説明

集積光導波路、光素子および集積光導波路の製造方法

【課題】 光導波路の集積化に対応しつつ、異なる屈折率の材料が結合された界面における反射を低減する。
【解決手段】 第1光導波路R1および第2光導波路R2が光学的に結合されるように、第1光導波路R1および第2光導波路R2を半導体基板101上に形成し、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面には、第1光導波路R1および第2光導波路R2と屈折率の異なる誘電体膜104を介挿し、誘電体膜104の屈折率を第1光導波路R1の屈折率と第2光導波路R2の屈折率との間の屈折率とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積光導波路、光素子および集積光導波路の製造方法に関し、特に、半導体光導波路とその半導体光導波路とは屈折率の異なる材料からなる光導波路との集積構造およびこれを用いた光素子に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体光導波路と半導体とは異なる特性を有する材料からなる光導波路を接続することにより、半導体のみでは得られない新しい特性を有する光導波路が得られている。
例えば、半導体の屈折率は温度上昇により増大する、すなわち正の温度依存性を有するが、これとは逆に温度上昇により屈折率が低下する、すなわち負の温度依存性を有する材料からなる光導波路を半導体光導波路に縦続接続する方法がある。
【0003】
これにより、全体として、屈折率と導波路長の積である光学長が温度に依存しない光導波路を得ることができ、非特許文献1に開示されているように、半導体レーザの外部に負の屈折率温度依存性を有する材料からなる共振器を構成することで、発振波長が温度に依存しない温度無依存レーザを実現することができる。
ここで、半導体光導波路と半導体以外の材料からなる導波路を接合する場合、その界面において2つの導波路の屈折率の違いから反射が生じる。第1光導波路の屈折率をN1、第2光導波路の屈折率をN2とし、接合面に対して垂直に入射した場合を考えると、反射率Rは以下の(1)式で与えることができる。
R=((N1−N2)/(N1+N2))2 ・・・(1)
【0004】
図8は、屈折率差と反射率の関係を示す図である。
図8において、第1光導波路が半導体で構成されているとし、第1光導波路と第2光導波路との屈折率差をΔNとすると、屈折率差ΔNが大きくなるに従って、第1光導波路と第2光導波路との接合面での反射率は上昇する。例えば、半導体光導波路同士を結合させた場合、それらの屈折率差ΔNは通常0.5以下であるので、それらの接合面での反射率は0.5%よりも小さくなる。
【0005】
一方、光導波路間の屈折率差ΔNが0.5となると、それらの接合面での反射率は0.7%、屈折率差ΔNが1.0となると、それらの接合面での反射率は3.3%、屈折率差ΔNが1.5となると、それらの接合面での反射率は9.1%となる。従って、半導体光導波路の屈折率は3.0以上、高分子導波路や石英導波路の屈折率は通常2.5以下であるため、半導体光導波路と半導体以外の材料からなる導波路を接合すると、光導波路間の屈折率差ΔNが0.5以上となり、それらの接合面での反射が無視できなくなる。
【0006】
一方、半導体や石英導波路を伝播した光を外部に放射する場合、導波路と外部との屈折率が異なるために反射が生じる。このため、例えば、半導体光導波路中を伝播した光が半導体レーザの端面から空気中(屈折率=1.0)に放射される場合、非特許文献2に開示されているように、ある特定の厚さの蒸着膜を半導体端面に成膜することにより、反射を防止することが行われている。すなわち、光の波長をλ0、蒸着膜の屈折率をN、蒸着膜の厚さをdとすると、
Nd=λ0/4(2m+1)(m=0,1,2,・・・) ・・・(2)
であるため、蒸着膜の屈折率が半導体の屈折率より小さい時に反射率は極小となる。
【0007】
【非特許文献1】K.Tada et al.“Temperature compensated coupled cavity diode lasers”,Optical and Quantum Electronics,vol.16,pp.463−469,1984.
