説明

電力・情報一元管理システムの端末管理方法

【課題】電力線通信が本来持つ設置容易性を犠牲にすることなく、セキュリティ性を高めた通信の提供と未許可端末の接続を防止する電力・情報一元管理システムの端末管理方法を提供する。
【解決手段】各系統の電力線につながるリモートユニット等の端末は通信暗号化機能を有しており、暗号化するための暗号化キーは、ヘッドエンド装置が一元で管理し、そのヘッドエンド装置があらかじめ各端末に暗号化キーを与える機能を有している。また、各端末は最初に電力線ネットワークに接続されたときに暗号化キーを要求する機能をもっていて、暗号化キーを一旦与えられた後、暗号化キーが共有された端末間で、暗号化通信が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルまたはマンション等のようなオフィス・店舗施設・集合住戸において使用する電力線を用いて情報信号を搬送する電力・情報一元管理システムの端末管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力線通信は、近年高速化が進み、大規模な工事を実施することなくビルまたはマンション等のようなオフィス・店舗施設・集合住戸における、各オフィス・店舗・住居内のローカルエリアネットワーク(LAN)やインターネット環境および、建物の設備監視やセキュリティシステムを構築することが可能となりつつある。
【0003】
電力線通信の端末装置の設置はビルまたはマンションの店舗施設・集合住戸内の電力線の配線があれば、自由に行うことが可能であり、前記ネットワーク環境や監視システムを柔軟に構成することを可能としている。これらの端末装置には一般的に通信のためのアドレス情報などが設定される必要があるが、端末装置を新たに追加する時に自動的にアドレス設定などが行える方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この方法によれば、追加された制御用のコントローラーやアダプタ等の端末装置が自局アドレス宣言電文を送出する時に、各端末がそのアドレスを記憶することで自動的にアドレスが決定され、端末装置の通信が確立できるものである。
【特許文献1】特開平4−68836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速の電灯線通信を用いたローカルエリアネットワークやインターネット環境下においては、通信内容が単なる制御情報だけではなく、機密情報が送信されたり、ハードディスクの共有によるデータ一元管理等が行えるようになったり、セキュリティシステムの監視カメラが送信するストリームデータが通信されているが、電力線を配線として用いているため、設置時に大規模な工事が発生せず、端末装置の配置が自由であるという利点と共に、許可されていない端末が接続され、通信が傍受される可能性があるという問題を有していた。
【0006】
本発明は、電力線通信が本来持つ設置容易性を犠牲にすることなく、セキュリティ性を高めた通信の提供と未許可端末の接続を防止する電力・情報一元管理システムの端末管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力・情報一元管理システムの端末管理方法は、上記課題を解決するために、各系統の電力線につながる端末等は通信暗号化機能を有しており、暗号化するための暗号化キーは、ヘッドエンド装置が一元で管理し、そのヘッドエンド装置があらかじめ各端末に暗号化キーを与える機能を有している。
【0008】
また、各端末は最初に電力線ネットワークに接続されたときに暗号化キーを要求する機能をもっていて、暗号化キーを一旦与えられた後、暗号化キーが共有された端末間で、暗号化通信が可能となっている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明はヘッドエンド装置があらかじめ各端末に暗号化キーを与えることにより、許可されていない端末がネットワークに接続されても通信を不可能にすることができ、かつ、許可された端末間であっても暗号化キーの共有が必要なため許可されないデータ受信を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図4を用いて説明する。
(実施の形態1)
本発明の電力・情報一元管理システムの端末管理方法の第1の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は当該電力・情報一元管理システムの構成を示すブロック図である。当該電力・情報一元管理システムは、ホテルや集合住宅、ビル等の施設100に配線されている異なる電力線系統101A、101B、101Cに接続されるリモートユニット(RU)120、設備監視用システムのセンサ/制御機器端末130、ヘッドエンド装置(HE)110A、110B、110Cを備える。リモートユニット120は電力線系統を介したローカルエリアネットワークの端末である。また、ヘッドエンド装置110A、110Bは、各電力線系統の配電盤近くに設置され、系統内の通信を制御する。
【0012】
通信と設備の少なくとも一方を管理する管理用中央装置140はイーサネット(登録商標)等の既存の上位通信手段102によりヘッドエンド装置110A、110B、110Cと接続され、外部インターネット接続手段150を経由して光ファイバーやADSL等の通信回線103によりリモート監視センター160に接続されている。
