説明

電力合成方法、電力分配方法、電力合成分配器及び無線通信装置

【課題】電力合成器として用いるとき、設計された合成数よりも少ない任意の数の入力信号が、入力されても出力の損失を低減し、また、電力分配器として用いるときに、設計された分配数よりも少ない任意の数の出力信号を出力しても、出力する電力の損失を低減できるようにした。
【解決手段】一又は二以上の方向性結合器H1を備える電力合成分配器に対し、所定の伝送線路50を、方向性結合器H1の二つの入力端子21,22及び二つの出力端子31,32のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組(22−32)に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、VHF帯域やUHF帯域におけるテレビジョン送信機やFM送信機などの無線通信装置に用いられる高周波信号の電力合成方法、電力分配方法、電力合成分配器及びこの電力合成分配器を使用した無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、VHF帯域やUHF帯域におけるテレビジョン送信機や、FM送信機などにおいては、高周波信号の電力を合成又は分配する電力合成分配器が用いられる。
また、このような電力合成分配器においては、カップラ合成やウィルキンソン型合成回路の場合はアンバランス電力、トランスフォーマー型合成回路が用いられる。
【0003】
このような電力合成分配器としては、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。
この電力合成分配器は、電力合成器として用いられるときは、例えば、複数の電力増幅器から出力される信号がそれぞれ入力され、これらの電力を合成して出力する。
また、電力合成分配器は、入力された信号源の電力を分配して出力することもできる。
また、特許文献1記載の電力合成分配器には、方向性結合器が備えられている。
方向性分配器は、例えば、特許文献2及び特許文献3にその使用方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平06−006116号公報
【特許文献2】実開平02−043001号公報
【特許文献3】特開平08−222904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような電力合成分配器は、電力合成器として用いられるとき、設計された合成数よりも少ない任意の数の入力信号が入力されると、不平衡電力が生じ、出力が大幅に低下してしまうという問題があった。
一般に、電力合成器の合成出力Ptは、設計上の合成数をn、単体出力をPとし、電力合成器に実際に入力される電力の数をmとすると、下記式(2)のように表される。
Pt=P・(n−m)^2/n ・・・(2)
すなわち、例えば、複数台の並列運転している電力増幅器の各出力を電力合成器で合成している状態において、何れかのPAが故障して出力が0となってしまった場合、トータルの合成出力が大幅に低減してしまう。
そのため、電力の出力が効率的に行なうことができないという問題があった。
【0006】
また、電力合成分配器は、電力分配器として用いられるときに、設計された分配数よりも少ない任意の数の出力信号を出力しようとすると、電力の損失が生じてしまっていた。
そのため、電力の出力が効率的に行なうことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、方向性結合器を用いて電力を合成し、又は分配する場合、設計された合成又は分配数よりも少ない任意の数の信号が入力又は出力されても、電力の損失が生じないようにして、電力の出力を効率的に行なわせる電力合成方法、電力分配方法、電力合成分配器及び無線通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電力合成方法は、一又は二以上の方向性結合器を用いて電力を合成する電力合成方法であって、前記方向性結合器の入力端子及び出力端子のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組の既存の接続を切断する接続切断ステップと、前記入力端子及び出力端子の組に、所定の伝送線路を接続する伝送線路接続ステップとを含む構成としている。
【0009】
また、本発明の電力分配方法は、一又は二以上の方向性結合器を用いて電力を分配する電力分配方法であって、前記方向性結合器の入力端子及び出力端子のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組の既存の接続を切断する接続切断ステップと、前記入力端子及び出力端子の組に、所定の伝送線路を接続する伝送線路接続ステップとを含む構成としている。
【0010】
また、本発明の電力分配合成器は一又は二以上方向性結合器を備える電力合成分配器であって、前記方向性結合器の入力端子及び出力端子のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組の既存の接続を切断するとともに、該既存の接続が切断された前記入力端子及び出力端子の組に、所定の伝送線路を接続する伝送線路接続手段を備えている。
【0011】
また、本発明の無線通信装置は、電力を合成する電力合成器を備える無線通信装置であって、前記電力合成器が、上記電力合成分配器である構成としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電力合成方法、電力分配方法、電力合成分配器及び無線通信装置によれば、方向性結合器を用いて電力を合成し、又は分配する場合、設計された合成又は分配数よりも少ない任意の数の信号が入力又は出力されても、電力の損失が生じないようにできるので、電力の出力を効率的に行なわせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電力合成方法、電力分配方法、電力合成分配器、及び、無線通信装置の好ましい実施形態について説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器を用いた電力合成方法について説明する。
