説明

電動パワーステアリング装置用モータ装置

【課題】この発明は、ベアリングから延出する回転軸の軸端のカップリング部とベアリングとの間の長さを短くし、信頼性の高い、小型で低コストの電動パワーステアリング装置用モータ装置を得る。
【解決手段】ブラシレスモータ25の回転子26の回転軸27の一端側が、制御装置収納空間100内を挿通して、制御装置収納空間100を構成する第1ハウジング11の基部12の一面側に設けられた第1ベアリングボックス16に保持された第1ベアリグ17に支持され、他端がモータ収納空間101を構成するモータフレーム15に設けられた第2ベアリングボックス21に保持された第2ベアリング22に支持されている。制御装置が制御装置収納空間100内に配設され、第1ベアリング17から延出する回転軸27の端部がカップリング部27aとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に取り付けられ、運転者の操舵力を補助する電動パワーステアリング装置用モータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置にオイルを供給する従来のポンプ装置は、平板状の第1の部材に、一側面が開放した容器状に形成された第2の部材の一側面を接合固定して中空状に構成されたヒートシンクと、第1の部材の外面にモータフレームを接合固定して取り付けられたモータと、第2の部材の外面に取り付けられたポンプユニットと、ヒートシンクのポンプユニットが設けられた第2の部材の内面に接合固定され、モータの駆動を制御する制御ユニットと、を備えている。そして、モータの回転軸の一端部がモータフレーム内に設けられた第1の軸受に回転自在に保持され、その中途部が第1の部材に形成された貫通孔に設けられた第2の軸受に回転自在に保持されている。さらに、回転軸の他端部が第2の部材に形成された貫通孔から延出し、カップリングを介してポンプユニットの駆動軸に連結され、ポンプユニットがモータの回転軸により駆動され、オイルを循環させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のポンプ装置では、第1の軸受と第2の軸受とにより決まる回転軸の軸心は、一般的に、部品の寸法公差、および組み合わせによる芯ずれなどにより、第2の部材の外面に取り付けられたポンプユニットの駆動軸の軸心に対して傾きを生じている。
そして、従来のポンプ装置では、回転子の回転軸の一端部がモータフレーム内に設けられた第1の軸受に回転自在に保持され、中途部が第1の部材に設けられた第2の軸受に回転自在に保持され、他端側がヒートシンク内を通って第2の部材に形成された貫通孔から延出しているので、第2の軸受と回転軸の他端に設けられたカップリングとの間の軸方向長さが長くなる。そこで、カップリングの振れが大きくなり、ポンプユニットの振れが大きくなり、信頼性が低下するという問題があった。
【0004】
また、第2の軸受から延出する回転軸の他端側の外径が、第2の軸受の内輪の内径より小径となるので、回転軸の他端側の剛性が低下し、ねじり共振による振動やトルクの応答遅れが発生し、信頼性が低下するという問題があった。この問題を解決するために、回転軸の他端側を大径化して剛性を高めることが考えられるが、この場合、第2の軸受の大径化が必要となり、装置の大型化および高コスト化をもたらすという新たな問題が発生する。
さらに、異物が回転軸の他端側と第2の部材に設けられた貫通孔との間の隙間からヒートシンク内に侵入し、制御ユニットの回路ショートが発生し、信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
このような状況を鑑み、制御装置が第1ハウジングの一側と第2ハウジングの一側とが当接して作られる空間に配設され、モータが第1ハウジングの他側に取り付けられたフレーム内に配設され、アクチュエータが第2ハウジングの他側に配設され、モータの回転軸の一端側が第2ハウジングに形成された貫通穴に設けられた第1ベアリングに回転自在に保持され、回転軸の他端部がフレームに設けられた第2ベアリングに回転自在に保持され、第1ベアリングから延出する回転軸の一端部がカップリングを介してアクチュエータの駆動軸と連結されている従来の電動パワーステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
