説明

電力線通信を用いた無線ネットワークシステム

【課題】本発明は、電力線通信(PLC)を用いた無線ネットワークシステムに関し、より詳細には、超広帯域(Ultra Wide−Band)中継器を介して一つ以上の超広帯域ネットワークを電力線で連結し、互いに異なる超広帯域ネットワーク間の通信を支援する無線ネットワークシステムに関する。
【解決手段】本発明の一実施例に係る電力線通信を用いた無線ネットワークシステムは、超広帯域(Ultra−Wideband;UWB)データ信号を生成する一つ以上のデバイスを含む第1ピコネットと、前記超広帯域データ信号をPLCデータ信号に変換する超広帯域中継器部と、前記第1ピコネットと第2ピコネットを物理的に連結し、前記変換されたPLCデータ信号を前記第2ピコネットに送信するための電力線部と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線通信(PLC)を用いた無線ネットワークシステムに関し、より詳細には、超広帯域(Ultra Wide−Band)中継器を介して一つ以上の超広帯域ネットワークを電力線で連結し、互いに異なる超広帯域ネットワーク間の通信を支援する無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超広帯域(UWB)通信の応用は、1960年度から軍事的な目的として開発しているレーダー分野や地下埋設物のイメージ識別分野、安全分野などで持続的に研究・開発され、1990年度以後には通信用として研究され始めた。現在、超広帯域通信は、480Mbps以上の無線送信速度を提示することができる技術であり、電気電子学会(Institute of Electrical and Electronics Engineers;IEEE)の802.15.3aおよび802.15.3bで標準化が進行されている。
【0003】
超広帯域通信は、ピコネット(Pico−net)内のデバイス間の通信のみを支援するため、マルチホップ(Multi−hop)を支援しない。従って、超広帯域通信では、互いに異なる超広帯域ネットワーク間のデータ送信が支援されない。また、このように、同一のピコネット(超広帯域ネットワーク)内に属したデバイス間の通信のみが可能であるため、データ送信距離が短く、通信可能範囲が狭いという短所があった。
【0004】
また、従来の技術には、PLC(Power Line Communication)で連結されたデータサーバと無線デバイス間の通信システムもあったが、これは超広帯域ネットワーク間の通信ではないPLCと超広帯域ネットワークを備えたシステムであり、無線デバイス間の通信を解決することができるものではなかった。このような従来技術による超広帯域ネットワークシステムの一例が図1に示されている。
【0005】
図1は、従来の一般的な超広帯域ネットワーク通信システムの概略的な構成を示した図である。
【0006】
図1を参照すると、一つのピコネット110、120は、超広帯域チップを内蔵している一つ以上の超広帯域デバイス111、112、113、121、122、123で構成されており、同一のピコネットに属するデバイス間では通信の遂行が可能である。しかし、上述したように、従来技術によると、このような超広帯域ネットワークシステムにおいて、異なる識別子を有するピコネットに属するデバイス間(例えば、111と121との間)の通信は不可能であった。
【0007】
本出願明細書では、このようなピコネット間の通信が成されないマルチホップの不可能性の問題を克服し、電力線通信を用いて超広帯域信号を送信することができるシステムと、既存の一つ以上の超広帯域ネットワークとを相互連結する場合に発生する恐れのある陰影地域を最小化して超広帯域通信の活用範囲を拡張することができる無線ネットワークシステムの構成を提示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような従来技術を改善するために案出されたものであって、高速PLCを用いてピコネット間の通信のための無線ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、超広帯域中継器を提供することで、超広帯域ピコネット間の通信が成されないマルチホップの不可能性の問題を克服する無線ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、PLCを用いて電力線が連結された場所であれば超広帯域信号の送信が可能であるため、追加的な配線がなくても既存の電力線を用いて無線ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、無線信号を用いるネットワーキング時に発生する恐れのある陰影地域を最小化することができるシステムを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、高速PLCを用いることで超広帯域の活用範囲を拡張することができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成し、上述した従来技術の問題点を解決するために、本発明は、超広帯域(Ultra−Wideband;UWB)データ信号を生成する一つ以上のデバイスを含む第1ピコネットと、前記超広帯域データ信号をPLCデータ信号に変換する超広帯域中継器部と、前記第1ピコネットと第2ピコネットを物理的に連結し、前記変換されたPLCデータ信号を前記第2ピコネットに送信するための電力線部と、を含むことを特徴とする無線ネットワークシステムを提供する。
【0014】
また、本発明の一側に係る無線ネットワーク送信システムの中継器(relay)手段において、第1ピコネットに属する一つ以上のデバイス間に送信される超広帯域(UWB)データ信号の送受信を担当するアンテナ部と、前記超広帯域データ信号を前記PLCデータ信号に変換する信号変換器と、前記超広帯域データ信号のピコネット識別子を確認し、前記ピコネット識別子に従って前記超広帯域データ信号をルーティングする超広帯域モジュール部と、前記変換されたPLCデータ信号を多重化(multiplexing)して前記電力線部に送信する高速PLCモデム部と、を含むことを特徴とする超広帯域中継器が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、高速PLCを用いてピコネット間の通信のための無線ネットワークシステムが提供される。
