説明

雌フェルール

【課題】マルチコア光ファイバに特に適した雌型のフェルールを提供する。
【解決手段】光ファイバ40を多数束ねた状態でこの外側に被覆41を設けてなるマルチコア光ファイバ22の端末に、前記被覆41の一部を除去した後に固定される雌フェルール21である。雌フェルール21は、円筒形状部25及び段部35を有するフェルール本体23と、一端側に接続相手となる雄フェルールに対しての差し込み接続部36を有し他端側に円筒形状部25に対しての連結固定部37を有するスリーブ24とを備える。スリーブ24は、フェルール本体23に対しての後付け用のものとする。円筒形状部25には、多数束ねた状態の光ファイバ42に対しての加締め固定部分33と、連結固定部37に対しての差し込み連結固定部分34と、を円筒形状部25の前端面32側から順に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルの端末に固定されるフェルールに関し、詳しくは、マルチコア光ファイバを好適としてこの端末に固定される雌型のフェルールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤハーネスの一部を光ファイバに置き換え、例えば各ノード間を光ファイバで接続するようなシステムが採用されている。このようなシステムとしては、例えば下記特許文献1に開示された光モジュールが知られている。図8において、引用符号1は下記特許文献1に開示された光モジュールを示している。光モジュール1は、ピッグテール型の光モジュールであって、回路基板2と、この回路基板2に実装される受発光部(光送受信器)3と、回路基板2の端部に設けられる一対のコネクタ部4、4と、受発光部3及びコネクタ部4、4を光学的に接続する中継用の光ファイバケーブル5、5とを備えて構成されている。
【0003】
光ファイバケーブル5、5の各端末には、フェルール6、6(図9参照)が固定されている。このフェルール6、6は、コネクタ部4、4の内部に収納されている。コネクタ部4、4は、レセプタクル形状に形成されている。このようなコネクタ部4、4には、接続相手となる光コネクタ7、7が嵌合接続するようになっている。光コネクタ7、7は、プラグ形状に形成されている。光コネクタ7、7は、光ファイバケーブル8、8の端末に設けられている。光ファイバケーブル8、8の端末には、光コネクタ7、7の内部に収納されるフェルール9、9(図9参照)が設けられている。
【0004】
光ファイバケーブル5、5の各端末のフェルール6、6と、光ファイバケーブル8、8の各端末のフェルール9、9は、同じ形状に形成されており、嵌合し合うコネクタ部4、4及び光コネクタ7、7の内部において、各前端面同士が対向し光軸が一致するようになっている。
【0005】
図9を参照しながら、光ファイバケーブル5、8やフェルール6、9についての説明をする。光ファイバケーブル5、8は、コア及びクラッドからなる光ファイバ10と、この光ファイバ10を被覆する一次シース11及び二次シース12とを備えて構成されている。光ファイバケーブル5、8の端末は、フェルール6、9を固定するために、一次シース11及び二次シース12が除去されて光ファイバ10が所定の長さで露出するように加工されている。
【0006】
フェルール6、9は、小径部13及び大径部14を有する略円筒形状に形成されている。フェルール6、9は、この前端面15から後端面16が真っ直ぐに貫通するように形成されている。小径部13の内径は、光ファイバ10の外径に合わせて形成されている。また、大径部14の内径は、一次シース11の外径に合わせて形成されている。後端面16には、二次シース12の端部が突き当たるようになっている。
【0007】
端末処理に関しては、光ファイバケーブル5、8の端末にエポキシ接着剤を塗布し、この端末をフェルール6、9の内部に差し込んで接着剤を乾燥させ、この固定の後に前端面15から突出する光ファイバ10を切断したり研磨したりするような処理になっている。
【特許文献1】特開2003−149515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光軸のズレがないようにフェルール6、9の各前端面15同士を対向させるために、本願発明者は、フェルール5の前端面15にフェルール9の小径部13を差し込むことができるような筒状の部分を一体に形成することを考えている。しかしながら、フェルール5の前端面15に筒状の部分を一体に形成してしまうと、端末処理の際に前端面15から突出する光ファイバ10の切断、研磨作業が非常に困難になってしまうという問題点を有する(切断や研磨ができないこともあり得る)。また、切断、研磨作業の際に、この削りカス等が筒状の部分の内部に残ってしまうと、光学的な接続部分に影響を来す恐れがあるという問題点を有する。
【0009】
尚、一次シース11及び二次シース12を除去する際に光ファイバ10の露出寸法を精度良く管理して前記の問題点に対処する、という案が考えられる。しかしながら、この案を実現するためには、多くの困難を乗り越えなければならないと考えられる。
【0010】
