説明

電動車両のブレーキ制御装置

【課題】回生協調ブレーキ制御時、ブレーキパッドとロータとの間にクリアランス変化が発生しても、良好なブレーキフィーリングと回生エネルギーの確保を達成すること。
【解決手段】ハイブリッド車のブレーキ制御装置は、マスターシリンダと、ホイールシリンダと、VDCブレーキ液圧ユニットと、モータコントローラと、統合コントローラと、を備える。統合コントローラは、ブレーキ操作時、目標減速度を基本液圧分と上乗せ制動分(回生分と加圧分)で達成する回生協調ブレーキ制御を行う。そして、推定したブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量が設計値のクリアランス量に対して変化する場合に、実MC圧発生ポイントでの目標減速度が、上乗せ制動分の最大値となるように、設計値からのクリアランス変化量に応じて目標減速度特性を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車等に適用され、ブレーキ操作時、制動目標値を基本液圧分と上乗せ制動分(回生分と加圧分)の総和で達成する回生協調ブレーキ制御を行う電動車両のブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ブレーキ装置としては、ブレーキペダルストロークやマスターシリンダ圧等によりドライバ入力量を検知し、ドライバ入力量とドライバ要求減速度特性マップを用いてドライバ要求減速度を算出する。このドライバ要求減速度を達成するように、マスターシリンダからの負圧ブースタ出力(基本液圧分)に対し、フィードフォワード制御にて上乗せ制動分を発生させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来装置での上乗せ制動分とは、ドライバ要求減速度に対し、基本液圧分により確保される基本減速度で不足する分を上乗せ分担する減速度のことをいい、回生分と加圧分(ポンプアップ昇圧分)のうち少なくとも一方により得る。そして、上乗せ制動分を回生ギャップにより決め、可能な限り基本液圧分と回生分の総和によりドライバ要求減速度を達成するようにし、基本液圧分と回生分の総和で不足が発生するとき、不足分を加圧分にて補償する制御が回生協調ブレーキ制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−96218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用ブレーキ装置にあっては、マスターシリンダ圧発生ストロークの設計値に基づいて、ドライバ入力量に対するドライバ要求減速度特性によるマップを予め設定しておき、この設定マップを用いてドライバ要求減速度を決めている。このため、車載状態においてブレーキパッドとロータとの間のクリアランスが変化すると、マスターシリンダ圧発生ストロークの実際値が、マスターシリンダ圧発生ストロークの設計値から乖離する。よって、クリアランス変化が発生した場合には、マスターシリンダ圧の発生直前のタイミングやマスターシリンダ圧の発生タイミングで、ブレーキペダルストロークに対して減速度が滑らかに変化せずに不連続な振る舞いをし、ブレーキフィーリングを低下させる、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、回生協調ブレーキ制御時、ブレーキパッドとロータとの間にクリアランス変化が発生しても、良好なブレーキフィーリングと回生エネルギーの確保を達成することができる電動車両のブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両のブレーキ制御装置は、マスターシリンダと、ホイールシリンダと、ブレーキ液圧アクチュエータと、回生制動力制御手段と、回生協調ブレーキ制御手段と、クリアランス推定手段と、制動目標値特性設定手段と、備える手段とした。
前記マスターシリンダは、ブレーキ操作に応じたマスターシリンダ圧を発生する。
前記ホイールシリンダは、前後輪の各輪に設けられ、ホイールシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与える。
前記ブレーキ液圧アクチュエータは、前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダとの間に介装され、ポンプ用モータにより駆動する液圧ポンプと、前記ポンプ用モータの作動時、ホイールシリンダ圧とマスターシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有する。
前記回生制動力制御手段は、駆動輪に連結された走行用電動モータに接続され、前記走行用電動モータにより発生する回生制動力を制御する。
前記回生協調ブレーキ制御手段は、ブレーキ操作時、ブレーキペダルストローク検出値と制動目標値特性マップを用いて算出した制動目標値を、前記マスターシリンダ圧による基本液圧分と、前記回生制動力による回生分と前記ブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分のうち少なくとも一方による上乗せ制動分と、の総和で達成する制御を行う。
前記クリアランス推定手段は、前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量を推定する。
前記制動目標値特性設定手段は、前記推定したクリアランス量が設計値に対して変化する場合に、マスターシリンダ圧の発生が開始されるブレーキペダルストローク位置である実マスターシリンダ圧発生ストロークでの制動目標値が、上乗せ制動分の最大値となるように、または、許容範囲に収まるように、前記設計値からのクリアランス変化量に応じて制動目標値特性を設定する。
【発明の効果】
【0008】
よって、制動目標値特性を設定するに際し、推定したクリアランス量が設計値に対して変化する場合、設計値からのクリアランス変化量に応じた制動目標値特性に設定される。この制動目標値特性は、設計値からのクリアランス変化量にかかわらず、実マスターシリンダ圧発生ストロークでの制動目標値が、基本液圧分に上乗せする上乗せ制動分の最大値域(最大値と最大値前後の許容範囲内の値を含む)の値とされる。
すなわち、車載状態においてブレーキパッドとロータとの間のクリアランスは様々な要因により変化する。このクリアランス変化を原因として、実マスターシリンダ圧発生ストロークが設計値より遅れたり早過ぎたりすることがある。しかし、クリアランス量の設計値に対するズレがどちらの方向に生じていても、実マスターシリンダ圧発生ストロークでの特性値を、上乗せ制動分の最大値域の値とし、ブレーキペダルストローク変化に対して滑らかに変化する制動目標値特性に設定される。
このため、実マスターシリンダ圧発生ストロークが設計値より遅れているとき、ブレーキペダルストロークが進むにもかかわらず、制動目標値の上昇が抑えられることがなく、良好なブレーキフィーリングが達成される。
一方、実マスターシリンダ圧発生ストロークが設計値より早過ぎるとき、制動目標値が低く抑えられることがなく、燃費性能や電費性能の向上に有効である回生エネルギーの確保が達成される。
この結果、回生協調ブレーキ制御時、ブレーキパッドとロータとの間にクリアランス変化が発生しても、良好なブレーキフィーリングと回生エネルギーの確保を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車の構成を示すブレーキシステム図である。
【図2】実施例1のブレーキ制御装置におけるVDCブレーキ液圧ユニットを示すブレーキ液圧回路図である。
【図3】実施例1のブレーキ制御装置における回生協調ブレーキ制御系を示す制御ブロック図である。
【図4】実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラの目標減速度特性マップ設定部で実行される目標減速度特性マップ設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の目標減速度特性マップ設定処理において横G感応クリアランスの推定に用いられる横G感応クリアランスマップを示す図である。
【図6】実施例1の目標減速度特性マップ設定処理において実MC圧発生ポイントの推定と実MC圧発生ポイントの設計値に対する大小関係を示す図である。
【図7】実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラの目標減速度算出部及び回生協調ブレーキ制御部で実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例1の回生協調ブレーキ制御処理で加圧分指令値を決めるときに用いる目標差圧に対する差圧弁への作動電流値の関係特性の一例を示す図である。
【図9】VDCを利用した回生協調ブレーキシステムにより目標減速度(=ドライバ要求減速度)を基本液圧分と回生分と加圧分の総和により達成する回生協調ブレーキ制御でのドライバ入力に対する減速度分担関係の一例を示す制御概念説明図である。
【図10】比較例のブレーキ制御装置を搭載したハイブリッド車で実ロスストロークが設計値ロスストロークより大きい場合の基準目標減速度特性マップを用いた回生協調ブレーキ制御作用を示す課題説明図である。
【図11】比較例のブレーキ制御装置を搭載したハイブリッド車で実ロスストロークが設計値ロスストロークより小さい場合の基準目標減速度特性マップを用いた回生協調ブレーキ制御作用を示す課題説明図である。
【図12】実施例1のブレーキ制御装置を搭載したハイブリッド車がブレーキ操作により一定減速度を保って停車するときの回生協調ブレーキ制御作用の一例を示すタイムチャートである。
【図13】実施例1のブレーキ制御装置において実ロスストローク(クリアランス小)<設計値ロスストロークのときのオフセット補正による目標減速度特性による比較効果を示す比較効果説明図である。
【図14】実施例1のブレーキ制御装置において実ロスストローク(クリアランス大)>設計値ロスストロークのときのオフセット補正による目標減速度特性による比較効果を示す比較効果説明図である。
【図15】実施例2のブレーキ制御装置において実ロスストローク(クリアランス小)<設計値ロスストロークのときのオフセット補正&勾配補正による目標減速度特性による比較効果を示す比較効果説明図である。
