説明

離型材

【課題】離型性に優れた離型材を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーからなる離型材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型性に優れる離型材に関する。
【背景技術】
【0002】
離型材は、スムーズな剥離が要求される様々な分野において、多様な形態で使用される。例えば太陽電池モジュールの製造では、シート状の離型材が使用される。具体的に説明すると、太陽電池モジュールの製造は、まず、図1(a)に示すように、複数の太陽電池セル2を並列に配置する。ついで、各太陽電池セル2の両面にエチレンビニルアセテート樹脂等からなるシート状の封止剤3,3を介して保護ガラス4,バックシート5を積層し、積層体1を得る。
【0003】
この積層体1を、図1(b)に示すように、ラミネート装置が備える一対の熱板50,50間に配置した後、一対の熱板50,50を矢印A方向に動かし、積層体1の両面を一対の熱板50,50で加熱しながら挟むと、封止剤3が融解する。その結果、図1(c)に示すように、各太陽電池セル2が封止剤3で封止された太陽電池モジュール10が得られる。
【0004】
ここで、積層体1を加熱した際に、融解した封止剤3が積層体1から流れ出し、熱板50に付着することがある。この熱板50と封止剤3との融着を防ぐために、積層体1に対向する熱板50の表面には、離型材をシート状に加工した離型シート51が配置されている。該離型シート51は、通常、フッ素樹脂をガラス繊維に含浸保持させてなる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前記組成からなる離型シート51は、離型性が十分ではなかった。それゆえ融着した封止剤3を離型シート51から剥がし取るためのブラシ等を製造装置に設ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−172192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、離型性に優れた離型材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化1】

[式(I),(II)中、R1およびR4は、それぞれ同一または異なる基であって、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R5は、シロキサン結合を有する2価の基を示す。R6は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。]
(2)前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位との共重合比が、重量比で、99:1〜1:99である前記(1)記載の離型材。
【0009】
(3)前記イミド変性エラストマーは、第1ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを、第1ジアミン化合物でウレア結合により鎖延長したポリウレタン−ウレア化合物と、第2ジイソシアナートを、シロキサン結合を有する第2ジアミン化合物でウレア結合により鎖延長したポリシロキサン−ウレア化合物と、を混合した後、前記ポリウレタン−ウレア化合物と前記ポリシロキサン−ウレア化合物の各々のウレア結合部にテトラカルボン酸二無水物でイミドユニットを導入した共重合体である前記(1)または(2)記載の離型材。
(4)前記ポリオールが、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種である前記(3)記載の離型材。
(5)前記ポリカーボネートポリオールが、下記式(1)で表されるポリカーボネートジオールである前記(4)記載の離型材。
【化2】

[式中、xは5または6の整数を示す。yは1〜76の整数を示す。]
(6)前記ポリエステルポリオールが、下記式(2)で表されるポリエステルジオールである前記(4)または(5)記載の離型材。
【化3】

[式中、zは1〜37の整数を示す。]
(7)前記第2ジアミン化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である前記(3)〜(6)のいずれかに記載の離型材。
【化4】

[式中、R1およびR2は、それぞれ同一または異なる基であって、アルキレン基を示す。R3〜R6は、それぞれ同一または異なる基であって、水素、アルキル基、フェニル基を示す。mは8〜160の整数を示す。]
【0010】
(8)繊維に保持させた、下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化5】

