説明

難溶性活性成分を可溶化するための疎水性中核部を有する超分岐ポリエステル

本発明は、20℃で水に最大10g/L溶解し得る活性成分と、疎水性ジカルボン酸および三官能性アルコールをベースとした超分岐ポリエステルとを含有する組成物に関する。本発明はさらに、前記超分岐ポリエステル、その製造方法、および水溶液において20℃で水に最大10g/L溶解し得る活性成分を可溶化するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分と、疎水性ジカルボン酸および三官能性アルコールをベースとした超分岐ポリエステルとを含む組成物を提供する。本発明はさらに、前述の超分岐ポリエステル、その製造方法、および、20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分を水溶液中で可溶化するためのそれらの使用に関する。好ましい態様と別の好ましい態様との組み合わせは、本発明に包含されるものとする。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、疎水性活性成分は、関連の活性成分自体には化学的な変化を及ぼすことなく、水中で可溶化されることが求められる。そのためには、例えば、関連の活性成分がエマルションの油相にあるエマルションを調製することができる。しかし、多くの医薬品有効成分または特に作物保護組成物で、とりわけ、体液で、または植物の樹液中でそれらが送達されるようになっているものの場合には、この種の方法は難しい。高剪断力の作用下では、エマルションが破壊される可能性がある。さらに、エマルションを維持しながら殺菌することも困難であることが多い。
【0003】
活性成分と超分岐ポリエステルとを含む組成物は公知である:WO 2007/125028には、水性溶媒中に疎水性活性成分を可溶化させる方法であって、イソシアネート基を担持する、ポリアルキレンオキシド単位と場合により反応させていてもよい超分岐ポリエステルを使用する方法が開示されている。このポリエステルを製造するため、各種の様々なジカルボン酸、例えば、セバシン酸と、各種の様々な三官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびそれらのアルコキシル化誘導体が記載されている。
【0004】
また、超分岐ポリエステルは公知である:WO 2009/047210には、ジカルボン酸単位と三官能性アルコールとを含む超分岐ポリエステルであって、前記ジカルボン酸単位がC3-C40アルキル基またはアルケニル基で置換されているコハク酸単位である、超分岐ポリエステルが開示されている。また各種の様々な三官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびそれらのアルコキシル化誘導体が記載されている。WO 2007/068632には、ポリイソブテン基を有するジカルボン酸を三官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびそれらのアルコキシル化誘導体と反応させることによって得ることができる超分岐ポリエステルが開示されている。
【0005】
しかし、これらの公知の超分岐ポリエステルの欠点は、通常、それらが典型的な両親媒性構造を持っていないので、ごく少量の難溶性活性成分しか可溶化することができないということである。さらに、これらのポリエステルはそれ自体が水溶性または水分散性ではない場合が多く、そのため、水性溶媒中で可溶化させるのには不適である。さらに、存在するカルボン酸基の中和は、通常、酸価が非常に低いため(例えば、ポリマー1g当たり50mgKOH未満あるいは20mgKOH未満)、一般に水溶性とすることは難しい。
【0006】
また、WO 2007/125028で好ましい構造として記載されているポリエステルは、相対的に極性の短鎖ジカルボン酸成分(例えば、コハク酸、アジピン酸)であるため加水分解的に不安定であり、それ故、それらのポリエステルは、保存に安定した水性活性成分製剤(特に農業化学(agrochemical)分野のもの)の製造に際してはあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2007/125028
【特許文献2】WO 2009/047210
【特許文献3】WO 2007/068632
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、難溶性活性成分を特に水性溶媒中で可溶性化するのに適した、代替の超分岐ポリエステルを見い出すことであった。さらなる目的は、最大量の活性成分(特に活性農業化学成分)を可溶化することができるとともに、最大安定性(特に加水分解安定性)を有し得るポリエステルを見い出すことであった。さらに、当該ポリエステルは、ポリアルキレンオキシド基による官能基化および/または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基による官能基化によって、かつ/あるいは、場合により(部分的に)中和可能な多数のカルボン酸基の存在によって、それ自体が水溶性または水分散性である。最後に、本発明の目的は、市販の化学製品から、また産業上信頼性の高い方法で、容易に製造することができる超分岐ポリエステルを見い出すことでもあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分と、疎水性ジカルボン酸および三官能性アルコールをベースとした超分岐ポリエステルとを含む組成物であって、疎水性ジカルボン酸が脂肪族C10-C32ジカルボン酸であり、当該ジカルボン酸はポリイソブチレン基および/またはC3-C40の基を有するコハク酸単位を有しており、三官能性アルコールがグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、またはそれらのアルコキシル化誘導体である、前記組成物により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施形態では、疎水性ジカルボン酸は脂肪族C10-C32ジカルボン酸である。さらなる好ましい実施形態では、疎水性ジカルボン酸は、ポリイソブチレン基を有するジカルボン酸である。さらなる好ましい実施形態では、疎水性ジカルボン酸はC3-C40基を有するコハク酸単位である。さらなる好ましい実施形態では、疎水性ジカルボン酸は、ポリイソブチレン基および/またはC3-C40基を有するコハク酸単位を有しているジカルボン酸である。
【0011】
20℃での活性成分の最大水溶解度は10g/L、好ましくは2g/L、さらに好ましくは0.5g/L、特に0.1g/Lである。本組成物は、1種または複数の異なる活性成分を含んでいてもよい。活性成分の具体例は、活性農業化学成分、活性化粧品成分、活性医薬品成分または食品サプリメント(例えば、ビタミンまたはカロチノイド)である。好ましい活性成分は、活性農業化学成分である。
【0012】
活性化粧品成分の具体例は、化粧料用油、香味剤および芳香剤、ビタミンまたは紫外線吸収剤である。化粧料用油としては、ラッカセイ油、ホホバ油、ヤシ油、アーモンド油、オリーブ油、パーム油、ヒマシ油、大豆油、小麦麦芽油、または精油、例えば、パイン油(mountain pine oil)、ラベンダー油、ローズマリー油、トウヒ葉油、マツ葉油、ユーカリ油、ハッカ油、セージ油、ベルガモット油、テレビン油、メリッサ油、杜松油、レモン油、アニス油、カルダモン油、ショウノウ油など、またはそれらの混合物が挙げられる。紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2'-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2'-エチルヘキシル-1'-オキシ)-1,3,5-トリアジン、3-(4-メトキシベンジリデン)カンファー、2-エチルヘキシルN,N-ジメチル-4-アミノベンゾエート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルサリチレート、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメートおよび2-イソアミルp-メトキシシンナメート、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0013】
香味剤および芳香剤の具体例は、WO 01/49817、または「Flavors and Fragrances」, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH, 2002に開示されている通りであり、これに十分に言及されている。
【0014】
ビタミンの具体例は、A群、C群、E群およびF群から選択されるビタミン、プロビタミンおよびビタミン前駆体、特に3,4-ジデヒドロレチノール、β-カロチン(ビタミンAのプロビタミン)、アスコルビン酸(ビタミンC)、およびパルミチン酸エステル、アスコルビン酸のグルコシドまたはリン酸塩、トコフェロール、特にα-トコフェロールおよびそれらのエステル、例えば酢酸塩、ニコチン酸塩、リン酸塩およびコハク酸塩;さらにはビタミンF(これは必須脂肪酸を意味するものと理解されたい)、特にリノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸である。
【0015】
活性医薬品成分の具体例としては次のものが挙げられる:ベンゾジアゼピン、抗高血圧剤、ビタミン剤、細胞増殖抑制剤、特にタキソール、麻酔剤、神経弛緩剤、抗うつ剤、抗ウィルス剤、例えば抗HIV薬剤、抗生物質、抗カビ剤、抗認知症薬、殺菌剤、化学療法剤、泌尿器疾患剤、血小板凝集阻害剤、スルホンアミド剤、鎮痙薬、ホルモン剤、免疫グロブリン剤、血清、甲状腺治療剤、向精神薬、パーキンソン薬および他の抗運動過剰症薬、眼科用剤、ニューロパシー製剤、カルシウム代謝調節剤、筋弛緩剤、脂質低下剤、肝臓治療剤(hepatotherapeutics)、冠状動脈薬、心臓病薬、免疫療法剤、制御ペプチドおよびそれらの阻害剤、催眠薬、鎮静剤、婦人科用剤、痛風治療剤、線維素溶解剤、酵素製剤および輸送タンパク質、酵素阻害剤、吐剤、血流刺激剤、利尿薬、診断用薬、コルチコイド、コリン作用剤、胆管治療薬、喘息治療薬、気管支拡張薬、ベータ受容体遮断剤、カルシウム拮抗剤、ACE阻害剤、動脈硬化症薬、抗炎症剤、抗凝血剤、抗低血圧剤、抗低血糖剤(antihypoglycaemics)、抗高血圧剤、抗線維素溶解剤、抗てんかん剤、制吐剤、解毒剤、糖尿病用薬、不整脈治療剤、抗貧血剤(antianaemics)、抗アレルギー剤、駆虫剤、鎮痛剤、蘇生剤、アルドステロン拮抗剤、減量剤。
【0016】
「活性農業化学成分」という用語(これ以降、農薬ともいう)は、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、薬害軽減剤および/または成長調節剤の群から選択される少なくとも1種の活性成分を意味する。好ましい農薬は、殺菌剤、殺虫剤および除草剤、特に殺虫剤である。上記の分類の2種以上から選択した農薬の混合物を使用することもできる。当業者はこうした農薬に精通しており、例えば、Pesticide Manual, 第14版, (2006), The British Crop Protection Council, Londonで確認することができる。適切な殺虫剤は、カルバメート、有機ホスフェート、有機塩素系殺虫剤、フェニルピラゾール、ピレスロイド、ネオニコチノイド、スピノシン、アベルメクチン、ミルベマイシン、幼若ホルモン類似物質、ハロゲン化アルキル、有機スズ化合物、ネライストキシン類似物、ベンゾイル尿素、ジアシルヒドラジン、METI殺ダニ剤(acaricide)の群の殺虫剤、ならびに、クロロピクリン、ピメトロジン、フロニカミド、クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾール、ジアフェンチウロン、プロパルギット、テトラジホン、クロルフェナピル、DNOC、ブプロフェジン、シロマジン、アミトラズ、ヒドラメチルノン、アセキノシル、フルアクリピリム、ロテノン、またはそれらの誘導体などの殺虫剤である。適切な殺菌剤は、ジニトロアニリン、アリルアミン、アニリノピリミジン、抗生物質、芳香族炭化水素、ベンゼンスルホンアミド、ベンズイミダゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアジン、ベンジルカルバメート、カルバメート、カルボキサミド、カルボン酸アミド、クロロニトリル、シアノアセトアミドオキシム、シアノイミダゾール、シクロプロパンカルボキサミド、ジカルボキシキミド、ジヒドロジオキサジン、クロトン酸ジニトロフェニル、ジチオカルバメート、ジチオラン、エチルホスホネート、エチルアミノチアゾールカルボキサミド、グアニジン、ヒドロキシ-(2-アミノ)ピリミジン、ヒドロキシアニリド、イミダゾール、イミダゾリノン、無機化合物、イソベンゾフラノン、メトキシアクリレート、メトキシカルバメート、モルホリン、N-フェニルカルバメート、オキサゾリジンジオン、オキシミノアセテート、オキシミノアセトアミド、ペプチジルピリミジンヌクレオシド、フェニルアセトアミド、フェニルアミド、フェニルピロール、フェニル尿素、ホスホネート、ホスホロチオレート、フタルアミド酸、フタルイミド、ピペラジン、ピペリジン、プロピオンアミド、ピリダジノン、ピリジン、ピリミジルメチルベンズアミド、ピリミジンアミン、ピリミジン、ピリミジノンヒドラゾン、ピロロキノリノン、キナゾリノン、キノリン、キノン、スルファミド、スルファモイルトリアゾール、チアゾールカルボキサミド、チオカルバメート、チオファネート、チオフェンカルボキサミド、トルアミド、トリフェニルスズ化合物、トリアジン、トリアゾールの分類の殺菌剤である。