【図16】実施例2のブレーキ制御装置において実ロスストローク(クリアランス大)>設計値ロスストロークのときのオフセット補正&勾配補正による目標減速度特性による比較効果を示す比較効果説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電動車両のブレーキ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車(電動車両の一例)のブレーキ制御装置の構成を、「全体構成」、「回生協調ブレーキ制御系のブロック構成」、「目標減速度特性マップの設定処理構成」、「回生協調ブレーキ制御処理構成」に分けて説明する。
【0012】
[全体構成]
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動による電動車両の一例であるハイブリッド車の構成を示す。図2は、ブレーキ液圧アクチュエータの一例であるVDCブレーキ液圧ユニットを示す。以下、図1及び図2に基づき、VDCを利用した回生協調ブレーキシステムの構成を説明する。
【0013】
実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ減速度発生系は、図1に示すように、ブレーキ液圧発生装置1と、VDCブレーキ液圧ユニット2(ブレーキ液圧アクチュエータ)と、ストロークセンサ3と、左前輪ホイールシリンダ4FLと、右前輪ホイールシリンダ4FRと、左後輪ホイールシリンダ4RLと、右後輪ホイールシリンダ4RRと、走行用電動モータ5と、を備えている。
【0014】
すなわち、既存のVDCシステム(VDCは、「Vehicle Dynamics Control」の略)を利用した回生協調ブレーキシステムによる構成としている。VDCシステムとは、高速でのコーナー進入や急激なハンドル操作などによって車両姿勢が乱れた際、横滑りを防ぎ、優れた走行安定性を発揮する車両挙動制御(=VDC制御)を行うシステムである。VDC制御では、例えば、旋回挙動がオーバーステア側であると感知すると、コーナー外側の前輪にブレーキをかけ、逆に、旋回挙動がアンダーステア側であると感知すると、駆動パワーを落とすとともに後輪のコーナー内側のタイヤにブレーキをかける。
【0015】
前記ブレーキ液圧発生装置1は、ドライバによるブレーキ操作に応じた基本液圧分を発生する基本液圧発生手段である。このブレーキ液圧発生装置1は、図1及び図2に示すように、ブレーキペダル11と、負圧ブースタ12と、マスターシリンダ13と、リザーブタンク14と、を有する。つまり、ブレーキペダル11に加えられたドライバのブレーキ踏力を、負圧ブースタ12により倍力し、マスターシリンダ13でマスターシリンダ圧によるプライマリ液圧とセカンダリ液圧を作り出す。このとき、マスターシリンダ圧で発生する減速度が、目標減速度(=ドライバ要求減速度)より小さくなるように予め設計する。
【0016】
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、ブレーキ液圧発生装置1と各輪のホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとの間に介装される。VDCブレーキ液圧ユニット2は、VDCモータ21(ポンプ用モータ)により駆動する液圧ポンプ22,22を有し、マスターシリンダ圧の増圧・保持・減圧を制御するブレーキ液圧アクチュエータである。そして、VDCブレーキ液圧ユニット2とブレーキ液圧発生装置1とは、プライマリ液圧管61とセカンダリ液圧管62により接続されている。VDCブレーキ液圧ユニット2と各輪のホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとは、左前輪液圧管63と右前輪液圧管64と左後輪液圧管65と右後輪液圧管66により接続されている。つまり、ブレーキ操作時には、ブレーキ液圧発生装置1により発生したマスターシリンダ圧を、VDCブレーキ液圧ユニット2により加圧し、各輪のホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに加えることで液圧制動力を得るようにしている。
【0017】
前記VDCブレーキ液圧ユニット2の具体的構成は、図2に示すように、VDCモータ21と、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22と、リザーバー23,23と、マスターシリンダ圧センサ24と、を有する。ソレノイドバルブ類として、第1M/Cカットソレノイドバルブ25(差圧弁)と、第2M/Cカットソレノイドバルブ26(差圧弁)と、保持ソレノイドバルブ27,27,27,27と、減圧ソレノイドバルブ28,28,28,28と、を有する。第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26は、VDCモータ21の作動時、ホイールシリンダ圧(下流圧)とマスターシリンダ圧(上流圧)の差圧を制御する。
【0018】
前記ストロークセンサ3は、ドライバによるブレーキペダル操作量をポテンショメータ等により検出する手段である。このストロークセンサ3は、回生協調ブレーキ制御での必要情報である目標減速度(=ドライバ要求減速度)を検出する構成として、既存のVDCシステムに対して追加された部品である。
【0019】
前記各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRは、前後各輪のディスクブレーキ機構に設定され、VDCブレーキ液圧ユニット2からの液圧が印加される。そして、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへのブレーキ液圧の印加時、一対のブレーキパッド41,41によりロータ42(=ディスクロータ)を挟圧することにより、前後輪に液圧制動力を付与する。
【0020】
前記走行用電動モータ5は、左右前輪(駆動輪)の走行用駆動源として設けられ、駆動モータ機能と発電ジェネレータ機能を持つ。この走行用電動モータ5は、力行時、バッテリ電力を消費しながらのモータ駆動により、左右前輪へ駆動力を伝達する。そして、回生時、左右前輪の回転駆動に負荷を与えることで電気エネルギーに変換し、発電分をバッテリへ充電する。つまり、左右前輪の回転駆動に与える負荷が、回生制動力となる。この走行用電動モータ5が設けられる左右前輪(駆動輪)の駆動系には、走行用電動モータ5以外に、走行用駆動源としてエンジン10が設けられ、変速機11を介して左右前輪へ駆動力を伝達する。
【0021】
実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ減速度制御系は、図1に示すように、ブレーキコントローラ7と、モータコントローラ8(回生制動力制御手段)と、統合コントローラ9と、エンジンコントローラ12と、を備えている。
【0022】
前記ブレーキコントローラ7は、統合コントローラ9からの指令とVDCブレーキ液圧ユニット2のマスターシリンダ圧センサ24からの圧力情報を入力する。そして、所定の制御則にしたがって、VDCブレーキ液圧ユニット2のVDCモータ21とソレノイドバルブ類25,26,27,28に対し駆動指令を出力する。このブレーキコントローラ7では、回生協調ブレーキ制御時、統合コントローラ9から加圧分指令を入力すると、ホイールシリンダ圧(下流圧)とマスターシリンダ圧(上流圧)の差圧を制御する。差圧制御は、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26への作動電流値による差圧コントロールと、VDCモータ21によるポンプアップ昇圧と、により行われる。なお、ブレーキコントローラ7では、回生協調ブレーキ制御以外に、上記VDC制御やTCS制御やABS制御、等を行う。
【0023】
前記モータコントローラ8は、駆動輪である左右前輪に連結された走行用電動モータ5にインバータ13を介して接続される。そして、回生協調ブレーキ制御時、統合コントローラ9から回生分指令を入力すると、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を入力された回生分指令に応じて制御する回生制動力制御手段である。このモータコントローラ8は、走行時、走行状態や車両状態に応じて走行用電動モータ5により発生するモータトルクやモータ回転数を制御する機能も併せ持つ。
【0024】
前記統合コントローラ9は、ブレーキ操作時、目標減速度を、マスターシリンダ圧による基本液圧分と上乗せ制動分(回生制動力による回生分と、VDCブレーキ液圧ユニット2による加圧分と、の少なくとも一方)の総和で達成する回生協調ブレーキ制御を行う。このとき、目標減速度は、ストロークセンサ3からのペダルストロークセンサ値と、設定されている目標減速度特性マップと、に基づいて決める。この統合コントローラ9には、バッテリコントローラ91からのバッテリ充電容量情報、車速センサ92からの車速情報、ブレーキスイッチ93からのブレーキ操作情報、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストローク情報、マスターシリンダ圧センサ24からのマスターシリンダ圧情報、等が入力される。なお、車速センサ92としては、極低車速域までの車速検出が可能な車輪速回転数検出手段が用いられる。
【0025】
[回生協調ブレーキ制御系のブロック構成]
図3は、実施例1のブレーキ制御装置における回生協調ブレーキ制御系ブロック図を示す。以下、図3に基づいて、回生協調ブレーキ制御系のブロック構成を説明する。
【0026】
実施例1の回生協調ブレーキ制御系は、図3に示すように、ブレーキコントローラ7と、モータコントローラ8と、統合コントローラ9と、を備えている。統合コントローラ9には、基準マップ設定部9a(基準制動目標値特性設定手段)と、目標減速度特性マップ設定部9b(制動目標値特性設定手段)と、目標減速度算出部9c(回生協調ブレーキ制御手段)と、回生協調ブレーキ制御部9d(回生協調ブレーキ制御手段)と、クリアランス推定部9e(クリアランス推定手段)と、を有する。
【0027】
