説明

電動調理器

【課題】通常よりも栄養価が付加されたジュースやスープなどをつくることができる電動調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】容器6内の食品を切削するカッター9と、容器6を加温する加熱手段18と、容器6内の温度を検知する温度検知手段19の信号をもとに加熱手段18の制御を行う制御手段20とを備え、制御手段20の調理プログラムに食品を切削した状態で一定時間保持して食品の酵素反応を促進する酵素反応工程Aを設けたものである。これによって、酵素反応工程Aにおいて、食品の栄養成分をさらに増加させ、通常よりも調理物の栄養価を付加することができる。また、食品材料にもともと含まれている酵素を利用するので、人工的なものを添加するよりも安全にジュースやスープなどをつくることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物、野菜、調味料、水などの食品を切削、粉砕、攪拌する機能とこれを加熱調理する機能とを有した電動調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活において健康的なものへの志向が強まる中、野菜を手軽に多量摂取できる野菜ジュースや野菜スープなどへの関心が高まっている。また、安全志向も加わって、これらの野菜ジュースや野菜スープを手作りできるジューサーやミキサーなどの電動調理器への関心も高まっている。
【0003】
一方、ポタージュスープなどの野菜をすりつぶしたスープを作る場合は、加熱調理と切削、粉砕を個別に行う作業の煩雑さを解消するために、食品を切削、粉砕、攪拌する機能とこれを加熱調理する機能とを設け、調理プログラムにしたがってスープを調理できるスープクッカーも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−149499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、スープ調理の煩雑さを改善する効果はあるが、スープは通常の調理方法で作ったスープと変わりなく、栄養的なものをさらに向上させるようなことまでには至っていない。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、切削、粉砕、攪拌した食品の酵素反応を促進することにより、通常よりも栄養価が付加されたジュースやスープなどをつくることができる電動調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動調理器は、容器内の食品を切削するカッターと、容器を加温する加熱手段と、容器内の温度を検知する温度検知手段の信号をもとに加熱手段の制御を行う制御手段とを備え、制御手段の調理プログラムに食品を切削した状態で一定時間保持して食品の酵素反応を促進する酵素反応工程を設けたものである。
【0007】
これによって、酵素反応工程において、食品の栄養成分をさらに増加させ、通常よりも調理物の栄養価を付加することができる。また、食品材料にもともと含まれている酵素を利用するので、人工的なものを添加するよりも安全にジュースやスープなどをつくることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電動調理器は、通常よりも栄養価が付加されたジュースやスープなどをつくることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、モータを内蔵した本体と、前記本体上に着脱自在に載置される容器と、前記容器の内底部に位置して前記モータにより駆動され容器内の食品を切削するカッターと、前記容器を加温する加熱手段と、前記容器の上部を覆う蓋と、前記容器内の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の信号をもとに前記加熱手段の制御を行う制御手段を備え、前記制御手段の調理プログラムに食品を切削した状態で一定時間保持して食品の酵素反応を促進する酵素反応工程を設けた電動調理器とするものである。これによって、酵素反応工程において、食品の栄養成分をさらに増加させ、通常よりも調理物の栄養価を付加することができる。