説明

電圧変換回路およびその電圧変換回路を備える電圧変換システム

【課題】本発明は、電圧変換回路による出力電圧の安定性を向上させる。
【解決手段】本発明の電圧変換回路10,10aは、直流電源に一方の端子が相互に並列に接続されているN個のリアクトル35,35a,35bと、N個のリアクトル35,35a,35bの他方の端子に接続されている少なくとも1つのスイッチング素子と、を有する第1回路と、負荷に一方の端子が接続されている少なくとも1つの整流素子を有し、少なくとも1つの整流素子に接続されている少なくとも1つのスイッチング素子を第1回路と共有する第2回路と、を備え、第1回路は、少なくとも1つのスイッチング素子の通電時においては、直流電源からN個のリアクトル35,35a,35bに充電するように接続され、第2回路は、少なくとも1つのスイッチング素子の非通電時においては、N個のリアクトル35,35a,35bから負荷に放電するように接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換回路およびその電圧変換回路を備える電源システムに関し、特に電池から供給される直流電力の電圧を変換して電動車両の駆動に使用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両の電源装置として、電池のような直流電源の電圧をリアクトルとコンデンサとスイッチング素子とダイオードとを有する昇圧回路で昇圧して電動車両の駆動部に電池電圧以上の高電圧を供給する電源装置が広く使用されている。昇圧回路は、リアクトルとコンデンサとを有するので共振周波数を有している。一方、電動車両の駆動部は、昇圧された高電圧をインバータの直流電源とし、インバータで三相交流に変換して交流モータに
電力を供給している。交流モータは、たとえば計測系(電流センサや回転角センサ)の誤差に起因して周期的な電圧変動をインバータの直流電源電圧に生じさせることが知られている(特許文献1)。駆動部の周期的な電圧変動が昇圧回路の共振周波数と一致すると、昇圧回路のスイッチング素子に過大な電圧が印加されてスイッチング素子を破壊させるおそれがある。特許文献1の技術では、駆動部の電圧変動の周波数が昇圧回路の共振周波数に近づいたときに、電圧指令値を低下させてスイッチング素子の破壊を防ぐ方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−268626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、駆動部の電圧変動の周波数が昇圧回路の共振周波数に近づいたときにインバータ電源電圧を低下させるため、限定的ながらも車両駆動力の低下が避けられないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の従来の課題を解決するために創作されたものであり、従来の構成では電圧変換回路と交流モータとが共振するような動作領域においてもインバータの直流電源電圧の安定性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0007】
請求項1の電圧変換回路は、直流電源から供給される直流電力の電圧を変換して負荷に供給する回路である。本電圧変換回路は、前記直流電源に一方の端子が相互に並列に接続されているN個(Nは2以上の整数)のリアクトルと、前記N個のリアクトルの他方の端子に接続されている少なくとも1つのスイッチング素子と、を有する第1回路と、前記負荷に一方の端子が接続されている少なくとも1つの整流素子を有し、前記少なくとも1つの整流素子の他方の端子に接続されている前記少なくとも1つのスイッチング素子を前記第1回路と共有する第2回路と、を備え、前記第1回路は、前記少なくとも1つのスイッチング素子の通電時においては、前記直流電源から前記N個のリアクトルに充電するように接続され、前記第2回路は、前記少なくとも1つのスイッチング素子の非通電時においては、前記N個のリアクトルから前記負荷に放電するように接続されている。
【0008】
上記発明によれば、出力電力を維持しつつリアクトルの合成インダクタンスを小さくすることができるので、共振周波数fLCを高くして負荷の電圧変動の周波数から電圧変換回路の共振周波数を外すとともに減衰比を大きくすることができる。これにより、負荷の電圧変動に起因する電圧変換回路の共振現象を抑制することができる。
【0009】
なお、本電圧変換回路では、スイッチング素子の通電時においては直流電源からリアクトルに充電するように接続される充電回路(第1回路)と、スイッチング素子の非通電時においてはリアクトルから負荷に放電するように接続されている放電回路(第2回路)と、が構成される方向に各要素の極性同士が接続されていればよい。
【0010】
請求項2の発明では、前記少なくとも1つのスイッチング素子は、N個のスイッチング素子を含み、前記少なくとも1つの整流素子は、N個の整流素子を含み、前記第1回路は、前記N個のスイッチング素子の各々の通電時においては、前記直流電源から前記N個のスイッチング素子の各々に接続されている各リアクトルに電力を供給するように接続され、前記第2回路は、前記N個のスイッチング素子の非通電時においては、前記N個のスイッチング素子の各々に接続されている各リアクトルから前記負荷に電力を供給するように接続されている。
【0011】
上記発明によれば、各リアクトルを独立して駆動することができる。これにより、たとえばN個のリアクトルに相互に位相をシフトさせて電力を供給させることができるので、各電圧変換ユニットのピーク電流のタイミングをずらすことによって出力電力のリップルを小さくすることができる。これにより、平滑コンデンサのリップルに関する仕様の緩和やリアクトルや平滑コンデンサおよび直流電源から発せられる磁気騒音の低減を実現することができる。さらに、出力電力が小さいときには、一部のリアクトルの充放電を停止させて低出力時の効率低下を回避するといった運用もできる。
【0012】