前記基準マップ設定部9aは、ブレーキペダルストローク量が設計値ロスストロークに達するストローク位置を設計値MC圧発生ポイントとする。そして、設計値MC圧発生ポイントでの目標減速度(制動目標値)を上乗せ制動分の最大値とし、ストローク変化に対して滑らかに変化する基準目標減速度特性(基準制動目標値特性)によるマップを、予め設定しておくマップ記憶設定部である。
【0028】
前記目標減速度特性マップ設定部9bは、クリアランス推定部9eにより推定されるクリアランス推定値が、予め決めたクリアランスの設計値(設計値ロスストローク)に対して変化する場合に、目標減速度特性マップを補正により設定する。
目標減速度特性マップは、ブレーキ操作時、実MC圧発生ポイント(=実ロスストロークに達した位置)での目標減速度(制動目標値)が、上乗せ制動分の最大値となるように、基準マップ設定部9aから読み込んだ基準目標減速度特性をストローク方向にずらすオフセット補正により設定する。なお、実MC圧発生ポイントとは、マスターシリンダ圧の発生が開始されるブレーキペダルストローク位置である実マスターシリンダ圧発生ストロークに相当する。
【0029】
前記目標減速度算出部9cは、目標減速度特性マップ設定部9bにて設定された目標減速度特性マップによる目標減速度特性と、ストロークセンサ3からのペダルストロークセンサ値と、に基づき、目標減速度(=ドライバ要求減速度)を算出する。
【0030】
前記回生協調ブレーキ制御部9dは、目標減速度算出部9aにて算出された目標減速度と、マスターシリンダ圧センサ24からのMC圧センサ値と、車速センサ92からの車速センサ値を入力する。そして、MC圧センサ値に基づいて基本液圧分を決め、車速センサ値に基づいて回生分を決め、可能な限り目標減速度を基本液圧分+回生分の総和で達成するようにし、不足が生じたときその不足分を加圧分により補償する回生協調ブレーキ制御演算を行う。この演算結果にしたがって、回生分に対応する回生分指令をモータコントローラ8に出力し、加圧分に対応する加圧分指令をブレーキコントローラ7に出力する。
【0031】
前記クリアランス推定部9eは、横加速度センサ94とプレフィルコントローラ95と雨滴センサ96からの情報を入力し、ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量のうち、定常クリアランスからの増減分を推定する。
【0032】
[目標減速度特性マップの設定処理構成]
図4は、実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラ8の目標減速度特性マップ設定部9bで実行される目標減速度特性マップ設定処理の流れを示す(目標制動目標値特性設定手段)。以下、目標減速度特性マップの設定処理構成をあらわす図4の各ステップについて説明する。
【0033】
ステップS1では、横加速度センサ94により検出される横加速度(=横G)の大きさと、図5に示すクリアランス量マップを用い、横G影響によるクリアランス量の変化分(増加分)である横G感応クリアランスを推定し、ステップS2へ進む。
ここで、「クリアランス量マップ」は、横Gがゼロのときクリアランス量がゼロで、横Gが大きくなるにしたがってクリアランス量が大となる特性(例えば、二次曲線特性)を持つことで決定する。そして、多数回のブレーキ経験の中から横Gの最大値を記憶更新し、その最大横G記憶値のときの推定クリアランス量とする学習制御により、図5に示すクリアランス量マップを随時修正する。
【0034】
ステップS2では、ステップS1での横G感応クリアランスの推定に続き、プレフィル制御介入時、ブレーキパッド41とロータ42の接近状況に応じたクリアランス量の変化分(減少分)であるプレフィルクリアランスを学習・推定し、ステップS3へ進む。
ここで、「プレフィル制御」とは、VDCシステムを使い、ドライバがブレーキペダルを踏み込むとき、事前にホイールシリンダに所定の液圧を供給し、ブレーキパッドをロータに接近させることで、アイドルストロークを減少させる技術をいう。
このプレフィル制御は、フィルアップ制御とも呼ばれ、より詳しい内容については、例えば、特開2010-247793号公報を参照のこと。なお、プレフィルクリアランスは、プレフィル制御未介入時にゼロとする。
【0035】
ステップS3では、ステップS2でのプレフィルクリアランスの推定に続き、雨滴センサ96からの信号により雨天であると判断した場合、水膜の形成に応じたクリアランス量の変化分(減少分)である雨天検出クリアランスを学習・推定し、ステップS4へ進む。
ここで、「水膜」とは、雨の日、ブレーキパッド41とロータ42の表面に水が付着し、これがロータ回転に伴って水の膜を形成する現象をいう。なお、雨天時と判断しない場合は、雨天検出クリアランスはゼロとする。
【0036】
ステップS4では、ステップS3での雨天検出クリアランスの推定に続き、ブレーキパッド41とロータ42との間の定常クリアランスと、ステップS1〜ステップS3にて推定されたクリアランスに基づき、実MC圧発生ポイントを推定し、ステップS5へ進む。
ここで、「定常クリアランス」とは、クリアランスを変化させる要因が無い条件下でのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量をいう。例えば、ステップS1〜ステップS3にて推定されたクリアランスがゼロとなるブレーキ操作時、実際にマスターシリンダ圧が発生するブレーキペダルストローク位置(実MC圧発生ポイント)を検出することで得る。さらに、定常クリアランスは、ブレーキパッド41の摩耗等の経年変化に対応するため、ステップS1〜ステップS3にて推定されたクリアランスがゼロとなるブレーキ操作を経験する毎に更新する。
実MC圧発生ポイント(=クリアランス量推定値)は、
実MC圧発生ポイント=(定常クリアランス)+(横G感応クリアランス)−(プレフィルクリアランス)−(雨天検出クリアランス)
の式により推定される。
【0037】
ステップS5では、ステップS4での実MC圧発生ポイントの推定に続き、推定された実MC圧発生ポイントが(設計値−α)より小さいか否かを判断する。YES(実MC圧発生ポイント<設計値−α)の場合はステップS6へ進み、NO(実MC圧発生ポイント≧設計値−α)の場合はステップS7へ進む。すなわち、図6に示すように、クリアランス量推定値が(設計値−α)より小さいときは、目標減速度特性マップが補正される。
ここで、αは、理想とする要求特性を得る設計値に対して狙いの要求特性を達成可能な許容範囲を決める上限値と下限値を規定する値である。
【0038】
ステップS6では、ステップS5での実MC圧発生ポイント<設計値−αであるとの判断に続き、基準目標減速度特性の回生制動力発生開始ポイントをペダルストロークが短くなる方向へオフセット補正して目標減速度特性マップを設定する(図13)。ステップS6からはリターンへ進む。
【0039】
ステップS7では、ステップS5での実MC圧発生ポイント≧設計値−αであるとの判断に続き、推定された実MC圧発生ポイントが(設計値+α)より大きいか否かを判断する。YES(実MC圧発生ポイント>設計値+α)の場合はステップS8へ進み、NO(実MC圧発生ポイント≦設計値+α)の場合はリターンへ進む。すなわち、図6に示すように、クリアランス量推定値が(設計値+α)より大きいときは、目標減速度特性マップが補正される。
【0040】
ステップS8では、ステップS7での実MC圧発生ポイント>設計値+αであるとの判断に続き、基準目標減速度特性の回生制動力発生開始ポイントをペダルストロークが長くなる方向へオフセット補正して目標減速度特性マップを設定する(図14)。ステップS8からはリターンへ進む。
【0041】
[回生協調ブレーキ制御処理構成]
図7は、実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラ8の目標減速度算出部9c及び回生協調ブレーキ制御部9dで実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示す(回生協調ブレーキ制御手段)。以下、回生協調ブレーキ制御処理構成をあらわす図7の各ステップについて説明する。なお、図7の回生協調ブレーキ制御処理は、ブレーキ操作開始が判断された時点からスタートする。
【0042】
ステップS21では、ブレーキ操作開始前に停止状態のVDCモータ21をモータ駆動状態にし、ステップS22へ進む。
【0043】
ステップS22では、ステップS21でのモータ駆動、あるいは、ステップS27での車両非停止状態であるとの判断に続き、マスターシリンダ圧センサ24からのマスターシリンダ圧情報と、ストロークセンサ3からのペダルストローク量情報と、車速センサ92からの車速情報と、図4のフローチャートにて設定された目標減速度特性マップと、を読み込み、ステップS23へ進む。
【0044】
ステップS23では、ステップS22での必要情報と目標減速度特性マップを読み込みに続き、ブレーキペダル踏み込み速度を算出し、ペダル踏み込み速度による目標減速度特性マップの補正を行い、ステップS24へ進む。
ここで、目標減速度特性マップの補正は、設定されている目標減速度特性マップが有するペダル踏み込み速度情報と、ステップS23で算出されたペダル踏み込み速度と、が異なるときに行う。つまり、算出されたブレーキペダル踏み込み速度が、ペダル踏み込み速度情報より速くなっているほど、実MC圧発生ポイントまでのロスストロークを短くするようにストローク方向にずらすオフセット補正を施す。なお、目標減速度特性マップが有するペダル踏み込み速度情報と算出されたペダル踏み込み速度が一致するとき、または、両速度差が許容範囲内であるときは、設定されている目標減速度特性マップの補正を要さない。
【0045】
ステップS24では、ステップS23でのペダル踏み込み速度による目標減速度特性マップの補正に続き、ブレーキペダルストロークセンサ値と、補正後の目標減速度特性マップに基づき、ドライバ入力によるブレーキペダルストローク位置に対応する目標減速度を算出し、ステップS25へ進む。
【0046】
