集積化ケミカルシステムと集積化光エネルギー変換システム
【課題】 光化学システム,電気化学システム,光エネルギー変換システムなどの小型・低コスト・高性能化を実現する。
【解決手段】
本発明の集積化ケミカルシステムおよび集積化光エネルギー変換システムは,両面が露出した半導体薄膜,集光レンズ,光導波路,マイクロ流路などからなる。これらは,光/電気/化学/液体/気体/固体が融合して組み込まれた集積回路とみなすことができ,課題解決の有力手段となる。
【解決手段】
本発明の集積化ケミカルシステムおよび集積化光エネルギー変換システムは,両面が露出した半導体薄膜,集光レンズ,光導波路,マイクロ流路などからなる。これらは,光/電気/化学/液体/気体/固体が融合して組み込まれた集積回路とみなすことができ,課題解決の有力手段となる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,集積化ケミカルシステム(ICS),およびそれを応用した薄膜水素/酸素ガス発生装置(TF−HOG)と集積化エネルギー変換システム(ILECS)に係り,特に,薄膜の表・裏面が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは近接しているICS,液体および/または気体の流路が形成されているICS,ギャップ部に他のギャップ部と異なる種類の液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体が挿入されているICS,ギャップ部間を連結する流路が形成されているICS,成長基板に形成した薄膜を剥離することにより作製するICS,ギャップ部に相当する部分に除去可能な材料をパターン化して配置した薄膜の積層構造を形成した後,除去可能な材料を除去することにより作製するICS,半導体薄膜の表裏両面が電解質と接するかまたは近接したTF−HOG,集光レンズによりTF−HOGに照射光をガイドするようなTF−HOG,光導波路を含む光回路により照射光を光エネルギー変換デバイスまでガイドするようなILECS,光回路中に波長フィルタを含むようなILECS,光導波路を積層した3次元光回路を含むようなILECS,集光レンズ,光導波路の少なくとも1部が,インプリント法および/またはBuilt−in Mask法で作製されたILECS,および電解質およびガスを通すマイクロ流路が集積化されているILECSに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池などの光エネルギー変換デバイスや蓄電池など光化学・電気化学的なプロセスを含むデバイスは,通常,反応容器を用いるため,小型・集積化・高効率化・高機能化が困難という課題がある。
【0003】
クリーンな光エネルギー変換方法として,酸化物半導体を用いたHOGがある。その中の有望な方式として,2種類の半導体粒子を電解質に分散させ,粒子間のエネルギー伝達を利用するタイプが知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら,分散系であるため,粒子間の位置関係の制御が困難でエネルギー伝達効率の適正化ができない,そのため光エネルギーの変換効率が低い(1%以下)という課題がある。
【0004】
もうひとつのクリーンな光エネルギー変換方法として,太陽電池(Solar Cell(SC))がある。SCとしては,半導体パネルを敷き詰めたパネル型太陽電池,および大規模なレンズやミラーを用いた集光型太陽電池が主流である。しかしながら,前者では,高価なSiを多量に使用するためコストが高くなるという課題がある。後者では,バルク光学系を用いるため,コストが高くなるとともに,サイズが大きくなるという課題がある。
【0005】
【非特許文献1】 「夢の人工合成」Newton「次世代テクノロジー」ニュートンプレス.
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は,光化学,電気化学などのケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することにある。また,本発明の他の目的は,SCやHOGの光エネルギー変換効率を向上させることにある。また,本発明の他の目的は,半導体材料消費量を減少させ,SCやHOGのコストを下げることにある。また,本発明の他の目的は,集光光学系のサイズを小さくすることにある。また,本発明の他の目的は,SCやHOGの集光光学系のコストを下げることにある。また,本発明の他の目的は,HOGで発生するガスの収集を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るICSは,薄膜の表および裏の表面がともに露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0008】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,複数の薄膜が間隔をあけて隣接し,該薄膜の2面以上の表面が露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0009】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に液体および/または気体の流路が形成されていることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0010】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,流路がパターン化されていることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0011】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,ギャップ部の少なくとも一つが,他のギャップ部に含まれる液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と異なる種類の液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体を含むことを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0012】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,ギャップ部間を連結する流路が形成されていることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0013】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,薄膜が,成長基板に形成した薄膜を基板から剥離することにより作製されることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0014】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に相当する部分に除去可能な材料をパターン化して配置してなる積層構造を形成した後,上記除去可能な材料を除去することによりギャップ部を形成することを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係るTF−HOGは,pinまたはpn接合を有する半導体薄膜からなる半導体コアのp型半導体表面およびn型半導体表面がともに露出し,両表面が電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を間隔をあけて隣接させてなる半導体コアを備え,前記半導体薄膜それぞれの表および/または裏の表面が露出し電解質と接するかまたは間隔をあけて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0017】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を,それらより広いエネルギーギャップを有する薄膜を介して積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0019】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,波長の異なる光を半導体コアの表面,裏面から別々に照射することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0020】
本発明の第3の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,集光レンズまたは集光レンズアレイが,TF−HOGに接して,または間隔をあけて隣接して配置されていることを特徴とするものである。これにより,半導体材料消費量を減少させ,HOGのコストを下げることができる。
【0021】
本発明の第4の態様に係るILECSは,集光レンズまたは集光レンズアレイと接して,または間隔をあけて隣接して配置された光導波路を備え,該光導波路を含む光回路の途中または端部または該光回路に接続された光ファイバの端部に光エネルギー変換デバイスを配置したことを特徴とするものである。これにより,ILECSの光エネルギー変換効率を向上させ,サイズを小型化し,コストを低下させることができる。