適切な除草剤は、アセトアミド、アミド、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンズアミド、ベンゾフラン、安息香酸、ベンゾチアジアジノン、ビピリジリウム、カルバメート、クロロアセトアミド、クロロカルボン酸、シクロヘキサンジオン、ジニトロアニリン、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、グリシン、イミダゾリノン、イソオキサゾール、イソオキサゾリジノン、ニトリル、N-フェニルフタルイミド、オキサジアゾール、オキサゾリジンジオン、オキシアセトアミド、フェノキシカルボン酸、フェニルカルバメート、フェニルピラゾール、フェニルピラゾリン、フェニルピリダジン、ホスフィン酸、ホスホロアミデート、ホスホロジチオエート、フタルアマート、ピラゾール、ピリダジノン、ピリジン、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボキシアミド、ピリミジンジオン、(チオ)安息香酸ピリミジニル、キノリンカルボン酸、セミカルバゾン、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホニル尿素、テトラゾリノン、チアジアゾール、チオカルバメート、トリアジン、トリアジノン、トリアゾール、トリアゾリノン、トリアゾロカルボキサミド、トリアゾロピリミジン、トリケトン、ウラシル、尿素の分類の除草剤である。
【0017】
一実施形態では、農薬は殺虫剤を含み;該農薬は、さらに好ましくは、少なくとも1種の殺虫剤からなる。好ましい殺虫剤は、フィプロニル、アレスリン、アルファ-シペルメトリン、ベータ-シフルスリン、ビフェントリン、ビオアレスリン、4-クロロ-2-(2-クロロ-2-メチルプロピル)-5-[(6-ヨード-3-ピリジニル)メトキシ]-3(2H)ピリダジノン(CAS RN:120955-77-3)、クロルフェナピル、クロルピリホス、シフルスリン、シハロスリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フェノキシカルブ、フルフェノクスロン、ヒドラメチルノン、メタフルミゾン、ペルメトリン、ピリプロキシフェン、シラフルオフェン、テブフェノジドおよびトラロメトリンである。特に好ましい殺虫剤は、フィプロニル、アルファ-シペルメトリン、ビフェントリン、クロルフェナピル、シフルスリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、ヒドラメチルノン、メタフルミゾン、ペルメトリンである。とりわけ特に好ましい殺虫剤は、フィプロニル、アルファ-シペルメトリン、デルタメトリン、クロルフェナピル、ヒドラメチルノンおよびメタフルミゾンである。特別好ましい殺虫剤はフィプロニルである。さらなる実施形態では、農薬は殺菌剤を含み;農薬は、好ましくは、少なくとも1種の殺菌剤からなる。好ましい殺菌剤は、ピラクロストロビン、メトコナゾール(metconazol)およびエポキシコナゾール(epoxiconazol)である。さらなる実施形態では、農薬は除草剤を含み;農薬は、好ましくは、少なくとも1種の除草剤からなる。さらなる実施形態では、農薬は成長調節剤を含み;農薬は、好ましくは、少なくとも1種の成長調節剤からなる。
【0018】
本発明に係る組成物は、典型的には、本組成物に対して活性成分を0.1〜70重量%、好ましくは1〜60重量%、特に3〜50重量%含む。超分岐ポリエステルと活性成分の重量比は、通常、1:2〜25:1の範囲である。
【0019】
デンドリマーポリマーおよび超分岐ポリマーは、高度に分岐した構造と高官能性を特徴とするポリマーに関する用語である。しかし、デンドリマーポリマーと超分岐ポリマーとの間の構造には有意な違いがある。デンドリマーは、高対称性構造を持つ分子的に均質な高分子である。デンドリマーは、中心分子から出発し、いずれの場合にも2つ以上の二官能性または多官能性モノマーとそれぞれ既に結合されているモノマーとの制御的な段階的結合により製造することができる。それぞれの結合工程では、モノマー末端基の数(ひいては、結合の数)は、2倍かそれ以上に増加し、生成の継代によって構築される、樹木状構造(理想的には球状)を持った単分散高分子であって、その分岐がそれぞれ、正確にモノマー単位と同一の数を有する高分子が得られる。分岐状構造のため、そのポリマー特性には利点がある:例えば、球表面に多数の官能基があることから、意外にも、低粘性および高反応が認められる。だが、単分散デンドリマーの製造は、各結合工程で保護基を導入した後、再び保護基を除去する必要があり、また、それぞれの新しい成長段階を開始する前に厳密な精製操作が必要とされることから煩雑である。これが、なぜデンドリマーが一般に実験室規模でのみ製造されているかという理由である。
【0020】
対照的に、超分岐ポリマーは、分子的にも構造的にも不均一である。すなわち、ポリマーの分子は、分子量に関しても、また分子構造に関しても分散がある。超分岐ポリマーは、無世代的な方法(non-generational manner)で構築されることにより得られる。したがって、超分岐ポリマーでは、中間体の単離および精製の必要もない。超分岐ポリマーは、それらを形成するのに必要な成分の単純混合と、いわゆるワンポット反応におけるそれらの反応によって得ることができる。超分岐ポリマーは、デンドリマー部分構造(dendrimeric substructures)を有していてもよい。けれども、超分岐ポリマーは、さらに、直鎖状ポリマー鎖および不均一ポリマー分岐も有している。
【0021】
超分岐ポリマーの合成に特に適しているのは、いわゆるABxモノマーである。これらは、結合を形成する分子間反応において相互に反応し得る、2個の異なる官能基AおよびBを一分子中に有する。官能基Aは、一分子当たり1回だけ存在し、官能基Bは、2回または2回以上存在する。前記ABxモノマーの相互反応によって、多数の分岐部位を持つ非架橋ポリマーが形成される。当該ポリマーは、鎖末端に、ほぼ例外なくB基を有する。
【0022】
さらに、超分岐ポリマーは、Ax+By合成経路により製造することができる。この場合、AxおよびByは、官能基AおよびBを有する2種の異なるモノマーを表し、指数のxおよびyは1つのモノマー当たりの官能基の数を示す。ここで、A2+B3合成の例によって説明するAx+By合成の場合、二官能性モノマーA2を三官能性モノマーB3と反応させる。これにより、まず、平均で1個の官能基Aと2個の官能基Bを有するAおよびBからなる1:1付加物が形成され、次いで、この付加物を同様に反応させて超分岐ポリマーを得ることができる。こうして得られた超分岐ポリマーはまた、末端基として主にB基を有する。
【0023】
本発明に従って用いられる非デンドリマー超分岐ポリマーは、分岐度においてデンドリマーと有意に異なる。当該ポリマーの分岐度DBは、DB = 100 * (T + Z) / (T + Z + L)として定義され、式中、Tは、末端に結合されたモノマー単位の平均数であり、Zは、分岐を形成しているモノマー単位の平均数であり、Lは、特定ポリマーの高分子中の直鎖状に結合されたモノマー単位の平均数である。「分岐度」の定義については、H. Freyら, Acta Polym. 1997, 48, 30も参照されたい。本発明では、ポリマーに関する「超分岐」の特徴は、分岐度DBが10〜95%、好ましくは25〜90%、さらに好ましくは30〜80%であることを意味する。対照的に、デンドリマーは、最大可能数の分岐部位を有しており、それは高度に対称的な構造によってのみ達成され得る。本発明に関して、ポリマーは、対照的に、分岐度DBが99〜100%である場合、「デンドリマー」である。
【0024】
既知の方法で、ポリエステルはエステル結合を有する。このポリマーは、構造単位として、いずれの場合にも、少なくとも1種の疎水性ジカルボン酸単位と、少なくとも1種の三官能性アルコールを含む。さらに、これらはさらなる構造単位を含んでいてもよい。超分岐ポリエステルは、通常、水に可溶化されるか、分散されるが、それは、透明な(すなわち、肉眼で識別可能な粒子がない)水溶液または分散液を製造することが可能であることを意味する。
【0025】
適切な疎水性ジカルボン酸は、脂肪族C10-C32ジカルボン酸である。好ましいものは、セバシン酸、α,ω-ウンデカンジカルボン酸、α,ω-ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸(ブラシル酸)であり、特にセバシン酸である。
【0026】
別の好適な疎水性ジカルボン酸は、ポリイソブチレン基を有するジカルボン酸である(これ以降、「PIBジカルボン酸(PIB diacid)」ともいう)。この点について、「ポリイソブチレン基を有するジカルボン酸」は、少なくとも2個のジカルボン酸基、少なくとも2個のジカルボン酸エステル基、または少なくとも1個のジカルボン酸無水物基を有する(好ましくは、1個のジカルボン酸無水物基を有する)。こうしたPIBジカルボン酸は、ポリイソブチレンをエノファイル(enophile)と反応させることによって得ることができる。好ましい実施形態では、生成物は、ポリイソブチレンとエノファイルのエン反応(ene reaction)の1:1(mol/mol)反応生成物である。PIBジカルボン酸は当業者に公知の方法によって製造されるが、好ましくは、ポリイソブチレンをエノファイルと反応させる方法が記載されている、独国公開明細書DE-A 195 19 042の好ましくは2ページ39行〜4ページ2行、さらに好ましくは3ページの35〜58行、またDE-A 43 19 671の好ましくは2ページ30行〜68行、またDE-A 43 19 672の好ましくは2ページ44行〜3ページ19行に記載されているようにして製造する。ポリイソブチレンは、好ましくは、ビニル異性体および/またはビニリデン異性体から形成される末端基を少なくとも60mol%の範囲まで有するものである。
【0027】
好適なエノファイルは、フマリルクロリド、フマル酸、イタコン酸、イタコニルクロリド、マレイルクロリド、無水マレイン酸および/またはマレイン酸であり、好ましくは無水マレイン酸またはマレイルクロリド、さらに好ましくは無水マレイン酸である。
【0028】
PIB酸の数平均分子量Mnは、好ましくは少なくとも100g/mol、より好ましくは少なくとも200g/molである。一般的に、数平均モル質量Mnは5000以下、より好ましくは2000g/mol以下である。特に好ましい実施形態では、PIB酸は、1000 +/- 500 g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0029】
PIBジカルボン酸は、好ましくは、一般式(Ia)、(Ib)または(Ic)の構造を有し、この場合、PIBは、任意の重合によって得られるものであって、100〜100000ダルトンの数平均分子量Mnを有するポリイソブチレニル基であってもよい。好ましいのは式(Ia)、すなわち、PIB-無水コハク酸である。
【化1】

【0030】
このようにして得られ、またポリイソブチレニル基で置換されている好ましい無水コハク酸誘導体(「PIBSA」として公知)の数平均分子量Mnは、DIN 53401による加水分解値により、物質の単位mg中のKOH/gで特性決定することができる。PIBSAの合成は、無水マレイン酸とポリイソブテンとの間のエン反応として、文献で公知である(例えば、DE-A 43 19 672、EP-A 156 310を参照されたい)。
【0031】
エン反応中に、新しいα-オレフィン基が鎖末端で形成され、これが次に再び反応する。当業者には、さらなる無水マレイン酸との反応によって、ポリイソブテンの反応性鎖末端につき2個の無水コハク酸基を有し得る生成物が得られることは公知である。このことは、BF3触媒から得られるポリイソブテンが、エン反応の効率に応じて、鎖あたり1個または2個の無水コハク酸基を有していてもよいことを意味する。従って、無水マレイン酸との反応におけるリビングカチオン重合からのポリイソブテンも同様に、反応性鎖末端あたり一置換または二置換である可能性がある。したがって、ポリイソブテンは、一分子につき1個の無水コハク酸基だけでなく、2個以上の無水コハク酸基を有する可能性がある。
【0032】
無水マレイン酸との反応が新しい二重結合を形成し、これが同様に無水マレイン酸と反応し得るため、このようにして得られる、ポリイソブチレン基で置換されている無水コハク酸は、一般に、0.9対1.5、好ましくは0.9対1.1の無水コハク酸基とポリイソブチレン鎖の比を有する。さらに好ましくは、それぞれのポリイソブチレン鎖は、1個の無水コハク酸基のみを有する。
【化2】

【0033】
上記に、単一の反応性鎖末端を有する理想的なポリイソブテンのシングルエン反応およびダブルエン反応による生成物異性体の具体例を示す。これらの異性体は、1つの鎖末端に1個の無水コハク酸基(α‐オレフィンPIBSA、「A」;ベータ-オレフィンPIBSA、「B」)、または2個の無水コハク酸基を持つことを示す。しかしながら、同様に、2個以上の鎖末端を有するPIBSAは、従って、一置換および二置換の様々な異性改変体において、鎖末端あたり1個または2個の無水コハク酸基を持つ可能性がある。このため、可能な異性体の数は、鎖末端の数とともに急激に増加する。当業者には、反応に応じて、異なる置換パターンがPIBSAの様々な異性体成分で実現されることは知られている。
【0034】
末端無水コハク酸基で改変されたポリイソブチレン誘導体の官能基化の程度、すなわち、ポリイソブテン中のエノファイルと反応したα-またはβ-オレフィン末端基の割合は、合計で少なくとも65mol%、好ましくは少なくとも75mol%、最も好ましくは少なくとも85mol%である。1個の反応性鎖末端のみを有するポリマーの場合には、官能基化の程度は、可能な2種の異性体α-およびβ-オレフィンPIBSAのある、この1個の官能基にのみ関係する。二置換および多置換PIBSA誘導体においては、官能基化の程度に関するデータは、1つの分子鎖内の全官能基の総数に関係する。1つの鎖末端に一置換または二置換が存在するかどうかによって、上記の異性体が様々な割合で存在する。
【0035】
非官能基化鎖末端は、すべての末端で反応基を有していない(すなわち、α-またはβ-オレフィン基がない)ものであるか、あるいは反応基(α-またはβ-オレフィン基)を有するが、エン反応の工程で無水マレイン酸と反応しなかったもののいずれかの可能性がある。要するに、官能基化の程度は、したがって、1つのポリマー鎖中に存在する全官能基の数にのみ関係するが、それらの可能性のある異性体には関係しない。
【0036】
さらに、無水マレイン酸とポリイソブテンの共重合は、例えば、WO 90/03359、EP B1 644 208、EP B1 744 413中にも記載されている。そのようにして調製された生成物は、ポリPIBSAの名称で知られている。しかし、共重合は、エン反応と比較すると、比較的小さな役割しか果たさない。フリーラジカル開始剤を使用する、この無水マレイン酸とポリイソブテンの共重合では、櫛型構造を持つ交互共重合体が形成される。オレフィン系末端基を有する無水マレイン酸の、またはポリイソブテンのホモポリマーは知られていない。このため、ポリPIBSAには厳密な交互構造があると推定することができる。エン反応からの末端無水コハク酸単位を含むPIBSAに関する官能基化の程度は、特定することができない。ポリPIBSAの構造を下記に示す。
【化3】

【0037】
また、好適な疎水性ジカルボン酸は、C3-C40基を有するコハク酸単位、好ましくは、式(II)で表される置換コハク酸単位:
【化4】

【0038】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C3〜C40-アルキル基、またはC3〜C40-アルケニル基であるが、但し、R1、R2、R3およびR4基の少なくとも1つは、Hではない)
でもある。これらの基は、好ましくはアルケニル基である。好ましくは、R1、R2、R3またはR4基の2または3個はHである。さらに好ましくは、これらの基の3個がHであり、すなわち、コハク酸単位はアルキル基またはアルケニル基を1つだけ有する。その1つの置換は、R1位またはR3位にあってもよい。
【0039】
アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。これらの基は、好ましくは、C4〜C30の基、さらに好ましくはC6〜C28の基、よりさらに好ましくはC8〜C26の基であり、例えば、C10〜C20の基である。アルキル鎖は、より好ましくは直鎖状である。例えば、これらは、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルまたはイソオクタデシル基、好ましくはデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルまたはイソオクタデシル基であってもよい。これらの基が分岐状である場合、好ましくは、分岐は当該基の3個の炭素原子につき1つ以下で存在しなければならず、さらに好ましくは、分岐は当該基の4個の炭素原子につき1つ以下で存在しなければならない。
【0040】
アルケニル基は、1つまたは複数の二重結合を有する。これらは、好ましくは、1つの二重結合を有するアルケニル基である。アルケニル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。これらの基が分岐状である場合、好ましくは、分岐は当該基の3個の炭素原子につき1つ以下で存在しなければならず、さらに好ましくは、分岐は当該基の4個の炭素原子につき1つ以下で存在しなければならない。これらの基は、好ましくは、C4〜C30の基、さらに好ましくはC6〜C28の基、よりさらに好ましくはC8〜C26の基であり、例えば、C10〜C20の基である。アルケニル基は、好ましくは、n-またはイソヘキセニル、n-またはイソヘプテニル、n-またはイソオクテニル、n-またはイソオクタジエニル、n-またはイソノネニル、n-またはイソデセニル、n-またはイソドデセニル、n-またはイソテトラデセニル、n-またはイソヘキサデセニル、n-またはイソオクタデセニルあるいはテトラプロペニル基であってもよい。アルケニル基は、さらに好ましくは、n-またはイソオクテニル、n-またはイソドデセニル、n-またはイソテトラデセニル、n-またはイソヘキサデセニル、n-またはイソオクタデセニル、あるいはテトラプロペニル基である。
【0041】
超分岐ポリエステルを合成するためには、記載した方法で置換されているコハク酸を使用することができる。しかし、好ましくは、コハク酸は、活性化誘導体の形態で、特にハロゲン化物、エステルまたは無水物の形態で使用することができる。誘導体は、特に、モノマーまたはポリマーの形態の関連無水物、モノ-またはジアルキルエステル、好ましくはモノ-またはジ-C1-C4-アルキルエステル、さらに好ましくは、モノ-またはジメチルエステル、あるいは対応するモノ-またはジエチルエステル、ならびにモノ-およびジビニルエステルおよび混合エステル、好ましくは異なるC1-C4-アルキル成分との混合エステル、さら好ましくは、混合メチルエチルエステルである。
【0042】
特に好ましいのは、出発物質としての無水コハク酸の使用である。無水物が高反応性であることに加え、無水物の使用には、アリル位に水素原子を有するオレフィン類と無水マレイン酸とを反応させること(いわゆるエン反応)により、非常に簡易で低コストの方法でアルケニル無水コハク酸を製造することができるという利点がある。直鎖状α-オレフィンの反応によって、n-アルケニル基を有するアルケニル無水コハク酸を提供することができる;非末端に二重結合のある異性化オレフィンは、イソアルケニル基で置換されている無水コハク酸を生じさせる。また用いられるオレフィンは、反応性オリゴオレフィンまたはポリオレフィンであってもよいが、反応性ポリイソブテンは使用しないのが好ましい。エン反応によるアルケニル無水コハク酸(ASAとしても公知)の製造は、例えば、WO 97/23474またはDE 195 19 042、およびその中の引用文献に詳細に記載されている。
【0043】
使用するのが好ましいアルケニル基で置換されている無水コハク酸は、n-またはイソヘキセニル無水コハク酸、n-またはイソヘプテニル無水コハク酸、n-またはイソオクテニル無水コハク酸、n-またはイソオクタジエニル無水コハク酸、n-またはイソノネニル無水コハク酸、n-またはイソデセニル無水コハク酸、n-またはイソドデセニル無水コハク酸(DDSA)、n-またはイソテトラデセニル無水コハク酸、n-またはイソヘキサデセニル無水コハク酸、n-またはイソオクタデセニル無水コハク酸、テトラプロペニル無水コハク酸、2-ドデセニル-3-テトラデセニル無水コハク酸である。また、異なる置換無水物の混合物が使用可能であることも理解されよう。
【0044】
特に好ましい製品は、n-またはイソオクテニル無水コハク酸、n-またはイソドデセニル無水コハク酸(DDSA)、n-またはイソテトラデセニル無水コハク酸、n-またはイソヘキサデセニル無水コハク酸、n-またはイソオクタデセニル無水コハク酸、テトラプロペニル無水コハク酸または前記製品の混合物である。とりわけ特に好ましいのは、n-またはイソヘキサデセニル無水コハク酸、n-またはイソオクタデセニル無水コハク酸、あるいはそれらの混合物である。
【0045】
アルケニルコハク酸またはそれらの誘導体もしくは混合物は、アルキルコハク酸またはそれらの誘導体との混合物で使用することもできる。
【0046】
超分岐ポリエステルを製造するためには、少なくとも1種の疎水性ジカルボン酸を少なくとも1種の三官能性アルコールと反応させ、反応混合物中の反応基の比は、OH基とカルボキシル基またはそれらの誘導体のモル比が5:1〜1:5、好ましくは4:1〜1:4、より好ましくは3:1〜1:3、最も好ましくは2:1〜1:2となるように選択する。疎水性脂肪族C10-C32ジカルボン酸および/またはポリイソブチレン基を有するジカルボン酸および/またはC3-C40基を有するコハク酸単位の混合物を使用する場合、OH基のカルボキシル基に対する化学量論比は、通常、上記に記載した通りに維持する。
【0047】
三官能性アルコールは、少なくとも3個のアルコール基を有するアルコールを意味するものと理解されたい。好適な三官能性アルコールは、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、またはそれらのアルコキシル化(好ましくは、エトキシ化もしくはプロポキシル化)誘導体である。また、多数の異なる三官能性アルコールの混合物が使用可能であることは理解されよう。好ましい三官能性アルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールである。とりわけ特に好ましいのは、グリセロールおよびトリメチロールプロパンである。
【0048】
グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトールのアルコキシル化誘導体は、公知の方法で、基本的にはアルコールをアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはペンチレンオキシド)でアルコキシル化することによって得ることができる。混合アルコキシル化ポリエーテルオールは共重合体であってもよく、その場合、例えば、異なるアルキレンオキシド単位は鎖中でランダムに分散されているか、ブロック共重合体であってもよい。
【0049】
グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)またはペンタエリスリトールのアルコキシル化誘導体は、好ましくは、1.1〜20のアルキレンオキシド単位で、好ましくはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位でアルコキシル化される。グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールのアルコキシル化誘導体は、最も好ましくは1.1〜20のプロピレンオキシド単位でアルコキシル化される。
【0050】
前述の成分の他に、本発明に従って使用される超分岐ポリマーの合成に、場合によってはさらなる成分を使用することもできる。こうした成分はポリマーの特性に好影響を及ぼし、所望の目的に対してそれらを最適なように調節するために使用することができる。
【0051】
例えば、さらなる二官能性または多官能性カルボン酸を使用することができる。さらなるカルボン酸の例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2-、1,3-もしくは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはそれらの誘導体、特にそれらの無水物またはエステルが含まれる。しかし、こうしたさらなるカルボン酸の量は、一般には、一緒に使用する全カルボン酸の量(すなわち、疎水性ジカルボン酸と、さらなる二官能性または多官能性カルボン酸の合計)に対して50mol%を超えないようにするべきである。
【0052】
