説明

電力変換装置

【課題】単相交流電源の零点付近の低電圧期間に負荷に供給するパワーの低下を極力抑えた電力変換装置を実現する。
【解決手段】単相交流電源21から入力を受けて、低い波高率を出力する第1の電力変換回路22と、負荷24に出力する第2の電力変換回路23を有し、いずれも双方向スイッチング素子30、31、40〜45を有し、単相交流電源21の零点付近でのパワー低下を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用や一般家庭用や業務用の各種電気機器などに使用され、モータ(電動機)などを負荷とする電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力変換装置は、6個の双方向スイッチング素子を、単相の交流電源と、3相の負荷の間に接続し、単相の交流から直接3相の交流への電力変換を行うものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、特許文献1に記載された従来の電力変換装置の回路図を示すものである。
【0004】
図13に示すように、交流電源1、交流電源1に接続されたマトリクスコンバータ回路2、マトリクスコンバータ回路2から接続されて、負荷となる3相のモータ3が接続され、マトリクスコンバータ回路2の動作を制御する制御部4が設けられたものとなっている。
【0005】
マトリクスコンバータ回路2は、2個のトランジスタ5、6、ダイオード7、8を用いた双方向スイッチ10、双方向スイッチ10と同様の構成で組まれた双方向スイッチ11、12、13、14、15を有するものとなっており、マトリクスコンバータ回路2内の合計12個のトランジスタのオンオフが制御部4によって制御される結果、3相の交流電圧がモータ3に供給されて駆動されるものであった。
【特許文献1】特開2005−45912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、交流電源1として、一般によく使用される正弦波の電圧波形を有する単相のものを接続する場合、電圧の瞬時値がゼロとなるタイミング(零電圧点)の前後の低電圧期間で、負荷のモータ3への電気パワー供給が極端に低下した状態となるが、その低電圧期間が占める割合がかなり高いものとなるため、モータ3の出力トルクに大きな変動が発生するという課題を有したものであった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、交流電源の零電圧点前後の低電圧期間においても、極力負荷への電気パワー供給を行い、負荷への供給パワー変動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、単相交流電源から入力を受けて、前記単相交流電源より低い波高率の単相交流電圧を出力する第1の電力変換回路と、前記第1の電力変換回路の出力を受けて、三相交流電圧を電動機に出力する第2の電力変換回路を有し、前記第1の電力変換回路と前記第2の電力変換回路は、いずれも双方向スイッチング素子を有するものである。
【0009】
これによって、本発明は上記課題を解決するもので、第1の電力変換回路によって、第2の電力変換回路への入力電圧の平準化を図り、交流電源の零電圧点前後の低電圧期間においても、極力負荷への電気パワー供給を行うことができることから、負荷への供給パワーの変動を低減することができるものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、単相交流電源の電圧の瞬時値がゼロとなるタイミング(零電圧点)の前後の低電圧期間に発生する出力パワーの低下期間を短縮し、負荷への供給パワー変動が小さい電力変換装置を実現することができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、単相交流電源から入力を受けて、前記単相交流電源より低い波高率の単相交流電圧を出力する第1の電力変換回路と、前記第1の電力変換回路の出力を受けて、三相交流電圧を負荷に出力する第2の電力変換回路を有し、前記第1の電力変換回路と前記第2の電力変換回路は、いずれも双方向スイッチング素子を設けることによって、第1の電力変換回路による、第2の電力変換回路への入力電圧の平準化が図られるものとなり、交流電源の零電圧点前後の低電圧期間においても、極力負荷への電気パワー供給を行うことができることから、負荷への供給パワーの変動を低減することができるものとなる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明の第1の電力変換回路を、入力される単相交流電源よりも低い実効値の電圧を出力するものとすることによって、降圧チョッパとして動作しながら、変動を抑えた電圧を第2の電力変換装置に出力し、負荷への供給パワーの変動を低減することができるものとなる。
【0013】
第3の発明は、特に第1の発明の第1の電力変換回路を、入力される単相交流電源よりも高い実効値の電圧を出力するものとすることによって、昇圧チョッパとして動作しながら、変動を抑えた電圧を第2の電力変換装置に出力し、負荷への供給パワーの変動を低減することができるものとなる。