従来の電動パワーステアリング装置では、アクチュエータが第2ハウジングの他側に配設され、その駆動軸が第2ハウジングに形成された貫通穴に設けられた第1ベアリングから延出するモータの回転軸の一端部にカップリングを介して連結されているので、第1ベアリングと回転軸の一端に設けられたカップリングとの間の軸方向長さが短くなる。そこで、カップリングの振れが抑制され、アクチュエータの振れが小さくなり、信頼性が高められる。
【0007】
また、第1および第2ベアリングを大径化することなく、回転軸の第1および第2ベアリング間の部位を太くして回転軸の剛性を高めることができ、ねじり共振による振動やトルクの応答遅れが抑制され、信頼性を高めることができる。
さらに、回転軸の両端が第1および第2ベアリングに保持されているので、異物が第1ハウジングの一側と第2ハウジングの一側とが当接して作られる空間に侵入しにくくなり、制御装置の回路ショートの発生を抑え、信頼性が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3830006号公報
【特許文献2】特開2006−121857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の電動パワーステアリング装置では、第1ベアリングが第1ハウジング側から第2ハウジングのベアリングボックスに挿入保持されているので、ベアリングボックスの第1ベアリング軸方向位置決め用壁部が第1ベアリングとアクチュエータとの間に位置する。そこで、第1ベアリングと回転軸の一端との間の距離が、第1ベアリング軸方向位置決め用壁部の厚み分長くなるので、カップリングの振れが大きくなり、アクチュエータの振れが大きくなり、信頼性の低下をもたらすという不具合があった。
【0010】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、ベアリングボックスを基部の一面側に設け、ベアリングボックスに保持されたベアリングから延出する回転軸の軸端のカップリング部とベアリングとの間の長さを短くし、信頼性の高い、小型で低コストの電動パワーステアリング装置用モータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による電動パワーステアリング装置は、第1ベアリングボックスが一面側に設けられた平板状の基部と、上記基部の他面側に配設されて該基部と協働して制御装置収納空間を構成する筒状の第1周壁部と、上記第1周壁部の上記基部と反対側に配設された筒状の第2周壁部と、上記第2周壁部の上記基部と反対側に配設されて該第2周壁部と協働してモータ収納空間を構成するとともに、第2ベアリングボックスが底部に設けられた有底円筒状のモータフレームと、上記モータフレーム内に保持された固定子鉄心および該固定子鉄心に巻装された固定子巻線からなる固定子、および回転軸の一端側が、上記制御装置収納空間を挿通して上記第1ベアリングボックスに保持された第1ベアリングに支持され、該回転軸の他端が上記第2ベアリングボックスに保持された第2ベアリングに支持されて上記固定子の内周側に回転可能に配設され、該第1ベアリングから延出する該回転軸の一端をカップリング部とする回転子を有するモータと、上記制御装置収納空間内に配設されて上記モータを駆動制御する制御装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、第1ベアリングボックスが基部の一面側に設けられているので、第1ベアリングの軸方向位置を位置決めする第1ベアリングボックスの壁部が基部の制御装置収納空間側に存在する。そこで、第1ベアリングから延出する回転軸の軸端のカップリング部と第1ベアリングとの間の距離が短くなり、カップリング部の振れが抑制され、信頼性を高めることができる。
また、第1および第2ベアリングを大径化することなく、回転軸の第1および第2ベアリング間の部位を太くして回転軸の剛性を高めることができ、ねじり共振による振動やトルクの応答遅れが抑制され、信頼性を高めることができるとともに、小型、低コスト化が図られる。