【0013】
ここで新たなリモートユニット等の端末121を電力線系統101Bに追加する場合について、その動作を説明する。
ヘッドエンド装置110Bは、図2に示すように、通信管理や暗号化処理を行うCPU210と、電力線系統101Bへの高速電灯線通信インターフェース220と、上位の監視装置やインターネットに接続するためのイーサネット(登録商標)等の通信手段230を通信経路として持ち、電力線系統101Bに接続されている端末の状況やアドレスや暗号化キーなどを記憶するための記憶装置240と、ヘッドエンド装置自体の内部状態を監視するためのメンテナンス端末やPC(パーソナルコンピュータ)を接続するシリアル通信インターフェース250とを有した装置である。
【0014】
端末121は図3に示すように、通信管理や暗号化処理を行うCPU310と、電力線系統101Bへの高速電灯線通信インターフェース320と、上位の監視装置やインターネットに接続するためのイーサネット(登録商標)等の通信手段330を通信経路として持ち、電力線系統101Bに接続されている端末の状況やアドレスなどを記憶するための記憶装置340を持ち、構造はヘッドエンド装置とほぼ同じである。なお図3に示すように、SDメモリなどの外部メモリに接続する外部メモリ接続インターフェース350を持つ構造でもかまわない。
【0015】
ヘッドエンド装置110Bはシリアル通信インターフェース250に接続されたメンテナンス端末や管理用中央装置140から端末追加モードへの移行の指令を受け取り、指令を受け取った後、一定時間(登録モード期間)、端末追加モードに移行する。この移行時間中に新たな端末121が電力線系統101Bに初めて接続されると、端末121は自分の記憶装置340内に暗号化キーがないことを検知し、キー要求通信をヘッドエンド装置110Bに送信する。その通信を受けたヘッドエンド装置110Bは暗号化キーデータを端末121へ送信し、追加モードを終了する。この通信処理終了後、ヘッドエンド装置110Bおよび端末121とも通常通信状態に復帰して、指定されたキーにより暗号化通信を開始する(図6参照。)。
【0016】
なお、登録モード期間中にヘッドエンド装置にキー要求が2つ同時に入った場合など、異常時はモードをただちに終了し、暗号化キーデータの送信は行わない。
また、端末121に外部メモリ接続インターフェース350がある場合、暗号化キーデータを外部メモリ経由で設定することが可能であり、同時に多数の端末装置を設置する場合などにおいてネットワークに負荷をかけないで設置することができ、他の機器に影響を与えることなく設置が可能である。このとき、端末121は電力線系統101Bに初めてつながれた場合でも、記憶装置340の設定内容に従い、通常状態で通信を開始することができる。
【0017】
以上のように、本実施の形態1によれば同一の暗号化キーをヘッドエンド装置が端末装置に設定することで、通信が可能となるが、未登録の端末はキーが不明のために通信接続を不可能とすることができ、端末の管理が可能となる。
【0018】
さらに、暗号化キーは端末毎に別々に設定したり、端末グループ毎に設定を変更したりすることができ、擬似的なネットワークのセグメント化を実現することができる。これにより、例えば電力線通信の電源系統101B内だけで通信するグループとヘッドエンド装置110Bを経由して外部インターネット接続手段150から外部へ通信可能になるグループなどを分けることも可能となる。
【0019】
このときヘッドエンド装置110A、110B、110Cの内部での暗号化キーリストの管理テーブルは図4のように構成されていて、複数のキーを設定することが可能である(これを暗号化キーリストという)。また、各端末装置の暗号化キーも同様にテーブルの形式で保持することが可能であり、端末はその端末用暗号化キーテーブルを記憶装置340に保持する。
【0020】
暗号化キーリストは端末用暗号化キーテーブルへ自由にセットすることが可能であり、端末はグループ分けで使用することも可能であるし、時間によって通信先が変わるシステムでは変更スケジュールに従い、暗号化キーを変更することも可能である。
【0021】
また、上記の様に、端末の登録状態はヘッドエンド装置内の記憶装置に端末用暗号化キーテーブルとして保存されているが、この登録とは別にヘッドエンド装置が設定可能な通信の許可/禁止設定を端末側に設けることで、例えばリモートユニット120のコンピュータネットワーク側(図示せず)のユーザーのアクセスを制限することを可能とすることもでき、いっそう厳格な端末管理が可能となる。
【0022】
(実施の形態2)
本発明の電力・情報一元管理システムの端末管理方法の第2の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0023】
図5は当該電力・情報一元管理システムの構成を示すブロック図である。この第2の実施の形態と先述した第1の実施の形態との違いは、課金管理用PC(パーソナルコンピュータ)170が追加されたことである。その他の構成は、図1と同様であるが、ヘッドエンド装置110A、110B、110Cにはソフトウェアで課金管理機能が追加されている。
【0024】
ヘッドエンド装置110A、110B、110Cには課金管理用に端末毎の計時機能やデータ転送容量の記憶機能が追加される。上位通信手段102に接続された課金管理用PC170は当該電力・情報一元管理システム全体の課金管理を行っており、課金処理、伝票発行、データ保存などの機能を有している。