さらに、三官能性アルコールだけでなく、二官能性の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族ジオールを使用することもできる。二価アルコールの選択が好適であると、ポリエステルの特性に好影響を及ぼすことができる。好適なジオールの具体例は、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-、1,3-および1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-および1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ならびにまたジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール HO(CH2CH2O)n-H、またはポリプロピレングリコール HO(CH[CH3]CH2O)n-H (式中、nは整数であり、nは≧4である)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール(ここで、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位の配列はブロック式(blockwise)であってもランダム式であってもよい)、またはポリテトラメチレングリコールであり、好ましくは5000g/mol以下のモル質量である。また二価アルコールは、場合によっては、さらなる官能基、例えばカルボニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、またはスルホニル官能基、例えばジメチロールプロピオン酸またはジメチロール酪酸、およびそれらのC1-C4-アルキルエステル、モノステアリン酸グリセリンまたはグリセリルモノオレエートを含んでいてもよい。しかし、こうしたさらなる2価のアルコールの量は、一般に、使用する全アルコールの量(すなわち、三官能性アルコールと二官能性ジオールの合計)に対して50mol%を超えないようにしなければならない。二価アルコールの量は、好ましくは、30mol%以下、さらに好ましくは20mol%以下である。最も好ましくは、三官能性アルコールのみを使用する。
【0053】
超分岐ポリエステルの全成分の変換は、溶媒の存在下または非存在下で実施することができる。好適な溶媒は、炭化水素、例えばパラフィン、芳香族化合物、エーテルおよびケトンなどである。しかし、好ましくは、この反応は溶媒無しで実施する。
【0054】
この反応は、一般に、昇温、例えば30〜250℃、特に80〜220℃、さらに好ましくは80〜180℃で行う。
【0055】
重合(重縮合)中に形成される水またはアルコールは、適切な手段により反応溶媒から除去しなければならない。その反応は、例えば、反応の開始時に加えられる添加剤としての脱水剤(water-withdrawing agent)の存在下で達成することができる。適切な例は、モレキュラーシーブ、特に4Åモレキュラーシーブ、無水MgSO4または無水Na2SO4である。さらに、反応の間に形成される水またはアルコールは、留去することができる。これはまた、水分離器を使用する適切な連行剤(entraining agent)によって行うことができる。蒸留は、好ましくは、減圧下で、例えば、1 mbar〜500 mbarの圧力で達成することができる。
【0056】
この反応は、触媒の不在下で実施することができる。しかし、好ましいのは、少なくとも1種の触媒の存在下で作用させることである。触媒は、好ましくは、酸性の無機触媒、有機金属系触媒または有機触媒、あるいは複数の酸性の無機触媒、有機金属系触媒または有機触媒の混合物である。また、本発明に従って触媒として酵素を使用することもできるが、その使用はあまり好ましくはない。
【0057】
本発明では、酸性の無機触媒は、例えば、硫酸、硫酸塩および硫酸水素塩、例えば硫酸水素ナトリウム、、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル(pH:≦6、特に≦5)および酸性酸化アルミニウムである。使用可能なさらなる酸性の無機触媒としては、例えば、一般式Al(OR1)3のアルミニウム化合物、および一般式Ti(OR1)4のチタネート類が挙げられ、基R1に関しては、いずれの場合にも、同一であっても異なっていてもよく、また、互いに独立して、C1-C20アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ドデシル、n-ヘキサデシルまたはn-オクタデシル、例えば;C3-C12シクロアルキル基、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシルおよびシクロドデシル、例えば;好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルから選択することができる。Al(OR1)3および/またはTi(OR1)4中の基R1は、好ましくは、それぞれ同一であって、n-ブチル、イソプロピルおよび2-エチルヘキシルから選択される。
【0058】
好ましい酸性の有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズオキシドR12SnOまたはジアルキルスズジエステルR12Sn(OR2)2から選択される。前記式中、R1は上記で定義した通りであり、かつ、同一であっても異なっていてもよい。R2は、R1と同一定義を有しており、また、さらに、C6-C12アリール:例えば、フェニル、o-、m-もしくはp-トリル、キシリルまたはナフチルであってもよい。R2は、いずれの場合にも、同一であっても異なっていてもよい。有機スズ触媒の具体例は、スズ(II)n-オクタノエート、スズ(II)2-エチルヘキサノエート、スズ(II)ラウレート、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレアートまたはジオクチルスズジアセテートである。また、考えられるものとしては、有機アンチモン、有機ビスマスまたは有機アルミニウム触媒である。酸性の有機金属触媒の特に好ましい代表例は、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドおよびジブチルスズジラウレートである。
【0059】
好ましい酸性の有機触媒は、例えば、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基またはホスホン酸基を含有する酸性有機化合物である。特に好ましいのは、例えば、パラ-トルエンスルホン酸などのスルホン酸である。また、酸性イオン交換体も酸性有機触媒として使用可能であり、具体的には、約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸含有のポリスチレン樹脂であってもよい。
【0060】
上記触媒の2種以上の組み合わせを使用することもできる。例えば、シリカゲルまたはゼオライト上に固定化された形態で、不連続の分子の状態で存在する有機触媒、有機金属触媒または無機触媒も使用可能である。酸性の無機触媒、有機金属触媒または有機触媒の使用が望ましい場合、使用される触媒の量は、本発明によれば、0.001%〜10重量%、好ましくは0.01%〜1重量%である。
【0061】
反応時間は、通常、5分〜48時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは1時間〜10時間である。反応の終了は、ほとんどの場合、反応混合物の粘性が突然、急速に上昇し始めるという事実によって確認することができる。粘性の上昇が始まると、例えば冷却によって、その反応を止めることができる。その後、(プレ)ポリマー中のカルボキシル基数は、例えば、DIN 53402-2により酸価を滴定することによって、混合物の試料で測定することができる。
【0062】
記載したモノマーの反応により、エステル結合が形成される。得られた超分岐ポリエステルは、本質的には架橋結合されていない。本発明において、本質的には架橋結合されていないとは、ポリマーの不溶性含有量によって測定される、15重量%未満、好ましくは10重量%未満の架橋度が存在することを意味する。ポリマーの不溶性含有量は、ゲル透過クロマトグラフィーで使用される溶媒と同一溶媒(すなわち、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミドまたはヘキサフルオロイソプロパノール)で4時間抽出することにより測定した。前記溶媒によって、その場合、ポリマーは、ソックスレー抽出器で良好な溶解度を有し、残留物を一定重量まで乾燥させた後、残りの残留物を秤量した。
【0063】
溶媒を使用せずに操作する場合、一般に最終生成物は直ちに得られ、必要に応じて、従来の精製操作によって精製することが可能である。溶媒を使用した場合も、通常、反応後に反応混合物から、例えば、真空蒸留によってそれを除去することができる。
【0064】
本合成は極めて簡単であることが注目すべき点であり、そして簡便なワンポット反応で超分岐ポリエステルの調製が可能となる。中間体の単離若しくは精製または中間体用の保護基は必要ない。超分岐ポリエステルの調製のさらなる詳細については、例えば、WO 01/46296、DE 101 63 163、DE 102 19 508、DE 102 40 817またはWO 99/16810に記載がある。超分岐ポリエステルは、通常、バッチ式、半連続式または連続式で操作されるリアクターまたはカスケード型リアクターにおいて、2 mbar〜20 bar(好ましくは標準気圧)の圧力範囲内で製造される。反応条件に関する前述の設定により、また場合によっては好適な溶媒の選択により、本発明に係る生成物は、製造後に、それ以上の精製を行うことなく、さらに処理を進めることができる。
【0065】
好ましいのは、約500〜100000、さらに好ましくは1000〜50000の範囲の重量平均分子量を有する超分岐ポリエステルである。1個のポリアルキレンオキシド基に結合されている超分岐ポリエステルの場合、その分子量は、ポリアルキレンオキシド基以外の超分岐ポリエステルの部分にのみ関係する。その測定は、通常、検出器として屈折計を装備したゲル透過クロマトグラフィーによって行われる。実施例で記載したような測定を実施するのが好ましい。
【0066】
本発明で使用されるポリエステルの多分散性は、一般に1.2〜50、好ましくは1.4〜40、さらに好ましくは1.5〜30、最も好ましくは2〜30である。多分散性データならびに数平均および重量平均分子量データMnおよびMwは、ここでは、標準としてメタクリル酸ポリメチルを、溶離液としてテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミドまたはヘキサフルオロイソプロパノールを使用したゲル透過クロマトグラフィー分析に基づく。この方法は、Analytiker Taschenbuch [Analyst's Handbook], 第4巻, 433〜442ページ, Berlin 1984に記載されている。
【0067】
末端基のタイプは、使用するモノマーの割合によって影響を受ける場合がある。主としてOH末端ポリマーを得ようとする場合、アルコールは過剰量で使用しなければならない。主としてCOOH末端ポリマーを得ようとする場合、カルボン酸は過剰量で使用しなければならない。
【0068】
超分岐ポリエステルの遊離OH基の数値(ヒドロキシル価)は、一般に、ポリマー1グラム当たり10〜500mg、好ましくは20〜450mgのKOHであり、例えば、DIN 53240-2による滴定によって測定することができる。
【0069】
超分岐ポリエステルの遊離COOH基の数値(酸価)は、一般に、ポリマー1グラム当たり0〜400、好ましくは25〜300、より一層好ましくは50〜250、特に120〜250mgのKOHであり、同じくDIN 53240-2による滴定によって測定することができる。
【0070】
本発明で使用される超分岐ポリエステルは、一般に、少なくとも4個の官能基を有する。基本的に、官能基の数に上限はない。しかし、官能基の数が非常に多い生成物は、好ましくない特性、例えば、低溶解性、極端な高粘度を有することが多い。したがって、本発明で使用される超分岐ポリマーは、一般に、100個以下の官能基を有する。超分岐ポリマーは、好ましくは6〜50個、さらに好ましくは6〜30個の官能基を有する。
【0071】
超分岐ポリエステルは、好ましくは、ポリアルキレンオキシド基および/または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基に結合される。さらに好ましくは、超分岐ポリエステルはポリアルキレンオキシド基に結合される。その結果、水溶性/水分散性を獲得するためのカルボン酸基の(部分的)中和はもはや必要ではなくなり、非イオン性の両親媒性可溶化剤を得ることができる。これらの非イオン性可溶化剤は、特に、長期安定性の活性成分製剤を製造するのに好適である。
【0072】
ポリアルキレンオキシド基の例は、モル質量Mnが200〜10000g/mol、好ましくは300〜2000g/molのポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルである。ポリエチレングリコールは、好ましくは、ポリエチレングリコールモノ-C1-C18-アルキルエーテルであり、特にポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0073】
超分岐ポリエステルは、好ましくは、ポリイソシアネートリンカーによってポリアルキレンオキシド基に結合される。
【0074】
