説明

難燃性樹脂組成物

【課題】本発明は、少ない添加量で効果的に難燃性が付与され、かつ、耐溶剤性などの諸物性も満足する硬化物を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂バインダーに対し、分子量3000以下の多価フェノールを0.0001〜2.0重量%と、カルボン酸及び又はそのアルカリ金属塩を0.1〜2.0重量%と含んでなる難燃性樹脂組成物。フレキシブルプリント配線用レジストインキ用である上記難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物に関する。当該樹脂組成物は、インキ、コーティング剤に使用できるほか、半導体集積回路(IC)等が実装されるフレキシブルプリント配線(FPC)用レジストインキ組成物などに使用できる。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線物は、ポリイミド、PETなどのフレキシブルプリント配線基材上に配線パターンを形成してなるものであり、通常、シート状、板状の形態である。
フレキシブルプリント配線物は、ハンダ付け工程を伴うために、UL規格94V0をクリアする必要があるが、難燃性の付与が重要な課題のひとつとなっている。
【0003】
従来、難燃性を付与するために、例えば、特開平5−78547号公報には、スチレン系樹脂にポリフェニレンオキサイドを配合したポリマーブレンド体にメラミン、リン酸エステルなどチッ素化合物、リン化合物を添加し、さらにシュウ酸鉄で難燃効果を補強する方法が開示されているが、比較的多量の添加量必要とする。
また、特開平2−117990号公報には、ポリアミノポリカルボン酸のアルカリ金属塩を難燃剤として用いる方法が開示され、また安息香酸ナトリウムが例示されている。この場合、少ない添加量で難燃性を得られるが、高度な難燃性の要求には、さらなる改良が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−78547号公報
【特許文献2】特開平2−117990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、少ない添加量で効果的に難燃性が付与され、かつ、耐溶剤性などの諸物性も満足する硬化物を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂バインダーに対し、分子量3000以下の多価フェノールを0.0001〜2.0重量%と、カルボン酸及び又はそのアルカリ金属塩を0.1〜2.0重量%と含んでなる難燃性樹脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、フレキシブルプリント配線用レジストインキ用である上記難燃性樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、上記難燃性樹脂組成物を用いて、フレキシブルプリント配線基材上にパターンを形成してなるフレキシブルプリント配線物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、少ない添加量で効果的に難燃性が付与され、かつ、耐溶剤性などの諸物性も満足する硬化物を与える樹脂組成物を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用される樹脂バインダーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩ビ樹脂など、あるいは、これらの樹脂、樹脂前駆体の混合物などが挙げられる。特に、重量平均分子量が、3000より大きいものが用いられる。
例えば、熱硬化性樹脂の基材では、アクリル樹脂とエポキシ樹脂の混合系、熱可塑性樹脂の基材では、ウレタン樹脂、塩ビ樹脂などが用いられる。
【0011】
本発明に使用される多価フェノールとしては、フェノール性ヒドロキシ基を複数有する化合物であればよく、例えば、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、没食子酸、アントシアニン、フェルラ酸、アナカルド酸、アナギガン酸、ギンクゴ酸、ペランジュ酸、ギンクゴリン酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドール、ウルシオール、チチオール、レンゴール、ラッコール、タンニン、タンニン酸のようなタンニン酸類、カテキン類、ロイコアントシアン類、クロロゲン酸類、等を挙げることができる。これらは、合成品であっても、天然物であっても、天然物を加水分解や脱水反応や酸化重合などした変性物であってもよい。また、多価フェノールは、複数使用してもよい。
また、フェノール性水酸基を有する重量平均分子量が300〜3000の重合体(例えば、住友ベークライト社製のPR−RES−5など)や、フェノール系の安定剤(例えば、SWP、TopanolCA、Irganox330など)なども使用することができる。
多価フェノールは、樹脂バインダー100部に対し、多価フェノールを0.0001〜2.0重量部用いる。0.0001重量部未満では、難燃性の付与の効果が充分でなく、2.0重量部を超えると、樹脂組成物としての難燃性以外の性能を損ねるおそれがある。
【0012】
本発明で使用されるカルボン酸および又はそのアルカリ金属塩のカルボン酸としては、例えば、ベンゼン、ナフタリン、フルオレンなどの炭化水素系芳香族のカルボン酸置換体、フラン、チオフェンなどの複素芳香環のカルボン酸置換体、飽和または不飽和の脂肪酸、具体的にはステアリン酸、オレイン酸、ソルビン酸などのモノカルボン酸や、フタル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などのポリカルボン酸などが挙げられる。これらのカルボン酸は、カルボキシル基以外の他の官能基、例えば水酸基などを含んでいても良い。カルボン酸は、芳香環を含んでいる方が好ましい。
