説明

電力変換器

【課題】 アクティブゲート駆動技術によるサージ電圧抑制を行ないながら、スイッチング素子損失の増大を抑制する電力変換器を提供する。
【解決手段】 スナバ回路は、スイッチング素子9又はフライホイール10がオンしている間にスナバ抵抗14を経由して放電しスナバコンデンサ13の電荷が0になる。この状態でスイッチング素子9がオフ動作を開始し、そのコレクタ電流が急速に減少すると、それまでスイッチング素子9に流れていた主電流がスナバダイオード12及びスナバコンデンサ13に転流する。そこでゲート抵抗3を十分小さくしておけば、スイッチング素子9のコレクタ電流は非常に急速に減少するので、スイッチング素子9のターンオフ損失は非常に小さくすることが可能になり、スナバ回路の作用によって電圧上昇率はある一定の値に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用スイッチング素子を応用した電力変換器は、スイッチング素子の大容量化・高速化に伴い、その応用範囲を着実に広げている。このような電力用スイッチング素子として、特に最近応用分野を伸ばしてきたのがMOSゲート型のスイッチング素子であるIGBTやMOSFETである。
【0003】
IGBTやMOSFETは、オン・オフ状態を自己継続しないノンラッチング型のスイッチング素子であり、サイリスタ等のラッチング型のスイッチング素子に比べて、ゲート駆動による高い制御性が可能な点が大きな利点である。このノンラッチング型のスイッチング素子は、ターンオン・ターンオフのスイッチング過渡期においても、ゲート制御によってサージ電圧やサージ電流を抑制したり、スイッチング過渡期の電流や電圧の傾きを自在に制御したりすることが可能である。
【0004】
こうしたノンラッチング型スイッチング素子の特徴を生かした応用例として、アクティブゲート駆動技術による多直列高圧変換器がある。多直列高圧変換器は、限られた耐圧の素子を多数個直列に接続することで、電力系統などの高電圧用途に用いることを可能にした高圧変換器である。しかし、多直列高圧変換器では直列に接続された多数個の素子間におけるわずかなスイッチングタイミングのずれによって大きな電圧分担のばらつきが生じるという問題点があった。これに対する対応策としてアクティブゲート駆動技術が提案されている。
【0005】
このアクティブゲート駆動技術によるゲート駆動回路を図8に示す。図8において、1a、1bはゲート電源、2、5は電圧増幅器、3はゲート抵抗、4a、4bは分圧用の抵抗、6は制御電流源、7はコンデンサ、8はダイオード、9は電力用スイッチング素子、10はフライホイールダイオードを表している。スイッチング素子9の制御入力端子であるゲート電極は、ゲート抵抗3を介して電圧増幅器2に接続されているとともに、制御電流源6の出力にも接続されている。制御電流源6の入力は電圧増幅器5の出力に接続されている。この電圧増幅器5の入力には、分圧用の抵抗4a及び4bによって分圧されたスイッチング素子9のコレクタ・エミッタ間電圧が印加されている。この回路では、通常動作の状態では、電圧増幅器2を介して印加されるゲート信号に従ってスイッチング素子9がオンオフ動作を行なうが、スイッチング素子9のターンオフ時にサージ電圧が発生した場合には、制御電流源6よりの出力電流が増大する。制御電流源6よりスイッチング素子9のゲート端子に流入する電流によってスイッチング素子9のゲート電圧が上昇し、これによってスイッチング素子9のコレクタ電流は増大し、結果として、スイッチング素子9のコレクタ電圧が下降する。この回路では、このような動作によってスイッチング素子9のサージ電圧を抑制する。
【0006】
しかし、提案の技術は、スイッチング素子の主電圧Vceをゲート駆動回路においてフィードバック制御することで、サージ電圧の発生を抑制する方式である。こうした方式の場合、スイッチング素子以外にはなんらの主回路素子も要しないという点では回路構成が簡素となる利点があるが、他方、スイッチング素子が損失のすべてを分担しなければならないために素子損失が増大するという別の課題が残されている。この課題を説明する。
【0007】
スイッチング素子がスイッチングする際には、スイッチング損失が発生する。ターンオンの際にはターンオン損失が、ターンオフの際にはターンオフ損失がそれぞれ発生するが、この損失の値は、ターンオフの際には電圧上昇率に、ターンオンの際には電流上昇率にそれぞれ強く依存することが知られている。簡単には、スイッチング損失はそれぞれの上昇率と反比例する関係にある。
【0008】