【0016】
また、本発明によると、超広帯域中継器を提供することで、超広帯域ピコネット間の通信が成されないマルチホップの不可能性の問題を克服する無線ネットワークシステムが提供される。
【0017】
また、本発明によると、PLCを用いて電力線が連結された場所であれば超広帯域信号を送信することができるため、追加的な配線がなくても既存の電力線を用いて無線ネックワークシステムが提供される。
【0018】
また、本発明によると、無線信号を用いるネットワーキング時に発生する恐れのある陰影地域を最小化することができるシステムが提供される。
【0019】
また、本発明によると、高速PLCを用いることで超広帯域の活用範囲を拡張するシステムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る高速PLCを用いた無線ネットワークシステムに対して詳しく説明する。
【0021】
図2は、本発明が適用される超広帯域ピコネット間の通信のためにPLCを用いた無線ネットワークシステムの一例を示した図である。
【0022】
図2を参照すると、本発明の(高速)PLCを用いた無線ネットワークシステムは、一つ以上のピコネット250、260、270と、超広帯域中継器部220、230、240と、電力線部210と、で構成される。
【0023】
図2を参照すると、無線ネットワークシステムの一つ以上のピコネット250、260、270は、それぞれ超広帯域デバイス251、252、253、261、262、263、271、272、273を含み、当業者にとっては周知のように、ピコネット250、260、270は、それぞれ固有のピコネット識別子によって識別される。
【0024】
第1ピコネット250で発生した超広帯域信号を第2ピコネット260に送信するために、既存の電力線部210がピコネットネットワーク間を連結する役割を遂行する。超広帯域信号の電力線部210を介して送信するため、超広帯域中継器部220、230、240が超広帯域データ信号をPLCデータ信号に変換し、ピコネット識別子に従って超広帯域データ信号をルーティング(Routing)して、変換されたPLCデータ信号を送信する。このように変換されたPLCデータ信号は、電力線部210を介して第2ピコネット260に送信される。
【0025】
以下、図3に示された超広帯域中継器部の詳細な構成を説明すると次のようになる。
【0026】
図3は、図2の超広帯域中継器部の一例を示した図である。
【0027】
図3を参照すると、超広帯域中継器部320は、PLCモデム部321と、信号変換器322と、超広帯域モジュール部323と、アンテナ部330と、を含んで構成される。
【0028】
アンテナ部330は、超広帯域中継器部内のデバイスと同一のピコネットに属するデバイス間の超広帯域RF信号の送受信を担当する。
【0029】
超広帯域モジュール部323は、超広帯域通信プロトコルによる通信を遂行するための無線通信モジュール機能および送受信されるデータの目的地情報(destination address)によるデータ送受信機能を遂行する。
【0030】
信号変換器322は、超広帯域データ信号とPLCデータ信号間の信号を変換するものであって、超広帯域データ信号のフォーマットをPLCデータ信号のフォーマットに変換し、前記変換されたPLCデータ信号は、高速PLCモデム部321から電力線部310を介して他のピコネットに送信される。
【0031】
図3に示された本発明に係る高速PLCを用いた無線ネットワークシステムの送受信の動作を、図4および図5を参照して詳しく説明する。
【0032】
図4は、図2および図3に示されたPLCを用いた無線ネットワークシステムのデータ送信方法の一例を示したフローチャートである。
【0033】
図4を参照して、本発明に係る高速PLCを用いた無線ネットワークシステムの送信動作を詳しく説明すると次のようになる。
【0034】
段階410で、第1ピコネットに含まれたデバイスで第2ピコネットに属するデバイスに送信されるデータが発生する。
【0035】
段階420で、発生した超広帯域データ信号は、アンテナ部330を経て超広帯域中継器部320の超広帯域モジュール部323に送信される。
【0036】
段階430で、超広帯域モジュール部323は、受信した超広帯域データ信号のピコネット識別子を確認し、ピコネット識別子が自分の識別子、すなわち、現在超広帯域中継器部320が位置しているピコネットのピコネット識別子と同一である場合、段階440で、同一のピコネット内のデバイス間の通信として判断する。
【0037】
また、段階430で、超広帯域データ信号のピコネット識別子が現在超広帯域中継器部320が位置しているピコネットのピコネット識別子と相違している場合には、段階450に遷移する。
【0038】
段階450で、超広帯域モジュール部323は、信号変換器で超広帯域データ信号を中継(relay)する。信号変換器322は、受信した超広帯域データ信号をPLCデータ信号に変換し、変換されたPLCデータ信号を高速PLCモデム部321に送信する。高速PLCモデム部321は、変換されたPLCデータ信号を電力線部310を介して他のピコネットに送信する。
【0039】
図5は、図2および図3に示されたPLCを用いた無線ネットワークシステムのデータ受信方法の一例を示したフローチャートである。
【0040】
図5を参照して、本発明による高速PLCを用いた無線ネットワークシステムの受信動作を詳しく説明すると次のようになる。
【0041】
段階510で、高速PLCモデム部321は、電力線部310からPLCデータ信号を受信する。
【0042】
