,454,719号明細書には、呼吸パラメータ、例えば電流呼吸シグナルまたは呼吸速度等を使用する心臓モニター装置によって患者の心臓の病気を決定するための技術が開示されている。
【0012】
米国特許第6,527,729号明細書には、心不全患者の病気の進行をモニタリングするための方法が開示されている。
【0013】
Sackner et al.(VivoMetrics社)の米国特許第6,015,388号明細書には、プレチスモグラフまたはその他の外部呼吸測定機器を使用した、胸郭の動きおよび腹部の動きに由来する呼吸波形からのピーク吸気流およびピーク吸気加速の決定を含む、呼吸ドライブを測定するための方法が開示されている。
【0014】
Sackner et al.(VivoMetrics社)の米国特許第6,047,203号明細書には、モニターされる個体が着用する生理学的モニタリング衣類が開示されており、この衣類には、肺機能、心臓機能、またはその他の臓器系の機能を反映するパラメータをモニタリングするためのセンサが取り付けられている。
【0015】
上述のモニタリングシステムは、生理学的およびパフォーマンス特性を反映するシグナルを効果的に収集および送信するが、こうしたシグナルは多くの点で制限される。多くの場合、上述のシステムによって送信されたシグナルは、2、3の特性(例えば呼吸速度、血圧や体温)を反映するのみである。従って、生理学的および/またはパフォーマンスデータの効果的なライブラリを作り出すためには、複数のシステムを採用する必要があるであろう。
【発明の開示】
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも健康、病気、患者の特性、および急性の医学的危機またはその他の危険な状態についての指標を示し得る、生理学的データベースまたはライブラリを作り出すための装置および方法を提供する。データベースは、加工していない(natural)病気の履歴および治療に対する反応についての新しい洞察を提供し、最終的にはケアの提供を改善するために適用される、構成され、継続した/擬似継続したモデリング統計であってよい。
【0017】
本発明はまた、運動パフォーマンスデータベースまたはライブラリを作り出すための装置および方法を提供する。データベースは、1人のアスリートまたはアスリートのグループのパフォーマンスおよび進歩、並びに他のアスリートと比較した成績についての新しい洞察を提供するために適用される、構成され、継続した/擬似継続したモデリング統計であってよい。
【0018】
データベース(および情報派生アプローチ)は、豊富な関連する/実際のデータと組み合わせることにより、疫学、多様な病気の加工していない履歴、治療の効果、病気の真のコストおよび治療についての改善された洞察を提供し、最終的に、患者への医療ケアを改善する。このアプローチはまた、1人のアスリートまたはアスリートのグループのパフォーマンスおよび進歩、並びに他のアスリートと比較した成績についての洞察を改善する。
【0019】
本発明の1つの実施形態は、集団モデリングのためのデータベースシステムを提供し、該データベースシステムは:被験者の特性を示すシグナルを生成および送信するように構成されたデータ収集サブシステム;および、該データ収集サブシステムと接続し、シグナルを受信して該シグナルをデータベースへ送信するように構成されたプロセッササブシステム;を含み、該データベースは、シグナルを受信および記憶するように構成されている。
【0020】
本発明の1つの実施形態はまた、集団モデリングのためのデータベースを提供し、該データベースは、被験者の特性を示すシグナルを受信および記憶するように構成された記憶装置を含み、シグナルはセンサから受信され、センサは、被験者の体に近接して配置され、シグナルを生成および送信するように構成される。
【0021】
本発明の1つの実施形態はまた、集団モデリングの方法を提供し、該方法は、被験者の特性を示すシグナルを受信する工程;および、被験者の人口学的情報および被験者のパフォーマンス履歴と関連したデータベースにシグナルを記憶させる工程;を含み、該データベースは、記憶装置を含む。
【0022】
添付の図面にも例示されるように、更なる特徴および利点が、以下の本発明の好ましい実施形態のより詳細な説明から明らかとなろう。また、図中の同じ参照番号は、一般的に全図面を通して同じ部分または要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一つの実施形態による生理学的モニタリングシステムの略図である。
【0024】
【図2】図2は、本発明の一つの実施形態による二対の電磁石コイルの配置の略図である。
【0025】
【図3】図3は、被験者の側面図であり、本発明の一つの実施形態による、図2の二対の電磁石コイルの配置の被験者上の位置を示す。
【0026】
【図4】図4は、被験者の斜視図であり、本発明の一つの実施形態による、電磁石コイルの被験者の前面上での位置を示す。
【0027】
【図5】図5は、被験者の背中の平面図であり、本発明の一つの実施形態による、電磁石コイルのその上での位置を示す。
【0028】
【図6】図6は、本発明の一つの実施形態による、複数対の電磁石コイルの配置の略図である。
【図7】図7は、本発明の一つの実施形態による、複数対の電磁石コイルの配置の略図である。
【0029】
【図8】図8は、被験者の斜視図であり、本発明の一つの実施形態による、図6の複数対の電磁石コイルの被験者の前面上での位置を示す。
【0030】
【図9】図9は、被験者の背中の平面図であり、本発明の一つの実施形態による、電磁石コイルのその上での位置を示す。
【0031】
【図10】図10は、本発明の実施形態による複数対のコイルによって提供されるコイルの送信軸の略図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態による複数対のコイルによって提供されるコイルの送信軸の略図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態による複数対のコイルによって提供されるコイルの送信軸の略図である。
【0032】
【図13】図13は、被験者の斜視図であり、本発明の別の実施形態による、図6の複数対の電磁石コイルの被験者の前面上での別の位置を示す。
【0033】
【図14】図14は、被験者の背中の平面図であり、本発明の別の実施形態による、3対の電磁石コイルのその上での位置を示す。
【0034】
【図15】図15は、被験者の背中の平面図であり、本発明の別の実施形態による、図14の複数対の電磁石コイルのその上での別の位置を示す。
【0035】
【図16】図16は、被験者の斜視図であり、本発明の別の実施形態による、6対の電磁石コイルの被験者の前面および片側上での位置を示す。
【0036】
【図17】図17は、被験者の背中の平面図であり、本発明の別の実施形態による、5対の電磁石コイルの被験者の背面および両側上での位置を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(発明の詳細な説明)
本発明の詳細な説明の前に、本発明は、特別に例示された方法、装置、システムまたは回路に限定されず、これらはもちろん異なってもよいことが理解されるべきである。従って、本明細書に記載されたものに類似の、または相当する多数の方法およびシステムが、本発明の実施において使用可能であるが、好ましい方法、装置およびシステムが本明細書に記載されている。
【0038】
また、本明細書に使用される専門用語は、本発明の特別の実施形態を説明することのみを目的としており、限定する意図はないものと理解されるべきである。
【0039】
他に定義されていなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明に関連する分野における当業者に一般に理解されるものと同様の意味を有する。
【0040】
本明細書および添付の請求項において使用されるように、明らかに異なる内容の記載がなければ、単数形の「a」、「an」および「the」には、複数の指示物が含まれる。
【0041】
また、本明細書において引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、前出、後出を問わず、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0042】
本明細書に記載された刊行物は、本出願の出願日前の開示のためのみに提供される。本明細書に記載されたどの内容も、本発明が、先行発明を理由に、このような刊行物に先行する資格がないことを承認するものであると解釈されるべきものではない。また、公開の日付は、実際の公開日と異なる場合もあり、それぞれ確認する必要がある。
【0043】
定義
本明細書において使用される用語「呼吸パラメータ」および「呼吸特性」は、呼吸器系およびその機能に関連した特性を意味する、および含む。それらには、呼吸頻度(fB)、一回換気量(VT)、吸気量(VI)、呼気量(VE)、分時換気(VE)、吸気時間、呼気時間、および流速(例えば胸壁の容積の変化する速度)等が含まれるが、これらに限定されない。用語「呼吸パラメータ」および「呼吸特性」はさらに、胸壁の区画における同期運動または非同期運動由来の換気力学に関する推測を意味する、および含む。
【0044】