一方、スイッチング時の電圧上昇率・電流上昇率は、電力変換器が発生する電磁障害と密接に関係があり、それぞれの上昇率が大きくなるほど周辺の電気機器に障害を与えやすくなることが知られている。たとえば、電力変換器が電動機を駆動する電圧型インバータである場合、そのインバータの出力端におけるパルス電圧の電圧上昇率が大きくなるほど電動機端子電圧に印加されるサージ電圧が高くなり、電動機の絶縁劣化を早めることになることがよく知られている。
【0009】
したがって、提案されているアクティブゲート駆動技術によるゲート駆動回路では、スイッチング素子以外になんらの主回路素子もない場合には、電磁障害を抑えるためにスイッチング時の電圧上昇率・電流上昇率を抑えようとすれば必然的にスイッチング素子の損失が増大せざるを得ず、この素子損失の増大が、電力変換器の出力容量の減少や変換器のコスト増大につながる課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような提案されているアクティブゲート駆動技術の課題に鑑みてなされたものであり、アクティブゲート駆動技術によるサージ電圧抑制を行ないながらも素子損失の増大を抑制することができる電力変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、2つの主電極と、1つの制御電極を有するノンラッチング型スイッチング素子と、前記スイッチング素子の電圧上昇率を抑えるためのスナバ回路と、前記スイッチング素子の主電極間に印加される電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段によって検出される電圧に応じて前記制御電極に印加される電圧あるいは前記制御電極に流れる電流を制御する制御手段とを備えた電力変換器を要旨とする。
【0012】
本発明はまた、2つの主電極と、1つの制御電極を有するノンラッチング型スイッチング素子と、前記スイッチング素子の電流上昇率を抑えるためのスナバ回路と、前記スイッチング素子の主電極間に印加される電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段によって検出される電圧に応じて前記制御電極に印加される電圧あるいは前記制御電極に流れる電流を制御する制御手段とを備えた電力変換器を要旨とする。
【0013】
本発明はまた、2つの主電極と、1つの制御電極を有するノンラッチング型スイッチング素子と、前記スイッチング素子の電圧上昇率を抑えるための第1のスナバ回路と、前記スイッチング素子の電流上昇率を抑えるための第2のスナバ回路と、前記スイッチング素子の主電極間に印加される電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段によって検出される電圧に応じて前記制御電極に印加される電圧あるいは前記制御電極に流れる電流を制御する制御手段とを備えた電力変換器を要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アクティブゲート駆動技術を適用することでスイッチング素子に印加されるサージ電圧を抑制することができるとともに、スイッチング時の電圧上昇率・電流上昇率をスナバ回路によって抑制することで、アクティブゲート駆動技術の適用にもかかわらずスイッチング素子の損失増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0016】
(第1の実施の形態)図1は本発明の第1の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図1において図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示してある。本実施の形態では、スイッチング素子9はアクティブゲート回路11によって駆動される。アクティブゲート回路11の内部構成は図8と同様である。図1ではこれに加えて、スナバダイオード12とスナバコンデンサ13よりなるスナバ回路をスイッチング素子9に並列に接続するとともに、スナバ抵抗14をスナバダイオード12に並列に接続している。
【0017】
上記構成の第1の実施の形態の電力変換器の動作を説明する。スナバダイオード12及びスナバコンデンサ13によって構成されるスナバ回路は、スイッチング素子9又はフライホイールダイオード10がオンしている間にスナバ抵抗14を経由して放電し、スナバコンデンサ13の電荷が0になる。この状態で、スイッチング素子9がオフ動作を開始し、スイッチング素子9のコレクタ電流が急速に減少すると、それまでスイッチング素子9に流れていた主電流がスナバダイオード12及びスナバコンデンサ13に転流する。スナバ回路のインダクタンス成分が十分小さければ、主電流のスナバ回路への転流は速やかに行なわれ、スイッチング素子9のコレクタ・エミッタ間電圧はスナバコンデンサ13の容量と主電流の値とによって決まる一定の電圧上昇率を持ってゆるやかに上昇を始める。スイッチング素子9のコレクタ電流の減少率は、アクティブゲート回路11の内部のゲート抵抗3によって決まる。そこで、ゲート抵抗3を十分小さくしておけば、スイッチング素子9のコレクタ電流は非常に急速に減少するので、スイッチング素子9のターンオフ損失を非常に小さくすることが可能になる。しかもその場合でも、スナバ回路の作用によって電圧上昇率はある一定の値に抑えることができる。
