説明

電力供給システム

【課題】水素ガスを容易に燃料電池に供給して電力を発電する電力供給システムを提供する。
【解決手段】電力供給システム400は、ガス発生器300と、燃料電池410と、ガス供給管420,430と、電力供給器440とを備える。ガス発生器300は、III族窒化物結晶からなる陽極電極と、Ptからなる陰極電極とを塩酸水溶液中に浸漬し、陽極電極および陰極電極間に直流電圧を印加して酸素ガスおよび水素ガスを発生する。そして、ガス発生器300は、発生した酸素ガスおよび水素ガスをガス供給管420,430を介して燃料電池410へ供給し、燃料電池410は、ガス発生器300からの酸素ガスおよび水素ガスを用いて直流電力を発電する。電力供給器440は、燃料電池410が発電した直流電力を電気負荷へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家庭内等に電力を供給する電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外、紫〜青〜緑色光源として用いられているInGaAlN(III族窒化物半導体)系デバイスは、その殆どがサファイアおよびシリコンカーバイド(SiC)を基板とし、その基板上にMOCVD法(有機金属化学気相成長法)およびMBE法(分子線結晶成長法)等を用いて作製されている。
【0003】
このように、サファイアおよびシリコンカーバイドを基板として用いた場合、熱膨張係数および格子定数が基板とIII族窒化物半導体とでそれぞれ大きく異なっているため、III族窒化物半導体内に多くの結晶欠陥が含まれることとなる。この結晶欠陥は、デバイス特性を低下させ、たとえば、発光デバイスにおいては、寿命が短い、動作電力が大きい、等の欠点に直接関係する。
【0004】
また、サファイア基板は、絶縁体であるため、従来の発光デバイスのように基板側から電極を取り出すことが不可能であった。これにより、III族窒化物半導体側から電極を取り出すことが必要となる。その結果、デバイスの面積が大きくなり、高コスト化を招くという不都合があった。そして、デバイスの面積が大きくなると、サファイア基板とIII族窒化物半導体という異種材料の組み合わせに伴う基板の反りという新たな問題が発生する。
【0005】
さらに、サファイア基板上に作製されたIII族窒化物半導体デバイスは、劈開によるチップ分離が困難であり、レーザダイオード(LD)において必要とされる共振器端面を得ることは、容易ではない。このため、現在は、ドライエッチング、またはサファイア基板を厚さ100μm以下まで研磨した後に劈開に近い形に分離し、共振器端面の形成を行なっている。したがって、従来のLDのように、共振器端面の形成とチップ分離とを単一工程で行なうことが困難であり、工程の複雑化によるコスト高を招いていた。
【0006】
これらの問題を解決するため、サファイア基板上にIII族窒化物半導体を選択的に横方向に成長させるなどの工夫をし、結晶欠陥を低減させることが提案された。これにより、結晶欠陥を低減させることが可能となったが、サファイア基板の絶縁性および上述した劈開の困難性に関する問題は、依然として残っている。
【0007】
こうした問題を解決するためには、基板上に結晶成長する材料と同一である窒化ガリウム(GaN)基板が最適である。そのため、気相成長および融液成長等により、バルクGaNを結晶成長させる方法が、各種、提案されている。しかし、未だ高品質かつ実用的な大きさを有するGaN基板は、実現されていない。
【0008】
GaN基板を実現する1つの方法として、ナトリウム(Na)をフラックスとして用いたGaN結晶成長方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、アジ化ナトリウム(NaN)と金属Gaとを原料として、ステンレス製の反応容器(容器内寸法:内径=7.5mm、長さ=100mm)にNaNおよび金属Gaを窒素雰囲気中で封入し、その反応容器を600〜800℃の温度で24〜100時間保持することにより、GaN結晶が成長するものである。
【0009】
この方法は、600〜800℃と比較的低温での結晶成長が可能であり、容器内圧力も高々100kg/cm程度と比較的低く、実用的な成長条件であることが特徴である。
【0010】
そして、最近では、アルカリ金属とIII族金属との混合融液と、窒素を含むV族原料とを反応させることにより、高品質なIII族窒化物結晶が実現されている(特許文献2)。
【0011】
一方、家庭用の電力を賄うための電力供給システムとして燃料電池システムおよび太陽光発電システムが知られている。
【特許文献1】米国特許第5868837号明細書
【特許文献2】特開2001−58900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、燃料電池システムを家庭内の電力を賄う電力供給システムとして用いる場合、原料ガスである水素ガスを容易に燃料電池に供給することが困難であるという問題がある。
【0013】
また、太陽光発電システムを家庭内の電力を賄う電力供給システムとして用いる場合、夜間、天候および季節等の要因によって家庭内で必要な電力を太陽光発電システムによって賄うことが困難であるという問題がある。
【0014】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、水素ガスを容易に燃料電池に供給して電力を発電する電力供給システムを提供することである。
【0015】
また、この発明の別の目的は、太陽光発電システムを補完する電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明によれば、電力供給システムは、ガス発生器と、燃料電池と、電力供給器とを備える。ガス発生器は、酸素ガスおよび水素ガスを発生する。燃料電池は、ガス発生器によって発生された水素ガスを少なくとも用いて直流電力を発電する。電力供給器は、燃料電池が発電した直流電力に基づいて、電気負荷に電力を供給する。そして、ガス発生器は、電解液と、陽極電極と、陰極電極と、電流源とを含む。陽極電極は、電解液に浸漬されたIII族窒化物結晶を有する。陰極電極は、電解液に浸漬される。電流源は、陽極電極と陰極電極との間に直流電流を流す。
【0017】
好ましくは、電力供給器は、燃料電池によって発電された直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気機器に供給する電力変換器からなる。
【0018】
好ましくは、電力供給器は、自動車に搭載された二次電池を燃料電池が発電した直流電力によって充電する充電器からなる。
【0019】
好ましくは、電力供給システムは、太陽電池モジュールをさらに備える。太陽電池モジュールは、太陽光によって直流電力を発電する。そして、電力供給器は、太陽電池モジュールが発電した第1の直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気機器に供給するとともに、第1の直流電力が家庭内の電気機器を駆動するために必要な基準電力よりも少ないとき、燃料電池が発電した第2の直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気機器に供給する電力変換器からなる。
【0020】
好ましくは、電流源は、太陽電池からなる。
【0021】
好ましくは、燃料電池は、ガス発生器が発生した水素ガスおよび酸素ガスを用いて直流電力を発電する。
【0022】
好ましくは、陽極電極は、坩堝と、III族窒化物結晶とを含む。III族窒化物結晶は、坩堝の内部に形成される。
【0023】
好ましくは、III族窒化物結晶は、坩堝の壁面および/または底面に形成された複数のIII族窒化物結晶からなる。
【0024】
好ましくは、III族窒化物結晶の伝導帯端は、電解液中の水素イオンのエネルギーレベルよりも高く、III族窒化物結晶の価電子帯端は、電解液中の水のエネルギーレベルよりも高い。
【0025】
好ましくは、III族窒化物結晶は、窒化ガリウム結晶からなる。陰極電極は、白金からなる。電解液は、塩酸を含む。
【発明の効果】
【0026】
この発明においては、電力供給システムは、III族窒化物結晶からなる陽極電極と、陰極電極とを電解液に浸漬して酸素ガスおよび水素ガスを発生し、その発生した水素ガスを少なくとも燃料電池に供給して直流電力を発電するとともに、発電した直流電力に基づいて、電力を電気負荷に供給する。
【0027】
したがって、この発明によれば、水素ガスを容易に燃料電池に供給して電力を発電できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
