説明

電力用機器監視システム

【課題】発電所等の施設に設けられた機器の点検作業時のヒューマンエラーを確実に防止する。
【解決手段】遮断器10の扉スイッチ16は、扉の開閉操作を検出して開閉信号Sbを情報処理装置30に供給する。遮断器10の電圧検出リレー14は、電源スイッチ12のオンまたはオフ操作を検出して検出信号Saを情報処理装置30に供給する。情報処理装置30のCPU32は、扉スイッチ16から取り込んだ開閉信号Sbに基づく開閉情報および電圧検出リレー14から取り込んだ検出信号Saに基づく電源情報が、ROM40から読み出した通常動作時の状態と同一であるか否かを判断する。CPU32は、扉スイッチ16がオンの状態で、電源情報がオフの状態である場合には、作業員が作業終了後において電源スイッチを戻し忘れたものと判断して、表示装置50の画面に該当機器の機器番号を表示することで、作業員に点検作業が正常に終了していない旨を警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力施設に設けられた各機器の点検作業において作業員の操作ミスや操作忘れ等を監視する電力用機器監視システムに関する。詳しくは、点検作業終了後において機器の電源スイッチの戻し忘れが発生した場合に作業員にその旨を報知するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所等の施設においては、各機器の調査や点検作業が定期的に実施されている。点検作業時には、機器の制御用電源スイッチを「切り」や「停止」に切り替えて機器を停電させた後に作業が行われると共に、作業員の誤操作や操作失念によるヒューマンエラーの発生を防止するために機器に対する操作チェック項目等が予め記載された操作票や操作チェック表等の帳票が活用されている。
【0003】
ところが、このような操作票や操作チェック表等を予め作成していても、機器の故障発生等の緊急時に対応した帳票がないことや、操作者が通常の作業時において帳票を活用しない場合があった。その結果、帳票を用いないことによる誤操作や操作忘れ等が発生しており、特に、点検作業終了後に電源スイッチをオンに戻し忘れてしまうという問題が発生し易かった。
【0004】
機器の電源スイッチを戻し忘れてしまった場合には、電力用機器の運転に多大な障害が発生してしまう。例えば、遮断器のスイッチを戻し忘れた場合には、電力設備に事故が発生しても遮断器が動作せず、事故影響が拡大し広範囲に渡って停電が発生する。また、断路器のスイッチを戻し忘れた場合には、操作時、遠方制御が不能となり、現地へ人を派遣しなければならない。
【0005】
特許文献1には、機器の操作前に当該操作に関して確認すべき条件項目の全てを表示画面上に表示させ、表示画面上に表示された条件項目の全てについて、運転員によるタッチ確認操作が完了したことを検出したことを条件に、機器の運転/停止の操作指令を許可することで、操作ミスの発生を防止する運転操作装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−95631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示される運転操作装置では、機器の運転/停止の操作指令を許可するための条件項目を表示画面に表示させる装置であるため、機器の点検作業終了時における各機器の電源スイッチがオン状態に戻されたか否かの確認までは行われない。そのため、点検作業終了後の各機器のスイッチの戻し忘れについては防止できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発電所等の施設に設けられた機器の点検作業時のヒューマンエラーを確実に防止することが可能な電力用機器監視システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、電力用機器の点検作業が正常に終了したか否かを監視する電力用機器監視システムであって、機器の扉に設けられ、当該扉の開閉状態を検出して開閉情報を出力する第1の検出部と、機器の電源をオンまたはオフに切り替える切替部に接続され、当該切替部の切り替え状態を検出して電源情報を出力する第2の検出部と、第1の検出部から出力される開閉情報と第2の検出部から出力される電源情報とに基づいて作業が正常に終了したか否かを判断する制御部と、制御部の判断結果に基づいて報知する報知部とを備え、制御部は、第1の検出部から扉が閉した状態を示す開閉情報が供給されると共に、第2の検出部から機器の電源がオフ状態を示す電源情報が供給された場合、機器の作業が正常に終了していない旨を報知部により報知するように制御するものである。