【0022】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,光回路の一部に波長フィルタを設けたことを特徴とするものである。これにより,ILECSの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0023】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,波長フィルタで分波された光を異なる分光感度特性を有する光エネルギー変換デバイスに誘導することを特徴とするものである。これにより,ILECSの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0024】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,光エネルギー変換デバイスがHOGおよび/またはソラーセル(SC)であることを特徴とすることができる。
【0025】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,光導波路を積層した3次元光回路を含むことを特徴とするものである。これにより,光エネルギー変換システムの光エネルギー変換効率を向上させ,サイズを小型化することができる。
【0026】
発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,集光レンズ,光導波路の少なくとも1部が,インプリント法および/またはBuilt−in Mask法で作製されたことを特徴とするものである。これにより,ILECSのコストを低下させることができる。
【0027】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,電解質および/またはガスを通すマイクロ流路が集積化されていることを特徴とするものである。これにより,ILECSのサイズを小型化し,コストを低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に,本実施の形態を,図面を参照して説明する。各図において,同一の符号をふされたものは同様の要素を示しており,重複した説明は省略される。以下の記載は本発明が適用可能な実施形態を説明するものであって,本発明の範囲がこの記載に限定されるものではない。説明の明確化のため,以下の記載は,適宜,省略及び簡略化がなされている。また,当業者であれば,以下の実施形態の各要素を,本発明の範囲において容易に変更,追加,変換することが可能であろう。
【0029】
[第1実施形態]
図1は本発明によるICSの構造例の模式図である。例として4つ示した。第1例では,薄膜11aと薄膜21bがスペーサ1dを介して積層されている。薄膜の表および裏面がともに露出部を有し,電解質1cと接するかまたは近接するように配置されている。ここで,電解質は,通常液体であるが,固体であってもよい。また,電解質の代わりに,他の液体・気体・固体を用いることもできる。第2例では,薄膜1と基板1eにのった薄膜2が積層されている。この積層構造のギャップ部に,液体または気体のマイクロ流路(MFC)1fが配置される。ここで用いた「マイクロ」とは,微細なサイズを意味し,典型的には,ミリスケールからナノスケールの範囲を代表しているものとする。MFCとしては,縦方向の閉じ込めを行ったスラブ型,および縦横方向の閉じ込めを行ったチャネル型などの形態がある。チャネル型の場合,ICSを上方から見ると,MFCがパターン化されて形成されている。第3例では,薄膜1と薄膜2が積層されており,MFCが多層に形成されている。さらに,層間を連結する流路が形成されている。最外部の薄膜の両面側にMFCを配置する場合は,カバー層1gが必要になる。第3例において層間を連結する流路が形成されていない例が第4例である。この場合,各層のMFCに異なる液体・気体を入れることができる。
【0030】
図2は,本発明によるICSにおける作製プロセスの模式図である。成長基板11e1に薄膜1を作製し,成長基板21e2に薄膜2を作製する。これらをスペーサを介して積層し,成長基板を除去する。これを電解質に浸すことにより,図1の第1例の構成が実現できる。スペーサは,薄膜1,2形成時に,部分的なエッチングや膜成長などにより作製することもできる。積層後,成長基板の一方のみを除去することにより,図1の第2例の構成が実現できる。薄膜の積層は,成長基板除去後に行ってもよい。
【0031】
図3は,本発明によるICSにおける他の作製プロセスの模式図である。基板11e上に,除去可能材料のフィルム(Removable Film)1hをパターン化して作製する。つぎに,スペーサ材料を埋め込む。この後,必要に応じてCMPなどの平坦化処理を行ってもよい。つぎに,薄膜1を形成する。パターン化が必要な場合は,薄膜1のない部分にRemovable Filmを埋め込んで平坦化することが望ましい。リフトオフ法,エッチング法,選択成長法など,あるいはこれらを組み合わせた方法が使用できる。同様のプロセスを繰り返し,薄膜2さらにカバー層を形成する。これをRemovable Filmを溶かす液体または気体にさらし,Removable Filmを除去する。ギャップ部に液体または気体を入れることにより,多層のMFCが形成でき,図1の第3例の構成が実現できる。薄膜がベタ膜の場合は,図1の第4例の構成が実現できる。スペーサは,薄膜1,2形成時に,部分的なエッチングや膜成長などによっても作製することができる。この場合は,スペーサは薄膜1,2と同じ材料で作られることになる。
【0032】
薄膜の材料としては,例えば,TiOx,ZnO,Pt−WO3,Pt−SrTiO3:Cr−Ta,Si,SiO2など種々のものを用いることができる。除去可能材料としては,例えば,Cu,Cr,Niなどの各種金属,フォトレジスト,ポリビニルアルコールなどの各種ポリマ,SiO2,Siなどの各種誘電体・半導体などエッチャントが広く知られている材料を用いることができる。
【0033】
以上述べたような,ICSにより,光化学,電気化学などのケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。ICSは,特に以下に述べるTH−HOGやILECSで有効となる。
【0034】
[第2実施形態]
図4は,従来の典型的な光エネルギー変換デバイスの例として示したSolar Cell(SC)およびHOGの構造とエネルギー準位の模式図である。SC(I)では,pin(またはpn)構造の半導体(Siなど)2aが2つの電極2b,2cによりサンドイッチされている。半導体に光が当たると電子4およびホール5が発生し,電流が流れ,太陽電池となる。SC(II)では,ZnO,TiOxなどのn型半導体が電極と電解質2dにはさまれている。半導体に光が当たると,電子は電極2b側へ流れる。ホールは,電解質を通って,対向する電極2cに吸収される。これにより太陽電池となる。半導体がp型の場合は,電子とホールの流れが逆転する。半導体表面に,色素など,半導体のバンドギャップよりエネルギーギャップの狭い分子・材料を吸着・形成することにより,分光増感を行うことができる(図4のエネルギー図はこの場合を表している)。HOGでは,半導体1(例えばPt−WO3など)3a’と半導体2(例えばPt−SrTiO3:Cr−Taなど)3e’が粒子として電解質3d’に浸されている。半導体1は波長λ1の光を吸収し,ホールがOH−と結合して酸素が発生する。電子は電解質中のイオンを介して半導体2に到達し,そこで,波長λ2の光で励起されてH+結合し,水素を発生する。
【0035】
上記従来のHOGでは,電子移動が分散された粒子間で起こるため,エネルギー伝達効率を最適化することが困難である。そこで,以下に述べるようなTF−HOGを考案した。図5は,本発明によるTF−HOGの構造例とエネルギー準位の模式図である。図5(a)に示すTF−HOGでは,pin(またはpn)接合構造を持つ半導体6aからなる半導体コア6fを用いる。この半導体コアは,典型的には,厚さ1nm−10μmオーダの薄膜であり,表,裏の両面が電解質6dに接して,または間隔をおいて隣接している。半導体コアに光を照射すると,電子とホールが分離し,電子が水素を,ホールが酸素を発生する。半導体の材料としては,Siなどが使用できる。
【0036】
図5(b)に示すTF−HOGでは,半導体13aと半導体23eが間隔をあけて隣接してなる半導体コア3fを用いる。半導体1および2は,典型的には,厚さ1nm−10μmオーダの薄膜であり,表,裏の両面または片面が,電解質に接して,または間隔をおいて隣接している。半導体1,2の間隔は,例えば1−1000μmのオーダーである。半導体1は波長λ1の光を吸収し,ホールがOH−と結合して酸素が発生する。電子は電解質中のイオンを介して半導体2に到達し,そこで,波長λ2の光で励起されてH+と結合し,水素を発生する。このメカニズムは図4に示したHOGと同じであるが,半導体1,2の配置が設計通り制御できるため,配置の適正化による光エネルギー変換効率の増加が期待できる。半導体1,2として,例えばPt−WO3,Pt−SrTiO3:Cr−Taなどの金属酸化物薄膜を用いることができる。また製膜法としては,スパッタリング,蒸着,Chemical Vapor Deposition(CVD),Atomic Layer Deposition(ALD)などがある。
【0037】
図5(c)に示すTF−HOGは,図5(b)において電解質をSiO2などのワイドギャップ材料3gにより置き換えた構造を持つ。半導体1と2の間に挿入されたワイドギャップ材料により,光によって生成した電子とホールが効率よく分離でき,変換効率を向上させることができる。半導体1から半導体2への電子遷移は,ワイドギャップ材料のバンド内準位(欠陥やドーパントに起因する準位)を通すとより高効率となる。
【0038】
図5(d)に示すTF−HOGは,図5(c)においてワイドギャップ材料を省いた構造を持つ。ワイドギャップ材料によるバリアがなくなるため,光によって生成した電子とホールの分離効率が低下するおそれはあるが,構造が単純という利点がある。