【非特許文献2】草川徹著 「レンズ光学」東海大学出版会 pp.273〜288
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、半導体光導波路とその半導体光導波路とは屈折率の異なる材料からなる光導波路とを結合する場合、屈折率差に応じて接合界面での反射が起こるため、導波路設計の自由度が制限される。また、半導体光導波路から空気中に放射される光の反射を低減させる方法も広く知られているが、半導体光導波路とそれ以外の材料からなる屈折率差の大きい光導波路が半導体基板上に集積された導波路間の反射を低減させる方法は知られていなかった。
そこで、本発明の目的は、光導波路の集積化に対応しつつ、異なる屈折率の材料が結合された界面における反射を低減することが可能な集積光導波路、光素子および集積光導波路の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の集積光導波路によれば、第1光導波路と、前記第1光導波路に光学的に結合され、前記第1光導波路と屈折率の異なる第2光導波路と、前記第1光導波路と前記第2光導波路との結合面に介挿され、前記第1光導波路および前記第2光導波路と屈折率の異なる誘電体膜とを備えることを特徴とする。
これにより、誘電体膜の屈折率および膜厚を調整することで、第1光導波路と第2光導波路との結合面における屈折率差を調整することが可能となる。このため、第1光導波路と第2光導波路との結合面における反射率を変化させることが可能となり、第1光導波路と第2光導波路との結合面における反射率を低減させることができる。
【0010】
また、請求項2記載の集積光導波路によれば、基板上に形成された第1光導波路と、前記第1光導波路の垂直面を露出させるように前記基板に形成された段差と、前記段差を埋め込むように前記基板上に形成され、前記第1光導波路と屈折率の異なる第2光導波路と、少なくとも前記段差部分の垂直面に成膜され、前記第1光導波路および前記第2光導波路と屈折率の異なる誘電体膜とを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、第1光導波路と第2光導波路との結合面に誘電体膜が介挿された状態で、互いに屈折率の異なる第1光導波路と第2光導波路とを同一基板上に集積化することができる。このため、光導波路間の反射を抑制しつつ、様々の材料から構成される光導波路を接続することが可能となり、光導波路の集積化に対応しつつ、半導体のみでは得られない新しい特性を有する光導波路を実現することが可能となる。
【0012】
また、請求項3記載の集積光導波路によれば、前記誘電体膜は、前記第1光導波路および前記第2光導波路の双方と屈折率の異なる単層膜または互いに屈折率の異なる材料が積層された多層膜であることを特徴とする。
これにより、誘電体膜の積層数を単に増加することで、第1光導波路と第2光導波路との結合面における屈折率差をより多彩に調整することが可能となる。このため、製造プロセスの煩雑化を抑制しつつ、第1光導波路と第2光導波路との結合面における反射特性を容易に向上させることができる。
【0013】
また、請求項4記載の集積光導波路によれば、前記第1光導波路と前記第2光導波路との屈折率差は0.5以上であり、前記単層膜または前記多層膜の少なくとも一層の屈折率は、前記第1光導波路の屈折率と前記第2光導波路の屈折率との間の屈折率であることを特徴とする。
これにより、第1光導波路と第2光導波路との結合面における屈折率差を緩和することが可能となり、第1光導波路と第2光導波路との結合面における屈折率差が大きい場合においても、第1光導波路と第2光導波路との境界における反射率を低くすることができる。
【0014】
また、請求項5記載の集積光導波路によれば、前記第1光導波路および前記第2光導波路は半導体基板上に形成され、前記第1光導波路または前記第2光導波路の少なくともいずれか一方の一部もしくは全部が半導体であることを特徴とする。
これにより、光導波路間の反射を抑制しつつ、半導体とは異なる特性を有する材料からなる光導波路を発光素子に接続することができ、発光素子の特性を向上させることが可能となるとともに、発振波長が温度に依存しない温度無依存レーザを実現することができる。
【0015】
また、請求項6記載の集積光導波路によれば、前記第1光導波路および前記第2光導波路を伝搬する光の波長をλ0、前記単層膜または前記多層膜の少なくとも一層の屈折率をNiとすると、前記単層膜または前記多層膜の少なくとも一層の膜厚が、
(λ0/(8Ni)〜3λ0/(8Ni))+λ0/(2Ni)×m
(m=0,1,2,・・・)
であることを特徴とする。
これにより、誘電体膜の膜厚を調整することで、第1光導波路と第2光導波路との結合面での反射率を最大値と最小値の中間の値以下に低減させることができ、製造プロセスの煩雑化を抑制しつつ、第1光導波路と第2光導波路との結合面における反射率を低減させることができる。
【0016】
また、請求項7記載の集積光導波路によれば、請求項1〜6のいずれか1項記載の集積光導波路の少なくとも1種類が2つ以上縦続接続されていることを特徴とする。
これにより、屈折率の異なる光導波路を縦続接続することが可能となり、様々の機能を各光導波路に分担させることができる。このため、導波路設計の自由度を向上させることを可能としつつ、半導体のみでは得られない新しい特性を有する光導波路を実現することが可能となる。
【0017】
また、請求項8記載の光素子によれば、請求項1〜7のいずれか1項記載の集積光導波路が用いられていることを特徴とする。
これにより、光導波路間の反射を抑制しつつ、様々の材料から構成される光導波路を接続することが可能となり、光導波路の集積化に対応しつつ、半導体のみでは得られない新しい特性を有する光素子を実現することが可能となる。
【0018】
また、請求項9記載の集積光導波路の製造方法によれば、基板上に第1光導波路を形成する工程と、前記第1光導波路のエッチング加工を行うことにより、前記第1光導波路の垂直面を露出させる段差を前記基板に形成する工程と、前記第1光導波路と屈折率の異なる誘電体膜を前記段差部分の垂直面に成膜する工程と、前記第1光導波路および前記誘電体膜と屈折率の異なる第2光導波路を前記段差に埋め込む工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