本発明によれば、流速および呼吸加速は容量シグナルから決定できる。また、換気力学に関する多くの推測は、胸壁を構成する複数の分離区画間で起こる動きにおける非同時性の程度から導き出せる。
【0045】
本明細書において使用される用語「呼吸器系障害」、「呼吸器障害」および「呼吸有害事象」は、正常な呼吸または換気プロセスを妨げる呼吸器系の任意の機能不全を意味する、および含む。
【0046】
本明細書において使用される用語「生理学的パラメータ」および「生理学的特性」は、心臓の電気的活動、その他の筋肉の電気的活動、脳の電気的活動、脈拍数、血圧、血中酸素飽和度、皮膚温および中核体温を意味する、および含むがこれらに限定されない。
【0047】
本明細書において使用される用語「空間パラメータ」および「空間特性」は、被験者の向きおよび/または動きを意味する、および含む。
【0048】
本明細書において使用される用語「患者」および「被験者」は、ヒトおよび動物を意味する、および含む。
【0049】
肺換気量、一回換気量、呼吸速度およびその他の関連する呼吸特性は、生体内における酸素および二酸化炭素の排出について、信頼でき、かつ実用的な測定を提供することができる。呼吸特性は、運動における努力、生理学的ストレスおよびその他の生理学的特性に直結している。一回換気量を外側から決定する一つの方法として、胸部の容量の変化の測定がある。胸部の容量の変化は、肺の膨張および収縮によって起こる。圧力範囲の最大値および最小値における肺内の気体の圧力は、周囲の空気圧と平衡状態に置かれるので、肺の容積と吸入された空気の体積の間には、非常に密接で単調な関係がある。
【0050】
胸部の容量の変化の正確な測定には、胸郭における直径の変化の測定が伴う。胸部の胸郭下における直径の変化を測定することで、測定の精度を更に高めることができる。胸部の胸郭下における直径の変化をモニタリングすることで、横隔膜による呼吸を明らかにすることができる。ここで、横隔膜の筋肉の収縮および弛緩によって、腹部の器官が下側および外側に押され、それによって利用可能な肺の容積が増加する。
【0051】
呼吸特性のモニタリングおよび分析は、運動への適用において特に有用であり得る。なぜならば、パフォーマンスとアスリートの酸素および二酸化炭素の処理との間に直接的なつながりがあるからである。例えば、多くの運動のトレーニング場面において、アスリートの体がいつ有酸素運動から嫌気的運動へ移行するのか(アスリートの換気閾値と呼ばれることもある)を知ることは有用である。換気閾値のレベルをクロスオーバーすることは、スポーツ活動中の未完のパフォーマンスの限度を示している。例えば、限定された時間において嫌気的状態でトレーニングすることは、アスリートにとって有益であり得る。しかし、多くのスポーツにおいて、適切なトレーニングに必要なのは、より低い強度の有酸素運動によって中断される限定された時間内の嫌気的運動のみである。呼吸特性等の生理学的特性を参照せずに、自分が好気的状態と嫌気的状態のどちらにあるのかを決定することは、アスリートにとって困難である。それゆえに、呼吸モニタリングおよびデータ処理は、アスリートの運動の状態を正確かつ実質的に瞬時に測定することを可能にすることにより、運動のトレーニングにおける大きな利益を提供することができる。時間経過に伴うアスリートの換気閾値の変化や、運動後の回復中における一回換気量のパターンは、あるトレーニング方法を通じたアスリートのフィットネスレベルの改善を測定するのに有益であり得る。呼吸モニタリングは更に、被験者の安静代謝率の変化のモニタリングおよび分析を可能にする。
【0052】
肺換気量が持続的に生命を維持するのにもはや十分ではない程度の負荷が体にかかっている時点において、第2換気閾値が存在する。この状態が長く続きすぎると衰弱につながるので、この時点の決定は、医学的応用において、特に初動要員およびその他の救急救命士にとって有益であり得る。
【0053】
上述の通り、本発明は、少なくとも健康、病気、患者の特性、および急性の医学的危機についての指標を示し得る、前例のない生理学的データベースまたはライブラリを作り出すための方法およびシステムを目的とする。データベースは、加工していない病気の履歴および治療に対する反応についての新しい洞察を提供し、最終的にはケアの提供を改善するために適用される、構成され、継続した/擬似継続したモデリング統計であってよい。データベースはまた、1人のアスリートまたはアスリートのグループのパフォーマンスまたは進歩、および他のアスリートと比較した成績についての指標を示し得る、運動パフォーマンスデータベースまたはライブラリであってもよい。データベースはまた、危険な運動状態、例えば極度の疲労や過熱等についての指標をも示し得る。
【0054】
データベース(および情報派生アプローチ)は、豊富な関連する/実際のデータと組み合わせることにより、疫学、多様な病気の加工していない履歴、および治療の効果についての、他の場合では不可能な洞察を可能にし、病気の真のコストおよび治療についてのより良い洞察を可能にし、そして最終的には患者への医療ケアを改善する。このアプローチはまた、1人のアスリートまたはアスリートのグループのパフォーマンスおよび進歩、並びに他のアスリートと比較した成績についてのより良い洞察をも提供する。
【0055】
本発明によれば、本発明の生理学的データベースまたは運動パフォーマンスデータベースを作り出すための生理学的情報、パフォーマンス情報および解剖学的情報を提供するために、本発明の範囲内において多様な従来型のモニタリングシステムが採用できる。しかし、従来型のシステムによって収集されるシグナルは、しばしば、1つまたは2、3の生理学的またはパフォーマンス特性(例えば呼吸速度、血圧、体温、スピードおよび/または心拍数)を反映するのみである。従って、詳細な生理学的データまたは運動パフォーマンスデータのライブラリを作り出すためには、複数のシステムを採用する必要があるであろう。
【0056】
複数の生理学的および解剖学的特性およびパラメータを示す複数のシグナルを提供するように適合された、1つの好ましい生理学的モニタリングシステムおよび関連する方法が、同時係属出願である、2009年9月1日出願の米国特許出願番号61/275,575号、およびこれと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,582号に開示されており、各々が、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0057】
複数のパフォーマンス特性およびパラメータを示す複数のシグナルを提供するように適合された、1つの好ましい運動パフォーマンスモニタリングシステムおよび関連する方法が、以下の明細書に開示されている:共同所有の米国特許出願番号11/892,023号(発明の名称:「Sports Electronic Training System, and Applications Thereof(電子スポーツトレーニングシステムおよびその適用)」);共同所有の米国特許出願番号12/467,944号(発明の名称:「Portable Fitness Monitoring Systems, and Applications Thereof(ポータブルフィットネスモニタリングシステムおよびその適用)」);および共同所有の米国特許出願番号12/836,421号(発明の名称:「Fitness Monitoring Methods, Systems, and Program Products, and Applications Thereof(フィットネスモニタリングの方法、システムおよびプログラム製品、並びにその適用)」)。これら出願の各々は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0058】
まず図1には、本発明の生理学的モニタリングシステムの1つの実施形態の略図が示される。図1に示されるように、生理学的モニタリングシステム10は、好ましくは、データ収集サブシステム20、制御データ処理サブシステム40、データ送信サブシステム50、データモニタリングサブシステム60、および電源70、例えば電池等、を含む。
【0059】
データ収集サブシステム
本発明の一つの実施形態によれば、データ収集サブシステム20は、制御データ処理サブシステム40、および、いくつかの実施形態においてはデータモニタリングサブシステム60と連携して、少なくとも1つの呼吸特性、より好ましくは複数の呼吸特性を決定するために採用できる解剖学的パラメータを収集するための手段を含む。解剖学的パラメータは、胸郭および腹部の前後径の変化(または変位)並びに胸壁の軸方向変位を含み得る。上述のパラメータを収集するための手段は、例えばセンサである。センサは、対の電磁石コイルまたは磁力計を含み得る。
【0060】
本発明は、磁力計および磁力計システムの観点から本明細書に記載されるが、システム内の2つ以上のセンサ間の距離の変化を測定可能なその他の種類のセンサシステムを、磁力計の代わりに、または磁力計に加えて使用できることが理解される。具体的には、本発明は、胸郭および腹部の前後径の変化並びに胸壁の軸方向変位を測定するための電磁石コイルまたは磁力計の使用に限定されない。上述の解剖学的パラメータを測定するように容易に適合され得る様々な更なる手段および装置が、本発明の範囲内において採用可能である。このような手段および装置には、ホール効果センサおよび電子コンパスセンサが含まれるが、これらに限定されない。本発明に従い、あるセンサから別のセンサに送られたシグナルにおける時間遅延を測定することによりその2つのセンサ間の距離を決定することが可能な無線センサを、磁力計の代わりに、または磁力計に加えて提供可能である。
