説明

電子ビーム加工機

【課題】パルスビームを高周波化できるとともに、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールでき、品質の高い溶接を可能にする電子ビーム加工機を得ることである。
【解決手段】電子銃の陰極とバイアス電極間に電圧を印加して電子ビームを制御するバイアス電源が、直列に接続された、高安定電源と高応答電源とで形成されており、高安定電源が、ビーム電流を計測する電流検出回路から出力されたビーム電流信号に基づき、ビーム電流をフィートバック制御する電圧を出力し、高応答電源が、パルス信号発生器で発生したパルス基準信号により制御されたパルス電圧を出力するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接などに用いる電子ビーム加工機に関するものであり、特に、パルスビームを用いた電子ビーム加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
直流の電子ビームを用いた電子ビーム加工機の溶接において、溶接のビードを溶接断面で観察すると、ワーク表面でビードが極端に太くなっていることが認められる。すなわち、直流の電子ビームを用いた電子ビーム加工機による溶接では、ワインカップ状の熱影響部が発生する。
これに対して、電子ビームのON−OFFを繰り返して得られるパルスビームを用いた電子ビーム加工機は、ワーク表面のビードの太りが解消された、くさび状の熱影響部が少ないビードを得ることができる。
【0003】
従来の電子ビームをパルス化する機構としては、電子銃から発生した電子ビームの軌道に平行に1対の電極板を配置し、それぞれの電極に正パルス電圧と負パルス電圧を加えることで、電子ビームをパルス状に偏向させ、軌道上に設けたスリットの通過を制御して、電子ビームをパルス化するものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この電子ビームのパルス化機構を、大電力のパルスビームが必要な電子ビーム加工機に用いると、スリットが熱で破壊されてしまうとの問題があった。
【0004】
ビームのスリット通過を制御することなしに、電子ビームをパルス化する機構として、陰極と陽極との間にパルス電圧を印加するもの、および、陰極と制御電極との間にパルス電圧を印加するものがある(例えば、特許文献2参照)。
また、陰極を加熱し熱電子を発生させる補助電源ユニットにおける補助電源用整流器の出力側に、スイッチング素子で構成されるパルス発生回路を接続したものがある。これは、パルス発生回路のON/OFF動作により補助電源用整流器の出力、すなわちバイアス電圧が短絡/開放され、電子装置の熱陰極から発生する電子量をパルス状に変化させるものである(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−178076号公報(第6頁、第2図)
【特許文献2】特開平10−284552号公報(第8頁、第7図)
【特許文献3】特開平01−302646号公報(第3頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パルスビームを用いた電子ビーム加工機での溶接では、電子ビームのパルス化にともない、ビードの乱れやワークへの熱のこもりによる溶け込み深さの変動等が生じるので、溶接品質の向上のため、溶接部の熱影響部を任意に制御するとともに溶融金属の振動を抑制し、ビード形状の乱れをさらに低減することが要求されている。
そのため、パルスビームを用いた電子ビーム加工機では、パルスビームを高周波化すること、加工物の熱容量や溶接形状に応じた、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールすることが必要である。
【0007】
しかし、引用文献2に記載の電子ビームをパルス化する機構は、電子ビームテスターに用いられるものであり、パルスビームを高周波化すること、および、加工物の熱容量や溶接形状に応じてパルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールすることはできないとの問題があった。
【0008】
また、引用文献3に記載の電子ビームをパルス化する機構では、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールする、すなわち波高値の異なるパルスを連続して発生するには、異なる波高値のパルスに対応した電圧をそれぞれ発生させる直流電圧発生回路を用意するか、直流電圧発生回路がパルス周波数に匹敵する速度で応答することが必要となり、電源構成が複雑になるという問題があった。
また、スイッチング素子の応答性や制御方式が複雑であるので、パルスビームの高周波化、例えば1MHz相当のパルスビームを出すにはスイッチング素子の応答性を向上させる必要があるとともに、電源構成が複雑になるとの問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、パルスビームを高周波化できるとともに、加工物の熱容量や溶接形状に応じて、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールでき、品質の高い溶接を可能にする電子ビーム加工機を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる電子ビーム加工機は、電子銃と、電子銃から発射された電子ビームをワーク上に収束させる収束レンズと、電子銃と収束レンズとを収納した筐体とで形成されたビーム発生部と、ビーム発生部に電気を供給する電源部とを備えており、ビーム発生部の電子銃が、熱電子を放出する陰極と、陰極を加熱するヒータと、陰極と対向して設けられ、且つ筐体と接合した陽極と、陰極と陽極との間に配設されたバイアス電極とで形成されており、電源部が、ヒータを発熱させる電流を供給するヒータ電源と、陰極と陽極間に電圧を印加し、陰極から陽極方向に電子ビームを発生させる加速電源と、陰極とバイアス電極間に電圧を印加して、電子ビームを制御するバイアス電源とで形成された電子ビーム加工機であって、バイアス電源が、直列に接続された、一定の電圧を安定に発生できる高安定電源と出力電圧を経時変化させる高応答電源とで形成されており、高安定電源が、加速電源に設けられたビーム電流を計測する電流検出回路から出力されたビーム電流信号に基づき、ビーム電流をフィートバック制御する電圧を出力し、高応答電源が、パルス信号発生器で発生したパルス基準信号により制御されたパルス電圧を出力するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる電子ビーム加工機は、電子銃と、電子銃から発射された電子ビームをワーク上に収束させる収束レンズと、電子銃と収束レンズとを収納した筐体とで形成されたビーム発生部と、ビーム発生部に電気を供給する電源部とを備えており、ビーム発生部の電子銃が、熱電子を放出する陰極と、陰極を加熱するヒータと、陰極と対向して設けられ、且つ筐体と接合した陽極と、陰極と陽極との間に配設されたバイアス電極とで形成されており、電源部が、ヒータを発熱させる電流を供給するヒータ電源と、陰極と陽極間に電圧を印加し、陰極から陽極方向に電子ビームを発生させる加速電源と、陰極とバイアス電極間に電圧を印加して、電子ビームを制御するバイアス電源とで形成された電子ビーム加工機であって、バイアス電源が、直列に接続された、一定の電圧を安定に発生できる高安定電源と出力電圧を経時変化させる高応答電源とで形成されており、高安定電源が、加速電源に設けられたビーム電流を計測する電流検出回路から出力されたビーム電流信号に基づき、ビーム電流をフィートバック制御する電圧を出力し、高応答電源が、パルス信号発生器で発生したパルス基準信号により制御されたパルス電圧を出力するものであり、パルスビームを高周波化できるとともに、加工物の熱容量や溶接形状に応じて、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールでき、品質の高い溶接を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機におけるバイアス電極に印加されるバイアス電圧Vbiとビーム電流Icとの関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機の電源部における制御信号の伝送機構の詳細を示す図である。
【図4】パルス信号発生器が発生するパルス信号波形を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機における、パルスビーム波形の第1例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機における、パルスビーム波形の第2例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係わる電子ビーム加工機において、ビームONの指令とともにバイアス電圧がカットオフ電圧まで低下し、カットオフ電圧に達した時からパルス発生を開始する状態におけるパルスビーム波形を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係わる電子ビーム加工機において、起動直後のビーム電流が徐々に出やすくなってくる状態におけるパルスビーム波形を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係わる電子ビーム加工機におけるパルスビーム波形を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明による電子ビーム加工機の好適な形態を、図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
図1に示すように、本実施の形態の電子ビーム加工機100は、ビーム発生部とビーム発生部に電気を供給する電源部とを備えている。
図1では、本実施の形態の電子ビーム加工機100を説明するため、電子ビーム7および電子ビーム7が照射されるワーク11も示している。
ビーム発生部は、ビームを発射する電子銃1と、電子銃1から発射された電子ビーム7をワーク11上に収束させる収束レンズ10と、電子銃1と収束レンズ10とを収納し、且つ接地された筐体12とで形成されている。
【0015】
そして、電子銃1は、電子を放出する陰極2と、陰極2を加熱し陰極から熱電子を発生させるヒータ3と、電子ビーム7が通過する孔が設けられているとともに、筐体12に接合され、且つ陰極で発生した熱電子を加速して電子ビーム化する陽極4と、陰極2と陽極4との間に配設されたバイアス電極5とで形成されている。
例えば、陰極2の材質はランタンヘキサボライト(LaB)であり、ビーム放出面である先端径はφ1mmである。
ヒータ3の材質はカーボンであり、陰極2を挟み込むように設置され、例えば、陰極を1550℃に加熱できる。
【0016】
また、収束レンズ10とワーク11との間に偏向器(図示せず)が設けられており、この偏向器で、ワーク10上に電子ビーム7を照射する位置を制御する。
また、筐体12は、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、その内部が真空に保持されている。