図1には、本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置の等価回路図を示している。
この無線通信装置は、例えば、VHF帯域やUHF帯域におけるテレビジョン送信機やFM送信機などとして用いられる。
【0014】
図1に示すように、この無線通信装置は、複数の電力増幅器11,12と、出力用のアンテナAと、電力増幅器11,12及びアンテナA間に介装され電力増幅器11,12からの電力を合成してアンテナAに出力する電力合成分配器と、を備えている。
電力増幅器11,12は、所定の高周波信号を、所定電力Pに増幅して出力する。
出力用のアンテナAは、電力合成分配器からの電力を受けて所定の電波を発生する。
【0015】
電力合成分配器は、一つの方向性結合器H1を備えている。
図2には、一般的な方向性結合器を示している。
同図に示すように、方向性結合器Hは、四つの端子a,b,c,dを備えている。
この方向性結合器Hは、端子aから端子cまでの経路及び端子bから端子cまでの経路は、直流的な接続となっている。
この方向性結合器Hにおいて、例えば、端子aに入力された電力は、端子c,dの双方に電力が分配されて出力される。
また、端子aから端子c,dへの出力は、端子cを基準(0°)とすると、端子dには、−90°位相がずれて出力される。
【0016】
また、端子bに入力された電力は、端子c,dの双方に電力が分配されて出力される。
また、端子bから端子c,dへの出力は、端子dを基準(0°)とすると、端子cには、−90°位相がずれて出力される。
方向性結合器Hは、左右対称になっており、端子a及び端子bと同様に、端子cから入力された電力は、端子a及び端子bに出力され、また、端子dから入力された電力も、端子a及び端子bに出力される。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の方向性結合器H1には、その結合度が、例えば、3.01dBのものが用いられる。
この方向性結合器H1は、端子aが第一の入力側ポート21として、端子bが第二の入力側ポート22として、端子cが第一の出力側ポート31として、端子dが、第二の出力側ポート32としてそれぞれ機能する。
【0018】
第一の入力側ポート21には、第二の電力増幅器12が、第二の入力側ポート22には、第二の電力増幅器12がそれぞれ接続されている。
第一の出力側ポート31には、出力用アンテナAが接続されている。
第二の出力側ポート32には、ダミーロードDLが接続されている。
ダミーロードDLは、高周波エネルギーを電波にすることなく熱に変換するものである。
【0019】
このような構成からなる無線通信装置を用いるときは、第一及び第二の電力増幅器11,12で増幅された電力信号を、電力合成分配器である方向性結合器H1に入力する(図1(a))。
このようにすると、電力合成分配器が、第一の及び第二の入力側ポート21,22に入力された電力を合成し、第一の出力側ポート31から出力することができる。
そのため、第一の出力側ポート31から出力される電力は、2・Pとなる。
【0020】
次に、電力増幅器11,12のいずれか一方(図1(a)では電力増幅器12)が故障した場合について説明する。
この場合、電力合成分配器の合成出力Ptは、設計上の合成数が2、単体出力がP、電力合成分配器に実際に入力される電力の数が1であることから、上記式(2)により、第一の出力側ポート31及び第二の出力側ポート32に出力される電力は、P/2となる。
【0021】
この場合、無線通信装置の管理者は、無線通信装置を以下のようにして用いる。
無線通信装置の管理者は、方向性結合器H1の第二の入力側ポート22から第二の電力増幅器12を取り外す。また、第二の出力側ポート34からダミーロードDLを取り外す。
【0022】
また、管理者は、電力増幅器11から出力される高周波電力の周波数に応じた線路長lの伝送線路50を選択する。
ここで、伝送線路50の選択方法として、例えば、各伝送線路51が備える機械式、線路切替式の位相器を操作して線路長を変更したり、線路長lの異なる複数の伝送線路50を予め用意しておき、これらのうちいずれかの伝送線路50を選択することにより行なう。
この際、伝送線路50として、第一の入力側ポート21に入力される高周波電力の波長λと、伝送線路50の線路長lの関係が下記式(1)の関係となるものが選択される。
路線長l=λ/2+λ×n ・・・式(1)
なお、上記式(1)において、nは整数である。
【0023】
次に、管理者は、選択した伝送線路50を、方向性結合器H1の二つの入力端子a,bと二つの出力端子c,dのうち、直流的に接続されていない入力端子a,bと出力端子c,dの組に接続する(図1(a)及び図2参照)。
ここでは、第二の電力増幅器12が故障しているので、第二の入力側ポート22と、これに直接的に接続されていない第二の出力側ポート32とを、伝送線路50を用いて接続する。
【0024】
このようにすると、方向性結合器H1の端子a−端子c(第一の入力側ポート21−第一の出力側ポート31)のルートの位相が基準(0°)とすると、端子a(第一の入力側ポート21)から伝送線路50を介して端子b(第二の入力側ポート22)に至った信号の位相差は−270°−360°×nとなる(図2及び3参照)。
そのため、再度方向性結合器H1の第一の入力側ポート21に入力される信号と、第二の入力側ポート22に入力される信号との位相差が90°+360°×nとなる。
すなわち、第一の入力側ポート21から第一の出力側ポート31に至る信号及び第二の入力側ポート22から第一の出力側ポート31に至る信号の位相差が、合うようになるので、これらの信号の電力を効率よく合成させることができる。
そのため、第一の出力側ポート31からは、電力Pの信号が出力される。
【0025】
これにより、方向性結合器H1が、第二の出力側ポート34のダミーロードで失われていた信号の電力を、第一の入力側ポート21から第一の出力側ポート31に至る信号の電力に合成して、第一の出力側ポート31から出力させることができ、第一の入力側ポート21−第一の出力側ポート31間の通過損失を低減することができる。
その後、管理者が、電力増幅器11が交換されたりして復旧したならば、配線を元の状態に戻す。