さらに、回転軸の両端が第1および第2ベアリングに保持されているので、異物が制御装置収納空間に侵入しにくくなり、制御装置の回路ショートの発生を抑え、信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置の全体構成を説明する斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明する要部断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置の構成を説明する断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置におけるパワー基板の配置を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置における制御基板の配置を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置の回路ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置の全体構成を説明する斜視図、図2はこの発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明する要部断面図、図3はこの発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置の構成を説明する断面図、図4はこの発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置におけるパワー基板の配置を説明する図、図5はこの発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置における制御基板の配置を説明する図、図6はこの発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置の回路ブロック図である。
【0015】
図1において、電動パワーステアリング装置用モータ装置10は、ウオーム減速機構1が収容されたギヤハウジング2に装着され、後述するボス39を介してウオーム軸3に連結される。そして、電動パワーステアリング装置用モータ装置10の後述するブラシレスモータ25の回転軸27の回転力がボス39を介してウオーム軸3に伝達され、ウオーム軸3の回転数が減速されてウオームホイール4に伝達される。このように、ブラシレスモータ25の回転軸27の回転力は、ウオーム減速機構1により減速されてコラム軸5に伝達され、ステアリングホイール6の操舵力をアシストするように構成されている。コラム軸5の回転力は、ユニバーサルジョイントなどを介してラックアンドピニオン機構をなすギヤユニット7のピニオンに伝達され、このピニオンと歯合するラック8が左右に駆動されるように構成されている。
【0016】
つぎに、電動パワーステアリング装置用モータ装置10の具体的な構成について図2および図3を参照にしつつ説明する。
電動パワーステアリング装置用モータ装置10は、ギヤハウジング2に装着され、制御装置収納空間100を構成する第1ハウジング11と、第1ハウジング11に装着される第2ハウジング14と、第2ハウジング14に装着されて第2ハウジング14と協働してモータ収納空間101を構成するモータフレーム15と、モータ収納空間101内に収納されるブラシレスモータ25と、制御装置収納空間100内に配設され、このブラシレスモータ25の通電制御を行う制御装置と、ブラシレスモータ25の回転子26の回転位置を検出する回転センサ35と、を備えている。
【0017】
第1ハウジング11は、例えばアルミ合金のダイカスト成形により作製され、平板状の基部12と基部12の他面側に一体に突設された筒状の第1周壁部13とを有する。そして、第1ベアリングボックス16が基部12の中央部の一面側に形成されている。即ち、第1ベアリングボックス16が第1ベアリング17を基部12の一面側から挿入保持可能に基部12に形成されている。そして、回転センサ位置決め突起18が、第1ベアリングボックス16と同軸に基部12の一面に円筒状に突設されている。さらに、第1インロー部19が第1ベアリングボックス16と同軸に、かつ回転センサ位置決め突起18の外径側に基部12の一面に円筒状に突設されている。
【0018】
第2周壁部としての第2ハウジング14は、例えばアルミ合金のダイカスト成形により筒状に作製されている。そして、第2インロー部20が第2ハウジング14の端面に円筒状に突設されている。
モータフレーム15は、例えば鉄を用いて有底円筒体に作製されている。そして、第2ベアリングボックス21が第2ベアリング22を内側から挿入保持可能にモータフレーム15の底部の中央部に形成されている。モータフレーム15は、第2インロー部20に外嵌合状態に嵌着され、例えばねじの締着により第2ハウジング14に装着される。
【0019】
ブラシレスモータ25は、回転軸27、および回転軸27に外嵌状態に嵌合、固着された円筒状の永久磁石28を有する回転子26と、電磁鋼板を積層、一体化して作製された固定子鉄心30、および固定子鉄心30に樹脂製のインシュレータ32を介して巻装された3相の固定子巻線31を有する固定子29と、を備えた永久磁石同期モータである。