これにより、段差が形成された基板の全面に誘電体膜を成膜することで、第1光導波路と第2光導波路との結合面に誘電体膜を介挿することが可能となるとともに、互いに屈折率の異なる第1光導波路と第2光導波路とを同一基板上に集積化することができる。このため、ウェハのままで全ての素子の端面に対して誘電体膜を一括して形成することが可能となるとともに、第1光導波路と第2光導波路との結合面が互いに異なる方向を向いている場合においても、これらの結合面に一度に誘電体膜を形成することができる。この結果、第1光導波路と第2光導波路との結合面に誘電体膜を介挿させるために、ウェハから切り出された光導波路を1個ずつ治具に固定したり、位置合わせを行ったりする必要がなくなり、製造プロセスの煩雑化を抑制しつつ、第1光導波路と第2光導波路との結合面における屈折率差を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、第1光導波路と前記第2光導波路との結合面に誘電体膜を介挿することにより、第1光導波路と第2光導波路との境界における反射を低減させることができ、光導波路の集積化に対応しつつ、半導体のみでは得られない新しい特性を有する光導波路を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る集積光導波路およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図、図1(b)は図1(a)のA−A´線で切断した断面図、図1(c)は図1(a)のB−B´線で切断した断面図である。
【0022】
図1(a)において、半導体基板101上には、第1光導波路R1および第2光導波路R2が形成されている。ここで、第1光導波路R1および第2光導波路R2は光学的に結合されるとともに、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面には、第1光導波路R1および第2光導波路R2と屈折率の異なる誘電体膜104が介挿されている。なお、第1光導波路R1と第2光導波路R2とは互いに屈折率の異なる材料で構成することができ、第1光導波路R1と第2光導波路R2との屈折率差は0.5以上であってもよい。また、誘電体膜104の屈折率は、第1光導波路R1の屈折率と第2光導波路R2の屈折率との間の屈折率であることが好ましい。
【0023】
ここで、第1光導波路R1では、図1(b)に示すように、半導体基板101上に第1コア層102が積層され、第1コア層102上には、クラッド層103が積層されている。そして、半導体基板101の表層、第1コア層102およびクラッド層103が導波方向に沿ってストライプ状に加工され、半導体基板101の表層、第1コア層102およびクラッド層103の両側を埋め込む埋め込み層108が半導体基板101上に形成されている。
【0024】
そして、半導体基板101には、第1光導波路R1の第1コア層102の垂直面を露出させる段差Dが形成されている。そして、段差Dには、第1コア層102の垂直面を覆うように誘電体膜104が成膜されている。
また、第2光導波路R2では、図1(c)に示すように、半導体基板101上に誘電体膜104が成膜され、誘電体膜104上には、下部クラッド層105、第2コア層106および上部クラッド層107が順次積層されている。ここで、第2コア層106は、導波方向に沿ってストライプ状に加工され、下部クラッド層105および上部クラッド層107にて埋め込まれている。
【0025】
これにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面に誘電体膜104が介挿された状態で、互いに屈折率の異なる第1光導波路R1と第2光導波路R2とを同一の半導体基板101上に集積化することができる。このため、第1光導波路R1と第2光導波路R2とを互いに屈折率の異なる材料で構成した場合においても、光導波路の集積化に対応しつつ、第1光導波路R1と第2光導波路R2と間の反射を抑制することが可能となり、素子の小型化を図りつつ、単一材料のみでは得られない新しい特性を有する光導波路を実現することが可能となる。
【0026】
なお、第1光導波路R1または第2光導波路の少なくともいずれか一方の一部もしくは全部が半導体であってもよく、半導体光導波路と半導体とは異なる特性を有する材料からなる光導波路を接続するようにしてもよい。例えば、負の温度依存性を有する材料からなる光導波路を半導体光導波路に縦続接続することにより、発振波長が温度に依存しない温度無依存レーザを実現することができる。
【0027】
ここで、第1光導波路R1を半導体、第2光導波路R2を半導体以外の材料にて構成する場合、例えば、半導体基板101、クラッド層103および埋め込み層108としてInP、第1コア層102としてGaInAsP、下部クラッド層105、第2コア層106および上部クラッド層107としてポリイミドを用いることができる。この場合、第2コア層106には、伝送損失を低減するために、下部クラッド層105および上部クラッド層107に用いられるポリイミドよりも屈折率の高いポリイミドを用いることが好ましい。
【0028】
なお、第1光導波路R1または第2光導波路R2に用いられる半導体以外の材料としては、ポリイミド以外にも、屈折率の温度依存性や熱膨張係数や透過率などの所望の導波路の特性に応じて、例えば、BCB(ベンゾシクロブテン)やPMMA(ポリメチルメタクリレート)やPC(ポリカーボネート)などの高分子材料を用いるようにしてもよい。
また、半導体材料に関しても、InPおよびGaInAsPの組み合わせに限定されることなく、GaAs、AlGaAs、InGaAs、GaInNAsなど任意の材質について適用が可能である。また、第1コア層102の形状に関しては、特に制約を設けるものではなく、埋め込みヘテロ構造以外にも、例えば、コア層中央部の屈折率とクラッド層の屈折率との間の屈折率を持つ材料によりサンドイッチされた分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)や、屈折率を段階的に変化させた傾斜屈折率(GI−)SCHとしてもよい。