【0026】
次に、本実施形態に係る電力合成分配器のシミュレーションを説明する。
このシミュレーションは、方向性結合器H1として、理想λ/4方向性結合器を用いた。
また、伝送線路50は、方向性結合器H1に入力される高周波電力の周波数f=666MHzとしたときの波長λ(1/f)としたとき、2端子間が線路長l=λ/2、3・λ/2、5・λ/2となるようにした。
【0027】
図4には、この伝送線路の損失を示している。
なお、本シミュレーションにおいては、伝送線路50は、同軸ケーブルで構成され、絶縁部の比誘電率εr=1、内導体の外形φ1=1mm、外導体の内径φ2=2.3mm、特性インピーダンスZ=50Ωとした。また、内導体及び外導体は、ともにCuであることとした。
【0028】
図5には、方向性結合器の結合度が3dBの場合において、電力合成分配器の第一の入力側ポート21−第一の出力側ポート31間の通過特性を示している。
図6には、方向性結合器の結合度が10dBの場合において、電力合成分配器の第一の入力側ポート21−第一の出力側ポート31間の通過特性を示している。
図7には、伝送線路を第二の入力側ポートと22−第二の出力側ポート32とに接続しない状態で、第一の入力側ポート21−第一の出力側ポート31間の通過特性を示している。
【0029】
図5及び図6に示すように、電力合成分配器は、周波数666Hz前後において、ほとんど損失がないことから、第一の入力側ポート21に入力する高周波電力の周波数に対応する波長λに対し、λ/2+λ×n(nは整数)を選択することにより、低損失の通過特性を得ることができる。
一方、図7に示すように、伝送線路50を接続しない状態では、通過特性が、非常に悪くなってしまう。
【0030】
伝送線路50の長さが長くなると、低損失な通過特性が得られる帯域が狭くなる。
また、結合度が小さくなると、伝送線路50を通過する信号比が多くなるので、伝送線路のロスの影響を受けやすくなり、最良点での通過ロスが増える。
また、方向性結合器H1は、その結合度が小さくなればなるほど伝送線路50の長さによる影響は受けにくくなり、帯域を広くすることができる。
なお、結合度3dB、10dBの方向性結合器について述べたが、任意の結合度についても同様の低損失な通過特性を得ることができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る電力合成方法によれば、二つの合成数の電力合成分配器を電力合成器として用いたときに、例えば、電力合成分配器に入力する入力増幅器が故障するなどし、一つの入力信号を入力した場合であっても、出力の低下を低減することができる。
そのため、電力合成分配器に、電力を効率的に出力させることができる。
【0032】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る電力合成分配器を用いた電力合成方法について説明する。
図8には、本実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線送信装置の等価回路図を示している。
図8(a)に示すように、本実施形態に係る電力合成分配器は、三電力の合成を行なうことができる点で、上記第一実施形態のものと異なる。
【0033】
この電力合成分配器は、結合度が3.01dBの第一の方向性結合器H1と、結合度が4.77dBの第二の方向性結合器H2とを備えている。
第一及び第二の方向性結合器H1,H2は、上記第一実施形態と同様の構成であり(図2参照)、縦続接続されている。
ここでいう縦続接続は、図2に示すように、上位の方向性結合器(第一の方向性結合器H1)の出力側の二つの端子c,dのうち、一方の端子(端子c)に、下位の方向性結合器(第二の方向性結合器H2)入力側の二つの端子a,bのうち、一方の端子(端子b)を順次接続することである(図8(a)参照)。
また、最上位の方向性結合器は、入力側の端子a,bの双方が、方向性結合器に接続されていない方向性結合器(第一の方向性結合器H1)である(図8(a)参照)。
また、ここでいう方向性結合器の最上位の入力端子は、最上位の方向性結合器(第一の方向性結合器H1)の入力側の端子b(図8に示す第一の入力側ポート21)である。
最上位以下の入力端子は、各方向性結合器の端子a(第二の入力側ポート22及び第三の入力側ポート23)であり、最上位の方向性結合器から下位側の方向性結合器に向けて順に、順位が定められる。
【0034】
この電力合成分配器は、第一〜第三の入力側ポート21〜23と、第一〜第三の出力側ポート31〜33とを備えている。
第一の入力側ポート21は、第一の方向性結合器H1の端子b、第二の入力側ポート22は、第一の方向性結合器H1の端子a、第三の入力側ポート33は、第二の方向性結合器H2の端子aである。
第一の出力側ポート31は、第一の方向性結合器H1の端子d、第二の出力側ポート32は、第二の方向性結合器H2の端子d、第三の出力側ポート33は、第二の方向性結合器H2の端子cである。
【0035】
第一の入力側ポート21には、第一の電力増幅器11が、第二の入力側ポート22には、第二の電力増幅器12が、第三の入力側ポート23には、第三の電力増幅器13が、それぞれ接続される。
また、第一の出力側ポート31及び第二の出力側ポート32には、ダミーロードDLが接続される。
また、第三の出力側ポート33には、出力用のアンテナAが接続される。
また、第一〜第三の電力増幅器11〜13は、それぞれ、電力Pを出力する。
【0036】
このようにすると、電力合成分配器は、各入力側ポート21〜23に接合された各電力増幅器11〜13からの電力を、第一及び第二の方向性結合器H1,H2で合成するとともに、合成した電力をアンテナA側に出力する。
この場合、アンテナA側に出力される電力は、3・Pとなる。
【0037】
この状態で第一〜第三の電力増幅器11〜13のいずれかが故障すると、無線通信装置の管理者が、上記第一実施形態と同様にして、一時的な伝送線路の配線を行なう(図7(b)参照)。
【0038】
例えば、第三の電力増幅器13が故障した場合には、第二の出力側ポート32から出力される電力が2・P/3、第三の出力側ポート33から出力される電力が4・P/3となる。