【0039】
以上の実施例において,半導体に「ナローギャップ材料をコーティングする」,あるいは「レーザ色素,ルテニウム色素などの分子を吸着させる」ことにより,分光増感が可能となる。これにより,吸収波長帯の制御が可能となり,光エネルギー変換効率を向上させることができる。また,半導体に共役ポリマなどの有機半導体を用いることもできる。有機半導体を使用する場合は,有機CVDやMolecular Layer Deposition(MLD)などにより,キャリア伝達方向に分子鎖を配向させること,あるいは分子鎖内部の分子配列を制御することが有効である。
【0040】
図6−図9は,図5に示した構造のバリエーションとして提供されるTF−HOGの立体構造例の模式図である。ここでは,代表例として,図5の(a)および(b)の構造を例として用いたが,その他の構造にも同様の考え方が適用できる。図6では,半導体コアがベタ膜からなっている。図7では半導体コアが分割配置され,図8では半導体コアに窓があいている。光照射の方向は,基本的にどちらの面側でもよい。2波長以上を用いる場合は,光吸収帯が波長にマッチングした半導体側から光照射することが望ましい。図9は,図5(b)の構造において,半導体1および2を横に並べ,半導体コア13f1,半導体コア23f2とした例である。半導体コア1,2をモザイク上に配置してある。この場合,イオンは主として面内方向に流れる。光利用効率の観点から,光吸収帯が波長にマッチングした半導体に選択的に光を照射することが望ましい(例えば,λ1は半導体1へ,λ2は半導体2へ)。
【0041】
[第3実施形態]
図10は,本発明によるTF−HOGの構造例の模式図である。集光レンズ10が接して,または間隔をあけて隣接して,TF−HOG12内部の半導体コアにカップルしている。これにより,半導体コアの面積,すなわち部材の量を節減することができ,低コスト化が可能となる。集光レンズ/TF−HOG対をアレイ状に並べることにより,取得エネルギー量が増大する。
[第4実施形態]
【0042】
図11は,光導波路13aを導入したILECSの構造例の模式図である。集光レンズと接して,または間隔をあけて隣接して光導波路が配置されている。集光レンズで集めた光を光導波路に入射させ,SCやTF−HOGの中の半導体,半導体コアに導き,光エネルギー変換する。いくつかの光導波路を合流させることにより,必要なSCやTF−HOGを減らすことができる。SCやTF−HOGは,基体14に集積化することもできるし,外部に置き,光導波路と光ファイバ13bなどで接続することもできる。室外で集光した光を光ファイバを用いてSCやTF−HOGにまで伝送することにより,SCやTF−HOGを良好な環境条件(例えば室内)で使用することができる。また,波長フィルタ13cを集積化することにより分波し,各波長帯の光をその波長帯にマッチングしたSC,TF−HOGに照射することができる。これにより,エネルギー変換効率が増大する。図12は,集光レンズ,光導波路,CS/TF−HOGを大規模に集積化した例である。この場合,多数多種の部品を多数配置しなければならない。これについては,異種部材を一括して移植配置できる
Photolithographic Packaging with Selectively Occupied Repeated Transfer(PL−Pack with SORT)を利用することにより,少ない工程で低コストに実行することができる(例えば非特許文献2)。
【0043】
図13は,集光レンズ−光導波路結合部および光導波路−SC/TF−HOG結合部の断面図である。集光レンズとしては,後述のインプリントによるレンズ10aまたはBuilt−in Maskによるレンズ10bを,また光導波路としては導波路フィルム15,15’の使用を想定した。集光レンズ−光導波路結合部については,導波路コアの45°ミラー面がdown−taperかup−taperかでレンズの配置位置が異なる。前者では,導波路フィルムのクラッドフィルム側にレンズを置く。一方,後者では,導波路コア側にレンズを置く。導波路フィルムは,スタンドアローンで使用することもできるし,基体16上に置くこともできる。光導波路−SC/TF−HOG結合部については,導波路コアの45°ミラー面がdown−taperの場合,導波路フィルムのクラッドフィルム側にSC/TF−HOGを置く。一方,ミラー面がup−taperの場合,導波路コア側にSC/TF−HOGを置く。導波路フィルムは,スタンドアローンで使用することもできるし,基体16上に置くこともできる。また,SC/TF−HOGはフィルムに埋め込むこともできる。レンズ,導波路フィルム,埋め込みフィルムの材質としては,例えば,熱可塑性,光硬化性,photo−refractive,耐熱性ポリマやガラスを用いることができる。製法としては,通常のエッチングに加えて,インプリント法,Built−in Mask法など種々の方法が使用できる。
【0044】
図14は,光導波路−SC/TF−HOG結合部において,複数の積層した導波路フィルムでSC/TF−HOGをはさみ,複数方向から光照射を行う例である。この場合,光回路は3次元構造となる。例えば,フィルタで光を分岐し異なる波長の光を異なる方向から照射する。この手法は,図5(b),(c)および(d)の構成のように,異なる光吸収帯をもつ材料が存在する場合,特に有効である。
【0045】
図15は,熱またはUVインプリントを用いたILECSの作製プロセスである。樹脂20をモールド21によりレンズをアレイ状に成形し,SC/TF−HOG上に,半導体,半導体コアに位置合わせして配置する。熱またはUVインプリントとしては,広く知られた既存の手法が使える(例えば非特許文献3)。光導波路を含むILECSでは,レンズは,導波路の45°ミラー部に位置合わせして配置する。レンズの形状は,必ずしも円である必要はない。4角形などの多角形や楕円など用途に応じて種々のパターンを適用することができる。
【0046】
図16は,Built−in Mask法を用いたILECSの作製プロセスである。レンズアレイに対応する位置に窓をあけたBuilt−in Mask23に,剥離層28,クラッド層24を形成し,その上に感光層25を形成する。Built−in Mask側から光を傾けて照射することにより,感光層が感光し,斜めの壁をもった硬化または屈折率変化領域26を作製する。入射光またはBuilt−in Maskを回転させることにより,集光レンズアレイが作製できる。これを,例えば,Gel−Pakなどを表面に配置した支持基板27に貼り付け,剥離層を除去し,支持基板にピックアップする。必要に応じて,レンズ壁面にメタルや誘電体などの反射膜をコーティングする。このようにして完成したレンズアレイをSC/TF−HOG上に,半導体,半導体コアに位置合わせして配置する。固定には,例えば,接着剤やUV硬化性材料などが使用できる。光導波路を含むILECSでは,レンズは,導波路の45°ミラー部に位置合わせして配置する。Built−in Maskの窓の形状は,必ずしも円である必要はない。4角形などの多角形や楕円など用途に応じて種々のパターンを適用することができる。
【0047】
図17は,ILECSにMFCを集積化した構造例である。図17(a)では,図5(a)のTF−HOGの半導体コアに光を照射し,一方の面からO2,他方の面からH2が生じる。これらをそれぞれの面側に設けたMFC1 30およびMFC2 31に通すことにより,O2,H2が分離収集できる。図17(b)では,半導体コアに導波路フィルムを接近させて配置し,45°ミラーからの光を照射する方式である。この例のように導波路コアが電解質に露出している場合は,45°傾斜による全反射が起こらなくなる。端面に金属や誘電体などの反射膜をつける必要がある。図17(c)では,図5(c),(d)の半導体コアに,光導波路を用いて両面から光を照射する方式である。3次元光回路を利用している。図17(d)では,図4のSC(II)において,光導波路を用いて半導体コアに光を照射する方式である。これにより,従来必要であった透明電極が不要になり,コスト低減に役立つ。この例では,ガスではなく電気を発生するので,MFC32は,電解液のリフレッシュなどに利用することができる。図18は,二つのMFCをそれぞれパターンニングし,各TF−HOGからのガスを集めるガス収集回路を形成した例である。
【0048】
第4実施形態では,描画の単純化のため,オーバークラッド無しの導波路フィルムを例にとって説明してきた。同様の原理が,オーバークラッド付きの導波路フィルムを用いた場合にも成り立つことはいうまでもない。
【0049】
第2−4実施形態に示したTF−HOGおよびILECSの作製方法の一つとして,第1実施形態の図2および3で述べたプロセスが適用できる。
【0050】
第1−4実施形態に示したシステムは,両面が露出した半導体薄膜,集光レンズ,光導波路,マイクロ流路などからなる。これらは,光/電気/化学/液体/気体/固体が融合した集積回路みなすことができ,ケミカルシステム,光エネルギー変換システムなどの小型・低コスト・高性能化の有力手段となる。また,ICSおよびILECSはエネルギー以外の分野,例えば,バイオテクノロジー,物質合成,反応化学などにおいても有効である。
【0051】
【非特許文献2】 T.Yoshimura,K.Kumai,T.Mikawa,and O.Ibaragi,“Photolithographic Packaging with Selectively Occupied Repeated Transfer(PL−Pack with SORT)for Scalable Optical Link Multi−chip−module(S−FOLM),”IEEE Trans.Electron.Packag.Manufact.,vol.25,pp.19−25,2002..