ところで、光ファイバを多数束ねた状態でこの外側に被覆を設けてなるマルチコア光ファイバが知られている。このマルチコア光ファイバは、端末の被覆を除去すると多数の光ファイバがばらけてしまうような構造になっている。従って、このようなばらけのあるマルチコア光ファイバを光ファイバケーブル5の替わりに用いようとすると、前端面に筒状の部分を一体に形成したフェルールの前記問題点がより一層複雑化してしまうことになる。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、マルチコア光ファイバに特に適した雌型のフェルールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の雌フェルールは、光ファイバを多数束ねた状態でこの外側に被覆を設けてなるマルチコア光ファイバの端末に、前記被覆の一部を除去した後に固定される雌フェルールであって、円筒形状部及び該円筒形状部後方の外周面に段部を有するフェルール本体と、一端側に接続相手となる雄フェルールに対しての差し込み接続部を有し他端側に前記円筒形状部に対しての連結固定部を有するスリーブとを備え、該スリーブを前記フェルール本体に対しての後付け用のものとし、前記円筒形状部には、前記多数束ねた状態の光ファイバに対しての加締め固定部分と、前記連結固定部に対しての差し込み連結固定部分と、を前記円筒形状部の前端面側から順に形成することを特徴としている。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、先ず、フェルール本体のみをマルチコア光ファイバの端末に加締めによって固定する。次に、スリーブをフェルール本体に後付けする。これにより、マルチコア光ファイバの端末に雌フェルールが取り付けられる。一連の端末処理は比較的容易に行われる。
【0014】
スリーブの後付けの方法に関しては、寸法はめあい関係によることが挙げられる。また、圧入や溶接や溶着による固定(これらの方法を組み合わせて固定しても良い)も挙げられる。フェルール本体は金属製であり、スリーブは金属製又は樹脂製のいずれでも可能であるものとする。
【0015】
端末処理後の光学的な接続に関しては、接続相手となる雄フェルールの小径部が雌フェルールの差し込み接続部に差し込まれる。雌フェルールのスリーブは、雄フェルールに対する案内の部分としての機能を有する。雄フェルールの小径部が雌フェルールの差し込み接続部に差し込まれると、この差し込み接続部の奥に存在する円筒形状部の前端面に雄フェルールの前端面が光軸のズレなく対向する。円筒形状部の前端面に露出するファイバ端面は、スリーブを後付けする前に雄フェルールと同様の方法で加工できる構造であることから、加工は当然に困難な作業にならず、また、削りカス等の対処も簡単であり、結果、組み付け作業や光学的な接続が良好に行われる。
【0016】
本発明によれば、マルチコア光ファイバの端末がフェルール本体の加締め固定部分に加締めにより固定される。加締め固定部分は、円筒形状部の前端面に近いところに形成され、このことから、多数束ねた状態の光ファイバは、ばらけが生じることなく雌フェルールに固定される。
【0017】
請求項2記載の本発明の雌フェルールは、請求項1に記載の雌フェルールにおいて、前記連結固定部の外側端面を前記段部に突き当てると、前記差し込み接続部の内側端面と前記円筒形状部の前記前端面とが略一致する寸法関係を有することを特徴としている。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、スリーブを後付けする際の位置出し作業が容易に行われる。また、雄フェルールとの光学的接続時において、円筒形状部の前端面に雄フェルールの前端面が最適な間隔で対向する。
【0019】
請求項3記載の本発明の雌フェルールは、請求項1又は請求項2に記載の雌フェルールにおいて、前記加締め固定部分を加締めた後に硬化する接着剤を前記多数束ねた状態の光ファイバに予め塗布することを特徴としている。
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、接着剤が例えば加締め直後の時間に合わせて硬化すると、フェルール本体の加締め固定部分に固定されたマルチコア光ファイバの端末に対する保持力が向上する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載された本発明によれば、端末処理を容易にし尚かつ光学的な接続も良好になる雌フェルールを提供することができる。また、マルチコア光ファイバに特に適した構造になる雌フェルールを提供することができる。
【0022】
請求項2に記載された本発明によれば、端末処理の際の組み付け作業を容易にし尚かつ最適な寸法関係によって光学的な接続も一層良好になる雌フェルールを提供することができる。
【0023】