請求項3の電圧変換回路は、直流電源から供給される直流電力の電圧を変換して負荷に供給する回路である。本電圧変換回路は、前記直流電源と前記負荷との間において、相互に並列に接続されているN個(Nは2以上の整数)の電圧変換ユニットを備え、前記電圧変換ユニットは、前記直流電源に一方の端子が接続されているリアクトルと、前記リアクトルの他方の端子に接続されているスイッチング素子と、を有する第1回路と、前記負荷に一方の端子が接続されている整流素子を有し、前記整流素子の他方の端子に接続されている前記スイッチング素子を前記第1回路と共有する第2回路と、を備え、前記第1回路は、前記スイッチング素子の通電時においては、前記直流電源から前記リアクトルに充電するように接続され、前記第2回路は、前記スイッチング素子の非通電時においては、前記リアクトルから前記負荷に放電するように接続されている。
上記発明によれば、たとえば予め準備されている最小限素子としての電圧変換ユニットを組み合わせることによって簡易に電圧変換回路を設計することができる。これにより、電流容量の変化、特に電流容量の増大に伴ってリアクトルの新規開発の必要性を抑制することができる。電流容量の増大は、リアクトルの新規開発において特に熱設計が問題となる。
【0013】
リアクトルの熱設計では、熱発生の原因である銅損を小さくするためにコイルの線形を太くするという設計自由度と、放熱効果を高めるために表面積を大きくするという設計自由度とが一般的に利用される。しかしながら、リアクトルの設計においては、いずれの設計自由度を利用しても非線形に(急激に)体積が増大する領域が存在し、電源装置50の出力の増大のネックとなることが本発明者によって見出された。このように、電圧変換回路の高出力かに伴うリアクトルの過大な体積増大を回避することができる。
【0014】
請求項4の電圧変換回路は、直流電源に一方の端子が相互に並列に接続されているN個(Nは2以上の整数)のリアクトルと、前記N個のリアクトルの他方の端子に1つずつを接続されているスイッチング素子と、前記スイッチング素子の1つずつに並列に接続されている整流素子を有する第1回路と、前記負荷に一方の端子が接続されているN個の整流素子を有し、前記N個の整流素子の他方の端子の1つずつに接続されているスイッチング素子を前記第1回路と共有し、前記N個の整流素子の1つずつにスイッチング素子を有する第2回路と、を備え、前記第1回路のスイッチング素子と前記第2回路のスイッチング素子との間には同時通電を防止するためのデッドタイムが設定され、前記第1回路に備えた前記スイッチング素子の通電時においては、前記第2回路の前記スイッチング素子は非通電状態にあり、前記第1回路に備えた前記スイッチング素子の非通電時においては、前記第2回路の前記スイッチング素子は通電状態にあり、前記直流電源から前記負荷への電力供給と、前記負荷から前記直流電源への電力供給の双方を兼ね備えている。
【0015】
上記発明によれば、負荷が電力を消費する際には、直流電源の電力を負荷へと供給し、負荷が電力を発生する際には、負荷の発電電力を直流電源へと供給する機能を備えるとともに、各リアクトルを独立して駆動することができる。これにより、たとえばN個のリアクトルに相互に位相をシフトさせて電力を供給させることができるので、各電圧変換ユニットのピーク電流のタイミングをずらすことによって出力電力のリップルを小さくすることができる。これにより、平滑コンデンサのリップルに関する仕様の緩和やリアクトルや平滑コンデンサおよび直流電源から発せられる磁気騒音の低減を実現することができる。さらに、出力電力が小さいときには、一部のリアクトルの充放電を停止させて低出力時の効率低下を回避するといった運用もできる。
【0016】
請求項5の電圧変換回路は、直流電源と負荷との間において、相互に並列に接続されているN個(Nは2以上の整数)の電圧変換ユニットを備え、前記電圧変換ユニットは、前記直流電源に一方の端子が接続されているリアクトルと、前記リアクトルの他方の端子に接続されているスイッチング素子と、スイッチング素子と並列に接続されている整流素子と、を有する第1回路と、前記負荷に一方の端子が接続されている整流素子を有し、前記整流素子の他方の端子に接続されている前記スイッチング素子を前記第1回路と共有し、共有するスイッチング素子と並列に接続されている整流素子を佑する第2回路と、を備え、前記第1回路に備えるスイッチング素子と前記第2回路に備えるスイッチング素子にはデッドタイムが設けられ、前記第1回路に備えるスイッチング素子の通電時においては、前記第2回路に備える前記のスイッチング素子は非通電状態にあり、前記第1回路に備えるスイッチング素子の非通電時においては、前記第2回路に備える前記のスイッチング素子は通電状態にあり、前記直流電源から前記負荷への電力供給と、前記負荷から前記直流電源への電力供給の双方を兼ね備えた電圧変換回路である。
上記発明によれば、たとえば予め準備されている最小限素子としての電圧変換ユニットを組み合わせることによって簡易に電圧変換回路を設計することができる。また、電圧変換ユニットが直流電源から負荷への電力供給と負荷から直流電源への電力供給の双方向に対応している。これにより、電流容量の変化および電流方向の変化、特に電流容量の増大に伴ってリアクトルの新規開発の必要性を抑制することができる。電流容量の増大は、リアクトルの新規開発において特に熱設計が問題となる。
【0017】
請求項6の電圧変換回路は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の電圧変換回路と、前記電圧変換回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記N個のスイッチング素子を相互に相違する位相で駆動することを特徴とする電圧変換システムである。
【0018】
上記発明によれば、N個のリアクトルに相互に位相をシフトさせて電力を供給させることができるので、各リアクトルに流れるピーク電流のタイミングをずらすことによって、直流電源や平滑コンデンサに流れる合成されたリップルを小さくすることができる。これにより、平滑コンデンサのリップルに関する仕様の緩和やリアクトルや平滑コンデンサおよび直流電源から発せられる磁気騒音の低減を実現することができる。
