説明

電子デバイス及びその製造方法

【課題】基材表面(素子面)を覆い且つ封止する空間が必要な素子のパッケージングを従来用いている金属キャップを用いて形成した場合、チップの高さが高くなる。また、チップ個片での組立てとなり、工数が増えてしまうと言った課題があった。
【解決手段】表面に櫛歯電極部と電極部及び櫛歯電極部と電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタが形成された基板と、基板に対向して設置された封止基板と、基板と封止基板とを所定の間隔を保って接続する封止部と、SAWフィルタと電気的に接続して基板又は封止基板の外部に露出している電極部とを備えた電子デバイスにおいて、基板上のSAWフィルタが形成されている領域の上部は封止部により封止基板と所定の間隔離れており、櫛歯電極部は電極部よりも薄く形成されており、封止部は基板側の素材と封止基板側の素材とが常温接合により内部が密閉された状態で接続して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に導体パターンが形成された領域(素子の機能領域)を有するSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)等の素子のパッケージング技術に係り、特に当該領域を当該表面上に形成された空洞内に封止するに好適な当該素子のウェハレベルでのパッケージ構造体に関する電子デバイス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハから切り出され、又はガリウム砒素(GaAs)やインジウム燐(InP)等の化合物半導体からなる基材上に素子が形成された電子デバイスは、その表面がそのパッケージ材料であるSiNなどの無機膜、モールド樹脂、ポリイミド樹脂などが当該素子に接するように形成されて出荷され、使用される。一方、SAWフィルタやMEMSは、基板上に形成された素子(導体材料で形成されたパターン)の振動や微細な動き(稼働)により所定の機能を果たす部品である。これらの素子の何れも、その表面(以下、素子面)に上記振動や駆動(稼働)を生じさせる領域(部分)を有し、その機能を確保するために、当該領域(以下、機能領域)を固体膜で覆わず、これに空間を対向させる必要がある。これらのパッケージとして、従来は、金属キャップ(の空洞)で機能領域を覆う構造が採用されていた。しかし、この実装形態では、金属キャップの厚さが厚いため、パッケージ構造全体の薄形化が困難である。また、当該パッケージ構造の組立ては、ウエハ状態から素子を個片化し、個々に組み立てるため、工程数が多いといった課題があった。
【0003】
一方、近年、MEMSをウェハレベルで組み立てる方法について検討が進められている。このMEMSをウェハレベルで組み立てる場合に、MEMS構造を保護するために高温のプロセスが使えず、常温で接合することが必要になる。特許文献でMEMSなどの電子デバイスを常温接合により形成することについて記載されている例を特許文献1から8に示す。特許文献8には、薄膜でスペーサを形成して素子上の空間を形成することが記載されている。
【0004】
本発明の属する技術分野に関連する非特許文献として、非特許文献1及び非特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−171152号公報
【特許文献2】特開2007−173756号公報
【特許文献3】特開2007−192793号公報
【特許文献4】特開2007−194572号公報
【特許文献5】特開2008−244169号公報
【特許文献6】特開2008−244175号公報
【特許文献7】特開2008−294229号公報
【特許文献8】特開2006−246538号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】谷山慎悟 ほか 「第23回 エレクトロニクス実装学会講演大会 講演論文集 金属薄膜を介したシリコンウエハ低温接合」
【非特許文献2】中島 毅 ほか 「第23回 エレクトロニクス実装学会講演大会 講演論文集 水素ラジカルを用いた酸化膜除去によるフリップチップ接続状態の改善」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MEMSなどの電子デバイスは高機能化するとともに多方面へ実用化が進んできている。このような電子デバイスを他の電子装置に組み込んで使う場合に、より小型化・薄型化することが必要になる。
【0008】
従来のMEMSの構造では、基材表面(素子面)を覆い且つ封止する空間が必要な素子のパッケージングを金属キャップを用いて形成していたために、金属キャップの加工の限界がチップの高さを規定しており、薄型化には限界があった。また、チップ個片での組立てとなり、工数が増えると言った課題があった。
【0009】
図13A〜Dに、SAWフィルタの動作原理を示す。まず、SAWフィルタの基本的な構造は、図13Aに示すように、圧電基板1上に、電極2、配線29、櫛歯電極3 (IDT: Interdigital Transducer)で構成されている。櫛歯電極3の顕微鏡写真を図13Bに示す。図13AのSAWフィルタにおいて、図13Cに示すような入力信号5を電極2(101)から入力し、櫛歯電極3(櫛歯電極入力103)で表面弾性波4に変換する。そして、圧電基板1表面を表面弾性波として伝播し、もう一方の櫛歯電極3櫛歯電極出力104)で電気信号に変換され、電極2(102)を通して図13Dに示すような出力信号6として取り出す。つまり、SAWフィルタは、電気信号を表面弾性波すなわち音波に一旦変換し、電気信号として再度取り出す。その時に雑音(8)成分は、取り出さず、信号7成分のみを取り出すため、フィルタとしての役割を果たす。このフィルタでは、表面弾性波の伝搬を妨げないように櫛歯電極3上には空間である必要がある。
【0010】
このことは、MEMSパッケージでも同様のことが言え、素子表面上には、空間が必要である。つまり、櫛歯電極をMEMS素子の駆動部分と考えれば、パッケージの構造としては、同等のものが必要である。
【0011】