【0029】
また、半導体レーザに本構造を適用する場合、第1コア層102として活性領域を用いてもよく、その形状は、バルク、MQW(多重量子井戸)、量子細線、量子ドットを問わず、また活性領域の導波路構造に関しても、pn埋め込み、リッジ構造、半絶縁埋め込み構造、ハイメサ構造等を用いるようにしてもよい。さらに、半導体光導波路には、回折格子などの波長選択機能を設けるようにしてもよい。
【0030】
また、図1の構成では、第2光導波路R2に導波路構造を持たせる方法について説明したが、半導体以外の材料から構成された光導波路については必ずしも導波路構造を持たせる必要はなく、コア層がなくてもよい。また、第2光導波路R2の形状に関しても、特に制約を設けるものではなく、リッジ導波路やハイメサ導波路等を用いるようにしてもよい。
【0031】
また、誘電体膜104としては、例えば、SiN膜やSiO2膜などを用いることができ、半導体の導波路構造にダメージを及ぼすことなく、誘電体膜104のみを加工できる方法がある材料が望ましい。例えば、誘電体膜104としてSiN膜やSiO2膜を用いることにより、成膜条件や成膜方法あるいは不純物の割合により屈折率を変化させることができ、誘電体膜104の特性を要求される導波路間の反射特性に容易に適合させることができる。
【0032】
図2は、図1の集積光導波路における第1導波路R1と第2導波路R2との間の誘電体膜104の膜厚と反射率との関係を示す図である。なお、図2の例では、第1光導波路R1および第2光導波路R2を伝搬する光の波長をλ0=1.55μm、第1導波路R1の屈折率N1=3.24、第2導波路R2の屈折率N2=1.57とした。また、誘電体膜104としてSiNを使用し、SiNの屈折率NSiN=1.85とした。
図2において、第1光導波路R1と第2光導波路R2との間のSiN膜の膜厚が0μm、すなわち第1光導波路R1と第2光導波路R2とを直接結合した場合、第1光導波路R1と第2光導波路R2との屈折率差は1.67であるため、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面で12%程度の反射が生じる。
【0033】
一方、第1光導波路R1と第2光導波路R2とを誘電体膜104を介して結合し、以下の(3)式を満たすようにSiNの膜厚dSiNを設定することにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を極小値まで低減させることができる。
SiNSiN=λ0/4(2m+1) ・・・(3)
例えば、第1光導波路R1と第2光導波路R2との間のSiN膜の膜厚dSiNを約0.21μmに設定することにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を3.8%にまで低減させることができる。
【0034】
ここで、第1光導波路R1と第2光導波路R2との間のSiN膜の膜厚dSiNをλ0/(8NSiN)から3λ0/(8NSiN)の間に設定することにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を最大値と最小値の中間の値以下に低減させることができる。この現象は、SiN膜の膜厚dSiNがλ0/(2NSiN)ごとに繰り返される。このため、以下の(4)式を満たすようにSiN膜の膜厚dSiNを設定することにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を最大値と最小値の中間の値以下に低減させることができる。
(λ0/(8NSiN)〜3λ0/(8NSiN))+λ0/(2NSiN)×m
(m=0,1,2,・・・) ・・・(4)
【0035】
さらに、SiNの成膜方法や不純物を適宜選択することによりSiNの屈折率を上げ、SiNの屈折率を2.2〜2.3程度とすることにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率をさらに低減することができる。ここで、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を低減するには、第1光導波路R1の屈折率と第2光導波路R2の屈折率との間になるように、誘電体膜104の屈折率を設定する必要がある。
【0036】
一方、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を上昇させるには、第1光導波路R1の屈折率と第2光導波路R2の屈折率のいずれよりも高くなるかまたは低くなるように、誘電体膜104の屈折率を設定すればよい。この場合、(3)式を満たすように、第1光導波路R1と第2光導波路R2との間のSiN膜の膜厚dSiNを設定することにより、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を極大値まで上昇させることができる。
【0037】
これにより、誘電体膜104の屈折率および膜厚を調整することで、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面における反射率を変化させることが可能となり、第1光導波路R1と第2光導波路R2とを直接結合させた場合に比べて、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面における反射率を低減させたり上昇させたりすることができる。
【0038】
図3は、図1の集積光導波路の製造方法の一例を示す断面図である。
