説明

電動過給機の制御装置

【課題】モータ駆動の有無に関わらず、迅速に異常を検出することができる電動過給機の制御装置を得る。
【解決手段】エンジン回転速度及び空気流量に基づき目標モータ回転速度を演算する目標モータ回転速度演算手段21と、モータ32の電機子巻線の電流を検出するモータ電流検出手段22と、モータ32の電機子巻線の電圧を検出するモータ電圧検出手段23と、前記電流及び電圧に基づき実モータ回転速度を演算する実モータ回転速度演算手段24と、前記目標及び実モータ回転速度の差分を出力する差分器25と、前記差分が差分閾値以上の場合には異常検出信号を出力する異常検出手段26と、駆動指令信号及び異常検出信号に基づき駆動可否を決定して駆動可否信号を出力する駆動可否決定手段27と、前記駆動可否信号が前記モータを駆動しない区間のモータ停止指令の場合、モータ駆動時に比べて小さい界磁電流指令値を出力する界磁電流制御手段28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動過給機の電動機(以下、必要に応じてモータと記す)の駆動の有無に関わらず、電動過給機の異常を検出することができる電動過給機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低燃費を目的とし、内燃機関(以下、必要に応じてエンジンと記す)の出力を増加させるために吸気通路上に電動機で駆動する過給機を設ける技術が知られている。この電動機はタービンとコンプレッサ軸上に配置され、排気タービンの低回転域では電動機、高回転域では排気ガスにより回転するという特徴をもつ。
【0003】
電動過給機は、排気タービンを排気ガスにより回転させ、同軸上のコンプレッサを用いて吸入空気を過給するという原理上、高温となる箇所に配置されている。また、高温下における高速回転により、電動機の温度は更に上昇する。エンジンオイル等により冷却を行っているが、冷却が不十分であれば、回転軸の焼き付きが生じてしまう。焼き付きが生じると、電動機のパワー基板を破損したり、電気系統を用いているため、車両に搭載されている他の電装品に悪影響を及ぼしたり、タービンの折損を招いたりと、重大故障に繋がる場合があるため、焼き付き等の機構的異常を迅速に検出する必要がある。
【0004】
電動過給機の異常検出を精度よく行うことを目的として、圧力センサを用いて過給圧を検出し、モータの電流と電圧に基づきモータ回転速度を算出し、過給圧もしくはモータ回転速度が閾値を超えた場合に、異常を検出する電動過給機の異常検出システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、閾値は、内燃機関回転速度及び空気流量等の運転条件、大気圧及び大気温度等の大気条件により定められた値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−123844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動過給機にはモータを駆動しない区間がある。電動過給機の過渡応答性を向上させるため、排気タービンの低回転域ではモータ駆動によりコンプレッサの回転を行うが、排気ガス流量の増加した高回転域ではモータ駆動を止め、排気ガスによりコンプレッサを回転させる。また、低回転域であっても運転者からのアクセルの踏込み等による加速要求がない場合はモータを駆動しない。
【0007】
しかしながら、特許文献1に関しては、モータ回転速度をモータの電流及び電圧に基づき算出し、これに基づき異常検出を行うため、モータを駆動しない区間において異常が発生した場合、異常を検出できないという問題点があった。すなわち、モータの駆動後に異常判定が開始されるため、検出に遅れが生じてしまう。また、通常の走行においてモータを駆動する区間が全区間に占める割合は少ないため、異常を判定できる区間は非常に限られる。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、電動過給機のモータを駆動しない区間において、界磁巻線に微量の電流を流して磁束を発生させることにより、電機子巻線に生じた誘起電力に基づき、電動過給機の実回転速度を算出し、これに基づき、モータ駆動の有無に関わらず、迅速に異常を検出することができ、また、異常検出のための消費電力を抑えることができる電動過給機の制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電動過給機の制御装置は、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、空気流量を検出する吸入空気流量検出手段と、前記エンジン回転速度及び前記空気流量に基づき目標モータ回転速度を演算する目標モータ回転速度演算手段と、電動過給機のモータの電機子巻線の電流を検出するモータ電流検出手段と、前記モータの電機子巻線の電圧を検出するモータ電圧検出手段と、前記モータ電流検出手段により検出された電流及び前記モータ電圧検出手段により検出された電圧に基づき実モータ回転速度を演算する実モータ回転速度演算手段と、前記目標モータ回転速度及び前記実モータ回転速度の差分を出力する差分手段と、前記差分が所定の差分閾値以上の場合には、前記電動過給機が異常であることを示す異常検出信号を出力する異常検出手段と、駆動指令信号及び前記異常検出信号に基づき駆動可否を決定し、モータ駆動指令又はモータ停止指令を示す駆動可否信号を出力する駆動可否決定手段と、前記駆動可否信号が前記モータを駆動しない区間に相当するモータ停止指令の場合には、前記モータの界磁巻線の電流を制御するための、モータ駆動時に比べて小さい異常検出のための所定の界磁電流指令値を演算して出力する界磁電流制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電動過給機の制御装置によれば、電動過給機のモータを駆動しない区間において、界磁巻線に微量の電流を流して磁束を発生させることにより、電機子巻線に生じた誘起電力に基づき、電動過給機の実回転速度を算出し、これに基づき、モータ駆動の有無に関わらず、迅速に異常を検出することができ、また、異常検出のための消費電力を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電動過給機の制御装置を含むエンジンの全体構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電動過給機の制御装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る電動過給機の制御装置について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る電動過給機の制御装置を含むエンジンの全体構成を示す図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0014】
図1において、エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)1と、吸入空気流量センサ(吸入空気流量検出手段)2と、スロットルポジションセンサ(スロットルポジション検出手段)3と、電機子電流センサ4と、電機子電圧センサ5と、エンジン制御装置10と、電動機制御装置20と、電動過給機30と、警告灯(異常教示手段)40とが設けられている。
【0015】
電動過給機30には、コンプレッサ31と、電動機32と、排気タービン33とが設けられている。
【0016】
また、図1において、アクセルペダル51と、エアクリーナ52と、インタークーラ53と、スロットルバルブ54と、スロットルアクチュエータ55と、インテークマニホールド56と、エキゾーストマニホールド57と、排気浄化装置58と、エンジン100と等が設けられている。
【0017】
図2において、電動機制御装置20には、目標モータ回転速度演算手段21と、モータ電流検出手段22と、モータ電圧検出手段23と、実モータ回転速度演算手段24と、差分器(差分手段)25と、異常検出手段26と、駆動可否決定手段27と、界磁電流制御手段28とが設けられている。
【0018】
つぎに、この実施の形態1に係る電動過給機の制御装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図3は、この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0020】
図1において、エンジン100は、後述する電動過給機30により多くの吸入空気を過給することで、高出力化および低燃費化も実現している。
【0021】
なお、適用されるエンジン100は、気筒数の制限はない。また、エンジン100の燃焼方式についても制限はなく、シリンダ内に燃料を噴射する直噴エンジンや、スロットルバルブ54の後のインテークマニホールド56内に燃料を噴射するポート噴射エンジンに適用することも可能である。
【0022】
モータ32は、排気ガスにより駆動される排気タービン33と電動過給機30のコンプレッサ31の軸上にある。なお、モータ32は、界磁電流により磁束を発生させて回転する同期電動機である。詳しい動作については後述する。
【0023】
エンジン100において、吸入空気はエアクリーナ52でゴミや塵などを取り除いた後、電動過給機30のコンプレッサ31で吸入空気が圧縮される。その後、圧縮された空気はインタークーラ53に入り、スロットルバルブ54の開度に応じてインテークマニホールド56よりエンジン100内に吸入される。インタークーラ53は、吸入空気が圧縮されることで上昇した温度を下げて充填効率を向上させる目的で配置される。
【0024】
