説明

電力制御装置、電力算出方法および電力算出プログラム

【課題】電池のうち一部の電池を使用せずに残りの電池で充放電する場合、充放電を行う電池の負担を軽減する。
【解決手段】各電池を多並列で用いる給電装置の充放電電力を制御する電力制御装置であって、他の発電装置により発電された発電電力を検出する電力検出部4と、検出された発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出し、発電電力と平滑化した電力の差に基づいて、発電電力の変動を抑制するのに必要な充放電電力を算出する連系点電力算出部64と、算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、該電池が充放電する電力を算出する電池電力算出部68と、電池が充放電する電力が小さいほど、所定の透過帯域の上限を低くする平滑化方法選択部63と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御装置、電力算出方法および電力算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池で大容量ユニット(100kWh以上)を構成する場合、電池を直並列に接続した組電池を、インバータ、チョッパなどの電力変換器を使用して並列接続するのが一般的である。
【0003】
図13は、従来の大容量電池ユニットである給電装置100のブロック構成図の1例である。給電装置100は、複数のインバータと、複数のチョッパと、複数の組電池とを備える。1つのインバータには、複数のチョッパが接続されており、それぞれのチョッパには、1つの組電池が接続されている。給電装置100は、それぞれのインバータから供給された電力を合算した電力を商用系統に供給する。同図において、バツ印が描かれた組電池に異常が発生した場合が示されている。
【0004】
インバータ、電池等の給電装置100を構成する機器の一部に何らかの異常が発生した場合、統合制御装置(不図示)は、通常、給電装置全体を停止させるよう制御する。
【0005】
図14は、風車や太陽電池などの自然現象を利用することにより得られるエネルギーである自然エネルギーの出力電力と、自然エネルギー出力電力と大容量電池ユニットの出力電力との合わせた電力との時間変化を示した1例である。給電装置100に異常が発生する前には、給電装置100は、自然エネルギーの出力電力を平滑化し、平滑化した電力を商用系統へ出力する。一方、異常が発生した後には、給電装置100は、自ユニット全体を停止させるので、自然エネルギーの出力電力を平滑化することができず、自然エネルギーの出力電力をそのまま商用系統へ出力する。
【0006】
図14に示されるように、従来の給電装置100は、給電装置100を構成する機器の一部に異常が発生する時に、自然エネルギーの出力電力を平滑化する機能が失われるという問題があった。
例えば、インバータ1列×チョッパ3列などの小容量ユニット(100kWh以下)では並列数も少なく、異常時にユニット全体を停止させることで大きな問題とはならなかった。しかし、例えば数MWhクラスの大容量ユニットの場合は並列数も多くなり、ユニット構成機器の一部に異常が発生しただけでユニット全体を停止させていては、ユニット運用が非効率となる。
【0007】
その問題を解決するために、従来、給電装置は、給電装置の異常時に運転を継続するために、機能縮退モードとして、給電装置を構成する各電池の負荷の分担率を変更していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−306806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
給電装置の異常時に運転を継続する場合、電池のうち一部の電池を使用せずに残りの電池で充放電によって、自然エネルギーの出力電力の平滑化を行わなければならないので、充放電を行う電池の負担が増加するという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電池のうち一部の電池を使用せずに残りの電池で充放電する場合、充放電を行う電池の負担を軽減することを可能とする電力制御装置、電力算出方法および電力算出プログラムを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様である電力制御装置は、各電池を多並列で用いる給電装置の充放電電力を制御する電力制御装置であって、他の発電装置により発電された発電電力を検出する電力検出部と、前記検出された発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出する平滑化電力算出部と、前記発電電力と前記平滑化した電力の差に基づいて、前記発電電力の変動を抑制するのに必要な前記充放電電力を算出する充放電電力算出部と、前記算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、該電池が充放電する電力を算出する電池電力算出部と、前記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする透過帯域変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力制御装置は、電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする。これにより、電力制御装置は、電池のうち一部の電池を使用せずに残りの電池で充放電する場合、充放電を行う電池の負担を軽減することができるので、電池の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】給電装置が、異常が発生した後も運転を継続した場合における電力の時間変化である。
【図2】本発明の実施形態における給電システムのブロック構成図である。
【図3】統合制御部のブロック構成図である。
【図4】インバータの出力上限値の総和に応じた平滑化方法の選択の1例について説明するための図である。
【図5】電力会社が所有する発電設備の系統周波数維持における役割分担が示された図である。
【図6】第1の電力算出部について説明するための図である。
【図7】第2の電力算出部について説明するための図である。
【図8】第3の電力算出部について説明するための図である。
【図9】第3の電力算出部のフィルタ部の変形例について説明するための図である。
【図10】通常運転時におけるインバータの出力電力とチョッパの出力電力との分担の1例が示された図である。
【図11】図10に示された組電池の出力電力の分担例において、1つの組電池に異常が発生した場合におけるインバータの出力電力とチョッパの出力電力との分担の1例が示された図である。
