電動機
【課題】広範な駆動領域を備える電動機を提供する。
【解決手段】ステータ20は、ロータ10側の各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる2組の巻線23,24を備える。ここで、ステータ20は、スロット25毎に、各組の巻線23,24が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されており、各組の巻線23,24は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なる。
【解決手段】ステータ20は、ロータ10側の各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる2組の巻線23,24を備える。ここで、ステータ20は、スロット25毎に、各組の巻線23,24が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されており、各組の巻線23,24は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、それぞれの組が異なる磁極数で構成される複数の磁石の組に相当する複数の磁石磁束を合算して発生させる磁束発生部材を持つロータを備えた電動機が開示されている。この電動機は、ステータ側の各スロットに1組の巻線がそれぞれ配置されており、このコイルに複合電流を供給することにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、スロットに単一の巻線しか巻回されておらず、通電電流の制御だけではモータの特性は変化せず、広い駆動領域を得ることができないという可能性がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、広範な駆動領域を備える電動機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、ステータが、ロータ側の各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる複数組の巻線を備えており、スロット毎に、各組の巻線が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されている。この場合、複数組の巻線は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各組の巻線に個別に通電することで、それぞれ異なる電動機の特性を得ることができので、電動機の駆動領域の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる電動機1の構成を模式的に示す断面図
【図2】磁束発生部材の概念を示すロータ10Aの説明図
【図3】ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成の説明図
【図4】ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成の説明図
【図5】一般的な永久磁石型同期電動機100の構成を模式的に示す断面図
【図6】ステータ120における1組の巻線123の巻線構成の説明図
【図7】第1の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図
【図8】第1の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図
【図9】ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成の説明図
【図10】第2の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図
【図11】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【図12】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【図13】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【図14】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電動機1の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態にかかる電動機1は、永久磁石型同期電動機であり、ラジアルギャップのインナーロータ型として構成されている。この電動機1は、シャフト(図示せず)に連結されるロータ(可動子)10と、断面がリング状のステータ(固定子)20とを主体に構成されており、ロータ10は、ステータ20の内周側にエアギャップを介して配置されている。
【0010】
ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁石(永久磁石)12とで構成されている。ロータコア11は、磁性体の電磁鋼板を軸方向に複数積層して形成されている。このロータコア11には、複数の磁石12(N極12a,S極12b)が周方向に沿って配設されており、これらの磁石12は、磁束発生部材として機能する。
【0011】
図2は、本実施形態にかかる磁束発生部材の概念を示すロータ10Aの説明図である。磁束発生部材は、極対数がそれぞれ異なる複数組の永久磁石に相当する磁石磁束のそれぞれを合算させて発生させるものである。磁束発生部材は、これを形式的に捉えた場合、ロータ10Aに示すように、第1の磁石組12A、具体的には、16極(8極対)の磁石組(N極12a,S極12b)と、第2の磁石組12B、具体的には、28極(14極対)の磁石組(N極12a,S極12b)とで構成されている。ここで、16極の磁石組12Aと、28極の磁石組12Bとは、ロータコア11の表層に2層に配置されており、径方向において、16極の磁石組12Aの外側に28極の磁石組12Bが配置されている。このロータ10Aは、16極および28極の磁石組12A,12Bによる複合磁束、具体的には、16極の磁石組12Aによる磁石磁束と、28極の磁石組12Bの磁石磁束とが合算されて発生する。なお、同図に示す例では、第1の磁石組12Aと、第2の磁石組12Bとの組み合わせ位相は、位置Aにおいて一致している(位相差ゼロ位置)。
【0012】
ロータ10Aには、16極の磁石組12Aと28極の磁石組12Bとにおいて、着磁方向の異なる磁石12a,12bが互いに接している領域(図中の破線で示す領域)と、着磁方向の同じ磁石12a(または12b)が互いに接している領域とが存在している。着磁方向の異なる磁石12a,12bが互いに接している領域では、どちらの着磁方向にも磁束が発生しないので磁石は無いものと等価であり、かつ、磁束は飽和しているので磁束は通り難くなる。
【0013】
本実施形態のロータ10(図1参照)は、ロータ10A(図2参照)において異なる着磁方向の磁石12a,12bが接している部分から当該磁石12a,12bを排除することにより構成されたものである。ロータ10には、図2に示す非破線領域に対応する磁石12a,12bとして、10個のN極の磁石12aと、10個のS極の磁石12bとが配置されている。このロータ10は、複数の磁石12により、図2に示すロータ10Aと同じく、16極および28極の磁石組による複合磁束が発生する。換言すれば、ロータ10は、16極の磁石組12Aと28極の磁石組12Bとに相当する磁束成分のそれぞれを合算させて発生させるロータとして機能する。もっとも、ロータ10は、図2に示すロータ10Aのように、極性の違う磁石が接している部分の磁石12a,12bを排除していない構成で基本的に成立する。しかしながら、不要な磁石を除去した方が、削除した磁石分の慣性の低減により、トルクの向上、モータの軽量化、削除した磁石の分の経費節減などを図ることができる。
【0014】
なお、図1に示すロータ10において、不要な磁石を除去した領域は空隙となっており、空気によって占められている。この空気が占める領域は磁束を通さない機能を果たしている。すなわち、磁石を除去したこの領域には、鉄などの磁束を通し易い素材以外の部材を配置する必要があるが、通常は空間(空気)で足りる。もちろん、この領域には空気以外の磁束を通しにくい部材が設置されても構わない。
【0015】
ステータ20は、例えば、磁性体の電磁鋼板を軸方向に複数積層して構成されており、複数の突極部(ステータティース)21と、略リング状のバックヨーク22とを有している。複数のステータティース21は、バックヨーク22の内周側において周方向に沿って等間隔に配置されており、個々のステータティース21は、ロータ10側に突出した格好となっている。バックヨーク22は、個々のステータティース21をその基端側で連結している。
【0016】
