説明

電動送風機およびそれを用いた電気掃除機

【課題】ブラシレスモータの冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供するものである。
【解決手段】回転軸2を有するロータ3と、巻線4とコア5aで構成されるステータ6と、コア5a外周部に溝7aを設け熱伝導性接着剤で固定した複数の第2の案内翼8aと、回転軸2に固定されたインペラ12と、インペラ12を覆うファンケース13と、一端に複数の第1の案内翼を一体に設け、ファンケース13とフレーム前10aを当接させ複数の第1の独立風路16を形成するモータケース15とを備え、モータケース15は円錐形状を有し第1の案内翼はモータケース15に当接し、コア5aと巻線4および第2の案内翼8aはモールド成形することで、ステータ6で発生した熱を複数の第2の案内翼に伝熱させ、インペラで発生した気流で強制冷却させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータの冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動送風機は家庭用の電気掃除機に多く利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。電気掃除機の入力電力は限られており、より強い吸引力を得るためには電動送風機の送風性能を向上する必要がある。同時に、掃除のしやすさの視点から掃除機本体の小回りが良いことが望まれており、電動送風機を小型化する必要がある。
【0003】
図14は、特許文献1に記載された従来の電動送風機の断面構成を示す図である。斜流型ブレード29を有したインペラ30と、インペラ30の下流側に配置されたエアガイド31と、回転軸32の軸端にインペラ30を固着した電動機33と、回転軸32の軸端に設けられたハブ34とを備え、インペラ30から流出した気流が電動機33のフレーム外部35を通過する電気掃除機用電動送風機36が開示されている。
【0004】
図15は、特許文献2に記載された従来の電動送風機の断面構成を示す図である。回転軸37を有した回転子38と、巻線を有した固定子39と、固定子39を内包し回転軸37を支持する軸受40を保持したフレーム41とにより構成されたブラシレスモータを備えるとともに、複数枚のブレード42を有し回転軸37に固定されたインペラ43と、インペラ43の外周に配置されたエアガイド44と、インペラ43およびエアガイド44を内包し、中央部に吸気口45を配置し、フレーム41に固定されたファンケース46とを備え、前記フレーム41の外側に設けた外筒47との間に、インペラ43によって発生させ、エアガイド44に導かれた空気をフレーム41外周に沿って流す通気路48を構成し、この外筒47の外側に駆動用半導体素子49を設置し、外筒47の内部には他端がフレーム41に当接し、気流と長手方向が一致するような冷却フィン50を設け、冷却フィン50と外筒47、フレーム41によって囲まれた独立通路の断面積が下流方向に徐々に拡大するようにフレーム41又は外筒47が傾斜した電動送風機51が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−307985号公報
【特許文献2】特開平11−336696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の電動送風機の構成では、エアガイドと電動機とが別体で構成されているため、電動機内部で発生した熱を十分にエアガイドの静翼に伝導することができず、電動機の放熱性が低く、電動機内部を十分に冷却できないという課題を有していた。
【0007】
また、特許文献2に記載の従来の電動送風機の構成では、冷却フィンによって駆動用半導体素子を冷却することは可能であるが、冷却フィンと電動機のフレームとが当接するのみであるため、冷却フィンと電動機のフレームとの熱的な接触抵抗が大きく、電動機内部で発生した熱が冷却フィンに伝導しにくく、特許文献1と同様に電動機内部を十分に冷却できないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ブラシレスモータの冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に隙間を設けて配置され巻線が巻かれたコアで構成されるステータと、前記コア外周部に凹部を設け嵌合固定した複数の第2の案内翼と、前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うフレームとから構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラを覆うファンケースと前記フレーム外周面との間に通気路となる空間を設けて配置され、一端に複数の第1の案内翼を一体に設け、前記ファンケースと前記フレームと当接して配置され複数の第1の独立風路を形成するモータケースとを備え、前記ステータは、前記コアと前記巻線とを樹脂でモールド成形することで構成され、前記第2の案内翼は、その両端部を前記ステータを構成する際に同時にモールド成形することで前記ステータに保持され、前記第1の独立風路は、前記通気路となる空間に前記第2の案内翼で形成される複数の第2の独立風路と略同一断面積かつ略同一形状で連通され、前記インペラによって発生した気流に対してディフューザの作用を有するよう構成されている。