そのため、管理者は、第三の入力側ポート23から第三の電力増幅器13を取り外し、第二の出力側ポート32からダミーロードDLを取り外し、出力用のアンテナAを第三の出力側ポート33から取り外して第二の出力側ポート32に接続する。
次に、管理者は、第一及び第二の電力増幅器11,12により入力された高周波電力の波長に応じた線路長の伝送線路50を選択し、選択した伝送線路50を、第二の方向性結合器H2において、直流的に接続されていない入力端子a(第三の入力側ポート23)及び出力端子c(第三の出力側ポート33)の組に接続する。
【0039】
このようにすると、上記と同様に、再度方向性結合器H2に入力される第三の入力側ポート23の信号と、第二の入力側ポート22に入力される信号との位相差が90°+360°×nとなる。
これにより、第三の出力側ポート33から出力される電力が、第三の入力側ポート23に入力されるとともに、これと、第二の入力側ポート22から第二の出力側ポート32に通過する信号との電力が合成されるので、第二の方向性結合器H2の端子b−端子d間の通過損失を低減せしめることができる。
そのため、第二の出力側ポート32からは、電力2・Pの信号を出力することができる。
その後、電力増幅器13が復旧したならば、元の配線に戻す。
【0040】
また、第二の電力増幅器12が故障した場合には、管理者が、第三の入力側ポート23から第三の電力増幅器13を取り外し、上記と同様に、第三の入力側ポート23と、第三の出力側ポート33とを伝送線路を用いて接続する。
そして、第二の入力側ポート22から故障した第二の電力増幅器12を取り外し、かわりに、第三の入力側ポート23から取り外した第三の電力増幅器13を接続する。
【0041】
また、第一の電力増幅器11が故障した場合には、第二の電力増幅器12が故障したときと同様に、管理者が、第三の入力側ポート23から第三の電力増幅器13を取り外し、第三の入力側ポート23と、第三の出力側ポート33とを伝送線路を用いて接続する。
そして、第一の入力側ポート21から故障した第一の電力増幅器11を取り外し、代わりに、第三の入力側ポート23から取り外した第三の電力増幅器13を接続する。
【0042】
また、三つの電力増幅器11〜13のうち、いずれか二つが故障した場合は、管理者が、第三の入力側ポート23と第三の出力側ポート33との組、第二の入力側ポート22と第二の出力側ポート32との組のそれぞれにおいて、伝送線路を用いて互いに接続する。
そして、第一の入力側ポート21に、正常な電力増幅器を接続して第一の出力側ポートにアンテナを接続する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置によれば、電力合成器として用いた電力回路において、三つの合成数よりも少ない二以下の数の入力信号が、入力されても出力の損失を低減することができる。
そのため、電力合成分配器に、電力を効率的に合成して出力させることができる。
【0044】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る電力合成分配器を用いた電力合成方法について説明する。
図9には、本実施形態の電力合成分配器を用いた無線送信装置の等価回路図を示している。
図9(a)に示すように、本実施形態に係る電力合成分配器は、四つの電力の合成を行なうことができる点で、上記実施形態と異なる。
【0045】
この電力合成分配器は、結合度が3.01dBの第一の方向性結合器H1と、結合度が4.77dBの第二の方向性結合器H2と、結合度が6.02dBの第三の方向性結合器H3とを備えている。
第一〜第三の方向性結合器H1〜H3は、上記実施形態と同様の構成であり(図2参照)、順に縦続接続されている。
すなわち、第二実施形態の電力合成分配器の構成に加えて、第二の方向性結合器H2の端子cに、第三の方向性結合器H3の端子bを接続する構成としている。
【0046】
また、第三の方向性結合器H3において、端子aが、第四の入力側ポート24、端子dが、第三の出力側ポート33、端子cが第四の出力側ポート34として用いられる。
第四の入力側ポート24には、第四の電力増幅器14が接続されている。
また、第三の出力側ポート33には、ダミーロードDLが、第四の出力側ポート34には、出力用のアンテナAが、それぞれ接続されている。
【0047】
このような構成の無線通信装置は、電力合成分配器において、各入力側ポート21〜24に接続された電力増幅器11〜14からの電力を、第一〜第三の方向性結合器H1〜H3で合成するので、合成された電力をアンテナA側に出力することができる。
【0048】
この状態で、この電力合成分配器を二つの電力を合成する電力合成器として用いたりする場合には、管理者が、上記と同様にして伝送線路56,57の接続を行なう(図9(b)参照)。
すなわち、第三の入力側ポート23、第四の入力側ポート34からそれぞれ電力増幅器13,14を取り外し、第四の出力側ポート34からダミーロードDLを取り外し、第三の出力側ポート23から出力用のアンテナAを取り外して、これを第四の出力側ポート34に接続する。
【0049】
また、選択した伝送線路56,57を、方向性結合器H3の二つの端子及び二つの端子のうち、直流的に接続されていない端子及び端子の組に接続する。
また、第三の出力側ポート33からダミーロードを取り外し、出力用のアンテナAを第四の出力側ポート34から取外して第二の出力側ポート32に接続する。
【0050】
なお、一又は二以上の電力増幅器が故障するなどしたときには、管理者により、正常な電力増幅器が、各方向性結合器H1〜H3の入力側ポートのうち、最上位の入力側ポート(第一の入力側ポート21側)から順に、入力側ポートに接続されるようにする。
図9(c)に示すように、例えば、第二及び第四の電力増幅器12,14が故障したときは、管理者は、第二及び第四の電力増幅器12,14を取り外すとともに、第三の電力増幅器を、第二の入力側ポート22に接続する。
そして、管理者は、電力増幅器が接続されていない第四の入力側ポート24と、この入力側ポート24に対応する出力側ポート34とを、伝送線路57で互いに接続する。
また、管理者は、第三の入力側ポート23と、この入力側ポート23に対応する出力側ポート33とを、伝送線路56で互いに接続する。
