説明

電圧計測装置

【課題】被測定物と電圧計測装置との間のインピーダンスを正確に計測する
【解決手段】心電位検出装置1では、容量性結合センサ71,72が、容量結合によって運転者Bに非接触で運転者Bの心電圧を検出するとともに、外部電圧入力部2が、予め設定された周波数fcを有する交流電圧を運転者Bに印加する。また、抵抗器71c,72cは、制御部11の発振周波数に同期して、予め設定された上限値と下限値との間を、周波数fcより小さくなるように予め設定された周波数frで連続的に変化して往復するように、その抵抗値(容量性結合センサ71,72の入力インピーダンス)を変化させる。そして、抵抗器71c,72cの抵抗値が変化している間に容量性結合センサ71,72により検出された電圧のうち、周波数fcを有する交流成分の強度と、周波数fcm(=fc−fr)を有する交流成分の強度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量結合によって被測定物の電圧を計測する電圧計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、衣服等を介して電極を人体に接触させることにより心電位を検出する心電位検出装置のように、容量結合によって、被測定物に直接接触することなく被測定物の電圧を計測することができる電圧計測装置が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−350473号公報
【特許文献2】特表2009−534108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1,2のように、容量結合により電圧を計測する電圧計測装置では、被測定物と電圧計測装置との間のインピーダンス(以下、ソースインピーダンスという)と電圧計測装置の入力インピーダンスとにより、被測定物の電圧値が分圧されるために、ソースインピーダンスが大きくなるほど、電圧計測装置に入力する電圧値が小さくなる。このため、被測定物の電圧値を評価するためには、ソースインピーダンスを計測する必要がある。
【0005】
ところで、ソースインピーダンスを計測する方法として、所定の周波数を有する交流電圧を被測定物に印加して、この交流電圧が印加された状態の被測定物の電圧値を上記電圧計測装置で計測するものが知られている。すなわち、被測定物に印加する時の交流電圧の値と、電圧計測装置により計測された交流電圧値との比率により、ソースインピーダンスの大きさを評価する。しかし、このソースインピーダンス計測方法では、交流電圧を被測定物に印加する電圧印加部と、被測定物との間にも容量を形成するために、ソースインピーダンスを正確に計測することができない。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、被測定物と電圧計測装置との間のインピーダンスを正確に計測する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の電圧計測装置では、電圧センサが、容量結合によって被測定物に非接触で被測定物の電圧を検出するとともに、電圧印加手段が、予め設定された第1交流周波数を有する交流電圧を被測定物に印加する。また入力インピーダンス変化手段が、第1交流周波数と異なるように予め設定された第2交流周波数で、電圧センサの入力インピーダンスを変化させる。そして計測手段が、入力インピーダンス変化手段が動作している間に電圧センサにより検出された電圧のうち、第1交流周波数、及び第2交流周波数により変調された周波数の強度を計測し、ソースインピーダンスを計測する。
【0008】
このように構成された電圧計測装置では、ソースインピーダンスと入力インピーダンスとにより被測定物の電圧値が分圧されるため、ソースインピーダンスが大きくなるほど、入力インピーダンスの変動による電圧センサの検出電圧の変動も大きくなる。すなわち、ソースインピーダンスが大きくなるほど、第2交流周波数で入力インピーダンスを変動させた場合に、変調され、第2交流周波数により変調された周波数の強度が大きくなり、第1交流周波数を有する交流成分の強度が小さくなる。
【0009】
そして、ソースインピーダンスの大きさと、第1交流周波数を有する交流成分の強度、および第2交流周波数により変調された周波数を有する交流成分の強度との間には相関関係があるため、第1交流周波数を有する交流成分の強度、および第2交流周波数により変調された周波数を有する交流成分の強度を算出することにより、ソースインピーダンスを計測することができる。
【0010】
これにより、電圧印加手段と被測定物との間に形成される容量に関係なく、被測定物と電圧センサとの間のインピーダンスを正確に計測することができる。