【0010】
これによって、ブラシレスモータを駆動した際に、ステータで発生した熱は複数の第2の案内翼に伝導し、インペラで発生した気流によって第2の案内翼を強制冷却することで、効率よくステータの熱を気流に伝達させてブラシレスモータ外部へ逃がすことができる。また、第1の独立風路とそれに連通する第2の独立風路はディフューザの作用も有しているため、ブラシレスモータを冷却すると同時に、気流の動圧を静圧に変換して小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0011】
また、本発明の電気掃除機は、小型で高い送風性能を有する電動送風機を搭載しているので、強い吸引力を有しゴミ取れ性が良好であり、電動送風機が軽量なので、小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動送風機は、ステータで発生した熱をモールド成形でステータに保持された複数の第2の案内翼に伝熱させて、インペラで発生した気流で第2の案内翼を強制冷却することで連続的に放熱すると共に、気流の動圧を静圧に変換することで、ブラシレスモータを効率よく冷却することが可能な小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現できる。また、このような電動送風機を用いた電気掃除機は、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性が良好であり、電動送風機が軽量なので、小回りの利く使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図2】同電動送風機の一部断面斜視図
【図3】同電動送風機のインペラの一部断面斜視図
【図4】同電動送風機のブラシレスモータの一部断面斜視図
【図5】同電動送風機のステータおよび第2の案内翼の一部断面斜視図
【図6】同電動送風機のモールド成形前のステータおよび第2の案内翼の正面図
【図7】同電動送風機のモールド成形前のステータおよび第2の案内翼の斜視図
【図8】同電動送風機のモールド成形前のステータの斜視図
【図9】同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す縦断面図
【図10】同電動送風機のモールド成形前のステータの斜視図
【図11】本発明の第2の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図12】同電動送風機のモールド成形前のステータおよび第2の案内翼の正面図
【図13】同電動送風機のモールド成形前のステータおよび第2の案内翼の斜視図
【図14】従来の電動送風機の縦断面図
【図15】従来の電動送風機の一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に隙間を設けて配置され巻線が巻かれたコアで構成されるステータと、前記コア外周部に凹部を設け嵌合固定した複数の第2の案内翼と、前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うフレームとから構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラを覆うファンケースと、前記フレーム外周面との間に通気路となる空間を設けて配置され、一端に複数の第1の案内翼を一体に設け、前記ファンケースと前記フレームと当接して配置され複数の第1の独立風路を形成するモータケースとを備え、前記ステータは、前記コアと前記巻線とを樹脂でモールド成形することで構成され、前記第2の案内翼は、その両端部を前記ステータを構成する際に同時にモールド成形することで前記ステータに保持され、前記第1の独立風路は、前記通気路となる空間に前記第2の案内翼で形成される複数の第2の独立風路と略同一断面積かつ略同一形状で連通され、前記インペラによって発生した気流に対してディフューザの作用を有するよう構成した電動送風機としたものである。これによって、ブラシレスモータを駆動した際に、ステータで発生した熱は複数の第2の案内翼に伝導し、インペラで発生した気流によって第2の案内翼を強制冷却することで、効率よくステータの熱を気流に伝達させてブラシレスモータ外部へ逃がすことができる。