【0014】
第4の発明は、特に第2の発明、または第3の発明の第1の電力変換回路を、インダクタンス素子を有するものとすることによって、チョッパとして動作しながら、変動を抑えた電圧を第2の電力変換装置に出力し、負荷への供給パワーの変動を低減することができるものとなる。
【0015】
第5の発明は、特に第1〜第4のいずれかの発明の少なくとも1個の双方向スイッチング素子を、SiC半導体で構成したものとすることによって、小型、低損失、高効率の電力変換装置が実現されるものとなる。
【0016】
第6の発明は、特に第1〜第5のいずれかの発明の負荷を、永久磁石を有する3相電動機とすることによって、3相電動機として高効率のものが実現でき、かつ3相電動機が高力率とすることが可能となることから、特に第2の電力変換回路の双方向スイッチング素子の容量を抑えた低コストのものとすることができる。
【0017】
第7の発明は、特に第1〜第5のいずれかの発明の負荷を、機械位相によってインダクタンスが変化する3相電動機とすることによって、比較的簡単な制御で、負荷への供給パワーの変動を低減したものとすることができる。
【0018】
第8の発明は、特に第1〜第7のいずれかの発明の負荷となる3相電動機は、ファンを負荷とした電気掃除機とすることによって、小型・軽量の使い勝手の良いものとすることができるものとなる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電力変換装置の回路図である。
【0021】
図1において、実効値電圧200V、50Hzの単相交流電源21から入力を受け、単相交流電源21より低い波高率の単相交流電圧を出力する第1の電力変換回路22と、第1の電力変換回路22の出力を受ける第2の電力変換回路23は、三相交流電圧を3相電動機で構成した負荷24に出力する。
【0022】
第1の電力変換回路22は、SiC半導体を用いた双方向スイッチング素子30、31とインダクタンス素子32、コンデンサ33を有している。
【0023】
ここで、コンデンサ33は、各双方向スイッチング素子のオンオフによって発生する高周波の電圧リプル成分を除去する目的のもので、10マイクロファラッド程度でAC電圧(交番電圧)が印加可能なものを使用するが、従来のいったん直流電圧に変換する構成のインバータに使用される1000マイクロファラッド程度の電解コンデンサなどと比較すると、形状が小さく重量も小なるもので済む。
【0024】
また、インダクタンス素子32に関しても、同様に各双方向スイッチング素子のオンオフによる高周波電流成分を抑えるもので、数100マイクロヘンリー程度のインダクタンス値のものが使用されるものとなり、比較的小型・軽量で低損失のものを用いることが可能である。
【0025】
第2の電力変換回路22は、SiC半導体を用いた双方向スイッチング素子40、41、42、43、44、45を有している。
【0026】
図2は、本実施の形態における電力変換装置の動作波形図であり、(イ)は単相交流電源21の電圧波形、(ロ)は双方向スイッチング素子30の導通率、(ハ)は第1の電力変換回路22の出力電圧波形を示している。
【0027】
双方向スイッチング素子30は、50kHzのキャリア周波数で、PWM(パルス幅変調)されてオンオフを繰り返す動作がなされるものであり、単相交流電源21の瞬時値の絶対値がピークとなる時点で、ほぼ50%の導通率としている。
【0028】
一方、双方向スイッチング素子31は、双方向スイッチング素子30のオフ期間中に、電流がインダクタンス素子32を流すフライホイルダイオードとして動作できるよう駆動信号が与えられている。
【0029】
このような動作により、本実施の形態においては第1の電力変換回路22は、降圧チョッパ回路として動作するものとなり、第1の電力変換回路22は、(イ)に示される入力の単相交流電源21の電圧よりも低い実効値の電圧を持った(ハ)に示される電圧波形を出力するものとなっている。
【0030】
(ハ)に示している電圧波形については、絶対値が140Vとなっている期間が連続して存在し、正弦波と比較すると、頭がつぶれたような波形となっており、波高率、すなわち最大値/実効値は、正弦波の場合の1.41よりも低く、1.1程度となっている。
【0031】
第2の電力変換回路23は、(ハ)の電圧波形が入力され、双方向スイッチング素子40〜45のPWM動作によって、三相交流電圧の負荷24への供給がなされるするものとなるが、入力電圧の最大値に対して、その1/3(=33%)程度以下となると、負荷24への電流供給が困難となってくる低電圧期間となり、(ハ)の電圧波形においては、140V/3=47Vを下回る期間については、駆動困難な期間となる。
【0032】
本実施の形態においては、47Vを下回る期間の長さは、ほぼ1msであり、これは正弦波の場合の2msと比較してほぼ1/2の期間に抑えられたものとなる。
【0033】
よって、単相交流電源21の電圧の瞬時値がゼロとなるタイミング(零電圧点)の前後の低電圧期間に発生する出力パワーの低下期間を短縮することができ、もって負荷24に対しての供給パワーの変動を抑えた、電力変換装置が実現されるものとなる。
【0034】
