説明

電力変換装置及び電力変換装置の制御方法

【課題】スイッチング周波数変調制御を適切に行い、変換効率の高効率化を図ることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】インバータ回路11のスイッチング周波数の算出に際し、コンバータ10の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数としたスイッチング周波数fswに関する損失関数Gが用いられる。そして、その損失関数Gから算出されたスイッチング周波数fswにてインバータ回路11の制御(PFM制御)を行うことで、その時々でコンバータ10の損失が最小、即ち変換効率が高効率となるようなコンバータ10の動作が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング周波数を変調する制御方式を用いる電力変換装置及び電力変換装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ等の電力変換装置においては、スイッチング素子のオンオフ動作を制御することで出力の調整等を行うが、その制御方式には、スイッチングパルス幅を変調するPWM制御方式やスイッチング周波数を変調するPFM制御方式が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に示される電力変換装置(DC−DCコンバータ)は、PWM制御とPFM制御とを出力電流に応じて切り替えるものである。また特許文献2に示される電力変換装置(スイッチング電源装置)は、出力電圧に基づくPFM制御を全域に亘って実施するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68671号公報
【特許文献2】特開2011−50135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スイッチング制御方式を用いる電力変換装置での損失は、スイッチング素子におけるスイッチング損失と、コイル(リアクトル)やトランス、コンデンサ等の受動部品損失とに分類される。一般的に、スイッチング素子は動作周波数が低いほど効率が高く、受動部品は動作周波数が高いほど効率が高くなるというように相反事項となっている。
【0006】
そのため、スイッチング周波数変調制御(PFM制御)を実施するにあたり、スイッチング素子と受動部品とを組み込む本装置では、スイッチング周波数(動作周波数)を如何に設定したら更なる効率化が図られるかが特許文献1,2に開示の技術を含めて不明で、高効率な制御手法の確立が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、スイッチング周波数変調制御を適切に行い、変換効率の高効率化を図ることができる電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、スイッチング素子のスイッチング動作により直流入力電力を高周波交流電力に変換し、後段の絶縁トランスの一次側コイルに供給するインバータ回路と、前記一次側コイルに供給された高周波交流電力を電圧変換して二次側コイルに伝送する絶縁トランスと、前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を所定の出力電力に変換する出力回路と、前記インバータ回路のスイッチング周波数変調制御により前記出力電力を調整する制御回路と、を備えた電力変換装置であって、装置にはコンデンサ及びリアクトルを含む直列共振回路が備えられ、前記インバータ回路のスイッチング動作に基づいて共振動作が行われるものであり、前記制御回路は、前記装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数とした前記スイッチング周波数に関する損失関数を有し、該損失関数から前記電力変換装置の損失が最小となる前記スイッチング周波数の算出をその時々で行いつつ、そのスイッチング周波数に基づいて前記インバータ回路の制御を行うことをその要旨とする。
【0009】
この発明では、インバータ回路のスイッチング周波数の算出に際し、電力変換装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数としたスイッチング周波数に関する損失関数が用いられる。ここで、本発明者により、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数とする電力変換装置の損失関数が検討され、該損失関数からスイッチング周波数を適切に設定することで、電力変換装置の損失の最小化が可能である。従って、このような損失関数から算出されたスイッチング周波数にてインバータ回路の制御(PFM制御)を行うことで、その時々で電力変換装置の損失が最小、即ち変換効率が高効率となるように電力変換装置が動作するようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力変換装置において、前記出力回路は、前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を整流して直流化を行う整流回路と、平滑リアクトル及び平滑コンデンサを有して前記整流回路の出力の平滑化を行うフィルタ回路とを備え、前記直列共振回路は、前記絶縁トランスの二次側コイルと前記整流回路との間に直列に接続した共振コンデンサと、前記フィルタ回路の平滑リアクトルとで構成されていることをその要旨とする。
【0011】
この発明では、絶縁トランスの二次側の出力回路として、整流回路とフィルタ回路とが備えられ、直列共振回路は、絶縁トランスの二次側コイルと整流回路との間に直列接続される共振コンデンサと、フィルタ回路の平滑リアクトルとで構成される。つまり、このような直列共振回路を有する電力変換装置のスイッチング周波数を適切に行うことで、高効率化が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電力変換装置において、前記入力電力が太陽光発電装置の発電電力である太陽光発電用途であることをその要旨とする。