また、第1の独立風路とそれに連通する第2の独立風路はディフューザの作用も有しているため、ブラシレスモータを冷却すると同時に、気流の動圧を静圧に変換して小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明のインペラが、入口から流入した気流を軸方向と径方向との中間の角度で流出させる斜流型ブレードを有しているので、遠心型ブレードを有するインペラと比べて外径を小さくできると共に、風路の途中に曲率の大きな湾曲部を設ける必要がないため、圧損の少ないディフューザを構成することができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のモールド部の樹脂は、熱伝導性の高い樹脂を用いているので、巻線のジュール熱がモールド部を伝導しやすくなるため、インペラからの気流で連続的に冷却されている複数の第2の案内翼への熱伝導が促進されて、ブラシレスモータの冷却効果を向上することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第3の発明のモールド部の樹脂は、フィラーを充填しているので、樹脂の内部に熱の通り道となる熱伝導路が形成されて、樹脂の熱伝導性を容易に高めることが可能である。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の第2の案内翼が、熱伝導性の高い材質を用いているので、ステータから伝導してきた熱が第2の案内翼全体に拡散しやすくなり、第2の案内翼が放熱フィンとして機能して、ブラシレスモータの冷却効果を大幅に向上することができる。
【0019】
第6の発明は、特に、第5の発明の第2の案内翼が、フィラーを充填しているので、樹脂の内部に熱の通り道となる熱伝導路が形成されて、樹脂の熱伝導性を容易に高めることが可能である。
【0020】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の第2の案内翼が、コア外周面との交点を通過する接線と所定の角度で交わる平面で形成され、かつ外形を徐々に通気路上
流から下流にかけて大きくした構成をしているので、複数の第2の独立風路の断面積を通気路上流から下流にかけて徐々に大きくすることができ、シンプルな形状の第2の案内翼で気流の動圧を静圧に変換するためのディフューザを容易に構成することができる。
【0021】
第8の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の第2の案内翼が、コア外周部に設けられた直線状の凹部に嵌合固定され、モータケース内壁にかけて曲面形状を形成すると共に、外形を徐々に通気路上流から下流にかけて大きくした構成をしているので、限られたモータケースの長さ及び外径においても、平面形状に比べて第2の案内翼の放熱面積を大きくすることができ、ブラシレスモータの冷却効果をさらに向上することができると共に、ディフューザとして使用できる複数の第2の独立風路を長くして圧力回復量を増やすことで、電動送風機の送風性能を向上することができる。また第2の独立風路を伝播する騒音に対して、第2の案内翼が遮音壁として機能して電動送風機の騒音を低減することができる。さらに、コアを構成する電磁鋼板の形状をシンプルでかつ単一形状にすることができ、複雑な製造工程が必要なく容易にコアを形成することができる。
【0022】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明の第2の案内翼が、コア外周に設けられた凹部で熱伝導性の高い接着剤を用いて嵌合固定した構成をしているので、コアと第2の案内翼との熱抵抗が低減され、コアで発生した熱が第2の案内翼へ伝導しやすくなり、ブラシレスモータの冷却効果を向上することができる。
【0023】
第10の発明は、特に、第1〜9のいずれか1つの電動送風機を搭載した電気掃除機とすることにより、強い吸引力を有しゴミ取れ性がよく、本体サイズが小さいので小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜図9は、本発明の実施の形態1における電動送風機の構成を示すものである。図1は同電動送風機の一部断面図であり、図2は同電動送風機の一部断面斜視図であり、図3は同電動送風機のインペラの一部断面斜視図であり、図4は同電動送風機のブラシレスモータの一部断面斜視図であり、図5は同電動送風機のステータおよび第2の案内翼の一部断面斜視図であり、図6は同電動送風機のモールド成形前のステータと第2の案内翼の正面図であり、図7は同電動送風機に用いるモールド成形前のステータおよび第2の案内翼の斜視図であり、図8は同電動送風機に用いるモールド成形前のステータの斜視図を示している。図9は同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す断面図である。
【0026】