各ステータティース21には、絶縁部材であるインシュレータ(図示せず)を介して、2組の巻線23,24が各々巻回されている。この2組の巻線23,24は、16極の磁石組12Aの極対数に対応した電流磁界を発生させる第1組の巻線23と、28極の磁石組12Bの極体数に対応した電流磁界を発生させる第2組の巻線24とが含まれている。これにより、ステータ20は、スロット25(バックヨーク22とステータティース21とによって囲まれる領域)毎に、各組の巻線23,24が同一のスロット25内にそれぞれ配置される構成される。本実施形態において、ステータ20には、24個のスロットが形成されている。なお、各組の巻線構成については後述する。
【0017】
この電動機1では、ロータ10に配置された永久磁石12と、ロータ10自体を構成する磁性体(電磁鋼板)と、ステータ20を構成する磁性体(電磁鋼板)とによって、主磁気回路が形成される。そして、永久磁石12からの磁石磁束、および各組の巻線23,24をインバータ制御により通電することで発生する交番磁束が、この主磁気回路を流れることで電磁力によるトルクが発生し、これにより、ロータ10およびこれに連結されたシャフトが回転する。
【0018】
つぎに、図3,4を参照して、ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成を具体的に説明する。本実施形態の電動機1を駆動する場合、16極に対応する第1組の巻線23のそれぞれに通電を行う第1の電源30と、28極に対応する第2組の巻線24に通電を行う第2の電源31とが個々のインバータ32,33を介して2組の巻線23,24にそれぞれ接続される。個々のインバータ32,33を介して供給される電流容量はともに同一である(例えば、600[A])。
【0019】
16極に対応する第1組の巻線23は、スロット数と、極数との関係から、電流位相差が電気角120度で3相(U相、V相、W相)必要となる(図4参照)。図3(a)は、第1組の巻線23のうち、U相に対応する8つの巻線23を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相に対応する8つの巻線23は、それぞれ並列接続されており、この回路がインバータ32のU相出力端子に接続されている。3相インバータ32から出力されるU相電流は、U相に対応する各巻線23に1/8づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600[A]なので、U相に対応する1つの巻線23あたり75[A]の電流が供給される。ここで、第1組の巻線23のそれぞれは、断面積Aの素線がステータティース21に16ターン巻かれて構成されている。
【0020】
一方、28極に対応する第2組の巻線24は、スロット数と、極数との関係から、電流位相差が電気角210度で12相必要となる。しかしながら、本実施形態では、3相インバータの活用を考慮して、6相(3相インバータで反転相を用いることで6相相当((U相、V相、W相、U_相、V_相、W_相)))とする(図4参照)。図3(b)は、第2組の巻線24のうち、U相およびその反転相であるU_相に対応する8つの巻線24を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相およびU_相に対応する8つの巻線24は、2並列4直列、具体的には、U相およびU_相が交互にそれぞれ2個づつ直列接続された回路を2つ並列接続することで構成されており、この回路がインバータ33のU相出力端子に接続されている。3相インバータ33から出力されるU相電流は、U相およびU_相に対応する各巻線24に1/2づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600[A]なので、U相およびU_相に対応する1つの巻線23あたり300[A]の電流が供給される。ここで、第2組の巻線24のそれぞれは、断面積4Aの素線がステータティース21に6ターン巻かれて構成されている。
【0021】
図3(c)に示すように、本実施形態では、各スロット25には、上述したような第1組の巻線23と、第2組の巻線24とがそれぞれ配置されている。ここで、各スロット25のスロット断面積S(スロット25間における巻線エリア面積)は、第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積と、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積との和になる。第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積は、16ターンと素線断面積Aとの積算値(16A)として演算され、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積は、6ターンと素線断面積4Aとの積算値(24A)として演算される。すなわち、各スロット25のスロット断面積Sは40Aとなる。また、第1組の巻線23と、第2組の巻線24とに流れる各電流値を比較すると、第2組の巻線24には第1組の巻線23と比較して4倍の電流が流れるが、第2組の巻線24は第1組の巻線23と比較して4倍の断面積を有するため電流密度はそれぞれ75/Aで同等となる。
【0022】
図5は、本実施形態の電動機1と比較する、一般的な永久磁石型同期電動機100の構成を模式的に示す断面図である。この電動機100は、ロータ110と、ステータ120とを主体に構成されている。ロータ110は、ロータコア11と、このロータコア11の周方向に配置される16極(8極対)の磁石112(N極112a,S極112b)で構成されている。一方、ステータ120において、個々のステータティースには、1組の巻線123がそれぞれ巻回されており、これにより、1組の巻線123がバックヨークとステータティースとによって囲まれるスロット125に配置される。同図に示す例において、ステータ120には、24個のスロットが形成されている。
【0023】
この電動機100を駆動する場合、巻線123に通電を行う電源(図示せず)が備えられており、この電源は、電流容量600Aとする。16極に対応する巻線123は、スロット数と、極数との関係から、スロット間位相差が120度で3相(U相、V相、W相)必要となる。図6(a)は、巻線123のうち、U相に対応する8つの巻線123を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相に対応する8つの巻線123は、それぞれが並列接続に構成されている。したがって、3相インバータ130から出力されるU相電流は、U相に対応する各巻線123に1/8づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600Aなので、U相に対応する1つの巻線123あたり75Aの電流が供給される。ここで、巻線23のそれぞれは、断面積Aの素線がステータティース21に40ターン巻かれて構成されている。
【0024】
図6(b)に示すように、各スロット125には、巻線123がそれぞれ配置されている。ここで、各スロット125のスロット断面積S(スロット25間における巻線エリア面積)は、40ターンと素線断面積Aとの積算値(40A)として演算される。また、個々の巻線123に流れる電流(電流密度)は、75/Aとなる。すなわち、上述した本実施形態にかかる電動機1は、スロット断面積Sおよび電流密度において、一般的な電動機100と同等の構成となる。
【0025】
図7,8は、第1の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図である。同図において、Lcは、一般的な電動機100のNT特性を示す。また、Lp1は、28極に対応する第2組の巻線24に通電した際の電動機1のNT特性を示し、Lp2は、16極に対応する第1組の巻線23に通電した際の電動機1のNT特性を示す。本実施形態にかかる電動機1は、Lp1で示すように、一般的な電動機100とほぼ同等の最大トルクを得ながら、高回転域(Rtよりも回転数が高い領域)ではトルクが拡大し、駆動領域が拡大されていることが分かる。
【0026】
また、電動機1を駆動する場合、図7に示すように、駆動領域がエリアA1では、28極に対応する第2組の巻線24に通電することにより、また、駆動領域がエリアA2では、16極に対応する第1組の巻線23に通電する。これにより、一般的な電動機100と比較して、同一動作点における運転効率向上を図ることができる。
【0027】
また、図8に示すように、エリアB1は、Lp1における高効率運転領域を示し、エリアB2は、Lp2における高効率運転領域を示す。これにより、領域C1の動作点では、28極に対応する第2組の巻線24に通電することで、電動機1の高効率な運転が可能となり、領域C2の動作点では、16極に対応する第1組の巻線23に通電することで、電動機1の高効率な運転が可能となる。
【0028】