【0017】
電源部は、熱電子を陽極4方向に加速する電圧を、陰極2と陽極4との間に印加する加速電源6と、ヒータ3を発熱させる電流を供給するヒータ電源8と、電子ビーム7の電流量を制御する電圧を、陰極2とバイアス電極5との間に印加するバイアス電源9とを備えている。
【0018】
そして、加速電源6は、負極が陰極2に接続され、正極が接地され、筐体12を介して陽極4と導通している。
また、ヒータ電源8は、正極と負極とがヒータ3の各端子に接続されるとともに、正極と負極との間に、2個の抵抗13の直列体が接続されており、抵抗13同士の接続部が加速電源6の負極、つまり、電子銃1の陰極2と接続されている。すなわち、ヒータ電源8は、その中間電位が陰極電位となるようになっている。
また、バイアス電源9は、負極がバイアス電極5に接続され、正極が加速電源6の負極、すなわち陰極2と接続されており、バイアス電極5は、陰極2に対して負電位となっている。そして、バイアス電源9は、その出力電圧が可変であり、電子ビームを制御する。
【0019】
また、バイアス電源9は、高安定電圧を発生する手段である高安定電源22と出力電圧値を応答性よく変化させることができる高応答電源21とが、直列に接続されて形成されている。
すなわち、高安定電源22は一定の電圧を安定に発生できる電源であり、高応答電源21は基準信号に応じて出力電圧値を、高い電圧スルーレートで変化させることができる電源である。そして、バイアス電極5へは、高安定電源22からの電圧と高応答電源21からの電圧とが加算された電圧が印加される。
【0020】
また、加速電源6には、正極側に電流検出回路24が設けられており、この電流検出回路24は、加速電源6の電流値、すなわち電子ビーム電流(ビーム電流と記す)を計測するとともに、計測されたビーム電流に基づく信号(ビーム電流信号と記す)を出力する。
また、高安定電源22には、その電圧値を制御する外部制御回路23が接続されており、外部制御回路23には、電流検出回路24から出力されたビーム電流信号が入力される。
また、高応答電源21には、パルス信号発生器25が接続されており、パルス基準信号が入力される。
【0021】
図1に示す各電源の結線から明らかなように、バイアス電源9とヒータ電源8とは、高い加速電圧(例えば、−60kV)を陰極2と陽極4との間に印加する加速電源6により高電圧にフローティングされている。
しかし、電子ビーム加工機を操作する外部制御回路23は低圧側にあるので、低圧側にある外部制御回路23と高圧側にある高安定電源22との接続は、絶縁性を有する光ファイバケーブルを介して行われている。同様に、低圧側にあるパルス信号発生器25と高圧側にある高応答電源21との接続も、絶縁性を有する光ファイバケーブルを介して行われている。
【0022】
本実施の形態の電子ビーム加工機100は、バイアス電源9における高安定電源22の電圧値を制御することで、ビーム電流をフィードバック制御する。
図2は、本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機におけるバイアス電極に印加されるバイアス電圧Vbiとビーム電流Icとの関係を示す図である。
図2では簡単のためにバイアス電圧Vbiの極性は示していないが、バイアス電圧Vbiを、カットオフ電圧から、正側に変化させていくと、ビーム電流Icが増加しており、図2から明らかなように、IcはVbiの2.5乗に比例する。
【0023】
次に、本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機のパルスビームを制御する機構を説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機の電源部における制御信号の伝送機構の詳細を示す図である。
図3に示すように、加速電源6の電流検出回路24から出力されビーム電流信号が、外部制御回路23に入力され、この入力された信号に基づき外部制御回路23で、高安定電源22の出力電圧を制御する信号(高安定電源電圧制御信号と記す)が生成される。
【0024】
また、図3に示すように、高安定電源電圧制御信号は、AD変換器30→光信号変換器31→光ファイバケーブル32→光信号復号器33→DA変換機34の順に伝送され、高安定電源22に入力される。そして、この入力された高安定電源電圧制御信号により高安定電源22が制御される。
【0025】
外部制御回路23は、PID制御を行っており、図2に示したバイアス電圧Vbi−ビーム電流Icの関係、高安定電源22の入出力ゲイン、ビーム系や加速電源6、バイアス電源9の応答性等の系のループ特性に応じて調整されている。
【0026】
図4は、パルス信号発生器が発生するパルス信号波形を示す図である。
図4では、横軸は時間tで、縦軸は電圧Vである。
図4に示すように、パルス信号発生器25は、パルス波形最大値Pmax とパルス波形最小値Pmin とパルスの立上りPuとパルスの立下りPdとを規定する信号、および、パルスクロック信号を発生する。
【0027】
本実施の形態では、パルス信号発生器25は、予め与えられたパルスビームの周波数や電流値に応じて、バイアス電極5に与えるパルス基準信号を発生する。
図3に示すように、パルス信号発生器25が発生した、パルス波形の最大値Pmax とパルス波形の最小値Pmin とのそれぞれを規定する信号は、AD変換器30→光変換器31→光ファイバケーブル32→光復号器33→DA変換器34の順に伝送され、スイッチ回路35に入力される。
【0028】
また、図3に示すように、パルス周波数に応じてパルス信号発生器25で発生したパルスクロック信号は、光信号変換器31→光ファイバケーブル32→光信号復号器33の順に伝送され、スイッチ回路35に入力される。