【0061】
本発明によれば、上述の被験者のパラメータ(または変位)を測定するために、少なくとも2つの磁力計を採用できる。本発明のいくつかの実施形態においては、二対の磁力計が採用される。いくつかの実施形態においては、2対より多い複数対の磁力計が採用される。
【0062】
図2には、胸郭、腹部および胸壁の変位を検出および測定するための二対の電磁石コイルの配置の1つの実施形態が示される。図2に示されるように、電磁石コイルは、第1送信および受信コイル(22aおよび22b)並びに第2送信および受信コイル(24aおよび24b)を含む。図2において、文字「T」は送信コイルを指し、文字「R」は受信コイルを指すが、コイルはこのような指定に限定されない。本発明の実施形態の電磁石コイルについては、「受信」または「送信」と記載されるが、各受信コイルはそれぞれ、代わりに送信コイルであってよく、また、各送信コイルはそれぞれ、代わりに送信コイルであってよい。
【0063】
上述の配置および関連する実施形態(以下に記載)の詳細は、2008年9月5日出願の同時係属出願である米国特許出願番号12/231,692、2009年9月1日出願の同時係属出願である米国特許出願番号61/275,576、およびこれと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,576に記載され、上述のように、各々、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0064】
上述の出願に記載されるように、本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも受信コイル24bは、送信コイル22aおよび24aそれぞれからのコイルの送信を受信するように適合される(すなわち、少なくとも受信コイル24bは二重機能コイルであってよく、「二重機能コイル」とは、複数の異なる送信コイルからの送信を受信可能なコイルのことを言う)。いくつかの実施形態において、受信コイル22bおよび24bの各々は、送信コイル22aおよび24aの各々からの送信を受信するように適合される。
【0065】
次に図3〜図5には、本発明の1つの実施形態による、被験者または患者100上のコイル22a、22b、24aおよび24bの位置が示されている。図3〜図5に示されるように、第1送信コイル22aは、好ましくは被験者100のへそに近接した被験者の前面101上に配置され、第1受信コイル22bは、好ましくは同じ軸位置に近接した、ただし被験者100の背面102上に配置される。第2受信コイル24bは、好ましくは胸骨の基部に近接した被験者100の前面101上に配置され、第2送信コイル24aは、好ましくは同じ軸位置に近接した、ただし被験者100の背面102上に配置される。
【0066】
同時係属出願である米国特許出願番号12/231,692号に記載されるように、送信コイル22aおよび24aと、受信コイル22bおよび24bの位置は、逆であってもよい(すなわち、送信コイル22aおよび受信コイル24bは、被験者100の背面102上に配置されてよく、送信コイル24aおよび受信コイル22bは、被験者100の前面101上に配置されてよい。また、送信コイル22aおよび24aの両方が被験者100の前面101または背面102上に配置され、受信コイル22bおよび24bが反対側に配置されてもよい。
【0067】
図3に戻ると、矢印23は、胸壁、またはこの場合には、モニターされる剣状骨とへその間の距離(Xi)を示す。矢印25は、モニターされる胸郭の距離を示し、矢印29は、モニターされる腹部の距離を示す。
【0068】
本発明の1つの実施形態によれば、コイル24bが二重機能コイルである場合、被験者または患者100が呼吸をすると、胸郭および腹部の変位(すなわち、コイル22aと22bおよび24aと24bの各対の間の距離の変化であり、それぞれ矢印29および矢印25で示される)が、対のコイル22aと22bおよび24aと24bの間の測定された電圧の変化から決定される。矢印23で示される胸壁の軸方向変位(例えば、剣状骨とへその間の距離(Xi))も、送信コイル22aと受信コイル24bとの間の測定された電圧の変化から決定される。
【0069】
上述のように、本発明のいくつかの実施形態において、2対より多い複数対の電磁石コイルが採用され得る。同時係属出願である、2009年9月1日出願の米国特許出願番号61/275,575号、およびこれと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,582号は、各々が、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすが、それらに記載されるように、被験者の解剖学的に適切な位置上に更なる複数対の電磁石コイルを追加することにより、2対のコイルの実施形態よりも多数の重要な利点が提供される。そうした利点の1つは、胸壁の動き並びにそれと呼吸活性および呼吸に関連する事象、例えば話す、くしゃみをする、笑う、咳をする等との関係についての更なる(および関連する)データおよび/または情報の提供である。
【0070】
更に、コイル(およびその配置)を追加した結果による電磁石コイルの送信の複数の単一、交差、および相互の軸(the multiple single, cross, and interaction axes)は、胸壁の容積の変化の非常に正確な定量化を提供すると共に、胸壁の形および歩行する被験者の動きの三次元モデリング、並びに換気力学、例えば胸壁の区画における同期運動または非同期運動の評価および定量化を容易にする。
【0071】
図6〜図17には、本発明の複数対のコイルの実施形態の詳細が記載されている。しかし、本発明は、本明細書に記載された複数対のコイルの実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者は理解するであろうが、この複数対のコイルの実施形態は、任意の数の更なる電磁石コイル(例えば3、4、5、6、7、8、9、10個等)を含み得る。例えば、3つの磁力計(例えば電磁石コイル)を使用する実施形態においては、該3つの電磁石コイルが複数対として機能し得ることが理解される。具体的には、これらのコイルを第1、第2および第3コイルとすると、第1コイルは第2コイルと対を形成することができ、この第1コイルはまた、第3コイルとも対を形成することができる。更に、第2コイルはまた、第3コイルとも対を形成することができる。このように、3つの電磁石コイルを利用した磁力計システムは、1対、2対または3対を形成するように構成され得る。第1、第2および第3コイルの各々は、シグナルを送信、シグナルを受信、またはシグナルを送信および受信するように構成され得る。磁力計は、複数の他の磁力計と接続してもよく、従って、特定の磁力計が、複数対のうちの一部を形成し得る。追加コイルの位置およびその機能はまた、本発明の範囲内において、容易に修正し、および/または特定の適用向けに適合させることができる。
【0072】
まず図6〜図8には、本発明の複数対のコイルに関する1つの実施形態が示される。図7に示されるように、この実施形態も同様に、電磁石コイル22a、22b、24aおよび24bを含む。本発明によれば、コイル22a、22b、24aおよび24bに関連する上述の2対のコイルの実施形態のいずれもが、本発明の複数対のコイルの実施形態と共に採用され得る。
【0073】
また、図6および図7に示されるように、複数対のコイルの実施形態は、更に少なくとも2対の電磁石コイル:第3送信コイル32a、第3受信コイル32b、第4送信コイル34a、および第4受信コイル34bを更に含み得る。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態において、2つの更なる受信コイル32bおよび34bのうちの少なくとも1つは、二重機能コイルであり、従って、送信コイル32a、22aおよび34aの各々からの送信を受信するように適合される。いくつかの実施形態において、受信コイル32bおよび34bの各々は、送信コイル32a、22aおよび34aの各々からの送信を受信するように適合される。
【0075】
図8および図9には、本発明の1つの実施形態による、コイル22a、22b、24a、24b、32a、32b、34aおよび34bの被験者または患者100上の位置が示される。図8および図9に示されるように、第1送信コイル22aは、好ましくは、被験者100のへそに近接した被験者100の前面101上に配置され、第1受信コイル22bは、好ましくは同じ軸位置に近接した、ただし被験者100の背面102上に配置される。第2受信コイル24bは、好ましくは胸骨の基部に近接した被験者100の前面101上に配置され、第2送信コイル24aは、同じ軸位置に近接した、ただし被験者100の背面102上に配置される。
【0076】
第3送信コイル32aは、好ましくは被験者100の前面101上に、第1送信コイル22aの右側に軸方向に間隔を空けて配置される。第4送信コイル34aは、好ましくは被験者100の前面101上に、第1送信コイル22aの左側に軸方向に間隔を空けて配置される。例示された実施形態において、送信コイル32a、22aおよび34aの各々は、好ましくは同じ軸平面に近接して配置される(図6および図7において「AP1」で示される)。