図3(a)において、第1コア層102およびクラッド層103を半導体基板101上に順次積層する。なお、第1コア層102およびクラッド層103を半導体基板101上に順次積層する場合、例えば、MBE(molecular beam epitaxy)、MOCVD(metal organic chemical vaper depiosition)、あるいはALCVD(atomic layer chemical vaper depiosition)などのエピタキシャル成長を用いることができる。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、クラッド層103、第1コア層102および半導体基板101の表層を選択的に除去することにより、第1コア層102の垂直面を露出させる段差Dを半導体基板101に形成する。ここで、クラッド層103、第1コア層102および半導体基板101の表層をエッチング加工する場合、例えば、RIE(反応性イオンエッチング)、ECR(electoron cyclotron resonance:電子サイクロトロン共鳴)エッチング、RIBE(反応性イオンビームエッチング)、SWP(surface wave plasma:サーフェスウェーブプラズマ)エッチング、HEP(helicon−wave excited plasma:ヘリコン波励起プラズマ)エッチング、ICP(inductively coupled plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング、TCP(transfer coupled plasma:転送結合型プラズマ)エッチングなどを用いることができる。
【0040】
なお、第1コア層102およびクラッド層103のエッチング面は、誘電体膜104の堆積量を制御するために、必ずしも半導体基板101に対して垂直でなくてもよい。また、第1コア層102およびクラッド層103のエッチング面は、必ずしも導波路に対して垂直である必要はなく、導波路に対して傾斜していてもよい。
また、第1コア層102の垂直面を露出させる段差Dを半導体基板101に形成すると同時に、第1光導波路R1における半導体基板101の表層、第1コア層102およびクラッド層103を導波方向に沿ってストライプ状に加工することができる。そして、図1(b)に示すように、選択エピタキシャル成長を行うことにより、ストライプ状に加工された半導体基板101の表層、第1コア層102およびクラッド層103の両側を埋め込む埋め込み層108を半導体基板101上に形成することができる。
【0041】
次に、図3(c)に示すように、例えば、CVD(chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法を用いることにより、段差Dの側面が覆われるようにして、半導体基板101上に誘電体膜104を成膜する。なお、化学反応を起こさせる方法としては、熱や光やプラズマなどを用いることができる。ここで、CVD法を用いることにより、半導体基板101に垂直な面に対しても制御性よく誘電体膜104を成膜することができる。
【0042】
なお、誘電体膜104を成膜する方法は、CVD法以外にも、例えば、蒸着やスパッタなどの方法であっても、半導体基板101または蒸着源やスパッタ源を回転させるなどの方法により半導体基板101に垂直な面に対しても成膜できればよい。
次に、図3(d)に示すように、段差Dが埋め込まれるようにして、下部クラッド層105、第2コア層106および上部クラッド層107を半導体基板101上に順次積層する。
【0043】
これにより、段差Dが形成された半導体基板101の全面に誘電体膜104を成膜することで、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面に誘電体膜104を介挿することが可能となるとともに、互いに屈折率の異なる第1光導波路R1と第2光導波路R2とを同一の半導体基板101上に集積化することができる。このため、ウェハのままで全ての素子の端面に対して誘電体膜104を一括して形成することが可能となるとともに、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面が互いに異なる方向を向いている場合においても、これらの結合面に一度に誘電体膜104を形成することができる。この結果、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面に誘電体膜104を介挿させるために、ウェハから切り出された光導波路を1個ずつ治具に固定したり、位置合わせを行ったりする必要がなくなり、製造プロセスの煩雑化を抑制しつつ、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面における屈折率差を調整することが可能となる。
【0044】
なお、下部クラッド層105、第2コア層106および上部クラッド層107の材料として、ポリイミドやBCBなどの樹脂を用いることにより、スピンコートにて下部クラッド層105、第2コア層106および上部クラッド層107を半導体基板101上に順次塗布した後、ベーキングにて固めることができる。また、第2光導波路R2に導波路構造を形成する場合、屈折率の異なる材料を半導体基板101上に積層した後、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて加工することにより、導波路構造を容易に形成することができる。
【0045】
次に、図3(e)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、第1導波路R1上の誘電体膜104を選択的に除去することにより、クラッド層103の表面を露出させる。そして、必要に応じてクラッド層103上に電極を形成する。ここで、クラッド層103上に電極を形成することにより、第1導波路R1に利得を持たせることができ、半導体レーザなどの光能動素子を第1導波路R1に形成することができる。
【0046】
なお、誘電体膜104としてSiN膜やSiO2膜などを用いることにより、CF系ガスを用いたドライエッチングやフッ酸を用いたウェットエッチングなどによって誘電体膜104をエッチング加工することができる。このため、半導体光導波路の構造を変化させることなく誘電体膜104のみを容易に加工することができ、第1導波路R1と第2導波路R2との結合面にのみ誘電体膜104を残すことができる。また、図3の方法では、第2光導波路R2を半導体基板101上に形成した後に誘電体膜104のエッチング加工を行う方法について説明したが、第2光導波路R2を半導体基板101上に形成する前に誘電体膜104のエッチング加工を行うようにしてもよい。
【0047】
図4は、本発明の第2実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図である。