図1〜図8に示すように、電動送風機1aは、回転軸2を有するロータ3と、ロータ3外周に隙間を設けて配置され巻線4が巻かれたコア5aで構成されるステータ6と、コア5a外周部に溝7aを設け嵌合固定した複数の第2の案内翼8aと、回転軸2の軸受9を保持しステータ6を覆うフレーム前10aとフレーム後10bとで構成されるブラシレスモータ11と、回転軸2に固定され3次元曲面で形成された6枚の斜流型ブレード12aを有するインペラ12と、インペラ12を覆うファンケース13と、フレーム前10aの外周面との間に通気路14となる空間を設けて配置され、一端に複数の第1の案内翼15aを一体に設け、ファンケース13およびフレーム前10aと当接して配置され複数の第1の独立風路16を形成するモータケース15を備えている。
【0027】
モータケース15は通気路14上流から下流にかけて所定の角度で拡がる円錐形状を有しており、第1の案内翼15aはモータケース15内壁に当接している。それに伴ない、第1の独立風路16とそれに連通する第2の独立風路18とで形成される一連の独立風路
は、通気路14の上流から下流にかけて断面積が連続的に大きくなっている。
【0028】
また図6、図7に示すように、コア5a外周部には、第2の案内翼8aの枚数と同じ数の複数の直線状の溝7aができるように予め複数の電磁鋼板を所定形状に打ち抜き、それを積層させることでコア5aを形成した。コア5aに巻線4を巻いた後、アルミニウム平板を用いた複数の第2の案内翼8aをコア5a外周部に設けた溝7aに全周に渡って嵌合固定し、熱伝導性の高い接着剤を用いて接着した。その後、コア5aと巻線4、そして第2の案内翼8aの両端をポニフェニレンサルファイド(PPS)に絶縁性フィラーを充填させて熱伝導性を向上させた熱伝導性樹脂でモールド成形し、第2の案内翼8aをステータ6のモールド部17に保持させた。
【0029】
また第1の案内翼15aで形成される複数の第1の独立風路16は、通気路14に第2の案内翼8aで形成される複数の第2の独立風路18と、略同一断面積かつ略同一形状で連通した構成をしており、第1の独立風路16と第2の独立風路18とが連通して形成される一連の独立風路は、通気路14上流から下流にかけて断面積が連続的に大きくなるようにしている。またインペラ12入口先端部とファンケース13とは、インペラ12が回転駆動可能な状態でPTFE樹脂のリング19を介して動的シールされている。
【0030】
図9において、電気掃除機20は、本体吸気口21に連通した集塵室22と本体排気口23を備えた送風室24とを有する掃除機本体25と、集塵室22に本体吸気口21と気密に装着された集塵袋26と、送風室24に設置された電動送風機1aと、電動送風機1aを覆う難燃樹脂製の防音カバー27と、送風室24の上下に配置された吸音材28とから構成されている。なお、図示していないが、本体吸気口21には、ホース、延長管が順次接続され、延長管の先端には床面上の塵埃を吸引するノズルが取りつけられている。
【0031】
以上のように構成された電動送風機およびそれを用いた電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0032】
まず、電動送風機1aの動作について説明する。図1において、巻線4を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2に固定されたインペラ12が回転する。インペラ12の回転で生じる遠心力により、インペラ12内の空気がインペラ12内の外周へかつ後方へと押しやられ、インペラ12内が負圧になり、前方からインペラ12内へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ12の入口から軸方向に流入し、6枚の斜流型ブレード12aに沿って流れた後、軸方向と径方向との中間の角度でインペラ12から流出する。インペラ12から流出した気流は、複数の第1の独立風路16に流入した後、それに連通する複数の第2の独立風路18をフレーム前10aの外周面に沿って流れて電動送風機1a外部へと流出する。その際、第1の独立風路16と第2の独立風路18とで形成される一連の独立風路の断面積は上流から下流にかけて大きくなるため、気流は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。
【0033】
電動送風機1aの送風性能は、電動送風機1aを駆動するために入力した電力と、電動送風機1aが行う仕事(インペラ12が回転することで発生する真空度と流量の積)との比であらわされる。そのため、実際に使用する流量において電動送風機1aが発生する真空度(静圧)を大きくすることが、電動送風機1aの送風性能をあげる上で大変重要となる。
【0034】
斜流型ブレード12aを有するインペラ12は、気流を軸方向と径方向との中間の角度でさせるため、インペラ12外周にディフューザ用の風路を放射状に必要とする遠心型を有するインペラに比べて外径を小さくできると共に、風路の途中に曲率の大きな湾曲部を設ける必要がないため、小型で圧損の少ない風路を構成することが可能である。特に、曲