[式(I),(II)中、R1およびR4は、それぞれ同一または異なる基であって、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R5は、シロキサン結合を有する2価の基を示す。R6は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。]
(9)前記繊維が、ガラス繊維である前記(8)記載の離型材。
【0011】
なお、本発明における前記「イミド変性エラストマー」とは、イミド成分を有するエラストマーのことを意味し、前記イミド成分の割合(イミド分率)によって樹脂も含む概念である。
本発明における前記「離型材」は、通常、シート状ないしフィルム状の形態であるが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、例えばベルト状や皮膜状等の他の形態であってもよい。
すなわち、本発明の太陽電池モジュール製造用離型シートは、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の離型材からなる。
本発明のベルトは、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の離型材からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の離型材によれば、優れた離型性を有し、かつ多様な形態で使用することができるので、スムーズな剥離が要求される様々な分野において、所望の形態で使用することができるという効果がある。しかも、前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位との共重合比を調整し、前記一般式(I)で表される構造単位の割合を多くすると、ウレタン構造単位の割合が多くなるので、耐摩耗性(耐久性)や引張強度を向上させることができる。さらに、本発明の離型材は、優れた撥水性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(c)は、太陽電池モジュールの一般的な製造方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の離型材にかかる一実施形態について説明する。本実施形態にかかる離型材は、前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーからなる。
【0015】
前記一般式(I),(II)中において、前記R1およびR4は、それぞれ同一または異なる基であって、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示すものである。該有機基としては、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリオール(b)とともにウレタンプレポリマー(c)を形成し得る第1ジイソシアナート(a)においてイソシアナト基(−NCO)を除く残基や、反応行程式(C)に従ってウレア結合により鎖延長され得る第2ジイソシアナート(f)においてイソシアナト基(−NCO)を除く残基等が挙げられる。
【0016】
前記R2は、重量平均分子量300〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示すものである。該有機基としては、例えば反応行程式(A)に従って第1ジイソシアナート(a)とともにウレタンプレポリマー(c)を形成し得るポリオール(b)において2つの水酸基(−OH)を除く残基等が挙げられる。
【0017】
前記R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示すものである。該有機基としては、例えば反応行程式(B)に従ってウレタンプレポリマー(c)をウレア結合により鎖延長し得る炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物、炭素数6〜24の脂肪族ジアミン化合物および炭素数6〜24の脂環式ジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種の第1ジアミン化合物(d)においてアミノ基(−NH2)を除く残基等が挙げられる。前記脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
【0018】
前記R5は、シロキサン結合を有する2価の基を示すものである。該基としては、例えば反応行程式(C)に従って第2ジイソシアナート(f)をウレア結合により鎖延長し得るシロキサン結合を有する第2ジアミン化合物(g)においてアミノ基(−NH2)を除く残基等が挙げられる。
【0019】
前記R6は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示すものである。該有機基としては、例えば反応行程式(D)に従ってウレア結合部にイミドユニットを導入し得る炭素数6〜18の芳香族テトラカルボン酸二無水物および炭素数4〜6の脂環式テトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物(i)の残基等が挙げられる。
【0020】
前記nは1〜100、好ましくは2〜50の整数を示す。
【0021】
本実施形態のイミド変性エラストマーは、第1ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを、第1ジアミン化合物でウレア結合により鎖延長したポリウレタン−ウレア化合物と、第2ジイソシアナートを、シロキサン結合を有する第2ジアミン化合物でウレア結合により鎖延長したポリシロキサン−ウレア化合物と、を混合した後、前記ポリウレタン−ウレア化合物と前記ポリシロキサン−ウレア化合物の各々のウレア結合部にテトラカルボン酸二無水物でイミドユニットを導入した共重合体である。該イミド変性エラストマーは、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(D)を経て製造することができる。
【0022】
[反応行程式(A)]
【化6】

[式中、R1,R2,nは、前記と同じである。]
【0023】
(ウレタンプレポリマー(c)の合成)
反応行程式(A)に示すように、まず、第1ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマー(c)を得る。ウレタンプレポリマー(c)は、ウレタン構造単位を有するので、耐摩耗性や引張強度に優れている。
【0024】
第1ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(Cr.MDI)、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
【0025】
ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;ポリカーボネートポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
例示したポリオール(b)のうち、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、前記一般式(I)で表される構造単位の主鎖に、耐熱性および耐摩耗性に優れるポリカーボネート構造単位およびポリエステル構造単位の少なくとも一方が導入されるので、イミド変性エラストマーの耐熱性および耐摩耗性を向上させることができる。
【0027】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、前記式(1)で表されるポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール(1)」と言う。)が好ましい。該ポリカーボネートジオール(1)をポリオール(b)として用いると、高い離型性、耐熱性および耐摩耗性を得ることができる。ポリカーボネートジオール(1)は、2成分をカーボネート結合により共重合させたジオール成分であり、いわゆる共重合ポリカーボネートジオールである。ポリカーボネートジオール(1)は、室温(23℃)において液状であることから、取り扱い性に優れる。前記式(1)中において、前記xは5または6の整数を示す。前記yは1〜76、好ましくは6〜15の整数を示す。
【0028】
ポリカーボネートジオール(1)以外の他のポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリオール(多価アルコール)と、ホスゲン、クロル蟻酸エステル、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、アルキレンカーボネート等とを縮合重合させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられ、前記ポリオールとしては、例えば1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、前記ジアルキルカーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0029】
一方、前記ポリエステルポリオールとしては、前記式(2)で表されるポリエステルジオール(以下、「ポリエステルジオール(2)」と言う。)が好ましい。該ポリエステルジオール(2)をポリオール(b)として用いると、高い離型性、耐熱性および耐摩耗性を得ることができる。ポリエステルジオール(2)は、ジオール成分分子内にエステル基と、側鎖としてメチル基とを有する側鎖含有ポリエステルジオールである。ポリエステルジオール(2)は、室温(23℃)において液状であることから、取り扱い性に優れる。前記式(2)中において、前記zは1〜37、好ましくは3〜7の整数を示す。
【0030】
ポリエステルジオール(2)以外の他のポリエステルポリオールとしては、例えばポリカルボン酸とポリオールとを縮合重合させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられ、具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリオール、ε−カプロラクトンを開環重合して得たポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンジオール、β−メチル−δ−バレロラクトンをエチレングリコールで開環することにより得られたポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
さらに他のポリエステルポリオールとしては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸(混合物)、パラオキシ安息香酸、無水トリメリット酸、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンから選ばれる少なくとも1種の酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールから選ばれる少なくとも1種のグリコールとの共重合体等が挙げられる。
【0032】
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量は100〜10,000、好ましくは300〜5,000であるのがよい。前記重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0033】
反応は、第1ジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、室温(23℃)〜90℃で1時間〜5時間程度反応させればよい。第1ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、第1ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.01:1〜2:1の範囲にするのが好ましい。
【0034】
得られるウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量は、300〜50,000、好ましくは500〜45,000であるのがよい。該重量平均分子量は、ウレタンプレポリマー(c)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0035】
[反応行程式(B)]
【化7】