このように本実施形態において、ロータ10は、極対数がそれぞれ異なる複数組の永久磁石(本実施形態では、16極の磁石組と24極の磁石組)に相当する磁石磁束のそれぞれを合算させて発生させる磁束発生部材(本実施形態では、複数の磁石12)を備える。ステータ20は、各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる複数組の巻線(本実施形態では、16極および24極に対応する2組の巻線23,24)を備える。ここで、ステータ20は、スロット25毎に、各組の巻線23,24が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されており、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なる。かかる構成によれば、各組の巻線23,24に個別に通電することで、それぞれ異なる電動機の特性を得ることができる。これにより、電動機1の駆動領域が拡大し、トルクや出力の向上を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、同一組内の各巻線の直列接続数および並列接続数の一方または両方が異ならされている。これにより、低回転大トルク用の巻線組と、高回転用の巻線組とを構成することができるので、電動機1の駆動領域を拡大することができる。
【0030】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、大きい極対数に対応する組の巻線24ほど、同一組内の各巻線の並列接続数が少なく設定されている。かかる構成によれば、大きい極対数に対応する組の巻線24について、各巻線に供給される電流を大きくすることができるので、低回転大トルクを得ることができる。
【0031】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、大きい極対数に対応する組の巻線24ほど、巻線の巻回数が小さく設定され、かつ、素線の断面積が大きく設定される。かかる構成によれば、大きい極対数に対応する組の巻線24について電流を大きく設定した場合であっても、電流密度を小さい極対数に対応する組の巻線24の電流密度と同等にすることができる。これにより、大きい極対数に対応する組の巻線24について大きな電流を流しても、熱性能の低下を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、異なるインバータ32,33を介して電流が供給されるとともに同一組内の各巻線の並列接続数が異なっている。ここで、インバータ32,33のそれぞれは、対応する組の巻線に供給する電流容量が互いに同一に設定されている。かかる構成によれば、異なる諸元の巻線23,24について、個々のインバータ32,33の素子構成を同一とすることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、負荷領域に対応して選択的に通電されており、低回転大トルク領域では、大きい極対数に対応する組の巻線24へ通電が行われ、低トルク領域では、小さい極対数に対応する組の巻線23へ通電が行われる。かかる構成によれば、各組の巻線23,24を使用する際の電動機効率が異なることを利用して、電動機1の効率向上を図ることができる。
【0034】
なお、本実施形態によれば、28極に対応する第2組の巻線24に対する通電について、3相インバータを用いたが、6相インバータを用いた場合には、第2組の巻線24は、インバータの出力に対して2並列2直列とすることも可能であり、また、12相インバータを用いた場合には、第2組の巻線24は、インバータの出力に対して2並列1直列とすることも可能である。
【0035】
また、図8に示したように、同一の動作点を出力するのに、2組の巻線23,24のどちらに通電しても概ね同じような効率である場合には、個々の巻線23,24のそれぞれの温度を検出する温度検出手段(例えば、熱電対やサーミスタ)を備えておく。これにより、温度の低い方の巻線23,24に優先的に通電することで、一方の巻線23,24の異常発熱を回避して運転することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態にかかる電動機1について説明する。この第2の実施形態にかかる電動機1が、第1の実施形態のそれと相違する点は、28極に対応する第2組の巻線24への通電方法である。なお、第1の実施形態と重複する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0037】
図9は、ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成を具体的に説明する。本実施形態の電動機1を駆動する場合、16極に対応する第1組の巻線23のそれぞれに通電を行う第1の電源(図示せず)と、28極に対応する第2組の巻線24に通電を行う第2の電源(図示せず)とが個々のインバータ32,33を介して2組の巻線23,24にそれぞれ接続される。第1の電源に対応するインバータ32を介して供給される電流は600[A]である。一方、第2の電源に対応するインバータ33を介して供給される電流は、通常、300[A]であるが、瞬時に最大トルクを発生する必要がある時(瞬時最大トルク時)には、600[A]となる。
【0038】
16極に対応する第1組の巻線23は、第1の実施形態と同様、スロット間位相差が120度で3相(U相、V相、W相)必要となる。図9(a)は、第1組の巻線23のうち、U相に対応する8つの巻線23を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相に対応する8つの巻線23は、それぞれ並列接続されており、この回路がインバータ32のU相出力端子に接続されている。3相インバータ32から出力されるU相電流は、U相に対応する各巻線23に1/8づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600[A]なので、U相に対応する1つの巻線23あたり75[A]の電流が供給される。ここで、第1組の巻線23のそれぞれは、断面積Aの素線がステータティース21に20ターン巻かれて構成されている。
【0039】
一方、28極に対応する第2組の巻線24は、第1の実施形態と同様、スロット間位相差が210度で、6相(3相インバータで反転相を用いることで6相相当((U相、V_相、W相、U_相、V相、W_相)))とする。図9(b)は、第2組の巻線24のうち、U相およびその反転相であるU_相に対応する8つの巻線24を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相およびU_相に対応する8つの巻線24は、2並列4直列、具体的には、U相およびU_相が交互にそれぞれ2個づつ直列接続された回路を2つ並列接続することで構成されており、この回路がインバータ33のU相出力端子に接続されている。3相インバータ33から出力されるU相電流は、U相およびU_相に対応する各巻線24に1/2づつ通電される。本ケースでは、U相電流が通常300[A]なので、U相およびU_相に対応する1つの巻線23あたり150[A]の電流が供給される。ここで、第2組の巻線24のそれぞれは、断面積2Aの素線がステータティース21に10ターン巻かれて構成されている。
【0040】
図9(c)に示すように、本実施形態では、各スロット25には、上述したような第1組の巻線23と、第2組の巻線24とがそれぞれ配置されている。ここで、各スロット25のスロット断面積S(スロット25間における巻線エリア面積)は、第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積と、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積との和になる。第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積は、20ターンと素線断面積Aとの積算値(20A)として演算され、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積は、10ターンと素線断面積2Aとの積算値(20A)として演算される。すなわち、各スロット25のスロット断面積Sは、上述した一般的な電動機100と同様の40Aとなる。また、第1組の巻線23と、第2組の巻線24とに流れる各電流値を比較すると、第2組の巻線24には第1組の巻線23と比較して2倍の電流が流れるが、第2組の巻線24は第1組の巻線23と比較して2倍の断面積を有するため電流密度はそれぞれ75/Aで同等となる。
【0041】
また、本実施形態では、瞬時最大トルク時には、第2の電源からインバータ33を介して600[A]の電流が供給される。そのため、第2組の巻線24において、U相およびU_相に対応する1つの巻線23あたり300[A]の電流が供給される。この場合、第2組の巻線24の電流密度は150/Aとなり、通常時の2倍の電流密度となる。
【0042】
図10は、第2の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図である。同図において、Lcは、一般的な電動機100のNT特性を示す。また、Lp1は、28極に対応する第2組の巻線24に通電(300[A])した際の電動機1のNT特性を示し、Lp2は、16極に対応する第1組の巻線23に通電した際の電動機1のNT特性を示す。また、Lp3は、28極に対応する第2組の巻線24に通電(600[A])した際の電動機1のNT特性を示す。本実施形態にかかる電動機1は、Lp3で示すように、インバータ33を介して600[A]に電流を倍増させることで、一般的な電動機100と比較して、大幅にトルクを増大させることができ、また、回転数がRt以上の領域では、出力を増大させることができる。また、本実施形態にかかる電動機1は、瞬時最大トルク時には、インバータ33を介して600[A]の電流が供給されることとなるが、スロット25内の平均電流密度は、75/Aであり、一般的な電動機100と同等である。