段階520で、PLCモデム部321は、前記PLCデータ信号のピコネット識別子を確認し、自分の識別子、すなわち、現在、超広帯域中継器部320が位置しているピコネットのピコネット識別子と同一でない場合、段階540で、受信したPLCデータ信号を無視(discard)する。
【0043】
また、段階520で、PLCデータ信号のピコネット識別子が同一である場合には、PLCモデム部321は、信号変換器322でデータを中継する。信号変換器322は、PLCデータ信号を超広帯域データ信号に変換して超広帯域モジュール部323に送信する。超広帯域モジュール部323は、信号変換器322から変換された超広帯域データ信号が受信されると、超広帯域データ信号の目的地情報を確認し、アンテナ部330を経て該当目的地デバイスにデータ信号を送信する。
【0044】
図6は、PLCを用いた無線ネットワークシステムの実際の活用例を示した図である。
【0045】
図6を参照すると、図1の従来の超広帯域ネットワークはピコネット間のデータ通信が不可能であるが、本発明に係る高速PLCを用いた無線ネットワークシステムではピコネット間の通信が可能となる。すなわち、第1ピコネットに属するセットトップボックス652とTV632、ホームシアター642とスピーカ622間のデータ通信が可能になる。
【0046】
また、既存の無線通信は、当業者にとって周知であるように、その特性上、陰影地域を有するようになる。しかし、本発明によるPLC中継器620、630、640、650の設置が可能な地域であれば、前記陰影地域問題は解決される。
【0047】
また、超広帯域通信は、通信範囲が相対的に狭い短距離通信であり、障害物を通過する時に信号減殺など通信性能の低下を引き起こすことがある。しかし、本発明によると、超広帯域ネットワークの距離制約を克服することができる。すなわち、遠く離れているセットトップボックス652とTV632、ホームシアター642とスピーカ622が設置位置とは関係なく連結可能であるため、超広帯域通信の活用範囲が広くなる。
【0048】
上述したように、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当の技術分野において熟練した当業者にとっては、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正および変更させることができることを理解することができるであろう。
【0049】
すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定められ、発明を実施するための最良の形態により制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の一般的な超広帯域ネットワーク通信システムの概略的な構成を示した図である。
【図2】本発明が適用される超広帯域ピコネット間の通信のためにPLCを用いた無線ネットワークシステムの一例を示した図である。
【図3】図2の超広帯域中継器部の一例を示した図である。
【図4】図2および図3に示されたPLCを用いた無線ネットワークシステムのデータ送信方法の一例を示したフローチャートである。
【図5】図2および図3に示されたPLCを用いた無線ネットワークシステムのデータ受信方法の一例を示したフローチャートである。
【図6】PLCを用いた無線ネットワークシステムの実際の活用例を示した図である。
【符号の説明】
【0051】
210 電力線部
220、230、240 超広帯域中継器部
250、260、270 ピコネット
251、252、253、261、262、263、271、272、273 超広帯域デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超広帯域データ信号を生成する一つ以上のデバイスを含む第1ピコネットと、
前記超広帯域データ信号をPLCデータ信号に変換する超広帯域中継器部と、
前記第1ピコネットと第2ピコネットを物理的に連結し、前記変換されたPLCデータ信号を前記第2ピコネットに送信するための電力線部と、
を含むことを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項2】
前記一つ以上のデバイスで生成される前記超広帯域データ信号は、ピコネット識別子と目的地情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項3】
前記超広帯域中継器部は、
前記第1ピコネットに属する前記デバイス間の前記超広帯域データ信号の送受信を担当するアンテナ部と、
前記超広帯域データ信号を前記PLCデータ信号に変換する信号変換器と、
前記超広帯域データ信号のピコネット識別子を確認し、前記ピコネット識別子に従って前記超広帯域データ信号をルーティングする超広帯域モジュール部と、
前記変換されたPLCデータ信号を多重化して前記電力線部に送信する高速PLCモデム部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項4】
無線ネットワーク送信システムの中継器手段において、
第1ピコネットに属する一つ以上のデバイス間に送信される超広帯域データ信号の送受信を担当するアンテナ部と、
前記超広帯域データ信号を前記PLCデータ信号に変換する信号変換器と、
前記超広帯域データ信号のピコネット識別子を確認し、前記ピコネット識別子に従って前記超広帯域データ信号をルーティングする超広帯域モジュール部と、
前記変換されたPLCデータ信号を多重化して前記電力線部に送信する高速PLCモデム部と、
を含むことを特徴とする超広帯域中継器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−235915(P2007−235915A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273921(P2006−273921)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506336603)エルエス ケーブル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】