説明

電動送風機

【課題】電動送風機において、回転ファンのプレートとブレードの隙間で発生する送風損失を低減するために、プレートとブレード間に接着剤を塗布してシールする方法、または回転ファン全体を電着塗装する方法があるが、均一に送風効率を上げ、かつモータ効率の低下を最小限に止めることが困難という課題があった。
【解決手段】回転ファンのプレートとブレードの接合部分に、シートを挟んでカシメを行うことにより隙間を埋める構成とする。また、シートの厚みが50〜500μmの範囲のものを選定することにより、回転ファンの重量増加を少なく抑え、重量増加による効率の低下を防ぐことも可能となる。更に、シートに熱発泡型の素材を選定し、回転ファンをカシメて成形後アニール処理することにより、プレートとブレードの接合部分の隙間を確実に無くすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機およびそれを使用した掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動送風機は、図1に示すように、電動機部に固定された回転軸1と、前記回転軸1に固定された吸気口5を有する回転ファン11と、回転ファン11を覆うように設けられた吸気口12を有するファンケース13を備えた構造となっている。
【0003】
この構成の電動送風機の課題として、回転ファン11がプレス加工されているため、加工時の寸法制度のばらつきにより、プレートA4、プレートB7の内面とブレード9の端面の間に最大100μm程度の隙間が発生する。この隙間から空気もれが発生することによる送風効率が低下するため、この隙間を埋めて送風損失を低減することが電動機の効率を上げることに不可欠となっている。回転ファン11の隙間を埋めるために、プレートA4やプレートB7を塗装する、もしくはプレートA4やプレートB7とブレード9の隙間に接着剤を塗布して、隙間を小さくして効率を上げるような構成が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、回転ファン11の状態で、電着塗装をして、隙間を小さくして効率を上げるような構成も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−126185号公報
【特許文献2】特開平11−336695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレートA4、プレートB7の内面とブレード9の端面との隙間を小さくするために、プレートA4やプレートB7に静電塗装を施した場合、塗装膜厚を50μm以上の膜厚を確保する必要があり、膜厚がばらついた場合に完全にプレートA4、プレートB7の内面とブレード9の端面との隙間を埋めることが出来ない。更に、厚膜塗装を行うために、回転ファンの重量増加による効率の低下や高コストという課題がある。また、接着剤をプレートA4、プレートB7の内面とブレード9の端面との隙間に塗布する場合は、塗布ミスによる隙間の発生及び接着剤の塗布量のバラツキにより、回転ファン11のアンバランスの発生という課題がある。そして、回転ファン11全体に電着塗装を施す場合、やはり厚膜化しなくてはならないために、重量増加による効率の低下及びコスト高という問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の接合部分に、柔軟性を持つもしくは、発泡性のあるシート10を挟んでカシメを行うことにより隙間を埋めることで、隙間で発生する送風損失を安定して低減し、安価に効率の高い電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明の電動送風機は、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の接合部分に、シート10を挟んでカシメを行うことにより隙間を埋めることで、従来の課題を解決できる。
【0008】
また、シート10に厚みが50〜500μmの範囲のものを選定することにより、回転ファン11の重量増加を少なく抑え、回転ファン11の重量増加による効率の低下を防ぐ
ことも可能となる。
【0009】
更に、シート10に熱発泡型の素材を選定し、回転ファン11をカシメて成形後アニール処理することにより、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の接合部分の隙間を確実に無くすことができる。
【0010】
そして、シート10の形状をブレード9の断面形状の様な放射状にすることで、回転ファン11の重量増による効率低下の少ない電動送風機を提供することが可能となり、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動送風機によれば、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の接合部分に、シート10を挟んでカシメを行うことにより隙間を埋めることで、プレートA4とブレード9の勘合隙間及びプレートB7とブレード9の勘合隙間からの送風損失を安定して低減することができる。
【0012】
また、シート10に厚みが50〜500μmの範囲のものを選定することにより、電着塗装を施した場合に比べて回転ファン11の重量増加を少なく抑えることが可能となり、回転ファン11の重量増加による効率の低下を防ぐことも可能となる。
【0013】
更に、シート10に熱発泡型のシートを選定し、回転ファン11をカシメて成形後アニール処理することにより、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の接合部分の隙間を確実に無くすことが可能となる。
【0014】
そして、シート10の形状をブレード9の断面形状の様な放射状にすることで、シート重量を最小限に抑えることが可能となり、回転ファン11の重量増加による効率低下の少ない電動送風機が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
シート10に、幅2mm厚さ125μmの放射形状をしたエポキシ系熱発泡型のシートを用い、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の間に配置して、カシメて回転ファン11を成形した後、アニール処理を施すことにより、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の隙間が均一でほとんど無く送風効率の高い、また軽量で効率低下の少ない電動送風機を安価に得ることが可能となる。
【0016】
以下、本発明の一実施例について、掃除機用電動送風機を例として説明する。
【実施例1】
【0017】
図1において、掃除機用の電動送風機は、回転軸1と前記回転軸1に固定された吸気口5を有する回転ファン11と回転ファン11を覆うように設けられた吸気口12を有するファンケース13から構成されている。
【0018】
この回転ファン11は、図2のような構成からなり、シート10に、幅2mm厚さ125μmの放射形状をしたエポキシ樹脂系熱発泡型のシートを用い、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の間に配置して、カシメて回転ファン11を成形した後、180℃でアニール処理を施すことにより、シートが発泡してプレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の隙間が均一に1μm以下に抑えられ、送風効率の高い、また回転ファン11の重量増加を最小限に抑えて効率低下の少ない電動送風機が安価に得ることが可能となる。
【0019】
従来の接着剤を用いる工法で課題であった、接着時に発生する接着ムラによるアンバランスや送風効率の低下やコスト高といった問題を解決し、回転ファン全体を電着塗装する工法で課題であった、回転ファンの重量増加による効率低下やコスト高といった問題も解決し、プレートA4とブレード9及びプレートB7とブレード9の隙間が均一でほとんど無く送風効率の高い、また軽量で効率低下の少ない電動送風機を安易に供給することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は掃除機等に用いる電動送風機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電動送風機の構成図
【図2】回転ファンの構成図
【符号の説明】
【0022】
1 回転軸
2 軸穴
3 勘合用孔部
4 プレートA
5 吸気口
6 勘合用孔部
7 プレートB
8 勘合用爪部
9 ブレード
10 シート
11 回転ファン
12 吸気口
13 ファンケース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を取り付ける軸穴と勘合用孔部を有する下部プレートと、下部プレートと対向してほぼ同一の外径で吸気口と勘合用孔部を有する上部プレートと、下部プレートと上部プレートの間に配置し、放射状で端面に複数の勘合用爪部を有する複数のブレードを有し、下部プレートとブレード及び上部プレートとブレードの接合部分の両方もしくは片方に、シートを挟んで接合させた回転ファンを有することを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
シートの厚みが50〜500μmである請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
シートの材質が熱発泡型素材であることを特徴とする請求項1に記載の電動送風機。
【請求項4】
シートの形状がブレード9の断面形状とほぼ同一な放射状であることを特徴とする請求項1に記載の電動送風機


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−146812(P2007−146812A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345667(P2005−345667)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】