難分解性有機塩素化合物の分解方法及びカーボンナノチューブ複合材料
【課題】難分解性の揮発性有機塩素化合物(CVOC)、特に低濃度で広範に亘って分散された難分解性有機塩素化合物を低コストで簡便及び安全に回収し、低エネルギーで完全に無害化する。
【解決手段】酸性条件下におけるゾルゲル法を用いてCNTに対してチタニアを担持させた、チタニア担持カーボンナノチューブ複合材料を作製した。担持プロセスではpHを操作することにより、ゾル時のTiO2の粒子径を制御し、その結果CNTに担持されたTiO2の粒子の大きさを変化させた。pH=3の場合は比較的大きい粒子径のTiO2を使用し、pH=1の場合は、より小さい粒子径のTiO2を用いた。CNTBに比較的大きい粒子径を有するチタニアを担持させた触媒をTiO2/CNTBとし、より小さい粒子径のTiO2を担持させた触媒をnanoTiO2/CNTBとした。これらは、CVOC吸着能とCVOC分解能とをともに備え、吸着と分解とを単体で行うことができるハイブリッド処理が可能な複合材料となりうることを確認した。
【解決手段】酸性条件下におけるゾルゲル法を用いてCNTに対してチタニアを担持させた、チタニア担持カーボンナノチューブ複合材料を作製した。担持プロセスではpHを操作することにより、ゾル時のTiO2の粒子径を制御し、その結果CNTに担持されたTiO2の粒子の大きさを変化させた。pH=3の場合は比較的大きい粒子径のTiO2を使用し、pH=1の場合は、より小さい粒子径のTiO2を用いた。CNTBに比較的大きい粒子径を有するチタニアを担持させた触媒をTiO2/CNTBとし、より小さい粒子径のTiO2を担持させた触媒をnanoTiO2/CNTBとした。これらは、CVOC吸着能とCVOC分解能とをともに備え、吸着と分解とを単体で行うことができるハイブリッド処理が可能な複合材料となりうることを確認した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難分解性の揮発性有機塩素化合物を無害化する難分解性有機塩素化合物の分解方法、及び難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理とに適用されるカーボンナノチューブ複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラクロロエチレン(以下、PCEという)に代表される揮発性有機塩素化合物(以下、CVOCという)は、油溶性や揮発性が高いという性質を利用して溶剤や各種洗浄剤等、様々な用途に利用されてきた。しかし、近年、CVOCが深刻な水質汚染、特に地下水汚染を引き起こしていることがわかってきている。CVOCは、発ガン性、生体内蓄積性、催奇性等といった毒性を有するため、これらが大気、水中、土壌等に混入して起こる汚染問題、特に地下水汚染問題に対して早急な対応が迫られる一方で、CVOCが難生分解性であるため現在主流となっている微生物による処理が難しいこと、またCVOCによる低濃度の汚染が大量に且つ広範に亘っているため汚染水を全て汲み上げて処理するのに多大な費用、労力を要することなどから、解決するのは非常に困難な問題でもある。
【0003】
CVOCを無害化する技術として、液状のポリ塩化ビフェニル(以下、PCBという)に対しては、燃焼処理、紫外線処理、高温高圧アルカリ処理が、また低濃度排水PCBについては、凝集沈澱処理、活性汚泥処理、活性炭吸着法、放射線処理等が用いられている。また、トリクロロエチレン(以下、TCEという)、PCEについては、揮発法(曝気法)、活性炭吸着法、微生物分解法等が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、一例としてあげた揮発法(曝気法)は、水中のCVOCを空気中に放出する方法であり、大気汚染を引き起こす虞があることから根本的な解決にならない。また、活性炭吸着法は、CVOCを活性炭に吸着させて取り除く方法であるが、飽和した活性炭を再生する際に吸着していたCVOCが空気中へ放出されてしまうため、これも同様に有効な処理方法であるとはいえない。微生物分解法は、嫌気条件下でCVOCを分解する微生物が幾つか発見されており、これらの微生物を使用すれば比較的低コストで分解可能であるが、微生物の培養が難しく分解速度もそれほど速くないため、如何に分解能力を高めることができるかが課題である。無害化処理の効率、処理工程又は処理装置の簡便さ、実施コスト等を多面的に考慮すると、何れの方法にも問題点が存在している。
【0005】
そこで本発明は、難分解性の揮発性有機塩素化合物、特に低濃度で広範に亘って分散された難分解性有機塩素化合物を低コストで簡便及び安全に回収できるとともに、更に低エネルギーで完全に無害化できる難分解性有機塩素化合物の分解方法、また難分解性の有機塩素化合物の回収と無害化処理に好適に用いることができるカーボンナノチューブ複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、難分解性有機塩素化合物を回収する方法と分解処理する方法とを誠意検討する過程において、カーボンナノチューブの吸着特性及び強靱性と、光触媒として注目されている酸化チタンTiO2(以下チタニアという)のシナジー効果に着目し、これらを複合した材料が難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理に有効に機能することを見出した。
【0007】
本発明に係る難分解性有機塩素化合物の分解方法は、壁面に光触媒が担持されたカーボンナノチューブ複合材料のチューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着し、難分解性有機塩素化合物が液相吸着したカーボンナノチューブ複合材料に紫外線を照射し、光触媒の触媒作用により難分解性有機塩素化合物を無機化することを特徴とする。
【0008】
カーボンナノチューブは、多層構造を有し、光触媒として酸化チタンを用いることが好ましい。また、難分解性有機塩素化合物の溶液中に、分解促進を目的として、更に酸化剤として過酸化水素水を添加してもよい。
【0009】
また、本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料は、カーボンナノチューブのチューブ壁面に光触媒が担持されており、チューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着するとともに光触媒作用により難分解性有機塩素化合物を分解する。ここで、カーボンナノチューブは、多層構造を有し、光触媒としては、酸化チタンを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
吸着現象は、自然現象であり、分解処理では太陽光を利用して光分解できるため、本発明によれば、難分解性有機塩素化合物の無害化処理がより低エネルギーで実現でき、本発明に係る分解処理方法を実施することによる環境負荷も低減できる。また、外表面積が大きく物理的及び化学的強度が高いカーボンナノチューブを光触媒の担体とすることで、材料としての耐久性と分解処理効率をともに向上することができる。また、本発明によれば、低濃度で広範に亘って分散された難分解性有機塩素化合物を低コストで、簡便及び安全に回収することができ、更に低エネルギーで完全に無害化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の発明者らは、難分解性有機塩素化合物を回収する方法と分解処理する方法とを誠意検討する過程において、カーボンナノチューブ(以下CNTという)の吸着特性及び強靱性と、光触媒のシナジー効果に着目し、これらを複合した材料が難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理に有効に機能すると予見した。
【0012】
そこで、カーボンナノチューブ複合材料を作製した。カーボンナノチューブとしては、多層(複層)構造を有する、いわゆる複層CNT(multi-walled CNT)を使用する。そして、必要に応じて、酸化によりチューブ壁面の化学エッチング、チューブ先端を開口する処理、又はチューブを切断する処理等を施してCNTの有機塩素化合物吸着能を向上する。
【0013】
吸着と光分解の両方が期待される複合材料として光触媒/CNTを作製するために、酸性条件下におけるゾルゲル法を用いて光触媒をCNTに担持させた。CNTに担持させる光触媒としては、酸化チタン(TiO2)、ガリウムリン(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、硫化カドミニウム(CdS)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化タングステン(WO3)があげられる。
【0014】
また、本実施の形態では、2通りの方法によって光触媒をCNTに担持させた。2通りの方法の違いは、担持プロセスにおけるpHである。担持プロセスにおいてpHを操作することにより、ゾル時の光触媒の粒子径を制御し、CNTに担持される光触媒の粒子の大きさを変化させた。
【0015】
得られた光触媒/CNTに、カーボンナノチューブのチューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着し、難分解性有機塩素化合物が液相吸着したカーボンナノチューブ複合材料に紫外線を照射した。同定、難分解性有機塩素化合物(以下、CVOCという)の吸着実験、更にCVOC光分解実験を行い、性能評価を行ったところ、光触媒/CNTが良好の吸着特性と光分解特性とを有することが確認され、更には、特定のCVOCに対して選択的に吸着することが明らかになった。なお、CVOCの分解促進のため、難分解性有機塩素化合物の溶液中に、更に酸化剤として過酸化水素水を添加してもよい。
【実施例】
【0016】
本発明の発明者らは、難分解性有機塩素化合物を回収する方法と分解処理する方法とを誠意検討する過程において、カーボンナノチューブ(以下CNTという)の吸着特性及び強靱性と、光触媒、特に、酸化チタンTiO2(以下チタニアという)のシナジー効果に着目し、これらを複合した材料が難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理に有効に機能すると予見した。そして、CNTを用いて有機塩素化合物を回収し分解するための新規処理方法を開発する足がかりとして、(a)CNTの吸着処理能力、(b)吸着と光分解という2つの処理を組み合わせたハイブリッド処理の2通りに着目した。
【0017】
そこで、発明者らは、CNTの難分解性有機塩素化合物吸着能を評価するとともに、光触媒として酸化チタンTiO2(以下チタニアという)を用いて、これをCNTに担持させた複合材料を作製した。そして、複合材料がチタニア担持カーボンナノチューブであることを同定した上で、更にチタニア担持カーボンナノチューブの難分解性有機塩素化合物に対する吸着能と、光分解能について検証した。以下に示す本発明の実施の形態では、(1)CNTに対する難分解性の揮発性有機塩素化合物(以下、CVOCという)の吸着特性の評価、(2)酸化チタンTiO2(以下、チタニアという)担持CNTの吸着及び光分解効能の評価、についてそれぞれ述べている。(a)の「CNT単体での有機物の液相吸着特性」を(1)で示し、更に、CNT固有の性質(安定な結晶構造やチューブ状の形状など)を利用した吸着能力向上の可能性について示した。また、(b)については、(2)において、物理化学的に安定でかつ外部表面積が大きい性質を利用してCNTに光触媒を担持させた複合材料の作製を試み、得られた材料の同定と、その総合的な処理能力(吸着及び光分解)を評価した。
【0018】
(1)CNTに対する難分解性の揮発性有機塩素化合物の吸着特性の評価
・カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、2種類のMWCNT(多層カーボンナノチューブ)を使用した。本具体例では、各MWCNTをCNTMとCNTBと区別する。表1に、実施例で用いた各CNTの合成方法及び特徴を示す。CNTM、CNTBはともにCVD法(化学蒸着法)で作製されたものであるが、蒸着ガス、濃度、流量、温度、触媒などのCNT作製条件によって両者の特徴は大きく異なる。また、以下の種々の試験において、CNTM、CNTBの比較対象として活性炭(Activated Carbon)Y−4((株)味の素ファインテクノ社製、以下ACという)を用いて同様の吸着実験を行った。
【0019】
【表1】
【0020】
・カーボンナノチューブの同定