【0010】
例えば、機器の作業開始時には、機器の電源スイッチをオフ状態とし、機器の回路等を停電させた状態で機器の点検作業を行い、機器の点検作業終了時には電源をオン状態に戻して点検作業を終了している。本発明においては、例えば発電所等の施設内に設けられた機器の点検作業が行われる場合に、第1の検出部により機器の扉の開閉状態が検出される。また、第2の検出部により機器の電源のオンまたはオフの切り替えが検出される。
【0011】
制御部では、第1の検出部から機器の扉が閉じた状態を示す開閉情報が供給された後に、第2の検出部から機器の電源がオフ状態を示す電源情報が供給されたか否かが判断される。すなわち、機器の電源スイッチをオンに戻し忘れた状態で、機器の扉が閉じられて点検作業が終了したか否かが判断される。機器の扉は、点検作業中に何度か開閉される場合があるので、例えば閉状態を示す開閉情報が供給されてから、予め設定した設定時間が経過した場合に点検作業が終了したものと判断する。
【0012】
制御部では、機器の電源がオフ状態のままで扉が閉じられたと判断した場合には、機器の点検作業が正常に終了していないと判断して、その旨を報知部により作業員に報知させる。報知部は、例えば表示装置で構成することができ、点検作業が正常に終了していない機器の例えば識別番号を画面に表示させることで、作業員に対して機器回路に異常が発生している旨を警告表示する。なお、報知部としては、ブザー音や異常が発生している旨の音声を用いて作業員に警告するようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各機器の電源の状態情報や扉の開閉情報を取得して、機器の点検作業終了時に電源の戻し忘れが発生した場合には、その旨を表示装置の画面に警告表示をするため、機器の電源スイッチの戻し忘れを確実に防止することができる。その結果、事故発生時の事故拡大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力用機器監視システムの概略構成の一例を示す図である。
【図2】表示装置に表示される警告画面の一例を示す図である。
【図3】ROMに記憶される常時状態情報テーブルの一例を示す図である。
【図4】電力用機器監視システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】取得した機器の電源情報および開閉情報の一例を示す図である。
【図6】機器の電源スイッチのオンおよびオフ回数のカウントの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。 [電力機器監視システムの構成例]
図1は、本発明の一実施形態に係る電力機器監視システム100の構成の一例を示している。電力機器監視システム100は、例えば発電所等の施設60内に設置され、各機器の点検作業終了後において電源スイッチの戻し忘れがないか否かを監視し、作業終了後にも係らず電源スイッチがオン状態に戻されていない場合には作業者にその旨を警告表示するものである。
【0016】
本例では、施設として発電所を一例として説明し、発電所に設けられた機器の一例としては遮断器10および空気圧縮機20について説明する。遮断器10は電源をオンまたはオフするための制御用電源スイッチ(以下電源スイッチという)12を備え、空気圧縮機20は自動、停止、手動に切り替えるための電源スイッチ(切替部)22を備えている。施設60には入退室62が設けられており、作業員や社員等は入退室62を経由して施設60に出入りする。
【0017】
電力機器監視システム100は、図1に示すように、電圧検出リレー14,24と扉スイッチ16,26と情報処理装置30と表示装置50とを備えている。電圧検出リレー14は、遮断器10の電源スイッチ12に接続され、電源スイッチ12がオンしたときに接点の切り替わりにより発生する電圧を検出し、この電圧に基づく検出信号Saを情報処理装置30のCPU32に出力する。例えば、遮断器10の電源スイッチ12がオンの場合には検出信号Saがオンとなり、電源スイッチ12がオフの場合には検出信号Saがオフとなる。電圧検出リレー14は、第2の検出部の一例を構成している。