そして、パルスクロック信号に基づきスイッチ回路35が動作し、スイッチ回路35に入力された、パルス波形の最大値Pmaxとパルス波形の最小値Pminとを規定する信号が、パルスクロック信号に同期して切り替えられて、高応答電源21に入力される。
このような、パルス基準信号伝送部の動作により、高応答電源22の駆動信号となるパルス基準信号が高応答電源22に入力され、このパルス基準信号に基づきパルス電圧を出力する。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機における、パルスビーム波形の第1例を示す図である。
図5において、(a)は高安定電源22の出力であるオフセット電圧Vofの時間変化を、(b)は高応答電源21の出力であるパルス電圧Vpls の時間変化を、(c)はバイアス電源9の出力である、オフセット電圧Vofとパルス電圧Vpls とを加算したバイアス電圧Vbiの時間変化を、(d)はビーム電流Icの時間変化を、各々示している。
【0030】
従来の電子ビームをパルス化する機構では、0値と予め定めた電流値とのON−OFF制御しかできなかったが、本実施の形態では、図5(b)に示すように、パルス基準信号に応じで高応答電源22から任意の電圧を発生できるので、図5(d)に示すようにビーム電流Icを任意のレベルに設定できる。
図5は、バイアス電圧におけるパルス波形の最大値Pmax を4波目のパルス以降に低下した場合であり、このバイアス電圧波形では、ビーム電流Icは4波目のパルス以降のピーク電流値を低く制御できる。
このようなビーム電流Icの制御では、ワークの熱容量が小さく、ワークの温度が上昇した場合に、投入熱量を低下させて熱加工条件を均一にできる。
【0031】
図6は、本発明の実施の形態1に係わる電子ビーム加工機における、パルスビーム波形の第2例を示す図である。
図6において、(a)は高安定電源22の出力であるオフセット電圧Vofの時間変化を、(b)は高応答電源21の出力であるパルス電圧Vpls の時間変化を、(c)はバイアス電源9の出力である、オフセット電圧Vofとパルス電圧Vpls とを加算したバイアス電圧Vbiの時間変化を、(d)はビーム電流Icの時間変化を、各々示している。
【0032】
図6は、バイアス電圧における、パルス波形の最小値Pmin を2波目のパルス以降に上昇させ、パルス波形の最大値Pmax を4波目のパルス以降に低下させた場合であり、このようなバイアス電圧波形により、ビーム電流Icにおける、2波目のパルス以降の平均電流を上昇させるとともに、パルスの振幅を小さくするように制御している。
【0033】
このような、ビーム電流Icの制御では、ビーム照射開始直後はピーク熱影響が少ない溶け込みビードを得ることができるとともに、投入熱量が大きくなった時にパルスの振幅を小さくするので、溶融金属の振動を抑制し、滑らかな表面ビードを実現できる。
それと、溶融金属の振動が抑制されるので、気泡の巻き込みが防止され、ボイドを除去できる。また、溶融金属の振動抑制は、スパッタの飛散も抑制できる。
すなわち、本実施の形態の電子ビーム加工機100は、上記のようなバイアス電源9を備えているので、加工物の熱容量や溶接形状に応じて、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールできる、品質の高い溶接を可能にする。
【0034】
次に、本実施の形態の電子ビーム加工機100の運転条件を例示する。
本実施の形態の電子ビーム加工機100では、例えば、陽極4に対する陰極2の電圧は−60kVであり、バイアス電極5は陰極に対して0〜−800Vの範囲で可変である。ビームがOFFとなるバイアス電圧をカットオフ電圧と呼び、本実施の形態の電子銃1の場合は、−700V程度である。このカットオフ電圧は電極の組立状況、温度等で若干変動する。
【0035】
また、本実施の形態の電子ビーム加工機100における電子銃1は、バイアス電圧が0Vに達する前の−200V付近で陰極2の電流供給能力を超えて、陰極ビーム放出面以外からもビームが出始め、ビーム収束性が悪化するので、バイアス電圧を−300〜−700Vの範囲に設定し、収束性のよいビームを得ている。このバイアス電圧範囲におけるビーム電流値は0〜16mAである。
【0036】
本実施の形態では、電子銃1に、ヒータで加熱されるLaB陰極の例を示したが、タングステン製の陰極や、フィラメントタイプの陰極、傍熱タイプの陰極でも同様の効果が得られる。
陰極、陽極、バイアス電極の構成によっては、陰極に対して正電位のバイアス電極の電位でビーム電流を制御することも可能である。その場合も、高安定電源の出力電圧を正とすることで、同様の効果が得られる。
本実施の形態では、パルス信号発生器25で発生させた、パルス波形の最大値Pmaxとパルス波形の最小値Pminのそれぞれを規定する信号、および、パルスクロック信号は、光ファイバケーブル32を介して高応答電源21に伝送されているが、低圧側でパルス波形を発生し、光絶縁でアナログ信号を伝送しても同様の効果を得ることができる。また、絶縁方法として光ファイバケーブルを用いたが、絶縁トランス等の他の方法を用いても同様の効果を得ることができる。
本実施の形態では、加速電源内にビーム電流を計測する電流検出回路を設けた例を示したが、ヒータ電源内に電流検出回路を設けて、この電流検出回路からの信号を外部制御回路に入力しても、同様の効果が得られる。
【0037】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