ステップS25では、ステップS24での目標減速度の算出に続き、そのときのMC圧センサ値に基づいて基本液圧分を決め、そのときの車速センサ値やバッテリSOCに基づいて可能な限り最大となる回生分を決める。そして、目標減速度から基本液圧分と回生分を差し引いた残りの減速度分を加圧分により分担するように決める。つまり、目標減速度を基本液圧分+回生分+加圧分の総和で達成する回生協調ブレーキ制御演算を行い、ステップS26へ進む。
【0047】
ステップS26では、ステップS25での回生協調ブレーキ制御演算に続き、基本液圧分に対する上乗せ目標制動力のうち、回生分に対応する回生分指令値を決定し、回生分指令(ゼロ指令を含む)をモータコントローラ8に出力する。同時に、基本液圧分に対する上乗せ目標制動力のうち、加圧分に対応する加圧分指令値を決定し、加圧分指令(ゼロ指令を含む)をブレーキコントローラ7に出力し、ステップS27へ進む。
ここで、モータコントローラ8は、回生分指令を入力すると、回生分を目標回生制動力とし、走行用電動モータ5への回生電流値を決めるフィードフォワード制御により、回生トルク制御を行う。ブレーキコントローラ7は、加圧分指令を入力すると、加圧分を目標差圧とし、図8に示すような関係特性に基づき、両M/Cカットソレノイドバルブ25,26への作動電流値を決めるフィードフォワード制御により、差圧コントロールを行う。
【0048】
ステップS27では、ステップS26での回生分指令と加圧分指令の出力に続き、車速センサ92からの車速センサ値に基づき、車両が停止したか否かを判断する。YES(車両停止状態)の場合はステップS28へ進み、NO(車両非停止状態)の場合はステップS22へ戻る。
【0049】
ステップS28では、ステップS27での車両停止状態であるとの判断に続き、VDCモータ21のモータ駆動を停止し、エンドへ進む。
【0050】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の回生協調ブレーキ制御における課題」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車のブレーキ制御装置における作用を、「回生協調ブレーキ制御作用」、「目標減速度特性マップ設定作用」、「クリアランス推定作用」に分けて説明する。
【0051】
[比較例の回生協調ブレーキ制御における課題]
VDCを利用した回生協調ブレーキ制御は、目標減速度に対し、基本液圧分と回生分だけでは補償しきれないシーンが発生すると、VDCブレーキ液圧ユニットによって補償しきれない分の液圧を加圧し、ドライバの要求減速度を達成する制御である。この回生協調ブレーキ制御を行うためのVDCを利用した回生協調ブレーキシステムを、図9に基づいて説明する。
【0052】
既存のコンベンショナルVDCの場合、ブレーキ操作時に負圧ブースタによる基本液圧分でドライバ要求の目標減速度を得るようにしている。これに対し、ブレーキ操作時に負圧ブースタによる基本液圧分を、目標減速度に達しないように、ドライバ要求の目標減速度からオフセットし、目標減速度の回生ギャップを設定する。このように、最大回生トルクによる回生ギャップを設定することによって、目標減速度の回生ギャップ分が、ドライバ要求の目標減速度に対して不足することになる。よって、最大回生トルク発生時には、ドライバ要求の目標減速度を、負圧ブースタ(基本液圧分)と回生ブレーキ(回生分)により達成し、回生機能を最大限に発揮するようにしている。
【0053】
しかし、例えば、車速条件やバッテリ充電容量条件等により、ドライバ要求の目標減速度に対し、基本液圧分で不足する目標減速度を回生分だけで補償しようとしても、補償することができない場合がある。そこで、ドライバ要求の目標減速度を、図9に示すように、負圧ブースタ(基本液圧分)と回生ブレーキ(回生分)の総和により達成するようにし、不足分をVDCブレーキ液圧ユニット(加圧分)により補償するようにしたのがVDCを利用した回生協調ブレーキシステムである。
【0054】
したがって、既存のコンベンショナルVDCに対し、負圧ブースタの特性変更と、VDCブレーキ液圧ユニットの特性変更と、ストロークセンサの追加を行うだけで、VDCを利用した廉価な回生協調ブレーキシステムを構成することができる。つまり、コンベンショナルVDCの安全機能を拡張(安全機能+回生協調機能)することになる。
【0055】
上記回生協調ブレーキシステムにおいて、図10及び図11の実線特性(目標G特性)に示すように、設計値ロスストロークに達するストローク位置で目標減速度が回生ギャップの値に一致するように、ストローク変化に対して滑らかに変化する目標減速度特性を設定したものを比較例とする。
【0056】
ここで、「設計値ロスストロークに達するストローク位置」とは、図10及び図11の点線によるMC圧による減速度特性に示すように、設計上のノミナルモデルにてマスターシリンダ圧の発生が開始する設計値MC圧発生ポイントの意味である。
また、「回生ギャップ」とは、目標減速度を達成するに際し、MC圧による減速度特性により示される基本液圧分に対して上乗せする上乗せ制動分の乖離量であり、基本液圧分からの乖離量を、回生トルクの最大値により与えているために回生ギャップと呼んでいる。
【0057】
この比較例の場合、ブレーキパッドとロータとの間のクリアランス変化により実ロスストロークに達する実MC圧発生ポイントが、設計値MC圧発生ポイントに対しずれが発生したとする。このとき、下記に述べるように、目標減速度特性に違和感が出てしまう。
【0058】
(a) マスターシリンダ圧発生開始ポイントが遅れた場合(図10)
実MC圧発生ポイントB(以下、「ポイントB」)が、図10に示すように、設計値MC圧発生ポイントA(以下、「ポイントA」)より遅れた場合について説明する。
ポイントBに先行するポイントAでの特性値は、基本液圧分(ゼロ)に回生ギャップを加えた値とされ、回生ギャップに応じた目標減速度が得られる。これに対し、ポイントAより遅れて到達するポイントBでの特性値は、ポイントAでの値に基本液圧分の上昇予定分を加えた値とされる。しかし、ポイントAでは、マスターシリンダ圧の発生開始遅れにより、ポイントAと同様に基本液圧分がゼロであるため、ポイントAと同様に、回生ギャップに応じた目標減速度が得られる。すなわち、ブレーキペダルストロークがポイントAからポイントBまで進むときの目標減速度特性は、図10の矢印Dの枠領域内に示すように、回生ギャップに応じた目標減速度を維持する特性となる。言い換えると、ブレーキペダルストロークの進みに応じて目標減速度が上昇しなければいけないにもかかわらず、目標減速度が上昇しないシーンが生じる。
【0059】
したがって、ポイントBがポイントAより遅い場合、基本液圧分の発生が遅れることで、ポイントA以降のブレーキペダルストローク域で目標減速度を達成することができない。加えて、ブレーキペダルストロークがポイントAとポイントBの間の領域を含んで進んだり戻ったりすると、ブレーキ操作に対し車両減速度が一定になる段付き感が発生し、ペダルフィーリングを損なう。
【0060】
(b) マスターシリンダ圧発生開始ポイントが早過ぎる場合(図11)
実MC圧発生ポイントC(以下、「ポイントC」)が、図11に示すように、設計値MC圧発生ポイントであるポイントAより早過ぎた場合について説明する。
ポイントAに先行するポイントCでの特性値は、基本液圧分(ゼロ)に回生ギャップより小さい値を加えた値とされ、回生ギャップより小さい値に応じた目標減速度が得られる。これに対し、ポイントCから遅れて到達するポイントAでの特性値は、ポイントCでの値から徐々に上昇し、基本液圧分に回生ギャップを加えた値とされ、回生ギャップに応じた目標減速度が得られる。しかし、マスターシリンダ圧の発生開始が早過ぎることにより、ポイントCでは上乗せ制動分が回生ギャップより小さい値となり、ポイントAでは既に基本液圧分の減速度発生があるため、上乗せ制動分が回生ギャップより小さい値となる。すなわち、目標減速度特性は、基本液圧分の早期発生に応じて上乗せ制動分が回生ギャップより小さい値のままで推移する特性となる。言い換えると、基本液圧分の早期発生により上乗せ制動分が低く抑えられることで、図11の矢印Eのハッチング領域が、回生トルクの制限領域になってしまう。
【0061】
したがって、ポイントCがポイントAより早過ぎる場合、滑らかな変化による目標減速度を達成する制御にはなるものの、設計値ロスストロークまでの領域で回生トルクが制限されることで、ハイブリッド車の場合には、燃費が悪化する。なお、電気自動車の場合には、電費が悪化する。
【0062】
[回生協調ブレーキ制御作用]
ハイブリッド車の場合、制動時において、エンジン車のように制動エネルギーを熱エネルギーとして全て消費するのではなく、制動エネルギーのうちできる限り多くのエネルギーを回生エネルギーとしてバッテリに回収することが燃費向上を図る上で重要である。以下、これを反映する回生協調ブレーキ制御作用を説明する。
【0063】
ブレーキ操作すると、図7のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25→ステップS26→ステップS27へと進む。そして、ステップS27にて車両非停止状態であると判断されている間は、ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25→ステップS26→ステップS27へと進む流れが繰り返され、回生協調ブレーキ制御を実行する。そして、ステップS27にて車両停止状態であると判断されると、ステップS27からステップS28→エンドへ進み、回生協調ブレーキ制御を終了する。
【0064】
すなわち、ステップS24では、ブレーキペダルストロークセンサ値と、設定あるいは補正された目標減速度特性マップに基づき、ドライバ入力によるブレーキペダルストローク位置に対応する目標減速度が算出される。ステップS25では、そのときのMC圧センサ値に基づいて基本液圧分が決められ、そのときの車速センサ値やバッテリSOCに基づいて可能な限り最大となる回生分が決められる。そして、目標減速度から基本液圧分と回生分を差し引いた残りの減速度分を加圧分により分担するように決められる。ステップS26では、基本液圧分に対する上乗せ目標制動力のうち、回生分に対応する回生分指令値が決定され、回生分指令(ゼロ指令を含む)がモータコントローラ8に出力される。同時に、基本液圧分に対する上乗せ目標制動力のうち、加圧分に対応する加圧分指令値が決定され、加圧分指令(ゼロ指令を含む)がブレーキコントローラ7に出力される。