【図12】給電装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図13】従来の大容量電池ユニットのブロック構成図の1例である。
【図14】風車や太陽電池などの自然現象を利用することにより得られるエネルギーである自然エネルギーの出力電力と、自然エネルギー出力電力と大容量電池ユニットの出力電力との合算との時間変化を示した1例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、給電装置が、異常が発生した後も運転を継続した場合における電力の時間変化である。同図において、自然エネルギーの出力電力と、自然エネルギーの出力電力と給電装置の出力電力とを加算した電力との時間変化が示されている。同図には、ある電池に異常が発生した後も、所定の電力範囲では上記加算した電力は平滑化された電力が示されている。
【0015】
しかし、給電装置のインバータの電力が、設定されたインバータ上限値を超えると、給電装置はインバータ上限値を超える電力を出力できず、上記自然エネルギーの出力電力と給電装置の出力電力とを加算した電力は、本来出力すべき平滑化された電力から乖離した電力となる。
すなわち、設定されたインバータ出力上下限値の範囲を逸脱した場合のみ、給電装置による自然エネルギーの平滑化性能が劣化するという問題がある。
【0016】
給電装置は、インバータ列またはチョッパ列が停止した場合にも運転を継続する(機能縮退モード)ことによりユニット運用の効率化および稼働率向上を図る。ただし、本給電装置に求められる機能(例えば,自然エネルギーの出力変動平滑化機能など)はできるだけ劣化させないようにする必要がある。
そこで、本発明の実施形態では,下記に示す方法により機能縮退モードを実現する。実施形態について、図2に示すインバータ3列×チョッパ3列の給電システムの例を用いて説明する。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態における給電システム1のブロック構成図である。給電システム1は、給電装置2と、電力制御装置3とを備える。給電システム1は、他の発電装置により発電された発電電力に、給電装置4が充放電する充放電電力を加算することにより平滑化した電力を商用系統に出力する。
【0018】
給電装置4は、インバータ(充放電部)10〜10と、チョッパ20ij(iは1から3までの整数、jは1から3までの整数)と、組電池30ijと、電池制御部40ijと、制御部50〜50と、を備える。
【0019】
i番目のインバータ10(iは1から3までの整数)は、それぞれに接続されたチョッパ20ijから供給された直流電力を交流電力に変換し、商用系統に出力する。ここで、i番目のインバータ10は、チョッパ20ij(jは1から3までの整数)と接続されている。
【0020】
チョッパ20ijは、それぞれが接続されている制御部50の指令に基づいて、電流のON−OFFを繰り返すことによって電池の電圧から、上記指令に基づく電圧を生成する。そして、チョッパ20ijは、制御部50から要求された電力をそれぞれが接続したインバータ10に供給する。
【0021】
具体的には、例えば、チョッパ2011、チョッパ2012、チョッパ2013は、制御部50に接続され、制御部50の指令に基づく電圧を生成することにより、制御部50から要求された電力をインバータ10に供給する。
【0022】
また、チョッパ2021、チョッパ2022またはチョッパ2023は、制御部50に接続され、制御部50の指令に基づいて電圧を生成することにより、制御部50から要求された電力をインバータ10に供給する。
また、チョッパ2031、チョッパ2032またはチョッパ2033は、制御部50に接続され、制御部50の指令に基づいて電圧を生成することにより、制御部50から要求された電力をインバータ10に供給する。
【0023】
組電池30ijは、電池が直列に繋がったものであり、それぞれ接続されているチョッパ20に電力を供給する。
電池制御部40ijは、それぞれが接続されている組電池30ijの電圧を検出し、検出した電圧を示す情報を制御部50に出力するよう制御する。
【0024】
具体的には、電池制御部4011は、組電池3011の電圧を検出し、検出した組電池3011の電圧を示す情報を隣の電池制御部4012に出力する。
電池制御部4012は、組電池3012の電圧を検出し、検出した組電池3012の電圧を示す情報を隣の電池制御部4011から受け取った組電池3011の電圧を示す情報と共に、電池制御部4013に出力する。
電池制御部4013は、組電池3013の電圧を検出し、検出した組電池3013の電圧を示す情報を隣の電池制御部4012から受け取った組電池3011の電圧を示す情報と組電池3012の電圧を示す情報と共に、制御部50に出力する。
【0025】
同様にして、電池制御部4021は、組電池3021の電圧を検出し、検出した組電池3021の電圧を示す情報を隣の電池制御部4022に出力する。
電池制御部4022は、組電池3022の電圧を検出し、検出した組電池3022の電圧を示す情報を隣の電池制御部4021から受け取った組電池3021の電圧を示す情報と共に、電池制御部4023に出力する。
電池制御部4023は、組電池3023の電圧を検出し、検出した組電池3023の電圧を示す情報を隣の電池制御部4022から受け取った組電池3021の電圧を示す情報と組電池3022の電圧を示す情報と共に、制御部50に出力する。
【0026】
同様にして、電池制御部4031は、組電池3031の電圧を検出し、検出した組電池3031の電圧を示す情報を隣の電池制御部4032に出力する。
電池制御部4032は、組電池3032の電圧を検出し、検出した組電池3032の電圧を示す情報を隣の電池制御部4031から受け取った組電池3031の電圧を示す情報と共に、電池制御部4033に出力する。
電池制御部4033は、組電池3033の電圧を検出し、検出した組電池3033の電圧を示す情報を隣の電池制御部4032から受け取った組電池3031の電圧を示す情報と組電池3032の電圧を示す情報と共に、制御部50に出力する。
【0027】
制御部50(iは1から3までの整数)は、電池制御部40i3から入力されたそれぞれの組電池の電圧を示す情報に基づいて、それぞれの組電池に接続されているチョッパを閉じる。具体的には、例えば、制御部50(iは1から3までの整数)は、電池制御部40i3から入力されたそれぞれの組電池の電圧が予め決められた所定の範囲を逸脱する場合、それぞれの組電池に接続されているチョッパの運転を停止させる。一方、制御部50(iは1から3までの整数)は、電池制御部40i3から入力されたそれぞれの組電池の電圧が予め決められた所定の範囲内の場合、それぞれの組電池に接続されているチョッパの運転を継続させる。