【0019】
請求項7の電圧変換システムは、請求項6に記載の電圧変換回路の負荷が車載主機としての交流電動機と前記交流電動機を駆動するための直流交流変換回路を備える交流電動機システムであることを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、電圧変換回路が扱う電力が大きい電気自動車やハイブリッド自動車に対して、搭載性や構成部品の標準化等、好適に適用することができる。
【0021】
請求項8の電圧変換システムは、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電圧変換回路および電圧変換システムを構成するスイッチング素子のスイッチング周波数が、前記リアクトルの並列数を乗じた際に、可聴周波数帯域を超える周波数となることを特徴とする。
【0022】
上記発明によれば、電圧変換回路の中で扱う電力が最も大きい直流電源に流れる電流のリップル周波数を可聴周波数帯域を超える周波数に高くできるので、直流電源から発せられる磁気騒音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態における電源装置50の構成を示すシステム構成図。
【図2】モータジェネレータの動作領域を示す図。
【図3】電圧変換ユニット30による昇圧機能を説明するための概念図。
【図4】電圧変換ユニット30の作動内容を示すタイムチャート。
【図5】電圧変換回路10の共振特性を表す計算式。
【図6】比較例における出力増大の仕様変更の例を示す説明図。
【図7】実施形態における出力増大の仕様変更の例を示す説明図。
【図8】電圧変換回路10aを制御対象とする制御ブロック図。
【図9】電圧変換回路10aの制御内容を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる車両の駆動装置に電力を供給する電源装置50に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、実施形態における電源装置50の構成を示すシステム構成図である。
【0026】
電源装置50は、車両の駆動装置(後述する3相交流モータシステム)である負荷LMに直流電力を供給する装置である。電源装置50は、直流電池VBと電圧変換回路10と制御部20とを備えている。電圧変換回路10は、直流電池VBから供給される直流電力を昇圧して負荷LMに供給する昇圧機能と、負荷LMで生成された回生電力を直流電池VBに降圧して充電する降圧機能と、を有している。直流電池VBは、本実施形態では、内部抵抗RBを有するリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は、たとえばニッケル水素2次電池と直流電源電圧を等しくした場合に、内部抵抗がニッケル水素2次電池の約「1/2」程度まで小さくなる特徴がある。なお、電圧変換回路10及び制御部20の組合せは、電圧変換システムとも呼ばれる。直流電池VBは直流電源とも呼ばれる。
【0027】
電圧変換回路10は、直流電池VBに接続されるための入力側端子T1,T2と、負荷LMに接続されるための出力側端子T3,T4と、平滑コンデンサC1と、フィルタコンデンサC2と、同一の構成を有する2個の電圧変換ユニット30,30aとを備えている。直流電池VBは、その正極と負極とがそれぞれ入力側端子T1と入力側端子T2とに接続されている。負荷LMは、その正極と負極とがそれぞれ出力側端子T3と出力側端子T4とに接続されている。2個の電圧変換ユニット30,30aは、直流電池VBと負荷LMとに対して相互に並列に接続されている。
【0028】
制御部20は、司令部23と、電圧変換ユニット30を駆動する駆動回路21と、電圧変換ユニット30aを駆動する駆動回路22と、出力側端子T3,T4の電位差VHを計測する電圧センサ34とを備えている。司令部23は、2個の駆動回路21,22にPWM信号を出力する。司令部23は、電圧センサ34による出力側端子T3,T4の電位差の計測値に応じてフィードバック制御を実行する。
【0029】
フィルタコンデンサC2は、入力側端子T1と入力側端子T2との間に接続され、直流電池VBに対して並列に接続されている。フィルタコンデンサC2は、電圧変換回路10の入力電圧を平滑化する役割を果たす。一方、平滑コンデンサC1は、出力側端子T3と出力側端子T4との間に接続され、負荷LMに対して並列に接続されている。平滑コンデンサC1は、電圧変換ユニット30の出力電圧のリップル電圧を平滑化する機能と、出力電力用バッファとしての機能とを有している。
【0030】
電圧変換ユニット30は、スイッチング機能を有する2個のスイッチング素子S1,S2と、整流機能を有する2個のダイオードD1,D2と、電気エネルギの蓄積機能と放出機能とを有するリアクトル35とを備えている。スイッチング素子S1,S2は、本実施形態では、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が使用されているが、他の素子を使用するようにしても良い。リアクトル35は、たとえば通電により磁束を発生する筒状のコイル(図示せず)と、そのコイルを覆う磁性粉末混合樹脂からなるコア(図示せず)と、を有する構成として利用可能である。2個のダイオードD1,D2は整流素子とも呼ばれる。
【0031】
電圧変換ユニット30の各素子は以下のように接続されている。リアクトル35の一端は、スイッチング素子S1のエミッタと、スイッチング素子S2のコレクタと、ダイオードD1のアノードと、ダイオードD2のカソードとに接続されている。スイッチング素子S1のコレクタには、ダイオードD1のカソードが接続されている。スイッチング素子S2のエミッタには、ダイオードD2のアノードが接続されている。電圧変換ユニット30aは、同様に接続されている2個のスイッチング素子S1a,S2aと、2個のダイオードD1a,D2aとを備えている。