図1は、この発明の実施の形態による電力供給システムの構成を示す概略図である。図1を参照して、電力供給システム400は、ガス発生器300と、燃料電池410と、ガス供給管420,430と、電力供給器440とを備える。
【0030】
ガス供給管420は、一方端がガス発生器300に連結され、他方端が燃料電池410に連結される。ガス供給管430は、一方端がガス発生器300に連結され、他方端が燃料電池410に連結される。
【0031】
ガス発生器300は、後述する方法によって酸素ガス(O)および水素ガス(H)を発生し、その発生した酸素ガス(O)および水素ガス(H)をそれぞれガス供給管420,430へ供給する。
【0032】
ガス供給管420は、ガス発生器300によって発生された酸素ガス(O)を燃料電池410へ供給する。ガス供給管430は、ガス発生器300によって発生された水素ガス(H)を燃料電池410へ供給する。燃料電池410は、ガス発生器300から受けた酸素ガス(O)および水素ガス(H)を用いて直流電力を発電する。電力供給器440は、燃料電池410が発電した直流電力をそのまま、または交流電力に変換して電気負荷に供給する。
【0033】
なお、電力供給システム400においては、ガス発生器300は、水素ガス(H)のみを燃料電池410へ供給するようにしてもよい。この場合、燃料電池410は、空気を取り入れ、ガス発生器300から供給された水素ガス(H)と空気中の酸素ガス(O)とを用いて直流電力を発電する。
【0034】
また、燃料電池410は、固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、リン酸形燃料電池、高分子電解質形燃料電池およびアルカリ水溶液形燃料電池のいずれであってもよい。
【0035】
図2は、図1に示すガス発生器300の構成を示す概略図である。図2を参照して、ガス発生器300は、容器310と、電解液320と、陽極電極330と、陰極電極340と、リード線350,360と、太陽電池370とを備える。
【0036】
容器310は、略U字形状の断面形状からなり、ガス発生部311,312を有する。電解液320は、1モル/Lの塩酸(HCl)水溶液からなり、容器310に入れられる。陽極電極330は、ガス発生部311に配置され、電解液320に浸漬される。そして、陽極電極330は、坩堝10と、複数のGaN結晶6とからなる。坩堝10は、SUS316Lからなる。複数のGaN結晶6は、坩堝10の内壁および底面に形成される。そして、複数のGaN結晶6の各々は、柱状形状からなる。
【0037】
陰極電極340は、ガス発生部312に配置され、電解液320に浸漬される。そして、陰極電極340は、白金(Pt)からなる。リード線350は、陽極電極330の坩堝10を太陽電池370の正極に接続する。リード線360は、陰極電極340を太陽電池370の陰極に接続する。太陽電池370は、たとえば、アモルファスシリコン太陽電池からなり、リード線350とリード線360との間に接続される。そして、太陽電池370は、光(太陽光および室内灯の光等)を受けると、所定の直流電圧を発生し、その発生した所定の直流電圧を陽極電極330と陰極電極340との間に印加する。
【0038】
図3は、図2に示す陽極電極330を作製する結晶成長装置の概略断面図である。図3を参照して、結晶成長装置100は、坩堝10と、反応容器20と、配管30と、融液保持部材40と、加熱装置50,60と、温度センサー51,61と、ガス供給管70,80と、バルブ90,110,150と、圧力調整器120と、ガスボンベ130と、排気管140と、真空ポンプ160と、圧力センサー170,190と、金属融液180と、制御装置200とを備える。
【0039】
坩堝10は、略円柱形状を有する。反応容器20は、坩堝10と所定の間隔を隔てて坩堝10の周囲に配置される。すなわち、反応容器20は、坩堝10を内部に含む。そして、反応容器20は、本体部21と、蓋部22とからなる。本体部21および蓋部22の各々は、SUS316Lからなり、本体部21と蓋部22との間は、メタルオーリングによってシールされる。
【0040】
配管30は、重力方向DR1において、一方端が坩堝10の下側で反応容器20に連結され、他方端がガス供給管80に連結される。
【0041】
融液保持部材40は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、反応容器20と配管30との連結部よりも下側の配管30内に設置される。
【0042】
加熱装置50は、反応容器20の外周面20Aを囲むように配置される。加熱装置60は、反応容器20の底面20Bに対向して配置される。温度センサー51,61は、それぞれ、加熱装置50,60に近接して配置される。
【0043】
ガス供給管70は、一方端がバルブ90を介して反応容器20に連結され、他方端が圧力調整器120を介してガスボンベ130に連結される。ガス供給管80は、一方端が配管30に連結され、他方端がガス供給管70に連結される。
【0044】
バルブ90は、反応容器20の近傍でガス供給管70に装着される。圧力調整器120は、ガスボンベ130の近傍でガス供給管70に装着される。ガスボンベ130は、ガス供給管70に連結される。
【0045】
排気管140は、一方端がバルブ150を介して反応容器20に連結され、他方端が真空ポンプ160に連結される。バルブ150は、反応容器20の近傍で排気管140に装着される。真空ポンプ160は、排気管140に連結される。
【0046】
圧力センサー170は、反応容器20に取り付けられる。金属融液180は、金属ナトリウム(金属Na)融液からなり、融液保持部材40によって配管30内に保持される。圧力センサー190は、金属融液180に接して配管30に取り付けられる。
【0047】
坩堝10は、金属Naと、金属ガリウム(金属Ga)とを含む混合融液210を保持する。反応容器20は、坩堝10の周囲を覆う。配管30は、金属融液180を保持する。
【0048】
融液保持部材40は、配管30の内壁との間に数十μmの孔が形成されるように外周面に凹凸構造を有し、配管30内の空間31へ供給された窒素ガスを金属融液180の方向へ通過させ、窒素ガスを金属融液180を介して空間23内へ供給する。また、融液保持部材40は、金属融液180の表面張力により金属融液180を配管30内に保持する。
【0049】
加熱装置50は、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置50は、制御装置200からの制御信号CTL1に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の外周面20Aから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー51は、加熱装置50のヒーターの温度T1を検出し、その検出した温度T1を制御装置200へ出力する。
【0050】
加熱装置60も、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置60は、制御装置200からの制御信号CTL2に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の底面20Bから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー61は、加熱装置60のヒーターの温度T2を検出し、その検出した温度T2を制御装置200へ出力する。
【0051】
ガス供給管70は、ガスボンベ130から圧力調整器120を介して供給された窒素ガスをバルブ90を介して反応容器20内へ供給する。ガス供給管80は、ガスボンベ130から圧力調整器120を介して供給された窒素ガスを配管30内へ供給する。
【0052】
バルブ90は、ガス供給管70内の窒素ガスを反応容器20内へ供給し、または窒素ガスの反応容器20内への供給を停止する。バルブ110は、ガス供給管80内の窒素ガスを配管30内へ供給し、または窒素ガスの配管30内への供給を停止する。圧力調整器120は、制御装置200からの制御信号CTL3に応じて、ガスボンベ130からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管70,80に供給する。
【0053】
ガスボンベ130は、窒素ガスを保持する。排気管140は、反応容器20内の気体を真空ポンプ160へ通過させる。バルブ150は、反応容器20内と排気管140とを空間的に繋げ、または反応容器20内と排気管140とを空間的に遮断する。真空ポンプ160は、排気管140およびバルブ150を介して反応容器20内の真空引きを行なう。
【0054】
