説明

離液抑制方法

【課題】酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液(シネレシス)の抑制方法、該組成物の離液抑制剤および該抑制剤を含有する水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】無水ケイ酸(特に、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸)を配合することにより、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液を抑制する方法、該無水ケイ酸を含有してなる金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液抑制剤、および金属酸化物ならびに離液抑制剤として該無水ケイ酸を含有する水中油型乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛などの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物は、その吸油性に基づく患部の乾燥作用・耐皮脂作用・紫外線遮蔽作用・消臭作用等により、医薬品分野・化粧品分野等において、皮膚外用剤等に汎用されている。これらの皮膚外用剤としては、金属酸化物の分散安定性の観点から主に油中水型乳化組成物が使用されているが、油感が強く良好な使用感が得られないといった場合が多い。これに対し水中油型乳化組成物は、みずみずしい使用感をもつことから化粧品、医薬品に対し良好な使用感を付与することができる。
【0003】
しかしながら、水中油型乳化組成物においては、経時的に組成物から水性成分がしみ出してくる現象、いわゆる離液(シネレシス:Syneresis)が生じる場合がある。一般的には、水中油型乳化組成物は油中水型乳化組成物と異なり連続相が粘性の低い水相であるため、何らかの原因により油滴が経時的に凝集して組成物が凝集し、水相のしみ出しが生じるものと考えられているが、その発生原因の詳細は不明であり、配合成分等の影響も考えられる。離液は、水中油型乳化組成物の経時的な品質低下の原因となる。特に医薬品分野においては、離液により薬効成分の均一性が損なわれることになり、安全性の観点からも問題となり得る。
【0004】
このような水中油型乳化組成物における離液を抑制する手段として、例えば連続相である水相の粘性を向上させる手段が知られている。かかる手段は、水相の粘性を向上させることで、油滴の分散性を高めることにより離液を抑制するものである(特許文献1、2、3及び4参照)。
【0005】
また、表面を疎水化処理されていてもよい酸化亜鉛を含有する水中油型乳化組成物の系における離液の抑制手段として、例えばクエン酸乃至はその塩を配合することが知られている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特表2003−502356号公報
【特許文献2】特表2004−522751号公報
【特許文献3】特表2003−518010号公報
【特許文献4】特表2003−518008号公報
【特許文献5】特開2007−277191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、酸化亜鉛などの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物において、離液を抑制する方法を提供することにある。また、本発明は、離液が発生する金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物における離液抑制剤、及び離液が抑制された、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の系において生じる離液を抑制するために、まず最初にその発生原因を検討した。その結果、係る系においては、金属酸化物の添加が離液の発生原因であることを見出した。即ち、金属酸化物のような粒子が添加されていない状態では、離液は発生しないが、金属酸化物の添加によりゲルの凝集が発生し、離液が発生する(後述する参考例参照)。このような離液を抑制するために、本発明者らは従来技術に鑑み、組成物の粘性を向上させることによって離液を抑制することを試みた。しかしながら、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物においては、粘性向上に一般的に使用される水溶性高分子等の増粘剤やタルク等の粉体を配合することにより稠度を向上させるだけでは、離液を抑制することは困難であった。また、過度の粘性の向上は組成物使用時におけるべたつきの原因ともなり、使用感を低下させる原因ともなるため、増粘剤の配合には必然的に限界があった。
そこで、本発明者らは、更に鋭意検討したところ、無水ケイ酸が、良好な使用感を維持しつつ、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液を抑制することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[15]に関する。
[1]無水ケイ酸を配合することにより、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液を抑制する方法。
[2]金属酸化物が、酸化亜鉛又は酸化チタンである[1]に記載の方法。
[3]無水ケイ酸が、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸である[1]又は[2]に記載の方法。
[4]無水ケイ酸を含有してなる、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液抑制剤。
[5]金属酸化物が、酸化亜鉛又は酸化チタンである[4]に記載の離液抑制剤。