【0065】
したがって、回生協調ブレーキ制御時には、回生分指令を入力するモータコントローラ8において、回生分を目標回生制動力とし、走行用電動モータ5への回生電流値を決めるフィードフォワード制御により、回生トルク制御が行われる。そして、加圧分指令を入力するブレーキコントローラ7において、加圧分を目標差圧とし、VDCモータ21への回転上昇指令と、両M/Cカットソレノイドバルブ25,26への作動電流値を決めるフィードフォワード制御により、差圧コントロールを行う(図8)。
【0066】
実施例1のブレーキ制御装置を搭載したハイブリッド車がブレーキ操作により一定減速度を保って停車するときの回生協調ブレーキ制御作用の一例を、図12のタイムチャートに基づいて説明する。
【0067】
時刻t0から時刻t1までは一定の車速を保ち、ブレーキ操作が開始される時刻t1からマスターシリンダ圧の発生が開始される時刻t2までは、目標減速度が0GからaGまで上昇する。これに対し、目標減速度を、上昇する回生分と、ホイールシリンダ圧の上昇特性による加圧分(VDC_P/U)と、により達成する。なお、マスターシリンダ圧が発生しないロスストローク(ロッドストローク0mm〜bmm)の領域であるため、基本液圧分の発生は無い。
【0068】
そして、時刻t2にてロスストロークが終了し、マスターシリンダ圧の発生が開始されると、この時刻t2から目標減速度が一定値cGになる時刻t3までは、目標減速度がaGからcGまで上昇する。これに対し、目標減速度を、マスターシリンダ圧の上昇特性による基本液圧分と、上昇する回生分と、ホイールシリンダ圧の低下特性による加圧分(VDC_P/U)と、により達成する。
【0069】
そして、時刻t3にてロッドストロークがdmmに固定されると、この時刻t3から回生分の制限が開始される車速になる時刻t4までは、目標減速度がcGのまま維持される。これに対し、目標減速度を、マスターシリンダ圧の一定特性による基本液圧分と、そのときの条件で許される最大限の回生分と、ホイールシリンダ圧の一定特性による加圧分(VDC_P/U)と、により達成する。
【0070】
そして、時刻t4にて回生分の制限が開始されると、この時刻t4から回生分をゼロとする車速になる時刻t5までは、目標減速度がcGのまま維持される。これに対し、目標減速度を、マスターシリンダ圧の一定特性による基本液圧分と、低下特性による回生分と、ホイールシリンダ圧の上昇特性による加圧分(VDC_P/U)と、により達成する。
【0071】
そして、時刻t5にて回生分がゼロになると、この時刻t5から車両が停止する時刻t6までは、目標減速度がcGのまま維持される。これに対し、目標減速度を、マスターシリンダ圧の一定特性による基本液圧分と、ホイールシリンダ圧の一定特性による加圧分(VDC_P/U)と、により達成する。なお、この時刻t5〜時刻t6の領域は、回生分がゼロになるため、加圧分(VDC_P/U)による減速度依存が大きくなる。
【0072】
したがって、ブレーキ操作時に実行される回生協調ブレーキ制御では、図12の最上部に目標減速度特性に示すように、全体領域であらわされる制動エネルギーのうち、回生分としての占有領域を回生エネルギー分とし、車載バッテリに回収することができる。
【0073】
[目標減速度特性マップ設定作用]
上記比較例の課題で述べたように、マスターシリンダ圧発生開始ポイントの実際値は、ブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量の変化を原因として設計値からずれてしまうことが避けられない。このため、クリアランス量の変化によるマスターシリンダ圧発生開始ポイントのズレ量を推定し、目標減速度特性を適切に設定することが必要である。以下、これを反映する目標減速度特性マップ設定作用を説明する。
【0074】
実MC圧発生ポイントが(設計値−α)≦実MC圧発生ポイント≦(設計値+α)のときは、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS7→リターンへと進む。
すなわち、設計値に基づく基準目標減速度特性を補正することなく、基準目標減速度特性Gaがそのまま目標減速度特性として設定される。
【0075】
そして、実MC圧発生ポイント<(設計値−α)になると、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→リターンへと進む。
すなわち、ステップS6では、図13に示すように、基準目標減速度特性Gaの回生制動力発生開始ポイント(設計値)をペダルストロークが短くなる方向へオフセット補正して目標減速度特性マップGcが設定される。
【0076】
一方、実MC圧発生ポイント>(設計値+α)になると、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS7→ステップS8→リターンへと進む。
すなわち、ステップS8では、図14に示すように、基準目標減速度特性Gaの回生制動力発生開始ポイント(設計値)をペダルストロークが長くなる方向へオフセット補正して目標減速度特性マップGbが設定される。
【0077】
よって、ステップS4にて推定した実MC圧発生ポイント(=実ロスストローク)が、クリアランス設計値に対して変化する場合、クリアランス変化量に応じた目標減速度特性マップに設定される。この目標減速度特性マップGb,Gcは、図13及び図14に示すように、クリアランス変化量にかかわらず、実ロスストロークでの制動目標値が、基本液圧分に上乗せする上乗せ制動分の最大値の適切な値とされる。
【0078】
すなわち、比較例の課題で説明したように、車載状態においてブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランスは、様々な要因(横加速度発生、プレフィル制御介入、水膜形成、等)により変化する。このクリアランス変化を原因として、実MC圧発生ポイントB,C(=実ロスストローク)が設計値ロスストロークAより遅れたり早過ぎたりすることがある。しかし、クリアランス設計値に対するズレがどちらの方向に生じていても、実MC圧発生ポイントB,C(=実ロスストローク)で上乗せ制動分の最大値である回生ギャップだけオフセットした値を特性線上の値とし、ブレーキペダルストローク変化に対して滑らかに変化する目標減速度特性マップGb,Gcに設定される。
【0079】
例えば、実MC圧発生ポイントBが設計値ロスストロークAより遅れているときには、図14の対策後の目標減速度特性Gbに示すように、ブレーキペダルストロークの全域変化に対して滑らかに変化する特性に設定されることになる。つまり、ゼロストロークからポイントBまでは、回生ギャップまで徐々に立ち上がる曲線を描く特性とされ、ポイントB以降のストローク域は、MC圧による減速度特性に沿って回生ギャップ分の間隔を保ちながら曲線を描く特性とされる。
【0080】
したがって、図14の対策前の目標減速度特性Gb'に示すように、ポイントAからポイントBまでのストローク域にてブレーキペダルストロークが進むにもかかわらず、目標減速度の上昇が抑えられることがない。つまり、図14の対策後の目標減速度特性Gbに示すように、ポイントAからポイントBまでのストローク域にてブレーキペダルストロークの進みに対し目標減速度が滑らかに上昇し、良好なブレーキフィーリングが達成される。
【0081】
一方、実MC圧発生ポイントCが設計値ロスストロークAより早過ぎるときには、図13の対策後の目標減速度特性Gcに示すように、ブレーキペダルストロークの全域変化に対して滑らかに変化する制動目標値特性に設定されることになる。つまり、ゼロストロークからポイントCまでは、回生ギャップまで徐々に立ち上がる曲線を描く特性とされ、ポイントC以降のストローク域は、MC圧による減速度特性に沿って回生ギャップ分の間隔を保ちながら曲線を描く特性とされる。
【0082】
したがって、図13の対策前の目標減速度特性Gc'に示すように、設計値ロスストロークまでの領域において目標減速度が低く抑えられることがない。つまり、図13の対策後の目標減速度特性Gcに示すように、ポイントC以前のストローク域において上乗せ制動力を拡大し、ポイントC以降のストローク域において上乗せ制動力として回生ギャップによる制動力分を残した高い目標減速度とされる。これにより、燃費性能の向上に有効である回生エネルギーの確保が達成される。
【0083】
次に、実施例1でのオフセット補正による目標減速度特性の設定手法を説明する。
まず、基準マップ設定部9aにおいて、設計値ロスストロークに基づき、ブレーキペダルストローク位置の設計値MC圧発生ポイントAを決める。そして、設計値MC圧発生ポイントAにて上乗せ目標制動力の最大値(=回生ギャップ)になるように設定した基準目標減速度特性Gaによる基準マップを、予め設定しておく。そして、目標減速度特性マップ設定部9bにおいて、クリアランス推定部9eでのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランスの推定に基づき、ブレーキ操作時、実際にマスターシリンダ圧が発生するブレーキペダルストローク位置の実MC圧発生ポイントB,Cを推定する。
【0084】
この推定した実MC圧発生ポイントBが、設計値MC圧発生ポイントAより遅いときには、図14に示すように、実MC圧発生ポイントBにて上乗せ制動分が最大値の回生ギャップになるように、基準マップ設定部9aから読み込んだ基準目標減速度特性Gaをストローク増大方向にずらすオフセット補正により目標減速度特性Gbを設定する。
【0085】
一方、検出した実MC圧発生ポイントCが、設計値MC圧発生ポイントAより早過ぎるときには、図13に示すように、実MC圧発生ポイントCにて上乗せ制動分が最大値の回生ギャップになるように、基準マップ設定部9aから読み込んだ基準目標減速度特性Gaをストローク減少方向にずらすオフセット補正により目標減速度特性Gcを設定する。
【0086】
上記のように、実施例1では、基準目標減速度特性Gaを予め記憶設定しておき、基準目標減速度特性Gaをストローク方向にずらすオフセット補正により目標減速度特性Gbや目標減速度特性Gcを設定する構成を採用した。