なお、負荷24は、3相の電動機(モータ)で構成されたものとなっているため、その発生トルクの変動を小さく抑え、動力性能が高いと共に、トルク変動に起因する振動などの発生に関しても、極力低減したものとすることができるものである。
【0035】
図3は、双方向スイッチング素子30、31、40〜45の断面図を示している。
【0036】
本実施の形態において、炭化珪素を結晶化して実現したSiC半導体50は、N−層の上に、P+層、およびN+層を形成したものとなっており、端子として両端からSD1、SD2端子、またゲート(制御端子)としてG1、G2が引き出されたものとなっている。
【0037】
SD1端子に対するG1端子への制御電圧の印加と、SD2端子に対するG2端子への制御電圧(ゲート電圧)の印加があれば、一般のMOSFETと同様オン状態となり、制御電圧(ゲート電圧)の印加がない場合(零電圧など)においては、オフ状態となり、逆極性で接続された2つのMOSFETが等価的に直列に接続された構成となっていることから、双方向スイッチング素子、すなわちSD1とSD2の正/負電圧の両極性に対して、電流を流す/流さないの制御がG1端子とG2端子を用いて制御可能なものとなり、オン状態において、2つのMOSFET素子の直列で発生するオン電圧のアップ分に対しては、SiC半導体の特長である、低Ron特性、および高温条件下においても信頼性が確保できることから、チップ面積としては、シリコンを用いた従来の単方向のスイッチング素子(MOSFET等)と比較して同等以下のもので、実用的な双方向スイッチング素子としての構成が可能となっている。
【0038】
図4は、本実施の形態における負荷24の構成図を示しているものとなっている。
【0039】
3相電動機として構成した負荷24は、4つの永久磁石60、61、62、63を珪素鋼板を積層して構成した鉄心64の表面に貼り付け、出力軸65を中心として回転自在に設けた回転子66と、回転子66の外側に設けた固定子67を有する構成であり、固定子67は、やはり珪素鋼板を積層して構成した鉄心68、巻線70〜75によって構成している。
【0040】
図5は、巻線70〜75の結線図を示している。
【0041】
巻線70〜75については、機械的に180度の位置に設けたもの同士が直列に接続され、電流が流れ込んだ時に、同極が回転子66に対向する場所に発生する構成となっている。
【0042】
図6は、本実施の形態の負荷24を外部から駆動した場合の3相の端子U、V、Wの端子間(例えばU−V間)に発生する電圧、すなわち無負荷の誘導起電力を示したものであり、永久磁石60〜63が4極の構成であることから、機械位相(機械角)180度を周期として、正/負の極性で電圧が発生するという特性のものとなっている。
【0043】
第2の電力変換装置23の構成要素である各双方向スイッチング素子40〜45の駆動方法としては、一般的にDCブラシレスモータの駆動として古来から用いられているような、例えばホールICを用いて、回転子66の位置を検知しながら、120度の電気角での通電を行う矩形波(方形波)の駆動や、電圧・電流の波形が正弦波に近くなるようにPWMする方法、また位置検知をホールICを用いず、例えば各相の電流値の検出値から行うようなセンサレスと呼ばれるような方法であっても良く、また電流のベクトルをd軸成分とq軸成分に分解して制御するベクトル制御と呼ばれるものなど、各種の制御構成が可能である。
【0044】
このように、永久磁石を用いて負荷24の3相電動機が構成されていることから、3相電動機として高効率のものが実現でき、かつ3相電動機が高力率とすることが可能となることから、特に第2の電力変換回路23の構成要素である双方向スイッチング素子40〜45の容量(耐電圧と電流容量の積)を抑えた低コストのものとすることができる。
【0045】
なお、永久磁石を用いた3相電動機を負荷24とする場合、発生する電圧の大きさは、回転の速度に比例するものとなるため、特に高速時においては、線間に高い誘導起電力が発生するものとなり、単相交流電源21の零点付近の低電圧期間が長くなると、電流の供給が困難となる傾向がある。
【0046】
その点に関しては、本実施の形態においては、低電圧期間が短縮される分、負荷24への供給パワーが低下する期間が短くて済むので、良好な動力性能が確保できるものとなる。
【0047】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における電力変換装置の回路図である。
【0048】
図7において、実効値電圧200V、50Hzの単相交流電源21から入力を受け、単相交流電源21より低い波高率の単相交流電圧を出力する第1の電力変換回路80と、第1の電力変換回路80の出力を受ける第2の電力変換回路81は、三相交流電圧を3相電動機で構成した負荷82に出力する。
【0049】
第1の電力変換回路80は、SiC半導体を用いた双方向スイッチング素子85、86とインダクタンス素子87、コンデンサ88を有している。
【0050】
第2の電力変換回路81は、SiC半導体を用いた双方向スイッチング素子90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101を有している。
【0051】