【0051】
このようにすると、設計合成数が四つのタイプの電力合成分配器であっても、一つ〜三つの電力が入力されたときに、電力合成分配器の通過特性を良好にすることができる。
また、電力増幅器が、一つの場合であっても、電力合成分配器の通過特性を良好にすることができ、電力合成分配器による電力の損失を低減することができる。
【0052】
次に、本発明の第三実施形態に係る電力合成分配器を用い、電力を分配する電力分配方法について説明する。
図10には、電力分配器として用いられる電力合成分配器を示している。
同図に示すように、この電力合成分配器は、第三の方向性結合器H3の端子cが、第一の入力側ポート91、第三の方向性結合器H3の端子dが、第二の入力側ポート92、第二の方向性結合器H2の端子dが、第三の入力側ポート93、第一の方向性結合器H1の端子aが、第四の入力側ポート94としてそれぞれ用いられる。
また、第三の方向性結合器H3の端子aが、第一の出力側ポート95、第二の方向性結合器H2の端子aが、第二の出力側ポート96、第一の方向性結合器H1の端子aが、第三の出力側ポート97、第一の方向性結合器H1の端子bが、第四の出力側ポート98としてそれぞれ用いられる。
【0053】
電力合成分配器は、四分配の電力分配器として用いるときは、例えば、第一の入力側ポート91に、信号源Sを接続して、その他の入力側ポート92〜93にダミーロードDLを接続する(図示せず)。
このようにすると、電力合成分配器が、信号源Sの電力を、第一〜第四の出力側ポート95〜98に分配して出力させることができる。
【0054】
次に、電力合成分配器が、三分配の電力分配器として用いられるときは、第二の入力側ポート92に、信号源を接続して、第三及び第四の入力側ポート93,94にダミーロードDLを接続する。
また、上記式(1)を用い、信号源Sからの高周波電力の波長λに基づく伝送線路50を選択し、この伝送線路50により第一の入力側ポート91と第一の出力側ポート95とを接続する。
このようにすると、第三の方向性結合器H3において、第一の出力側ポート95から出力され、第一の入力側ポート91から入力された電力が、第二の入力側ポート92から入力された電力に合成される。
そのため、第二〜第四の出力側ポート96〜98において、電力合成分配器であまり電力を損失させることなく電力を分配することができる。
【0055】
また、この電力合成分配器が二分配の電力分配器として用いられるときは、第三の入力側ポート93には、信号源Sが接続され、第四の入力側ポート94には、ダミーロードが接続される。
また、上記と同様にして選択された伝送線路50が、第一の入力側ポート91と第一の出力側ポート95とに接続される。また、伝送線路50が、第二の入力側ポート92と第二の出力側ポート96とに接続される。
このようにすると、第二の方向性結合器H2において、第二の出力側ポート96から出力され、第二の入力側ポート92から入力された電力が、第三の入力側ポート93から入力された電力に合成される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る電力分配方法によれば、電力分配器として用いるときに、設計された分配数よりも少ない任意の数の出力信号を出力しても、出力する電力の損失を低減せしめることができる。
また、電力合成分配器に、電力を効率的に合成又は分配して出力させることができる。
【0057】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る電力合成分配器について説明する。
図10には、本実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置を示している。
本実施形態に係る電力合成分配器は、上記第一実施形態と、電力合成分配器の構成が以下の点で異なる。
電力合成分配器は、方向性結合器H1の二つの入力端子21,22及び二つの出力端子31,32のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組(入力端子21−出力端子31の組又は入力端子22−出力端子32の組)における、各入力端子及び出力端子側の既存の接続を切断するとともに、既存の接続が切断された入力端子と出力端子とを、所定の伝送線路を介して接続する伝送線路接続手段を備えている。
【0058】
伝送線路接続手段は、第一及び第二の入力側スイッチ61,62と、第一及び第二の出力側スイッチ71,72とを備えている。
第一の入力側スイッチ61は、第一の電力増幅器11及び第一の入力側ポート21間に設けられており、第一の入力側ポート21を、第一の電力増幅器側11又は第一の伝送線路51に切り替える機能を備えている。
第二の入力側スイッチ61は、第二の電力増幅器12及び第二の入力側ポート22間に設けられており、第二の入力側ポート22を、第二の電力増幅器側12又は第二の伝送線路52に切り替える機能を備えている。
【0059】
第一の出力側スイッチ71は、第一の出力側ポート31の後位側に備えられており、第一の出力側ポート31を、出力用のアンテナA1、ダミーロードDL、及び、伝送線路51のいずれかに切替可能になっている。
第二の出力側スイッチ72は、第二の出力側ポート32の後位側に備えられており、第二の出力側ポート32を、出力用のアンテナA2、ダミーロードDL、及び、伝送線路52のいずれかに切替可能になっている。
【0060】
また、電力合成分配器は、方向性結合器H1の入力側ポート21,22に接続された装置(電力増幅器11,12)の故障を検知する故障検知手段と、故障検知手段の検知に基づいて、伝送線路接続手段に切替の制御を行なう制御手段と、を備えている。
故障検知手段は、第一の電力増幅器11の故障を検知する第一の検知センサ81と、第二の電力増幅器12の故障を検知する第二の検知センサ82とを備えている。
第一及び第二の検知センサ81,82は、第一及び第二の電力増幅器11,12の故障を検知可能になっている。
また、第一及び第二の検知センサ81,82は、電力増幅器11,12から出力される高周波電力の周波数を検知する機能も備えている。
【0061】
制御手段は、例えば、マイクロプロセッサなどにより構成される制御部80を備えている。