図4において、半導体基板201上には、第1光導波路R11および第2光導波路R12が形成されている。ここで、第1光導波路R11および第2光導波路R12は光学的に結合され、第1光導波路R11と第2光導波路R12との結合面には、第1光導波路R11および第2光導波路R12の双方と屈折率の異なる誘電体膜204a、204bが介挿されている。なお、第1光導波路R11と第2光導波路R12とは互いに屈折率の異なる材料で構成することができ、第1光導波路R11と第2光導波路R12との屈折率差は0.5以上であってもよい。また、誘電体膜204a、204bは互いに異なる屈折率を有する材料で構成することができ、誘電体膜204a、204bの少なくとも一層の屈折率は、第1光導波路R11の屈折率と第2光導波路R12の屈折率との間の屈折率であることが好ましい。
【0048】
ここで、第1光導波路R11では、半導体基板201上に第1コア層202が積層され、第1コア層202上には、クラッド層203が積層されている。そして、半導体基板201には、第1光導波路R11の第1コア層202の垂直面を露出させる段差D2が形成されている。そして、段差D2には、第1コア層202の垂直面を覆うように誘電体膜204a、204bが順次成膜されている。
【0049】
また、第2光導波路R12では、半導体基板201上に誘電体膜204a、204bが順次成膜され、誘電体膜204b上には、下部クラッド層205、第2コア層206および上部クラッド層207が順次積層されている。
ここで、第1光導波路R11を半導体、第2光導波路R12を半導体以外の材料にて構成する場合、例えば、半導体基板201およびクラッド層203としてInP、第1コア層202としてGaInAsP、下部クラッド層205、第2コア層206および上部クラッド層207としてポリイミドを用いることができる。この場合、第2コア層206には、伝送損失を低減するために、下部クラッド層205および上部クラッド層207に用いられるポリイミドよりも屈折率の高いポリイミドを用いることが好ましい。また、誘電体膜204aとしては、例えば、SiN膜を用いることができ、誘電体膜204bとしては、例えば、SiO2膜を用いることができる。
【0050】
これにより、誘電体膜204a、204bの積層数を単に増加させることで、第1光導波路204aと第2光導波路204bとの結合面における屈折率差をより多彩に調整することが可能となる。このため、製造プロセスの煩雑化を抑制しつつ、第1光導波路204aと第2光導波路204bとの結合面における反射特性を容易に向上させることができる。
【0051】
なお、図4の実施形態では、2層構造の誘電体膜204a、204bを用いる方法について説明したが、誘電体膜204a、204bの層数は必ずしも2層に限定されることなく、3層以上であってもよい。この場合、互いに隣り合う誘電体膜の屈折率が異なっていればよく、互いに屈折率の異なる2種類の誘電体膜を交互に積層してもよい。例えば、第1光導波路R11に半導体レーザを形成するとともに、第1光導波路R11と第2光導波路R12との間に分布ブラッグ反射膜を介挿することにより、半導体レーザと光導波路とを同一基板上に集積化することができる。
【0052】
図5は、図4の集積光導波路における第1導波路R11と第2導波路R12との間の誘電体膜204bの膜厚と反射率との関係を示す図である。なお、図5の例では、第1光導波路R11および第2光導波路R12を伝搬する光の波長をλ0=1.55μm、第1導波路R11の屈折率N1=3.24、第2導波路R12の屈折率N2=1.57とした。また、誘電体膜204aとしてSiN、誘電体膜204bとしてSiO2膜を使用し、SiNの屈折率NSiN=1.85、SiNの膜厚dSiN=0.21μm、SiO2の屈折率NSiO2=1.46とした。
【0053】
図5において、第1光導波路R11と第2光導波路R12とを誘電体膜204a、204bを介して結合し、上記の(3)式をそれぞれ満たすようにSiNの膜厚dSiNおよびSiO2の膜厚dSiO2を設定することにより、第1光導波路R11と第2光導波路R12との結合面での反射率を極小値まで低減させることができる。
例えば、第1光導波路R11と第2光導波路R12との間のSiN膜の膜厚dSiNを約0.21μmに設定するとともに、第1光導波路R11と第2光導波路R12との間のSiO2の膜厚dSiO2を約0.26μmに設定することにより、第1光導波路R11と第2光導波路R12との結合面での反射率を1.6%にまで低減させることができる。なお、(3)式は、SiNに関する式であるが、SiO2の場合には、NSiNをNSiO2に、dSiNをdSiO2にそれぞれ置き換えればよい。
【0054】
この場合、図1に示すように、誘電体膜104としてSiN膜を単層で使用すると、第1光導波路R1と第2光導波路R2との結合面での反射率を3.8%までしか低減させることができない。これに対し、図4に示すように、誘電体膜204a、204としてSiN膜とSiO2膜との積層構造を用いると、第1光導波路R11と第2光導波路R12との結合面での反射率を1.6%にまで低減させることができ、第1光導波路R11と第2光導波路R12との結合面での反射率をより一層低下させることができる。
【0055】
ここで、(3)式を満たすようにSiN膜の膜厚dSiNを固定した場合、第1光導波路R11と第2光導波路R12との間のSiO2膜の膜厚dSiO2を、λ0/(2NSiO2)の周期で繰り返されるλ0/(8NSiO2)から3λ0/(8NSiO2)の間の膜厚に設定することにより、第1光導波路R11と第2光導波路R12との結合面での反射率を最大値と最小値の中間の値以下に低減させることができる。
【0056】
図6は、本発明の第3実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図である。