また、請求項1に記載の電圧計測装置において、請求項2に記載のように、計測手段が、第2交流周波数により変調された周波数として、第1交流周波数に第2交流周波数を加算した第1変調周波数、及び第1交流周波数に第2交流周波数を減算した第2変調周波数を用いて、第1交流周波数を有する交流成分の強度と、第1変調周波数を有する交流成分の強度および第2変調周波数を有する交流成分の強度の少なくとも一方との比を算出することにより、ソースインピーダンスを計測するようにしてもよい。
【0011】
このように構成された電圧計測装置によれば、第1交流周波数を有する交流成分の強度とソースインピーダンスとの相関関係を示すデータと、第1,2交流周波数を有する交流成分の強度とソースインピーダンスとの相関関係を示すデータとの2つのデータを予め用意することなく、上記の比とソースインピーダンスとの相関関係を示すデータのみを予め用意しておくことで、ソースインピーダンスを計測することができる。
【0012】
また、請求項1または請求項2に記載の電圧計測装置において、請求項3に記載のように、第2交流周波数は、計測所望の信号周波数より高く、かつ第1交流周波数より低いようにするとよい。
【0013】
このように構成された電圧計測装置によれば、所望の心電周波数帯域への第2交流周波数、第1交流周波数の重畳をなくすことができる。
また、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電圧計測装置において、請求項4に記載のように、変化手段が、変調後において第1交流周波数、及び第2交流周波数により変調された周波数の振幅を検出し、第1交流周波数の振幅強度を変化させるようにしてもよい。
【0014】
このように構成された電圧計測装置によれば、第1交流周波数、及び第2交流周波数により変調された周波数の振幅に応じて、電圧センサの入力電圧範囲内で測定ができるように第1交流周波数の振幅を調整することができる。
【0015】
また、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電圧計測装置において、被測定物が商用電源の付近に位置しており、商用電源を発生源とする電磁波が被測定物内を伝送する場合には、請求項5に記載のように、電圧印加手段は、第1交流周波数を商用周波数とした交流電圧を供給する商用電源であるようにしてもよい。
【0016】
このように構成された電圧計測装置によれば、第1交流周波数を有する交流電源を別途用意することなく、ソースインピーダンスを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】心電位検出装置1の構成を示す回路図である。
【図2】ロックインアンプの構成を示す回路図である。
【図3】心電位信号、発振信号、および交流信号の周波数分布と、センサ71,72の検出信号の周波数分布を示すグラフである。
【図4】センサ71,72の出力電圧と抵抗器71c,72cの抵抗値との関係を示すグラフである。
【図5】周波数fcmの成分の強度とソースインピーダンスZcとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本実施形態の心電位検出装置1の構成を示す回路図である。
心電位検出装置1は、車両に搭載され、図1に示すように、外部電圧入力部2、バッファアンプ3、周波数変換部5、位相シフタ群6、センサ群7、ロックインアンプ群8、ローパスフィルタ(以下、LPFともいう)群9、A/D変換器群10、および制御部11を備えている。
【0019】
これらのうち外部電圧入力部2は、交流電源21および印加電極22により構成されている。交流電源21は、心電位の周波数より十分大きい周波数fc(例えば、1kHz)の交流信号を生成する。印加電極22は、運転席(不図示)に設置され、交流電源21により生成された交流信号を、衣服等を介して運転者Bに印加する。
【0020】
また制御部11は、発振部11aを備える。そして発振部11aは、抵抗器71c,72c(後述)の抵抗値の可変周波数frに対応する周波数で発振する信号を出力する。
またバッファアンプ3は、交流電源21により生成された交流信号を入力し、入力した信号を予め設定された所定の増幅度で増幅して出力する。
【0021】
また周波数変換部5は、図2(a)に示すように、交流電源21からの交流信号(周波数fc)と制御部11からの発振信号(周波数fr)とを混合して、周波数が(fc±fr)である信号を生成するミキサM1と、ミキサM1からの出力信号のうち、(fc−fr)近傍の周波数帯の信号のみを選択的に通過させるバンドパスフィルタB1とから構成されており、周波数が(fc−fr)である発振信号を出力する。
【0022】
また図1に示すように、位相シフタ群6は、位相シフタ61,62により構成されている。位相シフタ61は、バッファアンプ3から出力される交流信号の位相を90°シフトさせることにより、ロックインアンプ群8に入力するための参照信号を生成する。さらに位相シフタ62は、周波数変換部5から出力される交流信号の位相を90°シフトさせることにより、ロックインアンプ群8に入力するための参照信号を生成する。