CNTM、CNTB、ACのそれぞれについて、TEM観察、粉末X線回折法(X-Ray Diffraction:XRD)、熱重量測定法(Thermogravimetry:TG)、BET(Brunauer,Emmett,Teller)比表面積測定によりキャラクタリゼーション及び吸着実験を行った。図1にCNTBのTEM像を示す。(a)は、2万倍、(b)は、20万倍である。図2にCNTMのTEM像を示す。(a)は、2万倍、(b)は、20万倍である。TEM像から、CNTBは、チューブが直線状になった箇所が多く存在しているが、CNTMは、チューブに屈曲箇所が多く存在することから相互に絡み合っている。CNTBは、CNTMに比べてチューブ外径が大きいが、CNTBは、層数が多いため、CNTMに比べチューブ内径が小さい。したがって、単位グラム当たりの比表面積は、CNTMの方が大きい。
【0021】
次に、CNTBとCNTMのXRDスペクトルを図3に示す。XRDスペクトルから、両サンプルともにグラファイトとして同定されるピーク(Graphite−3R−C、PDF#26−1079)が確認され、それ以外の特徴ピークは検出されなかった。したがって、CNTB(図3(a))とCNTM(図3(b))がそれぞれグラファイトの結晶構造のみを有していることが示された。検出されたCNTBのピークの強度は、CNTMよりも大きいことから、前者の方が結晶性が高い、若しくは後者に比べてより多層構造を有していることを示している。
【0022】
次に、図4に熱重量測定法(Thermogravimetry:TG)による分析結果を示す。図4の結果から、AC<CNTM<CNTBの順に燃焼温度が増加していることが確認できる。これは、CNTが活性炭(AC)に比べて安定な結晶構造をとっているからであるといえる。また、CNTBの燃焼温度がCNTMよりも高いことは、CNTBの方が高い結晶性と熱安定性を有することを示している。また、ACのTG曲線では、2段階の重量変化がみられるが、低温度における1段目の現象は、水の吸着の影響によるものである。CNTM及びCNTBには、これらの2段階の重量変化がみられないことから、CNTは、水をほとんど吸着しないことがわかる。一般的に活性炭は、疎水性を有しており、これが水中で吸着剤として使用するに適した理由であるが、CNTは、更に疎水性が高い。このことから、水中での吸着処理に有効であることが示された。したがって、CNTを液相吸着に使用することができる。
【0023】
図5に示差熱分析法(Differential Thermal Analysis:DTA)による分析結果を示す。結果から、燃焼時における示差熱は、CNTB<AC<CNTMの順番に大きくなっていることが確認できる。CNTMの発熱量がACよりも大きいのは、カーボンナノチューブ結晶の結合の安定性に起因している。燃焼時の放出エネルギーが大きいため、温度上昇も大きい。一方、CNTBは、他の分析などからも結晶性が高くCNTMよりも多層構造になっていることが確認されているが、実際には、構造から予想される結果とは逆の結果が得られた。DTA曲線上のピーク形状、位置及び面積は、試料量、熱伝導度、比熱、粒径、充填度、炉の雰囲気、昇温速度等の影響を受けやすいが、この結果は、CNTBの空隙率等に起因するものと考えられる。
【0024】
図6に、各サンプルのBET比表面積測定結果を示す。BET比表面積測定は、N2の吸着結果とモデル式とを用いて算出した。ACは、多孔性であり、その比表面積は、約1000m2/gと非常に大きい値を有するが、大部分は、活性炭細孔内の壁面に起因するものである。実施例で使用したCNTは、その内側に複数の層が形成された複層CNT(multi-wall CNT)であるが、チューブ先端が閉じているためにチューブ外壁面の表面積のみが測定され、比表面積が比較的小さい結果になっている。単位グラム当たりの比表面積は、CNTBよりもCNTMの方が大きいことから、CNTBは、壁面層数がより多い、複層CNTである。また、結晶性の違いがN2との吸着相互作用の違いの要因になっていると考えられる。
【0025】
・吸着実験
本発明の実施の形態として示すTiO2/CNTの特性を評価する前に、CNT単独の揮発性有機塩素化合物(CVOC)に対する液相吸着試験を行った。CNTとしては、CNTM、CNTBを用い、比較対象として活性炭Y−4((株)味の素ファインテクノ社製)を用いて同様の吸着実験を行った。各濃度のテトラクロロエチレン(PCE)とトリクロロエチレン(TCE)の水溶液を作製してサンプルとして用いた。吸着実験の手順は、以下の通りである。各濃度のPCE,TCE水溶液120mlに吸着剤を0.05g投入した。HCl、NaOHを用いて溶液のpHを調整し、pHを調整した後の溶液を振盪機にて平衡に達するまで振盪した。平衡到達後、孔径サイズ0.45μmのメンブレンフィルタを用いて吸着剤を分離除去した。吸着後のPCE又はTCE水溶液の濃度を分光光度計により測定した。
【0026】
・カーボンナノチューブの吸着特性
表1に示した特性を有するCNTB及びCNTMに対する有機物の液相吸着特性について説明する。CNTBを純水又はPCE溶液に投入すると浮くことがわかる。但し、純水の場合では、CNTBは、液相内部に停滞し、振盪によって分散することができるのに対して、PCE溶液中では、水面に浮き、溶液との親和性を示さない。したがって、溶液を振盪しても分散させることができなかった。そのため、実施例では、純水中に一度分散させたCNTBをPCE溶液に投入した。しかし、これではH2Oが吸着しており、PCEとの吸着を阻害する虞があるため、吸着平衡に達するまで十分な期間(約3日間)静置してから濃度測定を行った。
【0027】
図7に、吸着剤としてCNTM(図7(a))又は活性炭(図7(b))を系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示す。図7から、ACは、吸着平衡に達するまでに約7時間を要するのに対して、CNTMは、約30分で平衡に達している。一般的に、ACは、ペレット状などの塊で使用されることが多いが、実施例では条件を他と一にするため、粉末状で使用した。ACを塊状で使用した場合には、吸着平衡に達するまでに80時間以上を要したという過去の報告例からも、ACによる吸着では、比表面積の大部分を示す細孔内への溶質の拡散が吸着の律速になることがわかる。一方、CNTは、平衡に達するまでの期間が短いことから、外表面への吸着が占める割合が大きい。
【0028】
また、ACは、PCEとTCEをともに吸着できるのに対して、CNTは、TCEをほとんど吸着していない。PCEとTCEの物理的性質として、PCEが水に難溶であり、TCEが微溶であるが、TCEの方がH2Oとの親和力が強いためである。CNTM−TCE間の相互作用とAC−TCE間の相互作用が異なるためである。TCEの極性によるものであると考えられる。CNTがその合成方法、形状等の特徴に応じてCVOCの一部を選択的に吸着可能であるという事実は、CVOCの回収及び分解処理の新規方法を提案する上で、CVOCの選別方法への応用が可能である。
【0029】
次に、図8にpH条件を変化させてCNTB(図8(a))、CNTM(図8(b))又はAC(図8(c))を系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示す。CNTMは、pH変化の影響が無視できる程度に、吸着量が安定しているのに対して、ACの吸着量は、高pH条件下では減少している。原因としては、活性炭表面に生成したH2Oクラスタが吸着を阻害すること、またAC上に存在する酸性官能基が水と錯体を形成することで吸着サイトが覆われること等があげられる。また、CNT(CNTM、CNTB)がpHの影響を受けにくいのは、H2O吸着能を増加させるための酸性官能基の数が少ないためであると予想される。
【0030】
以上のことから、少なくとも、表1に示す特徴を有する2つのMWCNT(実施例では、CNTM、CNTBと命名した)は、PCEとTCEとの分離回収に適用することができ、CNTは、幅広いpH範囲において、PCEの吸着能力を維持できることが確認された。また、図9は、各吸着剤の吸着等温線を示す。図9((a)CNTM、(b)CNTB、(AC))に示すように、低濃度ではCNTに殆ど吸着しなかったTCEも、高濃度では吸着されることが確認できる。したがって、CNTは、CVOC溶液の濃度に応じても、CVOCの一部を選択的に吸着可能であるといえ、この特徴は、CVOCの回収及び分解処理に応用可能である。
【0031】
(2)酸化チタンTiO2(以下、チタニアという)担持CNTの吸着及び光分解効能
・TiO2/CNTの作製
吸着と光分解の両方が期待される複合材料としてのTiO2/CNTを作製するために、酸性条件下におけるゾルゲル法を用いて2通りの方法でTiO2をCNTに担持させた。2通りの方法の違いは、担持プロセスにおけるpHである。担持プロセスにおいてpHを操作することにより、ゾル時のTiO2の粒子径を制御し、その結果CNTに担持されたTiO2の粒子の大きさを変化させる試みを行った。pH=3の場合が比較的大きい粒子径で、pH=1の場合がより小さい粒子径である。本実施例では、一例としてCNTBを用いて、CNTBに対してチタニアを担持させた、チタニア担持カーボンナノチューブ複合材料を作製した。比較的大きい粒子径を有するチタニアを担持させた触媒をTiO2/CNTBとし、より小さい粒子径のTiO2を担持させた触媒をnanoTiO2/CNTBとする。
【0032】
作製手順は、次の通りである。Ti(iso−OC3H7)4、3.7mlを1MのHNO3の水溶液15mlに徐々に加え常温下で2時間攪拌したところ透明ゾルが生成した。生成した透明ゾルに蒸留水50mlを加え、更にNaOHを適宜加えて、担体がTiO2/CNTBの場合はpH=3に、また担体がnanoTiO2/CNTBの場合はpH=1に調整した。その後、水溶液を常温下で再び2時間攪拌したところ白濁コロイドが生成した。生成した白濁コロイドにCNTB1.0gを加え、pH>6となるまで蒸留水で洗浄した。洗浄後のCNTB添加白濁コロイドをN2雰囲気下(流量200ml/分)、300℃で2時間焼成し、所望とするサンプルを得た。得られたサンプルについてキャラクタリゼーション、吸着実験、光分解実験を行い、性能評価を行った。
【0033】
・TiO2/CNTBの同定
CNTB、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBのそれぞれについて、TEM観察、XRD、TG、BET比表面積測定により同定した。図10に各吸着剤のBET比表面積測定の測定結果を示す。CNTBにチタニアを担持すると、CNTB単体のみの場合と比べて比表面積は増加している。これは、CNTB表面に担持されたチタニア自身の比表面積(TiO2単独では、239.82m2/g)によるものであると考えられる。増加の度合いは、TiO2/CNTBが非常に大きく、nanoTiO2/CNTBは、微増であった。これは、触媒中に含まれるチタニアの割合が異なるためにチタニアによる比表面積への寄与に違いが生じたためであると予想される。
【0034】
図11は、各試料のTG曲線を示す。結果から、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBともに、僅かに燃焼温度が増加しているが、その度合いは小さいことから、チタニア担持によるCNTB燃焼温度への影響は小さいことが確認された。また、TiO2/CNTBの未燃焼分から、チタニアの担持量がそれぞれ約35%、約11%であることが確認され、これは、EDXの実験結果から得られたチタニア含有量ともほぼ一致している。
【0035】
図12にTiO2/CNTBのXRDスペクトルを示す。結果から、グラファイト由来のピークと、アナターゼ由来のピーク(anatase、PDF#21−1272)が確認でき、CNTB上に担持されたチタニアが光触媒活性を示すといわれているアナターゼ型結晶構造をとっていることが確認された。
【0036】
TiO2/CNTBにおけるチタニアの担持量は、重量にして約35%であるが、モル比に換算するとTiO2:C=94:6となるので、グラファイトのピークに比べてTiO2のピークが相対的に小さいのは、Cに比べてTiO2の結晶化度が低いことが1つの要因として予想される。
【0037】
図13に、nanoTiO2/CNTBのTEM像を示す。また、図14にTiO2/CNTBのTEM像を示す。図13に示すように、nanoTiO2/CNTBの表面に細かなTiO2粒子が確認された。サンプル中には、細かい炭素の塊も存在するが、EDXの結果からもTiO2の存在が明らかである。一方、図14では、より粒子径の大きいTiO2がCNTB上に担持されていることが確認できる。したがって、nanoTiO2/CNTBには、確かに細かいチタニア粒子が広く担持され、TiO2/CNTBには、比較的粒径の大きなチタニアが局所的に付着している。
