説明

電圧変換モジュール

【課題】電圧変換用ICを内蔵させた多層配線板上に、入力側コンデンサ、並びに出力側コンデンサ及びインダクタを配列してなる電圧変換モジュールにおいて、入力電圧に重畳されるノイズを低減して、安定した出力電圧を得る。
【解決手段】互いに離隔して順次に積層されてなる複数の配線パターン、これら複数の配線パターン間それぞれに位置する絶縁部材、及び前記複数の配線パターン間を電気的に接続する層間接続体を有し、電圧変換用IC15が内蔵された多層配線板10上において、第1のコンデンサ16、第2のコンデンサ17及びインダクタ18を実装し、第1のコンデンサの入力部と記インダクタとの間に、第1のコンデンサにおける他方の電極部又は第2のコンデンサにおける電極部の一方を位置させ、他方の電極部又は電極部の一方を電気的にグランドに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信機器及び移動体通信機器で好適に利用することのできる電圧変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高性能化・小型化の流れの中、回路部品の高密度、高機能化が一層求められている。かかる観点より、回路部品を搭載したモジュールにおいても、高密度、高機能化への対応が要求されている。このような要求に応えるべく、現在では配線板を多層化することが盛んに行われている。
【0003】
このような多層配線板においては、複数の配線パターンを互いに離隔するとともに略平行となるようにして配置し、前記配線パターン間に絶縁部材を配し、半導体部品などの電子部品は前記絶縁部材中に前記配線パターンの少なくとも1つに電気的に接続するようにして埋設するとともに、前記絶縁部材間を厚さ方向に貫通した層間接続体(ビア)を形成し、前記複数の配線パターンを互いに電気的に接続するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、電圧変換用ICは、この電圧変換用ICを十分に駆動させるべく、入力側に第1のコンデンサを電圧変換用ICに対して並列に配置し、出力側に平滑用インダクタを電圧変換用ICに対して直列に接続配置し、平滑用インダクタのもう一方の端子をモジュールの出力端子に接続するとともに、第2のコンデンサを並列接続配置して使用する。第1のコンデンサは、2μF程度の容量を有し、主として電圧変換用ICへの入力電圧安定化のために使用する。第2のコンデンサは、4μF程度の容量を有し、平滑用インダクタとともに、主として電圧変換用ICからの出力電圧安定化のために使用する。
【0005】
第1のコンデンサは、例えば1mm×0.5mmの大きさを有し、第2のコンデンサは、例えば1.6mm×0.8mmの大きさを有する。また、平滑用インダクタは、例えば2mm×1.25mmの大きさを有する。
【0006】
したがって、上述のような電圧変換用ICを電子部品として多層配線板中に内蔵させるに際しては、電圧変換用ICとともに上述したコンデンサ及びインダクタをも内蔵させる必要があるが、上述のように、第1のコンデンサ、第2のコンデンサ及びインダクタは、サイズが比較的大きく、厚みもあるため、電圧変換用IC及びコンデンサ等の総てを多層配線板内に内蔵させるには困難であった。
【0007】
そこで、特許文献2においては、多層配線板中には電圧変換用ICのみを内蔵させ、第1のコンデンサ、第2のコンデンサ及びインダクタについては、多層配線板上に形成したコンデンサ内蔵層中に配置するような構成を採ることによって、半導体部品などの電子部品を内蔵させた場合と同様のモジュールを作製することが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2においては、多層配線板上に形成された第1のコンデンサ、第2のコンデンサ及びインダクタの配列については何らの教示もされていない。したがって、第1のコンデンサ、第2のコンデンサ及びインダクタの配列状態に依存して入力電圧に大きなノイズが重畳されてしまい、安定した出力電圧を得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−197849号
【特許文献2】特開2003−115664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電圧変換用ICを内蔵させた多層配線板上に、入力側コンデンサ、並びに出力側コンデンサ及びインダクタを配列してなる電圧変換モジュールにおいて、入力側コンデンサ、並びに出力側コンデンサ及びインダクタの配列状態を最適化し、入力電圧に重畳されるノイズを低減して、安定した出力電圧を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明は、
互いに離隔して順次に積層されてなる複数の配線パターン、これら複数の配線パターン間それぞれに位置する絶縁部材、及び前記複数の配線パターン間を電気的に接続する層間接続体を有する多層配線板と、