【0023】
またセンサ群7は、容量性結合センサ71,72,73により構成されている。容量性結合センサ71,72,73はそれぞれ、運転席(不図示)に設置された測定電極71a,72a,73aに衣服等を介して運転者Bが接触したときに生じる心電位Vdを検出する。
【0024】
まず容量性結合センサ71(72,73)は、測定電極71a(72a,73a)、電圧フォロア71b(72b,73b)、および抵抗器71c(72c,73c)を備えている。これらのうち、電圧フォロア71b(72b,73b)は、入力側である測定電極71a(72a,73a)側を高インピーダンスとし出力側を低インピーダンスとする周知のインピーダンス変換回路である。そして、電圧フォロア71b(72b,73b)の非反転入力端子は、測定電極71a(72a,73a)から信号が入力される。
【0025】
また抵抗器71c,72cは、可変抵抗器であり、制御部11の発振周波数に同期して、予め設定された上限値と下限値との間で抵抗値が変動するように構成されている。そして、抵抗器71c,72cの一端はそれぞれ電圧フォロア71b,72bの非反転入力端子に接続されるとともに、抵抗器71c,72cの他端は、電圧フォロア73bの出力端子に接続されている。これにより、容量性結合センサ71,72は、電圧フォロア73bの出力電位を基準として電位を検出する。
【0026】
また、抵抗器73cは固定抵抗器である。そして、抵抗器73cの一端は電圧フォロア73bの非反転入力端子に接続されるとともに、他端は接地される。
次にロックインアンプ群8は、ロックインアンプ81,82,83,84により構成されている。
【0027】
ロックインアンプ81は、容量性結合センサ71からの検出信号のうち周波数がfcである信号と、交流電源21からの交流信号(周波数fc)との振幅、位相差(Real信号、Imag信号)を示す信号を出力する。ロックインアンプ82は、容量性結合センサ71からの検出信号のうち周波数が(fc−fr)である信号と、周波数変換部5からの交流信号(周波数fc−fr)との振幅、位相差(Real信号、Imag信号)を示す信号を出力する。
【0028】
ロックインアンプ83は、容量性結合センサ72からの検出信号のうち周波数がfcである信号と、交流電源21からの交流信号(周波数fc)との振幅、位相差(Real信号、Imag信号)を示す信号を出力する。ロックインアンプ84は、容量性結合センサ72からの検出信号のうち周波数が(fc−fr)である信号と、交流電源21からの交流信号(周波数fc−fr)との振幅、位相差(Real信号、Imag信号)を示す信号を出力する。
【0029】
なお、ロックインアンプ81,82,83,84は、図2(b)に示すように、ミキサM11,M12とローパスフィルタF11,F12とから構成されている。
ミキサM11は、容量性結合センサ71または容量性結合センサ72からの検出信号(以下、図2(b)の説明において単に検出信号という)と、交流電源21または周波数変換部5からの交流信号(以下、図2(b)の説明において単に交流信号という)とを混合する。そしてローパスフィルタF11は、ミキサM11からの出力信号から直流成分を抽出する。これにより、検出信号と交流信号との位相差をαとすると、cos(α)に比例する信号が出力される。以下、この信号をReal信号という。
【0030】
またミキサM12は、検出信号と、位相シフタ61または位相シフタ62により位相が90°シフトされた交流信号とを混合する。そしてローパスフィルタF12は、ミキサM12からの出力信号から直流成分を抽出する。これにより、検出信号と交流信号との位相差をαとすると、sin(α)に比例する信号が出力される。以下、この信号をImag信号という。
【0031】
すなわち、ロックインアンプ81,82,83,84のそれぞれから出力されるReal信号とImag信号とによって、検出信号と交流信号との位相差を算出することができる。
【0032】
そして、ロックインアンプ81(83)では、容量性結合センサ71(72)からの検出信号と交流電源21からの交流信号(周波数fc)がミキサM11に入力するとともに、容量性結合センサ71からの検出信号と位相シフタ61からの出力信号(周波数fc)がミキサM12に入力することによって、容量性結合センサ71(72)からの検出信号のうち周波数がfcである信号と、交流電源21からの交流信号(周波数fc)との位相差を示すReal信号とImag信号を出力する。
【0033】
ロックインアンプ82(84)では、容量性結合センサ71(72)からの検出信号と周波数変換部5からの交流信号(周波数fc−fr)がミキサM11に入力するとともに、容量性結合センサ71からの検出信号と位相シフタ62からの出力信号がミキサM12に入力することによって、容量性結合センサ71(72)からの検出信号のうち周波数が(fc−fr)である信号と、周波数変換部5からの交流信号(周波数fc−fr)との位相差を示すReal信号とImag信号を出力する。