がり損失は湾曲部での二次流れや流れのはく離に起因する損失で、流速の二乗に比例して大きくなるため、電気掃除機20に使用されるような流速の大きい電動送風機1aにおいては送風性能を向上する上で大変重要となる。
【0035】
また、ブラシレスモータ11の発熱は、銅損、鉄損、機械損によるものがある。銅損は巻線4を流れる電流によって生じるジュール熱であり、電流の二乗に比例して大きくなる。また、鉄損はヒステリシス損と渦電流損に分けられる。ヒステリシス損は、モータの磁路を形成する電磁鋼板の物性が原因で発生するもので、回転による磁界の変化で磁束密度が変化することに起因する。また渦電流損は、コア5aに通る磁束の変動により磁束線のまわりに渦状の電流が流れ、その際の電気抵抗で発生するものである。
【0036】
機械損は、軸受9部の摩擦やロータ3とステータ6間の空気の攪拌抵抗に起因するものである。特に、鉄損については、ヒステリシス損及び渦電流損共に運転周波数に依存して大きくなるため、ブラシレスモータ11を高速回転で使用する際には、鉄損での発熱が大きくなり、これをいかに効率よく放熱させるかが重要となる。電気掃除機20では、電動送風機1aは高速回転領域での使用が大半であるため、小型で高い送風性能を得るためにはコア5aの冷却が大変重要である。
【0037】
コア5aで発生した熱は、コア5a外周部に設けられた直線状の溝7aに嵌合固定された複数の第2の案内翼8aへと伝導し、それぞれの案内翼の表面から独立風路を流れるインペラ12からの気流に熱が伝達されてブラシレスモータ11外部へと出ていく。コア5aと第2の案内翼8aは熱伝導性の高い接着剤で接着されているので嵌合部に微小な隙間ができるのを防ぐことができ、嵌合部の熱的な接触抵抗が低減することで、コア5aから第2の案内翼8aへの熱伝導性を向上することができ、コア5aで発生した熱が第2の案内翼8aへ伝導しやすく、また第2の案内翼8aはインペラ12からの気流によって連続的に強制冷却されているため、第2の案内翼8aとコア5aとの間に温度差が生じ、コア5a内部の熱伝導が促進されて効率よくコア5aの熱をブラシレスモータ11外部へと逃がすことができる。
【0038】
また、熱伝導性の高いアルミニウムを使用することで、コア5aから伝導した熱が第2の案内翼8a全体へ伝わりやすく、第2の案内翼8aを放熱フィンとして扱うことができるようになり、ブラシレスモータ11を効率よく冷却することが可能となる。
【0039】
また、巻線4で発生した熱は、熱伝導性樹脂で成形されたモールド部17を伝導して、両端を保持されている複数の第2の案内翼8aへと伝わり、コア5aから伝導した熱と同様の過程を経てインペラ12からの気流に伝達して、ブラシレスモータ11外部へと出ていく。モールド部17には熱伝導性樹脂を用いているため空気に比べて熱伝導率が飛躍的に高くなり、巻線4で発生した熱を効率的に放熱することができる。
【0040】
また、第2の案内翼8aには熱伝導性の高い材質を選定するのが好ましく、アルミニウムの他にも、銅、銀などの金属材料や、熱伝導性の硬い金属や炭素の粉末や繊維などの充填剤(フィラー)を含有させることで熱伝導性を向上させた熱伝導性樹脂を用いてもよく、コア5aの熱を第2の案内翼8aへ伝えて放熱面積を大きくし、ブラシレスモータ11の冷却効果を高めることが可能である。
【0041】
熱伝導性樹脂としては、ポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)、ナイロンおよび液晶ポリマー(LCP)が知られている。導電性のフィラーとしては金属粉末、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられ、絶縁性のフィラーとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナなど焼結セラミックが用いられており、絶縁性の有無に応じて選択するフィラーを部位ごとに使い分ける必要がある。
【0042】
但し、放熱フィンとして機能する複数の第2の案内翼8aには、導電性フィラーを配合した樹脂を用いる方が、絶縁性フィラーを配合した樹脂に比べて熱伝導性を大きくすることができるため、導電性フィラーを配合した樹脂を用いるのが望ましい。充填剤の配合比率を大きくすると、溶融時の粘度が大きくなって成形性が低下するため、注意が必要である。また、第2の案内翼8aの厚みと翼枚数は、通気路14に形成される複数の第2の独立風路18に対して、ディフューザとして必要な断面積および断面積の変化率とステータ6の冷却に必要な放熱能力の双方から決める必要があり、実験的に最適値を求める必要がある。
【0043】
次に、電気掃除機20の動作について図9を用いて説明する。図9において、電動送風機1aのインペラ12が回転すると、集塵室22が負圧状態になり、ノズル(図示せず)から吸引された塵埃を含む気流が本体吸気口21を通過して集塵室22へ流入する。集塵袋26で塵埃を濾過分離した清潔な気流は、電動送風機1aのインペラ12へ流入し、第1の独立風路16とそれに連通する第2の独立風路18を通過した後、防音カバー27の排気口から流出して掃除機本体25外部へと放出される。