【0043】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、各組の巻線23,24に個別に通電することで、それぞれ異なる電動機の特性を得ることができる。これにより、電動機1の駆動領域が拡大し、トルクや出力の向上を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、2組の巻線で構成され、小さい極対数に対応する一方の組の巻線23に第1の電流(600[A])が通電されるとともに、大きい極対数に対応する他方の組の巻線24に第2の電流(300[A])または第1の電流(600[A])が選択的に通電されている。この場合、他方の組の巻線24に第1の電流が通電される際に、この他方の組の巻線24の電流密度が、一方の組の巻線23の電流密度よりも大きくなるように、一方の組の巻線23が、他方の組の巻線24よりも、素線の断面積が小さく、かつ、巻回数が多く設定される。かかる構成によれば、他方の組の巻線24について、第2の電流を通電している際には、一方の組の巻線23と同等な電流密度とすることができる。また、他方の組の巻線24について、第1の電流を通電している際には、一方の組の巻線23よりも大きな電流密度となるものの、素線の断面積が小さい分巻回数が多いので、最大トルクの向上を大幅に望むことができる。これにより、電動機1の駆動領域の拡大を図ることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態にかかる電動機1について説明する。この第3の実施形態にかかる電動機1の特徴の一つは、ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成である。なお、第1または第2の実施形態と重複する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0046】
図11に示すように、第1の実施形態の電動機1において、ステータティース21には、16極に対応する第1組の巻線23(16ターン)と、28極に対応する第2組の巻線24(6ターン)とがそれぞれ径方向に隣接して巻回されている。また、図示しないが、第2の実施形態の電動機1においても、ステータティース21には、16極に対応する第1組の巻線23(20ターン)と、28極に対応する第2組の巻線24(10ターン)とがそれぞれ径方向に隣接して巻回されている。しかしながら、特に第2の実施形態で示すように、瞬時最大トルク時に大電流が流れる場合、スロット25内の平均電流密度は一般の電動機1と同様であるものの、28極に対応する第2組の巻線24のみが発熱源となり、この温度分布が大きくなる可能性がある。
【0047】
そこで、第3の実施形態では、図12に示すように、16極に対応する第1組の巻線23をステータティース21の内周側に配置し、この第1組の巻線23の外周側に28極に対応する第2組の巻線24を配置する。この場合、第1組の巻線23と第2組の巻線24とが積層状に配置されることとなるので、第1組の巻線23と第2組の巻線24との接触面積が増大させることができる。これにより、温度上昇した第2組の巻線24の熱を第1組の巻線23側に効果的に伝えることができるので、第2組の巻線24側の温度上昇を効果的に抑制することができる。かかる構成は、電動機1において、スロット25が冷媒流路となるような直接冷却構造を備える構成においても有効である。
【0048】
また、図13に示すように、ステータティース21に対して、16極に対応する第1組の巻線23の素線と、28極に対応する第2組の巻線24の素線とを、それらがなるべく隣り合うように巻回することで、第1組の巻線23および第2組の巻線24を構成してもよい。この場合、第1組の巻線23と、第2組の巻線24との接触面積が増大させることができる。これにより、温度上昇した第2組の巻線24の熱を第1組の巻線23側に効果的に伝えることができるので、第2組の巻線24側の温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、第2組の巻線24側の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0049】
さらに、図14に示すように、ステータティース21およびバックヨーク22で構成されるステータコアの外周側のケース部材26に放熱用の冷媒通路27を備える構成である場合、電動機1内の温度分布は、ステータコアよりも巻線の方が大となる。この場合には、発熱側である28極に対応する第2組の巻線24をステータティース21の内周側に配置し、この第2組の巻線24の外周側に28極に対応する第1組の巻線23を配置することが好ましい。
【0050】
また、図12〜14に示す手法において、第1組の巻線23と第2組の巻線24との間に、熱伝導性を高める充填剤を配置することにより、さらに両者の熱抵抗の低減を図ることができる。この充填剤としては、一般的に用いられるワニスの含浸が考えられるが、固体の熱伝導剤を両者の間に挟みこんでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電動機
10…ロータ
11…ロータコア
12…磁石
20…ステータ
21…ステータティース
22…バックヨーク
23…巻線
24…巻線
25…スロット
30…第1の電源
31…第2の電源
32…インバータ
33…インバータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、それぞれの組が異なる磁極数で構成される複数の磁石の組に相当する複数の磁石磁束を合算して発生させる磁束発生部材を持つロータを備えた電動機が開示されている。この電動機は、ステータ側の各スロットに1組の巻線がそれぞれ配置されており、このコイルに複合電流を供給することにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、スロットに単一の巻線しか巻回されておらず、通電電流の制御だけではモータの特性は変化せず、広い駆動領域を得ることができないという可能性がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、広範な駆動領域を備える電動機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、ステータが、ロータ側の各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる複数組の巻線を備えており、スロット毎に、各組の巻線が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されている。この場合、複数組の巻線は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各組の巻線に個別に通電することで、それぞれ異なる電動機の特性を得ることができので、電動機の駆動領域の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる電動機1の構成を模式的に示す断面図
【図2】磁束発生部材の概念を示すロータ10Aの説明図
【図3】ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成の説明図
【図4】ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成の説明図
【図5】一般的な永久磁石型同期電動機100の構成を模式的に示す断面図
【図6】ステータ120における1組の巻線123の巻線構成の説明図
【図7】第1の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図
【図8】第1の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図
【図9】ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成の説明図
【図10】第2の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図
【図11】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【図12】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【図13】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【図14】2組の巻線23,24の巻線状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電動機1の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態にかかる電動機1は、永久磁石型同期電動機であり、ラジアルギャップのインナーロータ型として構成されている。この電動機1は、シャフト(図示せず)に連結されるロータ(可動子)10と、断面がリング状のステータ(固定子)20とを主体に構成されており、ロータ10は、ステータ20の内周側にエアギャップを介して配置されている。