圧力センサー170は、加熱装置50,60によって加熱されていない反応容器20内の圧力を検出する。金属融液180は、融液保持部材40を介して導入された窒素ガスを空間23へ供給する。
【0055】
制御装置200は、温度T1,T2をそれぞれ温度センサー51,61から受け、その受けた温度T1,T2に基づいて、坩堝10および反応容器20の温度を所望の温度に設定するための制御信号CTL1,CTL2を生成する。そして、制御装置200は、その生成した制御信号CTL1,2をそれぞれ加熱装置50,60へ出力する。
【0056】
また、制御装置200は、圧力センサー190から金属融液180の静水圧Psを受け、その受けた静水圧Psに基づいて空間23の圧力Pinを求める。より具体的には、反応容器20内の空間23の圧力Pinが相対的に高くなれば、金属融液180の静水圧Psは、圧力Pinに比例して相対的に高くなる。また、反応容器20内の空間23の圧力Pinが相対的に低くなれば、金属融液180の静水圧Psは、圧力Pinに比例して相対的に低くなる。
【0057】
このように、静水圧Psは、空間23内の圧力Pinに比例する。したがって、制御装置200は、静水圧Psと圧力Pinとの比例係数を保持しており、その保持している比例係数を静水圧Psに乗算することにより、静水圧Psに基づいて圧力Pinを求める。
【0058】
そして、制御装置200は、空間23の圧力Pinを求めると、その求めた圧力Pinを所望の圧力に設定するための制御信号CTL3を生成し、その生成した制御信号CTL3を圧力調整器120へ出力する。
【0059】
圧力センサー190は、金属融液180の静水圧Psを検出し、その検出した静水圧Psを制御装置200へ出力する。
【0060】
図4は、図3に示す融液保持部材40の斜視図である。図4を参照して、融液保持部材40は、栓41と、凸部42とを含む。栓41は、略円柱形状からなる。凸部42は、略半円形の断面形状を有し、栓41の外周面に栓41の長さ方向DR2に沿って形成される。
【0061】
図5は、融液保持部材40の配管30への取付状態を示す平面図である。図5を参照して、凸部42は、栓41の円周方向に複数個形成され、複数の凸部42は、数十μmの間隔dで形成される。また、凸部42は、数十μmの高さHを有する。融液保持部材40の複数の凸部42は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、融液保持部材40は、配管30の内壁30Aに嵌合する。
【0062】
凸部42が数十μmの高さHを有し、数十μmの間隔dで栓41の外周面に配置される結果、融液保持部材40が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、融液保持部材40と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙43が複数個形成される。
【0063】
この空隙43は、栓41の長さ方向DR2に窒素ガスを通過させるとともに、金属融液180の表面張力によって金属融液180を保持し、金属融液180が栓41の長さ方向DR2に通過するのを阻止する。
【0064】
図6は、GaN結晶を結晶成長させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を金属Naと金属Gaとの混合比に対して示す図である。なお、金属Naと金属Gaとの混合比rは、r=[金属Na]/([金属Na]+[金属Ga])によって定義される。
【0065】
図6の(a)は、混合比rがr=0.4である場合の圧力/温度相関図PT1を示し、図6の(b)は、混合比rがr=0.7である場合の圧力/温度相関図PT2を示し、図6の(c)は、混合比rがr=0.95である場合の圧力/温度相関図PT3を示す。
【0066】
そして、図6の(a),(b),(c)の各々において、縦軸は、反応容器20内の空間23における窒素ガスのガス圧力を表し、横軸は、坩堝10および反応容器20の温度(=混合融液210の温度)の逆数を表す。
【0067】
図6の(a)を参照して、圧力/温度相関図PT1は、領域REG11,REG12,REG13,REG14を有する。領域REG11は、直線k1によって領域REG12と仕切られ、領域REG12は、直線k2によって領域REG13と仕切られ、領域REG13は、直線k3によって領域REG14と仕切られる。
【0068】
そして、領域REG11は、GaN結晶を溶解させる領域であり、領域REG12は、新たな核の発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域である。また、領域REG13は、柱状形状のGaN結晶が結晶成長する領域であり、領域REG14は、板状形状のGaN結晶が結晶成長する領域である。
【0069】
このように、圧力/温度相関図PT1は、GaN結晶を溶解させる領域REG11と、形状または成長機構が異なるGaN結晶を結晶成長させる領域REG12,REG13,REG14とからなる。
【0070】
図6の(b)を参照して、圧力/温度相関図PT2は、領域REG21,REG22,REG23,REG24を有する。領域REG21は、直線k4によって領域REG22と仕切られ、領域REG22は、直線k5によって領域REG23と仕切られ、領域23は、直線k6によって領域REG24と仕切られる。
【0071】
そして、領域REG21は、GaN結晶を溶解させる領域であり、領域REG22は、新たな核の発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域である。また、領域REG23は、柱状形状のGaN結晶が結晶成長する領域であり、領域REG24は、板状形状のGaN結晶が結晶成長する領域である。
【0072】
このように、圧力/温度相関図PT2も、GaN結晶を溶解させる領域REG21と、形状または成長機構が異なるGaN結晶を結晶成長させる領域REG22,REG23,REG24とからなる。
【0073】
図6の(c)を参照して、圧力/温度相関図PT3は、領域REG31,REG32,REG33,REG34を有する。領域REG31は、直線k7によって領域REG32と仕切られ、領域REG32は、直線k8によって領域REG33と仕切られ、領域33は、直線k9によって領域REG34と仕切られる。
【0074】
そして、領域REG31は、GaN結晶を溶解させる領域であり、領域REG32は、新たな核の発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域である。また、領域REG33は、柱状形状のGaN結晶が結晶成長する領域であり、領域REG34は、板状形状のGaN結晶が結晶成長する領域である。
【0075】
このように、圧力/温度相関図PT3も、GaN結晶を溶解させる領域REG31と、形状または成長機構が異なるGaN結晶を結晶成長させる領域REG32,REG33,REG34とからなる。
【0076】
上述したように、圧力/温度相関図PT1〜PT3の各々は、GaN結晶を溶解させる領域、種結晶からGaN結晶を結晶成長させる領域、柱状形状のGaN結晶を結晶成長させる領域および板状形状のGaN結晶を結晶成長させる領域からなるが、圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13は、それぞれ、圧力/温度相関図PT2の領域REG22,REG23よりも広く、圧力/温度相関図PT2の領域REG24は、圧力/温度相関図PT1,PT3の領域REG14,REG34よりも広く、圧力/温度相関図PT3の領域REG32,REG33は、圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13と同じ広さを有し、かつ、金属Gaを補充しながらGaN結晶を結晶成長させる。
【0077】
したがって、圧力/温度相関図PT1は、種結晶からのGaN結晶の結晶成長および柱状形状からなるGaN結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、圧力/温度相関図PT2は、板状形状からなるGaN結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、圧力/温度相関図PT3は、種結晶からのGaN結晶の結晶成長に適した領域である。
【0078】
圧力/温度相関図PT3の領域REG32,REG33が圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13と同じ広さを有するにも係わらず、圧力/温度相関図PT3が種結晶からのGaN結晶の結晶成長だけに適しているのは、圧力/温度相関図PT3を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合、金属Gaを補充する必要があり、領域REG32における結晶成長(種結晶からのGaN結晶の結晶成長)の方が領域REG33における結晶成長(柱状形状からなるGaN結晶の結晶成長)よりも金属Gaの消費量が少ないからである。