【0018】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、同時にスナバ回路によって電圧上昇率を抑え、これによってスイッチング素子9の損失の増大をも抑制させることができる。
【0019】
(第2の実施の形態)図2は本発明の第2の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図2において図1、図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示している。第1の実施の形態では、スイッチング素子がターンオフする際の電圧上昇率をスナバ回路によって抑えることでターンオフ損失を減少させているが、本実施の形態ではターンオン時の電流上昇率をスナバ回路で抑えることを特徴とし、アノードリアクトル15をスナバ回路素子としてスイッチング素子9に対して直列に接続している。
【0020】
上記構成の第2の実施の形態の電力変換器の動作を説明する。ゲート抵抗3を十分小さい値に設定すれば、スイッチング素子9のコレクタ・エミッタ間電圧はターンオン時に急速に減少する。このとき、それまでスイッチング素子9に印加されていた電圧は、当該素子に直列に接続されているアノードリアクトル15に印加される。この結果、主回路電流はアノードリアクトル15のインダクタンス値と主回路電圧とによって決まる一定の値でゆっくりと上昇する。主回路電流が上昇する時にはすでにスイッチング素子9の電圧は十分低い電圧になっているので、ターンオン損失は非常に小さくできる。
【0021】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、同時に、スナバ回路によって電流上昇率を抑え、これによってスイッチング素子9の損失の増大をも抑制させることができる。
【0022】
(第3の実施の形態)第2の実施の形態では、アノードリアクトル15に蓄積されるエネルギーは特に考慮していなかったが、電流上昇率を低い値に抑えるために、大きなインダクタンス値のアノードリアクトル15を用いる場合には当該エネルギーはスイッチング素子9のターンオフ損失となる。本発明の第3の実施の形態では、大きなインダクタンス値のアノードリアクトル15を用いる場合に、上記ターンオフ損失の対策を施したことを特徴とする。
【0023】
図3は本発明の第3の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図3において図1、図2、図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示している。図3では、アノードリアクトル15に対して、並列にスナバダイオード12とスナバ抵抗14を直列に接続したスナバ回路を接続するとともに、スナバコンデンサ13をスナバ抵抗14に並列に接続している。
【0024】
上記構成の第3の実施の形態の電力変換器の動作を説明する。アノードリアクトル15によってスイッチング素子9のターンオン損失が抑えられる作用は、第2の実施の形態と同様であるが、スイッチング素子9がターンオフする際の作用が第2の実施の形態と異なっている。スイッチング素子9がターンオフすると、それまでアノードリアクトル15に流れていた電流は、スナバダイオード12を通ってスナバ抵抗14及びスナバコンデンサ13に流入する。スナバダイオード12が導通している間は、スナバコンデンサ13の両端の電圧がアノードリアクトル15に逆向きに印加されるためにアノードリアクトル15の電流は減少し、やがてアノードリアクトル15の電流が0になると、スナバダイオード12がターンオフし、スナバコンデンサ13に移し変えられたエネルギーはスナバ抵抗14によって消費される。尚、本実施の形態ではスナバコンデンサ13を用いているがこれは必ずしも必須ではなく、スナバ抵抗14のみを用いても目的を達せられる場合も多い。
【0025】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、同時に、スナバ回路によって電流上昇率を抑えることでスイッチング素子9のターンオン損失の増大をも抑制させることができ、なおかつスナバ回路に蓄積されるエネルギーによってスイッチング素子9のターンオフ損失が増大することもない。
【0026】