【0028】
制御部50(iは1から3までの整数)は、電池制御部40i3から入力されたそれぞれの組電池の電圧を示す情報に基づいて、インバータ10を遮断する。具体的には、例えば、制御部50(iは1から3までの整数)は、電池制御部40i3から入力されたそれぞれの組電池の電圧の全てが、予め決められた所定の範囲を逸脱する場合、インバータ10の運転を停止させる。一方、制御部50(iは1から3までの整数)は、電池制御部40i3から入力されたそれぞれの組電池の電圧のいずれかが、予め決められた所定の範囲内の場合、インバータ10の運転を継続させる。
【0029】
制御部50は、インバータ10を遮断したか否かを示す情報と、各チョッパ201j(jは1から3までの整数)を遮断したか否かを示す情報とを電力制御装置3の後述する統合制御部60に出力する。
同様に、制御部50は、インバータ10を遮断したか否かを示す情報と、各チョッパ202j(jは1から3までの整数)を遮断したか否かを示す情報とを電力制御装置3の後述する統合制御部60に出力する。
同様に、制御部50は、インバータ10を遮断したか否かを示す情報と、各チョッパ203j(jは1から3までの整数)を遮断したか否かを示す情報とを電力制御装置3の後述する統合制御部60に出力する。
【0030】
ここで、インバータを遮断したか否かを示す情報をインバータの運転状態を示す情報と称する。また、チョッパを遮断したか否かを示す情報をチョッパの運転状態を示す情報と称する。
これにより、インバータの運転状態を示す情報、チョッパの運転状態を示す情報および各制御装置が有する情報は、図3に示すように、制御部50(iは1から3までの整数)を通信、デジタル信号、アナログ信号の媒体で接続し、電力制御装置3の後述する統合制御部60に集約される。
【0031】
また、制御部50は、電力制御装置3の後述する統合制御部60のチョッパ出力電力算出部66から入力されたチョッパ20mnの出力電力P(mn)を示す情報に基づいて、その出力電力P(mn)になるように、各チョッパ20mnを制御する。
また、制御部50は、電力制御装置3の後述する統合制御部60のチョッパ出力電力算出部66から入力されたインバータ10(mは正の整数)の出力電力P(m)を示す情報に基づいて、その出力電力P(m)になるように、各インバータ10を制御する。
【0032】
電力制御装置3は、電力検出部4と、統合制御部60とを備える。電力検出部4は、他の発電装置により発電された発電電力を検出する。具体的には、例えば、電力検出部4は、風力発電装置または太陽発電装置により発電された自然エネルギーの出力電力を検出する。電力検出部4は、検出した発電電力を示す情報を統合制御部60の後述する記憶部67に記憶させる。
【0033】
続いて、統合制御部60の処理について説明する。まず、統合制御部60の処理の概要について説明する。統合制御部60は、各インバータ10の運転状態を示す情報と各チョッパ20ij(iは1から3までの整数、jは1から3までの整数)の運転状態を示す情報とに基づいて、運転中の各列の出力分担率が均等になるように、各インバータ10、各チョッパ20ijの出力電圧を算出する。
【0034】
図3は、統合制御部60のブロック構成図である。統合制御部60は、インバータ出力上限値算出部61と、インバータ出力上限値総和算出部62と、平滑化方法選択部(透過帯域変更部)63と、充放電電力算出部64と、記憶部67と、電池電力算出部68とを備える。
電池電力算出部68は、インバータ出力電力算出部65と、チョッパ出力電力算出部(66とを備える。
【0035】
記憶部67には、電力検出部4により検出された発電電力を示す情報が記憶されている。
最初に、各電池を多並列で用いる給電装置の充放電電力を算出する際には、平滑化方法選択部63は、記憶部67から発電電力を示す情報を読み出す。平滑化方法選択部63は、例えば、第1の平滑化方法を選択し、連系点電力算出部64が備える第1の電力算出部70に前記発電電力の変動を抑制するのに必要な前記充放電電力を算出させる。
【0036】
第1の電力算出部70において、第1の電力算出部70の後述するフィルタ部(平滑化電力算出部)は、発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出する。
第1の電力算出部70の後述する減算部(充放電電力算出部)74は、発電電力と前記平滑化した電力の差に基づいて、上記発電電力の変動を抑制するのに必要な充放電電力を算出する。
【0037】
電池電力算出部68は、前記算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、該電池が充放電する電力を算出する。
【0038】
平滑化方法選択部63は、上記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする。これにより電池が充放電する電力が小さくなるほど、所定の周波数より高い周波数で変動する発電電力を平滑化する必要がなくなるので、電池の負担が減り、電池の寿命を延ばすことができる。
【0039】
なお、平滑化方法選択部63は、上記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の下限を高くしてもよい。これにより、電池が充放電する電力が小さいほど、低い周波数で変動する発電電力を平滑化する必要がなくなるので、電池の負担が減り、電池の寿命を延ばすことができる。
【0040】
以下、統合制御部60の各部の処理の詳細について説明する。平滑化方法選択部63は、インバータ出力上限値総和算出部62から入力されたインバータ出力上限値の総和を示す情報に基づいて、平滑化方法を選択する。具体的な方法について、図4を使って説明する。
【0041】
図4は、インバータの出力上限値の総和に応じた平滑化方法の選択の1例について説明するための図である。同図において、インバータ出力上限値の総和がP以上P以下の場合41は、第1の平滑化方法が選択されることが示されている。また、インバータ出力上限値の総和がP以上P未満の場合42は、第2の平滑化方法が選択されることが示されている。インバータ出力上限値の総和がP未満の場合43は、第3の平滑化方法が選択されることが示されている。
【0042】
平滑化方法選択部63は、第1の実施形態で説明したインバータ出力上限値の総和に対して、電力のしきい値PおよびPを予め設定する。