用いられるリンカー反応基は、ポリアルキレンオキシド基の鎖末端のヒドロキシル基であってもよい。好ましいのは、鎖末端で厳密には1個のリンカー反応基を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。適切なポリイソシアネートリンカーは、少なくとも1.5、特に1.5〜4.5、とりわけ1.8〜3.5のイソシアネート基に基づく官能性を備えたポリイソシアネートであって、それらには、脂肪族、脂環式および芳香族のジ-およびポリイソシアネート、ならびにイソシアヌレート、アロファネート、ウレトジオン、ならびに脂肪族、脂環式および芳香族ジイソシアネートのビウレットが含まれる。ポリイソシアネートは、好ましくは、一分子につき平均1.8〜3.5個のイソシアネート基を有する。適切なポリイソシアネートの例は、芳香族ジイソシアネート類、例えば、トルエン2,4-ジイソシアネート、トルエン2,6-ジイソシアネート、市販のトルエン2,4-および2,6-ジイソシアネートの混合物(TDI)、n-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジフェニル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジクロロ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、クメン2,4-ジイソシアネート、1,5-ナフタリンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジメチレン-1,3-フェニレンジイソシアネート、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナートジフェニルエーテル、脂肪族ジイソシアネート類、例えば、エチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、プロピレン1,2-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、ならびに脂環式ジイソシアネート類、例えば、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシレン1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン1,4-ジイソシアネートおよびビス(4,4'-イソシアナートシクロヘキシル)メタンなどである。これらのポリイソシアネートのうち、好ましいのは、それらのイソシアネート基が反応性の点から異なるもの、例えば、トルエン2,4-ジイソシアネート、トルエン2,6-ジイソシアネート、4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、シス-およびトランス-イソフォロンジイソシアネート、またはこれらの化合物の混合物である。
【0075】
ポリイソシアネートリンカーとの反応は、溶解物中または有機溶媒中で、好ましくは非プロトン性極性有機溶剤またはこうした溶媒の混合物中で行われる。具体例は、ケトン(例えばアセトン)、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)である。好ましい溶媒は、酢酸ブチル、キシレンおよびアセトンである。この反応は、通常、高温で行われ、その温度は選択した溶媒の沸点が指標となる。ポリイソシアネートリンカーと第1の成分との反応は20〜80℃で行うことができるが、所望の場合には100℃以下で行うこともできる。さらなるイソシアネート基の反応は、50〜100℃の温度で達成することができる。その後、溶媒は蒸留により除去することができる。
【0076】
この反応は等モル法で達成することができる。これは、官能基化剤の、または変換しようとする直鎖状ポリアルキレンオキシドのヒドロキシル基1モル当たりに1molのジイソシアネートが使用されるように量比が選択されることを意味する。好ましいのは、わずかに(例えば0〜15mol%)過剰量のヒドロキシル基を用いて操作し、未変換のジイソシアネート量を軽減させる方法である。対称性ジイソシアネート(例えばHDI)の場合には、過剰のジイソシアネートを使用し、その後、蒸留によって過剰量を除去することが有利である。
【0077】
好ましいのは、この反応を触媒の存在下で実施することである。適切な触媒は、例えば、第三級アミン類、例えば、トリエチルアミン、トリ-n‐プロピルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジンおよびジアザビシクロオクタン(DABCO)、亜鉛カルボキシレート類、ビスマスカルボキシレート類、チタンアルコキシド類、有機スズ化合物、特に脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジオクトエート、ジアルコキシドスズ(II)、例えば、スズジオクトエート、およびセシウム塩、例えば酢酸セシウムである。一実施形態では、スズカルボキシレート、ビスマスカルボキシレート、チタンアルコキシドが特に好適であり、カルボキシレートは、好ましくはC1-C20カルボキシレート(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ヘキサノエート、オクタノエートまたはネオデカノエート)である。触媒は、全固体に対して50〜50000ppm、好ましくは100〜5000ppmの量で使用することができる。
【0078】
一般的に、この反応は、次のような方法で実施される。まず、イソシアネート基で官能基化しようとする成分(例えばポリアルキレンオキシド)を、反応混合物中のイソシアネート値が半分に減少するまで、触媒および溶媒の存在下でジイソシアネートと反応させる。わずかに過剰のヒドロキシル基を使用する場合には、理論的な末端値がヒドロキシル基の完全変換に一致するまで、変換を継続する。これは公知の方法で、例えば滴定手段によって測定することができる。次いで、その後に超分岐ポリエステルを添加する。超分岐ポリエステルとポリアルキレンオキシドとのモル比、または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基とのモル比は、1:1〜1:25、好ましくは1:2〜1:15である。この反応は、イソシアネート値が0に減少するまで継続する。
【0079】
1個の酸性基または2個のアルコール基を含む適切な官能性C1-C24末端基は、好ましくは、1〜24個の炭素原子を有し、かつ、少なくとも1個の酸性基または少なくとも2個のアルコール基を含む脂肪族化合物である。酸性基は、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、硫酸エステル基(すなわち有機硫酸塩)、ホスホン酸基、アミノ基、または少なくとも2個のヒドロキシ-C2-C10-アルキル基であり、さらに好ましくは、カルボン酸基である。場合により、この官能性C1-C24単位は、同時に複数の記載した基を含んでいてもよい。官能性C1-C24末端基は、好ましくは、無水環状カルボン酸に基づくものであり、特に無水コハク酸である。官能性C1-C24末端基の酸性基の一部または全部は、好ましくはアルカリ金属水酸化物または有機アミンで中和することができる。
【0080】
一実施形態では、官能性C1-C24単位は、官能性C1-C24単位が、直接的に、またはポリイソシアネートリンカーによって共有結合で超分岐ポリエステルと結合することができる結合基をさらに含む。適切な結合基は、ポリエステルのOH基および/またはカルボン酸基と反応することができる。具体的な例は、カルボン酸、カルボン酸エステル、無水カルボン酸、イソシアネート、アミンおよびアルコールである。さらなる適切な結合基は、ポリイソシアネートリンカーと反応し得る。具体例は、アルコールまたはアミン、好ましくはアルコールである。
【0081】
通常、官能性C1-C24末端基に結合される超分岐ポリエステルは入手可能であり、好ましくは、1個の酸性基、1個のアミノ基または少なくとも2個のヒドロキシル基および結合基を含んでなる官能性C1-C24単位を含む官能基化剤で、場合によってはポリイソシアネートリンカーを用いて、超分岐ポリエステルと反応させることによって得られる。
【0082】
リンカーを使用しない直接的な共有結合に適する官能基化剤は無水物である。特に適切であるのは無水環状カルボン酸、例えば、無水コハク酸または無水フタル酸、特に無水コハク酸である。無水物は、典型的には、昇温で、通常、80〜200℃で超分岐ポリエステルと反応させる。この反応は、溶媒を添加して、または添加することなく行うことができる。さらなる精製は、通常、行う必要はない。
【0083】
ポリイソシアネートリンカーを介した共有結合に好適な官能基化剤は、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボキシル酸、ヒドロキシスルホン酸、ヒドロキシサルフェート、アミノスルホン酸またはアミノサルフェート、ヒドロキシアミン(例えばジエタノールアミン)、ポリアミン(例えばジエチレンテトラミン)、またはポリオール(例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)である。この目的で好まれるポリイソシアネートリンカーはジイソシアネートであり、さらに好ましくは脂肪族ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート)である。
【0084】
本発明に係る組成物は、超分岐ポリエステルと、20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分とを接触させることにより得ることができる。これらの成分は、一般に公知の方法、例えば、混合、乳化または懸濁などにより接触させることができる。
【0085】
超分岐ポリエステルと活性成分の重量比は、通常、1:50〜100:1、好ましくは1:5〜50:1、さらに好ましくは1:2〜25:1の範囲である。活性成分は、溶解形態で、または固体粒子形態で存在していてもよい。活性成分粒子は結晶であってもよいし、非晶質であってもよい。粒径は、1nm〜10μmであってよい。
【0086】
本組成物は、活性成分の固体、溶液、エマルション、懸濁液またはサスポエマルションの形態であってもよい。本発明に係る組成物は、好ましくは水性組成物である。さらなる好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は固体であり、さらに好ましくは固溶体である。固溶体の場合、典型的には、活性成分がポリマーマトリックス中に分散されている、非晶質形態である。
【0087】
それは、好ましくは少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも60重量%、特に少なくとも80重量%の水を含む。一般的には、本組成物は、多くとも99重量%の水を含む。
【0088】
本発明に係る組成物は製剤化補助剤を含んでいてもよく、一般に、補助剤の選択は、特定の施用形態および活性成分で判断される。適切な製剤化補助剤の具体例は、溶媒、固体担体、界面活性剤(保護コロイド、湿潤剤および粘着剤を含む)、有機および無機増粘剤、殺菌剤、不凍剤、消泡剤であり、場合により、色素および粘着剤(例えば種子処理用)である。
【0089】
有用な界面活性物質(アジュバント、湿潤剤、接着剤、分散剤または乳化剤)としては、芳香族スルホン酸、例えば、リグノスルホン酸(Borresperse(登録商標)製品、Borregaard、Norway)、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(Morwet(登録商標)製品、Akzo Nobel, USA)、およびジブチルナフタレンスルホン酸(Nekal(登録商標)製品、BASF, Germany)の、ならびに脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム塩、アルキル-およびアルキルアリールスルホネート、アルキルエーテル、ラウリルエーテルおよび脂肪族アルコールスルフェート、ならびに硫酸化ヘキサ-、ヘプタ-およびオクタデカノールならびに脂肪族アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレンおよびその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-またはノニルフェノール、アルキルフェニルおよびトリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪族アルコールエチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグノサルファイト(lignosulfite)廃液ならびにタンパク質、変性タンパク質、多糖(例えばメチルセルロース)、疎水性に変性されたデンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)製品、Clariant, Switzerland)、ポリカルボキシレート(Sokalan(登録商標)製品、BASF, Germany)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)製品、BASF, Germany)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)製品、BASF, Germany)、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマーが挙げられる。