【0010】
ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁石(永久磁石)12とで構成されている。ロータコア11は、磁性体の電磁鋼板を軸方向に複数積層して形成されている。このロータコア11には、複数の磁石12(N極12a,S極12b)が周方向に沿って配設されており、これらの磁石12は、磁束発生部材として機能する。
【0011】
図2は、本実施形態にかかる磁束発生部材の概念を示すロータ10Aの説明図である。磁束発生部材は、極対数がそれぞれ異なる複数組の永久磁石に相当する磁石磁束のそれぞれを合算させて発生させるものである。磁束発生部材は、これを形式的に捉えた場合、ロータ10Aに示すように、第1の磁石組12A、具体的には、16極(8極対)の磁石組(N極12a,S極12b)と、第2の磁石組12B、具体的には、28極(14極対)の磁石組(N極12a,S極12b)とで構成されている。ここで、16極の磁石組12Aと、28極の磁石組12Bとは、ロータコア11の表層に2層に配置されており、径方向において、16極の磁石組12Aの外側に28極の磁石組12Bが配置されている。このロータ10Aは、16極および28極の磁石組12A,12Bによる複合磁束、具体的には、16極の磁石組12Aによる磁石磁束と、28極の磁石組12Bの磁石磁束とが合算されて発生する。なお、同図に示す例では、第1の磁石組12Aと、第2の磁石組12Bとの組み合わせ位相は、位置Aにおいて一致している(位相差ゼロ位置)。
【0012】
ロータ10Aには、16極の磁石組12Aと28極の磁石組12Bとにおいて、着磁方向の異なる磁石12a,12bが互いに接している領域(図中の破線で示す領域)と、着磁方向の同じ磁石12a(または12b)が互いに接している領域とが存在している。着磁方向の異なる磁石12a,12bが互いに接している領域では、どちらの着磁方向にも磁束が発生しないので磁石は無いものと等価であり、かつ、磁束は飽和しているので磁束は通り難くなる。
【0013】
本実施形態のロータ10(図1参照)は、ロータ10A(図2参照)において異なる着磁方向の磁石12a,12bが接している部分から当該磁石12a,12bを排除することにより構成されたものである。ロータ10には、図2に示す非破線領域に対応する磁石12a,12bとして、10個のN極の磁石12aと、10個のS極の磁石12bとが配置されている。このロータ10は、複数の磁石12により、図2に示すロータ10Aと同じく、16極および28極の磁石組による複合磁束が発生する。換言すれば、ロータ10は、16極の磁石組12Aと28極の磁石組12Bとに相当する磁束成分のそれぞれを合算させて発生させるロータとして機能する。もっとも、ロータ10は、図2に示すロータ10Aのように、極性の違う磁石が接している部分の磁石12a,12bを排除していない構成で基本的に成立する。しかしながら、不要な磁石を除去した方が、削除した磁石分の慣性の低減により、トルクの向上、モータの軽量化、削除した磁石の分の経費節減などを図ることができる。
【0014】
なお、図1に示すロータ10において、不要な磁石を除去した領域は空隙となっており、空気によって占められている。この空気が占める領域は磁束を通さない機能を果たしている。すなわち、磁石を除去したこの領域には、鉄などの磁束を通し易い素材以外の部材を配置する必要があるが、通常は空間(空気)で足りる。もちろん、この領域には空気以外の磁束を通しにくい部材が設置されても構わない。
【0015】
ステータ20は、例えば、磁性体の電磁鋼板を軸方向に複数積層して構成されており、複数の突極部(ステータティース)21と、略リング状のバックヨーク22とを有している。複数のステータティース21は、バックヨーク22の内周側において周方向に沿って等間隔に配置されており、個々のステータティース21は、ロータ10側に突出した格好となっている。バックヨーク22は、個々のステータティース21をその基端側で連結している。
【0016】
各ステータティース21には、絶縁部材であるインシュレータ(図示せず)を介して、2組の巻線23,24が各々巻回されている。この2組の巻線23,24は、16極の磁石組12Aの極対数に対応した電流磁界を発生させる第1組の巻線23と、28極の磁石組12Bの極体数に対応した電流磁界を発生させる第2組の巻線24とが含まれている。これにより、ステータ20は、スロット25(バックヨーク22とステータティース21とによって囲まれる領域)毎に、各組の巻線23,24が同一のスロット25内にそれぞれ配置される構成される。本実施形態において、ステータ20には、24個のスロットが形成されている。なお、各組の巻線構成については後述する。
【0017】
この電動機1では、ロータ10に配置された永久磁石12と、ロータ10自体を構成する磁性体(電磁鋼板)と、ステータ20を構成する磁性体(電磁鋼板)とによって、主磁気回路が形成される。そして、永久磁石12からの磁石磁束、および各組の巻線23,24をインバータ制御により通電することで発生する交番磁束が、この主磁気回路を流れることで電磁力によるトルクが発生し、これにより、ロータ10およびこれに連結されたシャフトが回転する。
【0018】
つぎに、図3,4を参照して、ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成を具体的に説明する。本実施形態の電動機1を駆動する場合、16極に対応する第1組の巻線23のそれぞれに通電を行う第1の電源30と、28極に対応する第2組の巻線24に通電を行う第2の電源31とが個々のインバータ32,33を介して2組の巻線23,24にそれぞれ接続される。個々のインバータ32,33を介して供給される電流容量はともに同一である(例えば、600[A])。
【0019】
16極に対応する第1組の巻線23は、スロット数と、極数との関係から、電流位相差が電気角120度で3相(U相、V相、W相)必要となる(図4参照)。図3(a)は、第1組の巻線23のうち、U相に対応する8つの巻線23を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相に対応する8つの巻線23は、それぞれ並列接続されており、この回路がインバータ32のU相出力端子に接続されている。3相インバータ32から出力されるU相電流は、U相に対応する各巻線23に1/8づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600[A]なので、U相に対応する1つの巻線23あたり75[A]の電流が供給される。ここで、第1組の巻線23のそれぞれは、断面積Aの素線がステータティース21に16ターン巻かれて構成されている。
【0020】
一方、28極に対応する第2組の巻線24は、スロット数と、極数との関係から、電流位相差が電気角210度で12相必要となる。しかしながら、本実施形態では、3相インバータの活用を考慮して、6相(3相インバータで反転相を用いることで6相相当((U相、V相、W相、U_相、V_相、W_相)))とする(図4参照)。図3(b)は、第2組の巻線24のうち、U相およびその反転相であるU_相に対応する8つの巻線24を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相およびU_相に対応する8つの巻線24は、2並列4直列、具体的には、U相およびU_相が交互にそれぞれ2個づつ直列接続された回路を2つ並列接続することで構成されており、この回路がインバータ33のU相出力端子に接続されている。3相インバータ33から出力されるU相電流は、U相およびU_相に対応する各巻線24に1/2づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600[A]なので、U相およびU_相に対応する1つの巻線23あたり300[A]の電流が供給される。ここで、第2組の巻線24のそれぞれは、断面積4Aの素線がステータティース21に6ターン巻かれて構成されている。
【0021】
図3(c)に示すように、本実施形態では、各スロット25には、上述したような第1組の巻線23と、第2組の巻線24とがそれぞれ配置されている。ここで、各スロット25のスロット断面積S(スロット25間における巻線エリア面積)は、第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積と、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積との和になる。第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積は、16ターンと素線断面積Aとの積算値(16A)として演算され、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積は、6ターンと素線断面積4Aとの積算値(24A)として演算される。すなわち、各スロット25のスロット断面積Sは40Aとなる。また、第1組の巻線23と、第2組の巻線24とに流れる各電流値を比較すると、第2組の巻線24には第1組の巻線23と比較して4倍の電流が流れるが、第2組の巻線24は第1組の巻線23と比較して4倍の断面積を有するため電流密度はそれぞれ75/Aで同等となる。