特許文献1から7にはMEMS構造が開示されているが、何れも素子上の空間を形成するのに基板を掘り込んだり上下の基板の間にスペーサを挿入した構成になっており、薄型化には限界があった。
【0012】
一方、特許文献8には、薄膜でスペーサを形成して素子上の空間を形成することが記載されているが、より電気抵抗を小さくしてノイズ成分を低減させてSAWデバイスの性能を向上させるような構成にすることについては開示されていない。
【0013】
また、非特許文献1には、表面にAu薄膜を形成したシリコンウェハ同士を常温接合させることについて記載されているが、接合面の内側に密閉された空間を形成することについては記載されていない。更に、非特許文献2には、はんだ接合時に水素ラジカルと反応させて表面の酸化膜を除去して接合することについて記載されているが、非特許文献1と同様に、接合面の内側に密閉された空間を形成することについては記載されていない。
【0014】
本発明の目的は、上記した課題を解決して、電子デバイスの内部の機能領域上に空間を設ける構成において、電子デバイスの性能を確保しつつ厚みを従来の金属キャップを用いた場合に比べて極力薄くすることが可能な電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、表面に櫛歯電極部と電極部及び櫛歯電極部と電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタが形成された基板と、基板に対向して設置された封止基板と、基板と封止基板とを所定の間隔を保って接続する封止部と、SAWフィルタと電気的に接続して基板又は封止基板の外部に露出している電極部とを備えた電子デバイスにおいて、基板上のSAWフィルタが形成されている領域の上部は封止部により封止基板と所定の間隔離れており、櫛歯電極部は電極部よりも薄く形成されており、封止部は基板側の素材と封止基板側の素材とが常温接合により内部が密閉された状態で接続して形成した。
【0016】
また、本発明では、表面に櫛歯電極部と電極部及び櫛歯電極部と電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタが形成された基板と、基板に対向して設置された封止基板と、基板と封止基板とを所定の間隔を保ちSAWフィルタを含む内部を密閉して接続する封止部と、機能素子と電気的に接続して基板又は封止基板の外部に露出している電極部とを備えた電子デバイスにおいて、櫛歯電極部を櫛歯電極部よりも薄く形成し、封止部は基板側に形成された薄膜と封止基板側に形成された薄膜とを接合して形成した。
更に本発明では、基板の表面に櫛歯電極部と電極部及び櫛歯電極部と電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタを含む機能素子パターン及び機能素子パターンを取り囲む封止パターンを形成し、封止基板の表面に電極部に対応する受け電極パターンと封止パターンに対応する受け封止パターンを形成し、基板上の機能素子パターンの電極部と封止パターン及び封止基板上の受け電極パターンと受け封止パターンとの表面を活性化し、表面を活性化した基板の電極部と封止パターンとを封止基板の受け電極パターンと受け封止パターンとをそれぞれ常温結合させることにより基板表面の機能素子の上部に密閉した空間を形成して基板と封止基板とを接続して電子デバイスを形成する方法にであって、基板の表面に櫛歯電極部と電極部及び櫛歯電極部と電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタを含む機能素子パターン及び機能素子パターンを取り囲む封止パターンを形成する工程において、基板の表面に櫛歯電極部と電極部及び櫛歯電極部と電極部とを接続する配線部との第1層の薄膜を形成し、次に該第1層のうちの前記電極部と前記配線部との上に第2層を形成するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるパッケージ構造では、素子を取り囲むパッケージの内壁面が水分を透過しない金属、ガラス、シリコンで囲まれた空間で覆われるため、当該空間が周囲環境の雰囲気から確実に分離され、この素子の信頼性向上(特に防湿性)が図られ、素子自体の寿命も延びる。また、機能素子とこの機能素子を形成する側の基板の周辺を封止する部材を多層の薄膜で形成したことにより、機能素子の膜厚の制約を受けずにパッケージ構造を構成することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】実施例1によるパッケージ形成工程(1)を説明するための基板の断面図および平面図である。
【図1B】実施例1によるパッケージ形成工程(2)を説明するための基板の断面図である。
【図2A】実施例1によるパッケージ形成工程(3)を説明するための基板の断面図である。
【図2B】実施例1によるパッケージ形成工程(4)を説明するための基板の断面図である。
【図2C】実施例1によるパッケージ形成工程(5)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図2D】実施例1によるパッケージ形成工程(6)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図3A】実施例1によるパッケージ形成工程(7)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図3B】実施例1によるパッケージ形成工程(8)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図3C】実施例1によるパッケージ形成工程(9)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図3D】実施例1によるパッケージ形成工程(10)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図4A】実施例1によるパッケージ形成工程(11)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図4B】実施例1によるパッケージ形成工程(12)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図4C】実施例1によるパッケージ形成工程(13)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図4D】実施例1によるパッケージ形成工程(14)を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図5A】実施例2によるパッケージ形成工程(3)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板の断面図である。