この構成により、実MC圧発生ポイントにて上乗せ制動分が最大値となるように決めた後、この決めた点を通る特性曲線を実MC圧発生ポイント毎に作成したり、実MC圧発生ポイントが変化する毎に作成したりというような面倒な処理を要しない。
したがって、実MC圧発生ポイントのクリアランス変化影響を排除する目標減速度特性の設定を、基準目標減速度特性Gaのオフセット補正という簡単な処理により行える。
【0087】
[クリアランス推定作用]
ブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量の変化があると、実MC圧発生ポイントが設計値MC圧発生ポイントからずれてしまう。このため、目標減速度特性の適切な設定を追求する場合には、クリアランス量の変化を精度良く推定することが必要である。以下、これを反映するクリアランス推定作用を説明する。
【0088】
ブレーキ操作すると、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進む。ステップS1では、横Gの大きさと、図5に示すクリアランス量マップを用い、横G影響によるクリアランス量の変化分(増加分)である横G感応クリアランスが推定される。ステップS2では、プレフィル制御介入時、ブレーキパッド41とロータ42の接近状況に応じたクリアランス量の変化分(減少分)であるプレフィルクリアランスが学習・推定される。ステップS3では、雨天であると判断した場合、水膜の形成に応じたクリアランス量の変化分(減少分)である雨天検出クリアランスが学習・推定される。ステップS4では、クリアランス設計値と、ステップS1〜ステップS3にて推定されたクリアランスに基づき、実MC圧発生ポイントが推定される。
以下、ブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量が変化する各事象について説明する。
【0089】
(a) 横G発生時
旋回制動時であって、横Gが大きい時には、ブレーキパッド41のノックバック(ロータ42が微小量倒れることでブレーキパッド41を押し広げてブレーキパッド41とのクリアランス大になる現象)により、消費液量が増える。
また、横Gが大きい時には、ロータ42の面芯ブレ(ロータ42の面心軸がずれることにより、回転時にブレーキパッド41を押し広げてブレーキパッド41とロータ42のクリアランスが大になる現象)により、消費液量が増える。
これに対し、横Gの大きさに応じて、ブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス増加量を学習・推定し、増加する消費液量を予測する。その上で、図5に示すクリアランス量マップを用い、横Gの大きさに応じて横G感応クリアランス(=補正ストローク量)を決定し、回生制動力の発生を開始するストローク位置を補正する。
したがって、旋回制動時、横Gの大きさにかかわらず、目標減速度特性マップが実MC圧発生ポイントにて上乗せ目標制動力の最大値(=回生ギャップ)になる適切なマップに補正される。特に、横Gが大きい時、ペダルストロークを増加しても減速度が変化しない段付き感によるペダルフィール違和感が解消される。
【0090】
(b) プレフィル制御介入時
ドライバがブレーキペダル11を踏み込むとき、プレフィル制御が介入すると、MC圧が発生する前のロスストローク中に、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに所定の液圧が供給される。このように、プレフィル制御介入によって、予めブレーキ液を充填してブレーキパッド41とロータ42の間のクリアランスを詰めるため、ブレーキ操作時の消費液量が減る。
これに対し、ブレーキ液の充填量に応じて、ブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス減少量を学習・推定し、減少する消費液量を予測する。その上で、プレフィル制御介入時、ブレーキパッド41とロータ42の接近状況に応じてプレフィルクリアランス(=補正ストローク量)を決定し、回生制動力の発生を開始するストローク位置を補正する。
したがって、プレフィル制御介入によるブレーキ操作時、ブレーキパッド41とロータ42の接近状況にかかわらず、目標減速度特性マップが実MC圧発生ポイントにて上乗せ目標制動力の最大値(=回生ギャップ)になる適切なマップに補正される。
【0091】
(c) 雨天時
雨の日は、ブレーキパッド41とロータ42の表面に水が付着し、ロータ回転時に水膜形成作用により、ブレーキパッド41がロータ42に引き付けられる。このため、水の付着が無い状態の時よりも、ブレーキパッド41とロータ42と間のクリアランスが減るため、消費液量が減る。
これに対し、ブレーキパッド41とロータ42の表面に水が付着することによってホイールシリンダ圧の発生までに減少する消費液量を予測する。その上で、雨が降っていると検出した場合には、予測される消費液量の変化量から雨天検出クリアランス(=補正ストローク量)を決定し、回生制動力の発生を開始するストローク位置を補正する。
したがって、雨天でのブレーキ操作時、ブレーキパッド41とロータ42の間での水膜形成状況にかかわらず、目標減速度特性マップが実MC圧発生ポイントにて上乗せ目標制動力の最大値(=回生ギャップ)になる適切なマップに補正される。
【0092】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0093】
(1) ブレーキ操作に応じたマスターシリンダ圧を発生するマスターシリンダ13と、
前後輪の各輪に設けられ、ホイールシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与えるホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRと、
前記マスターシリンダ13と前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとの間に介装され、ポンプ用モータ(VDCモータ21)により駆動する液圧ポンプ22,22と、前記ポンプ用モータ(VDCモータ21)の作動時、ホイールシリンダ圧とマスターシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)と、を有するブレーキ液圧アクチュエータ(VDCブレーキ液圧ユニット2)と、
駆動輪に連結された走行用電動モータ5に接続され、前記走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段(モータコントローラ8)と、
ブレーキ操作時、ブレーキペダルストローク検出値と制動目標値特性マップを用いて算出した制動目標値(目標減速度)を、前記マスターシリンダ圧による基本液圧分と、前記回生制動力による回生分と前記ブレーキ液圧アクチュエータ(VDCブレーキ液圧ユニット2)による加圧分のうち少なくとも一方による上乗せ制動分と、の総和で達成する制御を行う回生協調ブレーキ制御手段(回生協調ブレーキ制御部9d、図7)と、
前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量を推定するクリアランス推定手段(クリアランス推定部9e、図4のステップS1〜S4)と、
前記推定したクリアランス量が設計値に対して変化する場合に、マスターシリンダ圧の発生が開始されるブレーキペダルストローク位置である実マスターシリンダ圧発生ストローク(実MC圧発生ポイントA)での制動目標値(目標減速度)が、上乗せ制動分の最大値となるように、または、許容範囲に収まるように、前記設計値からのクリアランス変化量に応じて制動目標値特性(目標減速度特性Gb,Gc)を設定する制動目標値特性設定手段(目標減速度特性マップ設定部9b、図4のステップS5〜S8)と、
を備える。
このため、回生協調ブレーキ制御時、ブレーキパッド41とロータ42との間にクリアランス変化が発生しても、良好なブレーキフィーリングと回生エネルギーの確保を達成することができる。
【0094】
(2) ブレーキペダルストローク量が設計値ロスストロークに達するストローク位置を設計値マスターシリンダ圧発生ポイントAとし、該設計値マスターシリンダ圧発生ポイントAでの制動目標値(目標減速度)を前記上乗せ制動分の最大値(回生ギャップ)とし、ストローク変化に対して滑らかに変化する基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)を予め設定しておく基準制動目標値特性設定手段(基準マップ設定部9a)と、を備え、
前記制動目標値特性設定手段(目標減速度特性マップ設定部9b、図4のステップS5〜S8)は、クリアランス量の設計値と推定されるクリアランス量との大小関係に応じて前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)を補正することにより制動目標値特性(目標減速度特性Gb,Gc)を設定する。
このため、上記(1)の効果に加え、ブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス変化影響を排除する制動目標値特性(目標減速度特性Gb,Gc)の設定を、基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の補正という簡単な処理により行うことができる。
【0095】
(3) 前記制動目標値特性設定手段(目標減速度特性マップ設定部9b、図4のステップS5〜S8)は、前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量が設計値よりも小さいとき、前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の回生制動力発生開始ポイントをペダルストロークが短くなる方向にオフセット補正して制動目標値特性(目標減速度特性Gc)を設定する(図4のステップS6、図13)。
このため、上記(2)の効果に加え、回生協調ブレーキ制御時、基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)によるペダルフィーリングを保ちながら、クリアランス量の実際値が設計値よりも小さい場合に適切な制動目標値特性(目標減速度特性Gc)に補正することができる。