前記複数の配線パターンの、内側に位置する配線パターンの一つに実装された電圧変換を行うための電圧変換用ICと、
前記多層配線板の主面上において実装され、前記複数の配線パターン及び前記層間接続体を介して、前記電圧変換用ICと電気的に接続されてなる両端に電極部を有する、入力側の第1のコンデンサ及び出力側の第2のコンデンサと、
前記多層配線板の主面上において前記第2のコンデンサと電気的に直列に接続されてなる両端に電極部を有する、出力側のインダクタとを具え、
前記第1のコンデンサにおける一方の電極部は入力部を構成するとともに、前記インダクタの一方の電極部は出力部を構成し、
前記入力部と前記インダクタとの間には、前記第1のコンデンサにおける他方の電極部又は前記第2のコンデンサにおける電極部の一方が位置し、前記第1のコンデンサにおける他方の電極部又は前記第2のコンデンサにおける電極部の一方は電気的にグランドに設定されていることを特徴とする、電圧変換モジュールに関する。
【0012】
一般に、電圧変換モジュールにおいては、インダクタにおいて大電流が流れるので、このインダクタからは大きな磁界が発生するようになる。したがって、電圧変換モジュールにおいて、その入力部をインダクタに近接して設置すると、電圧変換モジュールに入力させた入力電圧には、上記磁界に基づく高周波電流がノイズとして重畳されるようになるので、結果として出力電圧が安定しなくなる。
【0013】
一方、本発明の電圧変換モジュールによれば、電圧変換用ICを内蔵させた多層配線板上において、電圧変換用ICに対して入力側に位置する第1のコンデンサ、並びに出力側に位置する第2のコンデンサ及びインダクタを、第1のコンデンサに設置された入力部と、この入力部に対する出力部を有するインダクタとの間に、第1のコンデンサの入力部を構成しない一方の電極部を配置し、その電位をグランド電位にするようにしている。また、第2のコンデンサにおける電極部の一方を配置し、その電位をグランド電位にするようにしている。
【0014】
すなわち、電圧変換モジュールの入力部とインダクタとの間において、常にグランド電位の電極部を配置するようにしている。したがって、インダクタで発生した磁界に基づく高周波電流が電極部に流れるようになるので、磁界に基づく高周波電流が入力部における入力電圧に対してノイズとして重畳するのを十分に抑制することができるようになる。結果として、インダクタに設けられた出力部より安定した出力電圧を得ることができるようになる。
【0015】
なお、上述した説明から明らかなように、本発明の電圧変換モジュールは、インダクタにおいては大電流が流れ、このインダクタからは大きな磁界が発生するようになり、電圧変換モジュールにおいて、その入力部をインダクタに近接して設置すると、電圧変換モジュールに入力させた入力電圧には上記磁界に基づく高周波電流がノイズとして重畳され、結果として出力電圧が安定しなくなる、という事実の発見に基づいてなされたものである。
【0016】
したがって、本発明は、上述した電圧変換モジュールの具体的な構成の他、上述した事実の発見をも含むものである。
【0017】
また、本発明においては、電圧変換用ICを、電圧変換モジュールを構成する多層配線板中に内蔵させるようにしているので、当該多層配線板、すなわち電圧変換モジュールを小型化することができる。なお、上述したコンデンサやインダクタは、その大きさが比較的大きく、これを多層配線板中に内蔵させてしまうと逆に多層配線板を大型化し、電圧変換モジュールを大型化してしまう。
【0018】
本発明の一例においては、第1のコンデンサ、第2のコンデンサ及びインダクタは、多層配線板上において、それぞれの両端に位置する前記電極部間で規定される長さ方向において互いに平行となるように並列に配置され、入力部とインダクタとの間には、第2のコンデンサにおける前記電極部の一方が位置し、この電極部の一方が電気的にグランドに設定されるようにすることができる。
【0019】
また、本発明の他の例では、第1のコンデンサの入力部を構成する前記一方の電極は、第2のコンデンサの、電気的にグランドに設定された電極部の一方と相対向するようにすることができる。この場合、電圧変換モジュールの入力部と出力部とを最も離隔して配置することができるので、入力部における入力電圧(による電場及び磁場)と出力部における出力電圧(による電場及び磁場)との干渉を抑制することができ、これによって、出力部からの出力電圧をより安定化させることができる。
【0020】