【非特許文献3】 松井真二,“新しいアプローチによるチップ作製技術,” 応用物理,vol.74,pp.501−505,2005..
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態による集積化ケミカルシステム(ICS)の構造例の模式図である。
【図2】 本発明の第1実施形態よるICSにおける作製プロセスの模式図である。
【図3】 本発明の第1実施形態よるICSにおける作製プロセスの模式図である。
【図4】 従来の典型的な光エネルギー変換デバイスの例として示したSolar Cell(SC)およびH2/O2 Generator(HOG)の構造とエネルギー準位の模式図である。
【図5】 本発明の第2実施形態によるThin−Film HOG(TF−HOG)の構造例とエネルギー準位の模式図である。
【図6】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図7】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図8】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図9】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図10】 本発明の第3実施形態によるTF−HOGの構造例の模式図である。
【図11】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入した集積化エネルギー変換システム(ILECS)の構造例の模式図である。
【図12】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSの構造例の模式図である。
【図13】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおける45°導波路ミラー周辺部の構造例の模式図である。
【図14】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおける45°導波路ミラー周辺部の構造例の模式図である。
【図15】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおける熱またはUVインプリントを用いたILECSの作製プロセスである。
【図16】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおけるBuilt−in Mask法を用いたILECSの作製プロセスである。
【図17】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおけるMFCを集積化した部分の構造例である。
【図18】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおけるMFCを集積化した部分の構造例である。
【符号の説明】
薄膜1 1a,薄膜2 1b,電解質 1c,スペーサ 1d,基板 1e,マイクロ流路(MFC) 1f,カバー層 1g,成長基板1 1e1,成長基板2 1e2,除去可能材料フィルム(Removable Film) 1h,半導体 2a,電極 2b,電解質2d,電極 2c,半導体1 3a,3a’,電解質 3d,3d’,半導体2 3e,3e’,半導体コア 3f,半導体コア1 3f1,半導体コア2 3f2,ワイドギャップ材料 3g,電子 4,ホール 5,半導体 6a,半導体コア 6f,電解質 6d,集光レンズ 10,SC 11,TF−HOG 12,光導波路 13a,光ファイバ 13b,波長フィルタ 13c,基体 14,インプリントによるレンズ 10a,Built−in Maskによるレンズ 10b,導波路フィルム 15,15’,基体 16,樹脂 20,モールド 21,反射膜 22,Built−in Mask 23,クラッド層 24,感光層 25,硬化または屈折率変化領域 26,支持基板 27,剥離層 28,MFC1 30,MFC2 31,MF32
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,集積化ケミカルシステム(ICS),およびそれを応用した薄膜水素/酸素ガス発生装置(TF−HOG)と集積化エネルギー変換システム(ILECS)に係り,特に,薄膜の表・裏面が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは近接しているICS,液体および/または気体の流路が形成されているICS,ギャップ部に他のギャップ部と異なる種類の液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体が挿入されているICS,ギャップ部間を連結する流路が形成されているICS,成長基板に形成した薄膜を剥離することにより作製するICS,ギャップ部に相当する部分に除去可能な材料をパターン化して配置した薄膜の積層構造を形成した後,除去可能な材料を除去することにより作製するICS,半導体薄膜の表裏両面が電解質と接するかまたは近接したTF−HOG,集光レンズによりTF−HOGに照射光をガイドするようなTF−HOG,光導波路を含む光回路により照射光を光エネルギー変換デバイスまでガイドするようなILECS,光回路中に波長フィルタを含むようなILECS,光導波路を積層した3次元光回路を含むようなILECS,集光レンズ,光導波路の少なくとも1部が,インプリント法および/またはBuilt−in Mask法で作製されたILECS,および電解質およびガスを通すマイクロ流路が集積化されているILECSに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池などの光エネルギー変換デバイスや蓄電池など光化学・電気化学的なプロセスを含むデバイスは,通常,反応容器を用いるため,小型・集積化・高効率化・高機能化が困難という課題がある。
【0003】
クリーンな光エネルギー変換方法として,酸化物半導体を用いたHOGがある。その中の有望な方式として,2種類の半導体粒子を電解質に分散させ,粒子間のエネルギー伝達を利用するタイプが知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら,分散系であるため,粒子間の位置関係の制御が困難でエネルギー伝達効率の適正化ができない,そのため光エネルギーの変換効率が低い(1%以下)という課題がある。
【0004】
もうひとつのクリーンな光エネルギー変換方法として,太陽電池(Solar Cell(SC))がある。SCとしては,半導体パネルを敷き詰めたパネル型太陽電池,および大規模なレンズやミラーを用いた集光型太陽電池が主流である。しかしながら,前者では,高価なSiを多量に使用するためコストが高くなるという課題がある。後者では,バルク光学系を用いるため,コストが高くなるとともに,サイズが大きくなるという課題がある。
【0005】
【非特許文献1】 「夢の人工合成」Newton「次世代テクノロジー」ニュートンプレス.