【0096】
(4) 前記制動目標値特性設定手段(目標減速度特性マップ設定部9b、図4のステップS5〜S8)は、前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量が設計値よりも大きいとき、前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の回生制動力発生開始ポイントをペダルストロークが長くなる方向にオフセット補正して制動目標値特性(目標減速度特性Gb)を設定する(図4のステップS8、図14)。
このため、上記(2)の効果に加え、回生協調ブレーキ制御時、基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)によるペダルフィーリングを保ちながら、クリアランス量の実際値が設計値よりも大きい場合に適切な制動目標値特性(目標減速度特性Gb)に補正することができる。
【0097】
(5) 前記クリアランス推定手段(クリアランス推定部9e)は、横加速度の大きさに応じて前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量(横G感応クリアランス)を推定する(図4のステップS1)。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、旋回制動時、横加速度が大きくなるほどブレーキパッド41を押し広げることで、ブレーキパッド41とロータ42のクリアランスが拡大側に変化するのに対応し、精度良くクリアランス変化を推定することができる。
【0098】
(6) 前記クリアランス推定手段(クリアランス推定部9e)は、前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに予めブレーキ液を充填しておくプレフィル制御介入時におけるブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量(プレフィルクリアランス)を推定する(図4のステップS2)。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、プレフィル制御介入時、ブレーキパッド41とロータ42のクリアランスを詰めることで、クリアランスが縮小側に変化するのに対応し、精度良くクリアランス変化を推定することができる。
【0099】
(7) 前記クリアランス推定手段(クリアランス推定部9e)は、雨天時における前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量(雨天検出クリアランス)を推定する(図4のステップS3)。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、雨天時、表面に付着した水により水膜が形成されることで、ブレーキパッド41とロータ42のクリアランスがあたかも縮小側に変化するような現象を示すのに対応し、精度良くクリアランス変化を推定することができる。
【実施例2】
【0100】
実施例2は、目標減速度特性Gb,Gcを設定するに際し、基準目標減速度特性Gaからの補正手法を異ならせた例である。
【0101】
まず、構成を説明する。
実施例2においても、図4に示す実施例1のフローチャートを用いて目標減速度特性マップ設定処理がなされる。但し、ステップS6とステップS8での目標減速度特性マップ設定処理の手法が異なる。
【0102】
ステップS6では、ステップS5での実MC圧発生ポイント<設計値−αであるとの判断に続き、基準目標減速度特性の回生制動力が最大値になるポイントをペダルストロークが短くなる方向にオフセット補正し、補正したポイントと基準目標減速度特性の回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが大きくなる方向へ補正して目標減速度特性マップを設定する(図15)。ステップS6からはリターンへ進む。
【0103】
ステップS8では、ステップS7での実MC圧発生ポイント>設計値+αであるとの判断に続き、基準目標減速度特性の回生制動力が最大値になるポイントをペダルストロークが長くなる方向にオフセット補正し、補正したポイントと基準目標減速度特性の回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが小さくなる方向へ補正して目標減速度特性マップを設定する(図16)。ステップS8からはリターンへ進む。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0104】
次に、実施例2での傾き補正による目標減速度特性の設定手法を説明する。
まず、基準マップ設定部9aにおいて、設計値ロスストロークに基づき、ブレーキペダルストローク位置の設計値MC圧発生ポイントAを決める。そして、設計値MC圧発生ポイントAにて上乗せ目標制動力の最大値(=回生ギャップ)になるように設定した基準目標減速度特性Gaによる基準マップを、予め設定しておく。そして、目標減速度特性マップ設定部9bにおいて、クリアランス推定部9eでのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランスの推定に基づき、ブレーキ操作時、実際にマスターシリンダ圧が発生するブレーキペダルストローク位置の実MC圧発生ポイントB,Cを推定する。
【0105】
この推定した実MC圧発生ポイントBが、設計値MC圧発生ポイントAより遅いときには、図16に示すように、実MC圧発生ポイントBにて上乗せ制動分が最大値の回生ギャップになるように、基準マップ設定部9aから読み込んだ基準目標減速度特性Gaをストローク増大方向にずらすオフセット補正する。加えて、補正したポイントと基準目標減速度特性Gaの回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが小さくなる方向へ補正して目標減速度特性Gb2を設定する。
【0106】
一方、検出した実MC圧発生ポイントCが、設計値MC圧発生ポイントAより早過ぎるときには、図15に示すように、実MC圧発生ポイントCにて上乗せ制動分が最大値の回生ギャップになるように、基準マップ設定部9aから読み込んだ基準目標減速度特性Gaをストローク減少方向にずらすオフセット補正する。加えて、補正したポイントと基準目標減速度特性Gaの回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが大きくなる方向へ補正して目標減速度特性Gc2を設定する。
なお、他の作用については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0107】
次に、効果を説明する。
実施例2のハイブリッド車のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0108】
(8) 前記制動目標値特性設定手段(目標減速度特性マップ設定部9b、図4のステップS5〜S8)は、前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量が設計値よりも小さいとき、前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の回生制動力が最大値になるポイントをペダルストロークが短くなる方向にオフセット補正し、補正したポイントと前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが大きくなる方向へ補正して制動目標値特性(目標減速度特性Gc2)を設定する(図4のステップS6、図15)。
このため、上記(2)の効果に加え、回生協調ブレーキ制御時、ペダルストロークが同じ位置での回生制動力の発生開始タイミングを保ちながら、クリアランス量の実際値が設計値よりも小さい場合に適切な制動目標値特性(目標減速度特性Gc2)に補正することができる。
【0109】
(9) 前記制動目標値特性設定手段(目標減速度特性マップ設定部9b、図4のステップS5〜S8)は、前記ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのブレーキパッド41とロータ42との間のクリアランス量が設計値よりも小さいとき、前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の回生制動力が最大値になるポイントをペダルストロークが長くなる方向にオフセット補正し、補正したポイントと前記基準制動目標値特性(基準目標減速度特性Ga)の回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが小さくなる方向へ補正して制動目標値特性(目標減速度特性Gc2)を設定する(図4のステップS8、図16)。
このため、上記(2)の効果に加え、回生協調ブレーキ制御時、ペダルストロークが同じ位置での回生制動力の発生開始タイミングを保ちながら、クリアランス量の実際値が設計値よりも大きい場合に適切な制動目標値特性(目標減速度特性Gb2)に補正することができる。
【0110】
以上、本発明の電動車両のブレーキ制御装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0111】
実施例1,2では、制動目標値特性設定手段として、ストロークに対する目標減速度マップを用いる例を示した。しかし、ストロークに対する目標制動力マップ、ストロークに対するドライバ要求減速度マップ、ストロークに対するドライバ要求制動力マップ、等を用いるようにしても良い。さらに、ストロークに対する目標減速度特性を演算式により設定し、逐次、演算値により目標減速度を求めるようにする例としても良い。つまり、ブレーキ操作時、ブレーキペダルストロークにあらわれるドライバ要求の制動性能を反映する制動目標値特性を設定する手段であれば、マップを使う例に限らず、制動目標値特性演算式を用いた特性設定や補正方法を適用する例としても良い。
【0112】