【0077】
第3受信コイル32bは、好ましくは被験者100の前面101上に、第2受信コイル24bの右側に軸方向に間隔を空けて配置される。第4受信コイル34bは、好ましくは被験者100の前面101上に、第2受信コイル24bの左側に軸方向に間隔を空けて配置される。好ましくは、受信コイル32b、24bおよび34bの各々も同様に、同じ軸平面に近接して配置される(図6および図7において「AP2」で示される)。
【0078】
当業者には容易に理解できるであろうが、コイル32a、32b、34aおよび34bの軸方向の間隔は、多くの場合、被験者(例えば大人、女性、男性、若者等)の体のサイズおよび構造に依存する。コイル間の距離はまた、必要な、または所望の測定の精度の度合いによって異なり得る。
【0079】
先に示したように、本発明の複数対のコイルの実施形態の1つの重要な利点は、胸壁の形および歩行する被験者の動きの三次元モデリング、並びに換気力学、例えば胸壁の区画における同期運動および非同期運動の評価および定量化を容易にする、複数の単一、交差、および相互のコイル送信軸の提供である。
【0080】
本発明の複数対のコイルの実施形態についての更なる重要な利点は、本発明の複数対のコイルを用いた胸壁の同時モニタリングによって、胸壁のリアルタイムな三次元モデルが作成可能であることである。
【0081】
図10〜図12には、本発明の複数対のコイルに関する3つの実施形態によって提供されるコイルの送信軸の略図が示される。まず図10に1つの実施形態が示され、ここで、受信コイル32b、24b、34bおよび22bの各々は、単機能コイルである。受信コイル32bは、送信コイル32aからの送信T32を受信するように適合される。受信コイル24bは、送信コイル22aからの送信T22を受信するように適合される。受信コイル34bは、送信コイル34aからの送信T34を受信するように適合される。受信コイル22bは、送信コイル24aからの送信T24を受信するように適合される。
【0082】
図12には別の実施形態が示され、ここで、受信コイル24bは二重機能コイルである。受信コイル32bは、送信コイル32aからの送信T32を受信するように適合され、受信コイル34bは、送信コイル34aからの送信T34を受信するように適合され、受信コイル22bは、送信コイル24aからの送信T24を受信するように適合される。しかし、受信コイル24bは、送信コイル32aからの送信T32、送信コイル22aからの送信T22、送信コイル34aからの送信T34、および送信コイル24aからの送信T24を受信するように適合される。
【0083】
更なる実施形態においては、図11に示されるように、受信コイル32b、24b、34bおよび22bの各々が二重機能コイルである。図11に示されるように、受信コイル32bは、送信コイル32aからの送信T32、送信コイル22aからの送信T22、送信コイル34aからの送信T34、および送信コイル24aからの送信T24を受信するように適合される。受信コイル24b、34bおよび22bもまた、送信コイル32aからの送信T32、送信コイル22aからの送信T22、送信コイル34aからの送信T34、および送信コイル24aからの送信T24を受信するように適合される。
【0084】
このようにして、上述の複数対のコイルの実施形態は、胸壁の動き、ひいては呼吸活性および呼吸に関連する事象に関連する利用可能なデータおよび情報を有意に強化する。追加のデータおよび情報はまた、換気力学、例えば胸壁の区画における同期運動および非同期運動の評価および定量化を容易にする。
【0085】
また、電磁石コイルシステムにおいて一般的に遭遇する磁場の干渉およびアーチファクト(artifacts)の頻度および影響を減少させる、または排除するために、追加のコイルの送信(またはシグナル)を容易に採用可能である。
【0086】
上述のように、本発明の複数対のコイルの実施形態は、更に2対の電磁石コイルが被験者の前面上に均一に配置される上述の実施形態に限定されない。次に図13〜図17には、本発明の更なる複数対のコイルの実施形態が示される。
【0087】
まず図13には、複数対のコイルの実施形態が示され、ここで、更なる2対のコイル、32aと32b、および34aと34bは、被験者100の前面101上に不均一に配置される。示されるように、更なるコイルの対は、被験者100の胴体上の任意の適切な(または所望の)位置に配置され得る。
【0088】
また、図14に示されるように、更なる対のコイル(例えば、送信コイル36aと受信コイル36bの対、および送信コイル38aと受信コイル38bの対)も、被験者100の背面102上に配置され得る。コイル36a、36b、38aおよび38bは、図14に示されるように均一に配置されても、あるいは図15に示されるように不均一に配置されてもよい。
【0089】
図16〜図17には、別の複数対のコイルの実施形態が示され、ここで、更なる対のコイルが被験者100の胴体上に配置される。図16に示されるように、更なる対のコイル(例えば、送信コイル33aと受信コイル33bの対、および送信コイル35aと受信コイル35bの対)が、被験者100の前面101上に配置され得る。上述の実施形態において、送信コイル33aは、好ましくは送信コイル32aと22aの上方であってその間に配置され、送信コイル35aは、好ましくは送信コイル22aと34aの上方であってその間に配置される。受信コイル33bは、好ましくは受信コイル32bと24bの上方であってその間に配置され、受信コイル35bは、好ましくは受信コイル24bと34bの上方であってその間に配置される。
【0090】
図16および図17に示されるように、更なる対のコイル(例えば、送信コイル37aと受信コイル37bの対、および送信コイル39aと受信コイル39bの対)もまた、被験者100の両側上に配置され得る。
【0091】
更に、本明細書に開示された送信コイルおよび受信コイルは、必ずしも1対1の対である必要はない。例えば、単一の受信コイルが、複数の送信コイルからの送信を受信するように構成されてもよく、単一の送信コイルが、複数の受信コイルへ送信するように構成されてもよい。
【0092】
先に示されたように、本発明の複数対のコイルの実施形態は、図6〜図17に示された複数対のコイルの実施形態に限定されない。複数対のコイルの実施形態は、任意の数の更なる対の電磁石コイルを含み得ることが再度強調される。また、更なるコイルの位置およびそれらの機能もまた、本発明の範囲内において、容易に修正し、および/または特定の適用向けに適合させることができる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態において、データ収集サブシステム20は、被験者100の向きおよび/または動き、例えば空間パラメータを直接モニタリングする手段を含み得る。本発明によれば、被験者の向きおよび動きをモニターまたは測定するために、光学エンコーダー、近接およびホール効果スイッチ、レーザー干渉計、加速度計、ジャイロスコープ、全地球測位システム(GPS)および/またはその他の空間センサを含む、多様な従来の手段を採用することができる。
【0094】
1つの実施形態において、被験者の向きおよび動きを直接モニタリングする手段は、少なくとも1つの多機能の慣性センサ(例えば3軸の加速度計や3軸のジャイロスコープ)を含む。当技術分野において周知のように、被験者の向きおよび動きは、多機能の加速度計によって送信されるシグナルまたはデータから容易に決定できる。
【0095】
本発明によれば、加速度計は、被験者上の任意の解剖学的に適切な位置に配置できる。本発明の1つの実施形態において、加速度計(図8において「AC1」で示される)は、被験者の胸骨の基部に近接して配置される。加速度計およびその他の慣性センサは、被験者が移動する速度、アスリートが運動中に出すエネルギー量、アスリートが空中に浮かんでいるかどうか、および被験者の歩行の特徴に関連する多様な情報を決定する助けとなり得る。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態において、データ収集サブシステム20は、モニターされる被験者100に関連する1つ以上の生理学的特性をモニターおよび記録するように適合された少なくとも1つの更なる生理学的センサ(好ましくは複数の更なる生理学的センサ)を含む。生理学的センサは、脳、心臓およびその他の筋肉の電気的活動(例えばEEG、ECG、EMG)、脈拍数、血中酸素飽和度(例えばSpO2)、皮膚温および中核体温をモニターし記録するように適合されたセンサを含み得るが、これらに限定されない。測定および/または計算された生理学的パラメータには、例えば、心拍数、呼吸速度、血中酸素濃度、血流量、水分補給状態、消費カロリー、筋肉疲労および/または体温が含まれ得る。
【0097】
生理学的センサの例は、米国特許第6,551,252号明細書、米国特許第7,267,652号明細書および同時係属出願である、2007年6月18日出願の米国特許出願番号11/764,527号に開示されており、各々、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0098】