この発明においては、混合比rに応じてGaN結晶の結晶成長に用いる圧力/温度相関図を圧力/温度相関図PT1〜PT3から選択し、その選択した圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23におけるガス圧力および混合融液210の温度をそれぞれ設定してGaN結晶を結晶成長する。
【0079】
図7は、坩堝10および反応容器20の温度のタイミングチャートである。また、図8は、図7に示す2つのタイミングt1,t2間における坩堝10および反応容器20内の状態を示す模式図である。なお、図7において、直線k10は、坩堝10および反応容器20の温度を示す。
【0080】
図7を参照して、加熱装置50,60は、直線k10に従って温度が上昇し、かつ、700℃に保持されるように坩堝10および反応容器20を加熱する。加熱装置50,60が坩堝10および反応容器20を加熱し始めると、坩堝10および反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で700℃に達する。
【0081】
そうすると、坩堝10および反応容器20が700℃まで昇温される過程で、融液保持部材40よりも上側の配管30の温度が98℃以上に上昇され、配管30内に保持された金属Naは溶け、金属融液180(=金属Na融液)が配管30内に生成される。また、坩堝10中の金属Naおよび金属Gaは溶け、混合融液210が坩堝10中で生成される。
【0082】
その結果、空間23内の窒素ガス4は、金属融液180(=金属Na融液)および融液保持部材40を介して配管30内の空間31へ拡散することができず、空間23内に閉じ込められる(図8参照)。
【0083】
この場合、金属融液180に接する配管30の部分は、金属融液180から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液210から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する温度に加熱装置60によって昇温される。すなわち、金属融液180に接する配管30の部分は、金属融液180からの金属Naの蒸発と、混合融液210からの金属Naの蒸発とが略平衡になる温度に加熱装置60によって昇温される。
【0084】
したがって、金属融液180から混合融液210への金属Naの移動と、混合融液210から金属融液180への金属Naの移動とが略平衡になり、見かけ上、金属融液180と混合融液210との間で金属Naの移動が停止される。その結果、金属融液180および混合融液210からの金属Naの蒸発による混合融液210中の金属Naと金属Gaとの混合比の変動が抑制される。
【0085】
このように、坩堝10および反応容器20が700℃に加熱されると、金属融液180から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液210から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致し、空間23内には、窒素ガス4と金属Na蒸気5とが混在する。
【0086】
そして、坩堝10および反応容器20の温度が700℃に達すると、空間23内の窒素ガス4は、金属Naを媒介として混合融液210中に取り込まれる。そして、坩堝10の側壁および底面からGaN結晶が結晶成長する。
【0087】
その後、GaN結晶の結晶成長の進行に伴って、空間23内の窒素ガスが消費されると、空間23の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低くなる。そうすると、空間23の圧力P1と空間31の圧力P2との圧力差に応じて、窒素ガスが空間31から空間23へ補給される。この場合、融液保持部材40は、空間31の窒素ガスを金属融液180へ透過させ、金属融液180は、窒素ガスを泡181として空間23へ導く。そして、空間23の圧力P1が空間31の圧力P2と同程度に上昇すると、空間31から空間23への窒素ガスの補給は停止される。
【0088】
図9は、図3に示す結晶成長装置100を用いて結晶成長または溶解させたGaN結晶の模式図である。図9の(a)は、図6に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合を示し、図9の(b)は、図6に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG14に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合を示す。
【0089】
また、図9の(c)は、図6に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて種結晶からGaN結晶を結晶成長させた場合を示し、図9の(d)は、図6に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を溶解させた場合を示す。
【0090】
図9の(a)を参照して、領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合、複数のGaN結晶6が坩堝10の底面11から結晶成長する。そして、複数のGaN結晶6の各々は、尖った先端が坩堝10の底面11に接触し、c軸(<0001>)方向へ結晶成長した柱状形状からなる。また、複数のGaN結晶6は、その大きさが相互に異なり、坩堝10の底面11に対して相互に異なる方向へ結晶成長する。
【0091】
図9の(b)を参照して、領域REG14に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合、複数のGaN結晶7が坩堝10内で結晶成長する。そして、複数のGaN結晶7の各々は、c面((0001))方向(c軸に垂直な方向)に結晶成長した板状形状からなる。また、複数のGaN結晶7は、その大きさが相互に異なる。
【0092】
図9の(c)を参照して、領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合、種結晶6AからGaN結晶8が結晶成長する。種結晶6Aは、領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて結晶成長された複数のGaN結晶6(図9の(a)参照)のうちの1個のGaN結晶からなる。この場合、複数のGaN結晶6のうち、不要なGaN結晶を除去し、坩堝10の底面11に対して略垂直に結晶成長したGaN結晶6を種結晶6Aとして底面11に残す。これによって、坩堝10の底面11に固定された種結晶6Aを容易に作製できる。
【0093】
上述したように、複数のGaN結晶6は、c軸方向へ結晶成長するので、種結晶6Aもc軸方向へ結晶成長したGaN結晶からなる。したがって、領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて種結晶6Aから結晶成長したGaN結晶8もc軸方向へ結晶成長する。そして、領域RE12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いたGaN結晶の結晶成長においては、坩堝10の側壁および底面11における核の発生が抑制されるため、大きさサイズのGaN結晶8を結晶成長できる。
【0094】
図9の(d)を参照して、領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を処理すると、GaN結晶9が溶解され、GaN結晶9Aが坩堝10の底面11に残る。
【0095】
なお、図6に示す圧力/温度相関図PT2の領域REG23,REG24,REG22および圧力/温度相関図PT3の領域REG33,REG34,REG32は、それぞれ、図9の(a),(b),(c)に示すGaN結晶6,7,8を結晶成長させ、圧力/温度相関図PT2の領域REG21および圧力/温度相関図PT3の領域REG31は、図9の(d)に示すGaN結晶9を溶解させる。
【0096】
図10は、GaN結晶の製造方法を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ坩堝10、反応容器20および配管30を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naを配管30内に入れる(ステップS1)。なお、Arガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