制御部80は、第一及び第二の検知センサ81,82が故障を検知がしていないときは、例えば、第一の入力側スイッチ61に第一の電力増幅器11側を選択させ、第二の入力側スイッチ62に第二の電力増幅器12側を選択させる。
また、制御部80は、第一の出力側スイッチ71に、出力用アンテナA1を選択させ、第二の出力側スイッチ72に、ダミーロードDLを選択させる。
【0062】
また、制御部80は、第一の検知センサ81が故障を検知すると、第一の入力側スイッチ61に、伝送線路51側を選択させ、第一の出力側スイッチ71に、第一の伝送線路51を選択させ、第二の出力側スイッチ72にアンテナA2を選択させる。
このようにすると、第一の出力側ポート31と第一の入力側ポート21とが、第一の伝送線路51で接続させられる。
また、制御部80は、第二の検知センサ82が故障を検知すると、第二の入力側スイッチ72に伝送線路52側を選択させ、第二の出力側スイッチ72に伝送線路52を選択させる。
このようにすると、第二の出力側ポート32と第二の入力側ポート22とが、第二の伝送線路52で接続させられる。
これにより、故障が生じたときに、自動で、伝送線路51,52を接続することができる。
【0063】
また、電力合成分配器は、各伝送線路51,52の線路長lを変更する線路長変更手段を備えている。
線路長変更手段は、例えば、各伝送線路51が備える機械式、線路切替式の位相器と、この位相器の制御を行なう制御部80とにより実現される。
【0064】
制御部80は、第一及び第二の検知センサ81,82が検知した周波数に応じて、方向性結合器H1に入力される高周波電力の波長λと、伝送線路の路線長lの関係が下記式(1)の関係となるように、上記の位相器を制御する。
l=λ/2+λ×n ・・・式(1)
なお、上記式(1)において、nは整数である。
このようにすると、制御部80が、伝送線路51,52を最適の線路長lにすることができる。これにより、第一又は第二の電力増幅器11,12が故障しても、電力合成分配器が、故障していない電力増幅器11,12が出力する電力をほとんど損失させることなく、出力用のアンテナA1,A2側に出力することができる。
【0065】
以上の構成からなる無線通信装置の動作について説明する。
この無線通信装置は、上記第一実施形態と同様に使用されることにより、第一及び第二の電力増幅器11,12からの電力を合成して出力することができる。
【0066】
この状態で、第一の電力増幅器11が故障すると、第一の検知センサ81が、第一の電力増幅器11の故障を検知する。
次に、第二の検知センサ82が、第二の電力増幅器12が出力する高周波電力の周波数を検知する。
制御部80は、第二の検知センサ82で検知した高周波電力の周波数に基づいて、第二の電力増幅器12から出力した高周波電力の波長λを算出し、位相器を制御して第一の伝送線路51の線路長lを最適にする。
【0067】
そして、制御部80は、第一の入力側スイッチ61に、第一の伝送線路51側を選択させ、第一の出力側スイッチ71に、第一の伝送線路51側を選択させ、第二の出力側スイッチ72にアンテナA2側を選択させる。
その後、第一の電力増幅器11が交換されるなどしたときには、制御部80をリセットし、各スイッチを元の状態に戻す。
【0068】
また、第二の電力増幅器12が故障したときには、上記と同様に、第二の検知センサ82が、第二の電力増幅器12の故障を検知する。
次に、第一の検知センサ81が、第一の電力増幅器11が出力する高周波電力の周波数を検知する。
制御部80は、第一の検知センサ81で検知した周波数に基づいて、第一の電力増幅器11から出力した高周波電力の波長λを算出し、位相器を制御して第二の伝送線路52の線路長lをこの波長に基づいて最適にする。
そして、制御部80は、第二の入力側スイッチ62に、第二の伝送線路52側を選択させ、第二の出力側スイッチ72に、第二の伝送線路52を選択させる。
その後、第二の電力増幅器12が交換されるなどしたときには、例えば、管理者が、制御部80をリセットし、各スイッチを元の状態に戻す。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る電力合成分配器によれば、第一実施形態と同様に、電力合成器として用いたときに、設計された合成数よりも少ない任意の数の入力信号が入力されても、出力の損失を低減することができる。
このようにすると、各電力増幅器に故障が生じたときに、管理者自身が、逐一伝送線路51,52を方向性結合器H1の各端子21,22,31,32に接続することなく、制御部80が、伝送線路51,52を自動的に切り替えることができる。
また、制御部80が、方向性結合器H1に入力される高周波電力の周波数に応じて伝送線路51,52の線路長lを変更するので、より一層確実に、出力の損失を低減することができる。
【0070】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る電力合成分配器について説明する。
図12には、本実施形態の電力合成分配器を用いた無線通信装置を示している。
本実施形態に係る電力合成分配器は、上記第三実施形態の電力合成分配器に、第四実施形態の電力合成分配器を適用した変形例である。
【0071】
図11に示すように、電力合成分配器は、上記第三実施形態の電力合成分配器と同様に、複数(三つ)の方向性結合器H1〜H3を備え、これらが縦続接続されている。
また、電力合成分配器は、第二の入力側ポート22と第二の出力側ポート32とを接続可能な第一の伝送線路51、第三の入力側ポート23と第三の出力側ポート33とを接続可能な第二の伝送線路52、第四の入力側ポート24と第四の出力側ポート34とを接続可能な第三の伝送線路53を備えている。
【0072】
また、電力合成分配器は、故障検知手段である検知センサ(図示せず)が、入力側ポート21〜24に接続された装置(第一〜第四の電子増幅器11〜14)の故障を検知したときに、正常な装置を、方向性結合器H1〜H3の入力側ポート21〜24のうち、最上位の入力側ポート(第一の入力側ポート21)から順に接続する装置接続切替手段を備えている。
この装置接続切替手段は、第一〜第四の電力増幅器11〜14を、それぞれ、第一〜第四の入力側ポート21〜24のいずれかに切替えて接続可能な接続切替回路40により実現されている。