【図5B】実施例2によるパッケージ形成工程(4)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板の断面図である。
【図5C】実施例2によるパッケージ形成工程(5)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図5D】実施例2によるパッケージ形成工程(5)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図6A】実施例3によるパッケージ形成工程(3)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板の断面図である。
【図6B】実施例3によるパッケージ形成工程(4)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板の断面図である。
【図6C】実施例3によるパッケージ形成工程(5)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図6D】実施例3によるパッケージ形成工程(5)における接合金属活性化のプロセスの別法を説明するための基板と封止基板の断面図である。
【図7A】実施例4によるパッケージ形成工程(2)における電極および封止リング作製の別法を説明するための断面図である。
【図7B】実施例4によるパッケージ形成工程(3)における電極および封止リング作製の別法を説明するための基板の断面図である。
【図7C】実施例4によるパッケージ形成工程(3)における電極および封止リング作製の別法を説明するための断面図である。
【図7D】実施例4によるパッケージ形成工程(3)における電極および封止リング作製の別法を説明するための断面図である。
【図7E】実施例4によるパッケージ形成工程(4)における電極および封止リング作製の別法を説明するための断面図である。
【図8A】実施例5によるパッケージ形成工程(6)におけるビア穴作製の別法を説明するための断面図である。
【図8B】実施例5によるパッケージ形成工程(7)におけるビア穴作製の別法を説明するための断面図である。
【図8C】実施例5によるパッケージ形成工程(7)におけるビア穴作製の別法を説明するための断面図である。
【図8D】実施例5によるパッケージ形成工程(8)におけるビア穴作製の別法を説明するための断面図である。
【図9A】ダイシング時に層間への異物噛み込みの状態を示す顕微鏡写真である。
【図9B】ダイシング時に層間への異物噛み込みの状態を模式的に示したパッケージ構造体の断面図である。
【図10A】実施例6によるダイシング時に層間への異物噛み込み防止対策を施した基板断面図である。
【図10B】実施例6によるダイシング時に層間への異物噛み込み防止対策を施した基板の平面図である。
【図11A】実施例6によるダイシング時に層間への異物噛み込み防止構造を説明するパッケージ構造体のウェハレベルの断面図である。
【図11B】実施例6によるダイシング時に層間への異物噛み込み防止構造を説明するパッケージ構造体の切断後の単体の断面図である。
【図12A】実施例1によるパッケージ構造体の単体の斜視図である。
【図12B】実施例1によるパッケージ構造体のA−A’(B−B’)断面図である。
【図13A】SAWフィルタの動作原理を説明する平面図である。
【図13B】SAWフィルタの櫛歯電極部分の拡大写真である。
【図13C】SAWフィルタの入力信号の周波数と通過特性の一例を示すグラフである。
【図13D】SAWフィルタの出力信号の周波数と通過特性の一例を示すグラフである。
【図14】素子面内に複数個のパターンを配置した例を示すSAWフィルタの斜視図と櫛歯電極部分の拡大写真である。
【図15A】実施例1の工程7においてレジストをマスクとしてサンドブラストによりビアホール16を加工した状態を示す図で、ビアホール16が電極部を突き抜けて加工された状態を示す基板と封止基板の断面図である。
【図15B】実施例1の工程7においてサンドブラストによるビアホール16が電極部を突き抜けて加工されレジストが除去された状態を示す基板と封止基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明によるパッケージ構造(素子モジュール)の望ましき実施形態について図面を用いて説明する。
【0020】
本発明によるパッケージ構造は、素子(素子を成す基材)の主面を空隙部で封止することが必要なパッケージ全般に適用することが可能である。以下に説明する実施例においては、パッケージ構造を、表面弾性波フィルタ(以下、SAWフィルタ)に適用した例として記述するが、素子上に空隙部を必要とするいずれの素子に対しても、これに類似した構造や工程を適用することが可能である。
【0021】
基板1として、以下の説明では、SAWフィルタを形成するために用いられている圧電材料:リチウムタンタレート(タンタル酸リチウム、Lithium Tantalate、LiTaO3)として例示されるが、圧電材料はこれに限定されず、例えば、リチウムナイオベート(ニオブ酸リチウム、Lithium Niobate、LiNbO3)や酸化亜鉛(ZnO)に置き換えられ得る。
【0022】
以下の実施例では、圧電基板1、例えば、リチウムタンタレートの表面(素子面)上に形成された2つのIDTとこれを挟む2つの電極とが拡大されて示され且つ説明されるが、本発明によるSAWフィルタには、その素子面内に複数個のパターンを配置してもよい(図14)。また、本発明では、工程(1)/図1から工程(14)/図4までをウエハ単位で処理を行い、工程(14)/図4において、チップ単体に切り出す工程を採用した。
【実施例1】