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は,光化学,電気化学などのケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することにある。また,本発明の他の目的は,SCやHOGの光エネルギー変換効率を向上させることにある。また,本発明の他の目的は,半導体材料消費量を減少させ,SCやHOGのコストを下げることにある。また,本発明の他の目的は,集光光学系のサイズを小さくすることにある。また,本発明の他の目的は,SCやHOGの集光光学系のコストを下げることにある。また,本発明の他の目的は,HOGで発生するガスの収集を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るICSは,薄膜の表および裏の表面がともに露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0008】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,複数の薄膜が間隔をあけて隣接し,該薄膜の2面以上の表面が露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0009】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に液体および/または気体の流路が形成されていることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0010】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,流路がパターン化されていることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0011】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,ギャップ部の少なくとも一つが,他のギャップ部に含まれる液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と異なる種類の液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体を含むことを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0012】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,ギャップ部間を連結する流路が形成されていることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0013】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,薄膜が,成長基板に形成した薄膜を基板から剥離することにより作製されることを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0014】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのICSは,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に相当する部分に除去可能な材料をパターン化して配置してなる積層構造を形成した後,上記除去可能な材料を除去することによりギャップ部を形成することを特徴とするものである。これにより,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係るTF−HOGは,pinまたはpn接合を有する半導体薄膜からなる半導体コアのp型半導体表面およびn型半導体表面がともに露出し,両表面が電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を間隔をあけて隣接させてなる半導体コアを備え,前記半導体薄膜それぞれの表および/または裏の表面が露出し電解質と接するかまたは間隔をあけて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0017】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を,それらより広いエネルギーギャップを有する薄膜を介して積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0019】
本発明の第2の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,波長の異なる光を半導体コアの表面,裏面から別々に照射することを特徴とするものである。これにより,HOGの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0020】
本発明の第3の態様に係るもうひとつのTF−HOGは,集光レンズまたは集光レンズアレイが,TF−HOGに接して,または間隔をあけて隣接して配置されていることを特徴とするものである。これにより,半導体材料消費量を減少させ,HOGのコストを下げることができる。
【0021】
本発明の第4の態様に係るILECSは,集光レンズまたは集光レンズアレイと接して,または間隔をあけて隣接して配置された光導波路を備え,該光導波路を含む光回路の途中または端部または該光回路に接続された光ファイバの端部に光エネルギー変換デバイスを配置したことを特徴とするものである。これにより,ILECSの光エネルギー変換効率を向上させ,サイズを小型化し,コストを低下させることができる。
【0022】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,光回路の一部に波長フィルタを設けたことを特徴とするものである。これにより,ILECSの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0023】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,波長フィルタで分波された光を異なる分光感度特性を有する光エネルギー変換デバイスに誘導することを特徴とするものである。これにより,ILECSの光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0024】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,光エネルギー変換デバイスがHOGおよび/またはソラーセル(SC)であることを特徴とすることができる。
【0025】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,光導波路を積層した3次元光回路を含むことを特徴とするものである。これにより,光エネルギー変換システムの光エネルギー変換効率を向上させ,サイズを小型化することができる。
【0026】
発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,集光レンズ,光導波路の少なくとも1部が,インプリント法および/またはBuilt−in Mask法で作製されたことを特徴とするものである。これにより,ILECSのコストを低下させることができる。
【0027】
本発明の第4の態様に係るもうひとつのILECSは,電解質および/またはガスを通すマイクロ流路が集積化されていることを特徴とするものである。これにより,ILECSのサイズを小型化し,コストを低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に,本実施の形態を,図面を参照して説明する。各図において,同一の符号をふされたものは同様の要素を示しており,重複した説明は省略される。以下の記載は本発明が適用可能な実施形態を説明するものであって,本発明の範囲がこの記載に限定されるものではない。説明の明確化のため,以下の記載は,適宜,省略及び簡略化がなされている。また,当業者であれば,以下の実施形態の各要素を,本発明の範囲において容易に変更,追加,変換することが可能であろう。
【0029】
[第1実施形態]
図1は本発明によるICSの構造例の模式図である。例として4つ示した。第1例では,薄膜11aと薄膜21bがスペーサ1dを介して積層されている。薄膜の表および裏面がともに露出部を有し,電解質1cと接するかまたは近接するように配置されている。ここで,電解質は,通常液体であるが,固体であってもよい。また,電解質の代わりに,他の液体・気体・固体を用いることもできる。第2例では,薄膜1と基板1eにのった薄膜2が積層されている。この積層構造のギャップ部に,液体または気体のマイクロ流路(MFC)1fが配置される。ここで用いた「マイクロ」とは,微細なサイズを意味し,典型的には,ミリスケールからナノスケールの範囲を代表しているものとする。MFCとしては,縦方向の閉じ込めを行ったスラブ型,および縦横方向の閉じ込めを行ったチャネル型などの形態がある。チャネル型の場合,ICSを上方から見ると,MFCがパターン化されて形成されている。第3例では,薄膜1と薄膜2が積層されており,MFCが多層に形成されている。さらに,層間を連結する流路が形成されている。最外部の薄膜の両面側にMFCを配置する場合は,カバー層1gが必要になる。第3例において層間を連結する流路が形成されていない例が第4例である。この場合,各層のMFCに異なる液体・気体を入れることができる。
【0030】
図2は,本発明によるICSにおける作製プロセスの模式図である。成長基板11e1に薄膜1を作製し,成長基板21e2に薄膜2を作製する。これらをスペーサを介して積層し,成長基板を除去する。これを電解質に浸すことにより,図1の第1例の構成が実現できる。スペーサは,薄膜1,2形成時に,部分的なエッチングや膜成長などにより作製することもできる。積層後,成長基板の一方のみを除去することにより,図1の第2例の構成が実現できる。薄膜の積層は,成長基板除去後に行ってもよい。