【0020】
固定子29は、固定子鉄心30をモータフレーム15内に圧入固定してモータフレーム15に取り付けられている。また、回転子26は、回転軸27の一端側が制御装置収納空間100を挿通して第1ベアリング17に支持され、回転軸27の他端が第2ベアリング22に支持されて、回転可能に取り付けられている。そして、永久磁石28が、固定子鉄心30の内周側に所定の空隙を確保してモータフレーム15内に配設されている。永久磁石28は、例えば周方向に6極に着磁され、3相の固定子巻線31は、樹脂製のターミナルホルダ33にインサート成形されたモータ側接続ターミナル34によりY結線されている。
【0021】
回転センサ35は、第1ベアリング17からの回転軸27の延出部に外嵌状態に固着されたセンサロータとしてのレゾルバロータ36と、回転センサ位置決め突起18に位置決めされて基部12の一面にねじ(図示せず)などにより締着固定され、レゾルバロータ36を囲繞するように配設されるレゾルバステータ37と、を備えている。そして、図示していないが、回転センサ35からの信号線が、基部12にあけられた貫通穴を通って制御装置収納空間100内に引き出され、後述する制御基板40に電気的に接続され、ゴムプレートが貫通穴を塞口するように配設され、貫通穴を介しての制御装置収納空間100への異物の侵入が阻止されている。また、ブッシュ38は、鉄製のリング体に作製され、第1ベアリング17とレゾルバロータ36との間の回転軸27の部位に介装され、レゾルバロータ36の軸方向位置が調整される。カップリングであるボス39が、回転軸27の一端のカップリング部27aに固着されている。
【0022】
制御装置は、回転軸挿通穴40aがあけられ、マイクロコンピュータ41およびFET駆動回路42を構成するドライバーIC42aなどの電子部品が回転軸挿通穴40aを取り囲むように、周方向に分散して実装されたガラスエポキシ製の制御基板40と、パワーMOSFETなどのパワー素子44および半導体スイッチ素子45が実装されたセラミック製のパワー基板43と、半導体スイッチ素子45が実装されたセラミック製のスイッチ基板46と、を有する。ターミナル部47は、インサート導体48がインサート成形された樹脂成型品である。そして、ブラシレスモータ25に流れる電流のリップルを吸収するコンデンサ49、ノイズを吸収するコイル50などがターミナル部47に実装されている。さらに、スイッチ基板46の半導体スイッチ素子45の他端が電源コネクタ51と接続されている。
【0023】
固定子巻線31の各相に対応する3つのパワー基板43が、図4に示されるように、第1ハウジング11の基部12の他面に、第1ベアリングボックス16を囲繞するように等角ピッチで周方向に配列されて、基部12に密接するように取り付けられる。また、スイッチ基板46が、図4に示されるように、第1ハウジング11の基部12の他面に密接するように取り付けられる。そして、制御基板40は、ターミナル部47に実装され、回転軸挿通穴40aの穴中心を第1ベアリングボックス16の軸心に一致させて、基部12の他面に対して所定距離離反して、制御装置収納空間100内に配設されている。そこで、制御基板40は、図5に示されるように、回転軸挿通穴40aに挿通された回転軸27の軸心に直交するように配設され、マイクロコンピュータ41およびFET駆動回路42を構成するドライバーIC42aなどの電子部品が回転軸27を取り囲むように周方向に分散して配列されている。そして、固定子巻線31の出力端子、インサート導体48などが制御基板40のスルーホール40bに挿入されて制御基板40の配線パターン(図示せず)に半田接合され、制御基板40、パワー基板43、コンデンサ49、コイル50、固定子巻線31などが電気的に接続され、図6に示される電気回路が構成される。
【0024】
このように構成された電動パワーステアリング装置用モータ装置10は、第1インロー部19をギヤハウジング2に内嵌状態に嵌着し、ねじなどにより基部12をギヤハウジング2に締着固定して取り付けられる。そして、回転軸27のカップリング部27aがボス39を介してウオーム軸3に連結される。これにより、ブラシレスモータ25が制御装置により駆動制御されて回転駆動される。そして、ブラシレスモータ25の回転軸27の回転力がボス39を介してウオーム軸3に伝達され、ウオーム減速機構1により減速されてコラム軸5に伝達され、ステアリングホイール6の操舵力をアシストする。