【0022】
図5は、本実施形態の電動機1と比較する、一般的な永久磁石型同期電動機100の構成を模式的に示す断面図である。この電動機100は、ロータ110と、ステータ120とを主体に構成されている。ロータ110は、ロータコア11と、このロータコア11の周方向に配置される16極(8極対)の磁石112(N極112a,S極112b)で構成されている。一方、ステータ120において、個々のステータティースには、1組の巻線123がそれぞれ巻回されており、これにより、1組の巻線123がバックヨークとステータティースとによって囲まれるスロット125に配置される。同図に示す例において、ステータ120には、24個のスロットが形成されている。
【0023】
この電動機100を駆動する場合、巻線123に通電を行う電源(図示せず)が備えられており、この電源は、電流容量600Aとする。16極に対応する巻線123は、スロット数と、極数との関係から、スロット間位相差が120度で3相(U相、V相、W相)必要となる。図6(a)は、巻線123のうち、U相に対応する8つの巻線123を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相に対応する8つの巻線123は、それぞれが並列接続に構成されている。したがって、3相インバータ130から出力されるU相電流は、U相に対応する各巻線123に1/8づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600Aなので、U相に対応する1つの巻線123あたり75Aの電流が供給される。ここで、巻線23のそれぞれは、断面積Aの素線がステータティース21に40ターン巻かれて構成されている。
【0024】
図6(b)に示すように、各スロット125には、巻線123がそれぞれ配置されている。ここで、各スロット125のスロット断面積S(スロット25間における巻線エリア面積)は、40ターンと素線断面積Aとの積算値(40A)として演算される。また、個々の巻線123に流れる電流(電流密度)は、75/Aとなる。すなわち、上述した本実施形態にかかる電動機1は、スロット断面積Sおよび電流密度において、一般的な電動機100と同等の構成となる。
【0025】
図7,8は、第1の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図である。同図において、Lcは、一般的な電動機100のNT特性を示す。また、Lp1は、28極に対応する第2組の巻線24に通電した際の電動機1のNT特性を示し、Lp2は、16極に対応する第1組の巻線23に通電した際の電動機1のNT特性を示す。本実施形態にかかる電動機1は、Lp1で示すように、一般的な電動機100とほぼ同等の最大トルクを得ながら、高回転域(Rtよりも回転数が高い領域)ではトルクが拡大し、駆動領域が拡大されていることが分かる。
【0026】
また、電動機1を駆動する場合、図7に示すように、駆動領域がエリアA1では、28極に対応する第2組の巻線24に通電することにより、また、駆動領域がエリアA2では、16極に対応する第1組の巻線23に通電する。これにより、一般的な電動機100と比較して、同一動作点における運転効率向上を図ることができる。
【0027】
また、図8に示すように、エリアB1は、Lp1における高効率運転領域を示し、エリアB2は、Lp2における高効率運転領域を示す。これにより、領域C1の動作点では、28極に対応する第2組の巻線24に通電することで、電動機1の高効率な運転が可能となり、領域C2の動作点では、16極に対応する第1組の巻線23に通電することで、電動機1の高効率な運転が可能となる。
【0028】
このように本実施形態において、ロータ10は、極対数がそれぞれ異なる複数組の永久磁石(本実施形態では、16極の磁石組と24極の磁石組)に相当する磁石磁束のそれぞれを合算させて発生させる磁束発生部材(本実施形態では、複数の磁石12)を備える。ステータ20は、各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる複数組の巻線(本実施形態では、16極および24極に対応する2組の巻線23,24)を備える。ここで、ステータ20は、スロット25毎に、各組の巻線23,24が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されており、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なる。かかる構成によれば、各組の巻線23,24に個別に通電することで、それぞれ異なる電動機の特性を得ることができる。これにより、電動機1の駆動領域が拡大し、トルクや出力の向上を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、同一組内の各巻線の直列接続数および並列接続数の一方または両方が異ならされている。これにより、低回転大トルク用の巻線組と、高回転用の巻線組とを構成することができるので、電動機1の駆動領域を拡大することができる。
【0030】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、大きい極対数に対応する組の巻線24ほど、同一組内の各巻線の並列接続数が少なく設定されている。かかる構成によれば、大きい極対数に対応する組の巻線24について、各巻線に供給される電流を大きくすることができるので、低回転大トルクを得ることができる。
【0031】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、大きい極対数に対応する組の巻線24ほど、巻線の巻回数が小さく設定され、かつ、素線の断面積が大きく設定される。かかる構成によれば、大きい極対数に対応する組の巻線24について電流を大きく設定した場合であっても、電流密度を小さい極対数に対応する組の巻線24の電流密度と同等にすることができる。これにより、大きい極対数に対応する組の巻線24について大きな電流を流しても、熱性能の低下を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、異なるインバータ32,33を介して電流が供給されるとともに同一組内の各巻線の並列接続数が異なっている。ここで、インバータ32,33のそれぞれは、対応する組の巻線に供給する電流容量が互いに同一に設定されている。かかる構成によれば、異なる諸元の巻線23,24について、個々のインバータ32,33の素子構成を同一とすることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、巻線の組毎に、負荷領域に対応して選択的に通電されており、低回転大トルク領域では、大きい極対数に対応する組の巻線24へ通電が行われ、低トルク領域では、小さい極対数に対応する組の巻線23へ通電が行われる。かかる構成によれば、各組の巻線23,24を使用する際の電動機効率が異なることを利用して、電動機1の効率向上を図ることができる。
【0034】
なお、本実施形態によれば、28極に対応する第2組の巻線24に対する通電について、3相インバータを用いたが、6相インバータを用いた場合には、第2組の巻線24は、インバータの出力に対して2並列2直列とすることも可能であり、また、12相インバータを用いた場合には、第2組の巻線24は、インバータの出力に対して2並列1直列とすることも可能である。
【0035】
また、図8に示したように、同一の動作点を出力するのに、2組の巻線23,24のどちらに通電しても概ね同じような効率である場合には、個々の巻線23,24のそれぞれの温度を検出する温度検出手段(例えば、熱電対やサーミスタ)を備えておく。これにより、温度の低い方の巻線23,24に優先的に通電することで、一方の巻線23,24の異常発熱を回避して運転することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態にかかる電動機1について説明する。この第2の実施形態にかかる電動機1が、第1の実施形態のそれと相違する点は、28極に対応する第2組の巻線24への通電方法である。なお、第1の実施形態と重複する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0037】
図9は、ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成を具体的に説明する。本実施形態の電動機1を駆動する場合、16極に対応する第1組の巻線23のそれぞれに通電を行う第1の電源(図示せず)と、28極に対応する第2組の巻線24に通電を行う第2の電源(図示せず)とが個々のインバータ32,33を介して2組の巻線23,24にそれぞれ接続される。第1の電源に対応するインバータ32を介して供給される電流は600[A]である。一方、第2の電源に対応するインバータ33を介して供給される電流は、通常、300[A]であるが、瞬時に最大トルクを発生する必要がある時(瞬時最大トルク時)には、600[A]となる。