【0090】
好ましい実施形態では、活性成分は農薬であり、本発明に係る組成物は農業化学製剤の形態である。適切な農業化学製剤は、水溶性液剤(SL、LS)、水和性液剤(DC)、乳剤(EC)、エマルション製剤(EW、EO、ES、ME)、懸濁製剤(SC、OD、FS)、またはサスポエマルション製剤(SE)である。本組成物は、好ましくは、乳剤(EC)、懸濁液剤(SC)、水溶性液剤(SL)、種子処理用の液剤(LS)、または水和性液剤(DC)の形態である。
【0091】
通常、農業化学製剤は、いわゆるタンク混合(tank mix)を製造するために、使用前に希釈される。希釈に有用な物質としては、中〜高沸点の鉱油留分、例えばケロセンまたはディーゼル油およびコールタール油、植物性または動物由来の油、脂肪族、環状および芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンまたはその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、強極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、または水が挙げられる。好ましいのは、水の使用である。また、タンク混合の段階まで両親媒性物質を加えないこともできる。この実施形態では、本発明に係る組成物はタンク混合の形態で存在する。
【0092】
希釈組成物は、通常、スプレーまたはネブライザーにより施用される。施用の直前に(タンク混合)、各種のオイル、湿潤剤、アジュバント、除草剤、殺細菌剤、殺真菌剤を加えることができる。これらの製剤は、本発明の組成物に1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の重量比で加えることができる。タンク混合中の農薬の濃度は、比較的広範囲で変化し得る。一般的には、それは0.0001〜10%、好ましくは0.01〜1%である。作物保護で施用する場合の施用量は、所望する効果のタイプに応じて、1ヘクタールにつき0.01〜2.0kgの活性成分である。
【0093】
本農業化学製剤は、特定の害虫、それらの生息地もしくは特定の害虫から保護すべき植物、土壌に、および/または不要な植物および/または作物および/またはそれらの繁殖地に、本組成物を作用させることによって、植物病原菌および/または不要な植物の成長および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない加害を防除するため、かつ/あるいは植物の成長を制御するために使用可能である。さらに、本農業化学製剤は、作物の種子を本組成物で処理することによって、植物への昆虫もしくはダニによる望ましくない加害を防除するため、および/または植物病原菌を防除するため、および/または不要な植物の成長を制御するために使用可能である。
【0094】
本発明はまた、疎水性ジカルボン酸および三官能性アルコールをベースとした超分岐ポリエステルであって、疎水性ジカルボン酸が脂肪族C10-C32ジカルボン酸、ポリイソブチレン基を有するジカルボン酸および/またはC3-C40基を有するコハク酸単位であり、三官能性アルコールがグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトールまたはそれらのエトキシ化もしくはプロポキシル化誘導体であり、またこの場合、超分岐ポリエステルがポリアルキレンオキシド基および/または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基に結合される、前記超分岐ポリエステルに関する。超分岐ポリエステルの適切かつ好ましい実施形態は、上記に記載した通りである。
【0095】
さらに本発明は、本発明に係る超分岐ポリエステルの製造方法であって、疎水性ジカルボン酸と三官能性アルコールを重縮合させ、次いで、その生成物を、ポリアルキレンオキシド基および/または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基に結合させることによる、前記方法に関する。場合により、官能性C1-C24末端基の酸性基の一部または全部は、好ましくはアルカリ金属水酸化物または有機アミンで中和されていてもよい。
【0096】
さらに本発明は、20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分を水溶液中で可溶化するための本発明に係る超分岐ポリエステルの使用に関する。「可溶化」とは、同一条件下において、超分岐ポリエステルの不在下に比べ、存在下の方がより多くの活性成分を溶液中へ溶解することができることを意味する。好ましくは、溶液中へ少なくとも2倍の量を、さらに好ましくは少なくとも5倍の量を、特に10倍の量を溶解させることができる。
【0097】
本発明の利点は、高濃度の活性成分を溶液中へ溶解させることができるという点;市販の容易入手できるモノマーからの両親媒性物質の製造が非常に容易に、かつ産業的に、場合によってはワンポット法であっても達成することができる点である。さらなる利点は、両親媒性物質がそれ自体、水溶性または水分散性である点、しかも、多くのポリエステルに比べて加水分解に対する反応性が低い点である。さらなる利点は、活性成分のバイオアベイラビリティが高まる点、活性農業化学成分の全身浸透作用が葉面での取り込みにおいて高まる点、難溶性の可溶農業化学成分であっても、本発明では、例えばSL(水溶性濃縮物)として、またはLS(種子処理用の溶液)として、溶液中で製剤化することができる点、噴霧溶液中の活性農業化学成分の分散が改善される点、活性成分の複数回使用の包装および施用設備(例えば農薬用の噴霧設備)が水を用いて効率的に洗浄され得る点である。
【0098】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0099】
一般名「TMP×n EO/PO」(例えば、「TMP×1.1 PO」または「TMP×12.2 EO」)は、トリメチロールプロパンの1モルあたり、平均してn mol(例えば1.1mol)のプロピレンオキシド(PO)またはエチレンオキシド(EO)と反応させた生成物を表す。PIBSA 1000は、末端無水コハク酸基を有するポリイソブチレン(M=1000g/mol)を表す。Pentasize 8およびPentasize 68は、市販のアルケニル無水コハク酸(Trigon Chemie)を意味するものと理解されたい。この場合、アルケニル基は不飽和C18単位(Pentasize 8)であるか、C16/C18単位の混合物(Pentasize 68)である。DBTLは、ジ-n-ブチルスズジラウレート触媒の省略である。
【0100】
超分岐ポリマーは、検出器として屈折計を装備したゲル透過クロマトグラフィーによって分析した。使用した移動相はTHFであった;分子量の測定に使用した標準はポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。酸価は、いずれの場合にもドイツ工業規格53402(DIN 53402)で測定した。OH価(mg KOH/g)は、DIN 53240、part 2に基づいて測定した。
【0101】
ポリアルキレンオキシド基で官能基化されたポリエステルのモル質量は、親超分岐中核部の数平均分子量、それのOH価および選択した官能基化の程度(官能性直鎖状ポリマーのNCO基と中核部分子の利用可能なヒドロキシル基との理論混合比)から計算することにより決定した。
【0102】
合成実施例1:超分岐ポリエステルA.1
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコに、まず、120.1gのトリメチロールプロパンおよび380.1gのセバシン酸を充填し、これを乾燥窒素で拡散させ、反応混合物を撹拌しながら160〜170℃に加熱した。1.5時間の反応時間後に、その中の水32mlを単離し(変換47%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.1(Mn=980g/mol;Mw=22230g/mol;OH価:79mg KOH/gポリマー;酸価:182mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基の75%を中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.1は、この部分的に中和した形態で、さらなる実験に使用した。
【0103】
合成実施例2:超分岐ポリエステルA.2
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた194.6gの三官能性アルコールTMP×3.2 EOおよび305.5gのセバシン酸の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜170℃に加熱した。2時間の反応時間後に、その中の水26mlを単離し(変換47%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.2(Mn=960g/mol;Mw=9520g/mol;OH価:48mg KOH/gポリマー;酸価:156mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基の100%を中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.2は、この完全に中和した形態で、さらなる実験に使用した。
【0104】
合成実施例3:超分岐ポリエステルA.3
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた160.4gの三官能性アルコールTMP×1.1 POおよび340.2gのセバシン酸の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら160℃に加熱した。4時間後、その中の水24mlを単離し(変換39%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.3(Mn=820g/mol;Mw=6140g/mol;OH価:70mg KOH/gポリマー;酸価:169mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基の100%を中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.3は、この完全に中和した形態で、さらなる実験に使用した。
【0105】
合成実施例4:超分岐ポリエステルA.4
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた371.9gの三官能性アルコールTMP×12.2 POおよび230.7gの無水アルケニルコハク酸(Pentasize 8)の初期充填物を0.3gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら180〜200℃に加熱した。7時間の反応時間後に、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.4(Mn=3850g/mol;Mw=38070g/mol;OH価:73mg KOH/gポリマー;酸価:27mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、末端カルボン酸基を中和しなくとも、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.4は、この完全にプロトン化された形態でさらなる実験に使用した。
【0106】
合成実施例5:超分岐ポリエステルA.5
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた228.8gの三官能性アルコールTMP×12.2 EO、34.1gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M=500g/mol)、204.9gのPIBSA 1000および32.2gのコハク酸の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜180℃に加熱した。2時間後、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.5(Mn=1540g/mol;Mw=5200g/mol;OH価:65mg KOH/gポリマー;酸価:32mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、末端カルボン酸基を中和しなくとも、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.5は、この完全にプロトン化された形態でさらなる実験に使用した。
【0107】
合成実施例6:超分岐ポリエステルA.6