【0018】
扉スイッチ16は、遮断器10の図示しない扉に設置され、例えば点検作業時における作業員の扉の開閉操作を検出し、この開閉操作に基づく開閉信号Sbを情報処理装置30のCPU32に出力する。例えば、扉が開いて扉スイッチ16がオフとなった場合には開閉信号Sbがオフとなり、扉が閉じて扉スイッチ16がオンとなった場合には開閉信号Sbがオンとなる。なお、本例では、機械的なスイッチを用いたが、例えば、赤外線センサ等を用いても良い。扉スイッチ16は、第1の検出部の一例を構成している。
【0019】
電圧検出リレー24は、空気圧縮機20の電源スイッチ22に接続され、電源スイッチ22がオンしたときに接点の切り替わりにより発生する電圧を検出し、この電圧に基づく検出信号Scを情報処理装置30のCPU32に出力する。例えば、空気圧縮機20の電源スイッチ22がオンの場合には検出信号Scがオンとなり、電源スイッチ22がオフの場合には検出信号Scがオフとなる。電圧検出リレー24は、第2の検出部の一例を構成している。
【0020】
扉スイッチ26は、空気圧縮機20の図示しない扉に設置され、例えば点検作業時における作業員の扉の開閉操作を検出し、この開閉操作に基づく開閉信号Sdを情報処理装置30のCPU32に出力する。例えば、扉が開いて扉スイッチ26がオフとなった場合には開閉信号Sdがオフとなり、扉が閉じて扉スイッチ26がオンとなった場合には開閉信号Sdがオンとなる。なお、本例では、機械的なスイッチを用いたが、例えば、赤外線センサ等を用いても良い。また、扉スイッチ26は、第1の検出部の一例を構成している。
【0021】
情報処理装置30は、各機器から取り込んだ電源の状態や扉の状態に基づいて点検作業終了時における各機器の電源の戻し忘れ等を監視する装置であって、CPU(Central Processing Unit)32とROM(Read Only Memory)40とRAM(Random Access Memory)42とを備えている。なお、本例では、情報処理装置30を発電所等の施設60内に設置した例を示しているが、施設60外の制御所等に設置することもできる。ROM40は、記憶部の一例であり、情報処理装置30を動作させるためのプログラムや後述する常時状態情報テーブルTB等を記憶する。RAM42は、ROM40から読み出したプログラム等の一時的な格納領域として用いられる。CPU32は、ROM40に記憶されているプログラムを読み出してプログラムに基づく電源監視処理等を実行する。
【0022】
CPU32は、制御部の一例であり、符号化部34とデータ処理部36とデータ出力部38とを有している。符号化部34は、各電圧検出リレー14,16から供給される検出信号Sa,Scおよび各扉スイッチ16,26から供給される開閉信号Sb,Sdを取り込んだ後に符号化してデータ処理部36に供給する。このとき、例えばデータを取り込んだ端子位置から信号の送信元を判断し、符号化した検出信号Sa,Scおよび開閉信号Sb,Sdに応じた各データに機器識別情報を付加してデータ処理部36に供給する。
【0023】
データ処理部36は、予め設定された電圧検出リレー14,24の通常動作時の常時基準電源情報と、符号化部34で符号化された電圧検出リレー14,24の電源情報とを比較し、現在の電圧検出リレー14,24の状態が常時の状態と相違しているか否かを判断する。同様に、予め設定された扉スイッチ16,26の通常動作時の常時開閉情報と、符号化部34で符号化された扉スイッチ16,26の開閉情報とを比較し、現在の扉スイッチ16,26の状態が常時の状態と相違しているか否かを判断する。なお、電源情報は符号化前の各検出信号Sa,Scに対応し、開閉情報は符号化前の各開閉信号Sb,Sdに対応している。データ処理部36は、これらの比較結果に基づいて、点検作業終了後においても電源がオフ状態であって電源スイッチの戻し忘れが発生したと判断した場合には、該当する機器の機器番号情報をデータ出力部38に出力する。
【0024】