図7に示すように、本実施の形態の電子ビーム加工機200は、高安定電源22の電圧値を制御する外部制御回路23bが、第1のローパスフィルタ36aと、第2のローパスフィルタ36bと、第1のローパスフィルタ36aと第2のローパスフィルタ36bとに接続された引算器37を備えている以外、実施の形態1の電子ビーム加工機100と同様である。
【0038】
第1のローパスフィルタ36aは、加速電源6の電流検出回路24と接続されており、電流検出回路24から出力されたビーム電流信号の直流成分を取り出す。
第2のローパスフィルタ36bは、パルス信号発生器25と接続され、そのパルス基準信号の直流成分を取り出す。
ちなみに、第1,第2のローパスフィルタ36a,36bには、100Hz以下の信号を通す低域通過特性を有するものが用いられる。
【0039】
第1のローパスフィルタ36aを通過して取り出されたビーム電流信号の直流成分と、第2のローパスフィルタ36bを通過して取り出されたパルス基準信号の直流成分とは、各々引算器37に入力され、ビーム電流信号の直流成分とパルス基準信号の直流成分の差信号が算出される。
そして、本実施の形態の電子ビーム加工機200は、引算器37で算出されたビーム電流信号の直流成分とパルス基準信号の直流成分の差信号が、高安定電源22に入力され、この差信号により、高安定電源22が制御される。
【0040】
ビーム電流が加速電源6内に設置された電流検出回路24で計測され、この計測に基づき生成されたビーム電流信号が外部制御回路23bに入力され、外部制御回路23bからの高安定電源電圧制御信号により、バイアス電源9の高安定電源22が制御される。
外部制御回路23bから高安定電源22への信号の伝送は、バイアス電源9が加速電圧でフローティングされているので、絶縁性の光ファイバケーブルや絶縁トランス等を介して行われる。
【0041】
このような絶縁を介した信号伝送では、伝送される信号の周波数帯域が制限されるので、パルスビーム発生時に電流検出回路24で測定したパルス状の電流波形の信号により、パルス状のバイアス電圧をフィードバック制御することは困難である。
しかし、本実施の形態の電子ビーム加工機200は、引算器37で算出されたビーム電流信号の直流成分とパルス基準信号の直流成分の差信号で、高安定電源22がフィードバック制御されるので、パルスビーム発生時においてもビーム電流のフィードバック制御が可能になる。
【0042】
ビーム電流は電子銃1の状態、陰極2の温度や形状、陽極4とバイアス電極5と陰極2の各電極の位置等により変動する。例えば、電子ビーム加工機を起動すると、ヒータ3での加熱により電子銃1および筐体12は徐々に温度が上昇するが、ヒータ3との位置関係により温度の上昇には時間差があるので、各電極間の距離等が変動する。
そのため、起動直後にバイアス電圧を一定電圧にしておくと、ビーム電流の比較的大きな変動を生じることがある。
しかし、本実施の形態の電子ビーム加工機200は、パルスビーム発生時においてもビーム電流のフィードバック制御が可能であるので、起動直後の比較的大きなビーム電流の変動を抑制でき、安定なパルスビームを得ることができる。
【0043】
通常、電子ビーム加工機において、ビームOFF時には、微小な漏れ電流を無くすため、バイアス電圧は、ビーム電流を0にする最小電圧であるカットオフ電圧より高めの電圧(例えば、数10V)が設定されている。
そして、ビームONの指令とともに、バイアス電圧をカットオフ電圧まで低下させ、カットオフ電圧に達した時からパルス発生を開始する。
すなわち、高安定電源22の発生するオフセット電圧が制御する必要がある。
【0044】
図8は、本発明の実施の形態2に係わる電子ビーム加工機において、ビームONの指令とともにバイアス電圧がカットオフ電圧まで低下し、カットオフ電圧に達した時からパルス発生を開始する状態におけるパルスビーム波形を示す図である。
図8において、(a)は高安定電源22の出力であるオフセット電圧Vofの時間変化を、(b)は高応答電源21の出力であるパルス電圧Vpls の時間変化を、(c)はバイアス電源9の出力である、オフセット電圧Vofとパルス電圧Vpls とを加算したバイアス電圧Vbiの時間変化を、(d)はビーム電流Icの時間変化を、各々示している。
図8に示すように、高安定電源22の発生するオフセット電圧が制御された後にパルス電流が発生している。
【0045】
図9は、本発明の実施の形態2に係わる電子ビーム加工機において、起動直後のビーム電流が徐々に出やすくなってくる状態におけるパルスビーム波形を示す図である。
図9において、(a)は高安定電源22の出力であるオフセット電圧Vofの時間変化を、(b)は高応答電源21の出力であるパルス電圧Vpls の時間変化を、(c)はバイアス電源9の出力である、オフセット電圧Vofとパルス電圧Vpls とを加算したバイアス電圧Vbiの時間変化を、(d)はビーム電流Icの時間変化を、各々示している。
【0046】
本実施の形態の電子ビーム加工機200は、パルスビーム発生時においてもビーム電流のフィードバック制御が可能であるので、出やすくなるビーム電流を抑制するため、オフセット電圧を徐々に上昇するように制御回路を動作させることができ、安定なパルスビーム電流を得ることができる。
すなわち、本実施の形態の電子ビーム加工機200は、パルス電流を、安定にできるため、ワークへの投入熱量の変動を抑制でき、溶接における溶け込み深さやビード幅が安定する。
【0047】
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
本実施の形態の電子ビーム加工機300は、実施の形態1の電子ビーム加工機100において、バイアス電源9を形成する、高応答電源21と高安定電源22とが、図10に示す回路構成のものである。