[式中、R1〜R3,nは、前記と同じである。]
【0036】
(ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成)
前記で得られたウレタンプレポリマー(c)を用いて、反応行程式(B)に従ってイミド前駆体であるポリウレタン−ウレア化合物(e)(以下、「化合物(e)」と言うことがある。)を合成する。すなわち、ウレタンプレポリマー(c)を第1ジアミン化合物(d)でウレア結合により鎖延長して化合物(e)を得る。
【0037】
第1ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
反応は、ウレタンプレポリマー(c)と第1ジアミン化合物(d)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。
【0039】
前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンが好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、常法に従い脱水処理したものを用いるのが好ましい。
【0040】
[反応行程式(C)]
【化8】

[式中、R4,R5は、前記と同じである。]
【0041】
一方、反応行程式(C)に示すように、第2ジイソシアナート(f)を、シロキサン結合を有する第2ジアミン化合物(g)でウレア結合により鎖延長し、イミド前駆体であるポリシロキサン−ウレア化合物(h)(以下、「化合物(h)」と言うことがある。)を得る。化合物(h)は、シロキサン構造単位を有するので、離型性に優れている。また、化合物(h)は、撥水性にも優れている。
【0042】
第2ジイソシアナート(f)としては、第1ジイソシアナート(a)で例示したのと同じジイソシアナートが挙げられる。第2ジイソシアナート(f)は、第1ジイソシアナート(a)と同じジイソシアナートであってもよいし、異なるジイソシアナートであってもよい。
【0043】
第2ジアミン化合物(g)としては、シロキサン結合を有する限り、特に限定されないが、前記一般式(3)で表される化合物等が好適である。前記一般式(3)中、R1およびR2は、それぞれ同一または異なる基であって、アルキレン基を示す。該アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。
【0044】
3〜R6は、それぞれ同一または異なる基であって、水素、アルキル基、フェニル基を示す。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜10の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられる。mは8〜160、好ましくは10〜100の整数を示す。
【0045】
第2ジアミン化合物(g)は、50〜70℃、1〜5mmHg、1時間〜3時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、第2ジアミン化合物(g)の重量平均分子量は500〜15,000、好ましくは500〜5,000であるのがよい。前記重量平均分子量は、第2ジアミン化合物(g)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0046】
反応は、第2ジイソシアナート(f)と第2ジアミン化合物(g)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、反応行程式(B)で例示したのと同じ溶媒の他、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0047】
[反応行程式(D)]
【化9】

[式中、R1〜R6,nは、前記と同じである。]
【0048】
(イミド変性エラストマーの合成)
最後に前記で得られた化合物(e),(h)を用いて、反応行程式(D)に従いイミド変性エラストマーを合成する。すなわち、化合物(e),(h)を混合した後、化合物(e),(h)の各々のウレア結合部にテトラカルボン酸二無水物(i)で連続した2つのイミドユニットを導入し、これにより前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーを得る。
【0049】
得られるイミド変性エラストマーは、前記一般式(I),(II)で表される各々の構造単位がランダム共重合した下記一般式(III)で表されるイミド変性エラストマーである。
【化10】