データ出力部38は、表示装置50に接続され、データ処理部36から供給される機器番号情報に基づいて警告表示を行うための表示データを生成して表示装置50に出力する。
【0025】
表示装置50は、報知部の一例であり、例えば液晶ディスプレイ等から構成され、施設60の入退室62内に設置されている。表示装置50は、情報処理装置30のデータ出力部38から供給される表示データに基づいて、点検作業終了後に機器の電源スイッチを戻し忘れている旨の警告表示を作業者に対して行う。図2は、表示装置50の画面に表示される警告表示の一例を示している。画面50aには、点検作業終了後において電源スイッチを戻し忘れにより電源がオフ状態となっている機器の機器番号が表示される。本例では、遮断器10および空気圧縮機20の電源がオフ状態であることを示す機器番号「201」,「202」の文字が表示される。また、機器番号の上方には「警告」の文字が例えば赤色で点灯表示される。一方、警告表示後に、作業員によって機器の電源がオン状態に切り替えられた場合には、情報処理装置30の指示に基づいて警告表示を画面50aから消去する。なお、文字等による警告表示だけでなく、ブザー音や音声によって作業員に警告しても良い。この場合、人感センサ等を用いて作業員が入退室62から退出するタイミングで、ブザー音等により作業員に、機器の点検作業が正常に終了していない旨を報知する。
【0026】
[常時状態情報テーブルの一例]
図3は、ROM40に記憶される常時状態情報テーブルTBの一例を示している。ROM40には、機器毎に、通常動作時の電圧検出リレー14,24(電源スイッチ)の常時電源情報および扉スイッチ16,26の常時開閉情報とがそれぞれ対応付けられて記憶されている。例えば、遮断器10の場合には、電源スイッチ12がオンされて電圧検出リレー14がオン状態となっているときの「1」が記憶され、扉が閉じて扉スイッチ16がオン状態となっているときの「1」が記憶される。空気圧縮機20についても、遮断器10と同様である。なお、常時状態情報テーブルは、ROM40以外の不揮発性メモリやHDD(Hard disk drive)等のメモリに記憶しても良い。
【0027】
[電力機器監視システムの動作例]
図4は、本発明の一実施形態に係る電力機器監視システム100における情報処理装置30のCPU32の動作の一例を示すフローチャートである。図5は、遮断器10から取得した電源情報および開閉情報の一例を示す図である。以下の例では、遮断器10を主として説明する。
【0028】
図4に示すように、ステップS10でCPU32は、各機器で検出された電源スイッチの状態を示す電源情報および各機器の扉の開閉状態を示す開閉情報を取得する。例えば、CPU32は、遮断器10の電圧検出リレー14から出力される電源情報としての検出信号Saを取得すると共に、扉スイッチ16から出力される開閉情報としての開閉信号Sbを取得する。CPU32は、電源情報および開閉情報を取得したらステップS12に進む。
【0029】
ステップS12でCPU32は、取得した各機器の電源情報と常時の機器の電源情報とが同じ状態であるか、および、取得した各機器の開閉情報と常時の機器の開閉情報とが同じ状態であるか否かを判断する。例えばCPU32は、遮断器10の電圧検出リレー14から検出信号Saが供給されると、ROM40から常時状態情報テーブルTBを読み出して、読み出した常時状態情報テーブルTBの常時電源情報と電圧検出リレー14から得た電源情報とを比較し、遮断器10の電圧検出リレー14から取得した電源情報が常時電源情報と同じ状態であるか否かを判断する。CPU32は、取得した各機器の電源情報および開閉情報が常時の状態と同じ状態であると判断した場合には機器が正常であるとしてステップS10に戻り、各機器の電源情報や開閉情報の状態の監視を継続して行う。例えば、図5に示すように、電圧検出リレー14からの電源情報が「1」であり、扉スイッチ16からの開閉情報が「1」である場合には常時情報(図3参照)と同一の状態であるため、この場合には各機器の状態が正常であると判断する。
【0030】
一方、取得した各機器の電源情報および開閉情報が常時の状態と同じ状態でないと判断した場合にはステップS14に進む。常時と異なる事象としては、例えば、図5に示すように、電源情報が「0」、開閉情報が「0」である場合や電源情報が「1」、開閉情報が「0」の場合であって、点検作業のために機器の扉が開状態となっている場合や、電源情報が「0」、開閉情報が「1」であって、機器の扉は閉じているが機器の電源スイッチがオフ状態となっている場合等が挙げられる。また、電源情報が「0」、開閉情報が「1」である場合には、機器の回路に異常が発生している可能性も考えられる。