【0097】
その後、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを所定の混合比rで坩堝10に入れる(ステップS2)。この場合、たとえば、混合比r=0.4で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れる。そして、金属Naおよび金属Gaを入れた坩堝10を反応容器20内に設置する。
【0098】
引続いて、坩堝10および反応容器20内にArガスを充填した状態で坩堝10および反応容器20を結晶成長装置100に設定する。そして、バルブ150を開け、真空ポンプ160によって坩堝10および反応容器20内に充填されたArガスを排気する。真空ポンプ160によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ150を閉じ、バルブ90,110を開けて窒素ガスをガスボンベ130からガス供給管70,80を介して坩堝10および反応容器20内へ充填する。この場合、圧力調整器120によって坩堝10および反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になるように坩堝10および反応容器20内へ窒素ガスを供給する。
【0099】
そして、圧力センサー170によって検出した反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になると、バルブ90,110を閉じ、バルブ150を開けて真空ポンプ160によって坩堝10および反応容器20内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ160によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
【0100】
そして、この坩堝10および反応容器20内の真空引きと坩堝10および反応容器20内への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
【0101】
その後、真空ポンプ160によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ150を閉じ、バルブ90,110を開けて窒素ガスを坩堝10および反応容器20の空間23へ供給する(ステップS3)。
【0102】
その後、制御装置200は、混合比r=0.4に応じて決定された圧力/温度相関図PT1の領域REG13を用いたGaN結晶の結晶成長が行なわれる場合、領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を外部から受ける。たとえば、制御装置200は、5.05MPaの圧力および700℃の温度をそれぞれ領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度として外部から受ける。
【0103】
そうすると、制御装置200は、坩堝10および反応容器20の温度を所望の温度(=700℃)に設定するための制御信号CTL1,CTL2を生成し、その生成した制御信号CTL1,CTL2をそれぞれ加熱装置50,60へ出力するとともに、空間23の窒素ガスのガス圧力を所望の圧力(=5.05MPa)に設定するための制御信号CTL3を生成し、その生成した制御信号CTL3を圧力調整器120へ出力する。
【0104】
そして、加熱装置50は、制御装置200からの制御信号CTL1に応じて、坩堝10および反応容器20を外周面20Aから700℃に加熱し、加熱装置60は、制御装置200からの制御信号CTL2に応じて、坩堝10および反応容器20を底面20Bから700℃に加熱する。また、圧力調整器120は、制御装置200からの制御信号CTL3に応じて、空間23の圧力が5.05MPaになるように窒素ガスをガス供給管70,80、配管30および融液保持部材40を介して空間23へ供給する。
【0105】
すなわち、所定の混合比rに応じて決定された圧力/温度相関図PT1に含まれる所望の圧力(=5.05MPa)および所望の温度(=700℃)に空間23における窒素ガスの圧力および坩堝10の温度を設定する(ステップS4)。
【0106】
そして、所定の時間、所望の圧力および所望の温度が保持され(ステップS5)、所定の時間が経過すると、坩堝10および反応容器20の温度が降温される(ステップS6)。これにより、柱状形状からなるGaN結晶が製造され、一連の動作が終了する。
【0107】
なお、上記においては、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合について説明したが、圧力/温度相関図PT1の領域REG11,REG12,REG14および圧力/温度相関図PT2,PT3の領域REG21,REG22,REG23,REG24,REG31,REG32,REG33,REG34に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長またはGaN結晶を溶解させる動作も、図10に示すフローチャートに従って実行される。
【0108】
このように、この発明においては、複数の混合比(r=0.4,0.7,0.95)に対応して複数の圧力/温度相関図PT1〜PT3が設けられており、所定の混合比rに応じて決定された圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)を用いてGaN結晶が結晶成長または溶解される。
【0109】
上記においては、圧力/温度相関図PT1〜PT3の1つの領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長または溶解させる場合について説明したが、この発明においては、これに限らず、圧力/温度相関図PT1〜PT3の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させてもよい。この場合、図10に示すフローチャートのステップS4は、複数のステップからなる。
【0110】
図11は、圧力/温度相関図PT1〜PT3の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図10に示すステップS4の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0111】
図11を参照して、図10に示すステップS3が終了すると、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS41)、GaN結晶を結晶成長する。これにより、柱状形状からなる複数のGaN結晶が坩堝10の底面11に形成される。
【0112】
その後、圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS42)、ステップS41において結晶成長したGaN結晶を溶解する。これによって、サイズが小さいGaN結晶が溶解され、サイズの大きいGaN結晶が坩堝10の底面11に残る。そして、坩堝10の底面11に残ったGaN結晶が種結晶となる。
【0113】
引き続き、圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS43)、種結晶からGaN結晶を結晶成長する。
【0114】
その後、一連の動作は、図10に示すステップS5へ移行する。
【0115】
このように、圧力/温度相関図PT1の領域REG13、領域REG11および領域REG12に含まれる複数の所望の圧力および複数の所望の温度を順次用いることによって、柱状形状からなる複数のGaN結晶6を坩堝10の底面11に結晶成長させ、その結晶成長させた複数のGaN結晶6の一部を溶解して種結晶を作製し、さらに、その作製した種結晶からGaN結晶8を結晶成長できる。
【0116】
図12は、圧力/温度相関図PT1〜PT3の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図10に示すステップS4の詳細な動作を説明するための他のフローチャートである。
【0117】
なお、図12に示すフローチャートは、種結晶が予め坩堝10の底面11に設置されている場合のフローチャートである。
【0118】
図12を参照して、図10に示すステップS3が終了すると、圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS41A)、種結晶を溶解する。
【0119】