【0038】
16極に対応する第1組の巻線23は、第1の実施形態と同様、スロット間位相差が120度で3相(U相、V相、W相)必要となる。図9(a)は、第1組の巻線23のうち、U相に対応する8つの巻線23を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相に対応する8つの巻線23は、それぞれ並列接続されており、この回路がインバータ32のU相出力端子に接続されている。3相インバータ32から出力されるU相電流は、U相に対応する各巻線23に1/8づつ通電される。本ケースでは、U相電流が600[A]なので、U相に対応する1つの巻線23あたり75[A]の電流が供給される。ここで、第1組の巻線23のそれぞれは、断面積Aの素線がステータティース21に20ターン巻かれて構成されている。
【0039】
一方、28極に対応する第2組の巻線24は、第1の実施形態と同様、スロット間位相差が210度で、6相(3相インバータで反転相を用いることで6相相当((U相、V_相、W相、U_相、V相、W_相)))とする。図9(b)は、第2組の巻線24のうち、U相およびその反転相であるU_相に対応する8つの巻線24を模式的に示しているが、他の相についても同様である。U相およびU_相に対応する8つの巻線24は、2並列4直列、具体的には、U相およびU_相が交互にそれぞれ2個づつ直列接続された回路を2つ並列接続することで構成されており、この回路がインバータ33のU相出力端子に接続されている。3相インバータ33から出力されるU相電流は、U相およびU_相に対応する各巻線24に1/2づつ通電される。本ケースでは、U相電流が通常300[A]なので、U相およびU_相に対応する1つの巻線23あたり150[A]の電流が供給される。ここで、第2組の巻線24のそれぞれは、断面積2Aの素線がステータティース21に10ターン巻かれて構成されている。
【0040】
図9(c)に示すように、本実施形態では、各スロット25には、上述したような第1組の巻線23と、第2組の巻線24とがそれぞれ配置されている。ここで、各スロット25のスロット断面積S(スロット25間における巻線エリア面積)は、第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積と、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積との和になる。第1組の巻線23に対応する巻線エリア面積は、20ターンと素線断面積Aとの積算値(20A)として演算され、第2組の巻線24に対応する巻線エリア面積は、10ターンと素線断面積2Aとの積算値(20A)として演算される。すなわち、各スロット25のスロット断面積Sは、上述した一般的な電動機100と同様の40Aとなる。また、第1組の巻線23と、第2組の巻線24とに流れる各電流値を比較すると、第2組の巻線24には第1組の巻線23と比較して2倍の電流が流れるが、第2組の巻線24は第1組の巻線23と比較して2倍の断面積を有するため電流密度はそれぞれ75/Aで同等となる。
【0041】
また、本実施形態では、瞬時最大トルク時には、第2の電源からインバータ33を介して600[A]の電流が供給される。そのため、第2組の巻線24において、U相およびU_相に対応する1つの巻線23あたり300[A]の電流が供給される。この場合、第2組の巻線24の電流密度は150/Aとなり、通常時の2倍の電流密度となる。
【0042】
図10は、第2の実施形態にかかる電動機1の回転数RとトルクTとの特性(NT特性)を示す説明図である。同図において、Lcは、一般的な電動機100のNT特性を示す。また、Lp1は、28極に対応する第2組の巻線24に通電(300[A])した際の電動機1のNT特性を示し、Lp2は、16極に対応する第1組の巻線23に通電した際の電動機1のNT特性を示す。また、Lp3は、28極に対応する第2組の巻線24に通電(600[A])した際の電動機1のNT特性を示す。本実施形態にかかる電動機1は、Lp3で示すように、インバータ33を介して600[A]に電流を倍増させることで、一般的な電動機100と比較して、大幅にトルクを増大させることができ、また、回転数がRt以上の領域では、出力を増大させることができる。また、本実施形態にかかる電動機1は、瞬時最大トルク時には、インバータ33を介して600[A]の電流が供給されることとなるが、スロット25内の平均電流密度は、75/Aであり、一般的な電動機100と同等である。
【0043】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、各組の巻線23,24に個別に通電することで、それぞれ異なる電動機の特性を得ることができる。これにより、電動機1の駆動領域が拡大し、トルクや出力の向上を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態において、複数組の巻線23,24は、2組の巻線で構成され、小さい極対数に対応する一方の組の巻線23に第1の電流(600[A])が通電されるとともに、大きい極対数に対応する他方の組の巻線24に第2の電流(300[A])または第1の電流(600[A])が選択的に通電されている。この場合、他方の組の巻線24に第1の電流が通電される際に、この他方の組の巻線24の電流密度が、一方の組の巻線23の電流密度よりも大きくなるように、一方の組の巻線23が、他方の組の巻線24よりも、素線の断面積が小さく、かつ、巻回数が多く設定される。かかる構成によれば、他方の組の巻線24について、第2の電流を通電している際には、一方の組の巻線23と同等な電流密度とすることができる。また、他方の組の巻線24について、第1の電流を通電している際には、一方の組の巻線23よりも大きな電流密度となるものの、素線の断面積が小さい分巻回数が多いので、最大トルクの向上を大幅に望むことができる。これにより、電動機1の駆動領域の拡大を図ることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態にかかる電動機1について説明する。この第3の実施形態にかかる電動機1の特徴の一つは、ステータ20における2組の巻線23,24の巻線構成である。なお、第1または第2の実施形態と重複する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0046】
図11に示すように、第1の実施形態の電動機1において、ステータティース21には、16極に対応する第1組の巻線23(16ターン)と、28極に対応する第2組の巻線24(6ターン)とがそれぞれ径方向に隣接して巻回されている。また、図示しないが、第2の実施形態の電動機1においても、ステータティース21には、16極に対応する第1組の巻線23(20ターン)と、28極に対応する第2組の巻線24(10ターン)とがそれぞれ径方向に隣接して巻回されている。しかしながら、特に第2の実施形態で示すように、瞬時最大トルク時に大電流が流れる場合、スロット25内の平均電流密度は一般の電動機1と同様であるものの、28極に対応する第2組の巻線24のみが発熱源となり、この温度分布が大きくなる可能性がある。
【0047】
そこで、第3の実施形態では、図12に示すように、16極に対応する第1組の巻線23をステータティース21の内周側に配置し、この第1組の巻線23の外周側に28極に対応する第2組の巻線24を配置する。この場合、第1組の巻線23と第2組の巻線24とが積層状に配置されることとなるので、第1組の巻線23と第2組の巻線24との接触面積が増大させることができる。これにより、温度上昇した第2組の巻線24の熱を第1組の巻線23側に効果的に伝えることができるので、第2組の巻線24側の温度上昇を効果的に抑制することができる。かかる構成は、電動機1において、スロット25が冷媒流路となるような直接冷却構造を備える構成においても有効である。
【0048】
また、図13に示すように、ステータティース21に対して、16極に対応する第1組の巻線23の素線と、28極に対応する第2組の巻線24の素線とを、それらがなるべく隣り合うように巻回することで、第1組の巻線23および第2組の巻線24を構成してもよい。この場合、第1組の巻線23と、第2組の巻線24との接触面積が増大させることができる。これにより、温度上昇した第2組の巻線24の熱を第1組の巻線23側に効果的に伝えることができるので、第2組の巻線24側の温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、第2組の巻線24側の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0049】
さらに、図14に示すように、ステータティース21およびバックヨーク22で構成されるステータコアの外周側のケース部材26に放熱用の冷媒通路27を備える構成である場合、電動機1内の温度分布は、ステータコアよりも巻線の方が大となる。この場合には、発熱側である28極に対応する第2組の巻線24をステータティース21の内周側に配置し、この第2組の巻線24の外周側に28極に対応する第1組の巻線23を配置することが好ましい。