[6]無水ケイ酸が、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸である[4]又は[5]に記載の離液抑制剤。
[7]金属酸化物及び無水ケイ酸を含有する水中油型乳化組成物。
[8]金属酸化物及び離液を抑制する成分として無水ケイ酸を含有する水中油型乳化組成物。
[9]金属酸化物及び無水ケイ酸を含有する離液の抑制された水中油型乳化組成物。
[10]金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物において、さらに無水ケイ酸を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
[11]金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物において、離液を抑制するためにさらに無水ケイ酸を含有させることを特徴とする水中油型乳化組成物。
[12]金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物において、さらに無水ケイ酸を含有することを特徴とする離液の抑制された水中油型乳化組成物。
[13]金属酸化物が、酸化亜鉛又は酸化チタンである[7]〜[12]のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
[14] 無水ケイ酸が、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸である[7]〜[13]のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
[15]水中油型乳化組成物が、医薬品又は化粧品である、[7]〜[14]のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、離液の抑制され、かつ使用感のよい酸化亜鉛などの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いられる「金属酸化物」としては、具体的には例えば、酸化亜鉛や酸化チタンなどが挙げられる。好ましい金属酸化物としては酸化亜鉛が挙げられる。本発明においては、金属酸化物の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子構造(多孔質、無孔質等)は特に制限されない。また、金属酸化物は、その表面が疎水化処理されていてもよい。ここで、表面の疎水化処理としては、通常の医薬品・化粧品等の粉体でなされているものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ハイドロジェンメチルポリシロキサン焼付、ジメチルポリシロキサン焼付、パーフルオロアルキルシリル化剤処理、脂肪酸アルミニウム石鹸被覆処理、ポリエチレン被覆処理、レシチン被覆処理、アシルグルタミン酸アルミニウム被覆処理などが挙げられ、本発明においてはこれらを複数種組み合わせて用いてもよい。本発明における金属酸化物としては、酸化亜鉛又は酸化チタンが好ましく、より好ましくは酸化亜鉛であり、医薬品として製剤化する場合の酸化亜鉛としては、第十五改正日本薬局方に記載の酸化亜鉛が好ましい。本発明の金属酸化物としては、市販品等を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、酸化亜鉛(堺化学工業社製)、酸化チタンA−HR(フロイント産業製)等が挙げられる。
【0011】
金属酸化物の平均一次粒子径は特に制限されないが、分散安定性の観点から、0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.7μmが特に好ましい。なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物中の酸化亜鉛又は酸化チタンなどの金属酸化物の含有量は特に制限されないが、分散安定性、及び薬理効果等の観点から、水中油型乳化組成物全質量に対し、総量で1〜40質量%が好ましく、3〜20質量%が特に好ましい。また、本発明の離液を抑制する方法及び離液抑制剤においては、分散安定性、及び薬理効果等の観点から、無水ケイ酸を配合した後における金属酸化物の含有量が、上記範囲内となるよう配合するのが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる「無水ケイ酸」としては、四塩化ケイ素を水素・酸素炎中で加水分解等して得られる親水性の無水ケイ酸や、親水性の無水ケイ酸の表面を疎水化処理した疎水性の無水ケイ酸が挙げられ、本発明においては、離液抑制効果の観点から、親水性無水ケイ酸であるのが好ましい。本発明においては、市販品等を使用することができ、具体的な市販品としては例えば、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR202、アエロジルRY200(以上、日本アエロジル社製)、アドソリダー101(以上、フロイント社製)等が挙げられる。
【0014】
無水ケイ酸の平均一次粒子径は特に制限されないが、離液抑制効果や分散安定性などの観点から、0.001〜0.5μmが好ましく、0.0025〜0.25μmがより好ましく、0.005〜0.1μmが特に好ましい。なお、無水ケイ酸の平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。また、無水ケイ酸の比表面積は特に制限されないが、離液抑制効果の観点から、1〜1000m/gが好ましく、5〜500m/gが特に好ましい。なお、無水ケイ酸の比表面積は、BET法により測定することができる。
【0015】