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた253.8gの三官能性アルコールTMP×12.2 EO、227.3 gのPIBSA 1000および19.0gの無水コハク酸の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら180〜200℃に加熱した。3.5時間後、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.6(Mn=2700g/mol;Mw=7000g/mol;OH価:n.d.;酸価:22mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、末端カルボン酸基を中和しなくとも、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.6は、この完全にプロトン化された形態でさらなる実験に使用した。
【0108】
合成実施例7:超分岐ポリエステルA.7
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた270.11gの三官能性アルコールTMP×3.2 EO、282.8gのセバシン酸および245.1gの無水アルケニルコハク酸(Pentasize 8)の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜170℃に加熱した。3.5時間後、その中の水20mlを単離し(変換26%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.7(Mn=1240g/mol;Mw=8290g/mol;OH価:52mg KOH/gポリマー;酸価:134mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基の75%を中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.7は、この部分的に中和した形態で、さらなる実験に使用した。
【0109】
合成実施例8:高酸価の超分岐ポリエステルA.8
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた194.6gの三官能性アルコールTMP×3.2 EO、および305.5gのセバシン酸の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜170℃に加熱した。2時間後、その中の水26mlを単離し(変換47%)、混合物は室温まで冷却した。このようにして得られた102.6gの生成物を2.7gの無水コハク酸と混合し、混合物を130℃に加熱した。2時間後、混合物を60℃に冷却し、冷却器中で昇華させた無水コハク酸を、50gのアセトンを加えることにより反応に戻した。アセトンを留去しながら、反応混合物を3時間かけて110℃までゆっくりと加熱した。次いで、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.8(Mn=1190g/mol;Mw=46650g/mol;OH価:27mg KOH/gポリマー;酸価:154mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基を100%中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.8は、この完全に中和された形態で、さらなる実験に使用した。
【0110】
合成実施例9:高酸価の超分岐ポリエステルA.9
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた1290.0gの三官能性アルコールTMP×5.2 PO、および1047.0gの無水アルケニルコハク酸(Pentasize 8)の初期充填物を0.2gのDBTLと混合した。反応混合物を撹拌しながら160〜180℃に加熱し、この温度で、13時間50 mbarの真空で撹拌した。次いで、反応は室温まで冷却することにより終了した。このようにして得られた536.7gの生成物を70.1gの無水コハク酸と混合し、混合物を130℃に加熱した。2時間後、60℃まで冷却し、冷却器中で昇華させた無水コハク酸を、45gのアセトンを加えることにより反応に戻した。アセトンを留去しながら、反応混合物を1時間かけて130℃以下でゆっくりと加熱した。次いで、それを室温まで冷却した。ポリマーA.9(Mn=2430g/mol;Mw=9170g/mol;OH価:18mg KOH/gポリマー;酸価:92mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基を50%中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.9は、この部分的に中和された形態で、さらなる実験に使用した。
【0111】
合成実施例10:高酸価の超分岐ポリエステルA.10
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた270.11gの三官能性アルコールTMP×3.2 EO、282.8gのセバシン酸および245.1gの無水アルケニルコハク酸(Pentasize 8)の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜170℃に加熱した。3.5時間の反応時間後、その中の水20mlを単離し(変換26%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。このようにして得られた209.6gの生成物を5.8gの無水コハク酸と混合し、混合物を130℃に加熱した。2時間後、混合物を冷却し、冷却器中で昇華させた無水コハク酸を、42gのアセトンを加えることにより反応に戻した。アセトンを留去しながら、反応混合物を1時間かけて100℃までゆっくりと加熱した。次いで、それを室温まで冷却した。ポリマーA.10(Mn=1240g/mol;Mw=14120g/mol;OH価:34mg KOH/gポリマー;酸価:147mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基を75%中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.10は、この部分的に中和された形態で、さらなる実験に使用した。
【0112】
合成実施例11:直鎖状PEG鎖のシェルを有する超分岐ポリエステル中核部(A.11a)、100%官能基化、A.11
段階1a:超分岐ポリエステルA.11aの製造
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた251.7gの三官能性アルコールTMP×5.2 PO、および248.3gのセバシン酸の初期充填物を0.3gのDBTL触媒と混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜180℃に加熱した。8.5時間の反応時間後、その中の水16mlを単離し(変換36%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.11a(Mn=1110g/mol;Mw=9990g/mol;OH価:49mg KOH/gポリマー;酸価:124mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られたが、これは水溶性ではなかった。
【0113】
段階1b(A.11b):まず、70.0gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn=750g/mol)を、還流冷却器および内部温度計を装備した250mlの三つ口フラスコ中に充填し、80℃の減圧下で水残留物を除いた。室温に冷却した後、混合物を窒素下に置き、ポリマーを70.0gの酢酸n-ブチル中に溶解した。次いで、20.2gのイソフォロンジイソシアネート(IPDI)を加え、混合物を50℃に加熱した。1mlの酢酸n-ブチル中に溶解させた11mgの亜鉛ネオデカノエート(Tegokat 616, TIB Chemicals, Mannheim)を添加して反応を開始し、2.12%のNCO含有量までこれを50℃で約12時間行った。次に、反応を-20℃に冷却することにより終了した。反応生成物A.11bは、段階2でそれ以上の後処理を行うことなく直接使用した。
【0114】
段階2(A.11):25.0gの超分岐ポリエステル中核部A.11aを、還流冷却器および内部温度計を装備した250mlの三つ口フラスコ中、10gのテトラヒドロフランに溶解させ、窒素下で51.0gの反応混合物A.11bと混合した。次いで、その混合物を60℃に加熱し、反応は、1mlの酢酸n-ブチルに溶解させた5mgのDBTLを添加することにより開始した。全NCO基の完全転換後に(NCO含有量0%)、混合物を冷却し、溶媒を減圧下で除去した。最後に、直鎖状デンドリマー型共重合体A.11(Mn=1860g/mol)が高粘度の黄色液体の形態で得られたが、それは完全に水溶性であった。
【0115】
合成実施例12:直鎖状PEG鎖からなるシェルを有する超分岐ポリエステル中核物(A.12a)、50%官能基化、A.12
超分岐ポリエステル、A.12aの製造
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた200.0gのトリメチロールプロパンおよび300.7gのセバシン酸の初期充填物を0.1gのDBTL触媒と混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜180℃に加熱した。105分間の反応時間後、その中の水39mlを単離し(変換72%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.12(Mn=1410g/mol;Mw=34520g/mol;OH価:210mg KOH/gポリマー;酸価:40mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは水溶性ではなかった。
【0116】
段階1b(A.12b):280.0gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn=500g/mol)を、還流冷却器および内部温度計を装備した1000mlの三つ口フラスコ中に初期充填し、80℃の減圧下で水残留物を除いた。室温まで冷却後、混合物を窒素下に置き、ポリマーを280.0gの酢酸n-ブチル中に溶解させた。次いで、111.0gのIPDIを加え、混合物を50℃に加熱した。1mlの酢酸n-ブチル中に溶解させた42mgの亜鉛ネオデカノエートを添加して反応を開始し、2.79%のNCO含有量までこれを50℃で5.5時間かけて行った。次に、反応を-20℃に冷却することにより終了した。反応生成物A.12bは、段階2でそれ以上の後処理を行うことなく直接使用した。
【0117】
段階2(A.12):18.0gの超分岐ポリエステル中核部A.12aを、還流冷却器および内部温度計を装備した250mlの三つ口フラスコに初期充填し、窒素下で50.6gの反応混合物A.12bと混合した。次いで、その混合物を80℃に加熱し、反応は、1mlの酢酸n-ブチルに溶解させた5mgのDBTLを添加することにより開始した。全NCO基の完全転換後に(NCO含有量0%)、混合物を冷却し、溶媒を減圧下で除去した。最後に、直鎖状デンドリマー型共重合体A.12(Mn=2700g/mol)が高粘度の黄色液体の形態で得られたが、それは完全に水溶性であった。
【0118】
合成実施例13:直鎖状PEG鎖からなるシェルを有する超分岐ポリエステル中核物(A.13a)、100%官能基化、A.13
段階1a:超分岐ポリエステル、A.13aの製造
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた222.9gの三官能性アルコールTMP×3.2 EO、および277.3gのPentasize 8の初期充填物を0.2gのDBTLと混合し、反応混合物を撹拌しながら200℃に加熱した。6時間の反応時間後、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.13(Mn=1990g/mol;Mw=123860g/mol;OH価:41mg KOH/gポリマー;酸価:18mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは水溶性ではなかった。
【0119】
段階1b(A.13b):50.0gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn=1000g/mol)を、還流冷却器および内部温度計を装備した250mlの三つ口フラスコに初期充填し、80℃の減圧下で水残留物を除いた。室温まで冷却後、混合物を窒素下に置き、ポリマーを50.0gの酢酸n-ブチル中に溶解させた。次いで、10.1gのイソフェロンジイソチアネート(IPDI)を加え、混合物を50℃に加熱した。1mlの酢酸n-ブチル中に溶解させた8mgの亜鉛ネオデカノエートを添加して反応を開始し、1.43%のNCO含有量までこれを50℃で4.5時間かけて行った。次に、反応を-20℃に冷却することにより終了した。反応生成物A.13bは、段階2でそれ以上の後処理を行うことなく直接使用した。