本発明の例示的な実施形態によれば、こうした更なるセンサは、被験者上の多様な解剖学的に適切な位置に配置できる。例としては、第1センサ(例えば脈拍数センサ)は、脈拍数をモニターするように被験者100の心臓に近接して配置することができ、第2センサ(例えばマイクロホン)は、咽喉から出てくる音(例えば、咳を反映する音)をモニターするように被験者100の咽喉に近接して配置することができる。
【0099】
先に示したように、データ収集サブシステム20は、モニターされる被験者によって生成される音をモニターするための1つ以上の音声センサ(例えばマイクロホン)、並びに、モニターされる被験者およびモニタリングステーションまたは個人による、およびその間の双方向の通信を可能にするスピーカーも含み得る。
【0100】
本発明の実施形態によれば、対のコイル(例えば電磁石コイル22a、22b、24a、24b、および上述の更なるセンサ)は、種々の好適な手段によって被験者上または被験者に近接して配置することができる。このように、いくつかの実施形態において、対のコイルおよび/または更なるセンサは、被験者に直接取り付けることができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、対のコイル、更なるセンサ、処理およびモニタリングシステム(もし採用される場合、例えばLDU)は、モニターされる被験者が楽に着用できる着用可能な衣類またはアイテムに埋め込まれるか、またはそれによって保持される。関連する配線、ケーブル、およびその他の電力およびシグナル送信装置および/またはシステムも、着用可能な衣類に埋め込むことができる。
【0102】
本発明の実施形態によれば、着用可能なモニタリング用衣類は、多様な衣類、例えばシャツ、ベストまたはジャケット、ベルト、キャップ、パッチ等のうちの1つ以上であって良い。好適な着用可能なモニタリング用衣類(ベスト)が、同時係属出願である、2009年9月1日出願の米国特許出願番号61/275,576号、これと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,576号、同時係属出願である、2009年9月1日出願の米国特許出願番号61/275,633号、および、これと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,627号に例示および記載されており、各々、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0103】
制御データ処理サブシステム
本発明によれば、制御データ処理サブシステム40は、本発明の方法を実施するためのプログラム、指示および関連したアルゴリズムを含み得、それらには、データ収集サブシステム20、ひいては、対の電磁石コイル(例えばコイル22a、22b、24a、24b、32a、32b、34a、34b)およびその機能;コイル送信の送信と受信(例えば送信T32、T22、T34およびT24);データ送信サブシステム50;およびデータモニタリングサブシステム60を制御するための制御アルゴリズムおよび関連するパラメータが含まれる。以下に詳細を説明する。
【0104】
制御データ処理サブシステム40は、モニターされる被験者100に関連する生理学的情報を決定するために、電磁石コイル(例えばコイル22a、22b、24a、24b、32a、32b、34aおよび34b)からのコイル送信またはシグナルを回収および処理するため;更なる空間パラメータおよび生理学的センサによって送信される更なるシグナルを回収、処理および解釈するため(以下に説明);および選択的コイルデータ、生理学的および空間パラメータ、生理学的特性、および被験者の情報をデータモニタリングサブシステム60に送信するために、更にプログラムおよび適合される。
【0105】
本発明の好ましい実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信またはシグナル(例えば胸郭、腹部および胸壁の測定された変位)から少なくとも1つの呼吸特性(例えばVT)を決定するための少なくとも1つの「n自由度」モデルまたはアルゴリズムを更に含む。
【0106】
制御データ処理サブシステム40はまた、好ましくは、データ収集サブシステム20が収集したデータ(例えば、以下に説明する、更なる空間パラメータおよび生理学的センサにより送信されたコイル送信およびシグナル)の多変数解析を行うように設計および適合された好適なアルゴリズムをも含む。
【0107】
1つの実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信(またはシグナル)から少なくとも1つの呼吸特性(好ましくは複数の呼吸特性)を決定するための1つ以上の「3自由度」モデルまたはアルゴリズムを含む。好ましい「3自由度」モデル(またはアルゴリズム)は、同時係属出願である米国特許出願番号12/231,692号に記載されている。
【0108】
いくつかの実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、記憶された生理学的基準との比較により生理学的特性およびパラメータを評価するために更にプログラムおよび適合される。制御データ処理サブシステム40はまた、記憶された呼吸および空間基準との比較により呼吸および空間特性およびパラメータを評価するようにプログラムおよび適合され得る。制御データ処理サブシステム40は、相当する特性またはパラメータがある場合に、ステータスシグナルを生成することができる。基準は、例えば、有害な状態(adverse conditions)やフィットネスの目標を示してもよく、ステータスシグナルは、警報や警告を含んでもよい。
【0109】
制御データ処理サブシステム40はまた、好ましくは、測定された複数の相互作用的な胸壁の変位から呼吸特性、パラメータおよびステータスを決定するように設計および適合された好適なアルゴリズムを含む。アルゴリズムはまた、好ましくは、呼吸特性(および/またはパラメータ)の決定の正確性を高めるために、非呼吸運動、例えば胴体をひねる動きに関連する測定された胸壁の変位を割り引くように適合される。
【0110】
制御データ処理サブシステム40は更に、好ましくは、測定された複数の相互作用的な胸壁の変位から被験者の胸壁の三次元モデルを生成するための、好適なプログラム、アルゴリズムおよび指示を含む。
【0111】
本発明によれば、シグナル(胸壁の距離および変位を反映)を処理して胴体の形を示すために、数学の技術分野で公知の様々なプログラムおよび方法(例えば微分幾何学的方法)を採用することができる。実際、二次元表面上で定義される十分な距離(メートル法)を提供することにより、表面の形を三次元空間内に構成できることが知られている。例えば以下の文献を参照されたい:Badler, et al., “Simulating Humans: Computer Graphics, Animation, and Control (ヒトのシミュレーション:コンピュータグラフィック、アニメーションおよびコントロール) ", (New York: Oxford University Press, 1993);およびDeCarlo, et al., "Integrating Anatomy and Physiology for Behavior Modeling (行動のモデリングのための解剖学および生理学の統合)", Medicine Meets Virtual Reality 3 (San Diego, 1995)。
【0112】
好ましくは、本発明のいくつかの実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、測定された複数の相互作用的な胸壁の変位から、追加の、そして場合によっては相互に関連する解剖学的パラメータ、例えば曲げる、ひねる、咳をする等を決定するように更にプログラムおよび適合される。1つの実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、コイル送信とそれに関連する胸壁パラメータとの記憶された選択的組合せ(例えば「正常な呼吸と曲げる」、「正常な呼吸とせきをする」等)を、測定された胸壁の変位を反映する回収されたコイル送信と比較するようにプログラムおよび適合される。
【0113】
一例として、1つの実施形態において、「正常な呼吸と胴体をひねる」と定義される(またはそれを反映する)第1胸壁パラメータ(CWP1)が、制御データ処理サブシステム40に記憶される。第1胸壁パラメータ(CWP1)に関連するコイル送信およびデータは、受信コイル24bが受信する送信T32、T22、T34およびT24を含み、変位x、yおよびzを示すことができる。
【0114】
被験者100をモニター中、類似のコイル送信が受信コイル24bによって受信される可能性がある。すると、制御データ処理サブシステム40は、検出された(または回収された)送信を、記憶された送信およびそれに関連する胸壁パラメータと比較して、胸壁の動きと、ひいてはそれに基づく呼吸活性(この場合、「正常な呼吸と胴体をひねる」)を(リアルタイムに)決定する。
【0115】
いくつかの実施形態においては、加速度計によって送信されるシグナル(例えば空間パラメータシグナル)が、検出されたコイル送信と共に採用され、モニターされる被験者の胸壁の動きおよび関連する呼吸活性が決定および分類される。上述の実施形態において、各記憶された胸壁パラメータはまた、胸壁パラメータと関連する空間パラメータシグナル(例えば「正常な呼吸と胴体をひねる」)も含む。本発明によれば、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信および空間パラメータシグナルを、記憶された送信および空間パラメータシグナル、並びにそれらと関連する胸壁パラメータと比較して、胸壁の動き、そして、ひいてはそれに基づく呼吸活性を決定するように適合される。