【0044】
電気掃除機20は、小型で送風性能の高い電動送風機1aを搭載しているため、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性がよく、電動送風機1aの本体サイズが小さくて、重量が軽いので、小回りが利いて使い勝手がよい。また、掃除機本体25内に吸音材28を配置可能な空間の拡大を図り、掃除機本体25内に設ける吸音材28の設置面積を大きくすることで、吸音面積を拡げて運転音の小さな電気掃除機20にすることも可能である。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、コア5a外周部に設けた直線状の溝7aにアルミニウム平板を用いた複数の第2の案内翼8aを熱伝導性の高い接着剤で嵌合固定し、かつ第2の案内翼8aの両端を熱伝導性樹脂でモールド成形してステータ6に保持すると共に、インペラ12からの気流を複数の第1の独立風路16とそれに連通する複数の第2の独立風路18とで形成される連続的に断面積が大きくなる一連の独立風路を形成することで、コア5aおよび巻線4で発生した熱を第2の案内翼8aへ伝導させ、インペラ12からの気流に熱伝達させてブラシレスモータ11外部へと逃がすことで、ブラシレスモータ11内部のステータ6を効率的に冷却することができると共に、一連の独立風路はディフューザとしての機能も果たすため、ブラシレスモータ11の冷却とディフューザを両立させて、小型で高い送風性能を有する電動送風機1aを実現することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、モータケース15の一端に第1の案内翼15aが一体に設けられた事例で説明したが、これに限られるものではなく、第1の案内翼15aとモータケース外郭とを別体として構成してもよく同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、ファンケース13をモータケース15に固定することで、電動送風機1aの外郭を形成した事例で説明したが、電動送風機1aの外周をファンケース13とモータケース15を一体にした外郭ケースで覆ってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、コア5a外周に設けられた溝7aに熱伝導性の高い接着剤を用いて第2の案内翼8aを固定した事例で説明したが、第2の案内翼8aを圧入固定させて構成するも可能であり、圧入固定した後、熱伝導性の高い接着剤で微小な隙間を埋めて固定するのが最もよい。
【0049】
また、本実施の形態では、コア5a外周に直線状の溝7aを軸方向に貫通させて設けた事例で説明したが、必ずしも溝は軸方向に貫通させる必要はなく、図10に示すような異
なる形状の複数の電磁鋼板を積層してコア5bを形成して凹部7bを設けてもよく、コア5bと第2の案内翼との熱抵抗は大きくなるものの、複数の第2の案内翼の軸方向の位置決めがしやすい。
【0050】
(実施の形態2)
図11〜図13は、本発明の実施の形態2における電動送風機の構成を示すものである。図11は同電動送風機の一部断面図であり、図12は同電動送風機のモールド成形前のステータ6および第2の案内翼の正面図であり、図13は同電動送風機モールド成形前のステータ6および第2の案内翼の斜視図である。なお、実施の形態1と同一要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図11〜図13において、電動送風機1bは、複数の直線状の溝7aを外周部に有するコア5aと、溝7aに嵌合固定されモータケース15内壁にかけて曲面形状を形成すると共に、外形を徐々に通気路14上流から下流にかけて大きくした複数の第2の案内翼8bを供えている。
【0052】
また第2の案内翼8bは導電性フィラーを充填させたポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)で射出成形することで製作し、コア5a外周部に設けられた直線状の溝7aに嵌合させて熱伝導性の高い接着剤で接着固定した。その後、実施の形態1と同様に第2の案内翼8bの両端を絶縁性フィラーを充填させたナイロンでモールド成形して、第2の案内翼8bをステータ6のモールド部17に保持させた。
【0053】
以上のように構成された電動送風機について、以下その動作、作用を説明する。
【0054】