図8は、本実施の形態における電力変換装置の動作波形図であり、(イ)は単相交流電源21の電圧波形、(ロ)は双方向スイッチング素子86の導通率、(ハ)は第1の電力変換回路80の出力電圧波形を示している。
【0052】
双方向スイッチング素子85は、50kHzのキャリア周波数で、PWM(パルス幅変調)されてオンオフを繰り返す動作がなされるものであり、単相交流電源21の瞬時値の絶対値がピークとなる時点で、ほぼ0%の導通率としている。
【0053】
一方、双方向スイッチング素子86は、双方向スイッチング素子85のオフ期間中に、電流がインダクタンス素子87を流すフライホイルダイオードとして動作できるよう駆動信号が与えられている。
【0054】
このような動作により、本実施の形態においては第1の電力変換回路80は、昇圧チョ
ッパ回路として動作するものとなり、第1の電力変換回路80は、(イ)に示される入力の単相交流電源21の電圧よりも高い実効値の電圧を持った(ハ)に示される電圧波形を出力するものとなっている。
【0055】
(ハ)に示している電圧波形については、絶対値が280Vとなっている期間が連続して存在し、正弦波と比較すると、頭がつぶれたような波形となっており、波高率、すなわち最大値/実効値は、正弦波の場合の1.41よりも低く、1.1程度となっている。
【0056】
第2の電力変換回路81は、(ハ)の電圧波形が入力され、双方向スイッチング素子90〜101のスイッチング動作によって、三相交流電圧の負荷82への供給がなされるするものとなるが、入力電圧の最大値に対して、その1/3(=33%)程度以下となると、負荷82への電流供給が困難となってくる低電圧期間となり、(ハ)の電圧波形においては、280V/3=93Vを下回る期間については、駆動困難な期間となる。
【0057】
本実施の形態においては、93Vを下回る期間の長さは、ほぼ1msであり、これは正弦波の場合の2msと比較してほぼ1/2の期間に抑えられたものとなる。
【0058】
よって、単相交流電源21の電圧の瞬時値がゼロとなるタイミング(零電圧点)の前後の低電圧期間に発生する出力パワーの低下期間を短縮することができ、もって負荷82に対しての供給パワーの変動を抑えた、電力変換装置が実現されるものとなる。
【0059】
なお、負荷82は、3相の電動機(モータ)で構成されたものとなっているため、その発生トルクの変動を小さく抑え、動力性能が高いと共に、トルク変動に起因する振動などの発生に関しても、極力低減したものとすることができるものである。
【0060】
双方向スイッチング素子85、86、90〜101の構成は、前実施の形態で説明した図3と同等の断面図のものを使用している。
【0061】
図9は、本実施の形態における負荷82の構成図を示しているものとなっている。
【0062】
3相電動機として構成した負荷82は、珪素鋼板を積層して構成した鉄心110が出力軸111を中心として回転自在に設けた回転子112と、回転子112の外側に設けた固定子117を有する構成であり、固定子117は、やはり珪素鋼板を積層して構成した鉄心118、巻線120〜125によって構成している。
【0063】
図10は、巻線120〜125の結線図を示している。
【0064】
巻線120〜125については、機械的に180度の位置に設けたもの同士が直列に接続され、電流が流れ込んだ時に、異極が回転子112に対向する場所に発生する構成となり、例えばUからX端子へと電流が供給された場合、その電流による磁束は、軸111を貫通するような形で、発生するものとなる。
【0065】
図11は、本実施の形態の負荷82を外部から駆動した場合の3相の内の一つの相であるU−X端子間のインダクタンス値(自己インダクタンス値)を示したものであり、機械位相(機械角)90度を周期として、インダクタンスは変化し、極大値Lmaxと極小値Lminが発生するという特性のものとなっている。
【0066】
第2の電力変換装置81の構成要素である各双方向スイッチング素子90〜101が、回転子112と固定子117の相対的な位置関係(位相)に応じて、スイッチングされ、インダクタンスが(LminからLmaxへと)増大する期間において、電流が供給され
ることにより、リラクタンストルクが発生するものとなり、第2電力変換装置81から負荷82への電気パワーの供給がなされると同時に、負荷82における電気パワーから機械パワーへの変換も行われるものとなる。
【0067】
本実施の形態においては、各巻線120〜125に流れる電流により発生するリラクタンストルクは、電流の極性には関係なく、インダクタンスが増加する期間でさえあれば正のトルクが発生するものとなることから、双方向スイッチング素子90〜101のオンオフ制御によって、第1の電力変換回路80の出力電圧の極性により、正/負いずれの極性の電流が供給されても、同等に電気パワーが負荷82に供給され、負荷82は3相電動機として、電気パワーから機械パワーを出力するという動作が行われるものとなるので、制御が比較的簡単に実現できるものとなる。
【0068】