この発明では、太陽光発電装置の発電電力はその電力値が大きくしかも頻繁に変動し得るため、その時々でインバータ回路のスイッチング周波数を適切に設定することは特に有効であり、太陽光発電用途に好適である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、スイッチング素子のスイッチング動作により直流入力電力を高周波交流電力に変換し、後段の絶縁トランスの一次側コイルに供給するインバータ回路と、前記一次側コイルに供給された高周波交流電力を電圧変換して二次側コイルに伝送する絶縁トランスと、前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を所定の出力電力に変換する出力回路と、を備えた電力変換装置に対し、前記インバータ回路のスイッチング周波数変調制御により前記出力電力を調整するその制御方法であって、装置にはコンデンサ及びリアクトルを含む直列共振回路が備えられ、前記インバータ回路のスイッチング動作に基づいて共振動作が行われるものであり、前記装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数とした前記スイッチング周波数に関する損失関数を有し、該損失関数から前記電力変換装置の損失が最小となる前記スイッチング周波数の算出をその時々で行いつつ、そのスイッチング周波数に基づいて前記インバータ回路の制御を行うようにしたことをその要旨とする。
【0014】
この発明では、請求項1と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スイッチング周波数変調制御を適切に行い、変換効率の高効率化を図ることができる電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態における電力変換装置としてのDC−DCコンバータの回路図。
【図2】スイッチング周波数による効率特性の変化を説明するための説明図。
【図3】スイッチング動作による電圧電流変化を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のDC−DCコンバータ10は、太陽光発電装置を直流電源Eと想定し該電源Eからの直流電力を入力し、その直流入力電力を所定電圧に変換した直流出力電力として出力するものである。因みに、直流電源としては、太陽光発電装置の他、燃料電池発電装置、蓄電池装置、及び商用交流電力の直流変換装置等であってもよい。
【0018】
DC−DCコンバータ10は、平滑コンデンサCa、インバータ回路11、絶縁トランス12、共振コンデンサCx、整流回路13、及びフィルタ回路14を備えている。
絶縁トランス12の一次側には、スイッチング回路としてインバータ回路11が備えられている。インバータ回路11は、IGBT等のスイッチング素子SW1〜SW4を4個用いたフルブリッジ(Hブリッジ)回路にて構成される。また、これら各スイッチング素子SW1〜SW4には、逆接ダイオードD1〜D4及びコンデンサC1〜C4がそれぞれ並列に接続されている。そして、インバータ回路11は、直流電源Eから平滑コンデンサCaを介して入力される直流電力を制御回路15の制御に基づく各スイッチング素子SW1〜SW4のオンオフ動作にて高周波交流電力に変換し、変換した高周波交流電力を絶縁トランス12の一次側コイル12aに供給する。絶縁トランス12は、一次側コイル12aに供給された高周波交流電力を二次側コイル12bにて所定電圧に変換する。
【0019】
絶縁トランス12の二次側では、その二次側コイル12bに共振コンデンサCxが直列に接続されており、その後段には整流回路13が備えられている。整流回路13は、4個のダイオードD5〜D8を用いたフルブリッジ回路にて構成される。整流回路13の後段には、フィルタ回路14が備えられている。フィルタ回路14は、平滑リアクトルLb及び平滑コンデンサCbで構成される。フィルタ回路14は、平滑リアクトルLb及び平滑コンデンサCbにて整流回路13を経た出力の平滑化を行い、直流出力電力として負荷側に出力する。
【0020】
また、共振コンデンサCxは、フィルタ回路14の平滑リアクトルLbと直列共振回路を構成し、これらの共振動作にてトランス12の二次側回路の低インピーダンス化が図られる。これにより、トランス12の二次側での電流波形が正弦波状となり、整流回路13のダイオードD5〜D8の動作損失(導通損失、リカバリ損失)等を始め、各種回路素子の損失低減がなされる。
【0021】
DC−DCコンバータ10には、平滑コンデンサCaより入力側において、入力電流Iを検出するための電流センサ16、及び入力電圧Vを検出するための電圧センサ17が備えられている。制御回路15は、電流センサ16からの検出信号の入力に基づいて入力電流Iの検出を行い、電圧センサ17からの検出信号の入力に基づいて入力電圧Vの検出を行っている。制御回路15は、その時々の入力電力P(入力電流I及び入力電圧Vの積)から適切な出力電力が生成できるように、インバータ回路11のスイッチング素子SW1〜SW4に対するスイッチング周波数変調制御(PFM制御)を行っている。
【0022】
ここで、図2に示すように、出力電力に対するコンバータ10の効率特性は、スイッチング周波数fsw(動作周波数)によって異なることがわかる。
即ち、コンバータ10の損失は、スイッチング損失と受動部品損失とに分類され、先の損失を生じさせるスイッチング素子SW1〜SW4は動作周波数が低いほど高効率である。一方、受動部品損失を生じさせる受動部品としてはリアクトルLbやトランス12、コンデンサCx,Ca,Cb等であり、これらは動作周波数が高いほど高効率である。従って、このような相反事項を含む各部品を組み合わせてなるコンバータ10は、スイッチング周波数fswによって、スイッチング損失や受動部品損失のいずれかの影響が強く出て、効率特性が異なってくる。図2において、出力電力が低い低出力領域では、スイッチング周波数fswが高い(f高)ほどコンバータ10が高効率となり、出力電力が中程度の中出力領域では、スイッチング周波数fswに対する効率特性に逆転が生じる。出力電力が高い高出力領域では、スイッチング周波数fswが低い(f低)ほど高効率が維持される。
【0023】
これを踏まえ、本実施形態の制御回路15は、その時々のコンバータ10の効率特性が最良、換言すれば損失が最小となるように、インバータ回路11のスイッチング周波数fswがその時々で適切に調整されている。
【0024】
次に、制御回路15におけるその時々のスイッチング周波数fswの算出は、コンバータ10の全体損失を勘案して以下のようにして行われる。
先ず、[受動部品損失]として多くを占めるトランス12及びリアクトルLbのコア損失Pcoreに関して、トランス12及びリアクトルLbのコアの磁束密度をΔBとし、a〜cを定数とすると、
【0025】
【数1】