【0023】
実施例1による、パッケージンクの基本プロセス工程(1)〜工程(14)までを、図1〜図4を用いて説明する。
工程(1)/図1A参照
工程(1)においては、基板上にアルミニウム(Al)のパターンを形成する。図1において、図1Aは基板1の正面図、図1Bは基板1の平面図を示す。
基板1の材料として、例えば、シリコン、サファイヤ、リチウムタンタレート、ガラス、 セラミックスなどから成る結晶性または非結晶性の無機材料、又は樹脂などの有機材料から成る基板が用いられる。また、当該基板1に形成されるデバイスや装置の仕様に応じて、絶縁性材料から成る基板1のみならず、導電性材料から成る基板1なども用いられ、当該基板1の材料は任意に選択可能である。上述の如く、本実施例では、パッケージ構造が、これをSAWフィルタに適用した例で説明されるため、基板1の材料として、圧電材料(リチウムタンタレート)が用いられる。
【0024】
基板1の上にアルミニウムのパターン2(2in1,2 in2,2out1,2 out2)、3(3 in1,3 in2,3 out1,3 out2)、および29(29 in1,29 in2,29 out1,29 out2)を形成するプロセスは、通常の薄膜プロセス(ウェットプロセス、又はドライプロセス)で行う。すなわち、先ず基板1の表面にアルミニウム(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)を、スパッタ成膜する。本実施例では、このスパッタ膜を、0.2マイクロメートルの厚さで形成した。次に、このアルミニウムの膜の上にレジストを塗布する(図示せず)。このスパッタ成膜されたベタ膜上に塗布されるレジストは、アルミニウム(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)のエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性を有する限り、その種類は制約されない。
【0025】
アルミニウム膜に塗布したレジストを乾燥ベークさせた後に、フォトマスクを介して、所定のパターンに成形された紫外光をレジストに照射して露光する(レジストの露光処理)。次に、露光されたレジスト(レジスト膜)をレジスト現像液を用いて現像することにより、所定のレジストパターンを成形する。
【0026】
次に、このパターニングされたレジストをマスクとして、プラズマ中でエッチング処理することにより、基板1の全面にスパッタで成膜されたアルミニウム(又は、アルミ銅合金、例えばAl05Cu)の膜を、エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)中でドライエッチングする。この後、レジストを剥離する。このレジスト剥離は、液剤を用いたウェット処理でもよく、また、酸素プラズマ中でアッシング処理を施すドライプロセスで処理してもよい。
【0027】
この工程では、圧電基板1の表面に、アルミニウム(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)により、SAWフィルタの構造体としてのアルミ電極2、櫛歯電極3と配線29とパッケージング用部材としての封止リング9が形成される。以降、これらのパターンが形成された面を「素子面」とも記す。櫛歯電極3は、図13Bに示すとおり、微細なアルミニウムパターン(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)の集合体から成る構造物である。
【0028】
工程(2)/図1B参照
本工程においては、櫛形電極3以外の部分に第2層目の金属膜層(接合金属)を形成するために、アルミ電極2と配線29、封止リング9を露出させ、それ以外の部分を覆うレジストパターンを形成する。
【0029】
まず、接合金属を所謂リフトオフ法を用いて形成するためのレジスト層を形成する。ここでは、櫛歯電極3上に工程(3)で形成する2層目金属11が被らないようにすればよい。また、別の記述をすれば、アルミ電極2と封止リング9、配線29の上に2層目金属11が形成されるようなレジストパターンとする。具体的には、全面にレジストを塗布して乾燥・ベーク後、露光し現像してアルミ電極2と封止リング9、配線29とを露出させる。
【0030】
工程(3)/図2A参照
本工程においては、蒸着又はスパッタにより、全面に2層目金属11を形成する。
【0031】
工程(4)/図2B参照
本工程においては、レジスト層の上に形成された2層目金属膜11をレジスト層ごと除去して、アルミ電極2と封止リング9、配線29の上にだけ2層目金属層11を残すことにより、封止リング2層目12と電極2層目13配線2層目28とを形成する。
【0032】
工程(5)/図2C参照
本工程においては、工程4まで加工が終わった基板1を別途準備しておいた封止基板14と真空中で常温接合させる。
具体的には、工程1で説明したものと同様な工程を経て、またはめっき工程を経て封止基板14上に受け電極30、受け封止リング31をパターン形成したものを作製し、工程4まで加工が終わった基板1と上記パターンが形成された封止基板14とを真空槽(図示せず)の内部に搬入し、真空槽内でアルゴンガスを導入しながら高周波放電によりプラズマを発生させ、基板1と封止基板14とをこのプラズマに曝すことにより基板1の表面と封止基板14の表面とをそれぞれ活性化させる。封止リング2層目12と電極2層目13とも表面を活性化させる。次に、この表面が活性化された基板1と封止基板14とを向かい合わせた状態で基板1側の封止リング2層目12及び電極2層目13と封止基板14側の受け封止リング31及び受け電極30との位置を合わせ、それぞれの位置があった状態で基板1と封止基板14とを突合せて加圧することで常温接合(外部から加熱を行うことなく加圧して接合)する。
【0033】
このように、基板1と封止基板14とを、電極2層目13と電極30、封止リング2層目12と受け封止リング31との間で常温接合させることにより、電極2層目13と電極30との間で確実の信号の伝達が行えるとともに、封止リング2層目12と受け封止リング31との間を密着させることにより、内部の櫛歯電極3の側の空間を外部から確実に密閉して形成することができる。
【0034】
