説明

難燃性樹脂フィルム及びそれを用いた絶縁フィルム、フラットケーブル

【課題】 難燃性に優れる難燃性樹脂フィルム及びそれを用いた絶縁フィルム、フラットケーブルを提供する。また該難燃性樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルムの少なくとも片面にポリフェニレンエーテルを主成分とする難燃層を有する、難燃性樹脂フィルム。該難燃性樹脂フィルムは、ポリフェニレンエーテルの微粉末を有機溶剤に溶解または分散させたポリフェニレンエーテル溶液を作製する工程、該ポリフェニレンエーテル溶液を樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布する工程、有機溶剤を除去する工程、により製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂フィルム及びそれを用いた絶縁フィルム、フラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部配線用の電線として、多心平型のフラットケーブルが使用されている。フラットケーブルは、2枚の絶縁フィルムの間に複数本の導体を並列して挟み、絶縁フィルム同士を熱融着して一体化することにより製造されている。この絶縁フィルムは、一般に、導体に接する接着層と、その外側の樹脂フィルムを有している。樹脂フィルムとしては、機械的特性、電気的特性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが汎用されている。
【0003】
フラットケーブルには高度な難燃性が要求される用途があり、米国UL規格の垂直難燃試験(VW−1試験)のような難燃性が規定されている。難燃性の規格を満足させるために、接着剤層中にハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、ノンハロゲン系難燃剤等の難燃剤を含有させている。
【0004】
接着層中の難燃剤量を多くすることで難燃性を向上することができるが、難燃剤量が多くなると接着層と導体、又は接着層と樹脂フィルムとの接着力が低下する。特にノンハロゲン系難燃剤を使用する場合には難燃剤を多量に添加する必要があり、接着性と難燃性を両立することが困難であった。
【0005】
フラットケーブルの難燃性を向上するために、特許文献1では、ポリエステルフィルム(樹脂フィルム)上に非ハロゲン系難燃性接着剤層を設けると共に、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリアミドイミド等の耐熱性樹脂層を形成した絶縁テープが開示されている。耐熱性樹脂層を設けることでフラットケーブルに難燃性を付与できる。特許文献2では、ポリイミドを主成分とする樹脂塗布層を樹脂フィルムの外側表面に積層したフラットケーブルが開示されている。
【0006】
特許文献3には、ベースフィルム(樹脂フィルム)の片面にノンハロゲン系の難燃性接着層を設ける一方、ベースフィルムの難燃性接着層とは反対側の面にリン系難燃剤を含有する難燃性インキの塗布層を設けたノンハロゲン難燃テープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−95373号公報
【特許文献2】特開2006−120432号公報
【特許文献3】特開2003−62937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリアミドイミドやポリイミドは、基材である樹脂フィルムに塗布する際に高温での加熱を必要とする。例えば特許文献2では、ポリアミド酸をイミド化するために150℃で20秒乾燥した後200℃で20秒キュアしている。この加熱によって樹脂フィルムがダメージを受ける可能性がある。またポリアミドイミドやポリイミドは着色しているため、これらの樹脂を塗布するとフラットケーブルの外観が悪くなるという問題がある。
【0009】
リン系難燃剤を用いる場合、このような問題はないが、リン系難燃剤は液状のものが多いため、塗布後にブリード(難燃剤の染み出し)が起こりやすいという問題がある。
【0010】
フラットケーブルの難燃性を向上するための別の方法として、ポリイミドなどの難燃性の高いフィルムを樹脂フィルムとして使用することが考えられるが、難燃性の高いフィルムは比較的高価であるのでフラットケーブルのコストが上がる。
【0011】
そこで本発明は、比較的低コストで、難燃性に優れる難燃性樹脂フィルム及びそれを用いた絶縁フィルム、フラットケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、樹脂フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンエーテルを主成分とする難燃層を有する難燃性フィルムである(請求項1)。ポリフェニレンエーテルは難燃性が高い材料であり、これを主成分とする難燃層を有することで難燃性を向上できる。難燃層は、ポリフェニレンエーテルとバインダー樹脂とを含有すると好ましい(請求項2)。バインダー樹脂を組み合わせて使用することで、ポリフェニレンエーテルと樹脂フィルムとの密着性を向上できる。