【0032】
電圧変換ユニット30は、以下のように各入出力端子T1〜T4に接続されている。電圧変換ユニット30は、リアクトル35の他端で入力側端子T1に接続され、スイッチング素子S2のエミッタとダイオードD2のアノードとで入力側端子T2(出力側端子T4)に接続されている。一方、電圧変換ユニット30は、スイッチング素子S1のコレクタとダイオードD1のカソードとで出力側端子T3に接続され、スイッチング素子S2のエミッタとダイオードD2のアノードとで出力側端子T4(入力側端子T2)に接続されている。入力側端子T2は出力側端子T4に接続されている。
【0033】
一方、電圧変換ユニット30aは、各入出力端子T1〜T4に電圧変換ユニット30に対して並列に接続されている。これにより、2個の電圧変換ユニット30,30aは、相互に独立して駆動することができる。すなわち、電圧変換ユニット30,30aは、相互に相違する位相で駆動することも可能であり、低出力時に一方を停止するような制御も可能である。
【0034】
電圧変換ユニット30は、負荷LMへの電力供給機能(昇圧型コンバータ)を実現するためのスイッチング素子S2及びダイオードD1と、直流電池VBへの回生機能(降圧型コンバータ)を実現するためのスイッチング素子S1とダイオードD2と、を備えている。
【0035】
上記負荷LMは、車載主機としての交流電動機(モータジェネレータMG)と、直流電池VBを電圧変換ユニット30によって昇圧された出力側端子T4とT3間(平滑コンデンサC1)の直流電圧を直流交流変換してモータジェネレータMGを駆動するための直流交流変換回路(インバータINV)から構成される周知の3相交流モータシステムである。なお、モータジェネレータMGには同期機を、インバータINVには6個のスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)により構成される回路を例示し、前記3相交流モータシステムを制御する制御装置については省略している(図示せず)。
【0036】
図2は、モータジェネレータMGおよびインバータINVの駆動について説明するための概念図である。図示したように、モータジェネレータMGは、トルクおよび回転数によって定まる運転領域内をインバータINVにより駆動される。前記運転領域は、比較的低回転の領域では、車両の駆動力仕様によって定まるトルクを上限に一定値として備えることが特徴である。また、図2には、上記比較的低回転の領域におけるインバータINVのスイッチング周波数finを模式的に示している。この領域において、高トルク領域のスイッチング周波数finの値fin1は、低トルク領域のスイッチング周波数finの値fin2よりも低く設定されている。これは、高トルク領域における単位時間当たりのスイッチング損失を低減するための設定である。
【0037】
なお、スイッチング周波数は、図示しない制御装置により定められており、たとえば、インバータINVを構成するスイッチング素子S¥#の操作信号は、モータジェネレータMGに流れる2相または3相のモータ電流を検出し、モータジェネレータMGの磁極位置を検出し、dq制御理論に基づいて、電流指令と前記モータ電流を追従させるというような、周知の電流フィードバック制御により演算された3相交流指令電圧を三角波比較PWM処理することで、キャリア周波数に応じて定まるものとすればよい。
【0038】
図3は、電圧変換ユニット30による昇圧機能を説明するための概念図である。本図では、負荷LMへの電力供給機能を実現するためのスイッチング素子S2及びダイオードD1が図示され、回生機能に使用されるスイッチング素子S1とダイオードD2と駆動回路22とが省略されている。本実施形態では、電力供給機能についてのみ説明する。電力供給機能と同様に本実施形態の効果が得られる回生機能については説明を省略する。なお、実際には、電力供給機能と回生機能とのいずれが発揮されるかは、制御部20によって選択されるものではない。制御部20では、先の図1に示すように、スイッチング素子S1,S2を交互にオン操作する相補駆動をするに過ぎず、これにより、スイッチング素子S2のオン期間にスイッチング素子S2に電流が流れる状況において電力供給機能が発揮される。これに対し、スイッチング素子S1のオン期間にスイッチング素子S1に電流が流れる状況においては回生機能が発揮される。なお、スイッチング素子S1のオン期間とスイッチング素子S2のオン期間との間には、双方がオン状態となることを回避するための周知のデッドタイム期間DTが設けられている。
【0039】
図4は、電圧変換ユニット30の作動内容を示すタイムチャートである。Vpwmは、入力側端子T2と出力側端子T4を基準電位(0ボルト電位)としたときのノードN(図3参照)の電位Vpwmの値を示している。S2は、スイッチング素子S2のオンオフ状態を示している。CTLは、スイッチング素子S2をオンオフ駆動するための指令を駆動回路21に出力する司令部23の作動内容を示している。
【0040】
ノードNの電位Vpwmは、スイッチング素子S2がオンの状態では、ノードNが出力側端子T4(入力側端子T2)に側に短絡されるので0ボルト電位となる。この状態では、直流電池VBの電圧がリアクトル35に印加され、リアクトル35への充電が開始されることになる。この状態において、スイッチング素子S2がオフにされると、リアクトル35は、リアクトル35に充電されたエネルギによって電圧を発生し、直流電池VBの電圧との加算によって高電位VHを発生させることになる。これにより、電流がダイオードD1を通過することができるので、負荷LMに電力が供給されるとともに、平滑コンデンサC1に充電されることになる。
【0041】
司令部23は、スイッチング素子S2を駆動する駆動回路21へのPWM信号(オンオフ指令)を出力する。オンオフ指令は、キャリア信号Scとデューティ指令値Cdとによって生成される。キャリア信号Scは、一定の周期Pcで出力される三角波である。デューティ指令値Cdは、スイッチング素子S2が各周期Pcにおけるスイッチング素子S2がオフの状態の期間Pdの割合を決定するための信号電位である。