さらに、本発明のその他の例では、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサは、多層配線板上において、それぞれの両端に位置する電極部間で規定される長さ方向において互いに平行となるように並列に配置されるとともに、インダクタの、両端に位置する電極部間で規定される長さ方向に対して垂直となるように配置され、入力部とインダクタとの間には、第1のコンデンサにおける電極部の他方が位置し、この他方の電極部が電気的にグランドに設定されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、電圧変換用ICを内蔵させた多層配線板上に、入力側コンデンサ、並びに出力側コンデンサ及びインダクタを配列してなる電圧変換モジュールにおいて、入力側コンデンサ、並びに出力側コンデンサ及びインダクタの配列状態を最適化し、入力電圧に重畳されるノイズを低減して、安定した出力電圧を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態の電圧変換モジュールを示す一部断面構成図である。
【図2】図1に示す電圧変換モジュールの上平面図である。
【図3】第2の実施形態の電圧変換モジュールを示す上平面図である。
【図4】第3の実施形態の電圧変換モジュールを示す一部断面構成図である。
【図5】図4に示す電圧変換モジュールの上平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的特徴について、発明を実施するための形態に基づいて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の電圧変換モジュールを示す一部断面構成図であり、図2は、図1に示す電圧変換モジュールの上平面図である。図1及び図2から明らかなように、図1においては、電圧変換モジュールの多層配線板の部分についてのみ断面で示している。
【0025】
図1に示す電圧変換モジュール10は、下側から順に第1の配線パターン111、第2の配線パターン112、第3の配線パターン113、第4の配線パターン114、第5の配線パターン115、第6の配線パターン116、及び第7の配線パターン117を有している。
【0026】
また、第1の配線パターン111から第7の配線パターン117における隣接する配線パターン間には、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126がそれぞれ介在している。
【0027】
具体的には、第1の配線パターン111及び第2の配線パターン112間には第1の絶縁部材121が存在し、第2の配線パターン112及び第3の配線パターン113間には第2の絶縁部材122が存在し、第3の配線パターン113及び第4の配線パターン114間には第3の絶縁部材123が存在している。さらに、第4の配線パターン114及び第5の配線パターン115間には第4の絶縁部材124が存在し、第5の配線パターン115及び第6の配線パターン116間には第5の絶縁部材125が存在し、第6の配線パターン116及び第7の配線パターン117間には第6の絶縁部材126が存在している。
【0028】
さらに、第1の配線パターン111から第7の配線パターン117における隣接する配線パターン間は、第1の層間接続体131から第6の層間接続体136によって互いに電気的に接続されている。
【0029】
第1の配線パターン111から第7の配線パターン117、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126、及び第1の層間接続体131から第6の層間接続体136は、多層配線板を構成する。
【0030】
なお、第1の配線パターン111上には、この配線パターン111の一部が露出するようにしてレジスト層191が形成されており、第7の配線パターン117上には、この配線パターン117の一部が露出するようにしてレジスト層192が形成されている。
【0031】
図1においては、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126を識別可能として記載しているが、実際には互いに融着しているので、これら絶縁部材の識別は困難である。本実施形態では、本発明の特徴を明確にすべく、便宜上、これら絶縁部材を識別可能として記載している。
【0032】
また、図1に示す電圧変換モジュール10、すなわちこれを構成する多層配線板は、本実施形態では7層としているが、必要に応じて任意の数とすることができる。
【0033】
図1に示す電圧変換モジュール10においては、第2の配線パターン112が部品実装配線層として機能し、この配線パターン112上に電圧変換用IC15がはんだボール15Aを介して電気的及び機械的に接続、実装されている。
【0034】
なお、本実施形態では、電圧変換用IC15を第2の配線パターン112上に実装しているが、第1の配線パターン111〜第7の配線パターン117のいずれに実装してもよい。また、電圧変換用IC15を上下反転させて所定の配線パターンに実装するようにすることもできる。
【0035】