また、食品材料にもともと含まれている酵素を利用するので、人工的なものを添加するよりも安全にジュースやスープなどをつくることができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、蓋に冷却手段を内蔵したことにより、容器内の食品が冷却され、よく冷えたジュースなどが簡便にできるとともに、調理後の保存中の腐敗を防止することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、蓋に送風手段を設けたことにより、冷風が食品に吹き付けられ、すばやく容器内の食品を冷却することができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、制御手段の調理プログラムは、食品を粗く切削する第1の切削工程と、食品を切削した状態で一定時間保持して酵素反応させる酵素反応工程と、前記酵素反応工程の後に加熱を行う加温工程とを有することにより、食品が切削されることで食品の内在酵素と食品成分(基質)が触れ合う機会が増え、酵素反応が促進されて調理物に栄養成分を付加することができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、酵素反応工程は容器内の温度を35℃から60℃に一定時間保持するようにしたことにより、酵素反応が至適温度で行われ、最も効率的に栄養成分がされて調理物の栄養価を向上することができる。
【0014】
第6の発明は、特に、第4または第5の発明において、加温工程の後に第2の切削工程を加えたことにより、2度に渡って切削され、調理物を粒子の細かいなめらかな舌触りに仕上げることができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第2、第3、第6のいずれか1つの発明において、制御手段の調理プログラムは、食品を加熱する加温工程と、その後に容器内の温度を60℃以下にして食品を切削する切削工程とを有することにより、食品材料が切削工程の攪拌によって溢れ出すことを防止できる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における電動調理器の構成を示している。
【0018】
図に示すように、本実施の形態における電動調理器は、モータ2とその駆動電源3を内蔵した本体1と、本体1上の容器基台7と容器部5を構成するとともに容器基台7上に着脱自在に載置される容器6と、容器6の内底部に位置してモータ2により駆動カップリング4と容器基台7に備えた従動カップリング8を介して駆動され容器6内の食品を切削するカッター9と、容器6を加温する加熱手段18と、容器6の上部を覆う蓋15と、容器6内の温度を検知する温度検知手段19と、温度検知手段19の信号をもとに加熱手段18の制御を行う制御手段20を備えている。
【0019】
そして、制御手段20の調理プログラムには、食品を切削した状態で一定時間保持して食品の酵素反応を促進する酵素反応工程A(図3、図4)を設けたものである。
【0020】
また、カッター9は、容器基台7の上に容器6が載置した状態で容器6底面に固定ねじ10で取り付けられている。固定ねじ10を容器基台7に挿入して回転させると、ストッパー(図示なし)により固定ねじ10が回転しないように固定され、カッター9がモータ2の駆動に伴い回転しても外れないような構成となっている。
【0021】
また、容器6と容器基台7の間にはパッキン11が設けられており、両者が密着接合した状態となる。本体1の駆動カップリング4と従動カップリング8とが嵌合した状態で、モータ2が駆動すると駆動カップリング4と従動カップリング8が回転し、さらにその上部に取り付けられているカッター9も回転し、容器6内に納められた食品を切削、粉砕、攪拌する。
【0022】
また、本体1の一部壁面12は容器上部13まで形成されており、壁面12の上部のヒンジ部14に蓋15が接合し、容器上部13の開口部は蓋15により開閉自在となっている。蓋15の内部にはペルチェ素子からなる冷却手段16と送風手段(ファン)17が内蔵されている。また、蓋15の容器6側の一部は格子状あるいはスリット状になっていて、冷却手段16による冷気が送風手段17で容器6内に吹き付けられるようになっている。
【0023】
また、容器基台7内の容器6底面部と接する位置には加熱手段18であるヒータが備えられている。さらに、容器6の側面(加熱手段18の影響を受けにくい部位)に温度センサよりなる温度検知手段19が備えられており、温度検知手段19の検知信号が制御手段20に送られる。
【0024】
また、制御手段20では、温度検知手段19の検知信号とメニューボタン21によって選択された調理プログラムに基づいてモータ2、冷却手段16、送風手段17、加熱手段18の動作を行う。
【0025】
なお、蓋15の容器6側の壁面をアルミなどの金属で被覆しておいてもよく、その場合、冷気が伝導されやすいという効果が得られる。また、蓋15および容器6は樹脂、金属、ガラスのいずれの場合でも少なくとも100℃の温度に耐えうる耐熱性素材からなることが望ましい。さらに、加熱手段18が配置される容器基台7内部は断熱材の使用や、耐熱性の高い金属で構成するのが望ましい。
【0026】
以上のように構成された電動調理器において、その動作を説明する。
【0027】
まず、食品材料を入れた容器6を容器基台7に載置して蓋15をし、電源を入れてメニューボタン21を選択する。選択できるメニューは、(1)ヘルシーコース(つぶつぶタイプ)、(2)へルシーコース(ポタージュ)、(3)普通コース、(4)ジュース、(5)あたため、(6)保冷の6種類である。これらの各メニューにおける調理工程と容器6底面の温度状態を図3〜図7に示す。
【0028】
メニュー(1)ヘルシーコース(つぶつぶタイプ)は野菜のつぶつぶ感が残るスープであり、調理工程において食品の切削工程の次に酵素反応工程Aを設け、室温あるいは35から60℃で一定時間保持した後、加温工程で加熱調理を行う。これは酵素反応工程Aによって栄養成分を増加させるメニューである。メニュー(2)のヘルシーコース(ポタージュ)は栄養成分の付加もしつつ、メニュー(1)の加温工程の後にさらに第2の切削工程を設けて調理物を切削することで、粒子の細かいなめらかな舌触りのスープにするものである。メニュー(3)の普通コースは加温工程で野菜を軟らかく加熱した後に、60℃以下までに冷却する冷却工程を設け、その後、切削してスープにするもので、60℃以下に冷却することで、加熱済みの食品材料が溢れ出すことなく切削することができる。メニュー(4)のジュースは冷却しながら切削するものであり、切削時の摩擦熱による温度上昇を防止でき、栄養成分の損失も防ぐことができる。また、切削終了時にすでに予冷状態となっているのでおいしく飲むことができる。このコースはジュースやガスパチョ(トマトの冷製スープ)などの加熱しないスープが適合する。メニュー(5)のあたためや(6)の保冷は調理後に温かい状態、あるいは冷たい状態を継続したいときや、調理後に放置していて再度適温にする際に使用するコースである。なお、保冷温度としては12℃、あたための温度は60℃に設定するのが望ましい。
【0029】
これらの各メニューのうち、メニューボタン21のメニュー(1)〜(3)についてカボチャを使用した際の具体例を説明する。まず、2〜3cm角の大きさに切ったカボチャと、水とうまみ調味料(グルタミン酸ナトリウムを含むもの)を容器6に入れ、蓋15をした後、メニューボタン21の(1)ヘルシーコース(つぶつぶタイプ)を選択する。制御手段20では、選択されたメニューに適応した調理工程プログラムが起動する。
【0030】
まず、切削工程でモータ2が10秒駆動してカボチャを粗く切削する。その後の酵素反応工程Aに移り、温度検知手段19で検知した温度が20℃以上であれば、そのままの状態で1時間保持する(図3の実線のグラフ)。もし、この時の検知温度が20℃以下であれば、加熱手段18がONされて容器6内が35℃に保持されるように温度制御され、その状態で1時間保持される(図3の点線のグラフ)。
【0031】
この酵素反応工程A中にカボチャ自体に含まれる酵素グルタミン酸デカルボキシラーゼが働き、一緒に容器6に入れておいたうまみ調味料のグルタミン酸からGABAが生成される。GABAはガンマアミノ酪酸であり、血圧上昇抑制作用など機能性成分で話題の成分である。酵素反応工程Aの後、制御手段20は加温工程に進み加熱手段18をONにして食品材料を20分間沸騰状態で継続する。この時、制御手段20では温度検知手段19の検知信号が例えば95℃を検知してからその20分後に加熱手段18を停止させる。
【0032】
このように、温度検知手段19の検知信号に基づいて容器6内の温度を加熱手段18で制御して切削工程、酵素反応工程A、加熱工程を順に進めることでGABAという栄養成分が付加されたカボチャのつぶつぶ感の残るスープができる。
【0033】
また、メニューボタン21の(2)ヘルシーコース(ポタージュ)を選択した場合は、最後の加温工程の後に再び切削工程に移る。第2の切削工程を設けることでカボチャはさらに切削され、つぶつぶした状態はなくなり、粒子の細かいなめらかなスープになる。なお、切削工程に移る前に冷却工程を設けて冷却手段16と送風手段17によって冷気を吹き付けて100℃の食品材料を60℃以下に冷却することで、切削時に食品材料が溢れ出るのを防止することもできる。
【0034】
以上のように、調理工程中に酵素の活性温度で一定時間保持する酵素反応工程Aを設けることによって、人工的な酵素を添加することなく、食品自体が自然にもっている酵素を活かして調理物に栄養成分を付加することができ、安全で栄養価の高いスープを提供できる。
【0035】
また、メニューボタン21の(3)の普通コースは酵素反応工程Aを含まず、前記したメニューボタン21の(1)および(2)のコースよりも短時間でスープを作ることができる。食品材料を容器6に投入後にメニューボタン(3)を選択すると、まず加温工程から始まり、制御手段20により加熱手段18がONされる。加熱中に温度検知手段19で沸騰を検知後、例えば95℃を検知してから20分後に加熱手段18を停止する。容器6の食品材料は沸騰状態で20分間加熱されることで軟らかくなる。そして、次に冷却工程に進み、冷却手段16と送風手段17がONされて100℃近い食品材料に冷風が吹き付けられ、材料の温度が60℃に低下したことを検知後に冷却手段16と送風手段17は停止して、切削工程に進み、食品材料を切削する。