【0031】
ステップS14でCPU32は、電源情報や開閉情報の状態が常時の状態と相違している機器において、扉スイッチがオフ状態であるか否かを判断する。つまり、扉を開いた状態で点検作業が開始されたか否かを判断する。例えば、CPU32は、遮断器10の扉スイッチ16から供給される開閉信号Sbがオフ状態であるか否かにより判断する。CPU32は、該当する機器の扉スイッチがオフ状態でないと判断した場合にはステップS16に進む。
【0032】
一方、CPU32は、該当する機器の扉スイッチがオフ状態であると判断した場合にはステップS28に進む。ステップS28でCPU32は、上記結果からステップS12において電源スイッチが常時と異なるオフ状態となっていると判断できるので、作業員が機器の電源を戻し忘れて扉を閉じて点検作業を終了してしまったと判断して、例えば表示装置50の画面50aに該当する機器の機器番号を警告表示する(図2参照)。
【0033】
ステップS16でCPU32は、該当する機器において点検、作業時に行われる機器の電源スイッチの入り(オン)および切り(オフ)の回数をカウントする。図6は、遮断器10の電源スイッチの操作回数のカウント例を示している。図6に示すように、CPU32は、遮断器10の電圧検出リレー14から供給される、電源スイッチ12のオンおよびオフ操作に応じて発生する電圧の有、無に基づく検出信号Saの状態変化をカウントする。例えば、図6では、電源スイッチ12の入り状態を初期状態とすると、「入り」回数が2回であり、「切り」回数が2回となるので、電源オンおよびオフの合計回数は4回(偶数)となる。このように、電源スイッチのオンおよびオフの合計回数を用いて機器の電源状態を判断することで、機器の電源入れ忘れを正確に判断できる。
【0034】
ステップ18でCPU32は、該当する機器の扉スイッチがオン状態となったか否かを判断する。つまり、点検作業の終了により扉が閉じられたか否かを判断する。例えば、CPU32は、遮断器10の扉スイッチ16から供給される開閉信号Sbがオフ状態からオン状態になったか否かを判断する。CPU32は、該当する機器の扉スイッチがオン状態に切り替わったと判断した場合には、該当する機器の点検、作業の終了により扉が閉じられたものと判断してステップS20に進む。一方、CPU32は、該当する機器の扉スイッチがオフ状態の場合には、点検作業がまだ継続して実施されているものと判断してステップS16に戻り、機器の電源スイッチのオンおよびオフの回数を継続してカウントする。
【0035】
ステップ20でCPU32は、該当する機器の扉スイッチがオン状態となってから、予め設定された設定時間が経過したか否かを判断する。この設定時間は、点検、作業終了により扉が閉じられた場合と、点検、作業中において扉を開閉させた場合とを識別するための時間であり、たとえば作業員の経験則に基づいて設定される。点検、作業終了後は扉が継続して閉じた状態となるので、所定の設定時間、扉が開かない場合には点検、作業が終了したものと判断できる。設定時間としては、例えば20秒程度が好ましく、図示しない操作部により任意の時間が設定可能である。これにより、点検作業が終了したか否かを正確に判断できる。CPU32は、設定時間が経過したと判断した場合にはステップS22に進み、設定時間が経過していないと判断した場合にはステップS24に進む。
【0036】
ステップS24でCPU32は、設定時間のカウント中において該当する機器の扉スイッチがオフ状態となったか否かを判断する。例えば、CPU32は、遮断器10の扉スイッチ16から供給される開閉信号Sbがオン状態からオフ状態になったか否かを判断する。CPU32は、該当する機器の扉スイッチがオフ状態になったと判断した場合にはステップS26に進む。ステップS26でCPU32は、電源スイッチのオンおよびオフの回数用のカウンタをリセットしてステップ16に戻り、再度機器の電源スイッチのオンおよびオフをカウントする。一方、該当する機器の扉スイッチがオフ状態になっていないと判断した場合にはステップ20に戻り、設定時間が経過したか否かを継続してカウントする。