【0073】
接続切換回路40は、制御部(図示せず)により操作され、第一〜第四の電力増幅器11〜14の故障を検知する検知センサの検知に基づいて、正常な電力増幅器11〜14を、第一の入力側ポート21側から順に接続する機能を備えている。
また、電力合成分配器は、第二〜第四の入力側ポート22〜24の前位側であって、接続切換回路40の後位には、第一〜第三の入力側スイッチ61〜63が介装されている。
この各入力側スイッチ61〜63は、上記実施形態と同様に、入力側ポート22〜24を、電力増幅器12〜14側又は第一伝送線路51〜53側に切り替えて接続可能な構成としている。
【0074】
また、第一〜第四の出力側ポート31〜34の各後位には、第一〜第四の出力側スイッチ71〜74が設けられている。
第一の出力側スイッチは、出力側ポート31を、アンテナA側又はダミーロードDL側に切り替えて接続可能な構成としている。
また、第二〜第四の出力側スイッチ72〜74は、上記実施形態と同様に、出力側ポート32〜34を、伝送線路51〜53側,アンテナA側又はダミーロードDL側に切り替えて接続可能な構成としている。
【0075】
また、出力側スイッチ71〜74及び出力用のアンテナA間には、アンテナAを出力側スイッチ71〜74のいずれかに選択可能に切り替えるスイッチ41を備えている。
また、図示しないが、上記実施形態と同様の制御部及び検知センサを備えている。
【0076】
以上の構成からなる本実施形態の電力合成分配器を用いた無線通信機器は、以下のように動作する。
第一〜第四の電力増幅器11〜14が正常な場合には、上記実施形態と同様に、各電力増幅器11〜14からの電力が、電力合成分配器で合成されてアンテナA側に出力される。
【0077】
また、四つの電力増幅器11〜14のうち、一〜三つの電力増幅器が故障し、これを検知センサがこれ検知すると、制御部が、接続切換回路40に、正常な電力増幅器を、第一の入力側ポート21から順に接続させる。
また、制御部が、第一〜第三の入力側スイッチ61〜63及びこれに対応する第二〜第四の出力側スイッチ72〜74に対し、下位側のスイッチから順に、検知センサが検知した故障した電力増幅器の数に応じて、各入力側ポート及び出力側ポートの組を、伝送線路51〜53側に切替えて互いに接続する。
【0078】
以上説明したように本実施形態の電力合成分配器を用いた無線通信機器によれば、三以上の電力を合成するタイプの電力合成分配器が、電力合成器として用いられるときに、設計された合成数よりも少ない任意の数の電力が入力されても、出力の損失を低減することができる。
また、運用中に故障などが電力増幅器に生じても、接続切換回路40が、正常な電力増幅器を最上位の入力側ポート21から順に接続するので、これによっても、出力の損失を低減することができる。
そのため、電力合成分配器が、入力される電力を効率的に出力することができる。
【0079】
以上、本発明の電力合成分配器の使用方法、電力合成分配器、及び、無線通信装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る電力合成分配器の使用方法、電力合成分配器、及び、無線通信装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態において電力合成器として用いた電力合成分配器が、四以上の方向性結合器を縦続接続されてなる構成としてもよい。
【0080】
また、第三実施形態において電力合成分配器を、電力分配器として用いたが、電力分配器として用いる電力合成分配器が、三つの方向性結合器が縦続接続されてなる構成に限定されるものでなく、二又は四以上の方向性結合器が縦続接続されてなる構成であってもよく、適宜設計変更して差支えない。
【0081】
また、上記第四及び第五実施形態においては、制御部が、線路長を変更できるようにする構成としたが、VHF帯域やUHF帯域におけるテレビジョン送信機やFM送信機などの放送用の通信機器は、予め、使用する周波数が決まっている場合が多いので、予め所定の線路長の伝送線路を用いるようにすることにより、路線長変更手段がない構成であってもよい。
【0082】
また、上記第四及び第五実施形態においては、電力合成分配器を、電力合成器として用いたが、これに限定されるものでなく、第三実施形態のように電力分配器として用いてもよく適宜設計変更して差支えない。
また、第四及び第五実施形態において、制御部を設けて自動化したがこれに限定されるものでなく、手動で切り替える構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器の使用方法を示す説明図であって、(a)通常状態、(b)電力増幅器が故障したときの状態をそれぞれ示す図である。
【図2】一般的な方向性結合器を示す図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置の作用を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置において、伝送線路の通過特性を示すグラフ図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置において、電力合成分配器の通過特性を示すグラフ図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置において、電力合成分配器の通過特性を示すグラフ図である。
【図7】比較例に係る電力合成分配器である方向性分配器の通過特性を示すグラフ図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る電力合成分配器の使用方法を示す説明図であって、(a)通常状態、(b)電力増幅器が故障したときの状態をそれぞれ示す図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置を示す図である。
【図10】本発明の第三実施形態に係る電力合成分配器を、電力分配器として用いた状態で示す図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置を示す図である。