【0025】
この実施の形態1によれば、第1ベアリングボックス16が、第1ハウジング11を構成する基部12に設けられ、第2ベアリングボックス21がモータフレーム15の底部に設けられている。そして、回転子26の回転軸27の一端側が制御装置収納空間100を挿通して第1ベアリングボックス16に保持された第1ベアリング17に支持され、回転軸27の他端が第2ベアリングボックス21に保持された第2ベアリング22に支持されて、回転可能に取り付けられている。
【0026】
これにより、回転軸27の一端のカップリング部27aと第1ベアリング17との間の距離が短くなる。そこで、回転軸27の傾きに起因するカップリング部27aに固着されるボス39の振れが小さくなり、ウオーム減速機構1の振れが抑制される。
また、第1ベアリング17と第2ベアリング22とを大径化することなく、回転軸27の第1ベアリング17と第2ベアリング22との間の部位の太さを太くできる。そこで、回転軸27の剛性不足に起因するねじり共振による振動や、トルクの応答遅れの発生が抑えられる。さらに、第1ベアリング17および第2ベアリング22の大径化が不要となり、ベアリングコストの増大、および電動パワーステアリング装置用モータ装置10の大型化を抑えることができ、小型、低コストの電動パワーステアリング装置用モータ装置10を実現できる。
【0027】
また、第1ベアリングボックス16が基部12の一面側に設けられているので、第1ベアリングボックス16の第1ベアリング17の軸方向位置を決める壁部が第1ベアリング17の制御装置収納空間100側に位置する。
【0028】
そこで、第1ベアリング17の軸方向位置を決める壁部が第1ベアリング17と回転軸27の一端のカップリング部27aとの間に存在しない分、第1ベアリング17とカップリング部27aとの間の距離が短くなるので、ボス39の振れが小さくなり、ウオーム減速機構1の振れがさらに抑制され、信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、ブッシュ38とレゾルバロータ36とが、回転軸27のボス39と第1ベアリング17との間の部位に嵌着されているので、回転軸27の第1ベアリング17からの延出部を大径化することなく、当該延出部の剛性が高められる。これにより、回転子26の共振周波数が上がるので、ブラシレスモータ25の制御周期との共振により発生する振動をなくすことができる。
また、回転センサ35として角度分解能が高いレゾルバを用いているので、回転子26の回転数を高精度に検出することができる。
【0030】
また、レゾルバロータ36が第1ベアリング17に近接して回転軸27に装着されているので、回転軸27の振れに起因するレゾルバロータ36の振れを小さくでき、回転センサ35による角度検出精度が高められ、操舵フィーリングを向上することができる。
回転センサ35が基部12の一面側(ウオーム減速機構1側)から基部12および回転軸27に装着されているので、回転センサ35の取り付け角度を外部から調整でき、レゾルバの角度0度調整が可能となる。また、回転センサ35が磁束の変化により角度を検出するレゾルバで構成されているが、アルミ製の基部12および鉄製の第1ベアリング17が回転センサ35とパワー基板43との間に介在している。そこで、パワー基板43やパワー基板43から固定子巻線31への配線による回転センサ35への磁気的影響が抑えられ、回転センサ35の角度検出精度が高められる。
【0031】
また、制御装置を構成する制御基板40が、回転軸挿通穴40aに挿通された回転軸27の軸心に直交するように配設され、マイクロコンピュータ41およびFET駆動回路42を構成するドライバーIC42aなどの電子部品が回転軸27を取り囲むように周方向に分散して配列されているので、電動パワーステアリング装置用モータ装置10の回転軸27と直交する断面積を小さくでき、車両への搭載自由度を大きくすることができる。
【0032】
また、パワー基板43が基部12に接するように取り付けられているので、パワー基板43に実装されているパワー素子44での発熱が基部12に伝達され、基部12の表面から放熱され、パワー素子44の過度の温度上昇が抑えられる。そして、パワー素子44での発熱を効果的に放熱させる必要上、基部12は所定の厚みに作製される。この基部12の板厚は、第1ベアリングボックス16を形成するのに十分な厚さであり、基部12をさらに厚くすることなく、第1ベアリングボックス16を形成することができる。