[式中、R1〜R6,nは、前記と同じである。]
【0050】
テトラカルボン酸二無水物(i)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の炭素数6〜18の芳香族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等の炭素数4〜6の脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
反応は、化合物(e),(h)と、テトラカルボン酸二無水物(i)との共重合反応である。該共重合反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれで行ってもよい。溶媒下で共重合反応を行う場合には、まず、化合物(e),(h)の混合物と、テトラカルボン酸二無水物(i)とを所定の割合で溶媒に加え、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは140〜160℃において、1時間〜10時間程度反応させ、ポリウレタンアミック酸(以下、「PUA」と言う。)を含む溶液を得る。
【0052】
PUAについて化合物(e)を例に挙げて説明すると、化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(i)とが反応して得られるPUAは、下記式(j)で表される。
【化11】

[式中、R1〜R3,R6,nは、前記と同じである。]
【0053】
化合物(e)と化合物(h)との混合比は、固形分換算による重量比で、化合物(e):化合物(h)=99:1〜1:99の範囲にするのが好ましく、99:1〜20:80の範囲にするのがより好ましい。これにより、前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位との共重合比が、重量比で、99:1〜1:99、好ましくは99:1〜20:80になる。特に化合物(e)の割合を多くすると、ウレタン構造単位の割合が多くなるので、得られるイミド変性エラストマーの耐摩耗性や引張強度が向上する傾向にある。
【0054】
化合物(e),(h)とテトラカルボン酸二無水物(i)との混合は、化合物(e)の合成で使用した第1ジアミン化合物(d)と化合物(h)の合成で使用した第2ジアミン化合物(g)との合計モル数をA、テトラカルボン酸二無水物(i)のモル数をBとしたとき、A:B=1:2〜1:2.02の範囲となる割合で混合するのが好ましい。これにより、確実にウレア結合部にイミドユニットを導入することができる。
【0055】
使用できる溶媒としては、反応行程式(B),(C)の溶液重合反応で例示したのと同じ溶媒が挙げられる。なお、反応行程式(B),(C)において溶液重合反応で化合物(e),(h)を得た場合には、該溶媒中でイミド化反応を行えばよい。
【0056】
ついで、前記で得たPUA溶液を70〜200℃で20分〜3時間程度かけて熱処理をした後、さらに加熱処理(脱水縮合反応)をしてイミド変性エラストマーを得る。加熱処理は、PUAが熱分解しない条件であり、150〜250℃で90〜150分の条件で行うのが好ましい。
【0057】
一方、無溶媒下でイミド化反応を行う場合には、通常の攪拌槽型反応器の他、排気系を有する加熱手段を備えた押出機の中でも行うことができるので、得られるイミド変性エラストマーを押し出して、そのままフィルム状ないしシート状に成形することができる。
【0058】
イミド変性エラストマーの重量平均分子量は10,000〜1,000,000、好ましくは15,000〜150,000、より好ましくは20,000〜100,000であるのがよい。前記分子量があまり小さいと、耐熱性および耐摩耗性が低下するおそれがあり、あまり大きいと、成形性が低下するおそれがあるので好ましくない。前記重量平均分子量は、前記PUA溶液をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した値である。なお、イミド変性エラストマーではなく、前記PUA溶液をGPCで測定するのは、イミド変性エラストマーがGPCの測定溶媒に不溶なためである。
【0059】
イミド変性エラストマーは、そのイミド分率、すなわちイミド変性エラストマー中のイミド成分の割合を調整することによって、弾性率を任意に調整することができる。イミド分率は、弾性率等に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、5〜45重量%、好ましくは5〜40重量%であるのがよい。
【0060】
前記イミド分率は、第1ジイソシアナート(a)、ポリオール(b)、第1ジアミン化合物(d)、第2ジイソシアナート(f)、第2ジアミン化合物(g)、化合物(e),(h)およびテトラカルボン酸二無水物(i)の仕込み量から算出される値であり、下記式(α)から算出される値である。
【0061】
【数1】