エンジン制御装置10は、エンジン回転速度センサ1からエンジン回転速度を、吸入空気流量センサ2から空気流量を、スロットルポジションセンサ3からスロットルポジションを、それぞれ得る。エンジン制御装置10は、エンジン回転速度、車速、スロットルポジションなどの車両運転情報に基づいてスロットルバルブ54の開度を制御するとともに、モータ32の駆動信号、エンジン回転速度、空気流量、ストッロルポジション等を電動機制御装置20に出力している。なお、エンジン制御装置10は、図で示されていないがCPU、ROM、RAMなどの算術論理演算可能な回路で構成される。
【0025】
エンジン100で燃焼後の排気ガスは、エキゾーストマニホールド57を通じて排気タービン33を駆動する。その後、排気ガスを浄化する排気浄化装置58を通じて大気中に排出される。
【0026】
排気タービン33の回転が十分でない、つまり排気タービン33が低回転の時はモータ32を駆動させることでコンプレッサ31を回転させ過給圧を上昇させる。一方、排気タービン33が高回転の時は排気タービン33の回転のみでコンプレッサ31を回転させる。なお、排気ガスにより十分な回転が得られる場合は、排気エネルギーを利用した発電による電力回生を行ってもよい。
【0027】
次に、図2は、上述したように、電動機制御装置20の構成を示す制御ブロック図である。電動機制御装置20は、CPU、RAM、ROMなどからなる算術論理演算可能回路である。
【0028】
駆動可否決定手段27は、エンジン制御装置10から出力されたモータ32の駆動指令信号と、異常検出手段26から出力された異常検出信号に基づき、駆動可否を決定し、モータ駆動指令もしくはモータ停止指令を示す駆動可否信号を出力する。
【0029】
界磁電流制御手段28は、駆動可否決定手段27から出力された駆動可否信号に応じて、電動機32の界磁巻線の電流を制御するための界磁指令値を定め出力する。モータ駆動時にはモータ駆動に応じた界磁指令値を出力し、モータ停止時には、異常検出のためにモータ駆動時に比べて極めて小さな界磁指令値を、例えば、界磁電流値が0.01[AT]となるように定め出力する。ただし、界磁電流値は車両に応じて異なる値である。界磁巻線に磁束を発生させることにより電機子巻線に誘起される電流値、電圧値を検出し、これらに基づき、電動過給機30の実モータ回転速度を演算できる最低限の値であればよい。最低限の電流値とすることにより、異常検出のための電力消費を抑えることができる。
【0030】
目標モータ回転速度演算手段21は、エンジン制御装置10から出力されたエンジン回転速度と、空気流量より、目標モータ回転速度を定め出力する。
【0031】
モータ電流検出手段22は、電機子電流センサ4からモータ電流を、モータ電圧検出手段23は、電機子電圧センサか5からモータ電圧をそれぞれ得る。モータ電流検出手段22から出力されたモータ電流、モータ電圧検出手段23から出力されたモータ電圧より、実モータ回転速度演算手段24は、実モータ回転速度を演算し出力する。
【0032】
差分器25は、目標モータ回転速度演算手段21から出力された目標モータ回転速度と、実モータ回転速度演算手段24から出力された実モータ回転速度の差分を出力する。
【0033】
異常検出手段26は、差分器25の出力が差分閾値以上の場合、電動過給機30の異常を検出し異常検出信号を出力する。なお、異常判定用の差分閾値は、エンジン制御装置10から出力されたスロットルポジションに基づき算出し、スロットルポジションが大きいほど、大きな値とする。過給が過渡状態の場合、モータの回転数は大きく変動する。スロットルポジションの値、すなわち、過給の変化量に応じて差分閾値を変化させることにより、誤検出を防ぎ、異常検出の精度を向上できる。また、異常検出手段26の出力に基づいて、警告灯40を点燈することにより、運転者に電動過給機30に異常が発生したことを教示する。
【0034】
次に、図3のフローチャートを参照しながら、電動機制御装置20の具体的な動作に関して説明する。図3は、スタートからエンドまでステップ101からステップ112までを含んでおり、電動機制御装置20は一連の処理を繰り返し行う。
【0035】
まず、ステップ101において、エンジン制御装置10の出力を、駆動指令値、エンジン回転速度値、空気流量値、スロットルポジション値としてマイクロコンピュータのメモリ(図示しない)に読み込み記憶する。
【0036】
次に、ステップ102において、メモリに記憶された異常検出値を得る。なお、初期値は異常なしを示す。
【0037】
次に、ステップ103において、メモリに記憶された異常検出値、駆動指令値よりモータ駆動の可否を判断する。判断結果がYESの時はステップ104へ、判断結果がNOの時はステップ105へ進む。
【0038】
次に、ステップ104において、モータ駆動のための界磁電流指令値を演算し、ステップ106へ進む。
【0039】
一方、ステップ105において、異常検出のための界磁電流指令値を演算し、ステップ106へ進む。なお、このステップ105で演算した界磁電流指令値は、ステップ104で演算した値に比べ、極めて小さな値、例えば、0.01[AT]である。
【0040】
ステップ104、ステップ105で演算した界磁電流指令値に基づき、モータ32の界磁巻線に流れる電流が制御される。
【0041】