また、第7の配線パターン117も部品実装配線層として機能し、この第7の配線パターン117上、すなわち上記多層配線板の主面上には、第1のコンデンサ16、第2のコンデンサ17及びインダクタ18が互いに隣接するようにして実装されている。この際、第1のコンデンサ16の両端に位置する電極部161,162間で規定される長さ方向、第2のコンデンサ17の両端に位置する電極部171,172間で規定される長さ方向、インダクタ18の両端に位置する電極部181,182間で規定される長さ方向が、互いに平行となるように並列配置される。
【0036】
第1のコンデンサ16は、本実施形態の電圧変換モジュール10において、電圧変換用IC15に対して入力側に位置する。第2のコンデンサ17及びインダクタ18は、電圧変換用IC15に対して出力側に位置する。
【0037】
第1のコンデンサ16の電極部162は、図1に示す電圧変換モジュール10における入力部を構成し、電極部161の電位はグランドに設定されている。また、第1のコンデンサ16の入力部を構成する電極部162と対向する第2のコンデンサ17の電極部172はグランドに設定されている。さらに、インダクタ18の電極部181は、電圧変換モジュール10における出力部を構成している。
【0038】
なお、第2のコンデンサ17の電極部171とインダクタ18の出力部を構成する電極部181とは、電気的良導体、例えばAu,Ag,Cuなどからなる配線パターン19によって電気的に接続されている。
【0039】
また、第1のコンデンサ16及びインダクタ18は、第7の配線パターン117と図示しないはんだ材などを介して電気的に接続されている。
【0040】
さらに、電圧変換用IC15は、第2の配線パターン112及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111、及び第3の配線パターン113〜第7の配線パターン117と電気的に接続されている。また、第1のコンデンサ16及びインダクタ18は、第7の配線パターン117及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111〜第6の配線パターン116と電気的に接続されている。
【0041】
したがって、電圧変換用IC15は、第1のコンデンサ16及びインダクタ18とも電気的に接続されることになり、図1に示す電圧変換モジュール10は、電圧変換素子として機能するようになる。
【0042】
電圧変換モジュール10においては、インダクタ18において大電流が流れるので、このインダクタ18からは大きな磁界が発生するようになる。したがって、電圧変換モジュール10において、第1のコンデンサ16の電極部162からなる入力部をインダクタ18に近接して設置すると、電圧変換モジュール10に入力させた入力電圧には、上記磁界に基づく高周波電流がノイズとして重畳され、結果として、インダクタ18の電極部181から構成される出力部からの出力電圧が安定しなくなる。
【0043】
しかしながら、本実施形態の電圧変換モジュール10によれば、電圧変換用IC15を内蔵させた多層配線板上において、電圧変換用IC15に対して入力側に位置する第1のコンデンサ16、並びに出力側に位置する第2のコンデンサ17及びインダクタ18を、第1のコンデンサ16に設置された入力部(電極部162)と、この入力部に対する出力部(電極部181)を有するインダクタ18との間に、第2のコンデンサ17におけるグランド電位の電極部172を配置するようにしている。
【0044】
すなわち、電圧変換モジュール10の入力部とインダクタ18との間において、常にグランド電位の電極部172を配置するようにしている。したがって、インダクタ18で発生した磁界に基づく高周波電流がグランド電位の電極部172に流れるようになるので、磁界に基づく高周波電流が入力部における入力電圧に対してノイズとして重畳するのを十分に抑制することができるようになる。結果として、インダクタ18に設けられた出力部(電極部181)より安定した出力電圧を得ることができるようになる。
【0045】
また、本実施形態の電圧変換モジュール10においては、第1のコンデンサ16の入力部を構成する電極部162を、第2のコンデンサ17のグランド電位の電極部172と対向するようにして配置している。この場合、電圧変換モジュール10において、入力部及び出力部が最も離隔して配置されるようになるので、入力部における入力電圧(による電場及び磁場)と出力部における出力電圧(による電場及び磁場)との干渉を抑制することができ、これによって、出力部からの出力電圧をより安定化させることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、第2のコンデンサ17とインダクタ18とを配線層19で電気的に接続しているが、多層配線板内に形成された配線パターン及び層間接続体を介して接続することもできる。
【0047】
第1のコンデンサ16の容量は、入力電圧安定化の観点から、例えば2μF以上とすることができ、コストや大きさから10μF以下とすることが好ましい。
【0048】