【0042】
上記周期Pcは、スイッチング素子S1,S2のスイッチング周波数fcの逆数となる
。ここで、本実施形態では、インバータINVのスイッチング周波数finよりもスイッチング周波数fcを高周波とする。特にモータジェネレータMGの生成トルクが最大となり得る低回転領域におけるスイッチング周波数finの値fin1と比較して、スイッチング周波数fcは、10倍以上の高周波となっている。また、本実施形態では、スイッチング素子S1,S2のスイッチング周波数fcに、電圧変換ユニットの数を乗じた値が、可聴周波数帯域(20Hz〜16kHz)を超えるように設定している。
【0043】
具体的には、低回転領域におけるスイッチング周波数finの値fin1を1kHzに設定し、スイッチング周波数fcを10kHzに設定する。この場合、本実施形態では、2個の電圧変換ユニット30,30aを備えているので、スイッチング周波数fcに2を乗じた周波数は20kHzとなって可聴周波数帯域を超え、平滑コンデンサや直流電池VBには20kHzのリップル電流が流れることになる。これは、各スイッチング素子の単位時間当たりの発熱量を低減しつつも、人に感知される磁気騒音を抑制するための設定である。ちなみに、本実施形態では、スイッチング素子が高圧大電流を扱うため、可聴周波数帯域を超えるスイッチング周波数fcに設定することは、スイッチング素子のチップ面積の拡大やスイッチング素子を冷却する冷却器の大型化に起因するため、車両への適用は現実的ではない。
【0044】
司令部23は、図示しないコンパレータ(比較器)を有し、三角波の電位がデューティ指令値Cdより大きいとき(たとえば時刻t1〜t2、時刻t3〜t4)にスイッチング素子S2をオフとし、三角波の電位がデューティ指令値Cdより小さいとき(たとえば時刻t2〜t3)にスイッチング素子S2をオンとするオンオフ指令を出力する。司令部23は、電位としてのデューティ指令値Cdを上下させることによってデューティ比Dを操作することができる。デューティ比Dは、各周期Pcに対する負荷LMに電力が供給される期間Pd(スイッチング素子S2オフ)の割合を意味し、昇圧比の逆数となる。
【0045】
図5は、電圧変換回路10の共振特性を表す計算式を示している。二つの計算式F1,F2は、スイッチング素子S2をオンとしたときの回路方程式と、スイッチング素子S2をオフとしたときの回路方程式との一対の方程式を、それら一対の状態の継続時間(Pc−Pd),Pdによって加重平均処理することで生成された状態方程式に基づいて導出された計算式である。計算式F1は、電圧変換回路10の共振周波数fLCを算出するための計算式である。計算式F2は、電圧変換回路10の減衰比ζを算出するための計算式である。
【0046】
電圧変換回路10の共振周波数fLCと減衰比ζは、負荷LMの電圧の周期的な変動によって励起される共振現象の発生と密接な関係を有している。すなわち、共振周波数fLCは、負荷LMの電圧の周期的な変動(一次変動)の周波数から十分に離れていることが望まれる。一方、減衰比ζは、十分に大きいことが望まれる。
【0047】
しかしながら、電源装置50の性能向上のためには直流電池VBの内部抵抗RBを小さくすることが望まれているので、一般的に内部抵抗RBの低下に伴って減衰比ζも小さくなる傾向にある。一方、リアクトル35は、電源装置50の出力増大の観点から充放電の機能を高めるために大きくすることが望まれているので、インダクタンスの増大によって共振周波数fLCと減衰比ζとを伴に低下させる傾向にあった。
【0048】
図6(a)(b)は、比較例における出力増大の仕様変更の例を示す説明図である。比較例は、実施形態の特徴を分かり易く説明するための例である。図6(a)(b)は、比較例の2個の電圧変換回路11,11aを示している。これら電圧変換回路11又は11aによって、VB(T1-T2間)の300Vの電圧をT3−T4間において600Vに電圧変換する例を示す。
【0049】
はじめに、電圧変換回路11は、リアクトル35の2倍のインダクタンスLを有するリアクトル41と、4個のダイオードD1,D1a,D2,D2aと、4個のスイッチング素子S1,S1a,S2,S2aと、を備えている。
【0050】
電圧変換回路11の入力側端子T1には、リアクトル41の一端が接続されている。リアクトル41の他端には、2個のスイッチング素子S1,S1aのエミッタと、2個のスイッチング素子S2,S2aのコレクタと、2個のダイオードD1,D1aのアノードと、2個のダイオードD2,D2aのカソードとに接続されている。2個のスイッチング素子S1,S1a、2個のスイッチング素子S2,S2a、2個のダイオードD1,D1a、および2個のダイオードD2,D2aは、いずれも定格電流容量(図6(a)では、IB=100Aとしている)を満たすために並列接続されたものであり、それぞれ同時に駆動される。
【0051】
リアクトル41には、2個のスイッチング素子S2,S2aがオンの状態において、VB(T1−T2間)として、300Vが印加され、電流値IB(100A)を中央に跨ぐ経過時間に対して右上がりのノコギリ波状の電流が流れることになる。また、2個のスイッチング素子S2,S2aは、図示しない司令部のキャリア信号とデューティ指令値D(本比較例では、D=50%)とによってオンオフ指令が生成される。このオンオフ指令に基づいて、2個のスイッチング素子S2,S2aがオンからオフに同時に切り替わると、リアクトル41は、電流値IB(100A)を中央に跨ぐ経過時間に対して右下がりのノコギリ波状の電流が流れ、充電されたエネルギを放出して昇圧する。2個のダイオードD1,D1aには、分配されて平均して(25)Aずつ流れる。これによって、T3-T4間の電圧として600Vを得ることができる。
【0052】
次に、図6(b)の比較例を説明する。図6(b)においても、図6(a)と同様に、電圧変換回路11aによって、VB(T1-T2間)の300Vの電圧をT3−T4間において600Vに電圧変換する例を示す。
【0053】