平滑化方法選択部63は、上記パラメータを用いて、平滑化能力が損なわれないように平滑化方法を切り替える。例えば、平滑化方法選択部63は、インバータ出力上限値の総和がP以上の場合は、通常の第1の平滑化方法を選択する。平滑化方法選択部63bは、インバータ出力上限値の総和がP以上P未満の場合は、ユニットの出力を抑えることができる第2の平滑化方法を選択する。平滑化方法選択部63は、インバータ出力上限値の総和がP未満の場合はさらに出力を抑えることができる第3の平滑化方法を選択する。
【0043】
図3に戻って、平滑化方法選択部63は、選択した平滑化方法に基づいて、連系点電力算出部64に連系点電力Pを算出させ、算出された連系点電力Pを示す情報を連系点電力算出部64から取得する。
ここで、連系点電力算出部64は第1の電力算出部70と、第2の電力算出部80と、第3の電力算出部90とを備える。
【0044】
具体的には、例えば、平滑化方法選択部63は、第kの平滑化方法を選択した場合(kは1から3までの整数)、第kの電力算出部に連系点電力Pを算出させ、算出された連系点電力Pを示す情報を第kの電力算出部から取得する。
平滑化方法選択部63は、取得した連系点電力Pを示す情報をインバータ出力電力算出部65に出力する。
【0045】
<連系点電力算出方法について>
続いて、連系点電力算出部64の処理の詳細について説明する。図5は、電力会社が所有する発電設備の系統周波数維持における役割分担が示された図である。同図において、数十秒程度から2分程度の負荷変動用のガバナフリー領域51と、2分程度から20分程度の負荷変動用のLFC(Load Frequency Contorol、負荷周波数制御)領域52と、20分程度異常の負荷変動用のEDC(Economic load Dispatching Control)領域53とが示されている。
【0046】
自然エネルギーに蓄電池を併設した系統平滑化システムへの要求として、2分程度から20分程度の負荷変動用のLFC(負荷周波数制御)領域での出力変動抑制が望まれている。
そこで、連系点電力算出部64における第1の電力算出部70は、インバータ出力上限値の総和がP1以上Pr以下の場合、以下に説明する方法により連系点電力Pの値を算出する。
【0047】
<第1の電力算出部70>
図6は、第1の電力算出部70について説明するための図である。図6(a)は、第1の電力算出部70における系統平滑化用の制御ブロック図の1例である。第1の電力算出部70は、フィルタ部(平滑化電力算出部)71と、減算部(充放電電力算出部)74とを備える。
【0048】
同図において、フィルタ部71は、入力された自然エネルギーの出力電力を示す情報に対して、同図に示された1/(1+Ts)の伝達関数をかけることにより(ここで、時定数Tは20分)、商用系統の連系点に出力したい電力である系統連系点目標電力を示す情報を算出する。この系統連系点目標電力は、20分より遅い変動の電力を示す値である。フィルタ部71は、算出した系統連系点目標電力を示す情報を減算部75に出力する。
【0049】
減算部75は、フィルタ部71から入力された系統連系点目標電力を示す情報から自然エネルギーの出力電力を示す情報を減算することにより、給電装置2が出力すべき充放電電力を示す情報を算出する。減算部75は、算出した充放電電力を示す情報を平滑化方法選択部63に出力する。
【0050】
これにより、充放電電力は、20分よりも短い周期で変動する電力成分にマイナスを乗じたものになるので、給電装置2は、20分よりも早い周期で変動する自然エネルギーの電力変動を抑制することができる。
【0051】
図6(b)は、フィルタ部71の利得と周波数の関係を示した図である。同図において、ローパスフィルタの利得は、周波数が1/(20×60)Hzにおいて、電力の利得が−3[dB]となることが示されている。また、フィルタ部71の利得は、1/(20×60)Hzをカットオフ周波数として、そのカットオフ周波数以上の周波数においては、周波数が大きくなるほど利得が小さくなることが示されている。
【0052】
<第2の電力算出部80>
第1の平滑化方法では、数分以下のガバナフリー領域の出力変動も抑制することが可能であるが、その分、インバータ出力上限値の総和が所定の電力P1以上必要となる。一方、インバータ出力上限値の総和が上記所定の電力P1未満の場合、統合制御部60の平滑化方法選択部63は、数分以下の変動が系統に流入することを許容する第2の平滑化方法を選択する。
【0053】
図7は、第2の電力算出部80について説明するための図である。図7(a)は、第2の電力算出部80における系統平滑化用の制御ブロック図の1例である。
第2の電力算出部80は、フィルタ部(平滑化電力算出部)81と、減算部(充放電電力算出部)84とを備える。
【0054】
図7(b)は、図7(a)に示されたフィルタ部81の利得と周波数の関係を示した図である。同図において、フィルタ部81の利得は、周波数が1/(20×60)Hzと1/(2×60)Hzにおいて、電力の利得が−3dBとなることが示されている。また、フィルタ部81の利得は、1/(20×60)Hzと1/(2×60)Hzとの間の周波数帯域において、抑制されていることが示されている。これにより、フィルタ部81は、1/(20×60)Hzと1/(2×60)Hzの間の周波数帯域の信号を透過させないようにすることができる。
【0055】
フィルタ部81は、電圧検出部4から入力された自然エネルギーの出力電力を示す情報に対して、バンドストップフィルタを掛けることにより、系統連系点目標電力を算出し、算出した系統連系点目標電力を示す情報を減算部85に出力する。フィルタ部81は、ハイパスフィルタ部82と、ローパスフィルタ部83と、加算部84とを備える。
【0056】
ハイパスフィルタ部82は、電圧検出部4から入力された自然エネルギーの出力電力に対して、同図に示されたTs/(1+Ts)の伝達関数で表されるハイパスフィルタをかけ(ここで、時定数Tは2分)、ハイパスフィルタ後の出力電力を示す情報を加算部84に出力する。
【0057】
ローパスフィルタ部83は、電圧検出部4から入力されたハイパスフィルタ後の出力電力に対して、1/(1+Ts)の伝達関数で表されるローパスフィルタをかけ(ここで、時定数Tは20分)、ローパスフィルタ後の出力電力を示す情報を加算部84に出力する。
【0058】
加算部84は、ハイパスフィルタ部82から入力されたハイパスフィルタ後の出力電力とローパスフィルタ部83から入力されたローパスフィルタ後の出力電力とを加算し、加算後の電圧を系統連系点目標電力として、その系統連系点目標電力を示す情報を減算部85に出力する。
【0059】
減算部85は、加算部84から入力された系統連系点目標電力から電圧検出部4から入力された自然エネルギー出力電力を減算することにより、充放電電力を算出し、充放電電力を示す情報を平滑化方法選択部63に出力する。
【0060】