一方、第2のコンデンサ17は、インダクタ18と共に、電圧変換用IC15、すなわち電子変換モジュール10からの出力電圧を安定化させるという観点から、その容量は4μF以上が好ましく、コストや大きさから10μF以下であることが好ましい。
【0049】
なお、多層配線板の最下層、すなわち上記主面と相対向する裏面上に位置する配線パターン、すなわち第1の配線パターン111は端子層として機能させることができる。これによって、図1に示す電圧変換モジュール10を外部回路や外部機器と簡易に接続することができ、これら外部回路や外部機器に対して電圧変換機能を付加せしめることができる。
【0050】
本実施形態の電圧変換モジュール10は、多層配線板を、Bit(ビースクエアイット)等を用いた汎用の部品内蔵配線板の手法に基づいて製造した後、得られた多層配線板の最上層に位置する配線パターンと電気的に接続するようにして、第1のコンデンサ16、第2のコンデンサ17、及びインダクタ18を実装することによって得ることができる。
【0051】
また、本実施形態においては、電圧変換用IC15を、電圧変換モジュール10を構成する多層配線板中に内蔵させるようにしているので、当該多層配線板、すなわち電圧変換モジュール10を小型化することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
図3は、本実施形態の電圧変換モジュールの一例を示す上平面図である。なお、第1の実施形態に関する図1及び図2に示す構成要素と同一あるいは類似の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いて表している。
【0053】
図3に示すように、本実施形態の電圧変換モジュール20は、電圧変換用IC15が、多層配線板内において、この多層配線板上に実装された第1のコンデンサ16の直下に位置するようにしている。この場合、電圧変換用IC15と第1のコンデンサ16とを接続する配線の長さを短くすることができるので、前記配線のインダクタンス値や抵抗値を低減することができ、電圧変換用IC15の雑音除去をより効果的に行うことができる。
【0054】
なお、その他の特徴及び構成については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
但し、第1の実施形態と同じように、電圧変換用IC15を内蔵させた多層配線板上において、電圧変換用IC15に対して入力側に位置する第1のコンデンサ16、並びに出力側に位置する第2のコンデンサ17及びインダクタ18を、第1のコンデンサ16に設置された入力部(電極部162)と、この入力部に対する出力部(電極部181)を有するインダクタ18との間に、第2のコンデンサ17におけるグランド電位の電極部172を配置するようにしている。
【0056】
したがって、インダクタ18で発生した磁界に基づく高周波電流がグランド電位の電極部172に流れるようになり、高周波電流が入力部における入力電圧に対してノイズとして重畳するのを十分に抑制することができるようになって、インダクタ18に設けられた出力部(電極部181)より安定した出力電圧を得ることができるという本来的な作用効果を奏するようになる。
【0057】
また、電圧変換用IC15を、電圧変換モジュール10を構成する多層配線板中に内蔵させるようにしているので、当該多層配線板、すなわち電圧変換モジュール10を小型化することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
図4は、本実施形態の電圧変換モジュールの一例を示す一部断面構成図であり、図5は、図4に示す電圧変換モジュールの上平面図である。図4及び図5から明らかなように、図4においては、電圧変換モジュールの多層配線板の部分についてのみ断面で示している。なお、第1の実施形態に関する図1及び図2に示す構成要素と同一あるいは類似の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いて表している。
【0059】
図4に示す電圧変換モジュール30は、図1に示す電圧変換モジュール10と同様に、下側から順に第1の配線パターン111、第2の配線パターン112、第3の配線パターン113、第4の配線パターン114、第5の配線パターン115、第6の配線パターン116、及び第7の配線パターン117を有している。また、第1の配線パターン111から第7の配線パターン117における隣接する配線パターン間には、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126がそれぞれ介在している。
【0060】
第1の配線パターン111から第7の配線パターン117における隣接する配線パターン間は、第1の層間接続体131から第6の層間接続体136によって互いに電気的に接続されている。したがって、第1の配線パターン111から第7の配線パターン117、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126、及び第1の層間接続体131から第6の層間接続体136は、多層配線板を構成する。