【0031】
図3は,本発明によるICSにおける他の作製プロセスの模式図である。基板11e上に,除去可能材料のフィルム(Removable Film)1hをパターン化して作製する。つぎに,スペーサ材料を埋め込む。この後,必要に応じてCMPなどの平坦化処理を行ってもよい。つぎに,薄膜1を形成する。パターン化が必要な場合は,薄膜1のない部分にRemovable Filmを埋め込んで平坦化することが望ましい。リフトオフ法,エッチング法,選択成長法など,あるいはこれらを組み合わせた方法が使用できる。同様のプロセスを繰り返し,薄膜2さらにカバー層を形成する。これをRemovable Filmを溶かす液体または気体にさらし,Removable Filmを除去する。ギャップ部に液体または気体を入れることにより,多層のMFCが形成でき,図1の第3例の構成が実現できる。薄膜がベタ膜の場合は,図1の第4例の構成が実現できる。スペーサは,薄膜1,2形成時に,部分的なエッチングや膜成長などによっても作製することができる。この場合は,スペーサは薄膜1,2と同じ材料で作られることになる。
【0032】
薄膜の材料としては,例えば,TiOx,ZnO,Pt−WO3,Pt−SrTiO3:Cr−Ta,Si,SiO2など種々のものを用いることができる。除去可能材料としては,例えば,Cu,Cr,Niなどの各種金属,フォトレジスト,ポリビニルアルコールなどの各種ポリマ,SiO2,Siなどの各種誘電体・半導体などエッチャントが広く知られている材料を用いることができる。
【0033】
以上述べたような,ICSにより,光化学,電気化学などのケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。ICSは,特に以下に述べるTH−HOGやILECSで有効となる。
【0034】
[第2実施形態]
図4は,従来の典型的な光エネルギー変換デバイスの例として示したSolar Cell(SC)およびHOGの構造とエネルギー準位の模式図である。SC(I)では,pin(またはpn)構造の半導体(Siなど)2aが2つの電極2b,2cによりサンドイッチされている。半導体に光が当たると電子4およびホール5が発生し,電流が流れ,太陽電池となる。SC(II)では,ZnO,TiOxなどのn型半導体が電極と電解質2dにはさまれている。半導体に光が当たると,電子は電極2b側へ流れる。ホールは,電解質を通って,対向する電極2cに吸収される。これにより太陽電池となる。半導体がp型の場合は,電子とホールの流れが逆転する。半導体表面に,色素など,半導体のバンドギャップよりエネルギーギャップの狭い分子・材料を吸着・形成することにより,分光増感を行うことができる(図4のエネルギー図はこの場合を表している)。HOGでは,半導体1(例えばPt−WO3など)3a’と半導体2(例えばPt−SrTiO3:Cr−Taなど)3e’が粒子として電解質3d’に浸されている。半導体1は波長λ1の光を吸収し,ホールがOH−と結合して酸素が発生する。電子は電解質中のイオンを介して半導体2に到達し,そこで,波長λ2の光で励起されてH+結合し,水素を発生する。
【0035】
上記従来のHOGでは,電子移動が分散された粒子間で起こるため,エネルギー伝達効率を最適化することが困難である。そこで,以下に述べるようなTF−HOGを考案した。図5は,本発明によるTF−HOGの構造例とエネルギー準位の模式図である。図5(a)に示すTF−HOGでは,pin(またはpn)接合構造を持つ半導体6aからなる半導体コア6fを用いる。この半導体コアは,典型的には,厚さ1nm−10μmオーダの薄膜であり,表,裏の両面が電解質6dに接して,または間隔をおいて隣接している。半導体コアに光を照射すると,電子とホールが分離し,電子が水素を,ホールが酸素を発生する。半導体の材料としては,Siなどが使用できる。
【0036】
図5(b)に示すTF−HOGでは,半導体13aと半導体23eが間隔をあけて隣接してなる半導体コア3fを用いる。半導体1および2は,典型的には,厚さ1nm−10μmオーダの薄膜であり,表,裏の両面または片面が,電解質に接して,または間隔をおいて隣接している。半導体1,2の間隔は,例えば1−1000μmのオーダーである。半導体1は波長λ1の光を吸収し,ホールがOH−と結合して酸素が発生する。電子は電解質中のイオンを介して半導体2に到達し,そこで,波長λ2の光で励起されてH+と結合し,水素を発生する。このメカニズムは図4に示したHOGと同じであるが,半導体1,2の配置が設計通り制御できるため,配置の適正化による光エネルギー変換効率の増加が期待できる。半導体1,2として,例えばPt−WO3,Pt−SrTiO3:Cr−Taなどの金属酸化物薄膜を用いることができる。また製膜法としては,スパッタリング,蒸着,Chemical Vapor Deposition(CVD),Atomic Layer Deposition(ALD)などがある。
【0037】
図5(c)に示すTF−HOGは,図5(b)において電解質をSiO2などのワイドギャップ材料3gにより置き換えた構造を持つ。半導体1と2の間に挿入されたワイドギャップ材料により,光によって生成した電子とホールが効率よく分離でき,変換効率を向上させることができる。半導体1から半導体2への電子遷移は,ワイドギャップ材料のバンド内準位(欠陥やドーパントに起因する準位)を通すとより高効率となる。
【0038】
図5(d)に示すTF−HOGは,図5(c)においてワイドギャップ材料を省いた構造を持つ。ワイドギャップ材料によるバリアがなくなるため,光によって生成した電子とホールの分離効率が低下するおそれはあるが,構造が単純という利点がある。
【0039】
以上の実施例において,半導体に「ナローギャップ材料をコーティングする」,あるいは「レーザ色素,ルテニウム色素などの分子を吸着させる」ことにより,分光増感が可能となる。これにより,吸収波長帯の制御が可能となり,光エネルギー変換効率を向上させることができる。また,半導体に共役ポリマなどの有機半導体を用いることもできる。有機半導体を使用する場合は,有機CVDやMolecular Layer Deposition(MLD)などにより,キャリア伝達方向に分子鎖を配向させること,あるいは分子鎖内部の分子配列を制御することが有効である。
【0040】
図6−図9は,図5に示した構造のバリエーションとして提供されるTF−HOGの立体構造例の模式図である。ここでは,代表例として,図5の(a)および(b)の構造を例として用いたが,その他の構造にも同様の考え方が適用できる。図6では,半導体コアがベタ膜からなっている。図7では半導体コアが分割配置され,図8では半導体コアに窓があいている。光照射の方向は,基本的にどちらの面側でもよい。2波長以上を用いる場合は,光吸収帯が波長にマッチングした半導体側から光照射することが望ましい。図9は,図5(b)の構造において,半導体1および2を横に並べ,半導体コア13f1,半導体コア23f2とした例である。半導体コア1,2をモザイク上に配置してある。この場合,イオンは主として面内方向に流れる。光利用効率の観点から,光吸収帯が波長にマッチングした半導体に選択的に光を照射することが望ましい(例えば,λ1は半導体1へ,λ2は半導体2へ)。
【0041】
[第3実施形態]
図10は,本発明によるTF−HOGの構造例の模式図である。集光レンズ10が接して,または間隔をあけて隣接して,TF−HOG12内部の半導体コアにカップルしている。これにより,半導体コアの面積,すなわち部材の量を節減することができ,低コスト化が可能となる。集光レンズ/TF−HOG対をアレイ状に並べることにより,取得エネルギー量が増大する。
[第4実施形態]
【0042】
図11は,光導波路13aを導入したILECSの構造例の模式図である。集光レンズと接して,または間隔をあけて隣接して光導波路が配置されている。集光レンズで集めた光を光導波路に入射させ,SCやTF−HOGの中の半導体,半導体コアに導き,光エネルギー変換する。いくつかの光導波路を合流させることにより,必要なSCやTF−HOGを減らすことができる。SCやTF−HOGは,基体14に集積化することもできるし,外部に置き,光導波路と光ファイバ13bなどで接続することもできる。室外で集光した光を光ファイバを用いてSCやTF−HOGにまで伝送することにより,SCやTF−HOGを良好な環境条件(例えば室内)で使用することができる。また,波長フィルタ13cを集積化することにより分波し,各波長帯の光をその波長帯にマッチングしたSC,TF−HOGに照射することができる。これにより,エネルギー変換効率が増大する。図12は,集光レンズ,光導波路,CS/TF−HOGを大規模に集積化した例である。この場合,多数多種の部品を多数配置しなければならない。これについては,異種部材を一括して移植配置できる
Photolithographic Packaging with Selectively Occupied Repeated Transfer(PL−Pack with SORT)を利用することにより,少ない工程で低コストに実行することができる(例えば非特許文献2)。
【0043】
図13は,集光レンズ−光導波路結合部および光導波路−SC/TF−HOG結合部の断面図である。集光レンズとしては,後述のインプリントによるレンズ10aまたはBuilt−in Maskによるレンズ10bを,また光導波路としては導波路フィルム15,15’の使用を想定した。集光レンズ−光導波路結合部については,導波路コアの45°ミラー面がdown−taperかup−taperかでレンズの配置位置が異なる。前者では,導波路フィルムのクラッドフィルム側にレンズを置く。一方,後者では,導波路コア側にレンズを置く。導波路フィルムは,スタンドアローンで使用することもできるし,基体16上に置くこともできる。光導波路−SC/TF−HOG結合部については,導波路コアの45°ミラー面がdown−taperの場合,導波路フィルムのクラッドフィルム側にSC/TF−HOGを置く。一方,ミラー面がup−taperの場合,導波路コア側にSC/TF−HOGを置く。導波路フィルムは,スタンドアローンで使用することもできるし,基体16上に置くこともできる。また,SC/TF−HOGはフィルムに埋め込むこともできる。レンズ,導波路フィルム,埋め込みフィルムの材質としては,例えば,熱可塑性,光硬化性,photo−refractive,耐熱性ポリマやガラスを用いることができる。製法としては,通常のエッチングに加えて,インプリント法,Built−in Mask法など種々の方法が使用できる。