【0120】
段階2(A.13):還流冷却器および内部温度計を装備した250mlの三つ口フラスコ中で、54.0gのn-ブチルアセテートに6.0gのA.13aを溶解させ、窒素下で12.9gの反応混合物A.13bと混合した。次いで、その混合物を80℃に加熱し、反応は、1mlの酢酸n-ブチルに溶解させた2mgのDBTLを添加することにより開始した。全NCO基の完全転換後に(NCO含有量0%)、混合物を冷却し、溶媒を減圧下で除去した。最後に、直鎖状デンドリマー型共重合体A.13(Mn=3390g/mol)が高粘度の黄色液体の形態で得られたが、これは完全に水溶性であった。
【0121】
合成実施例14:直鎖状PEG鎖のシェルを有する超分岐ポリエステル中核部(A.14a)、100%官能基化、A.14
段階1a:超分岐ポリエステル、A.14aの製造
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた70.3gの三官能性アルコールTMP×1.1 PO、84.1gのセバシン酸および347.2gのPIBSA 1000の初期充填物を0.1gのDBTL触媒と混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜165℃に加熱した。2.5時間の反応時間後、反応は室温に冷却することにより終了した。ポリマーA.14a(Mn=1450g/mol;Mw=4750g/mol;OH価:56mg KOH/gポリマー;酸価:68mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られたが、これは水溶性ではなかった。
【0122】
段階1b(A.14b):61.8gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn=500g/mol)を、還流冷却器および内部温度計を装備した250mlの三つ口フラスコに初期充填し、80℃の減圧下で水残留物を除いた。室温まで冷却後、混合物を窒素下に置き、ポリマーを61.8gの酢酸n-ブチル中に溶解させた。次いで、25.0gのイソフェロンジイソチアネート(IPDI)を加え、混合物を50℃に加熱した。1mlの酢酸n-ブチル中に溶解させた10mgの亜鉛ネオデカノエートを添加して反応を開始し、2.84%のNCO含有量までこれを50℃で4.5時間かけて行った。次に、反応を-20℃に冷却することにより終了した。反応生成物A.14bは、段階2でそれ以上の後処理を行うことなく直接使用した。
【0123】
段階2(A.14):7.0gの超分岐ポリエステル中核部A.14aを、還流冷却器および内部温度計を装備した500mlの三つ口フラスコ中で7.0gの酢酸n-ブチルに溶解させ、窒素下で12.1gの反応混合物A.14bと混合した。次いで、その混合物を80℃に加熱し、反応は、1mlの酢酸n-ブチルに溶解させた2mgのDBTLを添加することにより開始した。全NCO基の完全転換後に(NCO含有量0%)、混合物を冷却し、溶媒を減圧下で除去した。最後に、直鎖状デンドリマー型共重合体A.14(Mn=2200g/mol)が高粘度の黄色液体の形態で得られたが、これは完全に水溶性であった。
【0124】
比較例15:超分岐ポリエステルA.15(本発明に係るものではない)
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコ中、乾燥窒素で拡散させた92.1gの三官能性アルコールグリセロールおよび142.0gのコハク酸の初期充填物を0.1gのDBTL触媒と混合し、反応混合物を撹拌しながら160〜180℃に加熱した。2.5時間の反応時間後、その中の水30mlを単離し(変換68%)、混合物を140℃まで冷却し、さらに50.6gの三官能性アルコールグリセロールを反応混合物に添加した。次に、これを撹拌しながら190℃に加熱した。さらに4時間の反応時間後、1時間、400 mbarの真空を施した。次いで、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.15(Mn=660g/mol;Mw=2050g/mol;OH価:536mg KOH/gポリマー;酸価:24mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基の50%を中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.15は、この部分的に中和された形態でさらなる実験に使用した。
【0125】
比較例16:超分岐ポリエステルA.16(本発明に係るものではない)
スターラー、内部温度計、窒素送込管および下降冷却器(descending condenser)を収集容器とともに装備した四つ口フラスコに、乾燥窒素で拡散させた152.1gのトリメチロールプロパンおよび348.9gのアジピン酸を初期充填し、反応混合物を撹拌しながら160〜170℃に加熱した。70分間の反応時間後、その中の水44mlを単離し(変換51%)、反応は室温まで冷却することにより終了した。ポリマーA.16(Mn=710g/mol;Mw=75160g/mol;OH価:n.d.;酸価:134mg KOH/gポリマー)が高粘度の黄色液体の形態で得られ、これは、トリエタノールアミンで末端カルボン酸基の100%を中和した後に、極めて良好な水溶性を有していた。ポリマーA.16は、この完全に中和された形態で、さらなる実験に使用した。
【0126】
実施例17:固形剤(「固溶体」)の製造と再分散
ビーカーに、適切な超分岐ポリエステルをイソプロパノール中に溶解させ、次に、その溶液を殺菌剤のピラクロストロビンと混合した。このようにして調製したイソプロパノール中の均質なポリマー/活性成分混合物の全濃度は20重量%であり、また、ポリマー/活性成分の比は、常に3:1が確保された。次いで、この溶液を小さなアルミニウムシート上に注ぎ、減圧下で有機溶媒を除去した後(<100 mbar、50℃、24h)、薄膜が得られた(<1mm)。少量の乾燥させたフィルム材を用いて、蒸留水中に再分散することにより1重量%溶液を得ることを試みた。成功した場合には、水中のポリマー/活性成分の分散をその品質に関して評価した(濁度(turbity)、沈殿物の形成)。生成された固形剤に関するデータを表1にまとめる。
【表1】

【0127】
実施例18−ピロキシカム、カルバマゼピン、エストラジオールおよびクロトリマゾールの可溶化
2gのポリマーを50mlのビーカーへ秤量した。次に、0.2gの活性成分をいずれの場合にも混合物へ秤量して入れ、過飽和の溶液を得た。次いで十分なpH 7.0のリン酸緩衝液を加え、それにより、ポリマー:リン酸緩衝液の質量比が1:9で存在した。その後、混合物を72時間マグネティックスターラーを用いて室温で撹拌した。1時間静置した後、過剰量(すなわち、溶解しなかった)活性成分を濾過により除去した。続いて、このようにして得られた透明または不透明な溶液を紫外分光法またはHPLCによりその活性成分含有量について分析した。紫外分光法測定の波長(使用可能な場合)を表2にまとめる。可溶化試験の結果は表3にまとめる。
【表2】

【表3】

【0128】
実施例19−ピレン、ピラクロストロビンおよびフィプロニルの可溶化
100mgのポリマーを50mlのビーカーへ秤量し、9.900gの蒸留水中で溶解させた。次に、100mgの活性成分をいずれの場合にも混合物へ秤量し、過飽和の溶液を得た。次いで、その混合物を24時間、室温でマグネティックスターラーを用いて撹拌した。1時間静置した後、過剰の(すなわち、溶解しなかった)活性成分を遠心分離により除去した。続いて、このようにして得た透明または不透明の溶液を、その活性成分含有量について紫外分光法により分析した。紫外分光法測定の波長を表4にまとめる。可溶化試験の結果は表5にまとめる。
【表4】

【表5】

【0129】
実施例20−本発明に係らない超分岐ポリエステルによる可溶化の比較試験
WO 2007/125028の実施例I.1〜I.5およびII.2に記載されているようにして、超分岐ポリエステルa.1〜a.5およびc.1を調製した。さらに、上記の超分岐ポリエステルa.15およびa.16を試験に用いた。上記で説明した方法(実施例19を参照)によって、全ポリマーをそれらの可溶化について試験した。結果を表6にまとめる。
【表6】

【0130】
ポリマー(a.1)〜(a.5)およびA.15/A.16(表6)と本発明に係るポリマーA.1〜A.10(これらは構造的には類似しているが、セバシン酸および/またはASAおよび/またはPIBSAをベースとするもの)(表5)とを直接比較すると、本発明に係るポリマーは(1〜3のオーダーで)有意な高可溶化能力を有することが明らかである。
【0131】
また、直鎖状デンドリマー型(PEGで官能基化されている、超分岐の)ポリエステル(c.1)(表6)と本発明に係る直鎖状デンドリマー型ポリエステルA.11〜A.14(これらは構造的には類似しているが、セバシン酸および/またはASAおよび/またはPIBSAをベースとしたもの)(表5)とを直接比較すると、この場合においても、本発明に係るポリマーが(約2倍のオーダーで)有意な高可溶化能力を有することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分と、疎水性ジカルボン酸および三官能性アルコールをベースとした超分岐ポリエステルとを含む組成物であって、
疎水性ジカルボン酸が脂肪族C10-C32ジカルボン酸であり、当該ジカルボン酸はポリイソブチレン基および/またはC3-C40基を有するコハク酸単位を有しており、
三官能性アルコールがグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、またはそれらのアルコキシル化誘導体である、
前記組成物。
【請求項2】
超分岐ポリエステルがポリアルキレンオキシド基および/または酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基に結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
官能性C1-C24末端基がコハク酸誘導体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
C10-C32ジカルボン酸がセバシン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
疎水性ジカルボン酸が、ポリイソブチレン基および/またはC3-C40基を有するコハク酸単位を有しているジカルボン酸である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)またはペンタエリスリトールのアルコキシル化誘導体が1.1〜20のエチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位でアルコキシル化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
超分岐ポリエステルがポリイソシアネートリンカーによってポリアルキレンオキシド基に結合されている、請求項2〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
超分岐ポリエステルと活性成分の重量比が1:2〜25:1の範囲である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
活性成分が活性農業化学成分である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
超分岐ポリエステルがポリアルキレンオキシド基および/または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基に結合されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の超分岐ポリエステル。
【請求項11】
疎水性ジカルボン酸と三官能性アルコールを重縮合させ、次に、その生成物を、ポリアルキレンオキシド基および/または1個の酸性基もしくは2個のアルコール基を含む官能性C1-C24末端基に結合させることによる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の超分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項12】
20℃での最大水溶解度が10g/Lである活性成分を水溶液中で可溶化するための請求項1〜9のいずれか1項に記載の超分岐ポリエステルの使用。

【公表番号】特表2013−514402(P2013−514402A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543697(P2012−543697)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069680
【国際公開番号】WO2011/073220
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】