本発明の水中油型乳化組成物中の無水ケイ酸の含有量は特に制限されないが、水中油型乳化組成物の離液抑制効果の観点から、水中油型乳化組成物全質量に対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3.5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。また、本発明の離液を抑制する方法及び離液抑制剤においては、水中油型乳化組成物の離液抑制効果の観点から、無水ケイ酸を配合した後における無水ケイ酸の含有量が、上記範囲内となるよう配合するのが好ましい。
【0016】
本発明の水中油型乳化組成物における酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物と無水ケイ酸の含有比は、特に制限されないが、水中油型乳化組成物の離液抑制効果の観点から、酸化亜鉛などの金属酸化物1質量部に対し無水ケイ酸0.02〜10質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部がさらに好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。また、本発明の離液を抑制する方法及び離液抑制剤においては、水中油型乳化組成物の離液抑制効果の観点から、水中油型乳化組成物における金属酸化物と無水ケイ酸との含有比が、上記範囲内となるよう配合するのが好ましい。
【0017】
本発明において「水中油型乳化組成物」とは、連続相が水相である乳化剤形の総称を意味し、水中油中水等の複合乳化剤形であっても、連続相として水相が存在する限り、「水中油型乳化組成物」に包含される。
また、本発明の「水中油型乳化組成物」は、離液抑制剤として無水ケイ酸を含有していることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の水中油型乳化組成物中の水の含有量は特に制限されないが、乳化系の安定性の観点から、本発明の水中油型乳化組成物全質量に対し30〜99質量部含有するのが好ましく、40〜95質量部含有するのがより好ましく、50〜90質量部含有するのが特に好ましい。また、本発明の離液を抑制する方法及び離液抑制剤においては、乳化系の安定性の観点から、無水ケイ酸を配合した後における水の含有量が、上記範囲内となるよう配合するのが好ましい。
【0019】
本発明の水中油型乳化組成物の油相を構成する油性成分としては、医薬品・化粧品等において使用される成分であれば特に限定されず、具体的には例えば、炭化水素類(白色ワセリン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、スクワラン等)、ロウ類(サラシミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等)、油脂類(大豆油、ハードファット、ヒマシ油、オリーブ油等)、アルコール類(セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等)、エステル類(アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、乳酸セチル等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等)、シリコーン油(メチルポリシロキサン等)、ビタミン誘導体類(パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。本発明の水中油型乳化組成物におけるこれらの油性成分の含有量は特に制限されないが、乳化系の安定性の観点から、本発明の水中油型乳化組成物全質量に対し、総量で1〜50質量部含有するのが好ましく、5〜30質量部含有するのがより好ましく、10〜20質量部含有するのが特に好ましい。また、本発明の離液を抑制する方法及び離液抑制剤においては、無水ケイ酸を配合した後における油性成分の含有量が、上記範囲内となるよう配合するのが好ましい。
【0020】
本発明の水中油型乳化組成物に使用される乳化剤としては、医薬品・化粧品等において使用される成分であれば特に限定されず、具体的には例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ステアリン酸ポリオキシル等)、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート等)、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ショ糖脂肪酸エステル、モノアシルグリセロール(モノステアリン酸グリセリル等)、ジアシルグリセロール(ジステアリン酸グリセリル等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ジグリセリル等)、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等)、レシチン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(モノラウリン酸ポリエチレングリコール等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等)、アルキル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩(ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。本発明の水中油型乳化組成物におけるこれらの乳化剤の含有量は特に制限されないが、乳化系の安定性の観点から、本発明の水中油型乳化組成物全質量に対し、総量で0.5〜10質量部含有するのが好ましく、1〜10質量部含有するのがより好ましく、2〜10質量部含有するのが特に好ましい。また、本発明の離液を抑制する方法及び離液抑制剤においては、乳化系の安定性の観点から、無水ケイ酸を配合した後における乳化剤の含有量が、上記範囲内となるよう配合するのが好ましい。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物において、水相と油相の質量比は特に制限されないが、乳化系の安定性の観点から、水相/油相が1/1〜100/1が好ましく、2/1〜20/1がより好ましく、3/1〜10/1が特に好ましい。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物には、前記成分以外に、使用目的、形態等種々の条件に応じて、必要により水性成分、防腐剤、酸化防止剤、他の薬効成分等を含有せしめることができる。なお、日焼け止め化粧品用の水中油型乳化組成物においては、金属酸化物及び無水ケイ酸以外の粉体成分を紫外線の遮蔽のために配合してもよいが、離液抑制効果の観点からは、金属酸化物(特に酸化亜鉛)と無水ケイ酸以外の粉体成分を実質的に含有しないのが好ましい。