その後、圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS42A)、種結晶からGaN結晶を結晶成長する。
【0120】
その後、一連の動作は、図10に示すステップS5へ移行する。
【0121】
このように、圧力/温度相関図PT1の領域REG11および領域REG12に含まれる複数の所望の圧力および複数の所望の温度を順次用いることによって、種結晶の一部を溶解し、その溶解した種結晶からGaN結晶を結晶成長できる。
【0122】
種結晶を予め坩堝10の底面11に設置し、その設置した種結晶からGaN結晶を結晶成長させる場合、種結晶の表面が酸化されたり、種結晶の表面に水分等の不純物が付着しているので、領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定して種結晶の一部を溶解し、その後、領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定して溶解後の種結晶からGaN結晶を結晶成長させることにしたものである。これにより、GaN結晶を種結晶から連続的に結晶成長させることができる。
【0123】
図13は、図3に示す結晶成長装置100を用いてGaN結晶を結晶成長させたときの坩堝10の断面図である。図13を参照して、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させることにより、複数のGaN結晶6が坩堝10の内壁および底面11に形成される。
【0124】
すなわち、結晶成長装置100を用いて坩堝10中でGaN結晶を結晶成長させることにより、図2に示す陽極電極330を作製することができる。上述したように、圧力/温度相関図PT1の領域REG13は、柱状形状からなる複数のGaN結晶が結晶成長する領域であるので、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させることにより、複数のGaN結晶6が内壁および底面11に形成された坩堝10からなる陽極電極330を作製することができる。そして、結晶成長された複数のGaN結晶6の各々は、n型GaNからなる。
【0125】
図14は、ガス発生器300における水素ガスおよび酸素ガスの発生機構を説明するための図である。ガス発生器300において、陽極電極330を構成する複数のGaN結晶6および陰極電極340を構成するPtは、電解液320に浸漬されているので、GaN結晶/電解液/Ptのエネルギー図は、図14に示すようになる。
【0126】
GaN結晶6は、n型であるので、GaN結晶と電解液との界面では、伝導帯および価電子帯が上側に曲がる。そして、電解液320中の水素イオン(H)のエネルギー準位は、GaN結晶6の伝導帯Ecよりも低く、電解液320中の水(HO)のエネルギー準位は、GaN結晶6の価電子帯Evよりも低い。すなわち、電解液320中の水素イオン(H)および水(HO)のエネルギー準位は、GaN結晶6の伝導帯Ecと価電子帯Evとの間に存在する。
【0127】
その結果、陽極電極330においては、太陽電池370から注入された正孔(h)は、GaN結晶6と電解液320との界面まで伝導し、GaN結晶6の価電子帯Evよりもエネルギー的に低い水(HO)のエネルギー準位へ移動する。そして、正孔(h)と水(HO)の分子とが反応して酸素ガス(O)が発生する。
【0128】
一方、陰極電極340においては、太陽電池370から注入された電子(e)は、電解液320との界面まで伝導し、Ptの伝導帯よりもエネルギー的に低い水素イオン(H)のエネルギー準位へ移動する。そして、電子(e)が水素イオン(H)と結合して水素ガス(H)が発生する。
【0129】
再び、図2を参照して、太陽電池370が陽極電極330と陰極電極340との間に所定の直流電圧を印加すると、陽極電極330は、上述した機構により酸素ガス(O)301を発生、陰極電極340は、上述した機構により水素ガス(H)302を発生する。そして、発生した酸素ガス(O)301は、ガス発生部311において、容器310内の空間313に溜まり、発生した水素ガス(H)302は、ガス発生部312において、容器310内の空間314に溜まる。
【0130】
陽極電極330は、結晶成長装置100を用いて複数の核が発生する結晶成長条件(領域REG13に含まれる圧力および温度)で作製されたので、複数のGaN結晶6が坩堝10の内壁および底面に形成された構造からなる。
【0131】
その結果、電解液320に接する陽極電極330の面積が大きくなり、陽極電極330における酸素ガス(O)301の発生量が増加する。すなわち、陽極電極330における酸素ガス(O)301の発生効率が高くなる。
【0132】
水(HO)の電気分解においては、酸素ガス(O)301および水素ガス(H)302が1:1で発生するので、陽極電極330における酸素ガス(O)301の発生効率が高くなれば、陰極電極340における水素ガス(H)302の発生効率も高くなる。したがって、ガス発生器300における酸素ガス(O)301および水素ガス(H)302の発生効率が高くなる。
【0133】
このように、ガス発生器300は、GaN結晶6を用いて作製された陽極電極330と、Ptからなる陰極電極340とを電解液320に浸漬し、陽極電極330と陰極電極340との間に所定の直流電圧を印加することにより酸素ガス(O)および水素ガス(O)を発生する。したがって、ガス発生器300は、酸素ガス(O)および水素ガス(O)を容易に発生できる。
【0134】
再び、図1を参照して、ガス発生器300は、上述した方法によって酸素ガス(O)および水素ガス(O)を発生し、その発生した酸素ガス(O)および水素ガス(O)をそれぞれガス供給管420,430を介して燃料電池410へ供給する。そして、燃料電池410は、ガス発生器300から供給された酸素ガス(O)および水素ガス(O)を用いて直流電力を発電する。電力供給器440は、燃料電池410が発電した直流電力をそのまま、または交流電力に変換して電気負荷に供給する。
【0135】
したがって、電力供給システム400は、水素ガスを燃料電池410へ容易に供給して直流電力を発電できる。
【0136】
図15は、図1に示す電力供給システム400の応用例を示す図である。図15は、図1に示す電力供給システム400を家庭内へ電力を供給するシステムとして用いた場合を示す。
【0137】
電力供給システム400が家庭内へ電力を供給するシステムとして用いられる場合、電力供給器440は、電力変換器441からなる。そして、電力変換器441は、燃料電池410から供給された直流電力を交流電力に変換し、その変換した交流電力を住宅500内の配線(図示せず)に供給する。
【0138】
住宅500は、キッチン501と、居間502と、洋室503と、寝室504とを備える。キッチン501には、蛍光灯505および冷蔵庫506が配置されている。そして、蛍光灯505は、住宅500内の配線(図示せず)から交流電力を受けて点灯する。また、冷蔵庫506は、キッチン501に取り付けられたコンセント507から交流電力を受けて駆動する。
【0139】
居間502には、蛍光灯508および薄型テレビ509が配置されている。そして、蛍光灯508は、住宅500内の配線(図示せず)から交流電力を受けて点灯する。また、薄型テレビ509は、居間502に取り付けられたコンセント(図示せず)から交流電力を受けて駆動する。
【0140】
洋室503には、蛍光灯510、パーソナルコンピュータ511およびエアコンディショナー512が配置されている。そして、蛍光灯510は、住宅500内の配線(図示せず)から交流電力を受けて点灯する。また、パーソナルコンピュータ511は、洋室503に取り付けられたコンセント513から交流電力を受けて駆動する。さらに、エアコンディショナー512は、洋室503に取り付けられたコンセント514から交流電力を受けて駆動する。
【0141】
寝室504には、蛍光灯515および補助灯516が配置されている。そして、蛍光灯515および補助灯516は、住宅500内の配線(図示せず)から交流電力を受けて点灯する。
【0142】
電力供給システム400において、ガス発生器300は、酸素ガス(O)および水素ガス(H)を発生し、その発生した酸素ガス(O)および水素ガス(H)をそれぞれガス供給管420,430を介して燃料電池410へ供給する。そして、燃料電池410は、ガス発生器300からの酸素ガス(O)および水素ガス(H)を用いて直流電力を発電し、その発電した直流電力を電力変換器441へ供給する。電力変換器441は、燃料電池410からの直流電力を交流電力に変換して住宅500内の配線(図示せず)に供給する。
【0143】