(第4の実施の形態)第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、ターンオン側又はターンオフ側の一方のみの損失を低減しているが、この両方を同時に行なうことも可能である。本発明の第4の実施の形態の電力変換器は、スイッチング素子のターンオン側、ターンオフ側の両方の損失を低減することを特徴とする。図4は本発明の第4の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図4において図1〜図3、図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示している。図4では、スイッチング素子9に対して並列にスナバダイオード12、スナバコンデンサ13、スナバ抵抗14よりなるスナバ回路を接続するとともに、スイッチング素子9に対して直列にアノードリアクトル15を接続している。
【0027】
上記構成の第4の実施の形態の電力変換器の動作を説明する。アノードリアクトル15によってスイッチング素子9のターンオン損失が抑えられる作用、及びスナバダイオード12とスナバコンデンサ13とによってスイッチング素子9のターンオフ時の損失が抑えられる作用は、これまでの実施の形態とほぼ同様である。ただし、アノードリアクトル15に蓄積されたエネルギーの処理は異なっており、本実施の形態の場合、スイッチング素子9がターンオフした際に、スナバコンデンサ13が転流した主電流によって充電され、過充電状態となってアノードリアクトル15に対して下がプラスで上がマイナスの電圧が印加されるときにアノードリアクトル15のエネルギーがスナバコンデンサ13に移し変えられることによって行なわれる。
【0028】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、同時に、スナバ回路によって電圧上昇率と電流上昇率を同時に抑えることでスイッチング素子9のターンオン損失及びターンオフ損失の増大をも抑制させることができる。
【0029】
(第5の実施の形態)第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、スナバ回路に蓄積されるエネルギーはスイッチング素子9のスイッチングと同期してスナバ抵抗14で消費させている。ほとんどの場合はこれで十分だが、電力変換器の効率向上と冷却の簡素化のためにはスナバエネルギーをスナバ抵抗14で消費させずに、電力変換器の電源に回生することが望ましい。本発明の第5の実施の形態の電力変換器は、スナバエネルギーを抵抗で消費させずに、電力変換器の電源に回生することを特徴とする。
【0030】
図5は本発明の第5の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図5において図1〜図4、図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示している。図5において、スナバコンデンサ13とスナバダイオード12との接続点に回生ダイオード16を接続し、回生ダイオード16の他端と電力変換器の直流主電源19の一方の端子との間に回生コンデンサ17を接続し、回生コンデンサ17と並列に回生コンバータ18の入力端子を接続し、回生コンバータ18の出力端子を電力変換器の直流主電源19の両端に接続している。
【0031】
上記構成の第5の実施の形態の電力変換器の動作を説明する。スイッチング素子9がターンオンしたタイミングでスナバコンデンサ13に蓄えられていた電荷は、回生ダイオード16を経由して回生コンデンサ17を充電する向きに流出する。これによって、スナバコンデンサ13に蓄えられていたエネルギーは回生コンデンサ17に移しかえられる。回生コンデンサ17の両端に接続されている回生コンバータ18は、回生コンデンサ17の電圧がほぼ0になるまでエネルギーを直流主電源19に回生する。なお、回生コンデンサ17の静電容量をスナバコンデンサ13に比して十分大きくしておけば、回生コンデンサ17の電圧はスイッチング素子9に印加される主電圧に比べて常に十分小さい電圧に維持される。そのため、スイッチング素子9がターンオンした際には、スナバコンデンサ13の電圧は回生コンデンサ17の電圧とほぼ同じ、十分小さい電圧まで放電することになる。
【0032】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、同時にスナバ回路によって電圧上昇率を抑えることでスイッチング素子9のターンオフ損失の増大をも抑制させるとともに、スナバエネルギーを直流主電源19に回生して装置効率の向上を図ることができる。
【0033】