まず、電動送風機1bの動作について説明する。図11において、巻線4を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2に固定されたインペラ12が回転する。インペラ12の回転で生じる遠心力により、インペラ12内の空気がインペラ12内の外周へ且つ後方へと押しやられ、インペラ12内が負圧になり、前方からインペラ12内へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ12の入口から軸方向に流入し、6枚の斜流型ブレード12aに沿って流れた後、軸方向と径方向との中間の角度でインペラ12から流出する。インペラ12から流出した気流は、複数の第1の独立風路16に流入した後、それに連通する複数の第2の独立風路18をフレーム前10aの外周面に沿って流れて電動送風機1b外部へと流出する。その際、第1の独立風路16と第2の独立風路18とで形成される一連の独立風路の断面積は上流から下流にかけて大きくなるため、気流は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。
【0055】
コア5aで発生した熱は、コア5a外周部に設けられた直線状の溝7aに嵌合固定された複数の第2の案内翼8bへと伝導し、それぞれの案内翼の表面から独立風路を流れるインペラ12からの気流に熱が伝達されてブラシレスモータ11外部へと出ていく。
【0056】
コア5aと第2の案内翼8bは熱伝導性の高い接着剤で接着されているので嵌合部に微小な隙間ができるのを防ぐことができ、嵌合部の熱的な接触抵抗が低減することで、コア5aから第2の案内翼8bへの熱伝導性を向上することができ、コア5aで発生した熱が第2の案内翼8bへ伝導しやすい。また、第2の案内翼8bはインペラ12からの気流によって連続的に強制冷却されているため、第2の案内翼8bとコア5aとの間に温度差が生じ、コア5a内部の熱伝導が促進されて効率よくコア5aの熱をブラシレスモータ11外部へと逃がすことができる。
【0057】
また導電性フィラーを充填したポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)を使用することで、コア5aから伝導した熱が第2の案内翼8b全体へ伝わりやすく、第2の案内翼
8bを放熱フィンとして扱うことができるようになり、また第2の案内翼8bの材質が熱伝導性樹脂であることから、射出成形が可能なため曲面形状を形成しやすく、限られたモータケースの長さ及び外径においても、放熱面積を平板に比べて大きくすることができ、ブラシレスモータ11の冷却効果をさらに向上することができると共に、ディフューザとして使用できる独立風路を長くして圧力回復量を増やすことで、電動送風機1bの送風性能を向上することができる。
【0058】
また、巻線4で発生した熱は、熱伝導性樹脂で成形されたモールド部17を伝導して、両端を保持されている複数の第2の案内翼8bへと伝わり、コア5aから伝導した熱と同様の過程を経てインペラ12からの気流に伝達して、ブラシレスモータ11外部へと出ていく。モールド部17には熱伝導性樹脂を用いているため空気に比べて熱伝導率が飛躍的に高くなり、巻線4で発生した熱を効率的に放熱することができる。
【0059】
また、第2の案内翼8bの材質として金属を用いた場合、熱伝導性は高くすることが可能だが、加工のしやすさや加工精度およびコストの面から平面形状の方が有利である。一方で、第2の案内翼8bの材質に熱伝導性樹脂を用いた場合には、第2の案内翼の形状の自由度が拡がり曲面形状にすることで平板に比べて放熱面積を大きくすることができ、金属に比べて熱伝導性が低い点をカバーすることができる。
【0060】
さらに、複数の第2の案内翼8bは、空気伝播する騒音に対して遮音壁の役割を果たし、掃除機本体25へ放射される騒音が低減される。結果、電気掃除機20の音源である電動送風機1bの騒音を小さくすることができるので、電気掃除機20としての運転音を大幅に小さくすることができる。
【0061】
特に、耳障りな騒音として問題となる電動送風機1bの回転騒音は、可聴周波数域の高い周波数域の騒音であり伝播する際に直進性を有しているため、曲面形状を有する第2の案内翼8bは遮音壁として有効に機能する。また、吸音する周波数域を回転騒音の周波数域に合わせた吸音材28を掃除機本体25内に配置することで、消音効果を更に高めることができる。また特定周波数の音を大幅に減衰させることが可能な共鳴型の消音構成を合わせて設けることで回転騒音に対する消音効果を向上することができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態においては、コア5a外周部に設けた直線状の溝7aに導電性フィラーを充填した熱伝導性樹脂を用いた曲面形状を有する複数の第2の案内翼8bを熱伝導性の高い接着剤で嵌合固定し、かつ第2の案内翼8bの両端を別の熱伝導性樹脂でモールド成形してステータ6に保持することで、コア5aおよび巻線4で発生した熱を第2の案内翼8bへ伝導させてブラシレスモータ11内部のステータ6を効率的に冷却することができると共に、複数の第2の案内翼8bで形成される複数の第2の独立風路18の風路長を限られたモータケース15の長さ及び外径においても、平板に比べて大きくすることができ、ブラシレスモータ11の冷却効果をさらに向上することができると共に、ディフューザとして使用できる独立風路を長くして電動送風機1bの送風性能を向上することができる。