【0033】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係る電動パワーステアリング装置用モータ装置の構成を説明する断面図である。
【0034】
図7において、第1ハウジング11Aは、例えばアルミ合金のダイカスト成形により作製され、平板状の基部12Aと基部12Aの他面側に一体に突設された筒状の第1周壁部13とを有する。そして、第1ベアリングボックス16が基部12Aの中央部の一面側に形成されている。そして、回転センサ位置決め突起18が、第1ベアリングボックス16と同軸に基部12Aの他面に円筒状に突設されている。さらに、第1インロー部19が第1ベアリングボックス16と同軸に基部12Aの一面に円筒状に突設されている。
【0035】
レゾルバロータ36が、第1ベアリング17に近接して回転軸27に外嵌状態に固着され、レゾルバステータ37が回転センサ位置決め突起18に位置決めされて基部12Aの他面にねじ(図示せず)などにより固定され、レゾルバロータ36を囲繞するように配設されている。さらに、ボス39が回転軸27の一端のカップリング部27aに固着されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0036】
このように構成された電動パワーステアリング装置用モータ装置10Aでは、回転センサ35が制御装置収納空間100内に配設されているので、回転軸27の第1ベアリング17からの延出長さを短くできる。そこで、ボス39と第1ベアリング17との間の距離がさらに短くなり、回転軸27の傾きに起因するボス39の振れが小さくなり、ウオーム減速機構1の振れが抑制される。
【0037】
また、回転軸27の小径部である第1ベアリング17からの延出部の長さが短くなり、かつ第1ベアリング17と第2ベアリング22との間の回転軸27の部位を大径化できるので、回転軸27の剛性が高められる。これにより、回転子26の共振周波数が上がるので、ブラシレスモータ25の制御周期との共振により発生する振動をなくすことができる。
【0038】
また、回転センサ35の信号線を制御装置収納空間100内に引き込むための貫通穴が不要となり、制御装置収納空間100内への異物の侵入が阻止される。また、回転センサ35の信号線を制御基板40に簡易に電気的に接続することができる。
また、レゾルバロータ36の軸方向位置を回転軸27により位置決めできるので、ブッシュが不要となり、その分構成の簡素化、および低コスト化が図られる。
【0039】
なお、上記各実施の形態では、電動パワーステアリング装置用モータ装置がステアリングホイールの操舵力をアシストする用途に適用されるものとして説明しているが、この電動パワーステアリング装置用モータ装置の用途はステアリングホイールの操舵力をアシストする用途に限定されるものではなく、例えばパワーステアリング用ポンプ装置を駆動する用途に適用してもよい。
【0040】
また、上記各実施の形態では、基部と協働して制御装置収納空間を構成する第1周壁部が基部と一体に作製されているものとしているが、第1ハウジングを基部のみで構成し、第1周壁部を第2周壁部である第2ハウジングと一体に作製してもよい。
【0041】
また、上記各実施の形態では、パワー基板がセラミック基板で構成されているものとしているが、パワー基板は金属基板でもよい。この場合、パワー素子や半導体スイッチ素子をベアチップで金属基板に実装し、あるいはパワー素子や半導体スイッチ素子のディスクリート部品を金属基板に実装してもよい。
【0042】
また、上記各実施の形態では、パワー素子および半導体スイッチ素子を3枚のパワー基板に実装するものとしているが、パワー素子および半導体スイッチ素子を1枚のパワー基板に実装するようにしてもよい。
また、上記各実施の形態では、固定子巻線がY結線されるものとして説明しているが、固定子巻線はΔ結線されたものでもよい。
【0043】
また、上記各実施の形態では、永久磁石同期モータを用いるものとしているが、モータは永久磁石同期モータに限定されるものではなく、電動パワーステアリング装置に使用できるものであればよく、例えば誘導モータを用いることができる。永久磁石を用いないモータであれば、パワー回路のスイッチングと干渉する磁石磁束がなく、有効である。
【0044】
また、上記各実施の形態では、回転センサがレゾルバで構成されるものとしているが、例えば、ホール素子を利用した回転センサでもよい。ホール素子を利用した回転センサの場合、レゾルバを用いた回転センサに比べ、取り付け空間の省スペース化が図られるので、パワー基板を実装する際の基板の寸法や形状の制約が緩和される。