【0116】
いくつかの実施形態において、空間パラメータシグナルは、被験者の空間モデルを生成するために使用される。空間モデルは二次元であっても三次元であってもよく、被験者のリアルタイムの向きおよび動きを反映できる。空間モデルは、被験者または他の者に対してリアルタイムの被験者の向きおよび動きを示すように表示され得る。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信、空間パラメータシグナルおよび音声シグナルに基づいて胸壁の動きおよび呼吸活性を決定するようにプログラムおよび適合される。上述の実施形態において、データ収集サブシステム20は、音声センサ、例えばマイクロホンも含んでよく、これは、被験者上の解剖学的に適切な位置に、例えば咽喉に近接して配置される。
【0118】
本発明によれば、各記憶された胸壁パラメータは、胸壁パラメータと関連する少なくとも1つの音声パラメータ(例えば>N db;音声シグナルに基づく)も含む(例えば正常な呼吸と咳をする)。適切なスピーチおよび咳パラメータ(および閾値決定)が、2007年9月11日付け米国特許第7,267,652号に記載されており、これは、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0119】
コイル送信、空間パラメータシグナルおよび音声シグナルを受信するとすぐに、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信、空間パラメータシグナルおよび音声シグナルを、記憶された送信、空間パラメータシグナルおよび音声パラメータ、並びにそれに関連する胸壁パラメータと比較し、それに基づいた胸壁の動きおよび呼吸活性を決定する(例えば「正常な呼吸と咳をする」)。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態において、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信、空間パラメータシグナルおよび音声シグナルに基づいてフィットネス活動を決定するようにプログラムおよび適合される。上述の実施形態において、データ収集サブシステム20は、音声センサ、例えばマイクロホンも含んでよく、これは、被験者上の解剖学的に適切な位置に配置される(例えば咽喉に近接して)。
【0121】
コイル送信、空間パラメータシグナルおよび音声シグナルを受信するとすぐに、制御データ処理サブシステム40は、回収されたコイル送信、空間パラメータシグナルおよび音声シグナルを、記憶された送信、空間パラメータシグナルおよび音声パラメータ、並びにそれに関連する胸壁パラメータと比較し、被験者のフィットネス活動を決定する(例えば、ランニング、ジョギング、ストレッチ、水泳、腕立て伏せ、腹筋、懸垂、アームカール、バスケットボール、野球、サッカー等)。
【0122】
データモニタリングサブシステム
本発明の実施形態によれば、データモニタリングサブシステム60は、コイル送信またはシグナル(例えば送信T32、T22、T34およびT24)を受信し、そしていくつかの実施形態においては、選択的にモニターするように、そしてそれに関連するパラメータ(例えば選択的軸に沿った変位)、および/または胸壁パラメータ(例えばCWP1)、および/または呼吸特性(例えばVT)または事象を表示するように設計および適合される。
【0123】
データモニタリングサブシステム60は、更に好ましくは、選択的な被験者のパラメータ、特性、情報および警報または警告を表示するように設計および適合される。データモニタリングサブシステム60はまた、データを表示する、またはデータを聴覚的に送信するようにも適合され得る。聴覚的に示されるデータは、ボイスメッセージ、音楽、または事象を示すその他のノイズであり得る。データモニタリングサブシステム60は、聴覚的データを送信するために、ヘッドフォンやスピーカーがデータモニタリングサブシステムに接続できるように適合され得、それは無線でも有線でもよい。データモニタリングサブシステム60は、データを表示するために、表示部を含む、または表示部がデータモニタリングサブシステムに接続できるように適合され得る。このような表示部は、例えば、液晶ディスプレー装置(LCD)、プラズマディスプレー装置、ブラウン管(CRT)ディスプレー装置、発光ダイオード(LED)ディスプレー装置、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレー装置を含み得る。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態において、データモニタリングサブシステム60はまた、空間パラメータシグナルおよび更なる解剖学的および生理学的センサによって送信されるシグナル(例えば皮膚温またはSpO2を示すシグナル)を受信し、そしていくつかの実施形態においては選択的にモニターするように、そしてそれに関連するパラメータおよび情報を表示するようにも適合される。パラメータはアスリートの身体活動に関連し得る。測定される、および/または計算される身体的または解剖学的パラメータは、例えば、時間、場所、距離、速度、ペース、ストライド数、ストライドの長さ、ストライド速度(stride rate)、および/または高度を含み得る。測定される、および/または計算される生理学的パラメータは、例えば、心拍数、呼吸速度、血中酸素濃度、血流量、水分補給状態、消費カロリー、筋肉疲労および/または体温を含み得る。ある実施形態において、パフォーマンスパラメータは、精神または感情のパラメータ、例えばストレスレベルや意欲の程度をも含み得る。精神および感情のパラメータは、アスリートに質問をすることにより、または走っている間に、例えば胴体の角度や足の当たり方(foot strike)の特性等を測定することにより、直接的または間接的に測定および/または計算され得る。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態において、データモニタリングサブシステム60は、ローカル電子モジュールまたはローカルデータユニット(LDU)を含む。LDUと関連して使用される用語「ローカル」は、LDUが、コイルを含有する着用可能な衣類の上または中など、電磁石コイルの近くに配置されることを意味する(以下に詳しく説明する)。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態において、LDUは、好ましくは、コイル送信(またはシグナル)を受信およびモニターし、コイル送信を前処理し、コイル送信および関連データを記憶し、そして選択的なデータ、パラメータ、生理学的特性および被験者の情報を表示するように適合される。
【0127】
いくつかの実施形態において、LDUはまた、空間パラメータ送信(またはシグナル)および更なる解剖学的および生理学的センサ(採用された場合)によって送信される更なるシグナルを受信およびモニターし、シグナルを前処理し、シグナルおよび関連データを記憶し、そして多様な媒体、例えば個人用デジタル補助装置(PDA)、携帯電話、および/またはコンピュータのモニター等によって、選択的なデータ、生理学的および空間パラメータ、生理学的特性および被験者の情報を表示するように適合される。
【0128】
いくつかの実施形態において、LDUは、遠隔モニターまたはモニタリング設備を含む。これらの実施形態において、LDUは、選択的なコイルおよびセンサデータ、生理学的パラメータおよび特性、空間的パラメータ、並びに被験者の情報を、遠隔モニターまたは設備に送信するように更に適合される。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態において、LDUは、制御データ処理サブシステム40の特徴および機能を含む(例えば一体型制御−処理/モニタリングサブシステム)ので、データ収集サブシステム20を制御するようにも適合される。このように、LDUは、採用される対のコイルを制御し、選択的な生理学的特性およびパラメータを決定し、有害な状態の生理学的特性およびパラメータを評価し、そして有害な特性またはパラメータが存在する場合には警報または警告を生成するように適合される。
【0130】
好適なLDUは、同時係属出願である国際出願番号PCT/US2005/021433(国際公開WO 2006/009830 A2、2006年1月26日公開)に記載されており、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態において、モニタリングサブシステム60は、分離した、遠隔モニターまたはモニタリング設備を含む。本発明の実施形態によれば、遠隔モニターまたは設備は、センサのデータおよび情報、生理学的および空間的パラメータ、生理学的特性並びに被験者の情報を、制御データ処理サブシステム40から受信し、選択的なコイルセンサデータおよび情報、生理学的および空間的パラメータ、生理学的特性並びに被験者の情報を、種々の媒体、例えばPDA、コンピュータのモニター等に表示するように適合される。