【0034】
次に、ローパスフィルタ(LPF)群9は、図1に示すように、ローパスフィルタ91,92により構成されている。ローパスフィルタ91(92)は、容量性結合センサ71(72)からの検出信号を入力し、入力した信号のうち、心電位の周波数より高くなるように設定されたカットオフ周波数(例えば、50Hz)以下の周波数を有する信号のみを選択的に通過させる。これにより、容量性結合センサ71(72)の検出信号から高周波ノイズを除去することができる。
【0035】
次にA/D変換器群10は、A/D変換器101,102により構成されている。A/D変換器101,102はそれぞれ、ローパスフィルタ91,92からのアナログ信号をデジタル信号に変換して制御部11へ出力する。
【0036】
次に制御部11は、発振部11aに加えて、マルチプレクサ(以下、MUXという)11bと、AD変換部11cと、演算制御部11dとを備える。
AD変換部11cは、MUX11bを介して、ロックインアンプ群8からのImag信号とReal信号と、A/D変換器101,102からのデジタル信号を入力する。そしてAD変換部11cは、ロックインアンプ群8からのImag信号とReal信号をデジタル信号に変換して演算制御部11dへ出力するとともに、A/D変換器101,102からのデジタル信号をそのまま演算制御部11dへ出力する。
【0037】
そして演算制御部11dは、抵抗器71c,72cの抵抗値を可変周波数frで変動させながら容量性結合センサ71,72からの検出信号の電圧を測定することにより、被測定物と容量性結合センサ71,72との間のインピーダンス(以下、ソースインピーダンスという)を算出する。
【0038】
ここで、ソースインピーダンスの算出原理を図3および図4とともに説明する。
図3(a)は、心電位信号、制御部11からの発振信号(周波数fr)、および交流電源21からの交流信号(周波数fc)の周波数分布を示すグラフである。図3(b)は、容量性結合センサ71,72からの検出信号の周波数分布を示すグラフである。
【0039】
図3(a)に示すように、心電位信号は周波数が低く(図中の周波数fsを参照)、交流電源21からの交流信号(周波数fc)は心電位信号に対して周波数が十分高い(図中の周波数fcを参照)。そして、制御部11からの発振信号(周波数fr)は、心電位信号と電源21からの交流信号との間の周波数に設定される(図中の周波数frを参照)。
【0040】
そして、抵抗器71c,72cの抵抗値を可変周波数frで変動させながら容量性結合センサ71,72からの検出信号を測定すると、図3(b)に示すように、周波数fcp(=fc+fr)と周波数fcm(=fc−fr)の成分が現れる。
【0041】
図4は、容量性結合センサ71,72の出力電圧と抵抗器71c,72cの抵抗値との関係をソースインピーダンスの大きさ毎に示すグラフである。図4では、抵抗器71c,72cの最大抵抗値Rmが350GΩであり、ソースインピーダンスZcが0.1GΩ(曲線L1を参照),0.5GΩ(曲線L2を参照),1GΩ(曲線L3を参照),2GΩ(曲線L4を参照),3GΩ(曲線L5を参照),4GΩ(曲線L6を参照),5GΩ(曲線L7を参照),6GΩ(曲線L8を参照),7GΩ(曲線L9を参照),8GΩ(曲線L10を参照),9GΩ(曲線L11を参照),10GΩ(曲線L12を参照),20GΩ(曲線L13を参照)である場合の測定結果を示す。また図4では、容量性結合センサ71,72の出力電圧の最大値と抵抗器71c,72cの抵抗値は、最大値が1となるように規格化されている。
【0042】
図4に示すように、抵抗値が最大値1から小さくなるにつれて出力電圧が低下する。このため、抵抗値を周波数frで変動させると、出力電圧において周波数fcp(=fc+fr)と周波数fcm(=fc−fr)で変動する成分が現れる。そして、抵抗値の変動による出力電圧の変動度合いは、ソースインピーダンスが大きくなるほど大きくなる。つまり、ソースインピーダンスがセンサ入力インピーダンスに対して小さくなると図中の左の非線形領域に落ち込み、変調度合いは大きくなり、fcp,fcm振幅が増大する。
【0043】
図5(a)は、周波数fcmの成分の強度とソースインピーダンスZcとの関係を示すグラフである。なお、図5(a)の横軸は、ソースインピーダンスZcと上記の最大抵抗値Rmとの比率Zc/Rmである。
【0044】
図5(a)に示すように、ソースインピーダンスZcが大きくなるほど、出力電圧において周波数fcmで変動する成分の強度P(fcm)が大きくなり(図中の曲線L21を参照)、周波数fcで変動する成分の強度P(fc)が小さくなる(図中の曲線L22を参照)。
【0045】
したがって、抵抗器71c,72cの抵抗値を可変周波数frで変動させて、容量性結合センサ71,72の出力電圧における周波数fcと周波数fcmの成分の強度を計測することによって、ソースインピーダンスを算出することができる。