【0048】
図10に示すように、高応答電源21は、高耐圧のNチャンネルFET40aと高耐圧のPチャンネルFET40bとを直列接続した出力素子部40と、出力素子部40に接続され、且つパルス信号発生器25から入力された信号により出力素子部40を制御する高応答電源内制御回路41と、直列に接続された2個の電源42でなり、且つ出力素子部40に電力を供給する電源本体とを、備えたアンプ回路である。
【0049】
そして、高耐圧のNチャンネルFET40aは、電源本体の負極側に配置され、高耐圧のPチャンネルFET40bは、電源本体の正極側に配置されている。
また、電源42は絶縁トランスと整流回路と平滑回路とで構成され、電力供給は低圧側から行われる。
本実施の形態の高応答電源21ではFETが用いられているが、トランジスタで構成しても良い。
【0050】
高応答電源21は、図10に示すような回路構成であるので、パルス信号発生器25から入力されたパルス信号を増幅して出力でき、特に、高い電圧スルーレートと高ゲインが得られるとともに、入力信号に応じた任意の出力電圧を出力することができる。
高応答電源21の出力電圧を大きくするには、電源本体の電圧を高くする必要があるが、電源本体の電圧を高くすると出力素子40の発熱が増大する。
しかし、本実施の形態の電子ビーム加工機300では、高応答電圧源21の振幅は必要なビーム電流に応じた最小限に設定でき、他のオフセット分の電圧は高安定電圧源22が発生するので、高応答電圧源21の発熱は必要最小限に抑制できる。
【0051】
また、図10に示すように、高安定電源22は、電力を供給する絶縁トランス43と、絶縁トランス43の出力を整流する整流回路44と、整流回路44の出力側に並列に設置され、整流回路44からの出力電流を平滑化する平滑用コンデンサ45と、整流回路44の正極側の伝送路に設けられたスイッチング素子46と、スイッチング素子46の出力側に直列に設置されたインダクタンス48と、インダクタンス48の出力側と整流回路44の負極側の伝送路との間に設けられたコンデンサ49と、外部制御回路23に基づく信号によりスイッチング素子46を制御する高安定電源内制御回路47とを、備えている。
【0052】
すなわち、高安定電源22は、インバータ駆動の定電圧回路で構成されており、出力の正極側が加速電源6の負極に接続され、出力の負極側が、高応答電源21における、電源本体を形成する直列接続された2個の電源42同士の接続部に接続されている。
【0053】
すなわち、高安定電源22は、電流検出回路24の検出信号に基づく外部制御回路23の制御信号により高安定電源内制御回路47から出力されるゲート信号で、スイッチング素子46をON−OFF制御することにより、出力電圧が制御される。
また、高安定電源22の出力電圧は、インダクタンス48とコンデンサ49とで、リップルが低減される。しかし、出力電圧を低リップル化するため、インダクタンス48とコンデンサ49との時定数は大きく選定されており、高安定電源22の応答性は低い。
また、高安定電源22は、電力を供給するのに絶縁トランス43が用いられているので、高安定電源22を含むバイアス電源9を、加速電源6で高電圧(例えば、−60kV)にフローティングした状態で動作することを可能にしている。
【0054】
本実施の形態の電子ビーム加工機300は、バイアス電源9を形成する、高応答電源21と高安定電源22とが、図10に示す回路構成のものであり、高応答電圧源21の振幅は必要なビーム電流に応じた最小限に設定し、バイアス電圧における他のオフセット分の電圧は高安定電圧源22が分担するので、例えば、高応答電源21の発熱量を10W以下に抑えることができる。
また、高応答電源21は、帯域1MHzの応答性と300V/μsの電圧スルーレートとを実現できる。
【0055】
また、本実施の形態の電子ビーム加工機300は、例えば、100kHzで16mAのパルスビームを得ることができる。
すなわち、本実施の形態の電子ビーム加工機300は、低発熱で高応答のバイアス電源9を備えたものであり、加工機を小型化できる等のメリットがある。
本実施の形態の高応答電源21と高安定電源22との回路構成は、実施の形態2の電子ビーム加工機にも適用でき、同様な効果が得られる。
【0056】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
図11に示すように、本実施の形態の電子ビーム加工機400は、高応答電源21において、出力素子部50が高耐圧の2個のNチャンネルFET40aを直列接続したものであり、出力素子部50に電力を供給する電源本体が1個の電源52であるとともに、高安定電源22の出力の負極側が、高応答電源21における電源本体の正極側に接続されている以外、実施の形態3の電子ビーム加工機300と同様である。
本実施の形態の電子ビーム加工機400では、例えば、高応答電源21の出力範囲は−600〜0Vであり、高安定電源22は−200Vの電圧を出力するので、バイアス電極には−200〜−800Vの範囲のパルス電圧を印加することができる。
【0057】
図12は、本発明の実施の形態4に係わる電子ビーム加工機におけるパルスビーム波形を示す図である。
図12において、(a)は高安定電源22の出力であるオフセット電圧Vofの時間変化を、(b)は高応答電源21の出力であるパルス電圧Vpls の時間変化を、(c)はバイアス電源9の出力である、オフセット電圧Vofとパルス電圧Vpls とを加算したバイアス電圧Vbiの時間変化を、(d)はビーム電流Icの時間変化を、各々示している。
【0058】
図12に示すように、パルスビーム波形は、実施の形態2における図8に示したパルスビーム波形と同様であり、高周波のパルスビームを高安定に発生させることができる。