【0061】
なお、第1の配線パターン111上には、この配線パターン111が露出するようにしてレジスト層191が形成されており、第7の配線パターン117上には、この配線パターン117が露出するようにしてレジスト層192が形成されている。
【0062】
また、図1に示す電圧変換モジュール10と同様に、第2の配線パターン112が部品実装配線層として機能し、この配線パターン112上に電圧変換用IC15がはんだボール15Aを介して電気的及び機械的に接続、実装されている。
【0063】
なお、本実施形態では、電圧変換用IC15を第2の配線パターン112上に実装しているが、第1の配線パターン111〜第7の配線パターン117のいずれに実装してもよい。また、電圧変換用IC15を上下反転させて所定の配線パターンに実装するようにすることもできる。
【0064】
また、第7の配線パターン117も部品実装配線層として機能し、この第7の配線パターン117上、すなわち上記多層配線板の主面上には、第1のコンデンサ16、第2のコンデンサ17及びインダクタ18が互いに隣接するようにして実装されている。この際、第1のコンデンサ16の両端に位置する電極部161,162間で規定される長さ方向及び第2のコンデンサ17の両端に位置する電極部171,172間で規定される長さ方向は、互いに平行となるように並列に配置されるとともに、インダクタ18の、両端に位置する電極部181,182間で規定される長さ方向に対して垂直となるように配置される。
【0065】
第1のコンデンサ16は、本実施形態の電圧変換モジュール30において、電圧変換用IC15に対して入力側に位置する。第2のコンデンサ17及びインダクタ18は、電圧変換用IC15に対して出力側に位置する。
【0066】
第1のコンデンサ16の電極部162は、図5に示す電圧変換モジュール30における入力部を構成し、電極部161の電位はグランドに設定されている。また、第1のコンデンサ16の入力部を構成する電極部162と対向する第2のコンデンサ17の電極部172はグランドに設定されている。さらに、インダクタ18の電極部181は、電圧変換モジュール30における出力部を構成している。
【0067】
なお、第2のコンデンサ17の電極部171とインダクタ18の出力部を構成する電極部181とは、電気的良導体、例えばAu,Ag, Cuなどからなる配線パターン19によって電気的に接続されている。
【0068】
また、第1のコンデンサ16及びインダクタ18は、第7の配線パターン117と図示しないはんだ材などを介して電気的に接続されている。
【0069】
さらに、電圧変換用IC15は、第2の配線パターン112及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111、及び第3の配線パターン113〜第7の配線パターン117と電気的に接続されている。また、第1のコンデンサ16及びインダクタ18は、第7の配線パターン117及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111〜第6の配線パターン116と電気的に接続されている。
【0070】
したがって、電圧変換用IC15は、第1のコンデンサ16及びインダクタ18とも電気的に接続されることになり、図5に示す電圧変換モジュール30は、電圧変換素子として機能するようになる。
【0071】
電圧変換モジュール30においては、インダクタ18において大電流が流れるので、このインダクタ18からは大きな磁界が発生するようになる。したがって、電圧変換モジュール30において、第1のコンデンサ16の電極部162からなる入力部をインダクタ18に近接して設置すると、電圧変換モジュール30に入力させた入力電圧には上記磁界に基づく高周波電流が重畳され、結果として、インダクタ18の電極部181から構成される出力部からの出力電圧が安定しなくなる。
【0072】
しかしながら、本実施形態の電圧変換モジュール30によれば、電圧変換用IC15を内蔵させた多層配線板上において、電圧変換用IC15に対して入力側に位置する第1のコンデンサ16、並びに出力側に位置する第2のコンデンサ17及びインダクタ18を、第1のコンデンサ16に設置された入力部(電極部162)と、この入力部に対する出力部(電極部181)を有するインダクタ18との間に、第1のコンデンサ16におけるグランド電位の電極部161を配置するようにしている。
【0073】
すなわち、電圧変換モジュール30の入力部とインダクタ18との間において、常にグランド電位の電極部161を配置するようにしている。したがって、インダクタ18で発生した磁界に基づく高周波電流がグランド電位の電極部161に流れるようになるので、磁界に基づく高周波電流が入力部における入力電圧に対してノイズとして重畳するのを十分に抑制することができるようになる。結果として、インダクタ18に設けられた出力部(電極部181)より安定した出力電圧を得ることができるようになる。