【0046】
図5(b)は、周波数fcの成分の強度P(fc)と周波数fcmの成分の強度P(fcm)との比率P(fc)/P(fcm)とソースインピーダンスZcとの関係を示すグラフである。なお、図5(b)の横軸は、ソースインピーダンスZcと上記の最大抵抗値Rmとの比率Zc/Rmである。
【0047】
図5(b)に示すように、比率P(fc)/P(fcm)は、ソースインピーダンスZcが大きくなるにつれて小さくなる特性を示している。すなわち、比率P(fc)/P(fcm)の値を算出することにより、ソースインピーダンスZcを一意に決定することができる。
【0048】
このため演算制御部11dは、比率P(fc)/P(fcm)とソースインピーダンスZcとの相関関係を示す相関表を予め記憶しており、比率P(fc)/P(fcm)の値を算出した後に、この相関表を参照することによって、ソースインピーダンスZcを決定する。
【0049】
また演算制御部11dは、可変周波数frで抵抗値が変動する抵抗器71c,72cの抵抗値が、予め設定された測定抵抗値に一致する毎に、容量性結合センサ71,72からの検出信号に基づいて心電位Vdを測定する。つまり、入力インピーダンスがある値を示した場合に電圧出力を得る。
【0050】
また演算制御部11dは、AGC(オートゲインコントロール)機能を備え、ロックインアンプ群8からのImag信号とReal信号に基づいて、容量性結合センサ71,72からの検出信号のうち、周波数がFcの信号と周波数が(fc−fr)の信号について、交流電源21からの交流信号(周波数fc)と周波数変換部5からの交流信号(周波数fc−fr)のImag信号およびReal信号の振幅を算出し、上記で算出したImag信号およびReal信号の振幅に基づいて、周波数がFcの信号と周波数が(fc−fr)の信号について振幅の絶対値を算出し、容量性結合センサ71,72の検出電圧範囲内、およびA/D変換器101,102の入力電圧範囲内で測定ができるように交流電源21の交流信号の振幅を調整する。
【0051】
このように構成された心電位検出装置1では、容量性結合センサ71,72が、容量結合によって運転者Bに非接触で運転者Bの心電位Vdを検出するとともに、外部電圧入力部2が、予め設定された周波数fcを有する交流電圧を運転者Bに印加する。また、抵抗器71c,72cは、制御部11の発振周波数に同期して、予め設定された上限値と下限値との間を、周波数fcより小さく、かつ心電周波数より大きくなるように予め設定された周波数frで連続的に変化して往復するように、その抵抗値(容量性結合センサ71,72の入力インピーダンス)を変化させる。
【0052】
そして、抵抗器71c,72cの抵抗値が変化している間に容量性結合センサ71,72により検出された電圧のうち、周波数fcを有する交流成分の強度と、周波数fcm(=fc−fr)を有する交流成分の強度を算出する。
【0053】
このように構成された心電位検出装置1では、運転者Bと外部電圧入力部2との間のインピーダンス(ソースインピーダンス)と抵抗器71c,72cの抵抗値(入力インピーダンス)とにより運転者Bの心電圧が分圧されるため、ソースインピーダンスが大きくなるほど、入力インピーダンスの変動による容量性結合センサ71,72の検出電圧の変動も大きくなる。すなわち、ソースインピーダンスが大きくなるほど、周波数frで入力インピーダンスを変動させた場合に、周波数fcmを有する交流成分の強度が大きくなる一方、周波数fcを有する交流成分の強度が小さくなる。
【0054】
そして、ソースインピーダンスの大きさと、周波数fcを有する交流成分の強度および周波数fcmを有する交流成分の強度との間には相関関係があるため、周波数fcを有する交流成分の強度および周波数fcmを有する交流成分の強度を算出することにより、ソースインピーダンスを計測することができる。
【0055】
これにより、外部電圧入力部2と運転者Bとの間に形成される容量に関係なく、運転者Bと容量性結合センサ71,72との間のインピーダンス(ソースインピーダンス)を正確に計測することができる。
【0056】
また制御部11は、周波数fcの成分の強度P(fc)と周波数fcmの成分の強度P(fcm)との比率P(fc)/P(fcm)を算出する。これにより、周波数fcを有する交流成分の強度とソースインピーダンスとの相関関係を示すデータと、周波数fcmを有する交流成分の強度とソースインピーダンスとの相関関係を示すデータとの2つのデータを予め用意することなく、比率P(fc)/P(fcm)とソースインピーダンスとの相関関係を示すデータのみを予め用意しておくことで、ソースインピーダンスを計測することができる。
【0057】
また、可変周波数frは、心電周波数より高く、かつ周波数fcより低い。これにより、所望の心電周波数帯域への周波数fr、周波数fcの重畳をなくすことができる。