請求項3に記載された本発明によれば、マルチコア光ファイバの端末に対する保持力を向上させることができる。本発明によれば、加締めによる保持において、仮に保持力にバラツキが生じる場合を考えると、接着剤によってこのバラツキの低減を図ることができる。従って、より良い雌フェルールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の雌フェルールの一実施の形態を示す端末処理部分の断面図である。また、図2は雌フェルールの分解斜視図、図3〜図5は端末処理に係る説明図である。
【0025】
図1において、引用符号21は本発明の雌フェルールを示している。また、引用符号22は、この端末に雌フェルール21が取り付けられて端末処理が完了するマルチコア光ファイバを示している。雌フェルール21は、雌型の形状であるにもかかわらず、また、取り付け対象がマルチコア光ファイバ22の端末であるにもかかわらず、端末処理を容易にすることができるように、尚かつ、雄フェルール(図示省略。図9のフェルール8が参考となる)との光学的な接続も良好にすることができるようになっている。この他、雌フェルール21は、この雌フェルール21自身の形状によって、雄フェルールとの光学的な接続の際の調芯や間隙損失の低減にも寄与することができるようになっている。
【0026】
図1及び図2において、雌フェルール21は、フェルール本体23と、このフェルール本体23に対して後付けされるスリーブ24とを備えて構成されている。フェルール本体23は金属製、スリーブ24は金属製又は合成樹脂製となっている。これらを金属製とする場合には、例えば快削黄銅を用いて切削加工にて製造することが一例として挙げられる。また、一般黄銅やアルミニウム等の金属で絞り加工を施して製造することも一例として挙げられる。
【0027】
フェルール本体23は、小径となる円筒形状部25と、この円筒形状部25に連続する大径部26と、大径部26に連続する大フランジ27と、大フランジ27に連続する細長小径部28と、細長小径部28の中間に設けられる小フランジ29と、細長小径部28の端部に連続する大フランジ30とを有している。フェルール本体23は、マルチコア光ファイバ22の径に合わせて形成されるファイバ挿入部31を有している。ファイバ挿入部31は、円筒形状部25の前端面32から大フランジ30までを同じ径で真っ直ぐに貫通するように形成されている。フェルール本体23は、図に示す如く、これ自身では雄フェルールとよく似た筒状の形状に形成されている(図9の雄型のフェルール8とは形状が異なる)。
【0028】
円筒形状部25の前端面32は、フェルール軸に直交する平坦な面として形成されている。この前端面32には、ファイバ挿入部31の一方が開口するように形成されている。円筒形状部25には、マルチコア光ファイバ22の後述する多数束ねた状態の光ファイバ42に対しての加締め固定部分33と、スリーブ24の後述する連結固定部37に対しての差し込み連結固定部分34とが形成されている。加締め固定部分33は、前端面32の後に配置形成されている。また、差し込み連結固定部分34は、加締め固定部分33の後に配置形成されている。加締め固定部分33は、この部分に加締めが施されると縮径するような変形が生じてして、後述する多数束ねた状態の光ファイバ42を圧縮して保持するようになっている。
【0029】
尚、円筒形状部25は、スリーブ24を後付けする前の形状が円筒形状であることから本発明において円筒形状部と称している。単に小径部と称しない理由としては、スリーブ24を後付けする前の形状だけを見ると従来の雄フランジの小径部と同じような形状に円筒形状部25が形成されているものの、明確な相違点を有しているからである。すなわち、本発明の円筒形状部25では、加締め固定部分33及び差し込み連結固定部分34を有しており、加締めやスリーブ24の後付けによって後に形状が変化するからである。また、機能も従来の雄フランジの小径部と異なることから、これらが明確な相違点となり単に小径部と称しない理由になっている。
【0030】
円筒形状部25と大径部26との連続部分には、段部35が形成されている。段部35は、円筒形状部25の径と大径部26の径との差によって生じる部分として形成されている。このような段部35には、後付けの際にスリーブ24が突き当たるようになっている。スリーブ24が突き当たることにより、このスリーブ24の位置決めが容易に行えるようになっている。円筒形状部25の前端面32から段部35までの寸法は、所定の長さとなるように設定されている。
【0031】
大フランジ27や小フランジ29や大フランジ30は、ハウジング(例えば図6を参照しながら後述するフェルールハウジング)との固定の際に用いられるようになっている。
【0032】
スリーブ24は、フェルール本体23の円筒形状部25に対して後付けされる別部材として備えられている。スリーブ24は、図示の如く円筒となる形状に形成されている。スリーブ24には、接続相手となる雄フェルールに対しての差し込み接続部36と、円筒形状部25に対しての連結固定部37とが形成されている。差し込み接続部36と連結固定部37は、連続するように形成されている。差し込み接続部36と連結固定部37は、内外とも段付きとなる形状に形成されている。差し込み接続部36は、雄フェルールに対しての案内部分としての機能を有している。
【0033】