【0062】
イミド分率によって調整されるイミド変性エラストマーの弾性率としては、1.0×106〜1.0×109Pa程度であるのが好ましい。前記弾性率は、後述するように、動的粘弾性測定装置を用いて測定して得られる50℃での貯蔵弾性率E’の値である。
【0063】
イミド変性エラストマーからなる離型材の使用形態は、特に限定されるものではなく、例えばフィルム状ないしシート状等の形態で使用することができる。また、PUA溶液を遠心成形すればシームレスベルトの形態で使用することができる。PUA溶液を成形体に直接塗布するか、または噴霧した後に加熱処理をして皮膜状の形態で使用することもできる。
【0064】
本実施形態にかかる離型材は、太陽電池モジュールの製造に使用する他、例えばヒートシール用途、非粘着用途、熱処理用途、プラスチック加工用途、高周波乾燥用途等に使用することができる。具体例を挙げると、前記離型材からなる太陽電池モジュール製造用離型シート、前記離型材からなるベルト等が挙げられ、該ベルトとしては、例えば食品用搬送ベルト、基板搬送用ベルト等の搬送ベルト;駆動用ベルト;サクション(穴あき)ベルト等が挙げられる。また、本実施形態にかかる離型材は、ゴム弾性を有することから、例えばダイヤフラム、パッキン、ガスケット等にも使用することができる。本実施形態にかかる離型材は、前記で例示した用途に限定されず、高い離型性が要求される分野において、好適に用いることができる。
【0065】
次に、本発明の離型材にかかる他の実施形態について説明する。本実施形態にかかる離型材は、上述した一実施形態にかかるイミド変性エラストマーを繊維に保持させてなる。これにより、離型材の引張強度を向上させることができる。
【0066】
前記繊維としては、例えばガラス繊維、アルミナ繊維等の無機繊維;アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維等が挙げられ、特にガラス繊維が好ましい。また、例示したこれらの繊維のうち、耐熱性を有するものが好ましい。前記繊維における質量、厚さ、織密度等の形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じて所望の形状を有するものが採用可能である。
【0067】
イミド変性エラストマーを繊維に保持させる方法としては、効率よく保持させる上で、前記繊維をPUA溶液に浸漬し引き上げた後に加熱処理をするディップ法が好適である。また、ディップ法に代えて、PUA溶液を繊維上にロールtoロールでコーティングした後に加熱処理をするようにしてもよい。さらにPUA溶液を繊維に塗布するか、または噴霧した後に加熱処理をするようにしてもよい。その他の構成は、前記した一実施形態にかかる離型材と同様である。
【0068】
以上、本発明にかかるいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。例えば、上述した他の実施形態にかかる繊維は、イミド変性エラストマーを保持する保持材として使用するものであるが、フィラー(充填材)としても使用することができる。また、前記繊維からなるフィラーと、他のフィラーとを組み合わせて使用してもよい。さらに、前記繊維からなるフィラーに代えて、他のフィラーのみを使用してもよい。他のフィラーとしては、例えば短繊維や長繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ等の補強フィラー;無機フィラー;ナノサイズフィラー等が挙げられ、これら以外の各種の公知のフィラーを使用することもできる。
【0069】
イミド変性エラストマーにフィラーを加える方法としては、各種の公知の方法を採用することができる。具体例を挙げると、例えばロール、インターミックス、バンバリー等を用いてイミド変性エラストマーにフィラーを混練投入してもよいし、二軸押出機等の押出機でイミド変性エラストマーにフィラーを充填してもよい。フィラーが溶剤に可溶の場合には、フィラーを溶剤に溶かした状態でイミド変性エラストマーに混練してもよい。また、フィラーを、イミド変性エラストマーを得る前の中間段階の液状のものや、イミド変性エラストマーの合成に使用する薬品と共に充填してから合成を完了させる方法でもよい。その他の構成は、前記した各実施形態にかかる離型材と同様である。
【0070】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
イミド変性エラストマーからなる離型材を、前記反応工程式(A)〜(D)に基づいて合成した。各合成例に使用した材料は、次の通りである。
【0072】
・第1,第2ジイソシアナート(a),(f):4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート;三井化学(株)製の商品名「コスモネートPH」を用いた。
・ポリオール(b):ポリカーボネートジオール(1)またはポリエステルジオール(2)を用いた。
・ポリカーボネートジオール(1):旭化成ケミカルズ社製の「デュラノール T5652」;重量平均分子量2,000;前記式(1)中、xは5または6、yは14〜15の整数を示す。
・ポリエステルジオール(2):クラレ社製の商品名「P1050」;重量平均分子量1,000;前記式(2)中、zは3〜4の整数を示す。
・第1ジアミン化合物(d):4,4’−ジアミノジフェニルメタン;三井化学(株)製の商品名「MDA−220」を用いた。
・第2ジアミン化合物(g):信越化学工業(株)製の商品名「X−22−161B」;前記一般式(3)中、R1およびR2は、いずれもプロピレン基を示す。R3〜R6は、いずれもメチル基を示す。mは30〜40の整数を示す。
・テトラカルボン酸二無水物(i):三菱ガス化学(株)製の無水ピロメリット酸を用いた。
・繊維:ユニチカ社製のガラス繊維「H201 M 104F」;質量210g/m2、厚さ0.18mm、平織り、織密度(縦×横)42×32本/25mmを用いた。
【0073】
<合成例1〜4:離型材A〜D>
(ウレタンプレポリマー(c1)の合成)
まず、第1ジイソシアナート(a)を減圧蒸留し、ポリオール(b)を80℃、2〜3mmHg、24時間の条件で減圧乾燥した。ポリオール(b)としては、ポリカーボネートジオール(1)を用いた。
【0074】
ついで、第1ジイソシアナート(a)35gと、ポリオール(b)140gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、窒素ガス雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマー(c1)を得た。このウレタンプレポリマー(c1)をGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は11,000であった。
【0075】
(ポリウレタン−ウレア化合物(e1)の合成)
ついで、第1ジアミン化合物(d)を、該第1ジアミン化合物(d)とウレタンプレポリマー(c1)とを合計した固形分濃度が15重量%の割合になるように計量した三菱化学社製のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に加えて溶解した。そして、この溶液全量を、上記で得たウレタンプレポリマー(c1)に加えて混合溶液を得た。この混合溶液において、残存イソシアナート(残存イソシアナト基)とアミンとの割合は、等モルにした。この混合溶液を窒素ガス雰囲気下、室温(23℃)で24時間攪拌して、固形分濃度15重量%のポリウレタン−ウレア化合物(e1)の溶液を得た。
【0076】
(ポリシロキサン−ウレア化合物(h)の合成)
まず、第2ジアミン化合物(g)207.57gを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコに加え、60℃、2〜3mmHg、2時間の条件で減圧乾燥した。ついで、固形分濃度が60重量%になるようにシクロヘキサノン150gで第2ジアミン化合物(g)を溶解した。
【0077】