ステップ106において、電機子電流センサ4の出力よりモータ電流値、電機子電圧センサ5の出力よりモータ電圧値をメモリに読み込み記憶する。
【0042】
次に、ステップ107において、メモリに記憶されたエンジン回転速度、空気流量から目標モータ回転速度を演算し、メモリに記憶する。
【0043】
次に、ステップ108において、メモリに記憶されたモータ電流値、モータ電圧値から実モータ回転速度を演算し、メモリに記憶する。
【0044】
次に、ステップ109において、メモリに記憶された目標モータ回転速度と実モータ回転速度の差分を演算し、メモリに記憶する。
【0045】
次に、テップ110において、メモリに記憶されたスロットルポジションより異常判定用の差分閾値を演算する。
【0046】
次に、ステップ111において、メモリに記憶された目標モータ回転速度と実モータ回転速度の差分が差分閾値以上であるか否かを判断する。判断結果がYESの時はステップ112へ進む。一方、判断結果がNOの時は異常なしと判定され、ステップ101に戻る。
【0047】
そして、ステップ112において、異常検出信号を出力し、異常検出値としてメモリに記憶する。異常検出信号に応じて、警告灯40が点燈し、運転者に電動過給機30の異常が教示される。
【0048】
以上のように、モータ駆動しない区間において、モータ駆動する区間に比べて極めて小さな値、例えば、0.01[AT]の電流を流し、エンジン回転速度、空気流量から算出した目標モータ回転速度と、モータ電流、モータ電圧から算出した実モータ回転速度の差分に基づき、異常を検出することにより、モータ駆動の有無に関わらず、迅速に異常を検出することができ、また、異常検出のための消費電力を抑えることが可能となる。例えば、イグニッションをオンにし、アクセルを踏込んで発進する前に異常を検出できるため、車両発進後の重大な事故を未然に防ぐことができる。
【0049】
なお、本実施の形態1では、目標モータ回転速度演算手段21は、エンジン制御装置10から出力されるエンジン回転速度、空気流量に基づき演算により目標モータ回転速度を出力しているが、目標モータ回転速度値をエンジン回転速度、空気流量に応じてマップ化し、マップの参照により定めることとしても良く、目標モータ回転速度をより正確に定めることが可能となり、異常検出の精度が向上する。
【0050】
また、本実施の形態1では、異常検出手段26は、スロットルポジションの値が大きいほど、異常判定用の差分閾値が大きな値となるよう定めているが、エンジン回転加速度演算手段によって、エンジン回転速度よりエンジン回転加速度を演算し、エンジン回転加速度が大きいほど、異常判定用の差分閾値が大きな値となるよう定めることとしても良い。
【0051】
さらに、空気流量変化率演算手段によって、空気流量より空気流量変化率を演算し、空気流量変化率が大きいほど、異常判定用の差分閾値が大きくなるよう定めることとしても良い。過給状態をより正確に捉えることが可能となり、異常検出の精度が向上する。
【0052】
また、過給圧センサ(過給圧検出手段)を使用し、過給圧センサから取得した過給圧値に基づき過給圧変化率を過給圧変化率演算手段によって演算し、過給圧変化率が大きいほど、異常判定用の差分閾値が大きな値となるよう定めることとしても良く、過給状態を直接検出することが可能となり、異常検出の精度が向上する。
【0053】
また、本実施の形態1では、異常検出手段26は、実モータ回転速度と目標モータ回転速度の差分値が差分閾値以上の場合、異常を検出することとしているが、公知の技術にあるように、複数の差分閾値を有し、段階的に異常を検出することとしても良い。例えば、第一の差分閾値と、第二の差分閾値を有し、第一の差分閾値は第二の差分閾値より小さな値とすることにより、第一の差分閾値に基づき軽度の異常、第二の差分閾値に基づき重度の異常を検出し、段階別に警告灯40を点燈し、運転者に教示することが可能である。運転者が異常を早期に認識し、修理を行うことにより、重大な故障を未然に防ぐことができる。
【0054】
また、異常検出手段26は、異常の発生がモータ32を駆動した区間であるか、モータ32を停止した区間であるかを判別し、これに基づき異常レベルを定め、警告灯40を点燈することとし、運転者に異常レベルを教示することとしても良い。これにより、異常発生後の適切な対応が容易となる。例えば、モータ32を駆動した区間で異常を検出したため、モータ駆動を停止したが、その後、モータ32を停止した区間では異常が検出されなかった場合、異常レベル1とする。異常要因はモータ駆動による電気的異常と推測される。この場合、モータ駆動を停止すれば、修理作業場所への移動など、走行そのものは可能である。同様に、例えば、モータ32を駆動した区間で異常を検出し、モータ駆動を停止したが、更にモータ32を停止した区間においても異常が検出された場合、異常レベル2とする。電動過給機30の機構的異常と推測される。走行を継続するのは危険である。
【0055】