なお、本実施例における常温接合において、外部から積極的な加熱は行わないが、基板1と封止基板14とをプラズマに曝すことにより基板1と封止基板14との表面の温度は、室温よりも高くなる。また、ここで用いた封止基板14は、ガラスを用いることが価格、および電極の加工性の観点から望ましいが、膨張率や電気特性、形成された素子を効率的に動作させるために必要であれば、Siやセラミクスを用いることも可能である。
【0035】
工程(6)/図2D参照
本工程においては、封止基板14にビア穴16を形成するために、マスクとしてレジスのトパターンを形成する。
具体的には、サンドブラストにより封止基板14の表面にビア穴16を形成するときにビア穴を形成する部分以外を保護するためのマスキングを行うために、レジスト(ビア穴加工用)15を塗布してビア穴を形成する部分を露光し、現像してマスクパターンを形成する。
【0036】
工程(7)/図3A参照
本工程においては、レジスト層15をマスクとしてサンドブラストにより封止基板14にビア穴を形成する。
図中では、受け電極30の表面を終点とするような理想的な形状を示しているが、実際は受け電極30の厚さが数ミクロンと薄い時には、図15Aに示すような貫通した形状のビア穴16’、または図3Aに示した穴形状と図15Aに示した穴形状との中間の形状となっている。
【0037】
工程(8)/図3B参照
本工程においては、ビア穴形成時にマスクとして用いたレジストを除去する。
サンドブラスト用レジストの剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解のいずれかで剥離される。本実施例では、アルミ電極2の材料がアルミニウムを含むため、レジストの剥離にアルカリを用いたウェットプロセスは適用できないが、有機溶剤による溶解を選択することは可能である。レジスト剥離に用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミ電極2の腐食を防止できる限り、その種類は制約されない。ここでは、有機系溶剤(アルコール、アミン、水、界面活性剤を含む)を用いて剥離を行った。
【0038】
工程(9)/図3C参照
本工程においては、工程7によりビア穴の内部に露出させた受け電極30又は電極2層目と接続する電気めっき用給電膜17を封止基板14の表面側(図3の電気めっき用給電膜17が形成されている側)に形成する。
【0039】
具体的には、サンドブラストされた封止基板14の裏面に、電気めっきで、はんだバンプを形成するための電気めっき用給電膜17をスパッタで形成する。当該面に対して第1層と第2層とをこの順に積層した形状を本明細書では、(第1層/第2層)と表記する。本実施例ではチタン(Ti)膜と銅 (Cu) 膜との積層構造(金属膜)を用い、その膜厚は、チタン(50ナノメートル)/銅(1マイクロメートル)とした。この下層部のチタンの機能は、その下に位置する封止基板14と電気めっき用給電膜17との接着を確保し、かつ、受け電極30(または、電極2層目13、アルミ電極2)と電気めっき用給電膜17との電気的接続を確保することにあり、その膜厚はそれらの接着を維持できる厚さならば特に制限は無い。なお、ここで用いたチタン膜(50ナノメートル)は、クロムなど接続が確保できる他の材料膜に置き換えてもよい。
【0040】
工程(10)/図3D参照
本工程においては、封止基板14の表面側に形成した電気めっき用給電膜17のパターニングを行う。
具体的には、レジスト18(この工程では、光硬化型フィルム形状が望ましい)を、電気めっき用給電膜17の表面に貼り付けた。フィルム状のレジストが好ましい理由として、液状のレジストを封止基板14の裏面に塗布すると、当該液状のレジストの一部が上記工程(7)で形成した深い凹部(ビア穴16)に埋め込まれ、その現像工程で当該一部のレジストが当該凹部に残って除去しきれなくなる問題を回避するためである。ここで用いるレジスト18は、次の工程(11)におけるめっき工程、即ち、電気ニッケルめっき19、並びに電気錫合金めっき(含む錫めっき)20に対する耐性が有ればよい。基板表面に貼り付けられたレジスト18に対し、フォトマスク(図示せず)を介して、紫外光による露光パターンを照射した後、当該レジスト(露光されたレジスト)18を現像して、レジスト18による所定のパターン 18’を成形する。必要に応じて、現像後に上記レジストのパターンをベークしてもよい。
【0041】
工程(11)/図4A参照
本工程においては、内部に電気めっき用給電膜17が形成されたビア穴16の内部にめっき膜19,20を析出させる。
具体的には、電気めっき用給電膜17上に、電気めっきによりニッケルめっき膜19を形成し、その上に電気錫合金めっき膜(含む錫めっき)20を形成することにより、接合電極32を形成する。ここでは、電気錫合金めっき(含む錫めっき)20の下に電気ニッケルめっき19を形成する。従って、電気めっき用給電膜17のレジスト(めっき用)18から露出された表面はニッケルでめっきされ、さらにニッケルのめっき層19上には電気錫合金めっき(含む錫めっき)20が積層される。封止基板14のビア穴16の窪みを低減するため、電気ニッケルめっき17上に電気銅めっきを行うことが有効であり、電気錫合金めっき(含む錫めっき)20を電気銅めっき上に形成するとよい。また、上記電気めっき用給電膜17の露出された表面を電気銅めっきした後、この銅めっき上に電気ニッケルめっき17と、電気錫合金めっき(含む錫めっき)20とを順次形成してもよい(図示せず)。
【0042】
工程(12)/図4B参照
本工程においては、レジスト(めっき用)18を封止基板14の表面から除去する。
工程(11)における電気錫合金めっき(含む錫めっき)20終了後に、工程(10)で形成したレジスト(めっき用)18を封止基板14の裏面から剥離する。液状のレジストもフィルム状のレジストも、アルカリや有機溶剤を用いることで剥離される。ここでは、フィルム状のレジストを用いたため、その剥離に最適である水酸化ナトリウムの3%溶液を40℃に加熱して用いた。
【0043】
工程(13)/図4C参照
本工程においては、レジスト(めっき用)18を除去したことにより封止基板14の表面に露出した電気めっき用給電膜17を除去する。