これにより、第2の電力算出部80から出力される充放電電力は、2分から20分の範囲の周期で変動する電力成分にマイナスを乗じたものになるので、電力制御装置3は、2分から20分の範囲の周期で変動する電力変動を抑制するよう制御することができる。
【0061】
<第3の電力算出部90>
第2の平滑化方法では、上記に示したように、時定数Tを20分、時定数Tを2分と設定することにより、LFC領域に限定した対応が可能となり、ガバナフリー領域に対応しない分、給電装置2の出力電力を低くすることができた。
【0062】
更に、出力低減が要求される第3の平滑化方法では、第1の電力算出部70のフィルタ部71における時定数Tを20分以下の所定の値(ここでは、1例として10分)に設定する。これによって、電力制御装置3は、第1の平滑化方法と比べて、更に10分から20分の間の周期で変動する電力を抑制する必要がなくなるので、電池の負担を更に軽減することができる。その結果、電力制御装置3は、電池の寿命を延ばすことができる
【0063】
図8は、第3の電力算出部90について説明するための図である。図8(a)は、第3の電力算出部90における系統平滑化用の制御ブロック図の1例である。第3の電力算出部90は、第1の電力算出部70と同様に、フィルタ部(平滑化電力算出部)91と、減算部(充放電電力算出部)94とを備える。
【0064】
図8(b)は、図8(a)に示されたフィルタ部91の利得と周波数の関係を示した図である。同図において、フィルタの利得は、周波数が1/(10×60)Hzにおいて、電力の利得が−3[dB]となることが示されている。また、フィルタ部91の利得は、1/(10×60)Hzをカットオフ周波数として、そのカットオフ周波数以上の周波数においては、周波数が大きくなるほど利得が小さくなることが示されている。これにより、フィルタ部91は、1/(10×60)Hz以上の周波数帯域の信号を透過させないようにすることができる。
【0065】
フィルタ部91は、入力された自然エネルギー出力電力を示す情報に対して、1/(1+Ts)の伝達関数をかけることにより(ここで、時定数Tは10分)、商用系統の連系点に出力したい電力である系統連系点目標電力を示す情報を算出する。この系統連系点目標電力は、10分より遅い変動の電力を示す値である。フィルタ部91は、算出した系統連系点目標電力を示す情報を減算部95に出力する。
【0066】
減算部95は、フィルタ部91から入力された系統連系点目標電力から自然エネルギー出力電力を減算することにより、給電装置2が出力すべき充放電電力を示す情報を算出する。減算部75は、算出した充放電電力を示す情報を平滑化方法選択部63に出力する。
【0067】
これにより、充放電電力は、10分よりも短い周期で変動する電力成分にマイナスを乗じたものになるので、電力制御装置3は、10分よりも短い周期で変動する自然エネルギーの電力変動を抑制するよう制御することができる。
【0068】
<第3の電力算出部90におけるフィルタ部91の第1の変形例>
第3の電力算出部90におけるフィルタ部91は、図8で示されたものに限定されず、以下のようなものでもよい。
図9は、第3の電力算出部90のフィルタ部91の変形例であるフィルタ部91bについて説明するための図である。フィルタ部91bは、10分から20分の範囲の周期で変動する電力を抑制する。図9(a)は、第3の電力算出部90におけるフィルタ部91の第1の変形例のフィルタ部91bである。
【0069】
図9(b)は、図9(a)に示されたフィルタ部91bの利得と周波数の関係を示した図である。同図において、フィルタ部91bの利得は、周波数が1/(20×60)Hzと1/(10×60)Hzとにおいて、電力の利得が−3dBとなることが示されている。また、フィルタ部91bの利得は、1/(20×60)Hzと1/(10×60)Hzとの間の周波数帯域において、抑制されていることが示されている。これにより、フィルタ部91bは、1/(20×60)Hzと1/(10×60)Hzの間の周波数帯域の信号を透過させないようにすることができる。
【0070】
フィルタ部91bは、ハイパスフィルタ部92bと、ローパスフィルタ部93bと、加算部94bとを備える。
【0071】
フィルタ部91bは、電力検出部4から入力された自然エネルギー出力電力に対して、バンドストップフィルタを掛けることにより、系統連系点目標電力を算出し、算出した系統連系点目標電力を示す情報を減算部95に出力する。
【0072】
ハイパスフィルタ部92bは、電力検出部4から入力された自然エネルギーの出力電力に対して、Ts/(1+Ts)の伝達関数で表されるハイパスフィルタをかけ(ここで、時定数Tは10分)、ハイパスフィルタ後の出力電力を示す情報を加算部94bへ出力する。
【0073】
ローパスフィルタ部93bは、電力検出部4から入力されたハイパスフィルタ後の出力電力を示す情報に対して、1/(1+Ts)の伝達関数で表されるローパスフィルタをかけ(ここで、時定数Tは20[分])、ローパスフィルタ後の出力電力を示す情報を加算部94bへ出力する。
【0074】
加算部94bは、ハイパスフィルタ部92bから入力されたハイパスフィルタ後の出力電力とローパスフィルタ部93bから入力されたローパスフィルタ後の出力電力とを加算し、加算後の電圧を系統連系点目標電力として、その系統連系点目標電力を示す情報を減算部95に出力する。
【0075】
これにより、第3の電力算出部90から出力される充放電電力は、10分から20分の範囲の周期で変動する電力成分にマイナスを乗じたものになるので、電力制御装置3は、10分から20分の範囲の周期で変動する電力変動を抑制するよう制御することができる。これにより、第3の電力算出部90は、第2の電力算出部80に比べて、2分から10分までの周期で変動する自然エネルギーの出力電力を抑制する必要がなくなるので、電池の負担を更に軽減することができ、その結果、電池の寿命を延ばすことができる。
【0076】
<第3の電力算出部90におけるフィルタ部91の第2の変形例>
続いて、第3の電力算出部90におけるフィルタ部91の第2の変形例であるフィルタ部91cについて説明する。フィルタ部91cは、5分から10分の範囲の周期で変動する電力を抑制する。図9(c)は、第3の電力算出部90におけるフィルタ部91の第2の変形例のフィルタ部91cである。フィルタ部91cは、ハイパスフィルタ部92cと、ローパスフィルタ部93cとを備える。
【0077】
図9(d)は、図9(c)に示されたフィルタ部91cの利得と周波数の関係を示した図である。同図において、フィルタ部91cの利得は、周波数が1/(10×60)Hzと1/(5×60)Hzとにおいて、電力の利得が−3dBとなることが示されている。また、フィルタ部91cの利得は、1/(10×60)Hzと1/(5×60)Hzとの間の周波数帯域において、抑制されていることが示されている。これにより、フィルタ部91xは、1/(10×60)Hzと1/(5×60)Hzの間の周波数帯域の信号を透過させないようにすることができる。