また、本実施の形態1では、異常を検出した場合、警告灯40により、運転者に異常を教示することとしているが、公知の技術にあるように、異常教示手段として、アラームまたはブザー等を使用し、運転者に異常を教示することとしても良く、運転者に対し視覚だけでなく聴覚に訴えることができ、運転者はより迅速に異常を認識することが可能となる。
【0056】
この他にも、排気タービン33を除き吸気通路上に電動機32とコンプレッサ31のみ配設され、電気エネルギーのみで過給されるいわゆる電動コンプレッサでも良い。
【0057】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る電動過給機の制御装置について説明する。この発明の実施の形態2に係る電動過給機の制御装置を含むエンジンの全体構成と、電動機制御装置20の構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0058】
この実施の形態2では、異常検出手段26は、差分器25の出力が差分閾値以上の場合、電動過給機30の異常を検出し異常検出信号を出力する。なお、異常判定用の差分閾値は、エンジン制御装置10から出力されたスロットルポジションに基づき算出し、スロットルポジションが大きいほど、大きな値とする。ここまでは、上記の実施の形態1と同じであるが、異常検出手段26は、目標モータ回転速度演算手段21から出力された目標モータ回転速度を入力する。そして、差分器25の出力(差分)が差分閾値未満の場合には、異常検出手段26は、目標モータ回転速度に対する差分の比率(%)を演算する。異常検出手段26は、この差分の比率が比率閾値以上の場合、電動過給機30の異常を検出し異常検出信号を出力する。なお、異常判定用の比率閾値は、差分閾値と同様に、エンジン制御装置10から出力されたスロットルポジションに基づき算出し、スロットルポジションが大きいほど、大きな値とする。また、異常判定用の比率閾値は、差分閾値と同様に、上記の実施の形態1に記載された他の方法により算出しても良い。
【0059】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る電動過給機の制御装置について説明する。この発明の実施の形態3に係る電動過給機の制御装置を含むエンジンの全体構成は、上記の実施の形態1と同様である。また、電動機制御装置20の構成は、差分器25がなく、異常検出手段26が、目標モータ回転速度演算手段21から出力された目標モータ回転速度と、実モータ回転速度演算手段24から出力された実モータ回転速度を入力する点が上記の実施の形態1と異なる。
【0060】
異常検出手段26は、目標モータ回転速度に対する実モータ回転速度の比率(%)を演算する。異常検出手段26は、この比率が比率閾値以上の場合、電動過給機30の異常を検出し異常検出信号を出力する。なお、異常判定用の比率閾値は、差分閾値と同様に、エンジン制御装置10から出力されたスロットルポジションに基づき算出し、スロットルポジションが大きいほど、大きな値とする。また、異常判定用の比率閾値は、差分閾値と同様に、上記の実施の形態1に記載された他の方法により算出しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン回転速度センサ、2 吸入空気流量センサ、3 スロットルポジションセンサ、4 電機子電流センサ、5 電機子電圧センサ、10 エンジン制御装置、20 電動機制御装置、21 目標モータ回転速度演算手段、22 モータ電流検出手段、23 モータ電圧検出手段、24 実モータ回転速度演算手段、25 差分器、26 異常検出手段、27 駆動可否決定手段、28 界磁電流制御手段、30 電動過給機、31 コンプレッサ、32 電動機、33 排気タービン、40 警告灯、51 アクセルペダル、52 エアクリーナ、53 インタークーラ、54 スロットルバルブ、55 スロットルアクチュエータ、56 インテークマニホールド、57 エキゾーストマニホールド、58 排気浄化装置、100 エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
空気流量を検出する吸入空気流量検出手段と、
前記エンジン回転速度及び前記空気流量に基づき目標モータ回転速度を演算する目標モータ回転速度演算手段と、
電動過給機のモータの電機子巻線の電流を検出するモータ電流検出手段と、
前記モータの電機子巻線の電圧を検出するモータ電圧検出手段と、
前記モータ電流検出手段により検出された電流及び前記モータ電圧検出手段により検出された電圧に基づき実モータ回転速度を演算する実モータ回転速度演算手段と、
前記目標モータ回転速度及び前記実モータ回転速度の差分を出力する差分手段と、
前記差分が所定の差分閾値以上の場合には、前記電動過給機が異常であることを示す異常検出信号を出力する異常検出手段と、
駆動指令信号及び前記異常検出信号に基づき駆動可否を決定し、モータ駆動指令又はモータ停止指令を示す駆動可否信号を出力する駆動可否決定手段と、
前記駆動可否信号が前記モータを駆動しない区間に相当するモータ停止指令の場合には、前記モータの界磁巻線の電流を制御するための、モータ駆動時に比べて小さい異常検出のための所定の界磁電流指令値を演算して出力する界磁電流制御手段と