この溶液に第2ジイソシアナート(f)17.43gを加え、窒素ガス雰囲気下、60℃で4時間攪拌した後、温度を60℃から室温(23℃)に下げ、この温度で24時間攪拌して、ポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液を得た。このポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液は、シクロヘキサノン1125gに加えて、固形分濃度を15重量%に調整した。
【0078】
(イミド変性エラストマー(1)〜(4)の合成)
まず、上記で得たポリウレタン−ウレア化合物(e1)の溶液に、ポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液を表1に示す割合で加えて攪拌した。表1中、「化合物(e):化合物(h)」は、固形分換算での重量比を示す。なお、合成例1〜4における表1中の「化合物(e)」は、ポリウレタン−ウレア化合物(e1)を示す。
【0079】
ついで、窒素ガス雰囲気下、温度を室温(23℃)から150℃に昇温した後、テトラカルボン酸二無水物(i)を所定の割合で加えた。この溶液に、固形分濃度が15重量%になるように所定量のNMPをさらに加え、150℃で7時間攪拌して、PUA溶液を得た。
【0080】
得られたPUA溶液を遠心成形機の金型に流し込み、120℃で300rpm、2時間遠心成形してPUAシートを得た。このPUAシートを金型ごと減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)し、前記一般式(I)中のnが1〜100のイミド変性エラストマー(1)〜(4)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材A〜Dを得た。
【0081】
得られたイミド変性エラストマー(1)〜(4)について、イミド分率、弾性率および重量平均分子量を測定した。各測定方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0082】
(イミド分率)
前記式(α)から算出した。
【0083】
(弾性率)
セイコーインスツルメンツ社(Seiko Instruments Inc.)製の動的粘弾性測定装置「DMS 6100」を用いて、10Hz、5℃/分、−100〜400℃の昇温過程において、50℃での貯蔵弾性率E’を測定した。
【0084】
(重量平均分子量)
PUA溶液をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した。
【0085】
また、前記イミド変性エラストマー(1)〜(4)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、いずれも1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0086】
<合成例5:離型材E>
ポリオール(b)として、ポリエステルジオール(2)を140g、第1ジイソシアナート(a)を61.3g用いた以外は、前記合成例1〜4と同様にして、重量平均分子量8,000のウレタンプレポリマー(c2)を得た。
【0087】
ついで、前記で得たウレタンプレポリマー(c2)を用いた以外は、前記合成例1〜4と同様にしてポリウレタン−ウレア化合物(e2)の溶液を得た。そして、このポリウレタン−ウレア化合物(e2)の溶液に、ポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液を表1に示す割合で加えて攪拌した以外は、前記合成例1〜4と同様にしてPUAシートを得、このPUAシートを加熱処理して前記一般式(I)中のnが1〜100のイミド変性エラストマー(5)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材Eを得た。
【0088】
得られたイミド変性エラストマー(5)について、前記合成例1〜4と同様にしてイミド分率、弾性率および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。また、前記イミド変性エラストマー(5)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0089】
<比較合成例1:離型材F>
まず、前記合成例1〜4と同様にしてポリウレタン−ウレア化合物(e1)の溶液を得た。ついで、この溶液にポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液を加えず、テトラカルボン酸二無水物(i)を30.54g用いた以外は、前記合成例1〜4と同様にしてPUAシートを得、このPUAシートを加熱処理して前記一般式(I)中のnが1〜100のイミド変性エラストマー(6)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材Fを得た。
【0090】
得られたイミド変性エラストマー(6)について、前記合成例1〜4と同様にしてイミド分率、弾性率および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。また、前記イミド変性エラストマー(6)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0091】
<比較合成例2:離型材G>
まず、前記合成例5と同様にしてポリウレタン−ウレア化合物(e2)の溶液を得た。ついで、この溶液にポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液を加えず、テトラカルボン酸二無水物(i)を61.07g用いた以外は、前記合成例1〜4と同様にしてPUAシートを得、このPUAシートを加熱処理して前記一般式(I)中のnが1〜100のイミド変性エラストマー(7)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材Gを得た。
【0092】
得られたイミド変性エラストマー(7)について、前記合成例1〜4と同様にしてイミド分率、弾性率および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。また、前記イミド変性エラストマー(7)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0093】
<比較合成例3:離型材H>
まず、前記合成例1〜4と同様にしてポリシロキサン−ウレア化合物(h)の溶液を得た。ついで、この溶液をポリウレタン−ウレア化合物(e1)の溶液に加えず、テトラカルボン酸二無水物(i)を30.38g用いた以外は、前記合成例1〜4と同様にしてPUAシートを得、このPUAシートを加熱処理してイミド変性エラストマー(8)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材Hを得た。
【0094】
得られたイミド変性エラストマー(8)について、前記合成例1〜4と同様にしてイミド分率、弾性率および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。また、前記イミド変性エラストマー(8)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0095】
<合成例6:離型材I>
まず、前記合成例2と同様にしてPUA溶液を得た。ついで、該PUA溶液を繊維(ガラス繊維)上にロールtoロールでコーティングし、80℃で30分間熱処理をした。ついで、前記合成例2と同様に200℃、2時間で加熱処理(脱水縮合反応)をして、ガラス繊維に保持させたイミド変性エラストマー(2)からなる厚さ0.4mmのシート状の離型材Iを得た。
【0096】
<比較合成例4,5:離型材J,K>
まず、前記比較合成例1,2と同様にして各PUA溶液を得た。ついで、これらのPUA溶液を用いた以外は、前記合成例6と同様にしてガラス繊維に保持させたイミド変性エラストマー(6),(7)からなる厚さ0.4mmのシート状の離型材J,Kを得た。
【0097】
【表1】