この電圧変換回路11aは、電圧変換回路11の出力電力を1.5倍にするために構成が変更された回路である。電圧変換回路11aでは、1.5倍となった定格電流容量(図6(b)では、IB=150Aとしている)を満たすためにスイッチング素子S1b,S2bとダイオードD1b,D2bとがさらに並列接続されている。このスイッチング素子S1b,S2bとダイオードD1b,D2bを追加することにより、デューティ指令値D(本比較例では、D=50%)の場合には、各ダイオードには、分配されて平均して電圧変換回路11と同等の25Aを流すことができる。しかしながら、リアクトル41aは、リアクトル41と同一のインダクタンスLを有し、リアクトル41の1.5倍の電流容量を満たすための熱設計が必要となる。これにより、リアクトル41aは、後述するようにリアクトル41の1.5倍よりも大型化することになる。
【0054】
リアクトル41aには、巻き線抵抗RL(図示せず)が存在するので、銅損(RL×IB2)は電流が1.5倍になると1.5の2乗(=2.25)倍に増大する。これにより、リアクトル41aの熱設計としては、リアクトル41に対して2.25倍の放熱性能、または、放熱性能に相当する代替機能(具体的には、冷却器の追加等)を備える。
【0055】
図7(a)(b)は、実施形態における出力増大の仕様変更の例を示す説明図である。図7(a)(b)は、実施形態の2個の電圧変換回路10,10aを示している。電圧変換回路10は、図1に示されている回路と同一である。電圧変換回路10aは、電圧変換回路10の出力電力を1.5倍にするために構成が変更された回路である。具体的には、これら電圧変換回路10又は10aによって、VB(T1-T2間)の300Vの電圧をT3−T4間において600Vに電圧変換する例を示す。
【0056】
電圧変換回路10は、以下の2点で比較例の電圧変換回路11と相違する。第1の相違点は、リアクトル35,35aのインダクタンスを並列に備えているという点である。リアクトル35,35aは、流れる電流(IB=100A)をリアクトル41の半分(50A)となり、銅損を0.5の2乗(=0.25)倍に低減することができるので熱設計に余裕が生ずる。これにより、リアクトル35,35aの2個でも、リアクトル41に対して小型化できる。第2の相違点は、リアクトル35にのみスイッチング素子S1,S2が接続され、リアクトル35aにのみスイッチング素子S1a,S2aが接続されているという点である。これにより、電圧変換回路10は、リアクトル35,35aを相互に独立して、たとえばリアクトルの充電と放電を相違するタイミング(位相)で駆動することができる。
【0057】
リアクトル35には、1個のスイッチング素子S2がオンの状態において、VB(T1−T2間)が印加され、電流値IB(50A)を中央に跨ぐ経過時間に対して右上がりのノコギリ波状の電流が流れることになる。
【0058】
リアクトル35は、1個のスイッチング素子S2がオンからオフに切り替わると、電流値IB(50A)を中央に跨ぐ経過時間に対して右下がりのノコギリ波状の電流が流れ、充電されたエネルギを放出して昇圧する。デューティ指令値D(本比較例では、D=50%)の場合には、ダイオードD1には、電流値(25A)が流れることになる。
【0059】
図7(a)に示されるように、電圧変換ユニット30の電力は、直流電池の電力と等しくなるように、リアクトル35とスイッチング素子S2とダイオードD1とにそれぞれ電流が流れる。また、電圧変換ユニット30aについても、電圧変換ユニット30と同様である。
【0060】
また、電圧変換回路10としては、電圧変換ユニット30に対して独立して駆動することができる電圧変換ユニット30aが並列に接続されているので、2個の電圧変換ユニット30,30aの双方の駆動によって比較例の電圧変換回路11と同一の電力を出力することができる。
【0061】
そして実施例の電圧変換回路10では、要求出力の増大に伴って同一のインダクタンスのリアクトルを増加させることで、それらリアクトルの合成インダクタンスを十分低減することができる。すなわち、たとえば2個のリアクトル35,35aの合成インダクタンスを単一のリアクトル41のインダクタンスの半分(L/2)とすることができる。これにより、電圧変換回路10は、比較例の電圧変換回路11よりも2の「1/2」乗倍高い共振周波数fLCと減衰比ζとを実現している(図5の計算式F1,F2参照)。
【0062】
次に、図7(b)に示される実施例の電圧変換回路10の仕様変更について説明する。図7(b)においても、図7(a)と同様に、電圧変換回路10aによって、VB(T1-T2間)の300Vの電圧をT3−T4間において600Vに電圧変換する場合を示し、かつ図7(b)においても、デューティ指令値Dを50%とした場合を示す。さらに、実施例の電圧変換回路10aは、電圧変換回路10の出力電力を1.5倍するために構成が変更され、IB=150Aとした回路である。電圧変換回路10aでは、1.5倍となった出力を実現するためにリアクトル35bを含む電圧変換ユニット30bが電圧変換ユニット30,30aに並列に接続されている。3個の電圧変換ユニット30,30a,30bは、相互に相違する位相で駆動することができる。
【0063】
このように、実施形態の電圧変換回路10の仕様変更では、リアクトル35bを含む電圧変換ユニット30bを追加するだけで可能となっている。これに対して、比較例の電圧変換回路11の仕様変更では、1.5倍の電流容量を満たすためにリアクトル41の電流許容値と熱設計の観点からリアクトルの再設計が必要となっている。
【0064】
リアクトルの熱設計では、熱発生の原因である銅損を小さくするためにコイルの線形を太くするという設計自由度と、放熱効果を高めるために表面積を大きくするという設計自由度とが一般的に利用される。しかしながら、リアクトルの設計においては、いずれの設計自由度を利用しても非線形に(急激に)体積が増大する領域が存在し、電源装置50の出力の増大のネックとなるという問題がある。
【0065】