【0038】
・TiO2/CNTBの吸着特性
図15に、TiO2/CNTBのPCE吸着等温線を示す。TiO2/CNTBの吸着量は、僅かに減少しているものの、全濃度領域を通してほとんど違いが存在しないが僅かに減少した。このことから、TiO2/CNTBのPCE吸着量は、CNT単体に比べて小さくなったことが示された。この吸着量の減少は、CNT表面にCNTよりは小さい吸着量を有するチタニアが担持されたことを示している。
【0039】
・光分解実験
光分解実験では、TiO2/CNTを用いた光分解におけるPEC濃度及びpHの経時変化の測定と、酸化補助剤としてH2O2を投入した際のPEC濃度、H2O2濃度、pHの経時変化濃測定とを行う。光分解実験では、比較のため、2種類の蛍光ランプ(東芝ライテック(株)社製)、殺菌用ランプGL−6と、補虫用ランプFL6BLを用いた。ランプの使用を下記表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
本実施例において、最終的な目標とする処理は、太陽光を利用することによりエネルギーやランニングコストをゼロに近づけることであるので、蛍光ランプを利用する際にも、太陽光により近い紫外線強度になるような条件を定めた。一般的に地表に到達する太陽光に含まれる紫外線の強度は、太陽からの距離、そのほかの条件(季節、天候、地球上における観測位置など)によって左右されるが、強度のオーダは、1mW/cm2程度である。そこで、太陽光を想定したFL6BL(主としてUV−Aを放射する蛍光ランプ)を用いた実験では、容器表面に到達する紫外線強度が5.3mW/cm2になるようにランプと試料容器との距離を決めた。
【0042】
図16に各ランプの波長分布を示す。また、図17には、距離による光強度を示す。但し、図17は、蛍光ランプの初回点灯時から100時間経過したときの値である。試料容器は、紫外線の透過率が高い石英製のガラス管を用い、ゴム栓をして閉鎖系にて実験を行った。封入する溶液量は、110mlとした。石英ガラス管のサイズは、内径25mm、外径29mm、長さ250mmであった。光分解実験では、蛍光ランプからの光が触媒表面に十分到達できるように、石英ガラス管内にスターラチップを入れて、紫外線照射中はスターラで攪拌し、光触媒を溶液内に懸濁させた。光触媒投入量は、0.05gとし、投入直後から紫外線照射を開始し、PCE濃度の経時変化を観察した。蛍光ランプGL−6は、主波長254nmで主としてUV−Cを放射する。また、FL6BLは、主波長352nmで主としてUV−Aを放射する。
【0043】
一般的に、光触媒を用いた液相における分解では、酸化剤としてO2が導入されることが多いが、本具体例では、処理対象が揮発性有機塩素化合物であり、更に液相でそのまま光分解を行うことを目的としている。そのため、代替えの酸化補助剤としてH2O2を系内に予め導入して実験を行った。酸化剤としてH2O2を選択した理由としては、
・光触媒を用いた分解において、反応機構上の利点が存在するといわれていること。
・光触媒により完全に分解されて無害な物質になるため硫黄分や窒素分を放出しうるH2SO4やHNO3よりも環境負荷が低いこと。
・光触媒反応が、一般的に無差別に対象物質を完全に無機化するため、H2O2を過剰に投入しておくことでH2O2が検出されないことが対象物質の有無を知る1つの方法になること
からである。H2O2は、低濃度のKMnO4を滴下することで肉眼により確認することができる。
【0044】
光分解実験の実験条件を下記表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
なお、本発明では、液相での分解について説明しているが、O2を投入してもよい。曝気法の場合、本具体例で使用しているPCEのような揮発性の汚染物質の多くが気相内に分散することにもなる。したがって、取り込まれたCVOCは酸化物としてのO2が豊富に存在する系内で反応することが予測される。光触媒を用いた処理では、一般的に液相よりも気相での方が効率的に進行するといわれており、反応速度という観点でみた場合、気相で分解することも有効である。
【0047】
・PCEの光分解実験結果
吸光度
紫外線ランプを用いた光分解を行う際には、ランプの放射する波長と処理対象の物質や、それに混在しうる物質がどの波長の光を吸収するかを予め把握しておく必要がある。光分解には、光の種類(波長)によって様々な方法があるが、どの手法においても光をより効率的に利用する工夫は必要不可欠である。本実施例では、紫外線を利用し、TiO2/CNTBを光触媒とすることでPCEの分解を行うことを目的としており、かつ酸化剤としてはH2O2を利用しているので、PCEとH2O2について吸光がどの波長に存在するのかを測定した。
【0048】
図18、図19にPCE、H2O2の分光度計による波長毎の吸光度測定結果を示す。結果から、PCEは、約260nm以下、H2O2は、約280nm以下でのみ紫外波長で吸光を示すことが確認された。したがって、主波長254nmであるGL−6を使用した場合には、PCE、H2O2ともに吸光を示し且つ光のエネルギーが結合エネルギーよりも大きいために、紫外線による直接分解が起こる。H2O2が分解される際には、OHラジカルが発生し、OHラジカルが有機物の分解を更に促進させる。これが促進酸化法(Advanced Oxidation Process:AOP)の1つである紫外線/過酸化水素法(UV/H2O2法)である。したがって、GL−6を用いてPCEの光分解を行うときは、紫外線による直接分解、H2O2が分解されて生成したOHラジカルによる分解、TiO2の光触媒作用による分解などの分解が起こっているといえる。一方、紫外線352nmのFL6BLを紫外線源として用いた場合は、PCE、H2O2ともに吸光がないことから、紫外線による直接分解、紫外線によるOHラジカルの発生もない。このことから、FL6BLを用いた場合には、PCEやH2O2の分解は、TiO2の光触媒作用によってのみ引き起こされているといえる。
【0049】
・GL6(UV−C)による分解実験
図20は、主波長254nmであるGL−6によるPCEの光分解実験結果を示す。UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示している。紫外線のみでの分解と、TiO2/CNTBによる分解とを比較すると、濃度推移にほとんど変化がみられないことから、TiO2/CNTB単体での触媒活性は、紫外線による直接分解に比べて非常に小さいことが確認された。これは、チタニアの触媒活性発現のために必要な酸化剤の量が溶存酸素のみでは不十分であったことがあげられる。また、254nmの波長は、TiO2の活性を発現させるために最適ではないということもあげられ、この波長領域でTiO2/CNTBを使用する場合には、酸化剤の投入が必要とされた。
【0050】
そこで、反応促進のための酸化補助剤としてH2O2を添加した。H2O2を液相での光触媒分解に添加することは、一般的ではないが、反応促進のための利点があることを期待した。酸化剤としてH2O2を系内に投入した結果、UV/H2O2のみの場合と比べても活性が向上した。反応を擬一次反応であると仮定すると、反応速度がUV/H2O2のみの場合と比べて、1.33倍、UVのみの場合に比べて1.9倍向上した。下記表4に反応速度定数を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
・FL6BL(UV−A)による分解実験
352nmの紫外線は、254nmの紫外線と比べて、遙かに低いエネルギーを有する紫外線である。また、254nmは、それだけで有機塩化水素やH2O2を分解することができる反面、352nmの紫外線は、それだけでは有機塩素化合物にもH2O2にも吸光がなく、分解することができない。しかし、太陽光に含まれている紫外線のうち、254nmのようにエネルギーが高いものはオゾン層で、吸収されてしまい、地表にはほとんど到達しない。また、TiO2が光触媒活性を示すために最適な波長は、380nm付近のUV−Aである。本実施例では、太陽光によって分解が可能なエネルギーフリーである処理方法を目指していることから、主波長354nmの蛍光ランプを用いた。
【0053】
図21は、ピーク波長352nmのランプによるPCEの光分解の結果であり、UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示している。実験結果から、酸素などの酸化剤が存在しない系においてもTiO2/CNTB光触媒は、活性を示し、初濃度約30mg/lのPCE溶液を7時間程度で約50%分解することができた。但し、図21の結果は、一例であって、光触媒活性は、吸着剤の投入量や紫外線強度によって容易に変化可能である。
【0054】
図21から、H2O2を添加した系では、添加しない系と比べて反応が促進されていることが確認できた。H2O2は、紫外波長に吸光がないことから、紫外線によって直接分解されてOHラジカルが発生することはないとみられ、このことから、反応効率の大幅な上昇は、チタニアとH2O2の相乗効果によって生み出されたものであると予想できる。H2O2が存在しない系では、PCE分解に直接寄与するのは、主としてOHラジカルであり、その発生源は、H2Oであると考えられるが、反応全体としてPCE分解が促進されたことから、H2O2が存在する系では、H2O2もOHラジカル源として効果的に利用されていると予想できる。
【0055】
本実施例で投入したH2O2の量(初濃度582ml)は、PCE初濃度に対して化学量論比約95倍であったが、この値は、任意の量として暫定的に決定したものである。しかし、系内のH2O2が少量だとPCE分解促進の効果が薄れ、逆に過剰に存在しても逆反応やOHラジカルの消費などによって反応阻害が起こることが想定される。したがって、チタニアを用いた光分解において、酸化補助剤として投入するH2O2には最適値が存在するはずである。そこで更に、上述した実験条件(PCE初濃度、容器の容量及び形状、触媒投入量、ランプの波長及び強度など)におけるH2O2の最適な初期添加量を探索した。添加量を変化させたときのPCE転化率を比較した。
【0056】
図22に、H2O2初濃度を変動させた際の紫外線照射時間3時間後におけるPCEの転化率を示す。結果から、H2O2の初濃度には、最適値が存在することがいえる。偶然ながら、本実施例で使用した条件(H2O2初濃度582mg/l、PCEに対する化学量論比95)が最適値に近いことが確認された。但し、この最適条件は、反応開始後、3時間までを総合的に考慮した条件である。H2O2の分解量は、H2O2初濃度とある程度比例関係にあることが確認できる。H2O2の反応量は、活性サイト(OHラジカル)衝突の数によると予想できる。酸化剤(酸化補助剤)の過剰存在下では、PCEの分解を補助する役割を担うとともに、活性サイトやラジカルとの反応と競合することでPCEの分解を阻害する効果もあるため、適量を添加することが好ましい。
【0057】
図23に、TiO2/CNTBとnanoTiO2/CNTBをそれぞれ光触媒として用いたときの紫外線照射開始3時間後におけるPCE分解(%)とpHとの比較を示す(H2O2無添加)。結果からTiO2/CNTBの方がnanoTiO2/CNTBに比べてPCE転化率は高いことが確認できる。但し、投入した触媒50mgのうち実際に反応に関与するチタニアの量は、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBそれぞれに対して約17.5mg、5.5mgであり、チタニアの単位重量ベースで検討すると、nanoTiO2/CNTBの方が転化率は高い。これは、nanoTiO2/CNTBにおけるチタニアの方がより細かく粒子径の小さい状態でCNT表面に担持されているためである。pH変化は、転化率がより低いnanoTiO2/CNTBの方が大きく、転化率が高いTiO2/CNTBの方が小さい。これは、上述した結果でも観察されたように、チタニアを用いた光分解の反応機構では、正孔と水とが反応した際に、OHラジカルとH+が生じることに起因する。PCEが多く分解されたということは、OHラジカルが多く生成されたことであり、それに伴ってH+も生成するため、PCE転化率が高いTiO2/CNTBの方が、結果として多くのH+を放出しpHが低下したのである。
【0058】
(3)付記 CNTの酸化処理、切断開口処理