【0098】
[実施例1〜5および比較例1〜3]
前記合成例1〜5および比較合成例1〜3で得た離型材A〜Hについて、180°剥離強度、テーバー摩耗量、引張強度、伸度および熱老化伸度変化率を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表2に示す。
【0099】
(180°剥離強度)
まず、エチレンビニルアセテート樹脂からなる厚さ0.15mmのシートに、離型材A〜Hを180℃の温度をかけながらプレスして融着させた。ついで、23℃の雰囲気温度下、ロードセルを用いて300mm/分の速度で離型材A〜Hを前記シートから180°剥離し、JIS Z0237に準拠して180°剥離強度を測定した。
【0100】
(テーバー摩耗量)
(株)安田精機製作所製のテーバー摩耗試験機「5150 ABRASER」の摩耗輪H−18を1000回転させたときの離型材A〜Hの摩耗量を測定した。
【0101】
(引張強度および伸度)
離型材A〜Hを3号ダンベルで打ち抜き、標線間20mm、500mm/分の条件で、JIS K6251に準拠して引張強度および伸度を測定した。
【0102】
(熱老化伸度変化率)
離型材A〜Hを150℃で72時間、ギアオーブン中で熱老化させた後、前記した引張強度と同じ条件で、JIS K6257に準拠して伸度を測定した。そして、熱老化前後の伸度を式:[(熱老化後の伸度/熱老化前の伸度)−1]×100に当てはめて熱老化伸度変化率(%)を算出した。
【0103】
[比較例4]
ポリテトラフルオロエチレン〔テフロン(登録商標)〕からなる厚さ0.05mmのシート状の離型材Lとして、中興化成工業社製の「スカイブドテープ」を用いた。この離型材Lについて、前記実施例1〜5と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量、引張強度、伸度および熱老化伸度変化率を評価した。その結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
表2から明らかなように、前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマー(1)〜(5)からなる実施例1〜5は、180°剥離強度の値が小さいことから、離型性に優れているのがわかる。特に、ポリウレタン−ウレア化合物(e)の割合が多い、すなわち前記一般式(I)で表される構造単位の割合が多い実施例1〜3,5は、テーバー摩耗量が少なく、引張強度が高い結果を示した。
【0106】
[実施例6および比較例5,6]
前記合成例6で得た離型材Iおよび前記比較合成例4,5で得た離型材J,Kについて、前記実施例1〜5と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量および引張強度を評価した。その結果を表3に示す。
【0107】
[比較例7]
ガラス繊維に保持させたポリテトラフルオロエチレンからなる厚さ0.24mmのシート状の離型材Mとして、中興化成工業社製の「FGF−500−10」を用いた。この離型材Mについて、前記実施例1〜5と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量および引張強度を評価した。その結果を表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
表3から明らかなように、ガラス繊維に保持させたイミド変性エラストマー(2)からなる実施例6は、離型性に優れているのがわかる。
【0110】
[実施例7および比較例8,9]
前記合成例2で得た離型材B、前記比較合成例1で得た離型材F、前記比較例4で用いた離型材Lについて、水に対する接触角を評価した。評価方法を以下に示すとともに、その結果を表4に示す。
【0111】
(水に対する接触角)
接触角計(協和界面科学(株)製の「DM−100」)を用いて測定した。
【0112】
[比較例10]
シリコーンゴムからなる厚さ0.2mmのシート状の離型材Nとして、東レ・ダウコーニング社製の「SH75UN」を用いた。この離型材Nについて、前記実施例7と同様にして水に対する接触角を評価した。その結果を表4に示す。
【0113】
【表4】