【0078】
フィルタ部91cは、電力検出部4から入力された自然エネルギーの出力電力を示す情報に対して、バンドストップフィルタを掛けることにより、系統連系点目標電力を算出し、算出した系統連系点目標電力を示す情報を減算部95に出力する。
フィルタ部91cは、ハイパスフィルタ部92cと、ローパスフィルタ部93cと、加算部94cとを備える。
【0079】
ハイパスフィルタ部92cは、電力検出部4から入力された自然エネルギーの出力電力に対して、Ts/(1+Ts)の伝達関数で表されるハイパスフィルタをかけ(ここで、時定数Tは5分)、ハイパスフィルタ後の出力電力を示す情報を加算部94cに出力する。
【0080】
ローパスフィルタ部93cは、電力検出部4から入力されたハイパスフィルタ後の出力電力に対して、1/(1+Ts)の伝達関数で表されるローパスフィルタをかけ(ここで、時定数Tは10分)、ローパスフィルタ後の出力電力を示す情報を加算部94cへ出力する。
【0081】
加算部94cは、ハイパスフィルタ部92cから入力されたハイパスフィルタ後の出力電力とローパスフィルタ部93cから入力されたローパスフィルタ後の出力電力とを加算し、加算後の電圧を系統連系点目標電力として、その系統連系点目標電力を示す情報を減算部95に出力する。
【0082】
これにより、第3の電力算出部90から出力される充放電電力は、5分から10分の範囲の周期で変動する電力成分にマイナスを乗じたものになるので、電力制御装置3は、5分から10分の範囲の周期で変動する電力変動を抑制するよう制御することができる。これにより、第3の電力算出部90は、第2の電力算出部80に比べて、2分から5分までの周期で変動する自然エネルギーの出力電力と、10分から20分までの周期で変動する自然エネルギーの出力電力とを抑制する必要がなくなるので、電池の負担を更に軽減することができ、その結果、電池の寿命を延ばすことができる。
【0083】
<インバータ・チョッパの出力分担>
続いて、インバータ・チョッパの出力分担について説明する。給電装置4の組電池のうち少なくともいずれか1つに異常が発生した場合、各制御部50(iは1から3までの整数)は、異常が発生した組電池を切り離してユニット運転を継続する。
それとともに、統合制御部60は、運転中の各組電池の出力分担率が均等になるように、各インバータの出力電力の値およびチョッパの出力電力の値を決定する。
【0084】
インバータ出力電力算出部65は、平滑化方法選択部63から入力された連系点電力Pの値と、制御部50から入力されたチョッパの運転状態を示す情報(有効または無効)およびインバータの運転状態(有効または無効)を示す情報と、インバータ10に接続されているj番目のチョッパ20ijの定格出力電力P(ij)の値と、に基づいて、インバータ10(mは正の整数)の出力電力P(m)を算出する。
具体的には、例えば、インバータ出力電力算出部65は、下記の式に従って、インバータ10(mは正の整数)の出力電力P(m)を算出する。
【0085】
【数1】

【0086】
ここで、チョッパ有効(j)は、インバータ10に接続されているj番目のチョッパ20mjが運転可能であれば1であり、運転不能であれば0である。また、インバータ有効(m)は、インバータ10が運転可能であれば1であり、運転不能であれば0である。
インバータ出力電力算出部65は、算出したインバータ10(mは正の整数)の出力電力P(m)の値を示す情報をチョッパ出力電力算出部66に出力する。
【0087】
チョッパ出力電力算出部66は、インバータ出力電力算出部65により算出されたインバータの出力電力P(m)の値と、インバータ10に接続されているn番目(nは正の整数)のチョッパ20mnの定格出力電力P(mn)の値と、チョッパの運転状態(有効または無効)を示す情報と、10のインバータに接続されているj番目のチョッパ20mjの定格出力電力P(mj)の値とに基づいて、チョッパ20mnの出力電力P(mn)の値を算出する。
具体的には、チョッパ出力電力算出部66は、下記の式に従って、チョッパ20mnの出力電力P(mn)の値を算出する。
【0088】
【数2】

【0089】
チョッパ出力電力算出部66は、算出したチョッパ20mnの出力電力P(mn)の値を示す情報を、インバータ10(mは正の整数)の出力電力P(m)の値を示す情報とともに、制御部50に出力する。
【0090】
<インバータ出力上限値>
異常が発生した列を切り離して給電装置2が運転を継続する場合、給電装置2が最大で発揮できる供給電力は制限されることとなる。そのため、上述した負荷分担だけではインバータが過負荷となり,給電装置2が非常停止する恐れがある。
【0091】
そこで、インバータ出力上限値算出部61は、制御部50から入力されたチョッパの運転状態(有効/無効)を示す情報と、インバータ10に接続されている各チョッパ20mjの定格出力電力P(mj)の値と、インバータ10の定格出力電力P(m)の値とに基づいて、インバータ10(mは1から3までの整数)のインバータ上限値Pmax(m)を算出する。具体的には、インバータ出力上限値算出部61は、インバータ出力指令の上限値を下記の式に従って設定する。また、インバータ出力上限値算出部61は、インバータ下限値を、インバータ上限値の符号を反転させたものに設定する。
【0092】
【数3】

【0093】
インバータ出力上限値算出部61は、算出したインバータ出力上限値を示す情報とインバータ出力下限値を示す情報をインバータ出力電力算出部65に出力する。
【0094】
インバータ出力電力算出部65は、インバータ出力上限値算出部61から入力されたインバータ出力上限値とインバータ出力下限値との間で、インバータ出力電力を算出する。
【0095】
<本実施形態の変形例>
なお、本実施形態における統合制御部60の平滑化方法選択部(抑制周波数設定部)63は、インバータ出力電力上限値の総和に基づいて、自然現象を利用して発電された自然エネルギーの出力電力を抑制する対象である周波数帯域を変更したが、これに限ったものではない。
【0096】
本実施形態の変形例では、チョッパ出力電力算出部66が、各組電池30ijが分担する電力の値を算出することに着目する。
まず、記憶部67に、チョッパ出力電力算出部66により最初に算出された各電池が充放電する電力の値を示す情報が記憶されていることとする。
平滑化方法選択部63は、記憶部67から各電池が充放電する電力の値を示す情報を読み出す。チョッパ出力電力算出部66により算出された各電池が充放電する電力に応じて、自然現象を利用して発電された自然エネルギーの出力電力の変動を抑制する対象である周波数帯域を設定し、連系点電力算出部64は、設定した周波数帯域で自然エネルギーの出力電力の変動を抑制する連系点電力の値を算出してもよい。