そうすると、住宅500内において、蛍光灯505,508,510,515および補助等516は、住宅500内の配線(図示せず)から交流電力を受けて点灯し、冷蔵庫506、薄型テレビ509、パーソナルコンピュータ511およびエアコンディショナー512は、住宅500内の配線(図示せず)から交流電力を受けて駆動する。
【0144】
このように、電力供給システム400は、水素ガスを燃料電池410へ容易に供給して直流電力を発電し、その発電した直流電力に変換して住宅500内の電気機器へ供給する。
【0145】
図16は、この発明の実施の形態による電力供給システムの構成を示す他の概略図である。この発明による電力供給システムは、図16に示す電力供給システム400Aであってもよい。図16を参照して、電力供給システム400Aは、図1に示す電力供給システム400に太陽電池モジュール450を追加したものであり、その他は、電力供給システム400と同じである。
【0146】
電力供給システム400Aにおいては、電力供給器440は、電力変換器442からなる。そして、燃料電池410および太陽電池モジュール450は、電力変換器442に電気的に接続される。
【0147】
太陽電池モジュール450は、住宅500の屋根に設置され、太陽光によって直流電力を発電し、その発電した直流電力を電力変換器442に供給する。
【0148】
電力変換器442は、住宅500内に設置された電気機器(蛍光灯505,508,510,515および冷蔵庫506等)を駆動するために必要な基準電力量Wstdを把握している。
【0149】
そして、電力変換器442は、太陽電池モジュール450が基準電力量Wstd以上の電力を発電している場合、太陽電池モジュール450から供給された直流電力を交流電力に変換して住宅500内の配線(図示せず)に供給する。
【0150】
また、電力変換器442は、太陽電池モジュール450が基準電力量Wstdよりも少ない電力を発電している場合、太陽電池モジュール450から供給された直流電力Wscと燃料電池410から供給された直流電力Wfcとの合計が基準電力量Wstd以上になるように、太陽電池モジュール450から供給された直流電力Wscと燃料電池410から供給された直流電力Wfcとを交流電力に変換して住宅500内の配線(図示せず)に供給する。すなわち、この場合、電力変換器442は、太陽電池モジュール450が発電する直流電力の不足分を燃料電池410が発電する直流電力によって補充して基準電力量Wstd以上の電力を住宅500内の配線(図示せず)に供給する。
【0151】
これによって、太陽電池モジュール450の発電量が夜間、天候および季節等の要因によって基準電力量Wstdを下回った場合にも、住宅500内に設置された電気機器に必要な電力を住宅500内へ安定して供給できる。
【0152】
このように、電力供給システム400Aにおいては、ガス発生器300および燃料電池410を太陽電池モジュール450を補完する電力源として用いる。
【0153】
なお、電力供給システム400Aにおいては、太陽電池370を削除し、太陽電池モジュール450が発電した直流電圧をガス発生器300の陽極電極330および陰極電極340間に印加するようにしてもよい。
【0154】
図17は、この発明の実施の形態による電力供給システムの構成を示すさらに他の概略図である。この発明の実施の形態による電力供給システムは、図17に示す電力供給システム400Bであってもよい。
【0155】
図17を参照して、電力供給システム400Bは、図1に示す電力供給システム400の電力供給器440を充電器460に代えたものであり、その他は、電力供給システム400と同じである。充電器460は、燃料電池410に電気的に接続される。
【0156】
電力供給システム400Bは、自動車600に搭載された二次電池に直流電力を供給する。
【0157】
自動車600は、ボディ610と、前輪620L,620Rと、車軸630,670と、モータ640と、二次電池650と、後輪660L,660Rとを備える。なお、自動車600は、電気自動車である。
【0158】
車軸630は、一方端が前輪620Lに連結され、他方端が前輪620Rに連結される。車軸670は、一方端が後輪660Lに連結され、他方端が後輪660Rに連結される。
【0159】
二次電池650は、直流電力をモータ640へ供給する。モータ640は、二次電池650からの直流電力によって駆動され、所定のトルクを車軸630に伝達する。車軸630は、モータ640からの所定のトルクを前輪620L,620Rに伝達し、前輪620L,620Rは、所定の回転数で回転する。
【0160】
なお、モータ640は、所定のトルクを車軸630,670の少なくとも一方に伝達すればよい。また、二次電池650は、自動車600に搭載されたモータ640のみならず、エアコン、オーディオ製品およびランプ等の電源として用いられてもよい。
【0161】
ガス発生器300は、上述した方法によって酸素ガス(O)および水素ガス(H)を発生し、その発生した酸素ガス(O)および水素ガス(H)をそれぞれガス供給管420,430を介して燃料電池410へ供給する。そして、燃料電池410は、ガス発生器300から供給された酸素ガス(O)および水素ガス(H)を用いて直流電力を発電し、その発電した直流電力を充電器460へ供給する。
【0162】
充電器460は、二次電池650を充電する場合、二次電池650に電気的に接続され、燃料電池410から供給された直流電力によって二次電池650を所定の電圧まで充電する。
【0163】
このように、電力供給システム400Bは、自動車600に搭載された二次電池650を所定の電圧まで充電する。そして、電力供給システム400Bは、一般家庭に設置されてもよいし、電気自動車に搭載された二次電池を充電する充電ステーションに設置されてもよい。
【0164】
上述したように、図1に示す電力供給システム400が一般家庭へ電力を供給する場合、電力供給器440は、電力変換器441,442からなり、電力変換器441,442は、直流電力を交流電力に変換して住宅500内の蛍光灯505,508,510,515、冷蔵庫506、薄型テレビ509、パーソナルコンピュータ511、エアコンディショナー512および補助灯516に供給する。
【0165】
また、図1に示す電力供給システム400が自動車600に搭載された二次電池650を充電する場合、電力供給器440は、充電器460からなり、充電器460は、燃料電池410からの直流電力によって二次電池650を所定の電圧まで充電する。
【0166】
したがって、蛍光灯505,508,510,515、冷蔵庫506、薄型テレビ509、パーソナルコンピュータ511、エアコンディショナー512、補助灯516および二次電池650は、「電気負荷」を構成し、電力供給器440は、燃料電池410が発電した直流電力に基づいて、電力を電気負荷に供給する。
【0167】
上記においては、図9の(a)に示すGaN結晶6を用いて陽極電極330を作製すると説明したが、この発明においては、図9の(b),(c)に示すGaN結晶7,8を用いて陽極電極330を作製してもよい。
【0168】
また、この発明においては、GaN結晶に代えてInGaNを用いて陽極電極330を作製してもよく、一般的には、伝導帯端が水素イオンのエネルギーレベルよりも高く、価電子帯端が水のエネルギーレベルよりも高いIII族窒化物結晶を用いて陽極電極330を作製してもよい。
【0169】
さらに、上記においては、電解液320は、塩酸を含むと説明したが、この発明においては、これに限らず、電解液320は、水酸化カリウム(KOH)を含んでいてもよく、一般的には、水素イオン(H)を水溶液中で生成するものを含んでいればよい。
さらに、上記においては、結晶成長温度は、700℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃以上であればよい。また、窒素ガス圧力も0.4MPa以上の加圧状態の本結晶成長方法で成長可能な圧力であればよい。すなわち、上限も本実施の形態の5.05MPaに限定されるものではなく、5.05MPa以上の圧力であってもよい。
【0170】
また、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを配管30内に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを配管30内に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを配管30内に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下である。
【0171】