で表される。尚、bは、ΔBが増加するとPcoreも増加することから、b>0である。上記式を対数表示すると、
【0026】
【数2】

となる。ここで、印加電圧を入力電圧Vとし、トランス12の一次側巻数をNP、励磁断面積をAe、電圧印加時間をTonとすると、ΔBについて次式が成立する。
【0027】
【数3】

また、電圧印加時間Ton及びスイッチング周波数fswには次式が成立する。デッドタイムTDとすると、
【0028】
【数4】

となる。上記[数2][数4]より、
【0029】
【数5】

とすると、次式が成立する。
【0030】
【数6】

尚、Pcore0は、ΔB=0時のコア損失である。このようにコア損失Pcoreの算出が可能である。
【0031】
次いで、[スイッチング損失]に関しては、図3に示すように、スイッチング素子SW1〜SW4のオンによる電流発生期間を区間t1〜t3に分類して検討する。この場合、スイッチング素子SW1〜SW4(インバータ回路11)への印加電圧を入力電圧Vとし、ターンオン時の電流立ち上がり区間t1の電流をId、ターンオフ時の電流立ち下がり区間t3の電流をIp、スイッチング素子SW1〜SW4のオン抵抗をRonとする。ターンオン時の区間t1、導通区間t2、ターンオフ時の区間t3におけるスイッチング損失P1〜P3について、図3(a)にて示す一般型(非共振型)から一般式として次式群が成立する。
【0032】
【数7】