【0013】
本発明で使用されるカルボン酸および又はそのアルカリ金属塩のアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩およびセシウム塩があるが、原子番号が増加するに従って、樹脂に混合したときに樹脂の変色が増大する傾向にある。
入手のし安さ、難燃化の対コスト比などからは、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、難燃化効果の面からは、同一のカルボン酸の場合にカリウム塩の効果が高いことが多いので、特にカリウム塩が好ましい。
カルボン酸および又はそのアルカリ金属塩は、樹脂バインダー100部に対し、カルボン酸のアルカリ金属塩を0.1〜2.0重量部用いる。0.1重量部未満では、難燃性の付与の効果が充分でなく、2.0重量部を超えると、樹脂組成物としての難燃性以外の性能を損ねるおそれがある。
【0014】
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記樹脂バインダー、前記多価フェノールおよび、前記カルボン酸および又はそのアルカリ金属塩を含んでなるが、それ以外に必要に応じて、フレキシブルプリント配線基材に対する接着性、耐ハンダリフロー性を劣化させないなどの樹脂組成物としての難燃性以外の性能を損ねない範囲で添加剤を用いることができる。このような添加剤としては、シランカップリング剤、耐熱安定剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤等を配合することができる。
耐熱安定剤を併用することで、より優れた耐ハンダリフロー性を付与するころができる。耐熱安定剤としては、リン(ホスファイト)系、ラクトン系、ヒドロキシルアミン系、イオウ系等のものが使用できるが、耐熱安定剤が効果的である。
【0015】
充填剤としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、タルク、モンモロリナイト、カオリン、ベントナイト等の無機充填剤、 アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属充填剤が上げられる。
分散性の点から、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムが好ましい。また、シリカ表面のシラノール基をハロゲン化シランで修飾した疎水性シリカが好ましく挙げられる。
前記充填剤の配合量は、レジスト用樹脂バインダー100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましく、0.2〜50重量部であることがより好ましい。
【0016】
本発明のフレキシブルプリント配線物は、フレキシブルプリント配線基材上に、導体パターンをフォトリソ技術あるいはプリント技術によって形成することができる。
本発明で用いられるFPC配線基材としては、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、PETなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。本発明のレジストインキ組成物は、いずれの配線基材であっても使用できるが、ベンゼン環を含む基材である場合により好ましい。
【実施例】
【0017】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、実施例中、部および%とあるのは、重量部および重量%をそれぞれ意味し、Mwは重量平均分子量を意味する。
【0018】
合成例−1 ウレタン樹脂(A)
反応容器に、水酸基価55.8のポリテトラメチレングリコール98.8部、ジメチロールブタン酸83.2部、及びMEK75.6部を仕込み、乾燥窒素で置換しながら90℃まで昇温して、透明状態にした。次いで撹拌下、イソホロンジイソシアネート133.1部を30分間かけて滴下し、その後、徐々に120℃まで昇温した。昇温後更に40分反応させ、その後15分から20分かけてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート28.4部を滴下して希釈した。85℃で更に3時間撹拌して数平均分子量約33,000、酸価100KOHmg/g、固形分約75重量%のポリウレタン樹脂溶液(A)を得た。
なお、硬化剤としてNCO含有率が6.5%、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトタイプのイソシアネート硬化剤(固形分37.5%)を使用した。
【0019】
合成例−2 ウレタン樹脂(B)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリマーポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業社製PTG-850SN、分子量850)850g(=1mol)、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてジメチロールプロピオン酸938g(=7mol)、ポリイソシアナートとしてイソホロンジイソシアナート1998g(=9mol)を投入した。撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、ジブチル錫ジラウレート1.4gを添加した。反応容器内の温度が低下し始めたら再度加熱して80℃にし、75〜85℃に保ちながら撹拌を続け、残存NCOの濃度が理論値になったところで反応を停止させウレタンオリゴマーを合成した。さらにp-メトキシフェノールおよびジ-t-ブチル-ヒドロキシトルエンを各々0.9gずつ反応容器に導入してから、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート238g(=2.05mol)を加え、反応を再開した。赤外線吸収スペクトルでイソシアナートの吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了し、粘調液体のウレタン樹脂(B)を得た。