スリーブ24に関し、引用符号38は連結固定部37の外側端面を示している。また、引用符号39は差し込み接続部36の内側端面を示している。スリーブ24は、差し込み接続部36の内側端面39が連結固定部37の内側端面とも言えるように段付き形状に形成されている。
【0034】
連結固定部37の内径は、円筒形状部25の外径に対して、はめあいの関係(JIS B 0401−1)が成立するように形成されている。本形態においては、じまりばめ状態をねらって連結固定部37及び円筒形状部25が形成されている(はめあい関係が中間ばめの場合には、圧入後に抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶着等の適宜方法で固定しても良いものとする。また、接着剤を用いて固定しても良いものとする)。
【0035】
マルチコア光ファイバ22は、コア及びクラッドを有する光ファイバ40と、この光ファイバ40を多数束ねた状態でこの外側に設けられる被覆(シース)41とを備えて構成されている。マルチコア光ファイバ22は、この端末に雌フェルール21を取り付けるために、被覆41が所定の長さで除去されている(被覆41を所定の長さで除去することにより、多数束ねた状態の光ファイバ42が所定の長さで露出する)。
【0036】
マルチコア光ファイバ22は、特に限定するものではないが、光ファイバ40をガラス製としたもの(例えばMC−GOF)が用いられている。この場合の光ファイバ40は、直径が数十ミクロンとなるガラスファイバである。この光ファイバ40が200〜300本束ねられて、多数束ねた状態の光ファイバ42となっている(ガラスファイバでなくプラスチックファイバでも良いものとする。本形態ではガラスファイバとすることにより、融点がプラスチックの95℃のものよりも高い125℃〜150℃となる。耐熱性に配慮する場合にはガラスファイバが好適である)。
【0037】
マルチコア光ファイバ22は、特に限定するものではないが、この端末の被覆41が所定の長さで除去された状態において、多数束ねた状態の光ファイバ42の露出部分に瞬間接着剤43が塗布されるようになっている。瞬間接着剤(接着剤)43は、塗布してから数分後に硬化するものが用いられている(例えば、NTT−AT製の型式AT8816が一例として挙げられる。雌フェルール21との端末処理において、最終研磨工程が終了する頃に硬化して保持力を高めることをねらう)。
【0038】
次に、図1ないし図5を参照しながら端末処理について説明する。図3ないし図5は端末処理に係る説明図である。
【0039】
端末処理は、先ず、被覆41を所定の長さで除去して多数束ねた状態の光ファイバ42を露出させたマルチコア光ファイバ22と、フェルール本体23とを図3に示す如くのファイバ挿入部31への差し込み状態にする。多数束ねた状態の光ファイバ42の露出部分への瞬間接着剤43の塗布に関しては、塗布してからフェルール本体23のファイバ挿入部31へ差し込みを行う場合と、先にフェルール本体23との差し込みを行い、フェルール本体23を被覆41側へ移動させてから塗布し、そして、図3に示す如くの位置へフェルール本体23を移動させる場合とがあり、どちらを採用しても良いものとする。
【0040】
図3に示す如く円筒形状部25の前端面32から、多数束ねた状態の光ファイバ42の先端が突出する状態を形成すると、次に、図4に示す如く円筒形状部25の加締め固定部分33を加締めてこれを縮径させ、多数束ねた状態の光ファイバ42を圧縮にて保持した状態を形成する。尚、加締めは円筒形状部25の加締め固定部分33のみであり、この後部に形成される差し込み連結固定部分34の外径に変化はないものとする。
【0041】
加締め固定部分33を加締めて多数束ねた状態の光ファイバ42を保持した状態を形成すると、次に、前端面32から突出した部分を除去及び研磨して図5に示す如く状態に形成する。これにより、前端面32と多数束ねた状態の光ファイバ42の先端とが面一になる。
【0042】
最後に、図5及び図1に示す如くスリーブ24をフェルール本体23の円筒形状部25に差し込み、連結固定部37と差し込み連結固定部分34とをしまりばめにて固定すると、スリーブ24の後付け状態が形成されるとともに、図1に示す如く雌フェルール21が形成され、これによって一連の端末処理が完了する。
【0043】
スリーブ24は、連結固定部37の外側端面38が円筒形状部25の段部35に突き当たるように後付けされる。連結固定部37の外側端面38と円筒形状部25の段部35とが突き当たると、スリーブ24の差し込み接続部36の内側端面39と、フェルール本体23の前端面32及び多数束ねた状態の光ファイバ42の先端とが面一になる。尚、突き当てではなく、差し込み接続部36の内側端面39がフェルール本体23の前端面32に面一となるようにスリーブ24の後付けを行っても良いものとする。
【0044】
端末処理後の雌フェルール21と、図示しない雄フェルールとを光学的に接続させようとすると、雄フェルールの小径部が雌フェルール21のスリーブ24の差し込み接続部36に差し込まれて内部へ案内される。そして、差し込み接続部36の奥に存在する円筒形状部25の前端面32に雄フェルールの前端面が対向する。雄フェルールと雌フェルール21は、スリーブ24の存在により光軸のズレがない状態で光学的な接続がなされるようになる。