このように、実施形態の電圧変換回路10は、比較例の電圧変換回路11と比較して高い共振周波数fLCと減衰比ζとを実現するとともに、仕様変更に対しても簡易かつ柔軟に対応できるように構成されている。さらに、リアクトルの過度の大型化を回避することができるとともに、リアクトル35,35a,35bの分散配置をも可能とし、車両の熱設計や実装設計を容易にすることができる。
【0066】
図8は、電圧変換回路10aを制御対象とする制御ブロック図である。制御部20(図1参照)は、司令部23に電圧指令部71とPI制御器72とを有し、電圧センサ24(図1参照)によって計測された電圧値を使用してフィードバック制御を行っている。
【0067】
電圧指令部71は、モータジェネレータMGの運転状態に適した電圧を昇圧電圧指令として演算する。上述したVB(T1-T2間)の300Vの電圧をT3−T4間において600Vに電圧変換する例は、昇圧電圧指令が600Vの時に電圧変換が安定した状態を説明したものである。
【0068】
図9は、電圧変換回路10aの制御内容を示すタイムチャートである。司令部23は、3個の電圧変換ユニット30,30a,30bを相互に位相をずらして制御している。具体的には、3個の電圧変換ユニット30,30a,30bは、それぞれ相互に位相がシフトされている3つのキャリア信号Mc,Sc1,Sc2を使用して駆動されている。キャリア信号Mcは、基準となるマスターキャリア信号である。2つのキャリア信号Sc1,Sc2は、マスターキャリア信号Mcと同一の波形(三角波)を有し、位相だけがシフトされている信号である。
【0069】
詳しくは、司令部23は、マスターキャリア信号Mcの三角波の半波(たとえば時刻t0〜t1)毎にデューティ指令値Cdを算出し、デューティ指令値Cdの出力値を更新する。具体的には、司令部23は、マスターキャリア信号Mcの三角波のピーク時刻t0において、電圧センサ24を取得(サンプリング)してデューティ指令値Cdの算出を開始し、三角波のボトム時刻t1までにデューティ指令値Cdの算出を完了して算出値aを得る。司令部23は、三角波のボトム時刻t1において、デューティ指令値Cdの出力値を算出値aに変更(更新)するとともに、デューティ指令値Cdの算出を再度開始する。
【0070】
司令部23は、他の2つのキャリア信号Sc1,Sc2に対してもデューティ指令値Cdを使用することによって、簡易な構成で3個の電圧変換ユニット30,30a,30bを制御することができる。これにより、3個の電圧変換ユニット30,30a,30bは、均等の電力を出力することができる。
【0071】
加えて、特に直流電池VBから発せられる磁気騒音の悪化も抑制できる。電圧変換ユニット30,30a,30bが均等の電力を出力できるので、リップルを含めた電流も均等に流すことができる。よって、平滑コンデンサや直流電池VBには、マスターキャリア信号Mcの3倍の周波数で、かつ、等しいリップル電流が流れることになる。電動車両の中でも、たとえば、直流電池VBの電力だけで長距離を走行することが必要とされる電気自動車やプラグインハイブリッド自動車では、高出力化に伴いIBを増加させるので、磁気騒音が悪化する。その音圧は、リップルが等しくても直流電池VBのリップルとIBを加算した充放電電流の絶対値が大きいほど大きくなる。電圧変換ユニット30,30a,30bのスイッチング周波数は、3を乗じた際に可聴周波数帯域を超えることになるのであって、そのスイッチング周波数は可聴周波数帯域内に設定されているから、電圧変換ユニット30,30a,30bの電力が均等でなければ、搭乗者に不快な音として聴こえるおそれがある。
【0072】
このように、司令部23は、単一の電圧変換ユニット30を制御するための構成に対して、位相をシフトさせた2つのキャリア信号Sc1,Sc2を発生させるだけで3個の電圧変換ユニット30,30a,30bを制御することができる。
【0073】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0074】
(1)上記実施形態では、昇圧回路と回生回路とを含む電圧変換回路として説明されているが、昇圧回路のみを含む電圧変換回路であってよい。
【0075】
(2)上記実施形態では、リアクトルとスイッチング素子とダイオードとを含む電圧変換ユニットの並列接続による電圧変換回路の例が示されているが、たとえばN個のリアクトルだけを並列接続するようにしてもよい。
【0076】
(3)さらに、実施例の電圧変換回路が有する複数の電圧変換ユニットの各々が有するリアクトルを複数のリアクトルの並列接続として構成するようにしてもよい。
【0077】
(4)上述の実施例では、複数の電圧変換ユニットは全て同一の構成を有しているが、たとえば相互に相違する容量の電圧変換ユニットを含むようにしてもよい。こうすれば、相互に容量が相違する電圧変換ユニットを使用してきめ細かな設計を実現することができる。具体的には、たとえば50kwの電圧変換ユニットと25kwの電圧変換ユニットが利用可能であれば、25kw刻みの設計を電圧変換ユニットの組合せで実現することができる。この場合は、常用的には50kWの電圧変換ユニットを駆動し、共振を抑制したい動作領域において25kWの電圧変換ユニットも追加駆動することもできる。
【0078】
(5)上述の実施例では、複数の電圧変換ユニットは全て駆動されているが、たとえば出力電力が小さいときには、その一部を停止するように構成しても良い。こうすれば、出力電力が過度に小さいときの電圧変換回路の効率低下を回避することができる。
【0079】
(6)上述の実施例では、直流電池の正極側にリアクトルが接続されているが、たとえば直流電池の負極側にリアクトルを接続し、ダイオードとスイッチング素子の極性をいずれも逆として接続するようにしてもよい。本発明では、スイッチング素子の通電時においては直流電源からリアクトルに充電するように接続される充電回路(第1回路)と、スイッチング素子の非通電時においてはリアクトルから負荷に放電するように接続されている放電回路(第2回路)と、が構成される方向に各要素の極性同士が接続されていればよい。
【0080】