【0063】
また複数の第2の独立風路18を伝播する騒音に対して遮音効果を向上して電動送風機1bの騒音を低減することもできる。
【0064】
なお、上述した各実施の形態1と2の構成は、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜組み合わせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかる電動送風機は、ステータで発生した熱をモールド成形で
ステータに保持された複数の第2の案内翼に伝熱させて、インペラで発生した気流で第2の案内翼を強制冷却することで連続的に放熱すると共に、気流の動圧を静圧に変換することで、ブラシレスモータを効率よく冷却しながら小型で高い送風性能を有するので、家庭用は勿論のこと、業務用の電気掃除機に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1a、1b 電動送風機
2 回転軸
3 ロータ
4 巻線
5a、5b コア
6 ステータ
7a、7b 溝(凹部)
8a、8b 第2の案内翼
9 軸受
10a フレーム前
10b フレーム後
11 ブラシレスモータ
12a 斜流型ブレード
12 インペラ
13 ファンケース
14 通気路
15 モータケース
15a 第1の案内翼
16 第1の独立風路
17 熱伝導性樹脂(モールド部)
18 第2の独立風路
20 電気掃除機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に隙間を設けて配置され巻線が巻かれたコアで構成されるステータと、前記コア外周部に凹部を設け嵌合固定した複数の第2の案内翼と、前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うフレームとから構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラを覆うファンケースと、前記フレーム外周面との間に通気路となる空間を設けて配置され、一端に複数の第1の案内翼を一体に設け、前記ファンケースおよび前記フレームと当接して配置され複数の第1の独立風路を形成するモータケースとを備え、前記ステータは、前記コアと前記巻線とを樹脂でモールド成形することで構成され、前記第2の案内翼は、その両端部を前記ステータを構成する際に同時にモールド成形することで前記ステータに保持され、前記第1の独立風路は、前記通気路となる空間に前記第2の案内翼で形成される複数の第2の独立風路と略同一断面積かつ略同一形状で連通され、前記インペラによって発生した気流に対してディフューザの作用を有するよう構成した電動送風機。
【請求項2】
インペラは、入口から流入した気流を軸方向と径方向との中間の角度で流出させる斜流型ブレードを有する請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
モールド部の樹脂は、熱伝導性の高い樹脂とした請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
モールド部の樹脂には、フィラーを充填した請求項3に記載の電動送風機。
【請求項5】
第2の案内翼は、熱伝導性の高い樹脂を用いた請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項6】
第2の案内翼には、フィラーを充填した請求項5に記載の電動送風機。
【請求項7】
第2の案内翼は、コア外周面との交点を通過する接線と所定の角度で交わる平面で形成され、かつ外形を徐々に通気路上流から下流にかけて大きくなるよう構成した請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項8】
第2の案内翼は、コア外周部に設けられた直線状の凹部に嵌合固定され、モータケース内壁にかけて曲面形状を形成すると共に、外形を徐々に通気路上流から下流にかけて大きくなるよう構成した請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項9】
第2の案内翼は、コア外周に設けられた凹部で熱伝導性の高い接着剤を用いて嵌合固定する構成とした請求項1〜8のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電動送風機を搭載した電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−255412(P2012−255412A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129895(P2011−129895)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】