一方、スイッチング素子SW1〜SW4のデッドタイムTDを考慮した電流波形のピーク電流Imについては、入力電力P、入力電圧Vを用いると次式が成立する。
【0033】
【数8】

次いで、区間t1〜t3でのスイッチング損失P1〜P3の総和を損失Pswとする。損失Pswは、一素子当りのスイッチング素子SW1〜SW4におけるスイッチング損失の総和である。
【0034】
ここで、本実施形態のように直列共振回路が用いられる場合、区間t1〜t3での電流波形は対称形になる(図3(b)参照)。つまり、ターンオン時の電流Idとターンオフ時の電流Ipとが一致(Id=Ip)することになる。電流Idが生じる区間t1と電流Ipが生じる区間t3との和、t1+t3=αとし、上記[数7]を整理すると、
【0035】
【数9】

となる。また、Id=Ipはピーク電流Imとして一致することから、
【0036】
【数10】

であり、[数9][数10]及び[数4]でのT=1/fswを用いて損失P1+P3、損失P2をそれぞれ求めると、
【0037】
【数11】

となる。これらを総和した損失Pswは、
【0038】
【数12】

となる。本実施形態では、
【0039】
【数13】

程度に設定されることから、αを係数とする項は十分に小さく無視することができる。従って、一素子当りのスイッチング素子SW1〜SW4の損失Pswは、
【0040】
【数14】

となり、このようにスイッチング損失Pswの算出が可能である。
【0041】
そして、上記のようにして得られる[受動部品損失][スイッチング損失]を合計したコンバータ10の全体の損失(損失関数G)を求める。T−TD=xと置き、コア損失Pcoreとスイッチング損失Psw(本実施形態では、同一のスイッチング素子SW1〜SW4を4個用いることから4倍する)との和であるコンバータ10の損失関数Gは、
【0042】
【数15】