CNTの有機塩素化合物を吸着する能力を高める目的で、CNTをH2O2等の酸化剤で酸化してもよい。また、比表面積を増加させて吸着能力の向上を図ってもよい。以下、CNTのH2O2酸化処理と、CNTの切断開口処理の一例を示す。
【0059】
・H2O2による酸化処理
CNTの有機塩素化合物を吸着する能力を高めるために、CNTをH2O2で酸化してもよい。CNTを酸化しCNT表面に官能基を導入することにより、この官能基に重金属が吸着して吸着量が増加するといった報告はされているが、PCEやTCEのような有機物のCNT吸着では、重金属とは異なり吸着相互作用(物理吸着)によるものであるため、同様のプロセスにより吸着量が増加するとはいえないが、酸化によって表面状態を変化させることにより、吸着ポテンシャルが変化するため、より多くの有機塩素化合物を吸着できるようになると考えることができる。生成したH2O2酸化CNTに関しては、TEM観察、XRD、TG、FTIR、BET比表面積測定によるキャラクタリゼーションを行い、更にCVOC吸着実験を通して、吸着剤投入後の吸着量の経時変化、吸着等温線、pHによる吸着量への影響を調べた。酸化手順は次の通りである。30%のH2O2200mlに0.8gのCNTを投入し、約70℃で加熱しつつ4時間攪拌した。この後、純水を用いて洗浄し、ホットスターラを用いて乾燥させた。乾燥後、H2O2酸化CNTを得ることができる。
【0060】
・酸化及び超音波によるCNTの切断開口処理
物理吸着において吸着量を増加させるには、比表面積を増加させることが効果的である。CNTは、チューブ形状を有しており、その先端は基本的には閉じているが、CNTの結晶構造を保持したままチューブを強制的に切断し、開口することができれば、開口前は使用できなかったチューブ内部の側面も吸着に利用できる可能性がある。ここで重要なのは、チューブ形状は保持したままCNTを切断することである。酸化と超音波の併用による穏やかな酸化処理によってCNTのチューブ形状を破壊することなく、約数百nm程度の断片に切断する技術が報告されているので、それを適用する(J. Liu, A. G. Rinzler, H. Dai, J. H. Hafner, R. K. Bradley, P. J. Boul, A. Lu, T. Iverson, K. Shelimov, C. B. Hoffman, F. Rodriguez-Macias, Y-S. Shon. T, R. Lee, L. T. Colbert, R. E. Smalley, Science. 280 (1998)1253)。
【0061】
上述の文献に基づく方法に基づいて、CNTを酸化処理し、得られた開口CNTについて吸着実験を行うことで、吸着能力への影響について検討した。但し、開口処理されたCNTは、少量のサンプルしか作製することができなかったので、BET比表面積測定、TEM観察、吸着実験のみを行った。切断開口処理は、次の通りである。濃H2SO4/HNO3、3:1の混合溶液80mlにCNT40mgを投入し、約40℃で加熱しながら24時間超音波処理した。処理後の試料を細孔サイズ100nmのフィルタで分離後、純水で洗浄した。10mMのNaOHで更に洗浄した。洗浄後のCNTを濃H2SO4/30%H2O2、4:1の混合溶液80mlに投入し、80℃で加熱しながら30分間攪拌した。処理後の試料を細孔サイズ100nmのフィルタで分離後、純水で洗浄した。更に、10mMのNaOHで洗浄すると、切断開口処理されたCNTを得ることができる。
【0062】
(4)総括
カーボンナノチューブの揮発性有機塩素化合物の吸着特性として、カーボンナノチューブは、液相におけるテトラクロロエチレン吸着において、非常に短い時間(約30分)で吸着平衡に達することがわかった。比表面積の大部分がカーボンナノチューブ外部表面に起因するために、多孔性の吸着剤と比べてテトラクロロエチレンの細孔内への遅い拡散速度の影響を受けないからである。また、カーボンナノチューブは、液相におけるテトラクロロエチレン吸着において、pHの影響をほとんど受けないことが示された。これは他の吸着剤のように官能基の電離などによる水の吸着の影響が小さいためであると考えられ、液相における吸着剤として大きな利点を有する。
【0063】
一方、カーボンナノチューブは、トリクロロエチレンをほとんど吸着しないことが示されたが、これは、例えば、テトラクロロエチレンとトリクロロエチレン等、特定の有機塩素化合物の分離に応用することができる。
【0064】
また、酸性条件下におけるゾルゲル法によって、チタニアをカーボンナノチューブ上に担持したチタニア担持カーボンナノチューブ複合材料が作製できることがわかった。pH=1の場合には、粒子径約1〜3nmのものがカーボンナノチューブ表面上に細かく広く担持され、pH=3の場合には、粒子径約50〜100nmの比較的大きな塊のチタニアが局所的に担持された。また、表面上のチタニアは、全てアナターゼが多結晶構造を有していることが確認された。
【0065】
チタニア担持カーボンナノチューブを光触媒として使用し、主波長254nmの紫外線ランプを用いてテトラクロロエチレンの分解を促進した。容器表面に到達する紫外線強度0.03mW/cm2、テトラクロロエチレン初濃度25mg/lとした一実施例では、反応を擬一次反応としたときの速度定数は、紫外線のみの場合0.0744から0.0821まで増加し(1.1倍)、酸化補助剤として過酸化水素を反応開始時にテトラクロロエチレンに対する化学量論比114倍になるように添加した場合は、更に0.1449まで増加した(1.95倍)。
【0066】
また、チタニア担持カーボンナノチューブを光触媒として使用し、主波長352nmの紫外線ランプを用いたテトラクロロエチレンの分解を促進したところ、チタニア担持カーボンナノチューブの352nm紫外線によるテトラクロロエチレン分解活性を確認した。容器表面に到達する紫外線強度5.3mW/cm2、テトラクロロエチレン初濃度30mg/lとした一実施例では、約7時間経過後、転化率50%に達した。また、過酸化水素を酸化補助剤として添加することで、反応効率を大幅に上昇することができ、酸化補助剤を添加したときの同じ7時間経過後の転化率は、80%以上であった。更に当条件下で最適な過酸化水素の化学量論比は、100程度であることがわかった。
【0067】
したがって、以上説明したように、本発明の実施の形態としての複合材料TiO2/CNTの最大の特徴は、作製のための処理及び操作が簡易であること、処理対象を完全に無機化することが可能であり運転のためのエネルギー消費がゼロに近いため環境負荷が低いこと、CNTの形状ゆえに吸着平衡に達する時間が短いこと、また吸着した汚染物質を通常の吸着剤のように脱着処理し更に回収処理する必要がなく、吸着状態でCNT表面に担持されたチタニアにより酸化分解処理ができるというハイブリッド処理が可能なことである。このように、チタニア担持カーボンナノチューブは、地下水汚染物質の一例であるテトラクロロエチレンを回収する過程及び分解する処理を含めて、非常に簡易かつ安全に実現できるとともに、これらの処理をゼロに近いエネルギー消費で実現することができる複合材料である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例で使用するCNTBのTEM像を示す写真図であり、(a)は、2万倍拡大図、(b)は、20万倍拡大図である。
【図2】本発明の実施例で使用するCNTMのTEM像を示す写真図であり、(a)は、2万倍拡大図、(b)は、20万倍拡大図である。
【図3】(a)は、本発明の実施例で使用したCNTBのXRDスペクトル測定結果を示すスペクトル図であり、(b)は、本発明の実施例で使用したCNTMのXRDスペクトル測定結果を示すスペクトル図である。
【図4】本発明の実施例で使用するCNTB及びCNTMのTG曲線を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施例で使用するCNTB及びCNTMのDTA曲線を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施例で使用するCNTB及びCNTMのBET比表面積測定の結果を比べた比較図である。
【図7】(a)は、上記CNTMを系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図であり、(b)は、従来のACを径に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図8】pH条件を変化させたときの各吸着剤投入後の濃度変化を示しており、(a)は、pH5.8において上記CNTMを系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図であり、(b)は、上記CNTBを系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図であり、(c)は、pH5.8において従来のACを径に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図9】(a)は、上記CNTMの吸着等温線を示すグラフ図であり、(b)は、上記CNTBの吸着等温線を示すグラフ図であり、(c)は、ACの吸着等温線を示すグラフ図である。
【図10】上記CNTB、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBのBET比表面積測定の結果を比べた比較図である。
【図11】上記CNTB、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBのTG曲線を示すグラフ図である。
【図12】上記TiO2/CNTBのXRDスペクトル測定結果を示すスペクトル図である。
【図13】上記nanoTiO2/CNTBの異なる箇所におけるTEM像を示す写真図であり、(a)、(b)ともに20万倍拡大図である。
【図14】上記TiO2/CNTBの表面のTEM像を示す写真図であり、(a)は、2万倍拡大図、(b)は、5万倍拡大図である。
【図15】上記TiO2/CNTBの吸着等温線を示すグラフ図である。
【図16】光分解実験で使用した各蛍光ランプの波長特性を示す波長分布図であり、(a)は、GL−6の波長分布を示すグラフであり、(b)は、FL6BLの波長分布を示すグラフである。
【図17】上記各蛍光ランプの距離による強度特性を示す光強度図であり、(a)は、GL−6の光強度を示すグラフであり、(b)は、FL6BLの光強度を示すグラフである。
【図18】PCEの吸光度測定結果を示すグラフ図である。
【図19】H2O2の吸光度測定結果を示すグラフ図である。
【図20】UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図21】UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図22】H2O2初濃度を変動させたときの紫外線照射開始3時間後におけるPCE転化率を示すグラフ図である。
【図23】上記TiO2/CNTBと上記nanoTiO2/CNTBをそれぞれ光触媒として用いたときの紫外線照射開始3時間後におけるPCE分解とpHとを比べた比較図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、難分解性の揮発性有機塩素化合物を無害化する難分解性有機塩素化合物の分解方法、及び難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理とに適用されるカーボンナノチューブ複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラクロロエチレン(以下、PCEという)に代表される揮発性有機塩素化合物(以下、CVOCという)は、油溶性や揮発性が高いという性質を利用して溶剤や各種洗浄剤等、様々な用途に利用されてきた。しかし、近年、CVOCが深刻な水質汚染、特に地下水汚染を引き起こしていることがわかってきている。CVOCは、発ガン性、生体内蓄積性、催奇性等といった毒性を有するため、これらが大気、水中、土壌等に混入して起こる汚染問題、特に地下水汚染問題に対して早急な対応が迫られる一方で、CVOCが難生分解性であるため現在主流となっている微生物による処理が難しいこと、またCVOCによる低濃度の汚染が大量に且つ広範に亘っているため汚染水を全て汲み上げて処理するのに多大な費用、労力を要することなどから、解決するのは非常に困難な問題でもある。
【0003】