(第6の実施の形態)第5の実施の形態では、スナバエネルギーを回生コンバータ18によって直流主電源19に回生しているが、スナバエネルギーをゲート回路11の電源として利用することも可能である。本発明の第6の実施の形態は、スナバエネルギーをアクティブゲート回路の電源として利用することを特徴とする。
【0034】
図6は本発明の第6の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図6において図1〜図5、図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示している。図6では回生コンバータ18の出力をアクティブゲート回路11の電源端子に接続し、回生コンバータ18よりアクティブゲート回路11の消費する電力を供給するようにしている。
【0035】
本実施の形態は、特に多数個のスイッチング素子9を直列接続する応用に適している。その理由は次の通りである。アクティブゲート回路11は各々の駆動対象であるスイッチング素子9と同電位におかれるが、多数個のスイッチング素子9を直列接続する場合には、各々のスイッチング素子9の電位はそれぞれ異なっているために、各アクティブゲート回路11の電源は各々絶縁された形で供給されなければならず、そのために従来から多数個の絶縁変圧器を経由してアクティブゲート回路11に電源を供給することが行なわれている。これに対して本実施の形態では、各々のアクティブゲート回路11にスナバエネルギーより電源を供給する回生コンバータ18を設けているので、低電位部より大きな絶縁耐圧を有する大型の絶縁変圧器を用いず、スイッチング素子1個分の耐圧を持つ小さな回生コンバータ18のみでアクティブゲート回路11に電源を供給することが可能であり、回路構成の簡素化、小型化が図れる。
【0036】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、同時にスナバ回路によってスイッチング素子9のスイッチング損失の増大をも抑制させるとともに、スナバエネルギーをアクティブゲート回路11の電源として利用することで、従来必要だった絶縁変圧器を省略することが可能になる。
【0037】
(第7の実施の形態)第1の実施の形態〜第6の実施の形態では、スイッチング素子9が1つのアームを構成する形態としていたが、アクティブゲート駆動によってスイッチング素子9のコレクタ・エミッタ間電圧を抑制できるため、スイッチング素子9を複数個直列に接続して、1つのアームを構成することも容易に行なえる。本発明の第7の実施の形態は、スイッチング素子9を複数個直列に接続して、1つのアームを構成したことを特徴とする。
【0038】
図7は本発明の第7の実施の形態の電力変換器の回路図である。尚、図7において図1〜図6、図8における構成要素と同一ないし均等のものは同一の符号を用いて示している。図7において、直列に接続されたスイッチング素子9にはそれぞれスナバダイオード12及びスナバコンデンサ13を接続している。回生ダイオード16もまた直列に接続し、最上段の回生ダイオード16のカソード端子に回生コンデンサ17を接続している。
【0039】
上記構成の第7の実施の形態の電力変換器の動作を説明する。直列に接続されたスイッチング素子9の各々がすべてターンオンすると、各々の素子のコレクタ・エミッタ間電圧はほぼ0となるので、このとき各スナバコンデンサ13の正側電極の電位はすべてほぼ等しく、最上段のスイッチング素子9のコレクタ電位に対して、各スイッチング素子1素子分の電圧だけ高い電位となる。そのため、直列に接続された回生ダイオード16はすべて導通し、アノードリアクトル15及び回生コンデンサ17に、すべてのスナバコンデンサ13の電圧が印加されることになる。これにより、各スナバコンデンサ13の電荷はアノードリアクトル15と各スイッチング素子9を経由して回生コンデンサ17に流れ込み、最終的にはすべてが回生コンデンサ17に移しかえられる。回生コンデンサ17の両端には回生コンバータ18の入力端子が接続してあって、回生コンデンサ17に蓄えられたエネルギーをこの回生コンバータ18によって直流主電源19に回生する。こうした構成を取ることにより、各スイッチング素子9ごとに回生コンバータ18をおく必要がなく、回生回路を簡素に構成することができる。
【0040】
本実施の形態によれば、アクティブゲート回路11によるサージ電圧抑制機能を持たせながら、スナバ回路によってスイッチング素子9のスイッチング損失の増大をも抑制させるとともに、直列接続された各スイッチング素子9のスナバ回路のエネルギーを簡素な回生回路によって直流主電源19に回生することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図5】本発明の第5の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図6】本発明の第6の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図7】本発明の第7の実施の形態の電力変換器の回路図。