【0074】
なお、本実施形態では、第2のコンデンサ17とインダクタ18とを配線層19で電気的に接続しているが、多層配線板内に形成された配線パターン及び層間接続体を介して接続することもできる。
【0075】
なお、その他の特徴及び構成については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10、20、30 電圧変換モジュール
111〜117 配線パターン
121〜126 絶縁部材
131〜136 層間接続体
15 電圧変換用IC
16 第1のコンデンサ
17 第2のコンデンサ
18 インダクタ
19 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して順次に積層されてなる複数の配線パターン、これら複数の配線パターン間それぞれに位置する絶縁部材、及び前記複数の配線パターン間を電気的に接続する層間接続体を有する多層配線板と、
前記複数の配線パターンの、内側に位置する配線パターンの一つに実装された電圧変換を行うための電圧変換用ICと、
前記多層配線板の主面上において実装され、前記複数の配線パターン及び前記層間接続体を介して、前記電圧変換用ICと電気的に接続されてなる両端に電極部を有する、入力側の第1のコンデンサ及び出力側の第2のコンデンサと、
前記多層配線板の主面上において前記第2のコンデンサと電気的に直列に接続されてなる両端に電極部を有する、出力側のインダクタとを具え、
前記第1のコンデンサにおける一方の電極部は入力部を構成するとともに、前記インダクタの一方の電極部は出力部を構成し、
前記入力部と前記インダクタとの間には、前記第1のコンデンサにおける他方の電極部又は前記第2のコンデンサにおける電極部の一方が位置し、前記第1のコンデンサにおける他方の電極部又は前記第2のコンデンサにおける電極部の一方は電気的にグランドに設定されていることを特徴とする、電圧変換モジュール。
【請求項2】
前記第1のコンデンサ、前記第2のコンデンサ及び前記インダクタは、前記多層配線板上において、それぞれの両端に位置する前記電極部間で規定される長さ方向において互いに平行となるように並列に配置され、前記入力部と前記インダクタとの間には、前記第2のコンデンサにおける前記電極部の一方が位置し、この電極部の一方が電気的にグランドに設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の電圧変換モジュール。
【請求項3】
前記第1のコンデンサの前記入力部を構成する前記一方の電極は、前記第2のコンデンサの、電気的にグランドに設定された前記電極部の一方と相対向することを特徴とする、請求項2に記載の電圧変換モジュール。
【請求項4】
前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサは、前記多層配線板上において、それぞれの両端に位置する前記電極部間で規定される長さ方向において互いに平行となるように並列に配置されるとともに、前記インダクタの、両端に位置する前記電極部間で規定される長さ方向に対して垂直となるように配置され、
前記入力部と前記インダクタとの間には、前記第1のコンデンサにおける前記電極部の他方が位置し、この他方の電極部が電気的にグランドに設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の電圧変換モジュール。
【請求項5】
前記電圧変換用ICは、前記第1のコンデンサの直下に位置することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の電圧変換モジュール。
【請求項6】
前記第1のコンデンサの容量は2μF以上であり、前記第1のコンデンサは前記電圧変換用ICの入力電圧安定化用のコンデンサとして機能することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の電圧変換モジュール。
【請求項7】
前記第2のコンデンサの容量は4μF以上であり、前記第2のコンデンサは前記電圧変換用ICの出力電圧安定化用のコンデンサとして機能することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の電圧変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−94816(P2012−94816A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168463(P2011−168463)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】