【0050】
また、図12〜14に示す手法において、第1組の巻線23と第2組の巻線24との間に、熱伝導性を高める充填剤を配置することにより、さらに両者の熱抵抗の低減を図ることができる。この充填剤としては、一般的に用いられるワニスの含浸が考えられるが、固体の熱伝導剤を両者の間に挟みこんでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電動機
10…ロータ
11…ロータコア
12…磁石
20…ステータ
21…ステータティース
22…バックヨーク
23…巻線
24…巻線
25…スロット
30…第1の電源
31…第2の電源
32…インバータ
33…インバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極対数がそれぞれ異なる複数組の永久磁石に相当する磁石磁束のそれぞれを合算させて発生させる磁束発生部材を備えるロータと、
各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる複数組の巻線を備えるステータとを有し、
前記ステータは、スロット毎に、各組の巻線が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されており、
前記複数組の巻線は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記複数組の巻線は、巻線の組毎に、同一組内の各巻線の直列接続数および並列接続数の一方または両方が異なることを特徴とする請求項1に記載された電動機。
【請求項3】
前記複数組の巻線は、大きい極対数に対応する組の巻線ほど、同一組内の各巻線の並列接続数が少なく設定されることを特徴とする請求項2に記載された電動機。
【請求項4】
前記複数組の巻線は、大きい極対数に対応する組の巻線ほど、当該巻線の巻回数が小さく設定され、かつ、素線の断面積が大きく設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項5】
前記複数組の巻線は、巻線の組毎に、異なるインバータを介して電流が供給されるとともに同一組内の各巻線の並列接続数が異なっており、
前記インバータのそれぞれは、巻線に供給する電流容量が互いに同一に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された電動機。
【請求項6】
前記複数組の巻線は、2組の巻線で構成され、小さい極対数に対応する一方の組の巻線に第1の電流が通電されるとともに、大きい極対数に対応する他方の組の巻線に前記第1の電流よりも小さい第2の電流または前記第1の電流が選択的に通電されており、
前記他方の組の巻線に前記第1の電流が通電される際に、当該他方の組の巻線の電流密度が前記一方の組の巻線の電流密度よりも大きくなるように、当該一方の組の巻線が、前記他方の組の巻線よりも素線の断面積が小さく、かつ、巻回数が多く設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項7】
前記複数組の巻線は、異なる組の巻線が積層状に配置される、または、異なる組の巻線が隣り合った状態でそれぞれ巻回されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載された電動機。
【請求項8】
前記複数組の巻線は、異なる組の巻線間に、熱伝導性を有する絶縁剤が充填されることを特徴とする請求項7に記載された電動機。
【請求項9】
前記ステータは、スロット内に冷媒を流通させる冷却機構を有しており、
前記複数組の巻線は、電流密度の高い組の巻線ほど外周側に配置されることを特徴とする請求項7に記載された電動機。
【請求項10】
前記ステータは、ステータコアの外周側に冷媒を流通させる冷却機構を有しており、
前記複数組の巻線は、電流密度の高い組の巻線ほど前記ステータコアとの接触面積が多くなるように配置されることを特徴とする請求項7に記載された電動機。
【請求項11】
前記複数組の巻線は、負荷領域に対応して各組へ選択的に通電されており、低回転大トルク領域では、大きい極対数に対応する組の巻線へ通電が行われ、低トルク領域では、小さい極対数に対応する組の巻線へ通電が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項12】
前記複数組の巻線は、各組の巻線にそれぞれ通電した際にそれぞれ同一出力を得られる場合、巻線温度が低い組の巻線へ優先的に通電が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項1】
極対数がそれぞれ異なる複数組の永久磁石に相当する磁石磁束のそれぞれを合算させて発生させる磁束発生部材を備えるロータと、
各組の永久磁石の極対数に対応した交番磁束をそれぞれ発生させる複数組の巻線を備えるステータとを有し、
前記ステータは、スロット毎に、各組の巻線が同一のスロット内にそれぞれ配置されて構成されており、
前記複数組の巻線は、巻線の組毎に、独立して通電可能であるとともに同一組内に設定される電流位相が異なることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記複数組の巻線は、巻線の組毎に、同一組内の各巻線の直列接続数および並列接続数の一方または両方が異なることを特徴とする請求項1に記載された電動機。
【請求項3】
前記複数組の巻線は、大きい極対数に対応する組の巻線ほど、同一組内の各巻線の並列接続数が少なく設定されることを特徴とする請求項2に記載された電動機。
【請求項4】
前記複数組の巻線は、大きい極対数に対応する組の巻線ほど、当該巻線の巻回数が小さく設定され、かつ、素線の断面積が大きく設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項5】
前記複数組の巻線は、巻線の組毎に、異なるインバータを介して電流が供給されるとともに同一組内の各巻線の並列接続数が異なっており、
前記インバータのそれぞれは、巻線に供給する電流容量が互いに同一に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された電動機。
【請求項6】
前記複数組の巻線は、2組の巻線で構成され、小さい極対数に対応する一方の組の巻線に第1の電流が通電されるとともに、大きい極対数に対応する他方の組の巻線に前記第1の電流よりも小さい第2の電流または前記第1の電流が選択的に通電されており、
前記他方の組の巻線に前記第1の電流が通電される際に、当該他方の組の巻線の電流密度が前記一方の組の巻線の電流密度よりも大きくなるように、当該一方の組の巻線が、前記他方の組の巻線よりも素線の断面積が小さく、かつ、巻回数が多く設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項7】
前記複数組の巻線は、異なる組の巻線が積層状に配置される、または、異なる組の巻線が隣り合った状態でそれぞれ巻回されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載された電動機。
【請求項8】
前記複数組の巻線は、異なる組の巻線間に、熱伝導性を有する絶縁剤が充填されることを特徴とする請求項7に記載された電動機。
【請求項9】
前記ステータは、スロット内に冷媒を流通させる冷却機構を有しており、
前記複数組の巻線は、電流密度の高い組の巻線ほど外周側に配置されることを特徴とする請求項7に記載された電動機。
【請求項10】
前記ステータは、ステータコアの外周側に冷媒を流通させる冷却機構を有しており、
前記複数組の巻線は、電流密度の高い組の巻線ほど前記ステータコアとの接触面積が多くなるように配置されることを特徴とする請求項7に記載された電動機。
【請求項11】
前記複数組の巻線は、負荷領域に対応して各組へ選択的に通電されており、低回転大トルク領域では、大きい極対数に対応する組の巻線へ通電が行われ、低トルク領域では、小さい極対数に対応する組の巻線へ通電が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【請求項12】
前記複数組の巻線は、各組の巻線にそれぞれ通電した際にそれぞれ同一出力を得られる場合、巻線温度が低い組の巻線へ優先的に通電が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電動機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−36060(P2011−36060A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181283(P2009−181283)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】
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