【0013】
また本発明は、上記の難燃性フィルムと接着層を積層した絶縁フィルムを提供する(請求項3)。難燃性の高い難燃性フィルムと接着層とを組み合わせることで、接着層中に含まれる難燃剤の量を少なくしても十分な難燃性を得ることができ、絶縁フィルムと導体との接着力を向上することができる。接着層に含まれる難燃剤としてノンハロゲン難燃剤を使用すると、燃焼時に塩素や臭素を含む有毒ガスが発生せず、環境面で好ましい。
【0014】
また本発明は、上記の絶縁フィルムを被覆材として用いたフラットケーブルを提供する。このフラットケーブルは難燃性及び接着性に優れている。
【0015】
また本発明は、上記の難燃性樹脂フィルムの製造方法として、ポリフェニレンエーテルの微粉末を有機溶媒に溶解または分散させたポリフェニレンエーテル溶液を作製する工程、該ポリフェニレンエーテル溶液を樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布する工程、有機溶媒を除去する工程、を有する難燃性樹脂フィルムの製造方法を提供する(請求項6)。
【0016】
ポリフェニレンエーテルは難燃性に優れた材料であるが、成形加工性に劣るため、押出成形等の方法でポリフェニレンエーテルの薄いフィルムを作成することは困難である。しかし微粉末状のポリフェニレンエーテルを有機溶媒に溶解または分散させた液を樹脂フィルムに塗布し、その後有機溶媒を除去することで樹脂フィルム上にポリフェニレンエーテルを付着させて薄い層(難燃層)を形成することができることを見いだした。この製造方法によって簡便に樹脂フィルムに難燃性を付与することができる。
【0017】
ポリフェニレンエーテルの微粉末と併用してバインダー樹脂を有機溶媒に溶解させると、難燃層中にバインダー樹脂が含まれることとなる。バインダー樹脂を併用することでポリフェニレンエーテルと樹脂フィルムとの密着性を高めることができ、難燃性樹脂フィルムの耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、難燃性の優れた難燃性樹脂フィルム及びそれを用いた絶縁フィルム、フラットケーブルを得ることができる。また本発明の製造方法によれば、簡便な方法で難燃性に優れた難燃性樹脂フィルムを得ることができる。特に、難燃剤を多量に配合する必要があるノンハロゲン難燃剤を接着層に用いた絶縁フィルムやフラットケーブルにおいて、本発明の難燃性樹脂フィルムを好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の難燃性樹脂フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明の絶縁フィルムを示す断面図である。
【図3】本発明の絶縁フィルムを示す断面図である。
【図4】本発明の絶縁フィルムを示す断面図である。
【図5】本発明のフラットケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の難燃性樹脂フィルムの一例を示す断面図である。樹脂フィルム1の片面に、難燃層2を有している。
【0021】
図2は本発明の絶縁フィルムの一例を示す断面図である。樹脂フィルム1、難燃層2が積層された難燃性樹脂フィルム4の難燃層側に、接着層3が積層されている。図3の絶縁フィルムでは、難燃性樹脂フィルム4の樹脂フィルム側に接着層3が積層されている。
【0022】
難燃層2は樹脂フィルムの両面に設けても良い。図4では、樹脂フィルム1の両面に難燃層2を設けた難燃性樹脂フィルム4の片面に、接着層3を積層している。接着層3は単層に限られず、複数の層としても良い。また接着層3と樹脂フィルム1又は難燃層との接着力を上げるために、接着層3に接するアンカーコート層を設けても良い。絶縁フィルムは任意の形状にスリットして使用される。
【0023】
図5は本発明の絶縁フィルムを用いたフラットケーブルを示す断面図であり、図3に示した絶縁フィルムを用いたものである。2枚の絶縁フィルム5の間に導体6が挟まれた状態で、当該2枚の絶縁フィルム5同士を貼り合わせている。なおフラットケーブルの端部では、電子機器に設けられた接続端子と導体6とを接続できるように絶縁フィルムを片面だけに設けて導体6を露出させる構成とする。
【0024】
樹脂フィルム1としては柔軟性に優れた樹脂材料が使用され、例えばポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が例示される。ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートポリアリレート樹脂等が挙げられる。
【0025】