【0132】
データ送信サブシステム
本発明の実施形態によれば、制御シグナルをデータ収集サブシステム20、ひいては対のコイルに送信し、コイル送信(またはシグナル)を対のコイルから制御データ処理サブシステム40へ送信するために、種々の通信リンクおよびプロトコルを採用できる。コイル送信(またはシグナル)および関連パラメータ、生理学的特性、空間的パラメータ、並びに被験者の情報を含むデータおよび情報を、制御データ処理サブシステム40からデータモニタリングサブシステム60へ送信するために、種々の通信リンクおよびプロトコルを採用することができる。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態において、データ収集サブシステム20と制御データ処理サブシステム40との間の通信リンクは、導線または類似の直接的通信手段を含む。いくつかの実施形態において、データ収集サブシステム20と制御データ処理サブシステム40との間の通信リンクは、制御データ処理サブシステム40とデータモニタリングサブシステム60との間のものと同様、無線リンクである。
【0134】
同時係属出願である、2009年9月1日出願の米国特許出願番号61/275,587号、およびこれと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,592号は、各々が、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすが、それらに記載されるように、本発明のデータ送信サブシステム50は多モード通信手段をも含み得、これが、単一無線モードでは効果がないであろう広範囲の設定(settings)において獲得されるべきデータモニタリングサブシステム60あるいはその他の所望の機器またはシステムへの効果的な通信を可能にする。
【0135】
1つの実施形態において、多モード通信手段は、例えばグローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(Global System for Mobile Communications)(GSM)およびブルートゥース(BlueTooth(登録商標))システムを含む、複数の無線サブシステムを含む。
【0136】
データ送信サブシステム50は、上述の多モード通信手段を制御するためのアルゴリズムおよびプログラミングを更に含んでもよい。このような制御は、予めプログラムされたシグナルの送信(例えば、シグナルが示す生理学的特性が関連すると見なされたときの送信)を含み得る。
【0137】
上述のリアルタイムのシグナル収集および処理能力と連動した多モード通信手段は「スマートな」通信構造を創り出し、これが、電池の効率を最大にし、広範な環境にわたる接続性を保証し、データが関連するときのみ送信されることを可能にする。
【0138】
同時係属出願である、2009年9月1日出願の米国特許出願番号61/275,634号、およびこれと同時出願の、同時係属出願である米国特許出願番号12/869,625号は、各々が、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすが、それらに記載されるように、上述の生理学的モニタリングシステムおよび方法は、多数の主要な生理学的、パフォーマンスおよび状況パラメータを示す複数のシグナルを継続して(または擬似継続して)、同期して、そして同時に提供することが容易にできる。
【0139】
複数のシグナルを継続して(または擬似継続して)、同期して、そして同時に収集することは、詳細な生理学的データベースおよびライブラリの作成を容易にし、データの解釈および分析をより効果的にし得る状況を提供する。
【0140】
本発明の1つの実施形態において、データベースは、一般集団における多数の被験者から得られた詳細な生理学的またはパフォーマンスデータで、リアルタイムまたは擬似リアルタイムに、継続してアップデートされる。1つの実施形態において、個々の被験者データのパッケージは、被験者の人口学的な医学または運動パフォーマンスの履歴データにより注釈がつけられ、より大きなデータベースのサブセットの評価を可能にする。このデータベース構造を、継続的な現実のデータのアップデート並びに定期的で頻繁なデータ整理およびアルゴリズム処理と組み合わせることにより、病気および治療のプロファイリングのための生理学的/医療ライブラリまたはパフォーマンスのモニタリングおよび比較のための運動パフォーマンスライブラリとして前例のないものが提供される。
【0141】
データベース全体は、例えば心臓活動、呼吸活動およびその他の生理学的パラメータの基準的データ値のために評価され得る。データベース全体は、更に、またはあるいは、例えば運動パフォーマンスの特性または進歩の基準的データ値のために評価され得る。
【0142】
1つの実施形態において、病気の状態に基づいてデータベースのサブセットが開発され、パターン認識アルゴリズムが適用され、病気の悪化、改善、治療に対する反応等を示すシグナルが決定される。データベースのこの機能は、病気のグループについての加工された(nonnative)データ並びに臨床試験のための新規の潜在的治療の標的および終点を提供することにより、将来の医薬およびバイオテクノロジーの発展に向けて重要な潜在的利益を提供する。
【0143】
更に、より広い病気の定義内における特定の患者のサブセットが明らかとなり、結果として、より正確な診断や医療ケアおよび治療の提供ができるようになるであろう。
【0144】
1つの実施形態において、例えば運動パフォーマンスレベルおよび行うスポーツの種類等の属性に基づいて、データベースのサブセットが開発され、パターン認識アルゴリズムが適用され、パフォーマンスの悪化、改善、トレーニングに対する反応等を示すシグナルが決定される。データベースのこの機能は、アスリートのグループについての加工された(nonnative)データ並びに運動パフォーマンスの最適化のための新規の潜在的なフィットネスの標的および目標を提供することにより、将来の運動パフォーマンスのためのトレーニングの開発に向けての重要な潜在的利益を提供する。データベースは、アスリートが、多様な生理学的特性およびパフォーマンス特性の経時的な変化を追跡するのを助けることができ、このことが、どのトレーニング方法またはプログラムが最も効果的であるかをアスリートが決定する助けとなり得る。
【0145】
更に、ある被験者の現在の状態と、その状態への類似性を示す他の被験者における病気の進行についての履歴のデータとを相互に関連付けることにより病気の進行を正確に予測するために、データベースが含有する情報を使用することができる。このような予測は、更に、他の被験者の人口学的データとの比較により、特定の被験者独自のものにすることができる。
【0146】
更に、あるアスリートの現在のパフォーマンスレベルまたは特性と、それへの類似性を示す他のアスリートにおける運動パフォーマンスの進歩についての履歴のデータを相互に関連付けることにより運動パフォーマンスの進歩を正確に予測するために、データベースが含有する情報を使用することができる。このような予測は、更に、他のアスリートの人口学的データとの比較により、特定の被験者独自のものにすることができる。
【0147】
いくつかの例示的な実施形態において、データベースは、単一の物理的記憶媒体またはユニット、例えばハード・ドライブ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用または書換可能な光ディスク(例えば読み取り専用コンパクト・ディスク・メモリ(CD-ROM)、書換可能コンパクト・ディスク(CD-RW)、およびデジタルビデオディスク(DVD))、フロッピー(登録商標)ディスク、フロプティカルディスク、固体メモリ、および当業者にとって明らかな多様なその他の記憶媒体およびユニットに収録されても良い。
【0148】
いくつかの例示的な実施形態において、データベースは複数の分離した記憶媒体に収録され、それら記憶媒体は同じタイプであってもそうでなくても良い。分離した記憶媒体は全て、1つのまとまったシステムの一部であって、互いに接続し、そしてアクセス装置、例えばコンピュータに接続していて良い。このような接続は、有線であっても無線であっても良い。いくつかの実施形態において、分離した記憶ユニットは、多様な異なるシステムに接続されても良く、これらは互いに離して配置されてもそうでなくても良い。このような場合、分離した記憶ユニットは互いに接続され、そしてネットワーク、例えばイントラネットやインターネットを通じて少なくとも1つのアクセス装置に接続されても良い。
【0149】
いくつかの例示的な実施形態において、データベースにアクセスするために使用されるアクセス装置は、データベースユニットに直接接続される(例えば有線、または無線により)。いくつかの例示的な実施形態において、データベースにアクセスするためのアクセス装置は、データベースユニットから離して配置され、例えばネットワーク(例えばイントラネットやインターネット)を通じてデータベースに接続される。
【0150】