【0045】
以上、図1ないし図5を参照しながら説明してきたように、端末処理を容易にし尚かつ光学的な接続も良好にすることができる。従って、本発明によれば、より良い雌フェルール21を提供することができる。
【0046】
続いて、図6及び図7を参照しながら雌フェルール21を使用する光モジュールの構成について説明をする(構成は一例であるものとする)。図6は光モジュールの分解斜視図、図7は光モジュールの斜視図である。
【0047】
図6及び図7において、光モジュール51は、ピッグテール型のものであって、コネクタ部52と、受発光部53と、中継用のマルチコア光ファイバ22、22とを備えて構成されている。マルチコア光ファイバ22、22の各端末には、コネクタ部52に収納される本発明に係る雌フェルール21、21と、受発光部53に光学的に接続されるフェルール54、54とが固定されている。
【0048】
コネクタ部52は、コネクタハウジング55と、複数のPCB端子56と、フェルールハウジング57と、カバー58と、スプリング59とを備えて構成されている。
【0049】
受発光部53は、FOTケース60と、ホルダー61と、発光側FOT62及び受光側FOT63と、シールドケース64とを備えて構成されている。
【0050】
引用符号65はダストキャップを示している。ダストキャップ65は、例えば図示しない回路基板に光モジュール51を実装するまでの間、光学的な接続部分(雌フェルール21、21)にゴミや埃等が付着しないようにするために備えられている。
【0051】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0052】
尚、以上の説明ではマルチコア光ファイバ22を挙げていたが、光ファイバ素線を数芯から数百、数千芯束ねることによりなるバンドルファイバや、イメージファイバ等でも適用可能であるものとする。また、当然であるが、芯が一つとなる一般的なガラス光ファイバケーブルやPOFでも適用可能であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の雌フェルールの一実施の形態を示す端末処理部分の断面図である。
【図2】雌フェルールの分解斜視図である。
【図3】端末処理に係る第一の説明図である。
【図4】端末処理に係る第二の説明図である。
【図5】端末処理に係る第三の説明図である。
【図6】光モジュールの分解斜視図である。
【図7】光モジュールの斜視図である。
【図8】従来例の光モジュールの構成図である。
【図9】フェルールと光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0054】
21 雌フェルール
22 マルチコア光ファイバ
23 フェルール本体
24 スリーブ
25 円筒形状部
26 大径部
27 大フランジ
28 細長小径部
29 小フランジ
30 大フランジ
31 ファイバ挿入部
32 前端面
33 加締め固定部分
34 差し込み連結固定部分
35 段部
36 差し込み接続部
37 連結固定部
38 外側端面
39 内側端面
40 光ファイバ
41 被覆
42 多数束ねた状態の光ファイバ
43 瞬間接着剤(接着剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを多数束ねた状態でこの外側に被覆を設けてなるマルチコア光ファイバの端末に、前記被覆の一部を除去した後に固定される雌フェルールであって、
円筒形状部及び該円筒形状部後方の外周面に段部を有するフェルール本体と、一端側に接続相手となる雄フェルールに対しての差し込み接続部を有し他端側に前記円筒形状部に対しての連結固定部を有するスリーブとを備え、
該スリーブを前記フェルール本体に対しての後付け用のものとし、
前記円筒形状部には、前記多数束ねた状態の光ファイバに対しての加締め固定部分と、前記連結固定部に対しての差し込み連結固定部分と、を前記円筒形状部の前端面側から順に形成する
ことを特徴とする雌フェルール。
【請求項2】
請求項1に記載の雌フェルールにおいて、
前記連結固定部の外側端面を前記段部に突き当てると、前記差し込み接続部の内側端面と前記円筒形状部の前記前端面とが略一致する寸法関係を有する
ことを特徴とする雌フェルール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の雌フェルールにおいて、
前記加締め固定部分を加締めた後に硬化する接着剤を前記多数束ねた状態の光ファイバに予め塗布する
ことを特徴とする雌フェルール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−70675(P2008−70675A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250215(P2006−250215)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】