図6において、半導体基板301上には、第1光導波路R21、第2光導波路R22および第3光導波路R23が形成されている。ここで、第1光導波路R21および第3光導波路R23は第2光導波路R22に光学的に結合され、第1光導波路R21と第2光導波路R22との結合面および第2光導波路R22と第3光導波路R23との結合面には、第1光導波路R21、第2光導波路R22および第3光導波路R23と屈折率の異なる誘電体膜304が介挿されている。なお、第2光導波路R22は、第1光導波路R21および第3光導波路R23と屈折率の異なる材料で構成することができ、第2光導波路R22と第1光導波路R21または第3光導波路R23との屈折率差は0.5以上であってもよい。また、誘電体膜304の屈折率は、第2光導波路R22の屈折率と第1光導波路R21または第3光導波路R23の屈折率との間の屈折率であることが好ましい。
【0057】
ここで、第1光導波路R21および第3光導波路R23では、半導体基板301上に第1コア層302が積層され、第1コア層302上には、クラッド層303が積層されている。そして、半導体基板301には、第1光導波路R21および第3光導波路R23の第1コア層302の垂直面をそれぞれ露出させる段差D3a、D3bが形成されている。そして、段差D3a、D3bには、第1コア層302の垂直面を覆うように誘電体膜304が成膜されている。また、第2光導波路R22では、半導体基板301上に誘電体膜304が成膜され、誘電体膜304上には、下部クラッド層305、第2コア層306および上部クラッド層307が順次積層されている。
【0058】
なお、第1光導波路R21および第3光導波路R23を半導体、第2光導波路R22を半導体以外の材料にて構成する場合、例えば、半導体基板301およびクラッド層303としてInP、第1コア層302としてGaInAsP、下部クラッド層305、第2コア層306および上部クラッド層307としてポリイミドを用いることができる。この場合、第2コア層306には、伝送損失を低減するために、下部クラッド層305および上部クラッド層307に用いられるポリイミドよりも屈折率の高いポリイミドを用いることが好ましい。また、誘電体膜304としては、例えば、SiN膜またはSiO2膜を単層で用いるようにしてもよいし、SiN膜とSiO2膜との積層構造を用いるようにしてもよい。なお、第2光導波路R22と屈折率が異なっていれば、第1光導波路R21および第3光導波路R23は必ずしも同一の構造である必要はない。
【0059】
このように半導体光導波路の一部を他の材料で構成された光導波路で置き換えた場合においても、半導体光導波路とその他の材料で構成された光導波路との結合面における反射率を低減させることができる。また、要求される光導波路の特性に合わせて複数の集積光導波路を接続することができる。
また、第1光導波路R21および第3光導波路R23を半導体にて構成し、第2光導波路R22をポリイミドなどの高分子にて構成することにより、光導波路の屈折率の温度依存性を互いに補償することができ、温度によって光学長が変化しない光導波路を作製したり、光学長により波長選択性を持った温度に依存しない波長フィルタなどを構成したりすることができる。
【0060】
また、第1光導波路R21および第3光導波路R23に電極を設け、電流注入により利得を持つように構成することにより、半導体レーザなどの半導体光素子を第1光導波路R21および第3光導波路R23に形成することができる。また、第1光導波路R21および第3光導波路R23に回折格子を設け、第1光導波路R21および第3光導波路R23に波長選択性を持たせることにより、単一波長で動作させることが可能となる。さらに、半導体光導波路とポリイミド光導波路とを接続することにより、屈折率の温度依存性を互いに補償することができ、波長が温度によって変わらない半導体レーザを作製することができる。
【0061】
図7は、本発明の第4実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図である。
図7において、半導体基板401上には、第1光導波路R31、第2光導波路R32および第3光導波路R33が形成されている。ここで、第1光導波路R31および第3光導波路R33は第2光導波路R32に光学的に結合され、第1光導波路R31と第2光導波路R32との結合面および第2光導波路R32と第3光導波路R33との結合面には、第1光導波路R31、第2光導波路R32および第3光導波路R33と屈折率の異なる誘電体膜404が介挿されている。なお、第2光導波路R32は、第1光導波路R31および第3光導波路R33と屈折率の異なる材料で構成することができ、第2光導波路R32と第1光導波路R31または第3光導波路R33との屈折率差は0.5以上であってもよい。また、誘電体膜404の屈折率は、第2光導波路R32の屈折率と第1光導波路R31または第3光導波路R33の屈折率との間の屈折率であることが好ましい。
【0062】
ここで、第2光導波路R22では、半導体基板401上に第1コア層402が積層され、第1コア層402上には、クラッド層403が積層されている。そして、半導体基板401には、第2光導波路R31の両端の第1コア層302の垂直面をそれぞれ露出させる段差D4a、D4bが形成されている。そして、段差D4a、D4bには、第1コア層402の垂直面を覆うように誘電体膜404a、404bがそれぞれ成膜されている。また、第1光導波路R31および第3光導波路R31では、半導体基板401上に誘電体膜404a、404bがそれぞれ成膜され、誘電体膜404a、404b上には、段差D4a、D4bをそれぞれ埋め込む埋め込み層405a、405bがそれぞれ形成されている。
【0063】
なお、第2光導波路R32を半導体、第1光導波路R31および第3光導波路R33を半導体以外の材料にて構成する場合、例えば、半導体基板401およびクラッド層403としてInP、第1コア層402としてGaInAsP、埋め込み層405a、405bとしてポリイミドを用いることができる。また、誘電体膜404a、404bとしては、例えば、SiN膜またはSiO2膜を単層で用いるようにしてもよいし、SiN膜とSiO2膜との積層構造を用いるようにしてもよい。なお、第2光導波路R32と屈折率が異なっていれば、第1光導波路R31および第3光導波路R33は必ずしも同一の構造である必要はない。
【0064】