【0023】
水性成分としては、例えば、低級アルコール類(エタノール、イソプロピルアルコール等)、多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等)、水溶性高分子類(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、水溶性コラーゲン、ヒアルロン酸等)、アミノ酸類(グリシン、アラニン等)、その他(クエン酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、本発明の水中油型乳化組成物は、ダイフラクトースアンハイドライド、桂皮酸誘導体等の有機化合物系紫外線吸収剤や、ヘキサノイルロドデンドロールを実質的に含有しないのが好ましい。
【0024】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
他の薬効成分としては、本発明の水中油型乳化組成物の使用目的に応じて適宜選択でき、具体的には例えば、消炎鎮痒剤(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、アクタリット、アセメタシン、アンピロキシカム、イブプロフェン、インドメタシン、エトドラク、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、スリンダク、セレコキシブ、チアプロフェン酸、テノキシカム、ナプロキセン、ピロキシカム、フェルビナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、メフェナム酸、メディコキシブ、メロキシカム、モフェゾラク、レフェコキシブ、ロキソプロフェン、ロベンザリット、ロルノキシカム、ブフェキサマク、アンチピリン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸エチレングリコール、アルニカチンキ、セイヨウトチノキ種子エキス、サンシシ乾燥エキス、カンフル、メントール等)、抗菌剤(クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、クロコナゾール、イソコナゾール、ピロールニトリン、ブテナフィン、テルビナフィン、オモコナゾール、ラノコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、リラナフテート、トルナフテート、チアントール、イソプロピルメチルフェノール、ホモスルファミン、クロルへキシジン、スルファジアジン、トリクロロカルバニライド等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(アミノ安息香酸エチル、リドカイン、ジブカイン、テシットデシチン等)、うっ血除去剤(エフェドリン、メチルエフェドリン等)、創傷治癒剤(アラントイン、アルミニウム・クロルヒドロキシアラントイネート等)、保湿剤(1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、グリシン、アラニン等、ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質、ソルビトール、トレハロース、尿素、乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩等)等を配合でき、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物の稠度は、特に制限されないが、べたつき等の使用感の観点から、3〜30gが好ましく、5〜20gがより好ましく、5〜10gが特に好ましい。なお、ここで稠度は、25℃にて直径1cmの金属球を速度30mm/minで1cm進入させた際の応力の最大値を表し、例えば、レオメータ(3002D−L、FUDOH社製)で測定することができる。
【0028】
本発明の水中油型乳化組成物のpHは、皮膚刺激の観点から、3〜9が好ましく、4〜8がより好ましい。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物は、使用目的に応じてクリーム、乳液、ローション、軟膏などの剤形とすることができ、連続相を水相とする乳化剤形であれば特に制限されない。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物は、具体的な剤形等に応じて常法に従って製造することができる。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物は、酸化亜鉛のもつ吸油性に基づく患部の乾燥作用、耐皮脂作用、紫外線遮蔽作用、消臭作用等により、例えばあせも、ただれ、かぶれ、かゆみ等の症状の治療・緩和のための皮膚外用剤;日焼け止め化粧品;デオドラント化粧品等として使用できる。
【0032】
以下に、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