具体的には、工程9で説明した電気めっき用給電膜17として積層して形成されたチタン膜と銅膜の層をそれぞれ除去する。先ず、上層の銅膜(Cu)の電極32から露出した部分をウェットエッチングの手法を用いて除去する。銅のエッチングには、塩化鉄、アルカリ系エッチング液等の種類があるが、本実施例では硫酸/過酸化水素水を主成分とするエッチング液を用いた。本実施例での銅エッチングには、10秒以上のエッチング時間を確保しないと、当該エッチング量の制御が困難となって実用的観点では不利となる。しかし、このエッチングに余りに長い時間を掛ける、例えば5分を越えてエッチングすると、銅膜(電気めっき用給電膜17)のサイドエッチングが大きくなり、タクトタイムが長くなるという問題も生じる。そのため、銅膜の余剰部分の除去に用いるエッチング液とこれを用いたエッチング条件は、適宜実験により求めるのがよい。その後、ウェットエッチング手法を用いて、電気めっき用給電膜17を成すチタン膜(Ti)をエッチングした。チタンのエッチングには、過酸化水素を主成分とするエッチング液、及びフッ化水素を含有するエッチング液のいずれを用いても良い。
【0044】
工程(14)/図4D参照
本工程では、接合電極32をリフロー成形した後、ダイシングにより個別のチップに分割する。
具体的には、SAW素子とその外部回路とを電気的に接続するために形成した電気錫合金めっき(含む錫めっき)20の表面がリフローされて、球状又は半球状の接合電極32を形成する。この電気錫合金めっき(含む錫めっき)20の表面には、必要に応じてフラックス(図示せず)が塗布されて、電気錫合金めっき(含む錫めっき)20のリフローが助長される。本実施例では、接合基板14の主面に、半球状の接合金属32が形成される。その後、母基板に形成された複数のSAW素子を、ダイシングにより個別チップに分割する。
図12Aに分割したチップの外観の斜視図を示し、図12Bにチップの断面図を示す。
【0045】
本実施例では、各チップを上記に説明したような構成としたことにより、入力側の一対の接合電極32in1及び32in2を介して外部から信号が入力され、一対の受け電極30in1及び30in2とそれぞれに常温接合された一対の電極2層目13in1及び13in2、及び一対のアルミ電極2in1及び2inを通って入力側の一対の櫛葉電極3in1及び3in2に印加される。基板1の櫛葉電極3in1及び3in2の下部には、櫛葉電極3in1及び3in2の間に印加された信号に応じた表面弾性波が発生し、出力側の一対の櫛葉電極3out1及び3out2で検出されて電気信号に変換されて一対のアルミ電極2out1及び2out2、一対の電極2層目13out1及び13out2、一対の受け電極30out1及び30out2を介して一対の接合電極32out1及び32 out2から出力信号が外部に出力される。
【0046】
本実施例に拠れば、このような構成において、入力側の一対の櫛葉電極3in1及び3in2から出力側の一対の櫛葉電極3out1及び3out2とに渡る領域の上方に空間が形成されているために、入力側の一対の櫛葉電極3in1及び3in2の間で発生させた表面弾性波を確実に出力側の一対の櫛葉電極3out1及び3out2伝播させることができるので、SAWフィルタとして確実な動作を実現することができる。
【0047】
本実施例によれば、上記した構成をウェハレベルのパッケージング工程で形成できるので、全体を薄型化して構成することが可能になる。そして、このウェハレベルのパッケージングを行うに際して金属膜で構成された封止リングを常温接合により確実に接合することができるので、内部の気密性をを確保することができる。
【0048】
また、本実施例によれば、基板1の側に形成する封止部材を薄膜の積層構造としたことにより、SAWフィルタの動作周波数や電気機械結合係数(電気信号を表面弾性波に変換する効率の指標)などで規定される櫛歯電極3の膜の厚さに対して、これらの特性に直接的な影響を与えない配線29の厚さを2層目金属28を積層することにより厚くすることができ、その分抵抗値が小さくなって伝達する信号成分の減推量を減らし、SAWフィルタの電気特性を改善することができる。
また、本実施例によれば、ウェハレベルのパッケージングを行うことにより従来技術に比べてより少ない工程数で形成することが可能になる。
【0049】
なお、本実施例では接合電極32を封止基板14の側に設ける構成について説明したが、基板1の側に設けるような構成にしてもよい。
【実施例2】
【0050】
本実施例は、実施例1で説明した工程(5)のパッケージンクの接合金属活性化のプロセスの別法として、アルゴンプラズマの照射量を減らして常温接合する方法を図5を用いて説明する。なお、ここに示した工程番号は、実施例1で説明した工程番号に対応しており、実施例1と同じ工程については記載を省略している。すなわち、下記に説明する工程3乃至5以外の工程は、実施例1で説明した工程を準用する。
【0051】
工程(3)/図5A参照
蒸着、スパッタを用いて、2層目金属11および表層金属(圧電基板側)23を途中で基板1を大気にさらすことなく真空中で搬送することにより連続膜で形成する。ここでの表層金属(圧電基板側)23の材質であるが、金や白金などの酸化しない金属または、TiやCrやそれらの合金で酸化膜が極薄くかつ緻密である材料が適する。なお、膜厚は、下地が酸化しない限り、薄い方が好ましく、10nm以下であれば、なお、好ましい。
【0052】
工程(4)/図5B参照
基本的には第1の実施例と同じ工程であり、封止リング2層目12と電極2層目13以外の部分をレジスト(櫛歯電極保護用)10と一緒に剥離する。
【0053】
工程(5)2、(5)−1/図5C及び図5D参照