また、本実施の形態では、高安定電源22の出力が低い電圧で良く、バイアス電源の構成が簡単になる。
本実施の形態の高応答電源21と高安定電源22との回路構成は、実施の形態2の電子ビーム加工機にも適用でき、同様な効果が得られる。
【0059】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5に係わる電子ビーム加工機の構成図である。
図13に示すように、本実施の形態の電子ビーム加工機500は、電子銃1が収納された筐体12の上部側に連続して設けられた絶縁性筐体部62内に高応答電源21を設置し、高応答電源21を電子銃1のバイアス電極5に直結するとともに、高応答電源21と絶縁性筐体部62の外部に設置された高安定電圧源22とを、高電圧ケーブル61で接続した以外、実施の形態1の電子ビーム加工機100と同様である。
そして、本実施の形態では、高応答電源21は、絶縁性筐体部63内で、絶縁油中に保持され、絶縁が保持されている。
【0060】
また、加速電源6と、ヒータ電源8および高安定電源22との接続も、高電圧ケーブル60で行われ、ヒータ電源8と高安定電源22とは、加速電源6により、例えば、−60kVの高圧にフローティングされている。
また、ヒータ電源8とヒータ3との接続、および加速電源6と陰極2との接続も、高電圧ケーブル61を介して行われる。
【0061】
高応答電源21を筐体12の外部に設置して、高応答電源21とバイアス電極5との接続を高電圧ケーブルで行うと、高電圧ケーブルが、3mのケーブル長で300pF程度の浮遊容量を有するので、発熱量を抑制するため、電流供給能力を小さくした高応答電源21からのパルス電圧では、応答性を向上させるのに限界がある。
しかし、本実施の形態の電子ビーム加工機500では、高応答電源21が、絶縁性筐体部63に設置されており、高応答電源21を電子銃1のバイアス電極5に直結しているので、高応答電源21の容量性負荷を大幅に低減でき、高応答電源21からのパルス電圧の応答性を、さらに向上できる。
【0062】
すなわち、本実施の形態の電子ビーム加工機500は、発熱量を抑制できるとともに、高い応答性を有する高応答電源21を備えたものである。
例えば、3mの高電圧ケーブルを用いた場合、300pFの電源出力の容量性負荷であるのに対して、本実施の形態では、10pF以下の電源出力の容量性負荷に低減でき、周波数帯域を500kHzと、高い値にできる。
【0063】
本実施の形態では、高応答電源21は、絶縁性筐体部63内で、絶縁のため絶縁油中に保持しているが、モールド絶縁やガス絶縁であっても良い。
また、本実施の形態の、高応答電源を絶縁性筐体部に設置して電子銃のバイアス電極に直結する構造は、実施の形態2〜実施の形態4の電子ビーム加工機にも適用でき、電子ビーム加工機におけるパルス電圧の応答性をさらに向上できる。
また、本実施の形態の、高応答電源を絶縁性筐体部に設置して電子銃のバイアス電極に直結する構造は、イオンビーム等の荷電ビーム装置においても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係わる電子ビーム加工機は、直列に接続した高応答電源と高安定電源とでバイアス電源を形成しており、パルスビームを高周波化できるとともに、加工物の熱容量や溶接形状に応じて、パルスビームの最大値や最小値の値を任意にコントロールできるので、高品質の溶接が要求される電子ビーム加工機に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 電子銃、2 陰極、3 ヒータ、4 陽極、5 バイアス電極、6 加速電源、
7 電子ビーム、8 ヒータ電源、9 バイアス電源、10 収束レンズ、
11 ワーク、12 筐体、13 抵抗、21 高応答電源、22 高安定電源、
23 外部制御回路、23b 外部制御回路、24 電流検出回路、
25 パルス信号発生器、30 AD変換器、31 光信号変換器、
32 光ファイバケーブル、33 光信号復号器、34 DA変換機、
35 スイッチ回路、36a 第1のローパスフィルタ、
36b 第2のローパスフィルタ、37 引算器、40 出力素子部、
40a NチャンネルFET、40b PチャンネルFET、
41 高応答電源内制御回路、42 電源、43 絶縁トランス、44 整流回路、
45 平滑用コンデンサ、46 スイッチング素子、47 高安定電源内制御回路、
48 インダクタンス、49 コンデンサ、50 出力素子部、52 電源、
60 高電圧ケーブル、61 高電圧ケーブル、62 絶縁性筐体部、
100,200,300,400,500 電子ビーム加工機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃と、上記電子銃から発射された電子ビームをワーク上に収束させる収束レンズと、上記電子銃と上記収束レンズとを収納した筐体とで形成されたビーム発生部と、上記ビーム発生部に電気を供給する電源部とを備えており、
上記ビーム発生部の電子銃が、熱電子を放出する陰極と、上記陰極を加熱するヒータと、上記陰極と対向して設けられ、且つ上記筐体と接合した陽極と、上記陰極と上記陽極との間に配設されたバイアス電極とで形成されており、
上記電源部が、上記ヒータを発熱させる電流を供給するヒータ電源と、上記陰極と上記陽極間に電圧を印加し、上記陰極から上記陽極方向に電子ビームを発生させる加速電源と、上記陰極と上記バイアス電極間に電圧を印加して、上記電子ビームを制御するバイアス電源とで形成された電子ビーム加工機であって、
上記バイアス電源が、直列に接続された、一定の電圧を安定に発生できる高安定電源と出力電圧を経時変化させる高応答電源とで形成されており、