【図12】本発明の第五実施形態に係る電力合成分配器を用いた無線通信装置を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
11〜14 電力増幅器
H,H1〜H3 方向性結合器
21〜24 入力側ポート
31〜34 出力側ポート
40 接続切換回路
50〜53,56,57 伝送線路
61〜64 入力側スイッチ
71〜74 出力側スイッチ
80 制御部
81,82 検知センサ
91〜94 入力側ポート
95〜98 出力側ポート
A,A1,A2 アンテナ
DL ダミーロード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は二以上の方向性結合器を用いて電力を合成する電力合成方法であって、
前記方向性結合器の入力端子及び出力端子のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組における、各入力端子及び出力端子側の既存の接続を切断する接続切断ステップと、
前記接続切断ステップで既接続が切断された前記入力端子と出力端子とを、所定の伝送線路を介して接続する伝送線路接続ステップとを含むことを特徴とする電力合成方法。
【請求項2】
前記伝送線路接続ステップの前に、前記方向性結合器の入力端子に入力される高周波電力の周波数に応じた線路長の伝送線路を選択する伝送線路選択ステップを行なう請求項1記載の電力合成方法。
【請求項3】
前記伝送線路選択ステップにおいて、前記方向性結合器の入力端子に入力される高周波電力の波長λと、伝送線路長lの関係が下記式(1)の関係となる伝送線路を選択する請求項2記載の電力合成方法。
l=λ/2+λ×n ・・・式(1)
なお、上記式(1)において、nは整数である。
【請求項4】
前記接続切断ステップの前に、前記方向性結合器の入力端子に接続された装置の故障を検知する故障検知ステップを含み、
前記故障検知ステップで前記装置の故障を検知したときに、該故障検知ステップが検知した装置が接続された入力端子及びこの入力側端子に対応する出力端子の組に、前記伝送線路接続ステップを行なう請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力合成方法。
【請求項5】
前記二以上の方向性結合器が、縦続接続され、
前記故障検知ステップで前記装置の故障を検知したときに、正常な装置を、前記方向性結合器の各入力端子のうち、最上位側の入力端子から順に接続する装置接続切替ステップを含み、
前記接続切断ステップにおいて、前記前記装置接続切替ステップで前記装置が接続されていない入力端子に対応する出力端子の既存の接続を切断し、
前記伝送線路接続ステップにおいて、前記装置接続切替ステップ及び前記接続切断ステップで既接続が切断された入力端子と出力端子とを、前期伝送線路を介して接続する請求項4記載の電力合成方法。
【請求項6】
一又は二以上の方向性結合器を用いて電力を分配する電力分配方法であって、
前記方向性結合器の入力端子及び出力端子のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組における、各入力端子及び出力端子側の既存の接続を切断する接続切断ステップと、
前記接続切断ステップで既接続が切断された前記入力端子と出力端子とを、所定の伝送線路を介して接続する伝送線路接続ステップと、を含むことを特徴とする電力分配方法。
【請求項7】
前記伝送線路接続ステップの前に、前記方向性結合器の入力端子に入力される高周波電力の周波数に応じた線路長の伝送線路を選択する伝送線路選択ステップを行なう請求項6記載の電力分配方法。
【請求項8】
前記伝送線路選択ステップにおいて、前記方向性結合器の入力端子に入力される高周波電力の波長λと、伝送線路長lの関係が下記式(1)の関係となる伝送線路を選択する請求項7記載の電力分配方法。
l=λ/2+λ×n ・・・式(1)
なお、上記式(1)において、nは整数である。
【請求項9】
一又は二以上方向性結合器を備える電力合成分配器であって、
前記方向性結合器の入力端子及び出力端子のうち、直流的に接続されていない入力端子及び出力端子の組における、各入力端子及び出力端子側の既存の接続を切断するとともに、該既存の接続が切断された前記入力端子と出力端子とを、所定の伝送線路を介して接続する伝送線路接続手段を備えることを特徴とする電力合成分配器。
【請求項10】
前記方向性結合器の入力端子側に接続された装置の故障を検知する故障検知手段と、
前記故障検知手段の検知に基づいて、前記伝送線路接続手段に切り替えの制御を行なわせる制御手段と、を備える請求項9記載の電力合成分配器。
【請求項11】
前記方向性結合器に入力される高周波電力の周波数に応じて前記伝送線路の線路長を変更する線路長変更手段を備える請求項9又は10記載の電力合成分配器。
【請求項12】
前記線路長変更手段が、前記方向性結合器に入力される高周波電力の波長λと、伝送線路長lの関係が下記式(1)の関係となる伝送線路を選択する請求項11記載の電力合成分配器。
l=λ/2+λ×n ・・・式(1)
なお、上記式(1)において、nは整数である。
【請求項13】
前記方向性結合器を複数備え、該複数の方向性結合器が縦続接続される請求項9〜12のいずれか一項に記載の電力合成分配器。
【請求項14】
前記二以上の方向性結合器が、縦続接続され、
前記故障検知手段が前記装置の故障を検知したときに、正常な装置を、前記方向性結合器の各入力端子のうち、最上位側の入力端子から順に接続する装置接続切替手段を備える請求項9〜13のいずれか一項に記載の電力合成分配器。
【請求項15】
電力を合成する電力合成器を備える無線通信装置であって、
前記電力合成器が、前記請求項9〜14のいずれか一項に記載の電力合成分配器であることを特徴とする無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−200636(P2009−200636A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37925(P2008−37925)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】