封止基板14上に形成された受け電極30および受け封止リング31の表面が表層金属(封止基板側)24で覆われたものと、封止リング2層目12の表面が表層金属(圧電気板側)23で覆われた構造体を真空槽内でアルゴンプラズマを照射して、表面を活性化させ、位置合わせ、加圧することで接合した。ここでの、アルゴンプラズマ照射で、表層金属(圧電基板側)23および表層金属(封止基板側)24は、消失することがあった場合でも、アルミニウム(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)の表面が酸化していないため、強い接合強度を得ることが可能となる(工程(5)−1)。なお、この消失しても構わない膜厚であることが、非特許文献1に示された金の役割と大きく異なる点である。また、素子が形成されていない封止基板14側は素子が形成された圧電基板1側ほど材料、アルゴンプラズマ照射条件などの制約を受けにくいため、表層金属(封止基板側)24の厚さは表層金属(圧電気板側)23より薄くし、圧電基板1側に形成された素子にダメージを与えない程度にプラズマを余分に照射することで封止基板側で表層金属24が除去されて表面が酸化されていない電極30が露出した状態で接合することができ、より強い接合強度を得ることも可能になる。
【実施例3】
【0054】
本発明による、パッケージンクの接合金属活性化にプロセスの別法として、圧電基板側の表層電極に錫(Sn)又は亜鉛(Zn)を採用した例を図6を用いて説明する。なお、ここに示した工程番号は、実施例1に対応し、示していない部分については、実施例1と同様な工程を採るものとする。すなわち、下記に説明する工程3乃至5以外の工程は、実施例1で説明した工程を準用する。
【0055】
工程(3)/図6A参照
蒸着、又はスパッタを用いて、2層目金属11および表層金属(圧電基板側)23を連続膜で形成する。ここでの表層金属(圧電基板側)23の材質であるが、錫または、錫合金が適するが、銅や亜鉛、それらの合金など、性質が類似の材料を用いることも可能である。膜構成は、図では、2層目金属11のアルミニウム(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)上に表層金属(圧電基板側)23が形成された図を示してあるが、完成品をリフローした際の2層目金属11のアルミニウム(又は、アルミ銅合金 例えばAl05Cu)と表層金属23の錫または、錫合金の拡散が問題となる場合、層間にNiやNi合金(例えばNiW合金)を挟むことが好ましい。
【0056】
工程(4)/図6B参照
基本的には第1の実施例と同じ工程であり、封止リング2層目12と電極2層目13以外の部分をレジストと一緒に剥離する。
【0057】
工程(5)(5)−1/図6C及び図6D参照
封止基板14上に形成された受け電極30および受け封止リング31の表面が表層金属(封止基板側)24で覆われたものと、封止リング2層目12の表面が表層金属(圧電気板側)23で覆われた構造体を非特許文献2に示されたような原理で、水素ラジカルを照射して錫または、錫合金、または亜鉛または亜鉛合金、銅または銅合金を還元し、位置合わせ、加圧することで常温で接合する。ここで、このような方法を用いることが好ましい理由は、SAWフィルタでは、櫛歯電極3の線幅や厚さがその特性に多大な影響を及ぼし、発明を実施するための形態1および発明を実施するための形態2に記すようにアルゴンプラズマを照射した場合、その特性を制御しきれないことがあるためである。
【実施例4】
【0058】
本発明による、電極および封止リング作製プロセスの別法を図7を用いて説明する。なお、ここに示した工程番号は、発明を実施するための形態1に対応し、示していない部分については、発明を実施するための形態1と同様な工程を採るものとする。
【0059】
工程(2)4/図7A参照
接合金属を所謂リフトオフ法を用いて形成するためのレジストを形成する。ここでは、櫛歯電極3上に工程(3)4で形成する2層目金属11が被らないようにすればよい。また、別の記述をすれば、アルミ電極2と封止リング9上に2層目金属11が形成されるパターンとする。
【0060】
工程(3)4/図7B参照
蒸着またはスパッタにより、2層目金属11を形成する。必要に応じて、表層金属(圧電基板側)23を形成してもよい。
【0061】
工程(3)4−1/図7C参照
レジスト(パターン形成用)を表面に塗布し、マスクのパターンを投影してレジストを露光し現像することにより、配線2層目28、封止リング2層目12および電極2層目13のレジストパターン26を形成する。
【0062】
工程(3)4−2/図7D参照
レジストパターンをマスクとして露出している部分をエッチングにより除去する。
【0063】
工程(4)4/図7E参照
レジストを剥離して配線2層目28、封止リング2層目12および電極2層目13を露出させる。ただし、図7Eには、それらの表面が表層金属23で覆われている状態を示している。
本工程を用いることで、発明を実施するための形態1に示したリフトオフ法を用いることが困難な場合でも、パターンを形成することか可能となる。
【実施例5】
【0064】
本発明による、ビア穴作製プロセスの別法として、サンドブラスト法とドライエッチング法と組合わせた方法について図8A乃至図8Dを用いて説明する。なお、ここに示した工程番号は、実施例1で説明した工程の番号と対応し、示していない部分については、実施例と1同様な工程を採るものとする。
【0065】
工程(6)/図8A参照
サンドブラストを用いて、封止基板14の表面に電極となるビア穴16が形成するためのレジスト(ビア穴加工用)15を形成した。
【0066】
工程(7)/図8B参照
サンドブラストを用いて穴加工を行った。ここでは、ビア穴がアルミ電極に到達する前でサンドブラストを停止する。
【0067】
工程(7)−1/図8C参照
ドライエッチングを用いて、受け電極30が露出するまでエッチングを行う。
【0068】
工程(8)/図8D参照
サンドブラストレジスト用レジストを剥離した。
【実施例6】
【0069】
本実施例はチップを個別に分割するためのダイシング時に層間への異物噛み込み防止構造を備えたパッケージ構造について、図9から11を用いて説明する。
上記に説明した実施例1乃至6においては、封止リング9、封止リング2層12及び受け封止リング31で形成される封止部材は圧電基板1及び封止基板14の外周部より多少引っ込んでいる構成になっている。
【0070】
このような構成のパッケージをダイシングにより個片化し、その端面を観察したところ、図9に示した顕微鏡写真のように、圧電基板1と封止基板14間にダイシング屑28が挟まっている部分が観察された。
【0071】
この現象を解決するため、本実施例においては、図10に示すとおり、スクライブライン上にスクライブ線上パターン27を形成するようにした。なお、ここでスクライブ線上パターン27と封止リング1層目9および封止リング2層目12を繋げて一体化してしまうことも可能である。