本発明の更なる利点や適用は、以下の出願明細書に開示されたシステムおよび方法を参照すれば明らかである:これと同時出願の米国特許出願番号12/869,625号;同時出願の米国特許出願番号12/869,582号;同時出願の米国特許出願番号12/869,576号;同時出願の米国特許出願番号12/869,585号;同時出願の米国特許出願番号12/869,592号;同時出願の米国特許出願番号12/869,627号;および、同時出願の米国特許出願番号12/869,578号。これら各々が、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0151】
本発明の精神および範囲を逸脱しない範囲において、当業者は、本発明に種々の変更および改善を加えて、種々の使用法および条件に適合するようにすることができる。よって、これらの変更および改善は、適切かつ公平に、本発明に相当する全範囲内であるように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体活動に従事する被験者のパラメータをモニタリングおよび記録するためのシステムであって:
被験者の胴体の少なくとも一部を覆うように適合されたモニタリング用衣類と;
第1センサおよび第2センサを含むセンササブシステムであって、該第1および第2センサは、その間の距離の変化に反応し、該センササブシステムは、該第1および第2センサの間の距離を示す距離シグナルを生成および送信するように構成され、該第1および第2センサは該衣類に組み込まれ、被験者が該衣類を着用したときに、第1および第2センサは被験者の胸部に近接する、センササブシステムと;
距離シグナルを受信および記憶するように構成されたデータベースであって、該データベースは、第2シグナルを受信および記憶するように更に構成され、該データベースは、第1シグナルが示す情報を第2シグナルが示す情報と比較するように構成された、データベースと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記第2シグナルが、生理学的パラメータおよびパフォーマンスパラメータのうちの少なくとも1つを示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記データベースが、継続して、同期して、そして同時に複数のシグナルを受信および記憶するように更に構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1シグナルが、被験者の人口学的情報および被験者のパフォーマンス履歴と関連して記憶される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記データベースが、第1シグナルが示す情報と第2シグナルが示す情報が共通の属性を有するかどうかを決定するように構成されたデータベースサブセットを含み、共通の属性を有すると決定された場合、該データベースサブセットが、第1シグナルと第2シグナルを関連付けるように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記属性が、運動パフォーマンスレベルおよびスポーツの種類のうちの少なくとも1つである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1および第2センサが電磁石コイルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
集団モデリングのためのデータベースシステムであって、該データベースシステムは:
第1シグナルを生成および送信するように構成されたデータ収集サブシステム;および
該データ収集サブシステムと接続したプロセッササブシステムであって、該プロセッササブシステムは、第1シグナルを受信し、該第1シグナルを処理して被験者のパラメータを示す第1パラメータシグナルを得るように、そして該第1パラメータシグナルをデータベースへ送信するように構成され、該データベースは、該第1パラメータシグナルを受信および記憶するように構成された、プロセッササブシステム、を含み、
該データベースが、第2被験者のパラメータを示す第2パラメータシグナルを受信および記憶するように構成され、該データベースが、第1パラメータシグナルと第2パラメータシグナルを比較して、第1パラメータシグナルおよび第2パラメータシグナルが含有するパラメータ情報間の類似性を決定するように構成された、データベースシステム。
【請求項9】
前記パラメータが、生理学的パラメータおよびパフォーマンスパラメータのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のデータベースシステム。
【請求項10】
前記データ収集サブシステムが、継続して、同期して、そして同時に複数のシグナルを生成および送信するように更に構成され、前記プロセッササブシステムが、継続して、同期して、そして同時に該複数のシグナルを受信および送信するように更に構成された、請求項8に記載のデータベースシステム。
【請求項11】
前記データベースが、第1被験者の人口学的情報および関連する被験者の運動パフォーマンス履歴データと関連して第1パラメータシグナルを記憶するように更に構成された、請求項8に記載のデータベースシステム。
【請求項12】
前記データベースが、第1パラメータシグナルと第2パラメータシグナルが共通の属性を有するかどうかを決定するように構成されたデータベースサブセットを含み、該第1および第2パラメータシグナルが共通の属性を有すると決定された場合、該データベースサブセットが、第1パラメータシグナルと第2パラメータシグナルを関連付けるように構成された、請求項11に記載のデータベースシステム。
【請求項13】
前記属性が、運動パフォーマンスレベルおよびスポーツの種類のうちの少なくとも1つである、請求項12に記載のデータベースシステム。
【請求項14】
パラメータシグナルが、パフォーマンスの悪化、パフォーマンスの改善およびトレーニングに対する反応のうちの少なくとも1つを示しているかどうかを決定するためにパターン認識アルゴリズムが適用される、請求項8に記載のデータベースシステム。
【請求項15】
前記属性が危険な状態を示す、請求項12に記載のデータベースシステム。
【請求項16】
前記データ収集サブシステムが、被験者の胸部に近接して配置されるサンサを更に含む、請求項8に記載のデータベースシステム。
【請求項17】
前記センサが、間の距離の変化に反応する1対の電磁石コイルを含む、請求項16に記載のデータベースシステム。
【請求項18】
前記シグナルが、前記1対の電磁石コイル間の距離の変化によって示された呼吸パラメータを示す、請求項17に記載のデータベースシステム。
【請求項19】
集団モデリングのための方法であって:
第1被験者から第1シグナルを受信する工程;
第1シグナルをプロセッササブシステムで処理して、第1被験者のパラメータを示す第1パラメータシグナルを得る工程;
第1パラメータシグナルをデータベースに送信する工程;
第1パラメータシグナルを、第1被験者の人口学的情報およびパフォーマンス履歴のうちの少なくとも1つと関連付ける工程;
第1パラメータシグナルを、第1被験者の人口学的情報および第1被験者のパフォーマンス履歴のうちの少なくとも1つと関連してデータベースに記憶する工程;および
第1シグナルを、データベース内の第2パラメータシグナルと比較する工程、
を含む方法。
【請求項20】
前記パラメータが、生理学的パラメータおよびパフォーマンスパラメータのうちの少なくとも1つである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2パラメータシグナルが、第1被験者の第2パラメータを示す、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第2パラメータシグナルが、第2被験者のパラメータを示す、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、該方法は:
第1および第2パラメータシグナルに基づいて第1および第2被験者間の共通の属性を決定する工程;および
データベースサブセットを記憶する工程
を更に含み、該データベースサブセットが、第1および第2パラメータシグナルを含む、方法。
【請求項24】
第1および第2パラメータシグナルを受信する工程が、継続して、同期して、そして同時に第1および第2パラメータシグナルを受信する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記共通の属性が、運動パフォーマンスレベルおよびスポーツの種類のうちの少なくとも1つである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記共通の属性が危険な状態を示す、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
第1パラメータシグナルが、以前に記憶した第1被験者のパラメータシグナルと比較してパフォーマンスにおける変化を示しているかどうかを決定するために、パターン認識アルゴリズムを適用する工程を更に含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−120872(P2011−120872A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−196125(P2010−196125)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(510204998)アディダス アーゲー (30)
【Fターム(参考)】