【0036】
もし、冷却工程がなく加温工程の100℃近い食品材料をすぐに切削した場合、高温の食品材料、特に液体成分が吹きこぼれてしまうが、切削の前段階として冷却工程を設けることで高温の食品材料が吹きこぼれることなく切削することが可能となる。
【0037】
なお、メニューボタン21の(1)および(2)の酵素反応工程Aで栄養成分を生成できるような食品は次のようなもの挙げられる。例えば、GABAの生成に必要な食品材料は次のようなものがある。まず、GABAのもとなる遊離グルタミン酸を多く含むトマト、じゃがいも、みかん、しいたけ、はまぐり、キャベツ、人参などがある。一方、GABA生成のための酵素を多く含むものには、かぼちゃ、人参、ピーマン、ほうれんそう、ヨーグルト、豆類などがある。この両者の食品を組み合わせることでGABAの多いスープをつくることができる。
【0038】
さらに、酵素反応工程Aを利用して付加できる他の栄養成分としては、豆類と、きのこの組み合わせで豆のタンパクを分解して血圧上昇抑制作用のペプチドを多く生成できる。また、いも類ではいもに多く含まれるデンプンをいも自体に内在するデンプン分解酵素で分解して消化性のよい状態にして、甘みなどを増加させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる電動調理器は、通常よりも栄養価が付加されたジュースやスープなどをつくることができるので、家庭用の加熱調理装置として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態における電動調理器の側断面図
【図2】同電動調理器の容器を取外した分解状態を示す側断面図
【図3】同電動調理器によるヘルシーコース(つぶつぶタイプ)の調理工程と容器底面の温度特性を示す図
【図4】同電動調理器によるヘルシーコース(ポタージュ)の調理工程と容器底面の温度特性を示す図
【図5】同電動調理器による普通コースの調理工程と容器底面の温度特性を示す図
【図6】同電動調理器によるジュースの調理工程と容器底面の温度特性を示す図
【図7】同電動調理器によるあたためと保冷の調理工程と容器底面の温度特性を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 本体
2 モータ
6 容器
9 カッター
16 冷却手段
17 送風手段(ファン)
18 加熱手段
19 温度検知手段(温度センサ)
20 制御手段
21 メニューボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵した本体と、前記本体上に着脱自在に載置される容器と、前記容器の内底部に位置して前記モータにより駆動され容器内の食品を切削するカッターと、前記容器を加温する加熱手段と、前記容器の上部を覆う蓋と、前記容器内の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の信号をもとに前記加熱手段の制御を行う制御手段を備え、前記制御手段の調理プログラムに食品を切削した状態で一定時間保持して食品の酵素反応を促進する酵素反応工程を設けた電動調理器。
【請求項2】
蓋に冷却手段を内蔵した請求項1に記載の電動調理器。
【請求項3】
蓋に送風手段を設けた請求項1または2に記載の電動調理器。
【請求項4】
制御手段の調理プログラムは、食品を粗く切削する第1の切削工程と、食品を切削した状態で一定時間保持して酵素反応させる酵素反応工程と、前記酵素反応工程の後に加熱を行う加温工程とを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動調理器。
【請求項5】
酵素反応工程は容器内の温度を35℃から60℃に一定時間保持するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動調理器。
【請求項6】
加温工程の後に第2の切削工程を加えた請求項4または5に記載の電動調理器。
【請求項7】
制御手段の調理プログラムは、食品を加熱する加温工程と、その後に容器内の温度を60℃以下にして食品を切削する切削工程とを有する請求項2、3、6のいずれか1項に記載の電動調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−167959(P2008−167959A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4148(P2007−4148)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】