以上説明した実施形態において、心電位検出装置1は本発明における電圧計測装置、容量性結合センサ71,72,73は本発明における電圧センサ、外部電圧入力部2は本発明における電圧印加手段、制御部11および抵抗器71c,72cは本発明における入力インピーダンス変化手段、制御部11は本発明における計測手段、AGC11bは本発明における変化手段である。
【0058】
また、運転者Bは本発明における被測定物、周波数fcは本発明における第1交流周波数、周波数frは本発明における第2交流周波数、周波数fcpは本発明における第1変調周波数、周波数fcmは本発明における第2変調周波数である。
【0059】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、周波数fcの成分の強度P(fc)と周波数fcmの成分の強度P(fcm)とを用いてソースインピーダンスを計測するものを示したが、周波数fcの成分の強度P(fc)と周波数fcpの成分の強度とを用いてソースインピーダンスを計測するようにしてもよい。
【0060】
また上記実施形態では、外部電圧入力部2が、周波数fcを有する交流電圧を運転者Bに印加するものを示した。しかし、被測定物が商用電源の付近に位置しており、商用電源を発生源とする電磁波が被測定物内を伝送する場合には、周波数frを商用周波数としてソースインピーダンスを計測するようにしてもよい。これにより、交流電圧を被測定物に印加するための交流電源を別途用意することなく、ソースインピーダンスを計測することができる。
【0061】
また、ロックインアンプ機構はデジタル的なミキシングにより本機能を付加してもよい。これによりロックインアンプ81〜84のハードウェアが不要になり、制御部11に内蔵することも可能になる。
【符号の説明】
【0062】
1…心電位検出装置、2…外部電圧入力部、3…バッファアンプ、5…周波数変換部、6…位相シフタ群、7…センサ群、8…ロックインアンプ群、9…LPF群、10…A/D変換器群、11…制御部、11a…発振部、11b…MUX、11c…AD変換部、11d…演算制御部、21…交流電源、22…印加電極、61,62…位相シフタ、71,72,73…容量性結合センサ、71a,72a,73a…測定電極、71b,72b,73b…電圧フォロア、71c,72c,73c…抵抗器、81,82,83,84…ロックインアンプ、91,92…ローパスフィルタ、101,102…A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の電圧を計測する電圧計測装置であって、
容量結合によって前記被測定物に非接触で前記被測定物の電圧を検出する電圧センサと、
予め設定された第1交流周波数を有する交流電圧を前記被測定物に印加する電圧印加手段と、
前記第1交流周波数と異なるように予め設定された第2交流周波数で、前記電圧センサの入力インピーダンスを変化させる入力インピーダンス変化手段と、
前記入力インピーダンス変化手段が動作している間に前記電圧センサにより検出された電圧のうち、前記第1交流周波数、及び前記第2交流周波数により変調された周波数の強度を計測し、ソースインピーダンスを計測する計測手段と
を備えることを特徴とする電圧計測装置。
【請求項2】
前記計測手段は、
前記第2交流周波数により変調された周波数として、前記第1交流周波数に前記第2交流周波数を加算した第1変調周波数、及び前記第1交流周波数に前記第2交流周波数を減算した第2変調周波数を用いて、前記第1交流周波数を有する交流成分の強度と、前記第1変調周波数を有する交流成分の強度および前記第2変調周波数を有する交流成分の強度の少なくとも一方との比を算出することにより、ソースインピーダンスを計測する
ことを特徴とする請求項1に記載の電圧計測装置。
【請求項3】
前記第2交流周波数は、計測所望の信号周波数より高く、かつ前記第1交流周波数より低い
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電圧計測装置。
【請求項4】
変調後において前記第1交流周波数、及び前記第2交流周波数により変調された周波数の振幅を検出し、前記第1交流周波数の振幅強度を変化させる変化手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電圧計測装置。
【請求項5】
前記電圧印加手段は、前記第1交流周波数を商用周波数とした交流電圧を供給する商用電源である
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電圧計測装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−217625(P2012−217625A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86551(P2011−86551)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】