を備えたことを特徴とする電動過給機の制御装置。
【請求項2】
スロットルポジションを検出するスロットルポジション検出手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値を、前記スロットルポジション検出手段により検出したスロットルポジションが大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項1記載電動過給機の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン回転速度に基づきエンジン回転加速度を演算するエンジン回転加速度演算手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値を、前記エンジン回転加速度演算手段により演算したエンジン回転加速度が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項1記載電動過給機の制御装置。
【請求項4】
前記空気流量に基づき空気流量変化率を演算する空気流量変化率演算手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値を、前記空気流量変化率演算手段により演算した空気流量変化率が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項1記載電動過給機の制御装置。
【請求項5】
過給圧値を検出する過給圧検出手段と、
前記過給圧検出手段により検出した過給圧値に基づき過給圧変化率を演算する過給圧変化率演算手段とをさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値を、前記過給圧変化率演算手段により演算した過給圧変化率が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項1記載電動過給機の制御装置。
【請求項6】
前記異常検出手段により出力された異常検出信号に基づき、運転者に異常を教示する異常教示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の電動過給機の制御装置。
【請求項7】
エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
空気流量を検出する吸入空気流量検出手段と、
前記エンジン回転速度及び前記空気流量に基づき目標モータ回転速度を演算する目標モータ回転速度演算手段と、
電動過給機のモータの電機子巻線の電流を検出するモータ電流検出手段と、
前記モータの電機子巻線の電圧を検出するモータ電圧検出手段と、
前記モータ電流検出手段により検出された電流及び前記モータ電圧検出手段により検出された電圧に基づき実モータ回転速度を演算する実モータ回転速度演算手段と、
前記目標モータ回転速度及び前記実モータ回転速度の差分を出力する差分手段と、
前記差分が所定の差分閾値以上の場合には、前記電動過給機が異常であることを示す異常検出信号を出力するとともに、前記差分が差分閾値未満の場合には、前記目標モータ回転速度に対する前記差分の比率を演算し、前記差分の比率が所定の比率閾値以上のときには、前記電動過給機が異常であることを示す異常検出信号を出力する異常検出手段と、
駆動指令信号及び前記異常検出信号に基づき駆動可否を決定し、モータ駆動指令又はモータ停止指令を示す駆動可否信号を出力する駆動可否決定手段と、
前記駆動可否信号が前記モータを駆動しない区間に相当するモータ停止指令の場合には、前記モータの界磁巻線の電流を制御するための、モータ駆動時に比べて小さい異常検出のための所定の界磁電流指令値を演算して出力する界磁電流制御手段と
を備えたことを特徴とする電動過給機の制御装置。
【請求項8】
スロットルポジションを検出するスロットルポジション検出手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値及び前記所定の比率閾値を、前記スロットルポジション検出手段により検出したスロットルポジションが大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項7記載電動過給機の制御装置。
【請求項9】
前記エンジン回転速度に基づきエンジン回転加速度を演算するエンジン回転加速度演算手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値及び前記所定の比率閾値を、前記エンジン回転加速度演算手段により演算したエンジン回転加速度が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項7記載電動過給機の制御装置。
【請求項10】