CVOCを無害化する技術として、液状のポリ塩化ビフェニル(以下、PCBという)に対しては、燃焼処理、紫外線処理、高温高圧アルカリ処理が、また低濃度排水PCBについては、凝集沈澱処理、活性汚泥処理、活性炭吸着法、放射線処理等が用いられている。また、トリクロロエチレン(以下、TCEという)、PCEについては、揮発法(曝気法)、活性炭吸着法、微生物分解法等が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、一例としてあげた揮発法(曝気法)は、水中のCVOCを空気中に放出する方法であり、大気汚染を引き起こす虞があることから根本的な解決にならない。また、活性炭吸着法は、CVOCを活性炭に吸着させて取り除く方法であるが、飽和した活性炭を再生する際に吸着していたCVOCが空気中へ放出されてしまうため、これも同様に有効な処理方法であるとはいえない。微生物分解法は、嫌気条件下でCVOCを分解する微生物が幾つか発見されており、これらの微生物を使用すれば比較的低コストで分解可能であるが、微生物の培養が難しく分解速度もそれほど速くないため、如何に分解能力を高めることができるかが課題である。無害化処理の効率、処理工程又は処理装置の簡便さ、実施コスト等を多面的に考慮すると、何れの方法にも問題点が存在している。
【0005】
そこで本発明は、難分解性の揮発性有機塩素化合物、特に低濃度で広範に亘って分散された難分解性有機塩素化合物を低コストで簡便及び安全に回収できるとともに、更に低エネルギーで完全に無害化できる難分解性有機塩素化合物の分解方法、また難分解性の有機塩素化合物の回収と無害化処理に好適に用いることができるカーボンナノチューブ複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、難分解性有機塩素化合物を回収する方法と分解処理する方法とを誠意検討する過程において、カーボンナノチューブの吸着特性及び強靱性と、光触媒として注目されている酸化チタンTiO2(以下チタニアという)のシナジー効果に着目し、これらを複合した材料が難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理に有効に機能することを見出した。
【0007】
本発明に係る難分解性有機塩素化合物の分解方法は、壁面に光触媒が担持されたカーボンナノチューブ複合材料のチューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着し、難分解性有機塩素化合物が液相吸着したカーボンナノチューブ複合材料に紫外線を照射し、光触媒の触媒作用により難分解性有機塩素化合物を無機化することを特徴とする。
【0008】
カーボンナノチューブは、多層構造を有し、光触媒として酸化チタンを用いることが好ましい。また、難分解性有機塩素化合物の溶液中に、分解促進を目的として、更に酸化剤として過酸化水素水を添加してもよい。
【0009】
また、本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料は、カーボンナノチューブのチューブ壁面に光触媒が担持されており、チューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着するとともに光触媒作用により難分解性有機塩素化合物を分解する。ここで、カーボンナノチューブは、多層構造を有し、光触媒としては、酸化チタンを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
吸着現象は、自然現象であり、分解処理では太陽光を利用して光分解できるため、本発明によれば、難分解性有機塩素化合物の無害化処理がより低エネルギーで実現でき、本発明に係る分解処理方法を実施することによる環境負荷も低減できる。また、外表面積が大きく物理的及び化学的強度が高いカーボンナノチューブを光触媒の担体とすることで、材料としての耐久性と分解処理効率をともに向上することができる。また、本発明によれば、低濃度で広範に亘って分散された難分解性有機塩素化合物を低コストで、簡便及び安全に回収することができ、更に低エネルギーで完全に無害化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の発明者らは、難分解性有機塩素化合物を回収する方法と分解処理する方法とを誠意検討する過程において、カーボンナノチューブ(以下CNTという)の吸着特性及び強靱性と、光触媒のシナジー効果に着目し、これらを複合した材料が難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理に有効に機能すると予見した。
【0012】
そこで、カーボンナノチューブ複合材料を作製した。カーボンナノチューブとしては、多層(複層)構造を有する、いわゆる複層CNT(multi-walled CNT)を使用する。そして、必要に応じて、酸化によりチューブ壁面の化学エッチング、チューブ先端を開口する処理、又はチューブを切断する処理等を施してCNTの有機塩素化合物吸着能を向上する。
【0013】
吸着と光分解の両方が期待される複合材料として光触媒/CNTを作製するために、酸性条件下におけるゾルゲル法を用いて光触媒をCNTに担持させた。CNTに担持させる光触媒としては、酸化チタン(TiO2)、ガリウムリン(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、硫化カドミニウム(CdS)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化タングステン(WO3)があげられる。
【0014】
また、本実施の形態では、2通りの方法によって光触媒をCNTに担持させた。2通りの方法の違いは、担持プロセスにおけるpHである。担持プロセスにおいてpHを操作することにより、ゾル時の光触媒の粒子径を制御し、CNTに担持される光触媒の粒子の大きさを変化させた。
【0015】
得られた光触媒/CNTに、カーボンナノチューブのチューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着し、難分解性有機塩素化合物が液相吸着したカーボンナノチューブ複合材料に紫外線を照射した。同定、難分解性有機塩素化合物(以下、CVOCという)の吸着実験、更にCVOC光分解実験を行い、性能評価を行ったところ、光触媒/CNTが良好の吸着特性と光分解特性とを有することが確認され、更には、特定のCVOCに対して選択的に吸着することが明らかになった。なお、CVOCの分解促進のため、難分解性有機塩素化合物の溶液中に、更に酸化剤として過酸化水素水を添加してもよい。
【実施例】
【0016】
本発明の発明者らは、難分解性有機塩素化合物を回収する方法と分解処理する方法とを誠意検討する過程において、カーボンナノチューブ(以下CNTという)の吸着特性及び強靱性と、光触媒、特に、酸化チタンTiO2(以下チタニアという)のシナジー効果に着目し、これらを複合した材料が難分解性有機塩素化合物の回収と無害化処理に有効に機能すると予見した。そして、CNTを用いて有機塩素化合物を回収し分解するための新規処理方法を開発する足がかりとして、(a)CNTの吸着処理能力、(b)吸着と光分解という2つの処理を組み合わせたハイブリッド処理の2通りに着目した。
【0017】
そこで、発明者らは、CNTの難分解性有機塩素化合物吸着能を評価するとともに、光触媒として酸化チタンTiO2(以下チタニアという)を用いて、これをCNTに担持させた複合材料を作製した。そして、複合材料がチタニア担持カーボンナノチューブであることを同定した上で、更にチタニア担持カーボンナノチューブの難分解性有機塩素化合物に対する吸着能と、光分解能について検証した。以下に示す本発明の実施の形態では、(1)CNTに対する難分解性の揮発性有機塩素化合物(以下、CVOCという)の吸着特性の評価、(2)酸化チタンTiO2(以下、チタニアという)担持CNTの吸着及び光分解効能の評価、についてそれぞれ述べている。(a)の「CNT単体での有機物の液相吸着特性」を(1)で示し、更に、CNT固有の性質(安定な結晶構造やチューブ状の形状など)を利用した吸着能力向上の可能性について示した。また、(b)については、(2)において、物理化学的に安定でかつ外部表面積が大きい性質を利用してCNTに光触媒を担持させた複合材料の作製を試み、得られた材料の同定と、その総合的な処理能力(吸着及び光分解)を評価した。
【0018】
(1)CNTに対する難分解性の揮発性有機塩素化合物の吸着特性の評価
・カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、2種類のMWCNT(多層カーボンナノチューブ)を使用した。本具体例では、各MWCNTをCNTMとCNTBと区別する。表1に、実施例で用いた各CNTの合成方法及び特徴を示す。CNTM、CNTBはともにCVD法(化学蒸着法)で作製されたものであるが、蒸着ガス、濃度、流量、温度、触媒などのCNT作製条件によって両者の特徴は大きく異なる。また、以下の種々の試験において、CNTM、CNTBの比較対象として活性炭(Activated Carbon)Y−4((株)味の素ファインテクノ社製、以下ACという)を用いて同様の吸着実験を行った。
【0019】
【表1】
【0020】
・カーボンナノチューブの同定
CNTM、CNTB、ACのそれぞれについて、TEM観察、粉末X線回折法(X-Ray Diffraction:XRD)、熱重量測定法(Thermogravimetry:TG)、BET(Brunauer,Emmett,Teller)比表面積測定によりキャラクタリゼーション及び吸着実験を行った。図1にCNTBのTEM像を示す。(a)は、2万倍、(b)は、20万倍である。図2にCNTMのTEM像を示す。(a)は、2万倍、(b)は、20万倍である。TEM像から、CNTBは、チューブが直線状になった箇所が多く存在しているが、CNTMは、チューブに屈曲箇所が多く存在することから相互に絡み合っている。CNTBは、CNTMに比べてチューブ外径が大きいが、CNTBは、層数が多いため、CNTMに比べチューブ内径が小さい。したがって、単位グラム当たりの比表面積は、CNTMの方が大きい。
【0021】
次に、CNTBとCNTMのXRDスペクトルを図3に示す。XRDスペクトルから、両サンプルともにグラファイトとして同定されるピーク(Graphite−3R−C、PDF#26−1079)が確認され、それ以外の特徴ピークは検出されなかった。したがって、CNTB(図3(a))とCNTM(図3(b))がそれぞれグラファイトの結晶構造のみを有していることが示された。検出されたCNTBのピークの強度は、CNTMよりも大きいことから、前者の方が結晶性が高い、若しくは後者に比べてより多層構造を有していることを示している。
【0022】
次に、図4に熱重量測定法(Thermogravimetry:TG)による分析結果を示す。図4の結果から、AC<CNTM<CNTBの順に燃焼温度が増加していることが確認できる。これは、CNTが活性炭(AC)に比べて安定な結晶構造をとっているからであるといえる。また、CNTBの燃焼温度がCNTMよりも高いことは、CNTBの方が高い結晶性と熱安定性を有することを示している。また、ACのTG曲線では、2段階の重量変化がみられるが、低温度における1段目の現象は、水の吸着の影響によるものである。CNTM及びCNTBには、これらの2段階の重量変化がみられないことから、CNTは、水をほとんど吸着しないことがわかる。一般的に活性炭は、疎水性を有しており、これが水中で吸着剤として使用するに適した理由であるが、CNTは、更に疎水性が高い。このことから、水中での吸着処理に有効であることが示された。したがって、CNTを液相吸着に使用することができる。
【0023】
図5に示差熱分析法(Differential Thermal Analysis:DTA)による分析結果を示す。結果から、燃焼時における示差熱は、CNTB<AC<CNTMの順番に大きくなっていることが確認できる。CNTMの発熱量がACよりも大きいのは、カーボンナノチューブ結晶の結合の安定性に起因している。燃焼時の放出エネルギーが大きいため、温度上昇も大きい。一方、CNTBは、他の分析などからも結晶性が高くCNTMよりも多層構造になっていることが確認されているが、実際には、構造から予想される結果とは逆の結果が得られた。DTA曲線上のピーク形状、位置及び面積は、試料量、熱伝導度、比熱、粒径、充填度、炉の雰囲気、昇温速度等の影響を受けやすいが、この結果は、CNTBの空隙率等に起因するものと考えられる。
【0024】