となる。損失関数Gの最小値、即ち損失が最小となるスイッチング周波数fswの算出を行うには、損失関数Gの微分を行う。
【0043】
【数16】

上記[数16]の微分関数は下に凸の曲線であるため、損失関数Gの最小値では、その微分関数G’=0が成立する。従って、次式が得られる。
【0044】
【数17】

ここで、
【0045】
【数18】

と置いて上記[数17]を変形すると、
【0046】
【数19】

となる。但し、x>0である。
【0047】
更に、ランベルトのW関数W(z)を用いると、W関数の性質より上記[数19]は、
【0048】
【数20】

となる。そして、上記でT−TD=xと置いたことから、x=T−TDより、
【0049】
【数21】

となり、スイッチング周波数fswは、
【0050】
【数22】

と算出することが可能である。本実施形態の制御回路15では、検出する入力電流I及び入力電圧Vから、その入力電圧V、入力電力P、デッドタイムTDを変数とした[数22]に基づいてスイッチング周波数fswの算出が可能に構成されており、その時々でコンバータ10の損失が最小となるような適切なスイッチング周波数fswが算出されるようになっている。尚、[数22]のランベルトのW関数は比較的簡単なプログラムで演算可能なため、その時々のスイッチング周波数fswの算出は容易に行われる。そして、このように算出されるスイッチング周波数fswにてインバータ回路11(スイッチング素子SW1〜SW4)がスイッチング動作することで、常にコンバータ10の損失が最小、即ち効率が最大となるようにコンバータ10が動作するようになる。
【0051】
また本実施形態のように、入力側の直流電源Eとして太陽光発電装置が接続されるような場合、太陽光発電装置にて生成される直流電力(発電電力)はその電力値が大きくしかも頻繁に変動し得るため、インバータ回路11のスイッチング周波数fswを頻繁に変調する必要がある。そのため、本実施形態のように、その都度高効率となるようスイッチング周波数fswを適切に設定することは特に有効である。
【0052】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)インバータ回路11のスイッチング周波数の算出に際し、DC−DCコンバータ10の受動部品損失(コア損失Pcore)及びスイッチング損失Pswを含み、入力電圧V、入力電力P、デッドタイムTDを変数としたスイッチング周波数fswに関する損失関数Gが用いられる。この損失関数Gは、本発明者により検討されたものであり、該損失関数Gからスイッチング周波数fswを適切に設定することで、コンバータ10の損失の最小化が可能である。従って、このような損失関数Gから算出されたスイッチング周波数fswにてインバータ回路11の制御(PFM制御)を行うことで、その時々でコンバータ10の損失が最小、即ち変換効率が高効率となるようにコンバータ10を動作させることができる。
【0053】
(2)コンバータ10は、太陽光発電装置の発電電力を入力する太陽光発電用途に好適である。即ち、太陽光発電装置の発電電力はその電力値が大きくしかも頻繁に変動し得るため、その時々でインバータ回路11のスイッチング周波数fswを適切に設定する本実施形態の手法を用いることは特に有効である。
【0054】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、インバータ回路11のスイッチング素子SW1〜SW4にダイオードD1〜D4とコンデンサC1〜C4とをそれぞれ並列に接続したが、コンデンサC1〜C4の省略等、インバータ回路11の構成を適宜変更してもよい。また、インバータ回路11を4個のスイッチング素子SW1〜SW4にて構成したが、数を適宜変更してもよく、例えば2個(ハーフブリッジ)で構成してもよい。この場合、使用するスイッチング素子数をnとすると、上記[数15]以下、スイッチング損失Pswに関する項をn倍とする。
【0055】
・上記実施形態では、トランス12の二次側の整流回路13をダイオードD5〜D8のブリッジ回路にて構成したが、回路構成はこれに限らない。スイッチング素子のフルブリッジ回路よりなる同期整流回路や、ダイオード及びコンデンサを用いた倍電圧整流回路等、その他の構成の整流回路を用いてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、直列共振回路を、絶縁トランス12の二次側コイル12bと整流回路13との間に直列接続される共振コンデンサCxと、フィルタ回路14の平滑リアクトルLbとで構成したが、コンデンサ及びリアクトルの配置はこれに限定されるものではない。例えば、コンデンサ、リアクトルのいずれか、若しくはその両方を絶縁トランス12の一次側に設けてもよい。また、フィルタ回路14の平滑リアクトルLbとは別のリアクトル、例えばトランス12の漏れリアクトルにて共振回路を構成してもよく、この場合、フィルタ回路14の設計自由度が向上する。
【0057】
また、直列共振回路を省略してもよい。この場合、上記した電流発生期間である区間t1〜t3での電流波形が非対称となるため、区間t1と区間t3とを個別に算出する必要があり、[数9]等の算出が複雑となるが、上記実施形態と同様にその時々で適切なスイッチング周波数fswの算出が可能なことは推測できる。
【0058】
・上記実施形態では、DC−DCコンバータ10を太陽光発電用途としたが、これ以外の用途として使用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0059】
(イ) 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、ランベルトのW関数にて表される次式、
【0060】
【数23】