これにより、統合制御部60は、各電池の負担を軽減することができ、各電池の寿命を延ばすことができる。
【0097】
また、平滑化方法選択部63は、各電池の出力電力が第1の閾値電力よりも低い場合、変動を抑制する対象である周波数帯域を所定の周波数より高い周波数帯域を設定してもよい。これにより、統合制御部60は、所定の時間よりも短い周期で変動する自然エネルギーの電力変動を抑制することができ、その結果、各電池の負担を軽減することができるので、各電池の寿命を延ばすことができる。
【0098】
また、平滑化方法選択部63は、前記各電池が分担する電力が第2の閾値電力よりも低い場合、変動を抑制する対象である周波数帯域を所定の範囲の周波数帯域を設定してもよい。これにより、統合制御部60は、所定の時間範囲の周期で変動する自然エネルギーの電力変動を抑制することができ、その結果、各電池の負担を軽減することができるので、各電池の寿命を延ばすことができる。
【0099】
<チョッパの出力電力の分担例>
図10は、通常運転時におけるインバータの出力電力とチョッパの出力電力との分担の1例が示された図である。通常運転時は30kW/チョッパで均等に運転することにより、給電装置2は商用系統に系統連系点の電力Pとして270kWを供給する。
【0100】
図11は、図10に示された組電池の出力電力の分担例において、1つの組電池に異常が発生した場合におけるインバータの出力電圧とチョッパの出力電圧との分担の1例が示された図である。異常が発生した組電池が接続されたチョッパを除いて、各チョッパ30ijは、33.75kW/チョッパで均等に運転することにより、給電装置2は商用系統に供給する系統連系点の電力Pgを270kWに維持する。
【0101】
図12は、電力制御装置3の処理の流れを示したフローチャートである。
まず、電力検出部4は、他の発電装置により発電された発電電力を検出する(ステップS101)。
次に、平滑化電力算出部(フィルタ部71、フィルタ部81またはフィルタ部91)は、前記検出された発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出する(ステップS102)。
【0102】
次に、充放電電力算出部(減算部75、減算部85または減算部95)は、前記発電電力と前記平滑化した電力の差に基づいて、前記発電電力の変動を抑制するのに必要な前記充放電電力を算出する(ステップS103)。次に、電池電力算出部68は、前記算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、各組電池30ijが充放電する電力を算出する(ステップS104)。
【0103】
次に、平滑化方法選択部(透過帯域変更部)63は、前記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする(ステップS105)。次に、統合制御部60は、発電電力の平滑化を終了するか否か判定する(ステップS106)。統合制御部60は、発電電力の平滑化を終了しない場合(ステップS106 NO)、ステップS102の処理に戻る。一方、統合制御部60は、発電電力の平滑化を終了する場合(ステップS106 YES)、その処理を終了する。以上で、本フォローチャートの処理を終了する。
【0104】
以上、本実施形態における電力制御装置3は、給電装置2における多並列の組電池のうちの少なくともいずれか1つの組電池に異常が発生しても運転を継続するよう制御することが可能となる。また、本実施形態における電力制御装置3は、出力分担を適切に行うことにより、給電装置2が効率的な運転を行うよう制御することができる。
また、電力制御装置3は、設定されたインバータ出力上下限値の範囲を超えても、平滑化性能は劣化させないように制御することができる。
【0105】
なお、本実施形態では、統合制御部60がインバータ出力電力の上限値の総和に基づいて、3つの平滑化方法を切り替えることとしたが、これに限らず、統合制御部60が2つの平滑化方法を切り替えてもよいし、4つ以上の平滑化方法を切り替えてもよい。
さらに、統合制御部60は、インバータ出力電力の上限値の総和に基づいて、平滑化方法を切り替えるのではなく、インバータ出力電力の上限値の総和に基づいて、抑制する対象である周波数帯域を無段階に変更してもよい。
【0106】
なお、本発明の実施形態における電力制御装置3は、異常時のみならず、通常運転時においても、風力発電または太陽電池の一次発電の給電負荷変動により急な充放電を行う場合に、各電池が負担する電力またはインバータ出力電力上限値に基づいて、自然エネルギーの出力電力を抑制する対象である周波数帯域を変更し、変更した周波数帯域で自然エネルギーの出力電力を平滑化するよう制御してもよい。
【0107】
これにより、電力制御装置3は、各組電池30ijにかかる負担を軽減するように制御することができるので、各組電池30ijの寿命を延ばすことができる。すなわち、電力制御装置3は、急な充放電を行うことによる電池(例えば、リチウム電池)の短寿命化という問題を解決することができる。
【0108】
また、本発明の実施形態における電力制御装置3は、組電池30ijのいずれかを交換する際に、交換する組電池30ijに接続されているチョッパが出力を切断した場合に、各電池が負担する電力またはインバータ出力電力上限値に基づいて、自然エネルギーの出力電力を抑制する対象である周波数帯域を変更し、変更した周波数帯域で自然エネルギーの出力電力を平滑化するよう制御してもよい。
これにより、電力制御装置3は、各組電池30ijにかかる負担を軽減するように制御することができるので、各組電池30ijの寿命を延ばすことができる。
【0109】
また、本発明の実施形態における電力制御装置3は、商用系統が要求する電力が高い場合に、各電池が負担する電力またはインバータ出力電力上限値に基づいて、自然エネルギーの出力電力を抑制する対象である周波数帯域を変更し、変更した周波数帯域で自然エネルギーの出力電力を平滑化するよう制御してもよい。
これにより、電力制御装置3は、各組電池30ijにかかる負担を軽減することができるので、各組電池30ijの寿命を延ばすことができる。
【0110】
また、本発明の実施形態におけるフィルタ部71またはフィルタ部91は、自然エネルギーの出力電力を示す情報に対して、時定数Tで表される一次遅れフィルタをかけたが、これに限らず、自然エネルギーの出力電力を示す情報に対して、移動平均フィルタをかけてもよい。
【0111】