(7)上述の実施例では、負荷は、車両の駆動装置(交流モータ及びインバータ)であるが、これに限られず他の種類の負荷にも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
10,10a…電圧変換回路、11,11a…比較例の電圧変換回路、20…制御部、21,22…駆動回路、23…司令部、24…電圧センサ、30,30a,30b…電圧変換ユニット、34…電圧センサ、35,35a,35b,41,41a…リアクトル、50…電源装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電力の電圧を変換して負荷に供給する電圧変換回路であって、
前記直流電源に一方の端子が相互に並列に接続されているN個(Nは2以上の整数)のリアクトルと、前記N個のリアクトルの他方の端子に接続されている少なくとも1つのスイッチング素子と、を有する第1回路と、
前記負荷に一方の端子が接続されている少なくとも1つの整流素子を有し、前記少なくとも1つの整流素子の他方の端子に接続されている前記少なくとも1つのスイッチング素子を前記第1回路と共有する第2回路と、
を備え、
前記第1回路は、前記少なくとも1つのスイッチング素子の通電時においては、前記直流電源から前記N個のリアクトルに充電するように接続され、
前記第2回路は、前記少なくとも1つのスイッチング素子の非通電時においては、前記N個のリアクトルから前記負荷に放電するように接続されている電圧変換回路。
【請求項2】
請求項1記載の電圧変換回路であって、
前記少なくとも1つのスイッチング素子は、N個のスイッチング素子を含み、
前記少なくとも1つの整流素子は、N個の整流素子を含み、
前記第1回路は、前記N個のスイッチング素子の各々の通電時においては、前記直流電源から前記N個のスイッチング素子の各々に接続されている各リアクトルに電力を供給するように接続され、
前記第2回路は、前記N個のスイッチング素子の非通電時においては、前記N個のスイッチング素子の各々に接続されている各リアクトルから前記負荷に電力を供給するように接続されている電圧変換回路。
【請求項3】
直流電源から供給される直流電力の電圧を変換して負荷に供給する電圧変換回路であって、
前記直流電源と前記負荷との間において、相互に並列に接続されているN個(Nは2以上の整数)の電圧変換ユニットを備え、
前記電圧変換ユニットは、
前記直流電源に一方の端子が接続されているリアクトルと、前記リアクトルの他方の端子に接続されているスイッチング素子と、を有する第1回路と、
前記負荷に一方の端子が接続されている整流素子を有し、前記整流素子の他方の端子に接続されている前記スイッチング素子を前記第1回路と共有する第2回路と、
を備え、
前記第1回路は、前記スイッチング素子の通電時においては、前記直流電源から前記リアクトルに充電するように接続され、
前記第2回路は、前記スイッチング素子の非通電時においては、前記リアクトルから前記負荷に放電するように接続されている電圧変換回路。
【請求項4】
請求項2に記載の電圧変換回路であって、
前記第1回路には、前記N個のスイッチング素子と並列にN個の整流素子が備えられ、
前記第2回路には、前記N個の整流素子と並列にN個のスイッチング素子が備えられ、
前記第1回路に備える前記N個のスイッチング素子と前記第2回路に備える前記N個のスイッチング素子にはデッドタイムが設けられ、
前記第1回路に備える前記N個のスイッチング素子の通電時においては、前記第2回路に備える前記N個のスイッチング素子は非通電状態にあり、
前記第1回路に備える前記N個のスイッチング素子の非通電時においては、前記第2回路に備える前記N個のスイッチング素子は通電状態にあり、
前記直流電源から前記負荷への電力供給と、前記負荷から前記直流電源への電力供給の双方を兼ね備えた電圧変換回路。
【請求項5】
請求項3記載の電圧変換回路であって、
前記電圧変換ユニットの第1回路に備えるスイッチング素子と並列に整流素子を備え、
第2回路に備える整流素子と並列にスイッチング素子を備え、
前記第1回路に備えるスイッチング素子と前記第2回路に備えるスイッチング素子にはデッドタイムが設けられ、
前記第1回路に備えるスイッチング素子の通電時においては、前記第2回路に備える前記のスイッチング素子は非通電状態にあり、
前記第1回路に備えるスイッチング素子の非通電時においては、前記第2回路に備える前記のスイッチング素子は通電状態にあり、
前記直流電源から前記負荷への電力供給と、前記負荷から前記直流電源への電力供給の双方を兼ね備えた電圧変換回路。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の電圧変換回路であって、
前記電圧変換回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記N個のスイッチング素子を相互に相違する位相で駆動することを特徴とする電圧変換システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電圧変換システムであって、
前記負荷が車載主機としての交流電動機と前記交流電動機を駆動するための直流交流変換回路を備える交流電動機システムであることを特徴とする電圧変換システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電圧変換システムであって、
前記電圧変換回路を構成するスイッチング素子のスイッチング周波数が、前記リアクトルの並列数を乗じた際に、可聴周波数帯域を超える周波数となることを特徴とする電圧変換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210138(P2012−210138A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286680(P2011−286680)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】