【0037】
ステップS22でCPU32は、該当する機器の電源スイッチのオンおよびオフのカウント値が奇数であるか否かを判断する。CPU32は、カウントが奇数であると判断した場合には、機器の電源スイッチを戻し忘れて(オフ状態で)点検作業を終了して扉を閉じたか、または、機器回路に異常が発生したと判断してステップS28に進む。一方、CPU32は、カウント値が偶数であると判断した場合には、機器のスイッチを戻して(オン状態で)点検作業を終了して扉を閉じたと判断して、つまり機器が正常に終了したと判断してステップ10に戻り、再度各機器の状態を監視する。
【0038】
ステップS28でCPU32は、機器の電源スイッチのオンおよびオフのカウント値が奇数である場合には、点検、作業終了後において電源スイッチの入れ忘れや、機器回路に異常が発生したものと判断して、表示装置50の画面50a上に機器回路に異常が発生していることを作業者に警告する。例えば、図2に示したように、点検作業終了時において遮断器10の電源の戻し忘れや、機器回路に異常が発生した場合には、遮断器10に割り当てられた機器番号「201」の文字を画面50aに表示すると共に、機器番号の上方に「警告」の文字を表示して作業者に警告する。本実施の形態においては、このような一連の動作が繰り返し実行される。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、情報処理装置30により各機器の電源の状態情報や扉の開閉情報を取得して、機器の点検作業終了時において扉が閉じた状態で電源がオフになっている場合には、電源スイッチを戻し忘れたと判断して表示装置50の画面に警告表示をするため、作業者は電源スイッチを戻し忘れたとしても警告表示により電源スイッチを入れ直して正常状態に戻すことができる。これにより、電源スイッチの戻し忘れを確実に防止することができ、事故発生時の事故拡大を防止することができる。
【0040】
また、表示装置50を入退室62内に設置するため、作業者は退出時に必ず入退室62を通過することになるので、退出時に機器のスイッチの操作状況を確認することができる。その結果、機器の電源スイッチの戻し忘れを確実に防止することができる。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、扉スイッチ16,26がオンとなっている場合、作業により一回以上扉が開閉したことで扉スイッチ16,26がオンになっているときと、扉スイッチ16,26を一回も開閉していない状態で扉スイッチ16,26がオンになっているときがある。ここで、機器の電源がオフであって、機器の扉を一回も開閉していない状態で扉スイッチ16,26がオンになっている場合、機器の電源のオフの理由が、扉は開閉されていないので、作業終了後の電源の戻し忘れではなく、機器回路の異常である可能性が高いと考えられる。そのため、この扉スイッチ16,26がオン状態の場合を区別することで、エラーの原因をより正確に判断することができる。
【0042】
具体的には、上記実施の形態で説明した図4の動作フローに機器の扉の開閉回数をカウントする動作を加えた処理を実行する。CPU32は、図4に示すステップS16で機器の電源スイッチ12,22のカウントに加えて、扉スイッチ16,26の開閉回数をカウントする。そして、ステップS22において、予め設定された時間の経過後に、電源スイッチ12,22のカウントが奇数回(電源オフ)であって、かつ、扉スイッチ16,26のカウントが1回以上でオン状態であるか否かを判断する。
【0043】
CPU32は、電源スイッチ12,22のカウントが奇数回であって、かつ、扉スイッチ16,26のカウントが1回以上でオン状態である場合には、作業時に機器の扉が開閉されたと考えられるので、作業終了後において電源の戻し忘れが発生したと判断する。一方、電源スイッチ12,22のカウントが奇数回であって、かつ、扉スイッチ16,26のカウントが0回でオン状態の場合には、実際に作業は行われていないと考えられるので、機器回路の異常が発生したと判断する。
【0044】