を満たすスイッチング周波数fswの算出を行うことを特徴とする電力変換装置。
【0061】
このような入力電圧V、入力電力P、デッドタイムTDを変数とした数式からインバータ回路の適切なスイッチング周波数fswの算出が行われ、電力変換装置の高効率化が可能となる。
【0062】
(ロ) スイッチング素子のスイッチング動作により直流入力電力を高周波交流電力に変換し、後段の絶縁トランスの一次側コイルに供給するインバータ回路と、
前記一次側コイルに供給された高周波交流電力を電圧変換して二次側コイルに伝送する絶縁トランスと、
前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を所定の出力電力に変換する出力回路と、
前記インバータ回路のスイッチング周波数変調制御により前記出力電力を調整する制御回路と、を備えた電力変換装置であって、
前記制御回路は、前記装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数とした前記スイッチング周波数に関する損失関数を有し、該損失関数から前記電力変換装置の損失が最小となる前記スイッチング周波数の算出をその時々で行いつつ、そのスイッチング周波数に基づいて前記インバータ回路の制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
【0063】
インバータ回路のスイッチング周波数の算出に際し、電力変換装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数としたスイッチング周波数に関する損失関数が用いられる。そして、この損失関数から算出されたスイッチング周波数にてインバータ回路の制御(PFM制御)を行うことで、その時々で電力変換装置の損失が最小、即ち変換効率が高効率となるように電力変換装置が動作するようになる。このように直列共振回路を有していない一般的な電力変換装置への適用も可能である。
【符号の説明】
【0064】
11 インバータ回路
12 絶縁トランス
12a 一次側コイル
12b 二次側コイル
13 整流回路(出力回路)
14 フィルタ回路(出力回路)
15 制御回路
SW1〜SW4 スイッチング素子
Lb 平滑リアクトル(リアクトル、直列共振回路)
Cb 平滑コンデンサ(コンデンサ)
Cx 共振コンデンサ(直列共振回路)
Pcore コア損失(受動部品損失)
Psw スイッチング損失
V 入力電圧
P 入力電力
TD デッドタイム
fsw スイッチング周波数
G 損失関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のスイッチング動作により直流入力電力を高周波交流電力に変換し、後段の絶縁トランスの一次側コイルに供給するインバータ回路と、
前記一次側コイルに供給された高周波交流電力を電圧変換して二次側コイルに伝送する絶縁トランスと、
前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を所定の出力電力に変換する出力回路と、
前記インバータ回路のスイッチング周波数変調制御により前記出力電力を調整する制御回路と、を備えた電力変換装置であって、
装置にはコンデンサ及びリアクトルを含む直列共振回路が備えられ、前記インバータ回路のスイッチング動作に基づいて共振動作が行われるものであり、
前記制御回路は、前記装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数とした前記スイッチング周波数に関する損失関数を有し、該損失関数から前記電力変換装置の損失が最小となる前記スイッチング周波数の算出をその時々で行いつつ、そのスイッチング周波数に基づいて前記インバータ回路の制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記出力回路は、前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を整流して直流化を行う整流回路と、平滑リアクトル及び平滑コンデンサを有して前記整流回路の出力の平滑化を行うフィルタ回路とを備え、
前記直列共振回路は、前記絶縁トランスの二次側コイルと前記整流回路との間に直列に接続した共振コンデンサと、前記フィルタ回路の平滑リアクトルとで構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、
前記入力電力が太陽光発電装置の発電電力である太陽光発電用途であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
スイッチング素子のスイッチング動作により直流入力電力を高周波交流電力に変換し、後段の絶縁トランスの一次側コイルに供給するインバータ回路と、
前記一次側コイルに供給された高周波交流電力を電圧変換して二次側コイルに伝送する絶縁トランスと、
前記絶縁トランスの二次側コイルから出力される高周波交流電力を所定の出力電力に変換する出力回路と、
を備えた電力変換装置に対し、前記インバータ回路のスイッチング周波数変調制御により前記出力電力を調整するその制御方法であって、
装置にはコンデンサ及びリアクトルを含む直列共振回路が備えられ、前記インバータ回路のスイッチング動作に基づいて共振動作が行われるものであり、
前記装置の受動部品損失及びスイッチング損失を含み、入力電圧、入力電力、デッドタイムを変数とした前記スイッチング周波数に関する損失関数を有し、該損失関数から前記電力変換装置の損失が最小となる前記スイッチング周波数の算出をその時々で行いつつ、そのスイッチング周波数に基づいて前記インバータ回路の制御を行うようにしたことを特徴とする電力変換装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−5589(P2013−5589A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134310(P2011−134310)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】