これらの樹脂のうち、電気的特性、機械的特性、コスト等の観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好適に使用される。また樹脂フィルムの厚みは6μm〜50μmとすることが好ましい。
【0026】
難燃層2はポリフェニレンエーテルを主成分としている。難燃層2は任意の方法で形成することができ、例えば押出成形等が例示できる。後で説明するように、ポリフェニレンエーテルの微粉末を溶剤に溶解又は分散させた溶液を樹脂フィルムに塗布すると、簡便に難燃層2を形成することができる。難燃層の厚みは、樹脂フィルムの厚みや求められる難燃性に応じて適宜設定でき、5μm〜50μmの範囲とすることが好ましい。
【0027】
ポリフェニレンエーテルは、メタノールとフェノールを原料として合成される2,6−キシレノールを酸化重合させて得られるエンジニアリングプラスチックである。またポリフェニレンエーテルの成形加工性を向上させるため、ポリフェニレンエーテルにポリスチレンを溶融ブレンドした材料が変性ポリフェニレンエーテル樹脂として各種市販されている。本発明に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂としては、上記のポリフェニレンエーテル樹脂単体、及びポリスチレンを溶融ブレンドしたポリフェニレンエーテル樹脂のいずれも使用することができる。
【0028】
ポリフェニレンエーテルの微粉末としては、平均粒径が1μm〜500μm、さらに好ましくは5μm〜30μmのものが好適に使用できる。なお平均粒径はレーザー回折・散乱式粒度分析計を用いて測定した値である。ポリフェニレンエーテルの微粉末を単独で、又はバインダー樹脂、その他の添加剤等と組み合わせて有機溶剤に溶解又は分散させてポリフェニレンエーテル溶液を作製する。有機溶剤は任意のものを使用できるが、ポリフェニレンエーテルの溶解性を考慮するとトルエン、キシレン、クロロホルム、トリクロロメタンが好ましい。ポリフェニレンエーテル溶液中のポリフェニレンエーテル濃度は、塗布方法によって任意に選択することができ、ポリフェニレンエーテルの溶解性や溶液の取り扱い性を考慮すると10重量%〜30重量%程度とすることが好ましい。
【0029】
ポリフェニレンエーテルと併用するバインダー樹脂は任意の樹脂を選択でき、樹脂フィルム1との接着力の高いものが好ましい。例えば樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂を使用する場合は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系エラストマー、酸変性スチレン系エラストマーが好ましく使用できる。
【0030】
ポリフェニレンエーテル溶液には、その他の添加剤を添加しても良い。この溶液を樹脂フィルムの片面又は両面に塗布した後、有機溶剤を除去して難燃層2を形成する。ポリフェニレンエーテル微粉末が樹脂フィルムに付着するメカニズムは定かではないが、バインダー樹脂を用いない場合でも、このような工程によってポリフェニレンエーテル微粉末を樹脂フィルムに付着させることができ難燃層2を形成可能となる。難燃層は樹脂フィルムの片側に設けても両側に設けても良い。樹脂フィルムの両側に難燃層を設けると難燃性をさらに向上することができる。
【0031】
できあがった難燃性樹脂フィルムは、元の樹脂フィルムに比べて難燃性が向上している。このフィルムを単独で難燃性が必要な部分に使用することも可能である。ポリイミドやポリアミドイミド等の難燃性に優れる樹脂フィルムは高価であるが、本発明の難燃性樹脂フィルムでは、比較的安価な基材(樹脂フィルム)の難燃性を向上できるため、低コストで難燃性に優れたフィルムを得ることができる。また、リン系難燃剤や窒素系難燃剤を使用したフィルムや、ポリイミドフィルムを使用する場合よりも誘電率をの低いフィルムを得ることができる。
【0032】
本発明の絶縁フィルムは、難燃性樹脂フィルムと接着層とを積層したものである。接着層を構成する樹脂には用途に応じて任意の材料を使用することができ、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂等が例示される。これらの樹脂は単独で用いても良いし複数を組み合わせても良い。フラットケーブルの被覆材として使用する場合は、導体との接着力に優れた樹脂を使用することが好ましい。
【0033】
難燃性が必要な場合は、接着層中に難燃剤を含有させる。難燃剤としてはハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、ノンハロゲン系難燃剤等任意のものを使用できる。ノンハロゲン系難燃剤を使用すると燃焼時の有害ガスの発生を低減でき、環境への負荷を少なくできる。
【0034】