このように半導体光導波路の両端に他の材料で構成された光導波路を集積した場合においても、半導体光導波路とその他の材料で構成された光導波路との結合面における反射率を低減させることができる。また、誘電体膜404a、404bをSiN膜とSiO2膜との積層構造で形成した場合、SiN膜とSiO2膜との配置順序を変えることにより、反射波の位相を変えることができ、半導体光導波路とその他の材料で構成された光導波路との結合面における反射率を増加させることもできる。また、半導体以外の材料で構成された光導波路のコア層はなくてもよく、さらに、材料の屈折率が1、すなわち空気であってもよい。また、第2光導波路R32に電極を設け、電流注入により利得を持つように構成することにより、へき開によりウェハから素子列を切り出すことなく、半導体レーザを第2光導波路R32に形成することができる。
【0065】
また、エッチングにより半導体基板401上に段差D4a、D4bを形成し、ウェハの状態で成膜を行うことにより、異なる方向を向いた複数の垂直面に一度に反射防止膜を形成することができる上、ウェハのままで全ての素子の両端面に一度に形成することができるため、コーティングプロセスを簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の集積光導波路は、半導体レーザやその他の光半導体素子、あるいはこれらの集積構造に利用することができ、半導体のみでは得られない新しい特性を有する光導波路や光半導体素子を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図、図1(b)は図1(a)のA−A´線で切断した断面図、図1(c)は図1(a)のB−B´線で切断した断面図である。
【図2】図1の集積光導波路における第1導波路R1と第2導波路R2との間のSiN膜104の膜厚と反射率との関係を示す図である。
【図3】図1の集積光導波路の製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図である。
【図5】図4の集積光導波路における第1導波路R11と第2導波路R12との間のSiO2膜204bの膜厚と反射率との関係を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る集積光導波路の概略構成を光導波方向に沿って示す断面図である。
【図8】屈折率差と反射率の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
R1、R11、R21、R31 第1光導波路
R2、R12、R22、R32 第2光導波路
R23、R33 第3光導波路
D、D2、D3a、D3b、D4a、D4b 段差
101、201、301、401 半導体基板
102、202、302、402 第1コア層
103、203、303、403 クラッド層
104、204a、204b、304、404a、404b 誘電体膜
105、205、305 下部クラッド層
106、206、306 第2コア層
107、207、307 上部クラッド層
108、405a、405b 埋め込み層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光導波路と、
前記第1光導波路に光学的に結合され、前記第1光導波路と屈折率の異なる第2光導波路と、
前記第1光導波路と前記第2光導波路との結合面に介挿され、前記第1光導波路および前記第2光導波路と屈折率の異なる誘電体膜とを備えることを特徴とする集積光導波路。
【請求項2】
基板上に形成された第1光導波路と、
前記第1光導波路の垂直面を露出させるように前記基板に形成された段差と、
前記段差を埋め込むように前記基板上に形成され、前記第1光導波路と屈折率の異なる第2光導波路と、
少なくとも前記段差部分の垂直面に成膜され、前記第1光導波路および前記第2光導波路と屈折率の異なる誘電体膜とを備えることを特徴とする集積光導波路。
【請求項3】
前記誘電体膜は、前記第1光導波路および前記第2光導波路の双方と屈折率の異なる単層膜または互いに屈折率の異なる材料が積層された多層膜であることを特徴とする請求項1または2記載の集積光導波路。
【請求項4】
前記第1光導波路と前記第2光導波路との屈折率差は0.5以上であり、前記単層膜または前記多層膜の少なくとも一層の屈折率は、前記第1光導波路の屈折率と前記第2光導波路の屈折率との間の屈折率であることを特徴とする請求項3記載の集積光導波路。
【請求項5】
前記第1光導波路および前記第2光導波路は半導体基板上に形成され、前記第1光導波路または前記第2光導波路の少なくともいずれか一方の一部もしくは全部が半導体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の集積光導波路。
【請求項6】
前記第1光導波路および前記第2光導波路を伝搬する光の波長をλ0、前記単層膜または前記多層膜の少なくとも一層の屈折率をNiとすると、前記単層膜または前記多層膜の少なくとも一層の膜厚が、
(λ0/(8Ni)〜3λ0/(8Ni))+λ0/(2Ni)×m
(m=0,1,2,・・・)
であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の集積光導波路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の集積光導波路の少なくとも1種類が2つ以上縦続接続されていることを特徴とする集積光導波路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の集積光導波路が用いられていることを特徴とする光素子。
【請求項9】
基板上に第1光導波路を形成する工程と、
前記第1光導波路のエッチング加工を行うことにより、前記第1光導波路の垂直面を露出させる段差を前記基板に形成する工程と、
前記第1光導波路と屈折率の異なる誘電体膜を前記段差部分の垂直面に成膜する工程と、
前記第1光導波路および前記誘電体膜と屈折率の異なる第2光導波路を前記段差に埋め込む工程とを備えることを特徴とする集積光導波路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−106587(P2006−106587A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296269(P2004−296269)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】