【0044】
図14は,光導波路−SC/TF−HOG結合部において,複数の積層した導波路フィルムでSC/TF−HOGをはさみ,複数方向から光照射を行う例である。この場合,光回路は3次元構造となる。例えば,フィルタで光を分岐し異なる波長の光を異なる方向から照射する。この手法は,図5(b),(c)および(d)の構成のように,異なる光吸収帯をもつ材料が存在する場合,特に有効である。
【0045】
図15は,熱またはUVインプリントを用いたILECSの作製プロセスである。樹脂20をモールド21によりレンズをアレイ状に成形し,SC/TF−HOG上に,半導体,半導体コアに位置合わせして配置する。熱またはUVインプリントとしては,広く知られた既存の手法が使える(例えば非特許文献3)。光導波路を含むILECSでは,レンズは,導波路の45°ミラー部に位置合わせして配置する。レンズの形状は,必ずしも円である必要はない。4角形などの多角形や楕円など用途に応じて種々のパターンを適用することができる。
【0046】
図16は,Built−in Mask法を用いたILECSの作製プロセスである。レンズアレイに対応する位置に窓をあけたBuilt−in Mask23に,剥離層28,クラッド層24を形成し,その上に感光層25を形成する。Built−in Mask側から光を傾けて照射することにより,感光層が感光し,斜めの壁をもった硬化または屈折率変化領域26を作製する。入射光またはBuilt−in Maskを回転させることにより,集光レンズアレイが作製できる。これを,例えば,Gel−Pakなどを表面に配置した支持基板27に貼り付け,剥離層を除去し,支持基板にピックアップする。必要に応じて,レンズ壁面にメタルや誘電体などの反射膜をコーティングする。このようにして完成したレンズアレイをSC/TF−HOG上に,半導体,半導体コアに位置合わせして配置する。固定には,例えば,接着剤やUV硬化性材料などが使用できる。光導波路を含むILECSでは,レンズは,導波路の45°ミラー部に位置合わせして配置する。Built−in Maskの窓の形状は,必ずしも円である必要はない。4角形などの多角形や楕円など用途に応じて種々のパターンを適用することができる。
【0047】
図17は,ILECSにMFCを集積化した構造例である。図17(a)では,図5(a)のTF−HOGの半導体コアに光を照射し,一方の面からO2,他方の面からH2が生じる。これらをそれぞれの面側に設けたMFC1 30およびMFC2 31に通すことにより,O2,H2が分離収集できる。図17(b)では,半導体コアに導波路フィルムを接近させて配置し,45°ミラーからの光を照射する方式である。この例のように導波路コアが電解質に露出している場合は,45°傾斜による全反射が起こらなくなる。端面に金属や誘電体などの反射膜をつける必要がある。図17(c)では,図5(c),(d)の半導体コアに,光導波路を用いて両面から光を照射する方式である。3次元光回路を利用している。図17(d)では,図4のSC(II)において,光導波路を用いて半導体コアに光を照射する方式である。これにより,従来必要であった透明電極が不要になり,コスト低減に役立つ。この例では,ガスではなく電気を発生するので,MFC32は,電解液のリフレッシュなどに利用することができる。図18は,二つのMFCをそれぞれパターンニングし,各TF−HOGからのガスを集めるガス収集回路を形成した例である。
【0048】
第4実施形態では,描画の単純化のため,オーバークラッド無しの導波路フィルムを例にとって説明してきた。同様の原理が,オーバークラッド付きの導波路フィルムを用いた場合にも成り立つことはいうまでもない。
【0049】
第2−4実施形態に示したTF−HOGおよびILECSの作製方法の一つとして,第1実施形態の図2および3で述べたプロセスが適用できる。
【0050】
第1−4実施形態に示したシステムは,両面が露出した半導体薄膜,集光レンズ,光導波路,マイクロ流路などからなる。これらは,光/電気/化学/液体/気体/固体が融合した集積回路みなすことができ,ケミカルシステム,光エネルギー変換システムなどの小型・低コスト・高性能化の有力手段となる。また,ICSおよびILECSはエネルギー以外の分野,例えば,バイオテクノロジー,物質合成,反応化学などにおいても有効である。
【0051】
【非特許文献2】 T.Yoshimura,K.Kumai,T.Mikawa,and O.Ibaragi,“Photolithographic Packaging with Selectively Occupied Repeated Transfer(PL−Pack with SORT)for Scalable Optical Link Multi−chip−module(S−FOLM),”IEEE Trans.Electron.Packag.Manufact.,vol.25,pp.19−25,2002..
【非特許文献3】 松井真二,“新しいアプローチによるチップ作製技術,” 応用物理,vol.74,pp.501−505,2005..
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態による集積化ケミカルシステム(ICS)の構造例の模式図である。
【図2】 本発明の第1実施形態よるICSにおける作製プロセスの模式図である。
【図3】 本発明の第1実施形態よるICSにおける作製プロセスの模式図である。
【図4】 従来の典型的な光エネルギー変換デバイスの例として示したSolar Cell(SC)およびH2/O2 Generator(HOG)の構造とエネルギー準位の模式図である。
【図5】 本発明の第2実施形態によるThin−Film HOG(TF−HOG)の構造例とエネルギー準位の模式図である。
【図6】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図7】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図8】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図9】 本発明の第2実施形態によるTF−HOGの立体構造例の模式図である。
【図10】 本発明の第3実施形態によるTF−HOGの構造例の模式図である。
【図11】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入した集積化エネルギー変換システム(ILECS)の構造例の模式図である。
【図12】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSの構造例の模式図である。
【図13】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおける45°導波路ミラー周辺部の構造例の模式図である。
【図14】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおける45°導波路ミラー周辺部の構造例の模式図である。
【図15】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおける熱またはUVインプリントを用いたILECSの作製プロセスである。
【図16】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおけるBuilt−in Mask法を用いたILECSの作製プロセスである。
【図17】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおけるMFCを集積化した部分の構造例である。
【図18】 本発明の第4実施形態による光導波路を導入したILECSにおけるMFCを集積化した部分の構造例である。
【符号の説明】
薄膜1 1a,薄膜2 1b,電解質 1c,スペーサ 1d,基板 1e,マイクロ流路(MFC) 1f,カバー層 1g,成長基板1 1e1,成長基板2 1e2,除去可能材料フィルム(Removable Film) 1h,半導体 2a,電極 2b,電解質2d,電極 2c,半導体1 3a,3a’,電解質 3d,3d’,半導体2 3e,3e’,半導体コア 3f,半導体コア1 3f1,半導体コア2 3f2,ワイドギャップ材料 3g,電子 4,ホール 5,半導体 6a,半導体コア 6f,電解質 6d,集光レンズ 10,SC 11,TF−HOG 12,光導波路 13a,光ファイバ 13b,波長フィルタ 13c,基体 14,インプリントによるレンズ 10a,Built−in Maskによるレンズ 10b,導波路フィルム 15,15’,基体 16,樹脂 20,モールド 21,反射膜 22,Built−in Mask 23,クラッド層 24,感光層 25,硬化または屈折率変化領域 26,支持基板 27,剥離層 28,MFC1 30,MFC2 31,MF32
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の表および裏の表面がともに露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とする集積化ケミカルシステム(ICS)。
【請求項2】
複数の薄膜が間隔をあけて隣接し,該薄膜の2面以上の表面が露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とするICS。
【請求項3】
請求項1−2に記載のICSにおいて,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に液体および/または気体の流路が形成されていることを特徴とするICS。