ハロゲン系難燃剤としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェノール、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤や、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラブロモエタン、テトラボロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタル酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウム等の臭素系難燃剤が例示される。
【0035】
リン系難燃剤としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等の環状有機リン化合物、トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ジメチルホスフォネート、ホスフォリネート、ハロゲン化ホスフォリネートエステル、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)2,3ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ポリホスホネート、ポリホスフェート、ホスフォネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール、が例示される。
【0036】
ノンハロゲン難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の金属酸化物、金属水酸化物や、メラミンシアヌレート、トリアジン、イソシアヌレート、尿素、グアニジン等の窒素化合物等が例示される。
【0037】
接着層には、上記の材料の他に酸化防止剤、着色剤、隠蔽剤、加水分解抑制剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、発泡剤等を添加しても良い。これらの材料の混合は、単軸混合機、ニ軸混合機、3本ロール等任意の装置を用いて行うことができる。
【0038】
接着層の形成は任意の方法で行うことができる。押出成形によってフィルム状の接着層を形成した後、難燃性樹脂フィルムと貼り合わせても良いし、難燃剤、樹脂等を有機溶剤に溶解又は分散させた接着層溶液を難燃性樹脂フィルムに塗布した後、有機溶剤を除去して接着層を形成しても良い。
【0039】
フラットケーブルを製造する際は、複数の導体6の外側に、2枚の絶縁フィルム5を樹脂フィルム1が外側となるように相対峙させて、既知の熱ラミネータや熱プレス装置を用いて加熱加圧処理を行って導体6と絶縁フィルム6及び絶縁フィルム6同士を接着させる。この際、フラットケーブル端部となる部分においては、絶縁フィルム6の一部に穴を開けておくことで、端部の導体7を露出させることができる。熱ラミネート又は熱プレスを連続して行うことで長尺のフラットケーブルが得られる。その後一定の長さに切断して任意の長さのフラットケーブルを得ることができる。
【0040】
導体としては、銅、錫メッキ軟銅、ニッケルメッキ軟銅等の導電性金属を使用することができる。導体は平角形状が好ましく、その厚みは使用する電流量に対応するが、フラットケーブルの柔軟性を考慮すると15μm〜100μmが好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
(実施例1)
(ポリフェニレンエーテル溶液の作製)
ポリフェニレンエーテル微粉末(旭化成(株)製、商品名S202A、平均粒径300μm)を濃度15質量%となるようにトルエンに溶解した。
【0043】
(難燃性樹脂フィルムの作製)
ポリフェニレンエーテル溶液を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に塗布した後温風で乾燥させて、厚みが15μmのポリフェニレンエーテル層を形成して、樹脂フィルムの片面に難燃層を有する難燃性樹脂フィルムを作製した。
【0044】
(絶縁フィルムの作製)
飽和共重合ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製、商品名バイロン650、Tg10℃)100質量部に水酸化アルミニウム100質量部、ホウ酸亜鉛20質量部、酸化チタン10質量部、酸化防止剤(イルガノックス1010)1質量部を混合し、さらに有機溶剤としてトルエンと2−ブタノンを加えた混合溶液を作製した。この混合溶液を、作製した難燃性樹脂フィルムの樹脂フィルム側に塗布した後乾燥し、乾燥後の厚みが30μmである接着層を形成して絶縁フィルムを作製した。
【0045】
(フラットケーブルの作製)
導体である錫メッキ軟銅箔(厚さ35μm、幅0.7mm)20本を1.0mm間隔(ピッチ1.7mm)で平行に並べた状態で2枚の絶縁フィルムで挟み込み、130℃に加熱した熱ラミネータを用いて加熱加圧処理を行って、導体の両面を絶縁フィルムで被覆した後、任意の長さに切断してフラットケーブルを作製した。
【0046】
(難燃性評価)