図6に、各サンプルのBET比表面積測定結果を示す。BET比表面積測定は、N2の吸着結果とモデル式とを用いて算出した。ACは、多孔性であり、その比表面積は、約1000m2/gと非常に大きい値を有するが、大部分は、活性炭細孔内の壁面に起因するものである。実施例で使用したCNTは、その内側に複数の層が形成された複層CNT(multi-wall CNT)であるが、チューブ先端が閉じているためにチューブ外壁面の表面積のみが測定され、比表面積が比較的小さい結果になっている。単位グラム当たりの比表面積は、CNTBよりもCNTMの方が大きいことから、CNTBは、壁面層数がより多い、複層CNTである。また、結晶性の違いがN2との吸着相互作用の違いの要因になっていると考えられる。
【0025】
・吸着実験
本発明の実施の形態として示すTiO2/CNTの特性を評価する前に、CNT単独の揮発性有機塩素化合物(CVOC)に対する液相吸着試験を行った。CNTとしては、CNTM、CNTBを用い、比較対象として活性炭Y−4((株)味の素ファインテクノ社製)を用いて同様の吸着実験を行った。各濃度のテトラクロロエチレン(PCE)とトリクロロエチレン(TCE)の水溶液を作製してサンプルとして用いた。吸着実験の手順は、以下の通りである。各濃度のPCE,TCE水溶液120mlに吸着剤を0.05g投入した。HCl、NaOHを用いて溶液のpHを調整し、pHを調整した後の溶液を振盪機にて平衡に達するまで振盪した。平衡到達後、孔径サイズ0.45μmのメンブレンフィルタを用いて吸着剤を分離除去した。吸着後のPCE又はTCE水溶液の濃度を分光光度計により測定した。
【0026】
・カーボンナノチューブの吸着特性
表1に示した特性を有するCNTB及びCNTMに対する有機物の液相吸着特性について説明する。CNTBを純水又はPCE溶液に投入すると浮くことがわかる。但し、純水の場合では、CNTBは、液相内部に停滞し、振盪によって分散することができるのに対して、PCE溶液中では、水面に浮き、溶液との親和性を示さない。したがって、溶液を振盪しても分散させることができなかった。そのため、実施例では、純水中に一度分散させたCNTBをPCE溶液に投入した。しかし、これではH2Oが吸着しており、PCEとの吸着を阻害する虞があるため、吸着平衡に達するまで十分な期間(約3日間)静置してから濃度測定を行った。
【0027】
図7に、吸着剤としてCNTM(図7(a))又は活性炭(図7(b))を系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示す。図7から、ACは、吸着平衡に達するまでに約7時間を要するのに対して、CNTMは、約30分で平衡に達している。一般的に、ACは、ペレット状などの塊で使用されることが多いが、実施例では条件を他と一にするため、粉末状で使用した。ACを塊状で使用した場合には、吸着平衡に達するまでに80時間以上を要したという過去の報告例からも、ACによる吸着では、比表面積の大部分を示す細孔内への溶質の拡散が吸着の律速になることがわかる。一方、CNTは、平衡に達するまでの期間が短いことから、外表面への吸着が占める割合が大きい。
【0028】
また、ACは、PCEとTCEをともに吸着できるのに対して、CNTは、TCEをほとんど吸着していない。PCEとTCEの物理的性質として、PCEが水に難溶であり、TCEが微溶であるが、TCEの方がH2Oとの親和力が強いためである。CNTM−TCE間の相互作用とAC−TCE間の相互作用が異なるためである。TCEの極性によるものであると考えられる。CNTがその合成方法、形状等の特徴に応じてCVOCの一部を選択的に吸着可能であるという事実は、CVOCの回収及び分解処理の新規方法を提案する上で、CVOCの選別方法への応用が可能である。
【0029】
次に、図8にpH条件を変化させてCNTB(図8(a))、CNTM(図8(b))又はAC(図8(c))を系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示す。CNTMは、pH変化の影響が無視できる程度に、吸着量が安定しているのに対して、ACの吸着量は、高pH条件下では減少している。原因としては、活性炭表面に生成したH2Oクラスタが吸着を阻害すること、またAC上に存在する酸性官能基が水と錯体を形成することで吸着サイトが覆われること等があげられる。また、CNT(CNTM、CNTB)がpHの影響を受けにくいのは、H2O吸着能を増加させるための酸性官能基の数が少ないためであると予想される。
【0030】
以上のことから、少なくとも、表1に示す特徴を有する2つのMWCNT(実施例では、CNTM、CNTBと命名した)は、PCEとTCEとの分離回収に適用することができ、CNTは、幅広いpH範囲において、PCEの吸着能力を維持できることが確認された。また、図9は、各吸着剤の吸着等温線を示す。図9((a)CNTM、(b)CNTB、(AC))に示すように、低濃度ではCNTに殆ど吸着しなかったTCEも、高濃度では吸着されることが確認できる。したがって、CNTは、CVOC溶液の濃度に応じても、CVOCの一部を選択的に吸着可能であるといえ、この特徴は、CVOCの回収及び分解処理に応用可能である。
【0031】
(2)酸化チタンTiO2(以下、チタニアという)担持CNTの吸着及び光分解効能
・TiO2/CNTの作製
吸着と光分解の両方が期待される複合材料としてのTiO2/CNTを作製するために、酸性条件下におけるゾルゲル法を用いて2通りの方法でTiO2をCNTに担持させた。2通りの方法の違いは、担持プロセスにおけるpHである。担持プロセスにおいてpHを操作することにより、ゾル時のTiO2の粒子径を制御し、その結果CNTに担持されたTiO2の粒子の大きさを変化させる試みを行った。pH=3の場合が比較的大きい粒子径で、pH=1の場合がより小さい粒子径である。本実施例では、一例としてCNTBを用いて、CNTBに対してチタニアを担持させた、チタニア担持カーボンナノチューブ複合材料を作製した。比較的大きい粒子径を有するチタニアを担持させた触媒をTiO2/CNTBとし、より小さい粒子径のTiO2を担持させた触媒をnanoTiO2/CNTBとする。
【0032】
作製手順は、次の通りである。Ti(iso−OC3H7)4、3.7mlを1MのHNO3の水溶液15mlに徐々に加え常温下で2時間攪拌したところ透明ゾルが生成した。生成した透明ゾルに蒸留水50mlを加え、更にNaOHを適宜加えて、担体がTiO2/CNTBの場合はpH=3に、また担体がnanoTiO2/CNTBの場合はpH=1に調整した。その後、水溶液を常温下で再び2時間攪拌したところ白濁コロイドが生成した。生成した白濁コロイドにCNTB1.0gを加え、pH>6となるまで蒸留水で洗浄した。洗浄後のCNTB添加白濁コロイドをN2雰囲気下(流量200ml/分)、300℃で2時間焼成し、所望とするサンプルを得た。得られたサンプルについてキャラクタリゼーション、吸着実験、光分解実験を行い、性能評価を行った。
【0033】
・TiO2/CNTBの同定
CNTB、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBのそれぞれについて、TEM観察、XRD、TG、BET比表面積測定により同定した。図10に各吸着剤のBET比表面積測定の測定結果を示す。CNTBにチタニアを担持すると、CNTB単体のみの場合と比べて比表面積は増加している。これは、CNTB表面に担持されたチタニア自身の比表面積(TiO2単独では、239.82m2/g)によるものであると考えられる。増加の度合いは、TiO2/CNTBが非常に大きく、nanoTiO2/CNTBは、微増であった。これは、触媒中に含まれるチタニアの割合が異なるためにチタニアによる比表面積への寄与に違いが生じたためであると予想される。
【0034】
図11は、各試料のTG曲線を示す。結果から、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBともに、僅かに燃焼温度が増加しているが、その度合いは小さいことから、チタニア担持によるCNTB燃焼温度への影響は小さいことが確認された。また、TiO2/CNTBの未燃焼分から、チタニアの担持量がそれぞれ約35%、約11%であることが確認され、これは、EDXの実験結果から得られたチタニア含有量ともほぼ一致している。
【0035】
図12にTiO2/CNTBのXRDスペクトルを示す。結果から、グラファイト由来のピークと、アナターゼ由来のピーク(anatase、PDF#21−1272)が確認でき、CNTB上に担持されたチタニアが光触媒活性を示すといわれているアナターゼ型結晶構造をとっていることが確認された。
【0036】
TiO2/CNTBにおけるチタニアの担持量は、重量にして約35%であるが、モル比に換算するとTiO2:C=94:6となるので、グラファイトのピークに比べてTiO2のピークが相対的に小さいのは、Cに比べてTiO2の結晶化度が低いことが1つの要因として予想される。
【0037】
図13に、nanoTiO2/CNTBのTEM像を示す。また、図14にTiO2/CNTBのTEM像を示す。図13に示すように、nanoTiO2/CNTBの表面に細かなTiO2粒子が確認された。サンプル中には、細かい炭素の塊も存在するが、EDXの結果からもTiO2の存在が明らかである。一方、図14では、より粒子径の大きいTiO2がCNTB上に担持されていることが確認できる。したがって、nanoTiO2/CNTBには、確かに細かいチタニア粒子が広く担持され、TiO2/CNTBには、比較的粒径の大きなチタニアが局所的に付着している。
【0038】
・TiO2/CNTBの吸着特性
図15に、TiO2/CNTBのPCE吸着等温線を示す。TiO2/CNTBの吸着量は、僅かに減少しているものの、全濃度領域を通してほとんど違いが存在しないが僅かに減少した。このことから、TiO2/CNTBのPCE吸着量は、CNT単体に比べて小さくなったことが示された。この吸着量の減少は、CNT表面にCNTよりは小さい吸着量を有するチタニアが担持されたことを示している。
【0039】
・光分解実験
光分解実験では、TiO2/CNTを用いた光分解におけるPEC濃度及びpHの経時変化の測定と、酸化補助剤としてH2O2を投入した際のPEC濃度、H2O2濃度、pHの経時変化濃測定とを行う。光分解実験では、比較のため、2種類の蛍光ランプ(東芝ライテック(株)社製)、殺菌用ランプGL−6と、補虫用ランプFL6BLを用いた。ランプの使用を下記表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
本実施例において、最終的な目標とする処理は、太陽光を利用することによりエネルギーやランニングコストをゼロに近づけることであるので、蛍光ランプを利用する際にも、太陽光により近い紫外線強度になるような条件を定めた。一般的に地表に到達する太陽光に含まれる紫外線の強度は、太陽からの距離、そのほかの条件(季節、天候、地球上における観測位置など)によって左右されるが、強度のオーダは、1mW/cm2程度である。そこで、太陽光を想定したFL6BL(主としてUV−Aを放射する蛍光ランプ)を用いた実験では、容器表面に到達する紫外線強度が5.3mW/cm2になるようにランプと試料容器との距離を決めた。
【0042】
図16に各ランプの波長分布を示す。また、図17には、距離による光強度を示す。但し、図17は、蛍光ランプの初回点灯時から100時間経過したときの値である。試料容器は、紫外線の透過率が高い石英製のガラス管を用い、ゴム栓をして閉鎖系にて実験を行った。封入する溶液量は、110mlとした。石英ガラス管のサイズは、内径25mm、外径29mm、長さ250mmであった。光分解実験では、蛍光ランプからの光が触媒表面に十分到達できるように、石英ガラス管内にスターラチップを入れて、紫外線照射中はスターラで攪拌し、光触媒を溶液内に懸濁させた。光触媒投入量は、0.05gとし、投入直後から紫外線照射を開始し、PCE濃度の経時変化を観察した。蛍光ランプGL−6は、主波長254nmで主としてUV−Cを放射する。また、FL6BLは、主波長352nmで主としてUV−Aを放射する。
【0043】
一般的に、光触媒を用いた液相における分解では、酸化剤としてO2が導入されることが多いが、本具体例では、処理対象が揮発性有機塩素化合物であり、更に液相でそのまま光分解を行うことを目的としている。そのため、代替えの酸化補助剤としてH2O2を系内に予め導入して実験を行った。酸化剤としてH2O2を選択した理由としては、
・光触媒を用いた分解において、反応機構上の利点が存在するといわれていること。
・光触媒により完全に分解されて無害な物質になるため硫黄分や窒素分を放出しうるH2SO4やHNO3よりも環境負荷が低いこと。