実施例1,2では、制動目標値特性設定手段として、検出された実MC圧発生ポイントでの目標減速度が、上乗せ制動分の最大値(回生ギャップ)になるように、ストローク変化に対して滑らかに変化する目標減速度特性を設定する例を示した。しかし、検出された実MC圧発生ポイントでの目標減速度が、上乗せ制動分の最大値(回生ギャップ)とのずれが許容範囲内に収まる値になるように、ストローク変化に対して滑らかに変化する目標減速度特性を設定するようにしても良い。
【0113】
実施例1では、目標減速度特性を設定する際、ストロークに対する基準目標減速度特性のオフセット補正のみを用いて設定する例を示した。実施例2では、目標減速度特性を設定する際、ストロークに対する基準目標減速度特性のオフセット補正と勾配補正の両方を用いて設定する例を示した。しかし、ストロークに対する基準目標減速度特性の勾配補正のみを用いて設定する例としても良い。
【0114】
実施例1,2では、ストロークに対する基準目標減速度特性を用いて目標減速度特性を設定する例を示した。しかし、基準目標減速度特性を用いることなく、検出された実MC圧発生ポイントでの目標減速度を、上乗せ制動分の最大値域として目標減速度特性を作成するような例としても良い。さらに、実MC圧発生ポイントをブレーキ制動経験により得られた複数のデータに基づき学習補正し、経年変化やブレーキ液温度によるバラツキに対応するようにしても良い。なお、目標減速度特性マップの設定タイミングは、製造オフラインチェック時でも良いし、また、イグニッションキースイッチがオンとなった直後のブレーキ操作時でも良い。
【0115】
実施例1,2では、ブレーキパッド41とロータ42のクリアランスが変化する事象として、横G発生時・プレフィル制御介入時・雨天時の例を示した。しかし、ブレーキパッドとロータのクリアランスが変化する事象としては、実施例1,2で示した以外の事象を加えるようにしても良い。
【0116】
実施例1,2では、ブレーキ液圧アクチュエータとして、図2に示すVDCブレーキ液圧ユニット2を利用する例を示した。しかし、ブレーキ液圧アクチュエータとしては、VDCモータにより駆動する液圧ポンプと、ポンプ用モータの作動時、ホイールシリンダ圧とマスターシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有するものであれば良い。
【0117】
実施例1,2では、本発明のブレーキ制御装置を、前輪駆動のハイブリッド車へ適用した例を示した。しかし、後輪駆動のハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、等の電動車両であり、液圧制動力と回生制動力による回生協調ブレーキ制御を行うものであれば、本発明のブレーキ制御装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 ブレーキ液圧発生装置
2 VDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータ)
21 VDCモータ(ポンプ用モータ)
22 液圧ポンプ
25 第1M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
26 第2M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
3 ストロークセンサ
4FL 左前輪ホイールシリンダ
4FR 右前輪ホイールシリンダ
4RL 左後輪ホイールシリンダ
4RR 右後輪ホイールシリンダ
41 ブレーキパッド
42 ロータ
5 走行用電動モータ
61 プライマリ液圧管
62 セカンダリ液圧管
63 左前輪液圧管
64 右前輪液圧管
65 左後輪液圧管
66 右後輪液圧管
7 ブレーキコントローラ
8 モータコントローラ(回生制動力制御手段)
9 統合コントローラ
9a 基準マップ設定部(基準制動目標値特性設定手段)
9b 目標減速度特性マップ設定部(制動目標値特性設定手段)
9c 目標減速度算出部(回生協調ブレーキ制御手段)
9d 回生協調ブレーキ制御部(回生協調ブレーキ制御手段)
9e クリアランス推定部(クリアランス推定手段)
91 バッテリコントローラ
92 車速センサ
93 ブレーキスイッチ
94 横加速度センサ
95 プレフィルコントローラ
96 雨滴センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作に応じたマスターシリンダ圧を発生するマスターシリンダと、
前後輪の各輪に設けられ、ホイールシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与えるホイールシリンダと、
前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダとの間に介装され、ポンプ用モータにより駆動する液圧ポンプと、前記ポンプ用モータの作動時、ホイールシリンダ圧とマスターシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有するブレーキ液圧アクチュエータと、
駆動輪に連結された走行用電動モータに接続され、前記走行用電動モータにより発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段と、
ブレーキ操作時、ブレーキペダルストローク検出値と制動目標値特性マップを用いて算出した制動目標値を、前記マスターシリンダ圧による基本液圧分と、前記回生制動力による回生分と前記ブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分のうち少なくとも一方による上乗せ制動分と、の総和で達成する制御を行う回生協調ブレーキ制御手段と、
前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量を推定するクリアランス推定手段と、
前記推定したクリアランス量が設計値に対して変化する場合に、マスターシリンダ圧の発生が開始されるブレーキペダルストローク位置である実マスターシリンダ圧発生ストロークでの制動目標値が、上乗せ制動分の最大値となるように、または、許容範囲に収まるように、前記設計値からのクリアランス変化量に応じて制動目標値特性を設定する制動目標値特性設定手段と、
を備えることを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
ブレーキペダルストローク量が設計値ロスストロークに達するストローク位置を設計値マスターシリンダ圧発生ポイントとし、該設計値マスターシリンダ圧発生ポイントでの制動目標値を前記上乗せ制動分の最大値とし、ストローク変化に対して滑らかに変化する基準制動目標値特性を予め設定しておく基準制動目標値特性設定手段と、を備え、
前記制動目標値特性設定手段は、クリアランス量の設計値と推定されるクリアランス量との大小関係に応じて前記基準制動目標値特性を補正することにより制動目標値特性を設定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記制動目標値特性設定手段は、前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量が設計値よりも小さいとき、前記基準制動目標値特性の回生制動力発生開始ポイントをペダルストロークが短くなる方向にオフセット補正して制動目標値特性を設定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記制動目標値特性設定手段は、前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量が設計値よりも大きいとき、前記基準制動目標値特性の回生制動力発生開始ポイントをペダルストロークが長くなる方向にオフセット補正して制動目標値特性を設定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記制動目標値特性設定手段は、前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量が設計値よりも小さいとき、前記基準制動目標値特性の回生制動力が最大値になるポイントをペダルストロークが短くなる方向にオフセット補正し、補正したポイントと前記基準制動目標値特性の回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが大きくなる方向へ補正して制動目標値特性を設定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記制動目標値特性設定手段は、前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量が設計値よりも大きいとき、前記基準制動目標値特性の回生制動力が最大値になるポイントをペダルストロークが長くなる方向にオフセット補正し、補正したポイントと前記基準制動目標値特性の回生制動力発生開始ポイントを結ぶように傾きが小さくなる方向へ補正して制動目標値特性を設定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記クリアランス推定手段は、横加速度の大きさに応じて前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量を推定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記クリアランス推定手段は、前記ホイールシリンダに予めブレーキ液を充填しておくプレフィル制御介入時におけるブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量を推定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記クリアランス推定手段は、雨天時における前記ホイールシリンダのブレーキパッドとロータとの間のクリアランス量を推定する
ことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−86626(P2013−86626A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228084(P2011−228084)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】