実施の形態2のような永久磁石を使用した負荷と比較すると、速度に比例して発生してしまう誘導起電力という性質の電圧がない分、単相交流電源21の零電圧付近の低電圧期間が存在する電源環境での動作には有利となる部分もあるが、さらにその上で、本実施の形態においては、第1の電力変換回路80の作用により低電圧期間が短縮される分、負荷82への供給パワーが低下する期間が短くて済むので、良好な動力性能が確保できるものとなる。
【0069】
(実施の形態3)
図12は、本発明の第3の実施の形態における電力変換装置の断面図である。
【0070】
図12において、実施の形態1で述べた構成の電力変換装置130、負荷131、負荷131に取り付けて回転するファン132を有し、紙パック133とともに筐体134内に納められ、ホース140とノズル141が紙パックから接続されたものとなっている。
【0071】
さらに、床面を移動自在とするための前輪142、後輪143が筐体134に回転自在に取り付けられ、電力変換相130に単相交流電源150を接続するための電源プラグ151、および電源コード152が接続されたものとなり、真空式の電気掃除機という構成となっている。
【0072】
以上の構成において、ファン132が毎分数万回転で回転駆動され、ノズル141からホース140を通じて紙パック133内にゴミが集められ、掃除ができるものとなる。
【0073】
ここで、電力変換装置130は、第1の実施の形態で述べたように、コンデンサ、インダクタンス素子などが小型・軽量のもので構成することができるものとなるため、電気掃除機として、小型・軽量で使い勝手が非常に良いものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる電力変換装置は、単相交流電源の零点付近の低電圧期間での負荷への電流供給が改善され、供給パワーの変動が小さい電力変換装置が提供できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1における電力変換装置の回路図
【図2】同、電力変換装置の動作波形図
【図3】同、電力変換装置の双方向スイッチング素子の断面図
【図4】同、電力変換装置の負荷の断面図
【図5】同、電力変換装置の負荷の結線図
【図6】同、電力変換装置の負荷の誘導起電力波形図
【図7】本発明の実施の形態2における電力変換装置の回路図
【図8】同、電力変換装置の動作波形図
【図9】同、電力変換装置の負荷の断面図
【図10】同、電力変換装置の負荷の結線図
【図11】同、電力変換装置の負荷のインダクタンス波形図
【図12】本発明の実施の形態3における電気掃除機の断面図
【図13】従来の技術における電力変換装置の回路図
【符号の説明】
【0076】
21、150 単相交流電源
22、80 第1の電力変換回路
23、81 第2の電力変換回路
24、82、131 負荷(3相電動機)
30、31、40、41、42、43、44、45、85、86、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101 双方向スイッチング素子
32、87 インダクタンス素子
50 SiC半導体
60、61、62、63 永久磁石
132 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相交流電源から入力を受けて、前記単相交流電源より低い波高率の単相交流電圧を出力する第1の電力変換回路と、前記第1の電力変換回路の出力を受けて、三相交流電圧を負荷に出力する第2の電力変換回路を有し、前記第1の電力変換回路と前記第2の電力変換回路は、いずれも双方向スイッチング素子を有する電力変換装置。
【請求項2】
第1の電力変換回路は、入力される単相交流電源よりも低い実効値の電圧を出力する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
第1の電力変換回路は、入力される単相交流電源よりも高い実効値の電圧を出力する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
第1の電力変換回路は、インダクタンス素子を有する請求項2または請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
少なくとも1個の双方向スイッチング素子は、SiC半導体で構成した請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
負荷は、永久磁石を有する3相電動機とした請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
負荷は、機械位相によってインダクタンスが変化する3相電動機とした請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
負荷である3相電動機は、ファンを負荷とした電気掃除機である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−74869(P2010−74869A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236070(P2008−236070)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】