・光触媒反応が、一般的に無差別に対象物質を完全に無機化するため、H2O2を過剰に投入しておくことでH2O2が検出されないことが対象物質の有無を知る1つの方法になること
からである。H2O2は、低濃度のKMnO4を滴下することで肉眼により確認することができる。
【0044】
光分解実験の実験条件を下記表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
なお、本発明では、液相での分解について説明しているが、O2を投入してもよい。曝気法の場合、本具体例で使用しているPCEのような揮発性の汚染物質の多くが気相内に分散することにもなる。したがって、取り込まれたCVOCは酸化物としてのO2が豊富に存在する系内で反応することが予測される。光触媒を用いた処理では、一般的に液相よりも気相での方が効率的に進行するといわれており、反応速度という観点でみた場合、気相で分解することも有効である。
【0047】
・PCEの光分解実験結果
吸光度
紫外線ランプを用いた光分解を行う際には、ランプの放射する波長と処理対象の物質や、それに混在しうる物質がどの波長の光を吸収するかを予め把握しておく必要がある。光分解には、光の種類(波長)によって様々な方法があるが、どの手法においても光をより効率的に利用する工夫は必要不可欠である。本実施例では、紫外線を利用し、TiO2/CNTBを光触媒とすることでPCEの分解を行うことを目的としており、かつ酸化剤としてはH2O2を利用しているので、PCEとH2O2について吸光がどの波長に存在するのかを測定した。
【0048】
図18、図19にPCE、H2O2の分光度計による波長毎の吸光度測定結果を示す。結果から、PCEは、約260nm以下、H2O2は、約280nm以下でのみ紫外波長で吸光を示すことが確認された。したがって、主波長254nmであるGL−6を使用した場合には、PCE、H2O2ともに吸光を示し且つ光のエネルギーが結合エネルギーよりも大きいために、紫外線による直接分解が起こる。H2O2が分解される際には、OHラジカルが発生し、OHラジカルが有機物の分解を更に促進させる。これが促進酸化法(Advanced Oxidation Process:AOP)の1つである紫外線/過酸化水素法(UV/H2O2法)である。したがって、GL−6を用いてPCEの光分解を行うときは、紫外線による直接分解、H2O2が分解されて生成したOHラジカルによる分解、TiO2の光触媒作用による分解などの分解が起こっているといえる。一方、紫外線352nmのFL6BLを紫外線源として用いた場合は、PCE、H2O2ともに吸光がないことから、紫外線による直接分解、紫外線によるOHラジカルの発生もない。このことから、FL6BLを用いた場合には、PCEやH2O2の分解は、TiO2の光触媒作用によってのみ引き起こされているといえる。
【0049】
・GL6(UV−C)による分解実験
図20は、主波長254nmであるGL−6によるPCEの光分解実験結果を示す。UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示している。紫外線のみでの分解と、TiO2/CNTBによる分解とを比較すると、濃度推移にほとんど変化がみられないことから、TiO2/CNTB単体での触媒活性は、紫外線による直接分解に比べて非常に小さいことが確認された。これは、チタニアの触媒活性発現のために必要な酸化剤の量が溶存酸素のみでは不十分であったことがあげられる。また、254nmの波長は、TiO2の活性を発現させるために最適ではないということもあげられ、この波長領域でTiO2/CNTBを使用する場合には、酸化剤の投入が必要とされた。
【0050】
そこで、反応促進のための酸化補助剤としてH2O2を添加した。H2O2を液相での光触媒分解に添加することは、一般的ではないが、反応促進のための利点があることを期待した。酸化剤としてH2O2を系内に投入した結果、UV/H2O2のみの場合と比べても活性が向上した。反応を擬一次反応であると仮定すると、反応速度がUV/H2O2のみの場合と比べて、1.33倍、UVのみの場合に比べて1.9倍向上した。下記表4に反応速度定数を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
・FL6BL(UV−A)による分解実験
352nmの紫外線は、254nmの紫外線と比べて、遙かに低いエネルギーを有する紫外線である。また、254nmは、それだけで有機塩化水素やH2O2を分解することができる反面、352nmの紫外線は、それだけでは有機塩素化合物にもH2O2にも吸光がなく、分解することができない。しかし、太陽光に含まれている紫外線のうち、254nmのようにエネルギーが高いものはオゾン層で、吸収されてしまい、地表にはほとんど到達しない。また、TiO2が光触媒活性を示すために最適な波長は、380nm付近のUV−Aである。本実施例では、太陽光によって分解が可能なエネルギーフリーである処理方法を目指していることから、主波長354nmの蛍光ランプを用いた。
【0053】
図21は、ピーク波長352nmのランプによるPCEの光分解の結果であり、UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示している。実験結果から、酸素などの酸化剤が存在しない系においてもTiO2/CNTB光触媒は、活性を示し、初濃度約30mg/lのPCE溶液を7時間程度で約50%分解することができた。但し、図21の結果は、一例であって、光触媒活性は、吸着剤の投入量や紫外線強度によって容易に変化可能である。
【0054】
図21から、H2O2を添加した系では、添加しない系と比べて反応が促進されていることが確認できた。H2O2は、紫外波長に吸光がないことから、紫外線によって直接分解されてOHラジカルが発生することはないとみられ、このことから、反応効率の大幅な上昇は、チタニアとH2O2の相乗効果によって生み出されたものであると予想できる。H2O2が存在しない系では、PCE分解に直接寄与するのは、主としてOHラジカルであり、その発生源は、H2Oであると考えられるが、反応全体としてPCE分解が促進されたことから、H2O2が存在する系では、H2O2もOHラジカル源として効果的に利用されていると予想できる。
【0055】
本実施例で投入したH2O2の量(初濃度582ml)は、PCE初濃度に対して化学量論比約95倍であったが、この値は、任意の量として暫定的に決定したものである。しかし、系内のH2O2が少量だとPCE分解促進の効果が薄れ、逆に過剰に存在しても逆反応やOHラジカルの消費などによって反応阻害が起こることが想定される。したがって、チタニアを用いた光分解において、酸化補助剤として投入するH2O2には最適値が存在するはずである。そこで更に、上述した実験条件(PCE初濃度、容器の容量及び形状、触媒投入量、ランプの波長及び強度など)におけるH2O2の最適な初期添加量を探索した。添加量を変化させたときのPCE転化率を比較した。
【0056】
図22に、H2O2初濃度を変動させた際の紫外線照射時間3時間後におけるPCEの転化率を示す。結果から、H2O2の初濃度には、最適値が存在することがいえる。偶然ながら、本実施例で使用した条件(H2O2初濃度582mg/l、PCEに対する化学量論比95)が最適値に近いことが確認された。但し、この最適条件は、反応開始後、3時間までを総合的に考慮した条件である。H2O2の分解量は、H2O2初濃度とある程度比例関係にあることが確認できる。H2O2の反応量は、活性サイト(OHラジカル)衝突の数によると予想できる。酸化剤(酸化補助剤)の過剰存在下では、PCEの分解を補助する役割を担うとともに、活性サイトやラジカルとの反応と競合することでPCEの分解を阻害する効果もあるため、適量を添加することが好ましい。
【0057】
図23に、TiO2/CNTBとnanoTiO2/CNTBをそれぞれ光触媒として用いたときの紫外線照射開始3時間後におけるPCE分解(%)とpHとの比較を示す(H2O2無添加)。結果からTiO2/CNTBの方がnanoTiO2/CNTBに比べてPCE転化率は高いことが確認できる。但し、投入した触媒50mgのうち実際に反応に関与するチタニアの量は、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBそれぞれに対して約17.5mg、5.5mgであり、チタニアの単位重量ベースで検討すると、nanoTiO2/CNTBの方が転化率は高い。これは、nanoTiO2/CNTBにおけるチタニアの方がより細かく粒子径の小さい状態でCNT表面に担持されているためである。pH変化は、転化率がより低いnanoTiO2/CNTBの方が大きく、転化率が高いTiO2/CNTBの方が小さい。これは、上述した結果でも観察されたように、チタニアを用いた光分解の反応機構では、正孔と水とが反応した際に、OHラジカルとH+が生じることに起因する。PCEが多く分解されたということは、OHラジカルが多く生成されたことであり、それに伴ってH+も生成するため、PCE転化率が高いTiO2/CNTBの方が、結果として多くのH+を放出しpHが低下したのである。
【0058】
(3)付記 CNTの酸化処理、切断開口処理
CNTの有機塩素化合物を吸着する能力を高める目的で、CNTをH2O2等の酸化剤で酸化してもよい。また、比表面積を増加させて吸着能力の向上を図ってもよい。以下、CNTのH2O2酸化処理と、CNTの切断開口処理の一例を示す。
【0059】
・H2O2による酸化処理
CNTの有機塩素化合物を吸着する能力を高めるために、CNTをH2O2で酸化してもよい。CNTを酸化しCNT表面に官能基を導入することにより、この官能基に重金属が吸着して吸着量が増加するといった報告はされているが、PCEやTCEのような有機物のCNT吸着では、重金属とは異なり吸着相互作用(物理吸着)によるものであるため、同様のプロセスにより吸着量が増加するとはいえないが、酸化によって表面状態を変化させることにより、吸着ポテンシャルが変化するため、より多くの有機塩素化合物を吸着できるようになると考えることができる。生成したH2O2酸化CNTに関しては、TEM観察、XRD、TG、FTIR、BET比表面積測定によるキャラクタリゼーションを行い、更にCVOC吸着実験を通して、吸着剤投入後の吸着量の経時変化、吸着等温線、pHによる吸着量への影響を調べた。酸化手順は次の通りである。30%のH2O2200mlに0.8gのCNTを投入し、約70℃で加熱しつつ4時間攪拌した。この後、純水を用いて洗浄し、ホットスターラを用いて乾燥させた。乾燥後、H2O2酸化CNTを得ることができる。
【0060】
・酸化及び超音波によるCNTの切断開口処理
物理吸着において吸着量を増加させるには、比表面積を増加させることが効果的である。CNTは、チューブ形状を有しており、その先端は基本的には閉じているが、CNTの結晶構造を保持したままチューブを強制的に切断し、開口することができれば、開口前は使用できなかったチューブ内部の側面も吸着に利用できる可能性がある。ここで重要なのは、チューブ形状は保持したままCNTを切断することである。酸化と超音波の併用による穏やかな酸化処理によってCNTのチューブ形状を破壊することなく、約数百nm程度の断片に切断する技術が報告されているので、それを適用する(J. Liu, A. G. Rinzler, H. Dai, J. H. Hafner, R. K. Bradley, P. J. Boul, A. Lu, T. Iverson, K. Shelimov, C. B. Hoffman, F. Rodriguez-Macias, Y-S. Shon. T, R. Lee, L. T. Colbert, R. E. Smalley, Science. 280 (1998)1253)。
【0061】
上述の文献に基づく方法に基づいて、CNTを酸化処理し、得られた開口CNTについて吸着実験を行うことで、吸着能力への影響について検討した。但し、開口処理されたCNTは、少量のサンプルしか作製することができなかったので、BET比表面積測定、TEM観察、吸着実験のみを行った。切断開口処理は、次の通りである。濃H2SO4/HNO3、3:1の混合溶液80mlにCNT40mgを投入し、約40℃で加熱しながら24時間超音波処理した。処理後の試料を細孔サイズ100nmのフィルタで分離後、純水で洗浄した。10mMのNaOHで更に洗浄した。洗浄後のCNTを濃H2SO4/30%H2O2、4:1の混合溶液80mlに投入し、80℃で加熱しながら30分間攪拌した。処理後の試料を細孔サイズ100nmのフィルタで分離後、純水で洗浄した。更に、10mMのNaOHで洗浄すると、切断開口処理されたCNTを得ることができる。
【0062】