このような構造としたものをダイシング加工すると、図11に示す構造となり、層間に異物を挟まなくなる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・圧電基板 2・・・アルミ電極 3・・・櫛歯電極 9・・・封止リング1層目 10・・・レジスト(櫛歯電極保護用) 11・・・2層目金属 12・・・封止リング2層目 13・・・電極2層目 14・・・封止基板 15・・・レジスト(ビア穴加工用) 16・・・ビア穴 17・・・電気めっき用給電膜 18・・・レジスト(めっき用) 19・・・電気ニッケルめっき 20・・・電気錫合金めっき(含む錫めっき) 21・・・立体配線経路 22・・・立体配線 23・・・表層金属(圧電気板側) 24・・・表層金属(封止基板側) 26・・・レジスト(パターン形成用) 27・・・スクライブ線上パターン 29・・・配線 30・・・受け電極 31・・・受け封止リング
32・・・接合電極 33・・・ダイシング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に櫛歯電極部と電極部及び前記櫛歯電極部と前記電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタが形成された基板と、該基板に対向して設置された封止基板と、前記基板と前記封止基板とを所定の間隔を保って接続する封止部と、前記SAWフィルタと電気的に接続して前記基板又は前記封止基板の外部に露出している電極部とを備えた電子デバイスであって、前記基板上の前記SAWフィルタが形成されている領域の上部は前記封止部により前記封止基板と所定の間隔離れており、前記櫛歯電極部は前記櫛歯電極部よりも薄く形成されており、前記封止部は前記基板側の素材と前記封止基板側の素材とが常温接合により内部が密閉された状態で接続されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
前記封止部の前記基板側の素材と前記封止基板側の素材とは、スパッタ又は蒸着により形成された薄膜であることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項3】
表面に櫛歯電極部と電極部及び前記櫛歯電極部と前記電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタが形成された基板と、該基板に対向して設置された封止基板と、前記基板と前記封止基板とを所定の間隔を保ち前記SAWフィルタを含む内部を密閉して接続する封止部と、前記機能素子と電気的に接続して前記基板又は前記封止基板の外部に露出している電極部とを備えた電子デバイスであって、前記櫛歯電極部は前記櫛歯電極部よりも薄く形成されており、前記封止部は前記基板側に形成された薄膜と前記封止基板側に形成された薄膜とを接合して形成したことを特徴とする電子デバイス。
【請求項4】
前記基板はシリコン(Si)、サファイヤ、リチウムタンタレート(LiTaO3)、ガラス、セラミックスの何れかの材料からなることを特徴とする請求項1又は3に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記封止基板は、ガラス、シリコン(Si)、セラミックスの何れかの材料からなることを特徴とする請求項1又は3に記載の電子デバイス。
【請求項6】
基板の表面に櫛歯電極部と電極部及び前記櫛歯電極部と前記電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタを含む機能素子パターン及び前記機能素子パターンを取り囲む封止パターンを形成し、封止基板の表面に前記電極部に対応する受け電極パターンと前記封止パターンに対応する受け封止パターンを形成し、前記基板上の機能素子パターンの電極部と封止パターン及び前記封止基板上の受け電極パターンと受け封止パターンとの表面を活性化し、該表面を活性化した前記基板の前記電極部と封止パターンとを前記封止基板の受け電極パターンと受け封止パターンとをそれぞれ常温結合させることにより前記基板表面の機能素子の上部に密閉した空間を形成して前記基板と前記封止基板とを接続して電子デバイスを形成する方法であって、前記基板の表面に櫛歯電極部と電極部及び前記櫛歯電極部と前記電極部とを接続する配線部とを複数の組備えたSAWフィルタを含む機能素子パターン及び前記機能素子パターンを取り囲む封止パターンを形成する工程において、前記基板の表面に櫛歯電極部と電極部及び前記櫛歯電極部と前記電極部とを接続する配線部との第1層の薄膜を形成し、次に該第1層のうちの前記電極部と前記配線部との上に第2層を形成することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記封止部の前記基板側の素材と前記封止基板側の素材とは、スパッタ又は蒸着により形成された薄膜であることを特徴とする請求項6記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記基板上の機能素子パターンと前記電極パターンと封止パターン及び前記封止基板上の受け電極パターンと受け封止パターンとの表面をプラズマ中で活性化することを特徴とする請求項6記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記封止部の前記基板側の素材と前記封止基板側の素材とは、スパッタ又は蒸着により多層に形成された薄膜であり、前記プラズマ中で活性化させることにより前記多層牧のうちの表面の膜を除去して下層の膜同士を加圧して常温結合させることを特徴とする請求項6記載の電子デバイスの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2011−54791(P2011−54791A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202859(P2009−202859)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】