【符号の説明】
【0045】
10,10A 電動パワーステアリング装置用モータ装置、11,11A 第1ハウジング、12,12A 基部、13 第1周壁部、14 第2ハウジング(第2周壁部)、15 モータフレーム、16 第1ベアリングボックス、17 第1ベアリング、21 第2ベアリングボックス、22 第2ベアリング、25 ブラシレスモータ、26 回転子、27 回転軸、27a カップリグ部、29 固定子、30 固定子鉄心、31 固定子巻線、35 回転センサ、36 レゾルバロータ(センサロータ)、38 ブッシュ、39 ボス(カップリング)、40 制御基板(制御装置)、43 パワー基板(制御装置)、46 スイッチ基板(制御装置)、100 制御装置収納空間、101 モータ収納空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベアリングボックスが一面側に設けられた平板状の基部と、
上記基部の他面側に配設されて該基部と協働して制御装置収納空間を構成する筒状の第1周壁部と、
上記第1周壁部の上記基部と反対側に配設された筒状の第2周壁部と、
上記第2周壁部の上記基部と反対側に配設されて該第2周壁部と協働してモータ収納空間を構成するとともに、第2ベアリングボックスが底部に設けられた有底円筒状のモータフレームと、
上記モータフレーム内に保持された固定子鉄心および該固定子鉄心に巻装された固定子巻線からなる固定子、および回転軸の一端側が、上記制御装置収納空間を挿通して上記第1ベアリングボックスに保持された第1ベアリングに支持され、該回転軸の他端が上記第2ベアリングボックスに保持された第2ベアリングに支持されて上記固定子の内周側に回転可能に配設され、該第1ベアリングから延出する該回転軸の一端をカップリング部とする回転子を有するモータと、
上記制御装置収納空間内に配設されて上記モータを駆動制御する制御装置と、
を備えていることを特徴とする電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項2】
上記モータの回転子の回転位置を検出する回転センサをさらに備え、
上記カップリング部に固着されるカップリング、上記回転センサのセンサロータ、および該センサロータの軸方向位置を位置決めするブッシュが、上記回転軸の上記第1ベアリングからの延出部に該第1ベアリング側から該ブッシュ、該センサロータ、およびがカップリングの順に嵌着されていることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項3】
上記モータの回転子の回転位置を検出する回転センサをさらに備え、
カップリングが上記カップリング部に固着され、上記回転センサのセンサロータが上記回転軸の上記第1ベアリングの上記制御装置収納空間側の部位に嵌着されていることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項4】
上記第1ベアリングに近接して配設されて上記モータの回転子の回転位置を検出する回転センサをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項5】
上記回転センサは、上記基部の一面側に配設されていることを特徴とする請求項4記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項6】
上記回転センサは、上記基部の他面側に配設されていることを特徴とする請求項4記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項7】
上記回転センサはレゾルバにより構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。
【請求項8】
上記制御装置を構成する制御基板が、上記回転軸に挿通され、該回転軸の軸心と直交し、かつ上記基部の他面から所定距離離間して上記制御装置収納空間内に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置用モータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−68204(P2011−68204A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219301(P2009−219301)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】