(4)総括
カーボンナノチューブの揮発性有機塩素化合物の吸着特性として、カーボンナノチューブは、液相におけるテトラクロロエチレン吸着において、非常に短い時間(約30分)で吸着平衡に達することがわかった。比表面積の大部分がカーボンナノチューブ外部表面に起因するために、多孔性の吸着剤と比べてテトラクロロエチレンの細孔内への遅い拡散速度の影響を受けないからである。また、カーボンナノチューブは、液相におけるテトラクロロエチレン吸着において、pHの影響をほとんど受けないことが示された。これは他の吸着剤のように官能基の電離などによる水の吸着の影響が小さいためであると考えられ、液相における吸着剤として大きな利点を有する。
【0063】
一方、カーボンナノチューブは、トリクロロエチレンをほとんど吸着しないことが示されたが、これは、例えば、テトラクロロエチレンとトリクロロエチレン等、特定の有機塩素化合物の分離に応用することができる。
【0064】
また、酸性条件下におけるゾルゲル法によって、チタニアをカーボンナノチューブ上に担持したチタニア担持カーボンナノチューブ複合材料が作製できることがわかった。pH=1の場合には、粒子径約1〜3nmのものがカーボンナノチューブ表面上に細かく広く担持され、pH=3の場合には、粒子径約50〜100nmの比較的大きな塊のチタニアが局所的に担持された。また、表面上のチタニアは、全てアナターゼが多結晶構造を有していることが確認された。
【0065】
チタニア担持カーボンナノチューブを光触媒として使用し、主波長254nmの紫外線ランプを用いてテトラクロロエチレンの分解を促進した。容器表面に到達する紫外線強度0.03mW/cm2、テトラクロロエチレン初濃度25mg/lとした一実施例では、反応を擬一次反応としたときの速度定数は、紫外線のみの場合0.0744から0.0821まで増加し(1.1倍)、酸化補助剤として過酸化水素を反応開始時にテトラクロロエチレンに対する化学量論比114倍になるように添加した場合は、更に0.1449まで増加した(1.95倍)。
【0066】
また、チタニア担持カーボンナノチューブを光触媒として使用し、主波長352nmの紫外線ランプを用いたテトラクロロエチレンの分解を促進したところ、チタニア担持カーボンナノチューブの352nm紫外線によるテトラクロロエチレン分解活性を確認した。容器表面に到達する紫外線強度5.3mW/cm2、テトラクロロエチレン初濃度30mg/lとした一実施例では、約7時間経過後、転化率50%に達した。また、過酸化水素を酸化補助剤として添加することで、反応効率を大幅に上昇することができ、酸化補助剤を添加したときの同じ7時間経過後の転化率は、80%以上であった。更に当条件下で最適な過酸化水素の化学量論比は、100程度であることがわかった。
【0067】
したがって、以上説明したように、本発明の実施の形態としての複合材料TiO2/CNTの最大の特徴は、作製のための処理及び操作が簡易であること、処理対象を完全に無機化することが可能であり運転のためのエネルギー消費がゼロに近いため環境負荷が低いこと、CNTの形状ゆえに吸着平衡に達する時間が短いこと、また吸着した汚染物質を通常の吸着剤のように脱着処理し更に回収処理する必要がなく、吸着状態でCNT表面に担持されたチタニアにより酸化分解処理ができるというハイブリッド処理が可能なことである。このように、チタニア担持カーボンナノチューブは、地下水汚染物質の一例であるテトラクロロエチレンを回収する過程及び分解する処理を含めて、非常に簡易かつ安全に実現できるとともに、これらの処理をゼロに近いエネルギー消費で実現することができる複合材料である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例で使用するCNTBのTEM像を示す写真図であり、(a)は、2万倍拡大図、(b)は、20万倍拡大図である。
【図2】本発明の実施例で使用するCNTMのTEM像を示す写真図であり、(a)は、2万倍拡大図、(b)は、20万倍拡大図である。
【図3】(a)は、本発明の実施例で使用したCNTBのXRDスペクトル測定結果を示すスペクトル図であり、(b)は、本発明の実施例で使用したCNTMのXRDスペクトル測定結果を示すスペクトル図である。
【図4】本発明の実施例で使用するCNTB及びCNTMのTG曲線を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施例で使用するCNTB及びCNTMのDTA曲線を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施例で使用するCNTB及びCNTMのBET比表面積測定の結果を比べた比較図である。
【図7】(a)は、上記CNTMを系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図であり、(b)は、従来のACを径に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図8】pH条件を変化させたときの各吸着剤投入後の濃度変化を示しており、(a)は、pH5.8において上記CNTMを系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図であり、(b)は、上記CNTBを系に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図であり、(c)は、pH5.8において従来のACを径に投入したときのCVOC濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図9】(a)は、上記CNTMの吸着等温線を示すグラフ図であり、(b)は、上記CNTBの吸着等温線を示すグラフ図であり、(c)は、ACの吸着等温線を示すグラフ図である。
【図10】上記CNTB、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBのBET比表面積測定の結果を比べた比較図である。
【図11】上記CNTB、TiO2/CNTB、nanoTiO2/CNTBのTG曲線を示すグラフ図である。
【図12】上記TiO2/CNTBのXRDスペクトル測定結果を示すスペクトル図である。
【図13】上記nanoTiO2/CNTBの異なる箇所におけるTEM像を示す写真図であり、(a)、(b)ともに20万倍拡大図である。
【図14】上記TiO2/CNTBの表面のTEM像を示す写真図であり、(a)は、2万倍拡大図、(b)は、5万倍拡大図である。
【図15】上記TiO2/CNTBの吸着等温線を示すグラフ図である。
【図16】光分解実験で使用した各蛍光ランプの波長特性を示す波長分布図であり、(a)は、GL−6の波長分布を示すグラフであり、(b)は、FL6BLの波長分布を示すグラフである。
【図17】上記各蛍光ランプの距離による強度特性を示す光強度図であり、(a)は、GL−6の光強度を示すグラフであり、(b)は、FL6BLの光強度を示すグラフである。
【図18】PCEの吸光度測定結果を示すグラフ図である。
【図19】H2O2の吸光度測定結果を示すグラフ図である。
【図20】UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図21】UV照射時間に対するPCE濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図22】H2O2初濃度を変動させたときの紫外線照射開始3時間後におけるPCE転化率を示すグラフ図である。
【図23】上記TiO2/CNTBと上記nanoTiO2/CNTBをそれぞれ光触媒として用いたときの紫外線照射開始3時間後におけるPCE分解とpHとを比べた比較図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に光触媒が担持されたカーボンナノチューブ複合材料のチューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着し、
上記難分解性有機塩素化合物が液相吸着した上記カーボンナノチューブ複合材料に紫外線を照射し、
上記光触媒の触媒作用により上記難分解性有機塩素化合物を無機化することを特徴とする難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項2】
上記カーボンナノチューブは、多層構造を有することを特徴とする請求項1記載の難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項3】
上記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項4】
上記難分解性有機塩素化合物の溶液中に、更に酸化剤として過酸化水素水を添加することを特徴とする請求項1記載の難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブのチューブ壁面に光触媒が担持されており、
上記チューブ壁面及び上記光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着するとともに光触媒作用により難分解性有機塩素化合物を分解することを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料。
【請求項6】
上記カーボンナノチューブは、多層構造を有することを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブ複合材料。
【請求項7】
上記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする請求項記5載のカーボンナノチューブ複合材料。
【請求項1】
壁面に光触媒が担持されたカーボンナノチューブ複合材料のチューブ壁面及び光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着し、
上記難分解性有機塩素化合物が液相吸着した上記カーボンナノチューブ複合材料に紫外線を照射し、
上記光触媒の触媒作用により上記難分解性有機塩素化合物を無機化することを特徴とする難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項2】
上記カーボンナノチューブは、多層構造を有することを特徴とする請求項1記載の難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項3】
上記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項4】
上記難分解性有機塩素化合物の溶液中に、更に酸化剤として過酸化水素水を添加することを特徴とする請求項1記載の難分解性有機塩素化合物の分解方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブのチューブ壁面に光触媒が担持されており、
上記チューブ壁面及び上記光触媒表面に難分解性有機塩素化合物を液相吸着するとともに光触媒作用により難分解性有機塩素化合物を分解することを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料。
【請求項6】
上記カーボンナノチューブは、多層構造を有することを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブ複合材料。
【請求項7】
上記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする請求項記5載のカーボンナノチューブ複合材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−54694(P2007−54694A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240503(P2005−240503)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年2月22日 化学工学会第70年会発行の「研究発表講演要旨集」のCD−ROMに発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年2月22日 化学工学会第70年会発行の「研究発表講演要旨集」のCD−ROMに発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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