【0025】
課金管理用PC170は各ヘッドエンド装置に対して課金開始・終了指令を送信する機能および、課金期間中、一定時間ごとに各ヘッドエンド装置から課金状況データを収集し、積算する機能を持つ。
【0026】
ヘッドエンド装置110A、110B、110Cは課金管理用PC170からの課金開始指令を受けると、その課金期間中ネットワークの使用量(時間、容量)の積算を開始しデータを記憶装置240にたくわえ、課金管理用PC170からのデータ要求に対してデータを返送する。
【0027】
ヘッドエンド装置110A、110B、110Cは課金管理用PCからの課金終了指令を受けた場合はその指令を受領した時点で、積算処理を終了し、最終データを課金管理用PC170へ送信する機能を持つ。
【0028】
以上の機能により、ホテルなどで宿泊客がインターネットを使用したい場合、有料でサービスを提供することが可能となる。例えば、チェックイン時に宿泊客からの要望でインターネット接続を依頼された場合、ホテル側は暗号化キーを設定した端末を貸与することで、他の宿泊客のデータと干渉することなく、インターネット接続サービスを提供することができる。このとき、課金管理用PCで課金設定を行えば、ヘッドエンド装置での積算処理が開始され、チェックアウト時に課金終了指令を行うことで、料金清算が可能となる。
【0029】
さらに、前述したように、端末への許可/禁止設定が可能な場合、あらかじめ設定した使用量まで積算されたとき通信禁止とすることで使用を停止するようなシステムも組めるので、プリペイドのネットワーク使用料システムも構成可能である。
【0030】
なお、本実施の形態2において、課金管理用PC170をリモート監視センター160内に設置して、リモート監視センター160で管理するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の電力・情報一元管理システムの端末管理方法は、未許可の端末の接続を防止、通信傍受を不可能にすることができ、ビルまたはマンション等のようなオフィス・店舗施設・集合住戸において使用する電力線を用いた電力線通信(PLC)システムの端末管理方法等として産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1における電力・情報一元管理システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における電力・情報一元管理システムに用いるヘッドエンド装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態における電力・情報一元管理システムに用いる端末装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態における電力・情報一元管理システムに用いるヘッドエンド装置内の暗号化キーリストを示す図
【図5】本発明の実施の形態2における電力・情報一元管理システムの構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態における電力・情報一元管理システムに用いるヘッドエンド装置の登録モードを説明するための図
【符号の説明】
【0033】
100 施設
101A、101B、101C 電力線系統
102 上位通信手段
103 通信回線
110A、110B、110C ヘッドエンド装置
120 リモートユニット
121 端末
130 センサ/制御機器端末
140 管理用中央装置
150 外部インターネット接続手段
160 リモート監視センター
170 課金管理用PC
210 CPU
220 高速電灯線通信インターフェース
230 通信手段
240 記憶装置
250 シリアル通信インターフェース
310 CPU
320 高速電灯線通信インターフェース
330 通信手段
340 記憶装置
350 外部メモリ接続インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内で電灯線を介して複数の端末装置と接続し、電力線通信によって前記端末装置どうしおよび、前記端末装置と建物外との通信を制御するヘッドエンド部を建物内に備える電力・情報一元管理システムの端末管理方法であって、前記ヘッドエンド部は、前記端末装置のうち認可する端末装置に対し、予め暗号化キーを与え、未認可の接続を防止する電力・情報一元管理システムの端末管理方法。
【請求項2】
ヘッドエンド部は、認可された端末装置対してのみ端末装置どうしおよび、端末装置と建物外との通信を行なう請求項1記載の電力・情報一元管理システムの端末管理方法。
【請求項3】
ヘッドエンド部は、認可された端末装置に対してのみ端末使用料または外部との通信に対する課金のための積算を行う請求項2記載の電力・情報一元管理システムの端末管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−166273(P2006−166273A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357472(P2004−357472)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(593063161)株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】