【図8】提案されている電力変換器の回路図。
【符号の説明】
【0042】
1a、1b ゲート電源
2、5 電圧増幅器
3 ゲート抵抗
4a、4b 分圧用の抵抗
6 制御電流源
7 コンデンサ
8 ダイオード
9 電力用スイッチング素子
10 フライホイールダイオード
11 アクティブゲート回路
12 スナバダイオード
13 スナバコンデンサ
14 スナバ抵抗
15 アノードリアクトル
16 回生ダイオード
17 回生コンデンサ
18 回生コンバータ
19 直流主電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主電極と、1つの制御電極を有するノンラッチング型スイッチング素子と、
前記スイッチング素子の電圧上昇率を抑えるためのスナバ回路と、
前記スイッチング素子の主電極間に印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段によって検出される電圧に応じて前記制御電極に印加される電圧あるいは前記制御電極に流れる電流を制御する制御手段とを備えた電力変換器。
【請求項2】
2つの主電極と、1つの制御電極を有するノンラッチング型スイッチング素子と、
前記スイッチング素子の電流上昇率を抑えるためのスナバ回路と、
前記スイッチング素子の主電極間に印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段によって検出される電圧に応じて前記制御電極に印加される電圧あるいは前記制御電極に流れる電流を制御する制御手段とを備えた電力変換器。
【請求項3】
2つの主電極と、1つの制御電極を有するノンラッチング型スイッチング素子と、
前記スイッチング素子の電圧上昇率を抑えるための第1のスナバ回路と、
前記スイッチング素子の電流上昇率を抑えるための第2のスナバ回路と、
前記スイッチング素子の主電極間に印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段によって検出される電圧に応じて前記制御電極に印加される電圧あるいは前記制御電極に流れる電流を制御する制御手段とを備えた電力変換器。
【請求項4】
前記スナバ回路に蓄積されたエネルギーをスナバ抵抗で消費することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電力変換器。
【請求項5】
前記スナバ回路に蓄積されたエネルギーを当該電力変換器の直流主回路に回生する回生手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電力変換器。
【請求項6】
前記スナバ回路に蓄積されたエネルギーを前記スイッチング素子に対するゲート駆動の電源として利用することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電力変換器。
【請求項7】
前記スイッチング素子の電圧上昇率を抑えるためのスナバ回路として、ダイオード及びコンデンサを直列接続した回路をスイッチング素子に並列に接続したことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の電力変換器。
【請求項8】
前記スイッチング素子の電流上昇率を抑えるためのスナバ回路として、インダクタンスを当該スイッチング素子に直列に接続したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記スイッチング素子を2つ以上直列に接続して、1つのアームを構成したことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電力変換器。
【請求項10】
前記直列に接続された2つ以上のスイッチング素子に接続されたスナバ回路に蓄積されたエネルギーを、当該スイッチング素子のスイッチングのたびに1つのコンデンサに集めたのちに、当該電力変換器の直流主回路に回生する回生手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載の電力変換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−230168(P2006−230168A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44488(P2005−44488)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】