作製したフラットケーブルに対して、UL規格1581のVW−1に規定される垂直燃焼試験を行った。より具体的には、フラットケーブルを10本準備し、着火後、10本中1本以上燃焼したもの、燃焼落下物によりフラットケーブルの下方に配置した脱脂綿が燃焼したもの、またはフラットケーブルの上部に取り付けたクラフト紙が燃焼したものを不合格とし、その他を合格とした。全てのサンプルで合格であり、難燃性は良好であった。
【0047】
(実施例2)
ポリエステル樹脂と水酸化アルミニウム等を混合した混合溶液を難燃性樹脂フィルムの難燃層(ポリフェニレンエーテル層)側に塗布して接着層を形成したこと以外は実施例と同様にしてフラットケーブルを作製し難燃性を評価した。全てのサンプルで合格であり、難燃性は良好であった。
【0048】
(実施例3)
ポリフェニレンエーテル微粉末(旭化成(株)製、商品名S202A、平均粒径300μm)を濃度15質量%となるようにトルエンに溶解した溶液と、ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製、商品名:バイロン240、Tg60℃)を濃度15質量%となるようにトルエンに溶解した溶液とを4:1の割合で混合し、ポリフェニレン溶液を作製した。この溶液を厚み12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に塗布して厚みが厚みが15μmの難燃層を形成し、その後実施例1と同様に接着層の形成、フラットケーブルの作製及び難燃性の評価を行った。全てのサンプルで合格であり、難燃性は良好であった。
【0049】
(実施例4)
ポリフェニレンエーテル微粉末(旭化成(株)製、商品名S202A、平均粒径300μm)を濃度15質量%となるようにトルエンに溶解した溶液と、酸変性されたスチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SEBS:旭化成(株)製、商品名タフテックM1913)を濃度15質量%となるようにトルエンに溶解した溶液とを4:1の割合で混合し、ポリフェニレン溶液を作製した。この溶液を厚み12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に塗布して厚みが厚みが15μmの難燃層を形成し、その後実施例1と同様に接着層の形成、フラットケーブルの作製及び難燃性の評価を行った。全てのサンプルで合格であり、難燃性は良好であった。
【0050】
(比較例1)
難燃層の形成をせず、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に接着層を形成した絶縁フィルムを用いて実施例1と同様にフラットケーブルを作製し、難燃性の評価を行った。全てのサンプルで不合格となり、難燃性が悪かった。
【0051】
以上の結果より、ポリフェニレンエーテルを主成分とする難燃層を有する難燃性樹脂フィルムを用いて作製したフラットケーブルでは難燃性が優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0052】
1 樹脂フィルム
2 難燃層
3 接着層
4 難燃性樹脂フィルム
5 絶縁フィルム
6 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンエーテルを主成分とする難燃層を有する、難燃性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記難燃層が、ポリフェニレンエーテルとバインダー樹脂とを含有することを特徴とする、請求項1に記載の難燃性樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の難燃性樹脂フィルムと接着層とを積層した絶縁フィルム。
【請求項4】
前記接着層中にノンハロゲン難燃剤を含有することを特徴とする、請求項3に記載の絶縁フィルム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の絶縁フィルムを被覆材として用いたフラットケーブル。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の難燃性樹脂フィルムの製造方法であって、
ポリフェニレンエーテルの微粉末を有機溶剤に溶解または分散させたポリフェニレンエーテル溶液を作製する工程、該ポリフェニレンエーテル溶液を樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布する工程、有機溶剤を除去する工程、を有する難燃性樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−49029(P2011−49029A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196471(P2009−196471)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】