上記高応答電源が、パルス信号発生器で発生したパルス基準信号により制御されたパルス電圧を出力する電子ビーム加工機。
【請求項2】
上記高安定電源が、加速電源に設けられたビーム電流を計測する電流検出回路から出力されたビーム電流信号に基づき、上記ビーム電流をフィートバック制御する電圧を出力することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム加工機。
【請求項3】
上記加速電源に設けられた電流検出回路から出力されたビーム電流信号に基づき、外部制御回路で生成された高安定電源電圧制御信号が、直列に接続された、AD変換器と光信号変換器と光ファイバケーブルと光信号復号器とDA変換機とを、この順に伝送されて、高安定電源に入力され、
上記パルス信号発生器で発生したパルス基準信号における、パルス波形最大値Pmaxを規定する信号およびパルス波形最小値Pminを規定する信号の各々が、直列に接続された、AD変換器と光変換器と光ファイバケーブルと光復号器とDA変換器とを、この順に伝送されて、スイッチ回路に入力され、
上記パルス信号発生器で発生したパルス基準信号におけるパルスクロック信号が、直列に接続された、光信号変換器と光ファイバケーブルと光信号復号器との順に伝送されて、上記スイッチ回路に入力され、
上記パルスクロック信号に基づき上記スイッチ回路を動作させ、上記パルス波形の最大値Pmaxと上記パルス波形の最小値Pminとを規定する信号を、上記パルスクロック信号に同期して切り替えて、高応答電源に入力することを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム加工機。
【請求項4】
上記加速電源に設けられた電流検出回路から出力されたビーム電流信号により、高安定電源電圧制御信号を発生する外部制御回路が、上記電流検出回路に接続された第1のローパスフィルタと、パルス信号発生器に接続された第2のローパスフィルタと、上記第1のローパスフィルタと上記第2のローパスフィルタとに接続された引算器を備え、
上記第1のローパスフィルタで、上記ビーム電流信号の直流成分を取り出し、上記第2のローパスフィルタで、上記パルス基準信号の直流成分を取り出し、上記引算器で、上記ビーム電流信号の直流成分と上記パルス基準信号の直流成分との差信号を算出し、上記差信号で、高安定電源が制御されることを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム加工機。
【請求項5】
上記高応答電源が、NチャンネルFETとPチャンネルFETとを直列接続した出力素子部と、上記出力素子部に接続され、且つパルス信号発生器から入力された信号により上記出力素子部を制御する高応答電源内制御回路と、直列に接続された2個の電源でなり、且つ上記出力素子部に電力を供給する電源本体とを、備えており、
上記高安定電源が、電力を供給する絶縁トランスと、上記絶縁トランスの出力を整流する整流回路と、上記整流回路の出力側に並列に設置され、上記整流回路からの出力電流を平滑化する平滑用コンデンサと、上記整流回路の正極側の伝送路に設けられたスイッチング素子と、上記スイッチング素子の出力側に直列に設置されたインダクタンスと、上記インダクタンスの出力側と上記整流回路の負極側の伝送路との間に設けられたコンデンサと、外部制御回路に基づく信号により上記スイッチング素子を制御する高安定電源内制御回路とを、備えており、
上記高安定電源の出力の負極側が、上記高応答電源における電源本体を形成する直列接続された2個の電源同士の接続部に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子ビーム加工機。
【請求項6】
上記高応答電源が、2個のNチャンネルFETを直列接続した出力素子部と、上記出力素子部に接続され、且つパルス信号発生器から入力された信号により上記出力素子部を制御する高応答電源内制御回路と、1個の電源でなり、且つ上記出力素子部に電力を供給する電源本体とを、備えており、
上記高安定電源が、電力を供給する絶縁トランスと、上記絶縁トランスの出力を整流する整流回路と、上記整流回路の出力側に並列に設置され、上記整流回路からの出力電流を平滑化する平滑用コンデンサと、上記整流回路の正極側の伝送路に設けられたスイッチング素子と、上記スイッチング素子の出力側に直列に設置されたインダクタンスと、上記インダクタンスの出力側と上記整流回路の負極側の伝送路との間に設けられたコンデンサと、外部制御回路に基づく信号により上記スイッチング素子を制御する高安定電源内制御回路とを、備えており、
上記高安定電源の出力の負極側が、上記高応答電源における電源本体の正極側に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子ビーム加工機。
【請求項7】
上記筐体の上部側に連続して設けられた絶縁性筐体部内に高応答電源を設置し、上記高応答電源を電子銃のバイアス電極に直結するとともに、上記高応答電源と上記絶縁性筐体部の外部に設置された高安定電圧源とを、高電圧ケーブルで接続したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電子ビーム加工機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−146471(P2012−146471A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3531(P2011−3531)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】