【請求項4】
請求項3に記載のICSにおいて,流路がパターン化されていることを特徴とするICS。
【請求項5】
請求項4に記載のICSにおいて,ギャップ部の少なくとも一つが,他のギャップ部に含まれる液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と異なる種類の液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体を含むことを特徴とするICS。
【請求項6】
請求項4に記載のICSにおいて,ギャップ部間を連結する流路が形成されていることを特徴とするICS。
【請求項7】
請求項1−2に記載のICSにおいて,薄膜が,成長基板に形成した薄膜を基板から剥離することにより作製されることを特徴とするICS。
【請求項8】
請求項1−2に記載のICSにおいて,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に相当する部分に除去可能な材料をパターン化して配置してなる積層構造を形成した後,上記除去可能な材料を除去することによりギャップ部を形成することを特徴とするICS。
【請求項9】
pinまたはpn接合を有する半導体薄膜からなる半導体コアのp型半導体表面およびn型半導体表面がともに露出し,両表面が電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とする薄膜水素/酸素ガス発生装置(TF−HOG)。
【請求項10】
エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を間隔をあけて隣接させてなる半導体コアを備え,前記半導体薄膜それぞれの表および/または裏の表面が露出し電解質と接するかまたは間隔をあけて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするTF−HOG。
【請求項11】
エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を,それらより広いエネルギーギャップを有する薄膜を介して積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするTF−HOG。
【請求項12】
エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするTF−HOG。
【請求項13】
請求項9−12に記載のTF−HOGにおいて,波長の異なる光を半導体コアの表面,裏面から別々に照射することを特徴とするTF−HOG。
【請求項14】
請求項9−12に記載のTF−HOGにおいて,集光レンズまたは集光レンズアレイが,TF−HOGに接して,または間隔をあけて隣接して配置されていることを特徴とするTF−HOG。
【請求項15】
集光レンズまたは集光レンズアレイと接して,または間隔をあけて隣接して配置された光導波路を備え,該光導波路を含む光回路の途中または端部または該光回路に接続された光ファイバの端部に光エネルギー変換デバイスを配置したことを特徴とする集積化光エネルギー変換システム(ILECS)。
【請求項16】
請求項15に記載のILECSにおいて,光回路の一部に波長フィルタを設けたことを特徴とするILECS。
【請求項17】
請求項16に記載のILECSにおいて,波長フィルタで分波された光を異なる分光感度特性を有する光エネルギー変換デバイスに誘導することを特徴とするILECS。
【請求項18】
請求項15に記載のILECSにおいて,光エネルギー変換デバイスがHOGおよび/またはソラーセル(SC)であることを特徴とするILECS。
【請求項19】
請求項15に記載のILECSにおいて,光導波路を積層した3次元光回路を含むことを特徴とするILECS。
【請求項20】
請求項15に記載のILECSにおいて,集光レンズ,光導波路の少なくとも1部が,インプリント法および/またはBuilt−in Mask法で作製されたことを特徴とするILECS。
【請求項21】
請求項15に記載のILECSにおいて,電解質および/またはガスを通すマイクロ流路が集積化されていることを特徴とするILECS。
【請求項1】
薄膜の表および裏の表面がともに露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とする集積化ケミカルシステム(ICS)。
【請求項2】
複数の薄膜が間隔をあけて隣接し,該薄膜の2面以上の表面が露出部を有し,該露出部が液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と接するかまたは間隔をあけて近接している構造を含むことを特徴とするICS。
【請求項3】
請求項1−2に記載のICSにおいて,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に液体および/または気体の流路が形成されていることを特徴とするICS。
【請求項4】
請求項3に記載のICSにおいて,流路がパターン化されていることを特徴とするICS。
【請求項5】
請求項4に記載のICSにおいて,ギャップ部の少なくとも一つが,他のギャップ部に含まれる液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体と異なる種類の液体および/または気体および/またはイオン伝導性固体を含むことを特徴とするICS。
【請求項6】
請求項4に記載のICSにおいて,ギャップ部間を連結する流路が形成されていることを特徴とするICS。
【請求項7】
請求項1−2に記載のICSにおいて,薄膜が,成長基板に形成した薄膜を基板から剥離することにより作製されることを特徴とするICS。
【請求項8】
請求項1−2に記載のICSにおいて,薄膜と薄膜との間のギャップ部および/または薄膜と基板との間のギャップ部および/または薄膜とカバー層との間のギャップ部に相当する部分に除去可能な材料をパターン化して配置してなる積層構造を形成した後,上記除去可能な材料を除去することによりギャップ部を形成することを特徴とするICS。
【請求項9】
pinまたはpn接合を有する半導体薄膜からなる半導体コアのp型半導体表面およびn型半導体表面がともに露出し,両表面が電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とする薄膜水素/酸素ガス発生装置(TF−HOG)。
【請求項10】
エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を間隔をあけて隣接させてなる半導体コアを備え,前記半導体薄膜それぞれの表および/または裏の表面が露出し電解質と接するかまたは間隔をあけて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするTF−HOG。
【請求項11】
エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を,それらより広いエネルギーギャップを有する薄膜を介して積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするTF−HOG。
【請求項12】
エネルギー準位の異なる複数種類の半導体薄膜を積層してなる半導体コアを備え,半導体薄膜の表および裏の表面がともに露出し電解質と接するかまたは間隔をおいて近接しており,半導体コアへの光照射により酸素ガスおよび/または水素ガスが発生することを特徴とするTF−HOG。
【請求項13】
請求項9−12に記載のTF−HOGにおいて,波長の異なる光を半導体コアの表面,裏面から別々に照射することを特徴とするTF−HOG。
【請求項14】
請求項9−12に記載のTF−HOGにおいて,集光レンズまたは集光レンズアレイが,TF−HOGに接して,または間隔をあけて隣接して配置されていることを特徴とするTF−HOG。
【請求項15】
集光レンズまたは集光レンズアレイと接して,または間隔をあけて隣接して配置された光導波路を備え,該光導波路を含む光回路の途中または端部または該光回路に接続された光ファイバの端部に光エネルギー変換デバイスを配置したことを特徴とする集積化光エネルギー変換システム(ILECS)。
【請求項16】
請求項15に記載のILECSにおいて,光回路の一部に波長フィルタを設けたことを特徴とするILECS。
【請求項17】
請求項16に記載のILECSにおいて,波長フィルタで分波された光を異なる分光感度特性を有する光エネルギー変換デバイスに誘導することを特徴とするILECS。
【請求項18】
請求項15に記載のILECSにおいて,光エネルギー変換デバイスがHOGおよび/またはソラーセル(SC)であることを特徴とするILECS。
【請求項19】
請求項15に記載のILECSにおいて,光導波路を積層した3次元光回路を含むことを特徴とするILECS。
【請求項20】
請求項15に記載のILECSにおいて,集光レンズ,光導波路の少なくとも1部が,インプリント法および/またはBuilt−in Mask法で作製されたことを特徴とするILECS。
【請求項21】
請求項15に記載のILECSにおいて,電解質および/またはガスを通すマイクロ流路が集積化されていることを特徴とするILECS。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−107085(P2007−107085A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328063(P2005−328063)
【出願日】平成17年10月15日(2005.10.15)
【出願人】(501358828)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月15日(2005.10.15)
【出願人】(501358828)
【Fターム(参考)】
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