【0114】
表4から明らかなように、実施例7は、比較例9,10と同様の撥水性を有しているのがわかる。
【符号の説明】
【0115】
1 積層体
2 太陽電池セル
3 封止剤
4 保護ガラス
5 バックシート
10 太陽電池モジュール
50 熱板
51 離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化12】

[式(I),(II)中、R1およびR4は、それぞれ同一または異なる基であって、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R5は、シロキサン結合を有する2価の基を示す。R6は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表される構造単位と、前記一般式(II)で表される構造単位との共重合比が、重量比で、99:1〜1:99である請求項1記載の離型材。
【請求項3】
前記イミド変性エラストマーは、
第1ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを、第1ジアミン化合物でウレア結合により鎖延長したポリウレタン−ウレア化合物と、
第2ジイソシアナートを、シロキサン結合を有する第2ジアミン化合物でウレア結合により鎖延長したポリシロキサン−ウレア化合物と、を混合した後、
前記ポリウレタン−ウレア化合物と前記ポリシロキサン−ウレア化合物の各々のウレア結合部にテトラカルボン酸二無水物でイミドユニットを導入した共重合体である請求項1または2記載の離型材。
【請求項4】
前記ポリオールが、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の離型材。
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオールが、下記式(1)で表されるポリカーボネートジオールである請求項4記載の離型材。
【化13】

[式中、xは5または6の整数を示す。yは1〜76の整数を示す。]
【請求項6】
前記ポリエステルポリオールが、下記式(2)で表されるポリエステルジオールである請求項4または5記載の離型材。
【化14】

[式中、zは1〜37の整数を示す。]
【請求項7】
前記第2ジアミン化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項3〜6のいずれかに記載の離型材。
【化15】

[式中、R1およびR2は、それぞれ同一または異なる基であって、アルキレン基を示す。R3〜R6は、それぞれ同一または異なる基であって、水素、アルキル基、フェニル基を示す。mは8〜160の整数を示す。]
【請求項8】
繊維に保持させた、下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(II)で表される構造単位とが共重合されたイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化16】

[式(I),(II)中、R1およびR4は、それぞれ同一または異なる基であって、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R5は、シロキサン結合を有する2価の基を示す。R6は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。]
【請求項9】
前記繊維が、ガラス繊維である請求項8記載の離型材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の離型材からなる太陽電池モジュール製造用離型シート。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の離型材からなるベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2012−81683(P2012−81683A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231286(P2010−231286)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】