CPU32は、機器の電源スイッチ12,22のカウント値や、扉スイッチ16,26の開閉回数のカウント値、機器番号を表示装置50に表示すると共に、エラーの原因が作業終了後の電源の戻し忘れであるか、または、機器回路の異常であるかを文字情報等により表示装置50に表示する。これにより、作業員はエラーの原因を正確に判断することができ、エラーの復旧作業を効率的に行うことができる。
【0045】
また、上記実施の形態では、機器として遮断器10および空気圧縮機20について説明したが、これらに限定されることはなく、断路器等の開閉機器や活線浄油機および排水ポンプ等の補器等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10・・・遮断器(機器)、14,24・・・電圧検出リレー(第2の検出部)、16,26・・・扉スイッチ(第1の検出部)、20・・・空気圧縮機(機器)、30・・・情報処理装置、32・・・CPU(制御部)、40・・・ROM(記憶部)、50・・・表示装置、62・・・入退室、100・・・電力用機器監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用機器の点検作業が正常に終了したか否かを監視する電力用機器監視システムであって、
前記機器の扉に設けられ、当該扉の開閉状態を検出して開閉情報を出力する第1の検出部と、
前記機器の電源をオンまたはオフに切り替える切替部に接続され、当該切替部の切り替え状態を検出して電源情報を出力する第2の検出部と、
前記第1の検出部から出力される前記開閉情報と前記第2の検出部から出力される前記電源情報とに基づいて前記作業が正常に終了したか否かを判断する制御部と、
前記制御部の判断結果に基づいて報知する報知部とを備え、
前記制御部は、前記第1の検出部から前記扉が閉した状態を示す開閉情報が供給されると共に、前記第2の検出部から前記機器の電源がオフ状態を示す電源情報が供給された場合、前記機器の作業が正常に終了していない旨を前記報知部により報知するように制御する
ことを特徴とする電力用機器監視システム。
【請求項2】
通常動作時における前記機器の前記扉の開閉状態を示す常時開閉情報と、通常動作時における前記機器の前記電源の状態を示す常時電源情報とを前記機器毎に対応付けて記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記常時開閉情報と前記第1の検出部から供給される前記開閉情報とを比較すると共に、前記記憶部に記憶されている前記常時電源情報と前記第2の検出部から供給される前記電源情報とを比較し、当該比較結果に基づいて前記機器の作業が正常に終了したか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力用機器監視システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の検出部から前記扉の閉状態を示す開閉情報が供給されてから予め設定された設定時間が経過した場合に、前記機器の作業が正常に終了したか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力用機器監視システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の検出部から供給される前記機器の前記電源情報に基づく電源の切り替え回数をカウントし、当該カウントにより得られた前記切り替え回数に基づいて前記機器の電源状態を判断する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の電力用機器監視システム。
【請求項5】
前記報知部は、点検作業が正常に終了していない機器を示す情報を画面に表示する表示装置であって、
前記表示装置は、前記機器が設けられている施設の入退室に設けられた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電力用機器監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208842(P2012−208842A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75268(P2011−75268)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】