前記空気流量に基づき空気流量変化率を演算する空気流量変化率演算手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値及び前記所定の比率閾値を、前記空気流量変化率演算手段により演算した空気流量変化率が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項7記載電動過給機の制御装置。
【請求項11】
過給圧値を検出する過給圧検出手段と、
前記過給圧検出手段により検出した過給圧値に基づき過給圧変化率を演算する過給圧変化率演算手段とをさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値及び前記所定の比率閾値を、前記過給圧変化率演算手段により演算した過給圧変化率が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項7記載電動過給機の制御装置。
【請求項12】
前記異常検出手段により出力された異常検出信号に基づき、運転者に異常を教示する異常教示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項7から請求項11までのいずれかに記載の電動過給機の制御装置。
【請求項13】
エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
空気流量を検出する吸入空気流量検出手段と、
前記エンジン回転速度及び前記空気流量に基づき目標モータ回転速度を演算する目標モータ回転速度演算手段と、
電動過給機のモータの電機子巻線の電流を検出するモータ電流検出手段と、
前記モータの電機子巻線の電圧を検出するモータ電圧検出手段と、
前記モータ電流検出手段により検出された電流及び前記モータ電圧検出手段により検出された電圧に基づき実モータ回転速度を演算する実モータ回転速度演算手段と、
前記目標モータ回転速度に対する前記実モータ回転速度の比率を演算し、前記比率が所定の比率閾値以上のときには、前記電動過給機が異常であることを示す異常検出信号を出力する異常検出手段と、
駆動指令信号及び前記異常検出信号に基づき駆動可否を決定し、モータ駆動指令又はモータ停止指令を示す駆動可否信号を出力する駆動可否決定手段と、
前記駆動可否信号が前記モータを駆動しない区間に相当するモータ停止指令の場合には、前記モータの界磁巻線の電流を制御するための、モータ駆動時に比べて小さい異常検出のための所定の界磁電流指令値を演算して出力する界磁電流制御手段と
を備えたことを特徴とする電動過給機の制御装置。
【請求項14】
スロットルポジションを検出するスロットルポジション検出手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の差分閾値及び前記所定の比率閾値を、前記スロットルポジション検出手段により検出したスロットルポジションが大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項13記載電動過給機の制御装置。
【請求項15】
前記エンジン回転速度に基づきエンジン回転加速度を演算するエンジン回転加速度演算手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の比率閾値を、前記エンジン回転加速度演算手段により演算したエンジン回転加速度が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項13記載電動過給機の制御装置。
【請求項16】
前記空気流量に基づき空気流量変化率を演算する空気流量変化率演算手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の比率閾値を、前記空気流量変化率演算手段により演算した空気流量変化率が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項13記載電動過給機の制御装置。
【請求項17】
過給圧値を検出する過給圧検出手段と、
前記過給圧検出手段により検出した過給圧値に基づき過給圧変化率を演算する過給圧変化率演算手段とをさらに備え、
前記異常検出手段は、前記所定の比率閾値を、前記過給圧変化率演算手段により演算した過給圧変化率が大きいほど大きな値に定める
ことを特徴とする請求項13記載電動過給機の制御装置。
【請求項18】
前記異常検出手段により出力された異常検出信号に基づき、運転者に異常を教示する異常教示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項13から請求項17までのいずれかに記載の電動過給機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157875(P2011−157875A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20308(P2010−20308)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】