また、本発明の実施形態である統合制御部60の機能またはその機能の一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定期間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のコンピュータプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0112】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1 給電システム
2 給電装置
3 電力制御装置
4 電力検出部
10〜10 インバータ
2011〜2033 チョッパ
3011〜3033 組電池
4011〜4033 電池制御部
50〜50 制御部
60 統合制御部
61 インバータ出力上限値算出部
62 インバータ出力上限値総和算出部
63 平滑化方法選択部(透過帯域変更部)
64 連系点電力算出部
65 インバータ出力電力算出部
66 チョッパ出力電力算出部
67 記憶部
68 電池電力算出部
71、81、91 フィルタ部(平滑化電力算出部)
75、85、95 減算部(充放電電力算出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各電池を多並列で用いる給電装置の充放電電力を制御する電力制御装置であって、
他の発電装置により発電された発電電力を検出する電力検出部と、
前記検出された発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出する平滑化電力算出部と、
前記発電電力と前記平滑化した電力の差に基づいて、前記発電電力の変動を抑制するのに必要な前記充放電電力を算出する充放電電力算出部と、
前記算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、該電池が充放電する電力を算出する電池電力算出部と、
前記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする透過帯域変更部と、
を備えることを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
電池電力算出部は、前記充放電電力算出部により算出された前記充放電電力と、前記チョッパの運転状態を示す情報と、前記インバータの運転状態を示す情報とに基づいて、前記各インバータの定格出力電力に対する当該インバータの出力電力の値の比が、運転が正常に継続中のインバータ間で一定となるように前記各インバータの出力電力を算出するインバータ出力電力算出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
電池電力算出部は、前記インバータ出力電力算出部により算出された前記インバータの出力電力の値のうち、出力電力を算出しようとする前記チョッパに接続されているインバータの出力電力の値と、該インバータに接続されている前記チョッパの運転状態を示す情報と、該インバータに接続されている前記チョッパの定格出力電力の値とに基づいて、前記各チョッパの定格出力電力に対する当該チョッパの出力電力の比が、運転が正常に継続中のチョッパ間で一定となるように前記各チョッパの出力電力を算出するチョッパ出力電力算出部を備えることを特徴とする請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記給電装置が備えるチョッパの運転状態を示す情報と、前記給電装置が備える充放電部に接続されている各チョッパの定格出力電力と、前記インバータの定格出力電力に基づいて、運転が正常に継続中のチョッパの定格出力電力の前記各インバータの出力電力の上限値を算出するインバータ出力上限値算出部と、
前記算出された各インバータの出力電力の上限値の総和を算出するインバータ出力上限値総和算出部と、
を備え、
前記平滑化電力算出部は、前記総和が小さくなるほど、前記所定の透過帯域の上限を低くすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記透過帯域変更部は、前記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の下限を高くすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
各電池を多並列で用いる給電装置の充放電電力を制御する電力制御装置が実行する電力算出方法であって、
他の発電装置により発電された発電電力を検出する電力検出手順と、
前記検出された発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出する平滑化電力算出手順と、
前記発電電力と前記平滑化した電力の差に基づいて、前記発電電力の変動を抑制するのに必要な前記充放電電力を算出する充放電電力算出手順と、
前記算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、該電池が充放電する電力を算出する電池電力算出手順と、
前記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする透過帯域変更手順と、
を有することを特徴とする電力算出方法。
【請求項7】
他の発電装置により発電された発電電力を示す情報が記憶されている記憶部を備え、各電池を多並列で用いる給電装置の充放電電力を制御する電力制御装置のコンピュータに、
前記発電電力を示す情報を前記記憶部から読み出す読出しステップと、
前記検出された発電電力を所定の透過帯域のフィルタにより平滑化した電力を算出する平滑化電力算出ステップと、
前記発電電力と前記平滑化した電力の差に基づいて、前記発電電力の変動を抑制するのに必要な前記充放電電力を算出する充放電電力算出ステップと、
前記算出された充放電電力と、正常に動作している電池の数とに基づいて、該電池が充放電する電力を算出する電池電力算出ステップと、
前記電池が充放電する電力が小さいほど、前記所定の透過帯域の上限を低くする透過帯域変更ステップと、
を実行させるための電力算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−139035(P2012−139035A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289733(P2010−289733)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「系統連系円滑化蓄電システム技術開発/実用化技術開発/リチウム二次電池による系統連系円滑化蓄電システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】