【0020】
合成例―3 アクリル樹脂(C)
メタクリル酸ブチル20.0重量部、メタクリル酸エチル10.0重量部、メタクリル酸シクロヘキシル60.0重量部、アクリル酸10.0重量部、アゾビスイソブチロニトリル2.5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100重量部からなる原料を用いて窒素気流雰囲気下で加熱還流して6時間反応させた。さらに反応溶液中へグリシジルメタクリレート9.86重量部、ジメチルベンジルアミン0.2重量部、ヒドロキノン0.05重量部を加え、酸素と窒素気流雰囲気下で加熱還流して20時間反応させ、不揮発分53%、重量平均分子量25,000の活性エネルギー線反応性アクリル樹脂溶液(C)を得た。
【0021】
合成例―4 アクリル樹脂(D)
メタリル酸ブチル15.0重量部、メタクリル酸メチル25.0重量部、メタクリル酸シクロヘキシル56.0重量部、アクリル酸4.0重量部、アゾビスイソブチロニトリル2.5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100重量部からなる原料を用いて窒素気流雰囲気下で加熱還流して6時間反応させ、不揮発分51%、重量平均分子量22,000のアクリル樹脂溶液(D)を得た。
【0022】
表1〜5に示す配合例に従い各材料を混合し、3本ロールにて分散し、評価用樹脂組成物を得た。
【0023】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
UL94V−0のPWB基材(FR4)に表1に示す処方の実施例及び比較例の評価用樹脂組成物を乾燥後20μmの厚みになるようにスクリーン印刷し、熱風乾燥オーブンにて80℃30分加熱して硬化させた。
【0024】
(実施例7〜12、比較例3〜4)
UL94V−0のPWB基材(FR4)に表2に示す処方の実施例及び比較例の評価用樹脂組成物組成物を乾燥後20μmの厚みになるようにスクリーン印刷し、高圧水銀灯にて400mJ/cm2露光し硬化させた。
【0025】
(実施例13〜18、比較例5〜6)
UL94V−0のPWB基材(FR4)に表3に示す処方の実施例及び比較例の評価用樹脂組成物を乾燥後20μmの厚みになるようにスクリーン印刷し、高圧水銀灯にて400mJ/cm2露光し硬化させた。
【0026】
(実施例19〜24、比較例7〜8)
UL94V−0のPWB基材(FR4)に表4に示す処方の実施例及び比較例の評価用樹脂組成物を乾燥後20μmの厚みになるようにスクリーン印刷し、熱風乾燥オーブンにて150℃30分加熱して硬化させた。
【0027】
(実施例25〜30、比較例9〜10)
UL94V−0のPWB基材(FR4)に表5に示す処方の実施例及び比較例の評価用樹脂組成物を乾燥後20μmの厚みになるようにスクリーン印刷し、熱風乾燥オーブンにて130℃60分加熱して硬化させた。
【0028】
得られた実施例1〜30および比較例1〜10の燃焼試験片をUL規格94V−0に従って燃焼試験を行った。すなわち、試料は長さ127mm、幅12.7mmとし、垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させて取り去った後、燃焼時間を記録した。試料の燃焼がやんだらすぐに、さらに10秒間接炎させ、燃焼時間を記録した。このとき、いずれの接炎の後も10秒以上燃焼を続けず、5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒をこえず、また、固定用クランプの位置まで燃焼せず、試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させず、2回目の接炎の後、30秒以上赤熱を続けないことがV-0条件である。
また、いずれの燃焼も30秒以内に止まり、5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒をこえず、また、2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続けないことがV-1条件である。それ以外は、非該当と判定する。
【0029】
また、溶剤ラビング試験としては、得られた実施例1〜30および比較例1〜10の燃焼試験片の燃焼試験前の塗膜を、メチルエチルケトンを含ませた脱脂綿にて10回ラビングし、その塗膜の外観状態を観察した。外観状態に変化の無かったものは○、溶解したものについては「溶解」との判定を行った。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂バインダーに対し、分子量3000以下の多価フェノールを0.0001〜2.0重量%と、カルボン酸及び又はそのアルカリ金属塩を0.1〜2.0重量%と含んでなる難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
フレキシブルプリント配線用レジストインキ用である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2記載の難燃性樹脂組成物を用いて、フレキシブルプリント配線基材上にパターンを形成してなるフレキシブルプリント配線物。

【公開番号】特開2007−138108(P2007−138108A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337320(P2005−337320)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】