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、リチウム(Li)およびカリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液210を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
【0172】
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
【0173】
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
【0174】
したがって、図3に示す結晶成長装置100は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)とを含む混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
【0175】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0176】
この発明は、水素ガスを容易に燃料電池に供給して電力を発電する電力供給システムに適用される。また、この発明は、太陽光発電システムを補完する電力供給システムに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】この発明の実施の形態による電力供給システムの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すガス発生器の構成を示す概略図である。
【図3】図2に示す陽極電極を作製する結晶成長装置の概略断面図である。
【図4】図3に示す融液保持部材の斜視図である。
【図5】融液保持部材の配管への取付状態を示す平面図である。
【図6】GaN結晶を結晶成長させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を金属Naと金属Gaとの混合比に対して示す図である。
【図7】坩堝および反応容器の温度のタイミングチャートである。
【図8】図7に示す2つのタイミングt1,t2間における坩堝および反応容器内の状態を示す模式図である。
【図9】図3に示す結晶成長装置を用いて結晶成長または溶解させたGaN結晶の模式図である。
【図10】GaN結晶の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】圧力/温度相関図の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図10に示すステップS4の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】圧力/温度相関図の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図10に示すステップS4の詳細な動作を説明するための他のフローチャートである。
【図13】図3に示す結晶成長装置を用いてGaN結晶を結晶成長させたときの坩堝の断面図である。
【図14】ガス発生器における水素ガスおよび酸素ガスの発生機構を説明するための図である。
【図15】図1に示す電力供給システムの応用例を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態による電力供給システムの構成を示す他の概略図である。
【図17】この発明の実施の形態による電力供給システムの構成を示すさらに他の概略図である。
【符号の説明】
【0178】
1〜3,1002 気液界面、4 窒素ガス、5 金属Na蒸気、6〜9,9A GaN結晶、6A 種結晶、10 坩堝、11,20B 底面、20 反応容器、20A 外周面、21 本体部、22 蓋部、23,31,313,314 空間、30 配管、30A 内壁、40 融液保持部材、41 栓、42 凸部、43 空隙、50,60 加熱装置、51,61 温度センサー、70,80,420,430 ガス供給管、100 結晶成長装置、90,110,150 バルブ、120 圧力調整器、130,1110 ガスボンベ、140 排気管、160 真空ポンプ、170,190 圧力センサー、180 金属融液、200 制御装置、210 混合融液、300 ガス発生器、301 酸素ガス、302 水素ガス、310 容器、311,312 ガス発生部、330 陽極電極、340 陰極電極、350,360 リード線、370 太陽電池、400,400A,400B 電力供給システム、410 燃料電池、440 電力供給器、441,442 電力変換器、450 太陽電池モジュール、460 充電器、500 住宅、501 キッチン、502 居間、503 洋室、504 寝室、505,508,510,515 蛍光灯、506 冷蔵庫、507,513,514 コンセント、509 薄型テレビ、511 パーソナルコンピュータ、512 エアコンディショナー、516 補助灯、600 自動車、610 ボディ、620L,620R 前輪、630,670 車軸、640 モータ、650 二次電池、660L,660R 後輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスおよび水素ガスを発生するガス発生器と、
前記ガス発生器によって発生された前記水素ガスを少なくとも用いて直流電力を発電する燃料電池と、
前記燃料電池が発電した直流電力に基づいて、電気負荷に電力を供給する電力供給器とを備え、
前記ガス発生器は、
電解液と、
前記電解液に浸漬されたIII族窒化物結晶を有する陽極電極と、
前記電解液に浸漬された陰極電極と、
前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電流を流す電流源とを含む、電力供給システム。
【請求項2】
前記電力供給器は、前記燃料電池によって発電された直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気機器に供給する電力変換器からなる、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記電力供給器は、自動車に搭載された二次電池を前記燃料電池が発電した直流電力によって充電する充電器からなる、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
太陽光によって直流電力を発電する太陽電池モジュールをさらに備え、
前記電力供給器は、前記太陽電池モジュールが発電した第1の直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気機器に供給するとともに、前記第1の直流電力が前記家庭内の電気機器を駆動するために必要な基準電力よりも少ないとき、前記燃料電池が発電した第2の直流電力を前記交流電力に変換して前記家庭内の電気機器に供給する電力変換器からなる、電力供給システム。
【請求項5】
前記電流源は、太陽電池からなる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記燃料電池は、前記ガス発生器が発生した水素ガスおよび酸素ガスを用いて前記直流電力を発電する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記陽極電極は、
坩堝と、
前記坩堝の内部に形成された前記III族窒化物結晶とを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電極供給システム。
【請求項8】
前記III族窒化物結晶は、前記坩堝の壁面および/または底面に形成された複数のIII族窒化物結晶からなる、請求工7に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記III族窒化物結晶の伝導帯端は、前記電解液中の水素イオンのエネルギーレベルよりも高く、前記III族窒化物結晶の価電子帯端は、前記電解液中の水のエネルギーレベルよりも高い、請求項7または請求項8に記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記III族窒化物結晶は、窒化ガリウム結晶からなり、
前記陰極電極は、白金からなり、
前記電解液は、塩酸を含む、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−218315(P2008−218315A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57067(P2007−57067)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】