ヒドロキシエチルセルロース(ナトロゾール250HHR:HERCULES社製)1g及びクエン酸水和物0.2gを全量が100gとなる量に相当する精製水に加え、80℃に加熱したものを水相とした。一方、ステアリン酸4g、セタノール2.5g、ミリスチン酸オクチルドデシル6g、軽質流動パラフィン5g、ステアリン酸ポリオキシル40 1.5g、ポリソルベート20 1.5g及びモノオレイン酸ソルビタン0.5gを加えて80℃に加熱混合したものを油相とした。水相に油相を加え、80℃で撹拌・混合して乳化した後に50℃以下に冷却し、無水ケイ酸(アエロジル300:日本アエロジル社製、平均一次粒子径:約7nm(動的光散乱法により測定)、比表面積:約300m/g(BET法により測定))1g及び酸化亜鉛(日本薬局方 酸化亜鉛:堺化学工業社製)10gを加えて撹拌し、室温に冷却し実施例1としてクリーム剤を製造した。
【0034】
〔実施例2〕
実施例1において無水ケイ酸の配合量を2gとしたものを実施例2としてクリーム剤を製造した。
【0035】
〔参考例1〕
実施例1において酸化亜鉛を配合しないものを参考例1としてクリーム剤を製造した。
【0036】
〔比較例1〕
実施例1において無水ケイ酸を配合しないものを比較例1としてクリーム剤を製造した。
〔比較例2〕
比較例1においてミリスチン酸オクチルドデシルの配合量を7.5gとしたものを比較例2としてクリーム剤を製造した。
〔比較例3〕
実施例1において無水ケイ酸の代わりに一般に増粘剤として使用されるキサンタンガムを0.3g配合したものを比較例3としてクリーム剤を製造した。
〔比較例4〕
比較例2においてさらにキサンタンガムを0.1g配合したものを比較例4としてクリーム剤を製造した。
〔比較例5〕
実施例1において無水ケイ酸の代わりにタルクを10g配合したものを比較例5としてクリーム剤を製造した。
【0037】
〔試験例1〕
実施例1、2、参考例1及び比較例1〜5のクリーム剤について、調製直後の稠度、及び60℃1ヶ月保存後の離液の有無、及び使用感を評価した。
稠度はレオメータ(3002D−L、FUDOH社製)を用いて、25℃にて直径1cmの金属球を速度30mm/minで1cm進入させた際の応力の最大値として測定した。
離液の有無は、クリーム剤をガラス製の密閉容器に充填し、60℃1ヶ月保存した後、外観を目視により評価し、離液が認められなかったものを○、離液が認められたものを×とした。
使用感は、官能試験にて評価した。官能試験は5名のパネラーにより実施した。使用感の評価は、半数以上のパネラーが「べたつきを感じず、使用感が良い」と答えたものを○、「べたつきを感じる」と答えたものを×とした。
試験例1の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
酸化亜鉛を含有しない参考例1のクリーム剤においては離液が生じていないにも関わらず、酸化亜鉛を含有する比較例1〜5のクリーム剤においては離液が生じたことから、水中油型乳化組成物の高温・長期保存後の離液が酸化亜鉛の配合に起因するものであることが確認された。なお、比較例1〜5のクリーム剤において酸化亜鉛の凝集・沈降等は見られなかった。
また、実施例1及び2のクリーム剤は、稠度が比較例1〜5のクリーム剤の稠度と同等か又はそれ以下であるにも関わらず特異的に離液が抑制されていたことから、酸化亜鉛を含有する水中油型乳化組成物における系では、単に組成物の粘性を向上させても離液を抑制できるものでなく、また、実施例1及び2の水中油型乳化組成物における離液の抑制作用は単なる組成物の粘性の向上によるものではなく、無水ケイ酸を配合させたことに基づく効果であることが明らかとなった。
さらに、実施例1及び2のクリーム剤は、べたつきがなく、使用感がよいことが明らかとなった。
【0040】
以上の試験結果より、酸化亜鉛などの金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物に、さらに無水ケイ酸を含有せしめることにより、離液の抑制され、かつ使用感のよい水中油型乳化組成物が得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水ケイ酸を配合することにより、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液を抑制する方法。
【請求項2】
金属酸化物が、酸化亜鉛又は酸化チタンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無水ケイ酸が、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
無水ケイ酸を含有してなる、金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物の離液抑制剤。
【請求項5】
金属酸化物が、酸化亜鉛又は酸化チタンである請求項4に記載の離液抑制剤。
【請求項6】
無水ケイ酸が、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸である請求項4又は5に記載の離液抑制剤。
【請求項7】
金属酸化物を含有する水中油型乳化組成物において、さらに無水ケイ酸を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項8】
金属酸化物が、酸化亜鉛又は酸化チタンである請求項7に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
無水ケイ酸が、平均一次粒子径0.001〜0.5μmの親水性無水ケイ酸である請求項7又は8に記載の水中油型乳化組成物。

【公開番号】特開2010−6777(P2010−6777A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170460(P2008−170460)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】